マミー2−1
マミーのフロアを暫く歩く。所々に棺がある。棺を開ければ必ずマミーが横たわっていた。一番最初に棺を開けた時はマミーの文明の女王が相手だったけど、女官や僧侶や町娘だったマミーもいた。
数千年前、ある星で彼女達の文明が栄えた。そこでは三年に一度美少年を生贄にし、美容や祭典や受精を行っていたらしい。
生贄になった美少年に国中の女性達が群がり、彼から採取した精液を生殖の道具にしてたんだ。
只直接挿入するんじゃなくて金の杯に精液を溜めてから子宮に流し込んだりしてたらしい。この儀式的なやり方が彼女達の文明を滅ぼしたんだった。
この文明が滅びた後彼女達の魂がこの塔に招かれてマミーとして全身に包帯を巻きつけながら棺に眠ってる。その身体はミイラになる筈が「ないと・めあ」の魔力でみずみずしい肢体を取り戻している。
彼女達はみんな手コキの達人で、生贄の美少年をそのしなやかな手のひらや指先、甲で可愛がっては精液を搾り出してた。だからこのフロアのマミー達も全員手コキの達人だ。彼女達の手でイッてしまわないように気をつけなければ。
手コキの技術は国の娘達で共有していたらしく大差はない。女王であろうが女官であろうが町外れの宿屋の娘だろうが同じ程度の実力らしい。だから一番初めに女王と対戦したからってその後の相手が女王よりも弱い訳じゃない。
手コキのテクニック以外で気をつけるべきは古代の呪文だ。「ないと・めあ」のお陰で呪文に強力な効果が与えられている。そのせいで…そう、そのせいで、僕の体は今大変な事になってるんだ。
女王と対決した時に僕はおかしな呪文をかけられた。何で最初から女王が相手だったのか何となく分かった。女王が僕にこの呪文を掛ける為だったんだ。その呪文のせいで僕は苦戦を強いられている。
僕の体は…10年以上若返っている。ペニスにも脛にも毛が生えてないし華奢な体つきになっているし皮も被ってる。全体的に身体が小さく力がない。何よりも、性的な快感に対してほとんど耐性がない状態だ。
生贄の美少年達も丁度この位だったそうだ。だから彼女達にとって一番魅力的で可愛がり易い体に僕を変えてしまったんだろう。これは彼女達のショタ属性をくすぐる点では有利だけど圧倒的に肉体的な問題があるから結局僕に不利になってる。
その代わりこのフロアはマミーが突然襲って来る事はない。彼女達は棺に収まっていて、僕の方から蓋を開けないと戦闘にはならない。だからレベルアップの為以外はマミー達をスルーできるのは嬉しい。
おっと、大事な事を忘れてたぜ。マミーの特殊能力!彼女達が女権国家を作れたのは女性だけが備えている特殊な能力のお陰なんだ。時を止める。5秒位止められる。
ここは精神世界だから精神力次第で何でもアリにできる。その性質を利用して僕も時間を止める能力を身に付けた。と言ってもマミー達みたいに長くは止められないけどね。だから同時に時間を止めて勝負すると途中で僕が動けなくなるから不利って訳だ。
彼女達の時間攻撃にも気をつけないとな。これに対抗するのは彼女達が時間を止めてその時間停止終了ギリギリの所でこっちが時間を止める事だ。そうすればこっちが一方的に責められる。この勝負では一秒が分かれ目になるんだ。
さてさて。僕は最初の内は棺の蓋をどんどん開けてレベルアップに勤しんで、残り精力がやばくなったらスルーしながらこのフロアを歩き回っていた。十分に回復してレベルもある程度マミーに対抗できる程度になってからは、戦うのも面倒だしこういう機会はここでは少ない方がいいので段々無視するようになって来ていた。
そろそろ三人相手に戦っても大丈夫だろう。
てかいつまでもマミー一人だけを相手にしてるって事は迷宮をちっとも進んでいないって事だからね。フロアの上り階段にある程度近づいたら、必ず三人バージョンになる。そしてゴール地点には10人バージョンだ。だからそろそろ次のステップに進まないといけないんだ。
先に進めばそれだけ危険度が増すけど、恐れていたらいつまでもこの異世界を彷徨う事になるんだ。一刻も早く脱出しなければ!
