魔王と救世主 - 4-5
足に当たる逞しい牡を感じながら、快楽に翻弄される青年は耽美な顔を艶やかに歪ませて隆起する背に爪を立てる。
「溶けてきた」
魔王の言葉通り、指を銜えた内部がひくついて、もっと太いものを要求している。
熱い、焼けた鉄のように熱くて、全てを満たしてくれる、男を、求めて。
「欲しいか?」
「……ほ、しい……まおう、が……」
「可愛い奴」
二人は、ゆっくりと繋がりながら、どちらともなく口付けを求める。
言葉にならない……出来ない思いを、伝え合うかのようなそれは激しく、深く、長く、熱い。
一つになった場所が絡みついてくる刺激に熱い溜息を零して、魔王は予想以上に余裕のない己を嗤った。
そして、照れ隠しのように耳元に唇を寄せ、そっと吐息を流し込む。
「……セナ……」
「……ッ、……」
耳元で名前を呼ばれ、救世主の芯が震える。それは快楽に直結して、繋がった魔王の牡をさらにきつく締め付けた。
名前を呼ばれただけ。たったそれだけなのに、こんなに嬉しいなんて。
「……すげぇ……」
降ってくる賞賛の言葉に羞恥を覚えながら、それでも快楽への欲望には勝てず、セナは先を求めるように腰を振った。
「……もっと……ほしい……」
躊躇いがちに、要求を口にして。
その拙さが尚愛おしく、組み敷く男は求められるままに抽送を開始する。
「……は、ぁっ……ふ、……ぁん……」
ゆっくりと、早く、浅く、深く。
巧みに動きを変えて攻められ、セナの唇からは堪らず甘い嬌声があふれ出す。
「……セナ……」
「……、っ……」
更に名前を呼ばれて、彼はフワフワとした暖かで蕩けるような何かに、優しく包まれている錯覚を覚えた。
泣きたくなるような安心感のあるそれを、『幸福』と呼ぶことを、彼は知らない。
ただ、初めて感じた感覚にしがみつくように、己を押し倒す男の背に爪を立て、いつまでもこんな風に包まれて居たいと切に願った。
「……、もう、限界だ」
「おれ、も……ッ」
切羽詰った魔王の声に、セナは荒い呼吸の中で応える。
逞しく脈打つ楔に内壁を広げられ、歓喜して滴を零す自らの中心を圧し掛かる男の腹に擦り付けて、先を促す。
その淫靡で妖艶な行為に、魔王の牡が狂喜して更に質量を増し、狭い体内を満たす。
「……出すぞッ」
「……おれも……イく……まおう……ッ」
教えられたとおりに卑猥な言葉を口にして、セナが達する。
開放の衝撃で締まる内部に導かれて、魔王も奥深くに灼熱の白濁を放った。
真っ白にスパークした視界の中、叩きつけられるマグマのような熱を体内に感じ、余韻と相俟って背筋が震える。
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