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ナメてる戦隊フザケンジャー!


第6話 戦慄の淫夢たち!



 学校か。

 …やっぱりあんまり行きたくはないな。

 カレンダーを何気なく眺める。えっと、8月16日か。

 …。

 あれ?

 夏休みじゃん。

 ってことは、今日は学校はないのか。

 うーむ・・・その前までの記憶が曖昧だ。あんまり学校にも行っていないし終業式にも出ていない。結局、夏休みに入る前もあとも変わらない、ずうっと休みの生活だ。

 …まてよ、昨日まで普通に学校があったような? 夏休み? ・・・ま、いいか。

 今日はゆっくりしていよう。

 「達郎君いるー!?」

 女の子の黄色い声が家の中でこだまする。

 誰だ?

 ばたばたばた・・・廊下を走ってくる足音は、まっすぐ僕の部屋へと向かってくる。

 ばたーん!

 ドアが勢いよく開かれたかと思うと、短くてノースリーブのTシャツと、ぴっちりスリムのジーンズ姿の、明るい茶髪娘が入ってきた。

 彼女は…そうだ、たしか朝野静佳。少し遠縁の親戚筋で、よく子供の頃、彼女の田舎に遊びに行ったり、向こうから僕の家に遊びに来たりしていた。めったに会えない人だったけど、それだけに女の子を意識し始めた頃は彼女が来るのを、彼女のところに行くのを、ドキドキして楽しみだったっけ。夏の終わりの別れも切なかった。

 それでも、半年や一年に一度、数日間を過ごすだけで、恋心というより「夏の大イベント」みたいな感じだった。子供ながら性を意識する相手ではあった。

 そうそう、ちょうど彼女はこんな開放的でラフな格好をしてたっけ。

 「やっほー! 遊びに来たよー☆」

 「え・・・あ・・・あの・・・」

 「今日から3日間泊まるんで、よろしく☆」

 「いや…両親は今海外で…」

 「あー、それはちょうど良かっ…だ、大丈夫、気にしないで。勝手に来て勝手に飲み食いして、勝手に住むから。んじゃ、ふつつか者ですがよろしく☆」

 「…。」勝手に住むな。

 僕が高校に入るあたりから、静佳ちゃんは家に来なくなった。それもそのはず、静佳はこれでも僕よりふたつ年上で、高校卒業後まもなく妊娠が発覚、そのままつきあっている男と結婚して、つい先日、赤ちゃんが生まれたばかりという状況のはず。旦那の仕事の関係で、今現在、四国に住んでいるはずだけど…?

 「子供とか大丈夫なの?」

 「ん? なにそれ?」

 「え…。」

 要領がつかめない。

 「あー、ちょっとシャワー借りるね。」

 「あっ、ちょっと!」

 もう完全にこの娘は僕の家に泊まるつもり満々だ。こちらの制止も事情も聞かずに勝手なことをする。

 しばらくして。

 「う゛あ゛〜〜…暑い〜〜」

 静佳はシャワーから出てきた。今度は室内用のキャミソール(もちろんノーブラ)と、インナー用のテロテロ生地のパレオ(腰巻き)姿だった。

 「イロイロとツッコミどころ満載なんだけど、何より、同年代の男がいる前でそんな格好で歩き回るのはやめてくれないか。」

 「あらら。目の毒? 興奮しちゃう?」

 「・・・もういいです。」

 なんなんだ一体。

 …あっという間に夜になった。

 静佳はやっぱり、帰る気配がない。本当に泊まるつもりらしい。

 「じゃ、寝よっか☆」

 「勝手にしろ。」

 「んじゃーそうする。」

 こいつこんな娘だったっけ?

 「…。」

 「…。」

 「…。」

 「…何か?」

 「僕の部屋で何をしている。」

 「何って。寝るんだよ☆」

 「何でだよ!」勝手に押しかけてきてあまつさえ僕の部屋で寝るだと?