と、ある角を曲がった先では床に横たわっていた棺がなくなった。後ろには点々と一人分の棺が置いてある。だがここから先はそういう棺がなく床も綺麗な大理石になっていて何も置かれていない。この先は何かが変わるんだ。いよいよ三人バージョンか。気を引き締めた。
周囲の壁画もなく、代わりに古代文明っぽい石像が所々に置かれていた。石像が怪しいと思ったけど触れようが叩こうが何も起こらない。これは只の飾りだろう。誰が置いたか火の絶えない蝋燭が揺らめいている。
この通路を暫く歩いているが、結局何も出て来ないまま突き当りの壁に辿り着いてしまった。ここは何もない行き止まりだったか。別の通路を探そう。
カタン…踵を返した僕の背後から小さな物音がした。驚いて振り返る。目の前にはやっぱり行き止まりの壁。…。
い、いや!壁じゃない!これは扉だ!観音開きになっている扉だった!指先でつまむような小さな取っ手が二つ付いている。
これは怪しい。只の通路の扉じゃあなさそうだ。僕は恐る恐る取っ手に手を掛けた。通路をすっぽりと覆うような扉にしては取っ手が小さい。しかしその理由はすぐに分かった。
ちょっと引っ張っただけで、後は自動的にゆっくりと扉が開いて行った。途中で半分に折れるので僕が後ろに下がらなくても大丈夫なようになっていた。
取っ手はスイッチの役割だったらしい。扉が完全に開かれ、通路の先が見える。こうやって扉を開けて先に進む形式になるみたいだな。きっとこの先にも同じような観音開きの扉があってこれを開けながら進む事になるんだろう。
…そして、同じように僕の目の前に立っている三人のマミーを扉を開ける度に相手しなくてはならないのだろう。
「待ちくたびれておった」「数千年前の夢のような美少年追いを、またできるとは至福!」「あの頃の美少年に負けず劣らずのかわいさじゃ。」
胸と下腹部を包帯で被い、その他の部分は妖しく露出されている三人のマミーが僕の目の前にいる。包帯はあちこちに垂れ下がっていてこれも戦闘の道具になる。
この扉の間には必ず三人のマミーが潜んでいる。棺タイプの場合は蓋を開けなければスルーできたけど今度は扉を開けないと先に進めないので、三人バージョンで逃げるのは難しい。先に進むにはこの三人を倒さないといけない。きっとどの扉でもそうなんだろう。
マミー達は微笑みながら小瓶をいくつも取り出した。中には特殊な草から精製した性感ローションが入っている。昔もこれを使って生贄から種を吸い出して来たんだろう。慣れた手つきで手のひらにローションを注ぎ、自分の体に塗りつけ始める。彼女達はもうやる気まんまんだ。
「安心しなさい。すぐに君にもやさしく塗りたくってあげるから。」「全身くまなくね。」「特にアソコはたっぷり濡らしてあげる。」
まずい…このままではローションで彼女達の攻撃力が倍増してしまう。僕の耐久力も下げられる。何とかしなければ。
そうだ、こんな時こそ魔法だ。彼女達の妖しい武器を奪ってしまおう。早くしないとマミー達がローションまみれになる。急いで武装解除だ!「えーい!フランス・エク●ルマティオー!!」
ぶわああっっ!一陣の風が巻き起こり、魔法の力がマミー達に襲い掛かる!マミー達の包帯がはらはらと渦を巻いて脱げて行く。あっという間に三人の胸と下半身が露になった。しかもローションが入った小瓶が消滅し、中に入っていたすべてのローションが風で飛ばされてマミー達の体に浴びせられた!
「…。」えーと…。
要するに、だ。僕の魔法がマミー達を裸にした挙句その全身にくまなくローションを浴びせかけた、と。ぬっとりとしなやかな肢体からローションが滴っている。こっこれじゃ逆効果じゃないかああ!
あ゛あ゛あ゛あ゛…なんだかとってもまずい展開にぃぃぃ!!
「ふふふ…わざわざ私達を強化してくれるとはね。お礼にこの体から君の全身にローションをおすそ分けしてあげないとね。」「…三方向から抱き締めて、ね。クスクス…たっぷり塗り付けてあげる。手だけじゃなくて全身を駆使してね。」「さあ、覚悟はいいかしら?…魔法を使う美少年、●ギ先生♪」「うう〜(泣」
ジリジリとおねえさん達が迫って来る。この状態は非常にまずい。僕は涙目になりながら後ずさった。「そうそう、その顔がそそるのよ!」マミー達は嬉しそうだ。
「そうだ、こうしない?あの頃のように追いかけっこするの。」「あ、それはいい考え!」マミー達の動きが止まった。一体何を企んでるんだ…?
「それじゃあ、君にチャンスをあげる。」「ちゃ、チャンス?」「そう。私達が時間を止められるのは知ってるわね。三人分連携して全部で15秒。これだけあれば君の全身に密着してくまなくローションを塗るのはたやすい事も分かるよね。」「く…」「でもいきなりその能力を使わずにチャンスをあげる。」
「追いかけっこをしましょう。」「…?」「今から10秒間、私達に捕まらなければ、時間停止の能力は使わないで置いてあげる。」「!」「時間戦がなければかなり有利な筈。」「私達は約束は守る。たった10秒よ。いいチャンスだと思わない?」「もちろん追いかけっこの間も時間は止めない。」
たった10秒、か。だがその条件で余裕の表情を浮かべるマミー達を見るにつけ、壮絶なあの文明の状態も想像がつく。多分昔も同じように美少年に「チャンス」を与えて、それでもあっさり遠いかけっこに勝って生贄を捕まえたんだろう。
つまり彼女達は10秒の間に僕を捕まえる自信があるって事だ。それだけ生贄を追い、捕まえる事に慣れてるんだな。決して甘い賭けじゃなさそうだ。
でも時間停止攻撃を組み合わされたら勝ち目がないか、さもなくても相当苦戦を強いられる。ここは彼女達の条件を飲んでみるか。失敗しても特別なペナルティはなさそうだし。「…分かった。」「そうこなくっちゃ。」「じゃあ今から始めるからとことん逃げてね。」一瞬の判断が勝敗を分ける。僕は腰を少し屈めて次のアクションの準備に入った。スタートしたらすぐにダッシュだ。問題はどこへ走るかだが…
「10秒逃げ切ったら君の勝ちだよ。…ヨーイ、スタート!」
−選択肢−
マミー2−2 後ろに逃げる
マミー2−3 マミー達の足の間を潜り抜ける