魔王と救世主 - 3-6

 毎日のように使われているそこは、指一本程度なら殆ど抵抗なく飲み込む位には柔らかくなっている。

 指が蠢くその場所から与えられる深い刺激を思い出して、銀髪の青年は無意識に指を締め付けた。

「欲しがってる……体は正直だな」

「……、んぁ……」

 言葉で詰られても、青年は顔色を変えることはない。ただ、蠢く指に悶えて眉を寄せるだけだ。

 薄く開いた唇からは、荒い呼吸と共に、時折苦しいだけではない甘い声が漏れる。

「入れて欲しい、って言ってみろ」

 入り口を解しながら、魔王は救世主の耳元で囁く。

 敏感な場所を何度も指で突かれ、自由にならないもどかしい腕に身を捩りながら、彼は熱い吐息と共に言葉を零す。

「……ぁ、ふっ……い、れて……ほしい……」

 中を、熱い鉄のような楔で満たして欲しい。

 深く激しく突いて、灼熱の溶岩のような熱でドロドロに溶かして欲しい。

 知って間もない快楽に取り付かれ、中毒者のような切羽詰った切望感が、青年の中に渦巻く。

 気が付けば、襞で男の指を締め付け、腰を揺らし、縋るような視線で欲を求めていた。

「……随分と可愛い救世主だ」

 魔王は嗤い、青年の中から指を引き抜くと、余裕のない自身を取り出す。そうして、銜えるものを欲してヒクつく場所に一気に突き刺す。

「……、……ぁあっ……」

 衝撃とともに敏感な部分を、がり、と抉られ、救世主は堪らず声を上げて背をのけぞらせる。

 しかし、中心を痛いほどキツく握られ、達することは出来ない。

「まだ、イクなよ?」

 俺も楽しませろ、と低い声を響かせながら、魔王は組み敷いた救世主の体を揺さぶった。

 まだ馴染みきっていない内壁と、ねじ込まれた牡が激しく擦れ、軽い痛みと共に眩暈を起こしそうなほど熱い快楽を双方に齎す。

 このまま溶け合ったら、どうなるのだろう。

 そんなありもしない事が、一瞬、二人の脳裏を掠める。

 しかし、答えにたどり着く前に、彼らは目の前の快楽に思考を投げ出した。

「……ぁ、……ふ、ッぅ……んぁ……」

 最初に比べれば、随分と声を出すようになった。

 魔王は、ほんの数日で瞬く間に色気を増した銀髪の青年に、笑みを浮かべる。

 自分が、これを変えたのだ。

 それが、堪らなく嬉しく、益々欲望に火を灯す。

「イク時に、俺を、呼べ」

 銀髪の青年の内部を確かめるように、ゆっくりと腰を動かしながら、金髪の青年は要求する。

 もどかしい揺さぶりに身悶えしながら、銀髪の青年は潤んだ目を開けて口を開いた。

「……っ、な、まえ……しらな……」

「魔王、でいい」

 ほら、と促しながら敏感な部分を突いてやると、銀色の子羊は短く甘い声を上げながら応えた。

「ま、おう……ッ」

「そうだ。それでいい」

 ちゅ、と頬に口付けを落とし、魔王はラストスパート、と言わんばかりに、激しい揺さぶりを開始した。


  
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