酸いも、甘いも - 4

「……っぁ……ん……」

 バスローブの隙間から差し込まれた手が、既に尖り始めた胸の飾りを指の腹で潰し捏ねる。

 顔を上気させて熱い吐息を漏らす唇は、何度も激しく貪られて、意味ある言葉が出てこない。

 セナの体は、手慣れた愛撫にあっという間に燃え上がった。

「や……ッ」

 しかし、窓から差し込んだ冷たい閃光と、少し遅れて届いた爆音が、その行為に水を差す。

 思わず自分を組み敷く男の首に腕を回してしがみつき、セナは体を密着させた。僅かな隙間さえ許さないその抱擁は、欲を帯びたものではなく、ただ純粋なる恐怖からくるものだ。

「大丈夫だ。俺はここにいる」

 魔王はそれを敢えて離す事はせず、あやすように頭を撫でて優しい口付けを落とす。そして、密着した体制のまま、セナの後腔へと指先を伸ばした。

「柔らかい」

 閉じた蕾は軽く突くだけで、弛緩して指を受け入れようとする。まだ解れたままの内部は、柔らかくも熱く蕩けてあっさりと二本の指を飲み込み、ゆったりと締め付けて男を煽る。

 だが、突然襲う雷鳴に、細い体が再び緊張した。当然、襞も収縮し、銜えた指を締め付ける。

「……ッ、凄いな。予想以上だ」

 何を予想していたのか。セナの思考の端に文句が浮かんだが、それ以上に狭い内部で動く銜えた指の容赦ない刺激が脳髄を直撃し、息を呑む。

 主張を始めた前部にも淫猥な男の手が伸びてきて、弄られると直に透明な滴を滲ませ歓喜した。

「……ん、ぁ……ふ……ゃ……まお、う……もぅ……っ」

 雷の恐怖もそこそこに、快楽に溺れて先を求める救世主に、魔王は嗤って訂正を求める。

「違うだろ? いい加減、覚えろ」

 大切な人の名を。

 覚えたばかりの、大切な……二人だけが知る名を。

 その意味に気付くだけで体の熱が上がり、要望は渇望に変わる。

 一つになって、青年を……泣きたくなるほど甘く苦しい幸福を、全身で感じたい。

 快楽の海の中、酸素を求めるように、セナは濡れた瞳で縋るように強請った。

「……セナドール……はや、く……いれて、ほし……ぃッ……!!」


  
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