魔王と救世主 - 4-4
塔から部屋に戻るなり、二人はベッドに傾れ込んだ。
すっかり冷え切った救世主の体を労わるように、魔王はシーツの下にその華奢な裸体を潜らせて、自分も衣服を脱ぐとその横に身を置く。
口付けながら抱きしめた細い体は、衣服の下で温められた逞しい体に暖められて、徐々に熱を帯びてくる。
「……ふ、ぁ……」
長く深い口付けの中、胸の尖りを弄られて救世主の形の良い薄い唇から甘い声が漏れる。
それすら飲み込むように唇を寄せて、魔王は抱きしめる腕の力を強くした。
「……セナ……」
「……っ、ま、おう……」
低く熱い呼びかけに、意識より先に体が応える。
既に反応を始めた中心を握られ、促されて、細い背が撓った。
「……は、ぅ…………、んっ……」
快楽に堪える艶やかな表情を満足げに眺める魔王は、ふと背中に物足りなさを感じて、愛撫の手を止め手探りで救世主の体の横を捜索する。
触れた手はきつくシーツを握り締めていて、それが愛おしくもあり、不満でもあった。
「……手……」
「……て……?」
止んだ刺激に思考を取り戻して、囁かれた言葉に反応する。
促されるままに力を緩めた手は、そのまま魔王の肩へと誘導された。
「俺を、抱いてろ」
「……、……」
命令にも似た優しい要求に、救世主は狼狽する。視線を逸らしては、救いを求めるように魔王の顔へと不安げな視線を向けて、を繰り返す。
向けられた側はただ、優しい笑顔で彼の回答を待つだけで。
「傷、つける……」
「いいから」
ポソリと心配事を零した言葉に、益々魔王は笑みを深くして触れるだけの口付けを、そのしっとりとした額に落とした。
倒すべき魔王の身を案じる救世主など、この青年ぐらいしか居ないだろう。そう思いながら。
その言葉に漸く意を決したように、救世主はもう片方の手もゆっくりと上げると己を抱く男の背に添えた。
再び中心を握られ、ビクリと体を震わせると同時に、反動で背に回した手に力が篭る。
より体が密着し、熱い魔王の体に驚きながらも、彼はその熱に安堵して自分の中の何かが崩れ落ちるのを感じていた。
「……、ま、おう……!」
「一回、イっとくか?」
近い限界を知らせるように相手を呼べば、そう問われる。
救世主が首を左右に振って拒否すると、笑みを浮かべた魔王は先走る透明な蜜を指に掬い、組み敷いた体の後腔に潜り込ませた。
焦らすようにまずは入り口を解され、徐々に奥へと進入する。放り出された中心が疼くが、救世主は銀糸を震わせて必死にその刺激に堪えていた。
まだ、熱を解放したくはない。もっと、目の前の男の熱を深く感じて、繋がって、一つに解け合いたい。
自分だけ、楽になりたくはなかった。
← →
戻る