 「…あのね?」

 「?」

 静佳の声が急に落ち着いた。

 「私本当は、あなたが一人になるこの夏休みを選んで泊まりに来たの。」

 「…?」

 「達郎君って、彼女いるのかな?」

 「いないよ。なんかそういう運命らしい。」

 「運命なんて。…私じゃ、だめなのかな…」

 「えっ…」

 静佳は顔を赤らめ、モジモジしたまま、つぶやくように再び口を開いた。「私…あなたと結婚したいの。」

 「はあ!?」

 「本当だよ? ずっと好きだったんだ。わっ、私っ、達郎君に会うたびにどんどん好きになっていってね? 小学生、中学生と、体が女になって行くにつれて、この思いがますます強くなったの。」

 心臓が高鳴る。一体何が起こっているのだ。

 「ね。もう私、帰りたくないの。このまま、私をお嫁さんにしてくださいっ。」思い切ったように声を張り上げ、思い切った告白をしてくる静佳。

 「いやっ、あのっ…急に言われてもっ…」僕もドギマギしてしまい、ワタワタしどろもどろなことを言うので精一杯だった。きっと自分の顔も真っ赤になっている。じわじわと充血しているのが自分でもわかった。

 「高校卒業したら、君が18歳になるのを待って、結婚したいって思ってたの。今はまだ君はその年齢になっていないけど、ガマンできなかったの。」

 「…。」

 「でもほら、今のうちに婚約だけしといてさ、私も花嫁修業をかねてここに住んでさ、18歳になったら結構すれば万事OKじゃない?」

 「えっと…未成年者の結婚には父母の同意が必要なんだけど?」

 「あー、私の方は同意もらったよ。神谷家の同意も…ほら。」

 静佳が小さなメモ用紙をよこしてきた。そこにはたしかに父母の字で、「達郎と静佳の結婚を認めます」と書いてある。

 が、その紙のあちこちにドス黒い血痕がついている。文字が涙でにじんでいる。紙もくしゃくしゃで、ムリヤリ書かせられた雰囲気ばかりぷんぷん醸し出されているのである。

 「…。」

 「あっ、これは気にしないで。メリケンサックとかしてないから。」

 「お前…」

 にわかに話が嘘くさくなってきた。

 なんなんですかこの一種不気味な押しかけ女房は。てか、この人ダンナいるんだろ!? なんでいまさら求婚されるわけ? わけが分からん。一気に冷めていく。

 「ほら。あとは君の同意だけで婚約成立、今日から一年間同居して、ヤルことヤッて、それからでいいから。来年結婚して?」

 「いやです。帰れ。」

 「結婚して。」

 「いやです。帰れ。」

 「結婚しろ。」

 「いやです。帰れ。」

 「いいから結婚しろ! 妊娠させろー!」

 「死んでください。」

 なぜかここで僕は、みさの顔を思い出してしまった。まったく、最近ロクな女に出会ってないな。これも女運が極端に悪い運命のなせる業か。

 「…じゃあ、これならどお?」

 静佳は突然、下半身のパレオを外した。ホックを取れば、腰巻きは一枚の柄布になってしまい、地に落ちる仕掛けだった。あっという間に彼女は、脇の下丸出しのあられもないキャミソール(もちろんノーブラ)にパンティ一枚というきわどい格好になってしまった。

 「なっ! ちょっ、ちょっと…!」静佳のいやらしい格好に思わずわたわたとしてしまう。たじたじと数歩後ずさるが、静佳も負けじとじりじり迫ってくる。

 「私、本気なの。あなたが好きなの。結婚したいの。ね? 一生添い遂げて?」

 「まっ、待て待て! 落ち着け、冷静になれっ! 僕たちまだそんなに深い仲じゃないし、いきなり結婚なんてそんなの!」

 「今から深い仲になればいいんだよ。」

 「いやいやいや! 物事には順序というものが…」

 「もうガマンできないっ!」

 「そんな! そもそもアンタ結婚してたでしょうが!」

 「してないよ。私が愛しているのはあなただけ、結婚したいのは達郎君だけなんだよぉ!」

 ダメだ、完全に静佳は暴走してしまっている。スベスベのきめの細かい腕、ツルツルの脇の下をこれでもかと見せつけながら、年上の美少女がさらに迫ってくる。背が高くて僕と同じくらいなので、その整った顔立ちがまっすぐに僕に近づいてくる。かわいらしい二重まぶたは真剣に僕だけを見据えていた。

