魔王と救世主 - 5-12

 感じる微かな痛み。だが、本当に欲しい場所にはまだ届かない。

「や……なん、で……」

 与えられたのは、増やされた指。

 恨みがましげに声を上げれば、回答は至極あっさりとかえってきた。

「傷付けたくは、ないからな。もう少し、我慢しろ」

「……あぁ、……ぅ……」

 前戯とは明らかに違う、余裕のない指の動きが、性急に中を解していく。

 グチャグチャと卑猥な音が耳に響き、それが更に二人の熱を上げて快楽の海へと沈めていく。

 長い長い準備の後に、漸く金髪の青年は己の欲望を取り出し、ぐずぐずに溶けた入り口へと突き入れた。

 歓喜に撓る背中。上がる甘い嬌声。

 獣のように背後から突き上げて、金髪の青年は銀糸を掻き分け、覗く白い項に歯を立てた。柔らかい肉。軽く吸うだけで、赤い花が咲く。

「……んぁ、あ……魔王ッ……」

 いつものように、自分の俗名を呼ぶ愛しい相手に、金髪の青年は嗤った。

 グッと奥へ突き入れ、色の薄い背中に圧し掛かると、耳元で声を落として囁く。

「違うだろ? ちゃんと、俺の名前を呼べよ、セナ」

「……ッ、……セナ、ドール……セナドール……ッ!」

 名前を呼ばれ、呼び返すだけで、ギュッと内壁が締まり、立たされた膝がガクガクと震える。

 もう限界だ、と言わんばかりに、銀髪の青年の膝が、腕が折れた。机の上に上半身を預け、尻を背後の獣に突き出すような卑猥な体位を取る。

 ぐりっと内壁を抉りながら当たる位置が変わり、その刺激にまた、甘い悲鳴が唇から漏れた。

「……ぁひぁ……、……も、イく……イか、せて……欲し……あぁッ」

「いいぜ……イケよ」

 一緒にイクから、と返された言葉に、心の底から湧き上がる喜び。そして、組み敷かれた青年は美しい髪を振り乱して達する。
 同時に、組み敷いている青年も、汗ばんだ白い肩口に顔を埋めて欲を解放した。

 茶色い机をパタパタと彩る、白い蜜。卑猥なそれを指で伸ばす金髪の青年に、まだ息の整わぬ銀髪の青年は眉を寄せた。

「……、子供が、勉強する場所、なのに」

「後で綺麗にしとけば、問題ないさ。それより、今は……大人の勉強の時間、だろ?」

 お前は何も考えなくていいから、とう囁いた金髪の青年は、未だ中に包まれたままの欲望を再燃させて、軽く腰を振る。

 先程までの愛撫で敏感になっている体は簡単に煽られて、背筋を走る快楽に震えた。

「……今は、『幸せ』だけ、感じてろ。考えるのは、後でいい」


  
 戻る