魔王と救世主 - 6-1
魔物と人間が共存する村から城へ戻ってからも、二人の関係は何一つ変わらなかった。
ただ、救世主の行動範囲は格段に広がった。
城の中にある庭園に足を運んだり、一人で城の見張り塔まで登ったり。
まるで、今まで知らずに居た世界を取り戻そうとするかのように、様々なものを見、触れ、聞こうとしていた。
魔王も、街や森へ連れ出したり、例の村に遊びに行ったりと、彼を支援するかのように連れ回した。
救世主の剣と鉢合わせするかとセナは思ったが、魔王も同じ気持ちだったようだ。いつも出かける場所は、城の近くではなく、常に馬で何ヶ月も掛かるような所だった。
そして当然、捕虜に宛がわれた部屋以外で、二人で過ごす時間もぐっと増えた。
それはつまり、救世主が魔王の命を狙う時間が増えるともいえるわけで、心配性の魔王の側近は毎日のように胃を痛め愚痴を零していた。
が、対する二人の世話係であるキーズは、自分の時間が増えて日々上機嫌のようだった。
しかし、救世主の剣は、もう、目と鼻の先にある。
毎朝日課のように窓から剣の位置を確認する銀髪の青年には、手に取るように感じる。
近づいたり、離れたり。一度、街の方へ戻ったこともあった。だが、それも過去の事。
救世主に宛がわれた部屋から、ほんの少し手を伸ばすだけで、もう手が届きそうな気になるほど、剣は今、当初の位置からずっと近い場所にある。
早く手に戻したいという想いと、このまま剣を忘れてしまえたらという想い。
一人でいると、叫びだしたくなるほど不安で、胸が苦しい。
けれど、迷う時間は、もうない。
救世主が魔王の城に捕らわれて、半年が過ぎようとした頃。城に、初めての勇者が襲撃をかけた。
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