 彼女が歩くごとに、ツルツルの触り心地良さそうな生足がぷるぷると動いている。肉付きがいいのにあくまでも細く、ふくらはぎも足首も引き締まっていながら、指はどこまでもめり込みそうなほど白くてやわらかそうだった。歩くごとに見える内股がシコシコしていて、足を絡めたらさぞかし天国だろうと思わせる体つきであった。

 だが、ここで惰性に流されるのはなんかヤバイ気がしていた。かわいくて一途でどこかお姉さんぽさもあって、申し分ない女性なんだけど、どこか危険な香りもする。メリケンサックだし。

 「わわわっ、落ちつけって、もっとよく話し合ってだな…」

 「体で話せばすむっ! ね、私キレイでしょう? 結婚してくれたら、この体も何もかも達郎君のものなんだよ? ほら…」

 ついに静佳は僕のすぐ近くまで迫っていた。後ろに壁があり、僕はこれ以上下がれなくなっていた。

 「私の魅力でメロメロにさせてあげる。もしあなたが私の体に触れて夢中になったら、あなたは私のものよ。さあ、触って?」

 「あうう…」

 ヤバイ、若い娘の香りが僕を包み込む。甘い体臭とシャンプーの香りと、もちもちした風呂上がりの肌触りが、あと少しで届きそうだ。ほんのわずか、僕が体を前に出すだけで、しっかり抱き合ってしまいそうだった。

 だめだ、年上のティーンの魅力に理性が飛んでしまいそうだった。このままでは、こちらから静佳を抱いてしまいかねない上、もたもたしていれば彼女の方から抱きついてくる。そうなれば一気に沸点に達し、僕は我を忘れてしまうだろう。

 何とかして逃げないと。

 「だめえ!」

 僕は脇に逃げ、ダッシュで自分の部屋を飛び出そうとした。

 「あん! 逃げちゃだめえ!」

 すかさず静佳も追いかけてくる。静佳の機敏な動きが僕の行く手を阻み、ドアから部屋の外に出ようとした僕の前に回り込んで、静佳が通せんぼしてきた。

 「だめだよ! もし逃げたら、裸で抱きついてやるんだから!」

 まずい…そんなことをされたら一巻の終わりだ。すでにペニスはズボンの中ではちきれんばかりに勃起している。ここで全裸になって飛びつかれたら、僕はあっさりと彼女を抱き締め、快楽の罠にはまって結婚させられてしまうであろう。

 何とかして脱出しなければ。平和的に解決しなければ。

 「ねえ、見て…私の足。ほら。」静佳は右足を拡げて内股を見せつけてくる。本当にツルツルできめが細かく、触り心地が良さそうである。彼女が動くたびにめくれ上がるキャミソール。かわいらしくスベスベなお腹やおへそがチラチラと露出される。

 「ね。私に触ってもいいんだよ? 好きなところ、好きなだけ触ってよ。」

 ああっ! 本当にだめだ。

 このまま彼女を見続けていると、どんどん引き込まれてしまい、ついには誘惑に負けて触ってしまう。きっとその肌に触れたとたん、我を忘れてしまうほどシコシコした気持ちいい生足なのだろう。だからこそ危険な香りがするのだ。

 かといって強引に逃げれば、向こうも強引に抱きついてくるから、結局甘い女体をべったり全身で触ってしまうことになる。そうなっても結局ほだされて我を忘れてしまいかねない。

 そうなればあっという間に中出しまで持ち込まれて離してくれず。それを口実に結婚を余儀なくされてしまうだろう。

 何とかしないと。

 ぴんぽ〜〜ん!

 家の呼び鈴が鳴った。

 助かったと直感的に思った。

 「あっほらほら! 来客だよ来客! ほら、そんな格好で宅配とかだったらどうするんだ。」

 「うう〜…」静佳はどうしたらいいか分からずにたじろいでいる。あと一押しだ。

 ぴんぽ〜〜ん! ぴんぽ〜〜ん! ぴんぽ〜〜ん! ぴんぽ〜〜ん! ぴんぽ〜〜ん! ぴんぽ〜〜ん! ぴんぽ〜〜ん! ぴんぽ〜〜ん! ぴんぽ〜〜ん! ぴんぽ〜〜ん! ぴんぽ〜〜ん! ぴんぽ〜〜ん! ぴんぽ〜〜ん! ぴんぽ〜〜ん! ぴんぽ〜〜ん! ぴんぽ〜〜ん! ぴんぽ〜〜ん! ぴんぽ〜〜ん!

