魔王と救世主 - 9-8

「……っふ、ぁ……ま、おう……魔王ッ!!!」

 己の股間に顔を埋める男の髪を掴み、俗名を叫んで体を痙攣させ、二度目の欲を解放する。

 迸る熱い体液を咥内で受け止め、魔王は苦い顔で救世主の顔を見下ろした。

「違うだろう?……教えたはずだ、俺の、名前を」

 泣きそうに歪んだ顔で、セナの抑え込んだ気持ちを求めるように。

 しかし、立て続けに絶頂を迎えた救世主は、空ろな目で青年を見上げ、緩やかな動きで首を左右に振った。

「ちがわ、ない……お前、は、魔王で……俺は、救世主、だ」

 だから、馴れ合うことなど、出来ない。してはいけない。

 眦から滴を零し、掠れた声で残酷な現実を紡ぐ。

 目の前の青年に向けて駆け出そうとする心に、楔を打ち込むように。

 頑なに、魔王の愛を、己の内に潜む愛を、拒む。

「……、何処まで、強情なんだ……ッ」

「……やッ……」

 弛緩しきって抵抗できない下肢を割り広げ、魔王は奥の蕾に指をねじ込む。

 6日振りに異物を受け入れた其処は、傷つくことは無かったものの、セナの心のように硬く閉じ、指を締め付けた。

「……く、ぅ……ッ」

 走る鈍い痛みに、救世主の綺麗な顔が歪む。

「キツくなってるな……直に、気持ちよくさせてやる」

 苦痛に歪むその顔を見ていられず、魔王は救世主の吐き出した蜜を掬い取っては塗りこむ作業を繰り返す。

 一度は慣れた体だ。そこが3本の指を銜え込むほど柔らかくなるまでに、さほど時間はかからない。

 内が柔らかくなればなるほど、持ち主の体に与えられる鈍痛は快楽へと変わり。

 セナの心を、痛めつける。

 涙を伴うほどのその心の苦痛を和らげるように、浅い呼吸を繰り返す喉。それ連動し、小刻みに胸が上下する。

「……ぁ、ん……ぁぁっ……だめ、だ……ひぁ、ふ……あぁっ……」

 深々と差し込まれた太い指が、敏感なシコリを探し当てる。直後から、魔王はそのシコリばかりをグリグリと容赦なく刺激し始めた。

 何度も達した体には、拷問のような快楽。

 抵抗したがる心とは裏腹に、素直な体は再び中心に熱を灯し、緩やかな動きで絶頂へと向かいだす。

「や、も……これ以上、無理、だ……ぁ……や、め……まお……うッ」

「お前が素直に俺を受け入れれば、やめてやるさ」

「……っ、それ、は……あ、ァっ……」

 魔王の要求には、応えられない。

 激しく首を左右に振るだけの、だが明確な拒絶の返答に、魔王は目に暗い光を灯す。中途半端に立ち上がった救世主の起立に手を沿え、扱いて刺激を与えた。

 中と外、同時に与えられる、神経が焼き切れそうに痺れる快楽に、救世主は悲鳴のような嬌声を上げる。

「も、ゆるし……ぁひっ……ぅ……しんじゃ……やァッ!!」

 刺激を与える手が最愛の人のものだというだけでも、十分な刺激だというのに。

 本人以上に感じる部分を知り尽くした手には迷いが無く、逃げる術すらない。

「たすけ、……ぁ、あ……まお、ぅ……ひぃぁ、っ……まおうッ……アァァ!!」

 涙を流しながら喘いでも愛撫は止めて貰えず、救世主は3度目の解放を強要された。


  
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