ドッペルゲンガー1−4
ドッペルは言った。「今セックスしている相手の事なんか考えてない」って。
生半可なテクニックや攻撃では、ドッペルに見透かされてしまう。いや、相手に快感を与えて倒すという発想で戦ってもドッペルには通用しないだろう。
ドッペルをイかせるためには、ドッペル自身の事を考えなくちゃいけない。つまり自分自身の事を考えなくちゃだめなんだ。
ドッペルの事…。
もし僕が女だったら、どうされたいだろう。僕自身がどうされたいかではなくて、相手が僕にどうして欲しいのか。そうだ、それが『弱点を突く』って事だし、只の欲望じゃないセックスになるんだ。ドッペルゲンガーに勝つ方法はこれしかない!
もし僕が女だったら。
…。同じ事だ。相手の気持ちを満たす事だ。
「…好きだ。」僕はドッペルの頭を抱き締め、耳元で囁いた。そのまま体を前に倒し、ドッペルにのしかかった。体重をかけないように気をつけて、ドッペルの左に横たわり、首筋にキスをした。
「…向こう向いてみて。」僕が囁きかけると、ドッペルは素直に従った。僕は彼女の背中を両腕ごと抱き締めた。
ゆっくり、さわさわと後ろから彼女の胸をなで、乳首を指先で軽く転がし、優しく揉み、これを繰り返す。やさしく言葉をかけながら。
愛撫攻撃としてはとても単純だ。テクニックの攻撃力もそれ程高くはない。でも、彼女にとっては、他のどんな攻撃よりも、これが効くんだ。敵によって、相手によって相性の良し悪しがある。
多分強力テクニックの百烈突きや強力アイテムのバイブ攻撃では、ドッペルはほとんど感じなかっただろう。そして僕が負けていただろう。
僕は優しくいたわられたかった。寂しさを吹き飛ばす安心感で包み込まれたかった。ドッペルが僕そのものだとするのなら、彼女も同じ寂しさを感じていた筈。それを満たしてあげれば、彼女は心を許す。これが『相手のいるセックス』なんだ。
オンナへの愛撫も挿入もなしに、ドッペルはイッた。その表情には安らぎがあった。僕は射精こそしなかったけど、心は満たされた。
ドッペルは立ち上がり、鏡に戻って行った。鏡に映る僕の姿は、元の男の姿だ。戦闘に勝った。自分自身を越えた気がする。
僕は新しい補助テクニック『相手を見る』を覚えた。相手の属性や願望、弱点等を見抜く技だ。成功率は50%位だけど、この先の戦闘にかなり有利になるだろう。
(ドッペルゲンガー1 クリア)