 「…。」

 ・・・ちょっと多くないか?

 とっ、とにかく! これがピンチを脱出する唯一のチャンスなのだ。

 「ほら、きっと急な、大事な用なんだよ! 早く出ないと!」

 「ぶうー…」

 静佳は渋々ドアから離れた。

 僕は大急ぎで部屋から飛び出し、玄関に向かって走っていった。

 「は〜い、ドゾー!」

 僕はドアを開けられる状態にした。

 すると一人の髪の長い女の子が飛び込んできた。透明感のあるフチなし眼鏡をかけた、清楚な顔立ちの美少女だった。

 丸っこい顔、サラサラで背中まで伸びている黒髪、フレームのない清楚なメガネ、白い半袖のブラウスにソフトジーンズ姿だった。

 「君は…望月…望月直緒子ちゃん!?」

 もちづきなおこ。小学校3年生の時まで近所に住んでいて、突然父親の仕事の関係で北海道に引っ越してしまった幼なじみだ。

 「神谷君、お久しぶり、です。」

 「うっわー、なつかしいねえ。久しぶり! すぐに分かったよ! 成長したけど、面影が断然残ってる。ま、ま、どうぞ! 上がってよ! ちょっと今両親はいないけど、せっかくきてくれたんだから! …はっ!」

 あまりに突然の訪問者に懐かしがってしまい、とっても大切なことを一瞬忘れてしまっていた。

 家にはあの朝野静佳がいるのである。しかもキャミソールにパンテーなのである。ヤバイのである。修羅場なのである。そんなところに昔から清純だった直緒子ちゃんが来たのである。いよいよヤバイのである。絶望的なのである。

 うっわ、どうしよう!

 「あっ、あわわ! そっ、その前に、ちょっ、ちょっ、ッと、待っててくれないかな。今家がごちゃごちゃで取り込んでて。かたづけるんで。」

 「ううん、いいよ、気にしなくても。神谷君の家だもん、どんな状態になってても私、平気だよ? あっ、あのっ、神谷君の家が汚いのが当たり前とかそういうんじゃなくって、そのっ、神谷君の家だったらたとえどんな状態でも受け入れるってことですから。ご、ごめんなさい、ヘンな勘違いさせてしまいました。」

 直緒子ちゃんはおろおろしている。かわいいなあ。同い年で、同じ学校に通って、一緒にお風呂に入ったりもして、一緒に遊んだ仲だった。

 僕が男の子の遊びをしている時は、彼女は物陰からじっと見ているだけで参加しなかったっけ。暴れるのとかそういうのが、昔からどうも苦手で、おっとりしておとなしい女の子だったから、一緒に混ざろうとはしなかったのだろう。

 でもその一方で、僕の方が彼女の遊びやごっこにつきあったりしていることも多く、二人だけで遊んだりしたこともある。

 そのため僕は、かくれんぼや追いかけっこやサッカーの他に、なぜかあやとりやリリアンが得意だったりする。昼寝は得意ではないぞ。全部彼女、直緒子ちゃんが教えてくれたものだった。

 今から思うと、お医者さんごっこやままごとで夜の夫婦ごっことか、かなりきわどいこともやっていたような気がする。お風呂に入った時とか夏の昼間の水風呂で、裸で抱き合った(その時はあまり性的な意味を意識はしていなかったけど)こともあったっけ。今から思うと、よく大ごとにならなかったよなあ。その前に彼女が北海道に引っ越したということなのかも知れないけど。

 とにかく、そのころ仲の良かった幼なじみが立派に成長して、僕の家に来てくれたのだ。恥ずかしい親戚の姿を見られるわけにはいかない。何とかして強引な静佳ちゃんをどうにかしないと!

