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くのいち1−4


 ふっふっふ……

 本当にピンチの時、強力すぎる敵を前になすすべがない時……たったひとつの、絶対的な秘策がある。そう、たったひとつの、とっておき中のとっておきだ。それは……

 逃げる!

 敵前逃亡は、単純な臆病に基づくものではない。逃げることによって時間を確保し、その間に反撃のための対応策を考える。そのための時間稼ぎなのである。

 あるいは、一旦逃げるように見せかけて相手側の隙を伺い、上手に出し抜くための手段ともなる。頭を使うんだ。

 この娘はアホなので、思わぬところにチャンスが潜んでいるかもしれない。

 僕はきびすを返し、背後の木の陰に隠れて、さらに木から木へと走りながら隠れ、どんどんむらさきしのめから距離を開けていく。逃亡はすなわち、相手との距離感と相手の視界から消え去ること。ここに極意がある。

「あ!」

 慌てて僕を追いかけてくるしのめちゃん。単純に逃げるだけでは彼女の脚力をしのぐことは難しい。すぐにでも捕まってしまうだろう。

 だからこっちも頭を使うんだ。一方向に逃げているように見せかけて、本当はその反対側に回る。彼女が僕に追いついたと思わせて、実は僕は全く違うところを走っている。

 そんなことを何回もくり返せば、しのめはいつか、僕を見失ってしまうことになる。そこからが本領発揮だ。

 案の定、むらさきしのめは、僕の姿を見つけられなくなった。「あれえ?」「あれえ?」と言いながら、彼女はあちこちに飛び回る。建物の影を探してみたり、木の上に登って周囲を見回したりしている。

 だが、そんな彼女の姿を、僕の方からはよく見えて、僕の姿をまだ見つけられないでいるような様子までもが、手に取るようにわかった。完全に僕の方が、有利に事を進められている。

 すぐそばに、手頃な池があった。木の陰に隠れてよく見えなかったが、ごく狭い、それでいてなかなか深みのある池だった。庭園の中央にある大きな池とはまた違う趣で、あつらえられているものであった。

 ここは精神世界なので、池に入っても冷たくないし、濡れてもすぐに乾く。もちろん、汚いなどということは決してない。精神世界は須く不垢不浄なのだ。ここならうまく隠れ、待ち伏せができるかも知れない。

 何かと都合がいい。竹筒で呼吸をしなくても、池の中で息苦しくならない。池に入って、じっと身を潜めながら、相手が近づいてくるのを待つ。相手が僕を探してうろついている間に、隙を突いて彼女の足を足払いだ。

 もし、むらさきしのめが有り余る体術でごぼう抜きを始めたら、腕に覚えのあるくすぐりで抵抗する。身柄拘束まで闘おう。拘束されたら池の中で挿入し、水中ファックで雄叫びを上げる。さらに、どんな願いでも叶う、宇宙の無限力を活用してryこれで心技体ともに完全無欠のコギャルくのいちは総崩れだ!

 ぐふふ……計画は完璧である。

「……あの……」
「!!?」

 つい勢いが余り、僕はうっかり、ざばっと池から顔を出してしまった! 頭上の声の方向を探るために、ついキョロキョロしてしまう。

 むらさきしのめは、僕が監視している池の中からは、反対方向にすでに回っていた。彼女は僕の後頭部に話しかけたのだった。

「……透明の池の中に潜んでたら、その姿丸見え……だよね? ふっ」
「あ! 鼻先で笑いやがった! げほっ! お前にだけは笑われたくなかった。笑われたくなかったぞー!!!」

 さらに相手の口車に乗り、僕は上半身を池からすっかり出してしまう。

 背後から忍び寄られたために、しのめに足払いをかけることもできず、あっさりと見つかってしまったせいで、僕は完全に勢いを失ってしまった。その上、ばヵのむらさきしのめに馬鹿にされてしまったため、もはや僕の矜持は完全に湾底のくずとなってしまう。

 してやられた。

 いや!

 僕はとっさに、身体をむらさきしのめの方に向けた。ここで隙を作れば、完全に相手のペースに嵌まってしまう。いかに百戦錬磨の僕であっても、体術忍術に優れたくのいちの肉体攻撃と、妖術に近いいくつもの忍術攻撃にさらされたら、無事では済まないはずだ。ここは気持ちを切り替え、もう一度、彼女の隙を突く作戦を練り直すんだ。

 少なくとも、ここでしのめが池に入ってきて、背後から僕に抱きついてきてしまえば、こっちはほとんど身動きが取れなくなってしまう。なんとしても、それは避けなければならない。

 うまく気持ちを切り替えることができたので、背後からペニスを手コキされるなどという失態は犯さずに済んだ。

 だが、人が2人入ればいっぱいになってしまうほどの、たこつぼのような特殊な池に入っている以上、こっちが不利であることに変わりはない。しのめちゃんがどんな手を使ってくるか、警戒しなければ。

「忍法、水縛りの術!」

 むらさきしのめは、どこからか取り出した怪しげなコナを、池に振りまいた!

