酸いも、甘いも - 5
「随分と卑猥な救世主だな」
「せな、どーる……!!」
焦らすように嗤う青年の名を、セナは詰るように呼ぶ。そんな愛しい救世主に甘い笑みを見せながら、セナドールは体勢を変え、ベッドのヘッドボードに背を預けて座った。
そして、細く熱を帯びた体を、向かい合うように膝の上に乗せて座らせると、劣情に彩られた赤い瞳を覗き込む。
「自分で入れてみろ」
「……そ、んな……」
意地悪な瞳は、戸惑い揺れる瞳を逃さず、真っ直ぐに見つめてくる。
下半身に当たる剥き出しの欲望は、どちらも熱を孕んで硬くそそり立ち、続きを切望していて。
「……ほら、早くしないと、いつまでもこのままだぞ?」
「……ッ、……」
楽しげな青年の顔を一睨みして、セナは本能の求めるままに、受け入れ慣れた欲望を掴んで己の入り口に宛がった。
恐怖からか、体を沈める動きは酷くゆっくりだ。それ故に、内部が広がり深く侵食されていくのをしっかりと感じ、背筋が震えていつも以上に締め付けてしまう。
「……ふ、……」
最中にチラリと相手の顔を見れば、眉を寄せて快感に堪えていることが窺える。精悍な色気を放つその表情は、間違いなく自分が与えているものだ。
そう思うとセナの胸の中に優越感にも似た喜びが溢れ、さらに体が熱くなった。
「ちゃんと入ったな」
良く出来た。根元まで銜え込むと、幼子を褒めるような優しい瞳で言われて、羞恥よりも純粋な喜びに顔が綻ぶ。
そうすれば、目の前の青年も嬉しそうに笑うから、幸福な笑顔の連鎖がいつまでも止まらない。
胸が痛いほど。泣きたくなるほど。嬉しくて、優しい幸福が。
「……ふ、ぅ、……んぁッ……んっ!」
湧き上がる衝動のままに深い口付けを交わす中、くん、と下から突き上げられ、セナの笑みが淫靡な悦びに変わる。
甘い嬌声は暗い部屋に響き、結合した部分から起こる水音と共に、欲に浮かされる二人の耳を淫らに犯した。
このまま、快楽に溺れてしまう……そう思った刹那。
「……ひっ……、や……ッ!!」
閃光とともに響く、地を揺るがすほどの轟音。
忘れ去られていた雷が窓ガラスを揺らして存在を主張し、室内にいる二人に襲い掛かる。
心身ともに無防備な状態のセナは、平静を保てず身を強張らせて、己を抱く男にしがみついた。
「……ッく……」
内部が、銜えたままの男を締め上げ、セナドールは呻き声を漏らしながらも衝撃をやり過ごす。
食いちぎられそうな痛みと本能的な恐怖が伴うそれは、同時に目が眩むほどの快楽を彼に齎した。
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