 …いささかもピンチは乗り越えられていなかった。

 とりあえず直緒子ちゃんを居間とかに通して、お茶でも飲んでいてもらっている間に、静佳の方をつまみ出すか。

 「あの…神谷君?」

 「あう! とッ、とにかく! 居間とかで待っててくれるかな。」

 「違うの。私が北海道から来たのは、ね…」

 「えっ?」

 「その…」

 「?」

 直緒子は顔を真っ赤にしたままうつむいて、時々チラチラと勇気を振り絞るように僕を上目遣いに見る。

 「わっ、わたしっ! あなたに会いたくて、一人で神谷君の家に来ました! お願いです、私をここに住まわせてください! 結婚してください!」

 「ええー!」

 「好きです! 好きでたまらないんです! 小学校の時に別れてからずっと神谷君のことが頭から離れなかったの! やっぱり自分の気持ちは抑えられません! 結婚してくださいっ!」

 「なっ…!!」

 「あっ、私の両親の同意も得てます。あと、神谷君の両親の同意メモも持ってます!」

 血だらけの同意書が彼女のポケットから出てくる。

 「お前もかーーーー!!!!」

 てめいら揃いも揃ってウチのオトンオカンになにさらしとんじゃ。

 「あっ、これ見てください!」

 直緒子は別のポケットから一枚の写真を撮りだした。そこには豆柴の子犬が写っていた。

 「この子は、北海道で飼っていた遠山左衛門尉景元太郎です。」

 「…間違いなく名前負けだぞ。」

 「かわいいですか?」

 「まぁ…な。」

 「じゃあ私と結婚してください!」

 「なんでそうなる!?」

 「この子は私の嫁入り道具です。この子が気に入ったのなら私と結婚してください。」

 「頼むから帰ってくれませんか。」

 北海道がキミを待っているぞ。

 「わっ、私だって覚悟してきたんですぅ! いまさら帰れませんっ!」

 「そんなこと言っても。僕の都合とか完全無視ですよね。」

 「そんなことないですう! …これなら神谷君の都合になりますよねっ?」

 そう言うと直緒子ちゃんは突然、上着をするりと脱ぎ捨てた。はじめからブラをつけていないため、Bカップの控えめなオッパイがあらわになった。

 「なっ、何を…!?」

 「私を好きになってください。私を抱いてください。そうしたら妊娠するから、結婚してください。」

 もう中出し前提ですかそうですか。

 「昔は私とお医者さんごっことかしたじゃないですか。」

 「う゛…」

 「成長した私を触ってください。なまの手で診察してくださいっ!」

 「あわわ・・・」

 「それにおままごとで夜のお父さんとお母さんごっことかしたじゃないですか。」

 「もうやめて…なぜそのような黒歴史をさらけ出すのですか嫌がらせですかコノヤロー」

 本当に泣きそうである。

 「あとはお風呂も一緒に入って、水風呂もやって、裸で抱き合いましたよね? あのとき幼かった神谷君はなんにも考えていなかったかも知れないけど、私はドキドキしてたんですよ? お風呂の中で濡れたんですよ? だからもう一度抱いてください。夫婦ごっこじゃなくて本当に夫婦としてセックスしてください。裸で抱き合うだけじゃなくて本当に入れてください!」

 ここが高層マンションだったら間違いなく飛び降りていた。これはどんな羞恥プレイですか。

 上半身裸の清純美少女がじりじり迫ってくる。僕は廊下を後ずさりしていった。

 ウブな美少女の風貌と正確とは裏腹に、覚悟を決めて暴走した女の子の本気の迫りに、僕はたじたじだった。可憐な顔立ちと言葉遣いに対して、あられもない上半身と女の体を武器に迫ってくる大胆さが、一種のギャップとなって直緒子ちゃんの魅力を30倍以上に仕立て上げていた。

 ついふらふらと引き寄せられて抱き締めてやりたい衝動に駆られてしまう。

 うう…これじゃあ静佳と一緒じゃないか。

 僕は何とか理性を保ちつつ、上がり込んで廊下をじりじりと迫ってくる美少女への劣情と戦いながら、どんどん後ずさっていった。

 若い娘のスベスベのみずみずしい上半身が、まるごと僕の目の前に差し出されている。巨乳ではないが形のいいふくらみが僕に喰らいつこうとしてツンと上を向いているばかりでなく、かわいらしい乳首が成長途上で僕に摘まれたいと、淫靡なつぼみとなって迫り続けていた。脇の下も腕もお腹も背中も露出され、僕の肌細胞と融合してしまいそうなぷるんとした肌触りでひっつきそうなくらい近づいてきていた。

 このままでは一難去ってまた一難、今度は直緒子ちゃんの誘惑に負けて彼女のズボンをはぎ取り、劣情の赴くままに射精して、やっぱりこれを口実に結婚させられるに違いない。家に犬が一匹増えることになる。

