魔王と救世主 - 9-11

「……ひ、ぁ、あ……ッぅ」

 体の奥の奥、一番感じる部分を執拗に突かれて、ビクビクと白い体が跳ねる。

 無意識に逃げようとする体を押さえ込んで、セナドールは更に胸の尖りや下肢の中心を指や舌で嬲る。

「いいか……?」

「……んッ……きもち、イイ……は、ぁぅ、ふ……セナ、ドール……!」

 だが、気持ちとは裏腹に、立て続けに3度もイかされたセナの中心は力がない。

 それでも、愛する人の手で愛撫されれば、緩やかに立ち上がり、歓喜の蜜を滲ませた。

「セナ……愛してる」

 目尻に浮かんだ生理的な滴を舌で受け止め、セナドールが笑う。

 それがあまりに優しく、幸せそうで、つられるようにセナも笑った。

 胸の奥で燻る不安と恐怖を、幸福感で覆い隠して。

 背筋を走る快楽と、触れ合う場所から湧き上がる熱に浮かされて。

 先程までの胸を引き裂くような強い痛みは、いつの間にか感じなくなっていた。

 ただ、幸せで、幸せで。

 夢じゃないかと錯覚するほど、体も心も満たされていた。

 何度も口付けを重ね、繋がりあって。セナドールの乱れた着衣から覗く肌と、己の肌を擦り合わせて。

「セナドール……ぁ、んッ」

「セナ」

 互いを呼び合い、見つめ合い、笑い合う。

 望んだ以上の幸せの中に、溺れていく。

 蒸せるような熱と、ドロドロとした密度と、緩やかな時の流れの中で、ただ二人だけ、世界の中心で愛し合う。

 辛くはない。

 二人、触れ合っていれば、それだけで、生きていける気がした。

 何かが吹っ切れたように、快楽がそのまま幸せとなって、胸を暖め、傷口を覆っていく。

「あい、してる……あいしてる……セナドール……ッ」

「俺も、だ……っ、愛してる……セナ」

 僅かに乱れた呼吸の中で、時折官能的に眉を寄せながらセナドールが言う。

 その表情が綺麗で、愛しくて、セナは瞬きも忘れて瞼に焼き付けるように見つめる。

「……、悪い……もう、限界、だ……」

 お前、良すぎ。

 そう揶揄するように言われて、セナは羞恥ではなく、聖母のような笑みで男の頭を抱えるように抱き締める。

「……いい、から……中、出して……俺を、お前、で……いっぱいに、して……」

「……、馬鹿ッ」

 蕩けるように言われては、もう理性など持ちはしない。

 急に動きを激しくしたセナドールに、セナは息を呑んで体を大きく痙攣させた。

 緩やかだった下肢への愛撫も、明確な意図を持った物に変わり、慣れた手が巧みに動き出す。

「ひぁ、……や、……セナ、ドール……!?」

「イくなら、お前も、道連れだッ」

「ちょ……あァッ、……く、ぅ……む、り……も、むりぃ……ッ」

 悲鳴に近い嬌声を上げて、セナは激しく乱れて抗議の声を上げる。

 気持ちの問題ではない。体が、限界を訴えている。

「やぁぁっ……しんじゃァ……、ひぃぁっ……セナ、ドール!……こわれッる!」

 それでも、一番感じるシコリを何度も抉られれば、中心は蜜を零しだして。

「……たす、け……せなどーるっ……ぅ、あッ……たすけっ……ひ、アァァァ、アァっ!!!」

 絶叫を上げて、頭の先から爪先まで伸ばしきり、セナは絶頂を迎える。

 全身を突き抜ける、感じたことも無い衝撃。

 殆ど空っぽの体が、それでも与えられる快楽を解放しようと行き着いた……ドライオーガニズム。

 衝撃の余韻とともに訪れた引き摺られるような虚脱感に飲み込まれ、頭が真っ白になる中で、セナは最奥に叩き付けられる灼熱のマグマを感じていた。


  
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