「むっ!?」

 池の水は、たちまちのうちにドロドロになっていき、葛湯のように粘度を増していく。手足を動かしにくくなり、スピードが殺されてしまう。

「あははっ! これで軽やかな動きを封じました! もう怒濤の愛撫攻撃も、リズミカルな腰振りもできないでしょう!」

 くっそ……くのいちの早技は目にもとまらないと聞く。こっちもスピードにはそれなりに自信はあったが、真っ向勝負すれば、やはり彼女の方がスピードにおいて上を行くだろう。ましてや、こっちの動きがセーブされてしまえば、その差は歴然としたものとなる。まずいことになっ……

「とりゃー!」

 さぼっ!

 むらさきしのめは、僕の目の前に入り込んでくる。狭い池は、僕としのめが入っただけでほぼ一杯になった。池からザバッと水があふれ出し、周囲に拡がっていくものの、くのいち忍法の魔法のコナによって、表面張力が格段に上がったのか、ヌリコーンともりあがった水は、一定の高さを保ったままその場に留まっている。

 このコナは、おそらくは水の粘度を高める作用を持っているけれども、人の動きを格段に制限するほどの効力はなく(でなければコンクリやガラスのように固まってしまうだろう)、これに加えてしのめ自身の催眠能力が発揮されて、僕の動きを遅くする効果を付け加えているのだろう。

 そしてその効果は、どうやら僕にだけ効果があるものだけではそうだった。

「……やっぱりお前アホだろ。」
「なっ……あっ……体が……なんで……動きが鈍い……」

 ちがう……鈍いのではない。ばかなんだ!!

 この池にはすでに、不思議な呪詛がかかっている。それは僕だけに効果を発揮するのではなく、なんとむらさきしのめ自身にもまったく同じ効果をもたらすものであった。

 彼女はどうやら、自分に術がかからないようにあらかじめ設定しておくのをすっかり忘れてしまったらしい。完璧に見えて、肝心なところで抜け落ちてしまう。それが彼女のアホなところであり、またそのドジなところがカワイイのであった。

 しかしもちろん、肝心なところで抜け落ちているドジッ娘属性に萌えている場合ではない。これは精子をかけた大勝負だ。気を抜くわけにはいかない。

 僕たちは気を取り直し、池の中の立位で攻防、消耗戦をスタートさせた。

 とはいってももちろん、僕の方は消耗するつもりなどサラサラない。できるだけ精力を温存させて、このドジ娘に一泡吹かせてやるんだ。

 さすがに”忍法筒枯らし”を駆使するくのいち。幼いうちから耐久力と膣圧の訓練を積み重ねてきている。そこそこ熟練した男忍者であっても、瞬時にして精を搾り取られてしまう。そればかりでなく、敵の将の閨に忍び込み、最後の一滴まで吸い尽くして腎虚となし、世継ぎを絶やしてしまうことさえあるという。くのいちは、それほどの攻撃力を誇っている相手だ。

 気を抜けば1ターンごとに大ダメージを受けてしまうことは必至だ。そうならないよう、気を引き締めてかからなければ。

 小さな池での水中ファック。お互いの動きは鈍いままだ。僕は彼女の乳房やお尻、わき腹などをしっかり愛撫しながら、スローセックスで腰を前後させ続ける。女体が最も感じるような動きで、しのめちゃんの若い肉体をコンスタントに気持ち良くしていく。

 これまでも、フロをはじめとし、スローセックスも含めてゆっくりとした動きで戦ったことは何度もある。ついさっきも、フロ戦闘をくぐりぬけてきたではないか。幾らしのめちゃんがくのいちとして強化されていようとも、百戦錬磨の僕の方が、まだ有利に事を進められると思う。

 僕は落ち着いて的確に相手にダメージを与え続ける。同時に、しっかり防御を果たし、相手の筒枯らしによる痛恨のダメージを回避し続ける。

 動きは鈍いながらも、ゆっくり動くときの上手な動き方、というものを心得ている。スローにしか動けないからこそ、じっくりねぶるように相手の肌をきめ細かく可愛がり、ひとコスリごとに女体の性感神経を最大限に逆なでするような動き方を知っている。それをただ、型どおりに実行するだけだ。