 たいへんなピンチである。

 「ねえ、さっきから何してんの?」

 廊下から年上の強引娘が出てきた。

 ああ、最悪の展開に。

 「あっ!」「ああっ!」

 美少女二人が鉢合わせになってしまった。

 廊下の片隅で、僕の前後を挟み込むようにして、静佳と直緒子が向かい合っている。前後を塞がれてしまった形だ。

 片方はキャミソールにパンツ一丁。もう片方は上半身裸。両方ともあられもない格好で、顔を上気させて暴走している。お互いに相手のしていることが丸わかりだった。

 「ちょっと! なによあんた! 達郎君は私が先に手をつけたんだからね!」静佳が息巻く。

 「なにいってるんですかっ。そっちこそ私と神谷君の幼なじみ結婚を邪魔する横やり泥棒猫じゃないですか!」直緒子も負けていない。

 「なんだとー!」

 「犬はいい。犬は忠実だ。犬こそこの世でもっとも尊いのだ! それに引き替え、泥棒猫の何と下品で見苦しいことよ!」

 「このガキー。言わせておけば! アンタこそが泥棒猫じゃないのよ!」

 「はあ!? 意味わかんないんですけど!」

 「達郎が赤ちゃんの時から私とつきあいがあったんだから! アンタなんてせいぜい幼稚園くらいからのつきあいじゃない! 私の方が先に見つけたんだからねっ!」

 「関係ないですうー! 私と結婚の約束もしたし!」

 「私だってしたよ!」

 あのー…かかなり嘘とか混じってんですけど。婚約なんてして…ない…かも…。

 …いや。子供ながら勢いで言ってしまったかも知れないけど記憶にないし。言ったとしても幼い頃だから…ねえ。

 「それにもう私たち裸で抱き合ってるし!」

 「あああああ!」もうやめてください。舌を噛んで死んでしまいそうです。なぜ幼い頃の恥ずかしい思い出を親戚の姉ちゃんや幼なじみのおにゃのこに暴露されなければならないのですか。

 「むうううう…!」「うぬぬぬぬぬ…!」

 まさに一触即発の状態であった。僕を取り合って美少女が争うというのは密やかな願望だったかも知れないが、実際に目の当たりにしてみると、もう針のムシロ以外の何物でもないのだった。

 そうだ。今のウチに逃げてしまおう。僕はそろーりそろーりと、女の子たちがバチバチと火花を散らしてにらみ合っている視界から外れて、逃げだそうとしていた。

 ぴんぽ〜〜ん!

 「げっ!」

 最悪のタイミングで呼び鈴が鳴ってしまった。

 「あっ! どこへ逃げるんですか神谷君!」

 「ご主人が逃げてどうするのよ!」

 「そうですよ! 神谷君が決めてくれないからこんなことになったんじゃないですか!」

 「さあ、私とこの偽善小娘とどっちを選ぶの? 達郎君!」

 「どっちも選びませ…」

 「はああ!?」

 「はうあ! すいません…」

 ぴんぽ〜〜ん! ぴんぽ〜〜ん!

 どんどんどんどんどんどん!

