魔王と救世主 - 6-4

 城は、突然の襲撃に大騒ぎだった。

 相手は一人。だが、予想だにしなかった奇襲と、その強さで、あっという間に城へ入られてしまった。

「何故、気づかなかった」

 ロビーに向かいながら、魔王はレヴァに問う。

 問われた側は、その皺だらけの顔に汗を掻きながら、弁明した。

「恐らく、救世主の剣でしょう。主の元へ帰るために、何らかの魔法的な作用を発揮したのかも知れません」

 言い訳と言ってしまえば、それまでだ。だが、救世主の剣は、伝説によれば、色々と使命に対して有利に働く魔法を纏っていたらしい。

 老いて知識も豊富な彼の言葉を一蹴してしまうのは、余りに浅はかだろう。

「俺が出る。援護しろ」

「しかし、本当に救世主の剣であれば……」

「救世主はこの城に居る。ならば、侵入者に俺は切れんはずだ」

「本当に、あの者が救世主ならばそうでしょうが……」

 早足で廊下を抜ける魔王の後を必死で付いていきながら、魔物はブツブツと不平を漏らす。

 彼の言うことは尤もだが、城に置いている警備用の魔物は蹴散らされているようだし、何より相手は自分との勝負を望んで来ている。相手をしてやるのが礼儀だろう。

 そして、城内を自由に歩き回らせるよりも、早いうちにご退散願うのが一番良いことも明確で。

「レヴァ」

 魔王が低く一喝すると、魔物はそれ以上何も言わず、搾り出すように頷いた。

「……仰せの、通りに」

 それを確認すると、魔王は侵入者が足止めされているであろうロビーへと足を速めた。


  
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