「うっく……」

 音を上げ始めたのは、しのめちゃんの方だった。

 彼女の方は、思い通りにスピードが出せないために、僕に対する愛撫の力も、腰の振り方も、てんで威力を発揮しきれないでいる。せいぜい、そのオンナの感触が、忍者として適切に訓練を重ねられた結果を遺憾なく発揮できている、というだけのようだ。

 ……悪いが、このくらいの攻撃だけなら、これまでも乗り越えてきた範疇にある。たしかに、これだけの具合の良さを体現していながら、さらに熟練の腰振りや愛撫攻撃を併用されれば、僕とて大ダメージを被ってしまう。しかし、その動きは、彼女自身がしかけたコナの魔法によって、自分自身までも封じられてしまっているのである。

 彼女が墓穴を掘ったおかげで、ずいぶん戦闘が楽になったぞ。敵の防御力は確かながらも、その攻撃を封じるだけで、僕の方にかなりの余裕が出てきた。

 一気呵成に、というわけには行かないだろう。それほどには相手は甘くないし、なにぶんこっちの動きもスローに抑えられているからだ。ここはじっくり焦らず、一回一回的確な動きで、じわじわと追い詰める作戦の方が良さそうだ。その際、こっちのダメージがどのくらいになるかによって戦局が変わるものの、どうやらそっちは心配なさそうである。

 それなら……

 ねっとりといやらしい腰の動かし方で、深く深く相手のオンナの奥へとペニスを突き立て続ける。女体が感じ、その性感信号が乳房へと移ったタイミングで、ぐにっとおっぱいを揉み、撫でさすり、快楽を外へ逃さない。

 感極まって、性感神経がお尻にて敏感になる。オンナの快楽を堪えようとして、性感ポイントが自然とそっちに移るんだ。でも僕はそれを熟知している。ちょうどそのような反応を示した瞬間に、上手に愛撫をお尻に移してやる。さすれば彼女は、快楽の逃げ場を失って、ますます絶頂の坩堝へとはまり込んでいくのだ。

 あと一息だ。僕はじっくり計算しながら、正確な攻撃タイミングを逃さず、むらさきしのめをイク寸前まで追いやっていく。

「くぅ〜〜〜ッ!!!」

 彼女は思いっきり全身をこわばらせた。

 くのいちの訓練どおり、女体のアクメを強制的に抑えつけるつもりだ。そうはいくか。

「オラオラオラオラオラオラァーーーッ!!!!!」
「ぷ……ぷぎゅぷぎゅぷぎゅうううーーー負けないっ、まけないもん!」

 ……甘いな。

 そうやって頑張るおにゃのこには、思いっきり意地悪をするに限る。

 僕は上体をのけぞらせ、わざと彼女の胸板を抱きしめるのをやめる。その代わり、両手で乳首をつねりながら、その周囲に指を押しつけるようにして、奥底に眠る性感神経まで無理矢理総動員させる!

「おりーーやっ! ぶっつぶれよぉぉ!!」
「ひにゃあああ!!!」

 ぶるんと大きく乳房が震えた。それは、彼女の腰が大きくうねったことを意味した。

「あう! ……くやしい……」

 しのめちゃんは目を細め、敗北の快感に我を忘れ、あどけない顔で僕を見上げた。なんて可愛い表情なんだ。こんな娘を育てたかった……

 むらさきしのめはイッた。

 その瞬間、おかしな忍術は解け、水はまた元のようなサラサラしたものに変わった。

 彼女は消えていく。「こ……こうなったら……えーい、分身の術ー!」

 一瞬警戒したが、むらさきしのめはそのまま消えていった。なぁにが分身だ。何も起こらないではないか。

 きっとこれだけのドジ萌え娘なんだ、きっとどこかで、何食わぬカオをしてふたたび登場してくるんだろうなあ。まったく……

 僕はザバッと池から上がった。水に浸かっていた不快さも、濡れている感覚も消えていった。

「ふう……」

 周囲を見回す。忍者庭園は変わらない。

 どこかに、次のステージの出口があるはずなんだが……

「ふっふふふ……」
「!!!?」

 どこからともなく、少女たちの笑い声が聞こえてくる!

「この忍者ステージは、この広い空間で連戦するのですぅ!」
「むうっ!!」

 つまり……次の部屋に行って闘うのではなく、この場でこのまま、次の敵が襲いかかって連戦、ということか。次の敵は……むらさきしのめの3倍の力か3人分ということになっている。

「これがくのいち忍法最高の秘技! 分身の術です!」
「あっ!」

 そこには、複数のくのいち少女たちの影が、僕の前で腕を組み、立ちふさがっていた。分身……つまり、こいつらはむらさきしのめの分身体とでも、いうのだろうか……徐々にシルエットが明かされるにつれて、少女たちの姿が見えてくる。

「こ……これは……」



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