 乱暴にドアが叩かれる。

 「たのもーー! あけろーー!」

 女の人の声が響き渡る。

 がちゃ。

 「あ…なんだあいてんじゃん。」

 勝手に入ってきた女の人は、あの穗積みずほ先生だった。

 「こら神谷君。先生に告白しておいて、私をほったらかして他の小娘と遊んでいるなんて、ナマイキじゃないか。」

 あわわ。また余計にややこしいのが登場したものだ。

 「なんと!」「告白ですって!?」「達郎君、こんな年上がいいのか!」「いや…その…」

 「そうよねえ。先生のこと好きだっていってくれたんだものねえ。事実よ。」

 「神谷君…ひどい。」「たつろお〜てめえ〜」

 「あわわ…」もうだめだ…

 「まぁまぁ。ただ闇雲に争っても神谷君が困惑するだけよ。選んで欲しいのなら、もっとしっかりメロメロにして上げないと…カラダで、ね?」

 「…。」

 ものっそいイヤな予感がだんだん的中し始めて来た。何とか逃げられないものか。

 「…それもそうね。」始めに静佳が落ち着きを取り戻した。

 「じゃあ、誰の体が一番気持ちいいか、神谷君に聞いてみましょう。」直緒子がこれに同意する。

 「そうそう、争わずに、彼を落とした女が勝ちよ。」

 「あわわ…」やっぱりもうだめだ…

 「そういうことなら…」

 はじめに動いたのは静佳姉さんだった。

 彼女は僕の右側に回り、僕の右手首をしっかり握りしめた。やわらかい手がむにっと吸いついてくる。

 「ほら。私の足を感じてちょうだい。」静佳は僕の右手を生足で挟み込むと、むっちりふともも内股の中にすっぽりと、僕の右手首から先を包み込んでしまった。

 「あうう…やわらかくてツルツルだ…」

 静佳の内股はムニムニしていながら、肌のきめがとても細かく、吸いつくようにシコシコしていて、白くてみずみずしい。僕の手全体を包み込む生足の感触は、手首をつかむ彼女の両手の感触とともに、やわらかい圧迫と甘美な心地よさ、そして彼女の愛と体温をしっかりと伝えてくる。

 あと少し手を伸ばせば、彼女のパンティにも届いてしまう位置に手があてがわれていた。その生足の魅力に、僕はどんどん引き寄せられ、このまま彼女の足を触っていたい、もっと全身で触りたい、すらりと美しい女の足をいつまでも堪能していたいという劣情が全身を駆けめぐった。

 「あん! 私も触ってえ!」

 直緒子も負けてはいなかった。僕の左側に来て、左手首をがっしり掴む。彼女の手も滑らかでやわらかく、心臓をいやがおうにも高鳴らせた。

 直緒子は僕の手をむにっと自分の乳房にあてがい、グッと強くめり込ませてきた。

 「あうう! …やわらかい…」

 「巨乳じゃなくても、Bカップでも、こんなにやわらかいんですよ? ね。気持ちいいですか神谷君…?」

 僕の手のひらは、彼女の控えめな片乳をすっぽり包み込みながら、どこまでも指が奥深くへとめり込んでしまいそうなくらいやわらかい弾力を手のひらに跳ね返してくる。

 肌のきめもとても細かく、静佳のふとももに決して負けない吸いつく肌触りが僕を魅了した。

 彼女は僕の手首をぐりぐり動かして、半ば強制的にオッパイを揉ませてくる。むっちり手のひらに絡み付いてくる胸の肌触りと、指の間からさえこぼれてくるやわらかい肉の感触が、どんどん僕をとろけさせた。このまま彼女の胸を揉み続けたい、顔を埋めたい、そんな劣情が全身を駆けめぐる。

 こうして僕は、自宅の廊下で、二人の美少女に両手を固められ、片方は生足に、もう片方は乳房に、強制的にあてがわれてしまった。両手は拡げられ、僕は身動きが取れなくなってしまう。二人の美少女の寄り添うような息づかいが僕に届いて、甘い香りに包まれてしまう。

 ペニスはすでに、ズボンの中ではちきれそうになってしまっている。

 「さあ。ここで先生の出番ね。」

 みずほ先生は、僕の前に立ってじっと見つめると、いきなり僕の唇を奪った。これで完全に脱力したところへ、両側の美少女の若い肌が襲いかかってくる。両手を固定されたまま、両側からふわりと密着してきた。

 先生は僕の前でひざまずくと、ついにズボンを脱がしにかかった。

 「あっ! 先生、だめ…」

 「何言ってるの。こんなに大きくして苦しいクセに。…いま楽にしてあげるね?」

 抵抗しようにも、両手は女の子二人に完全に固定され、先生の手を振り払うことができない。せいぜい腰を引くことくらいしかできないが、彼女の両手は奥へと伸び、容赦なくズボンをズリ降ろしてしまう。足首まで下げられたズボンは、完全に脱がせるよりもかえって足かせとなる。パンツも同様に両足首を固定してしまった。

 ペニスが先生の前にむき出しになる。

 「私には10代の若い肌はないけど、20代の大人の体とテクニックがあるわ。」そう言うと先生は、いきり立ったペニスをくわえ込み、優しく根本から先端まで舐め上げ始めた。

 「あう!」強烈なくすぐったさが股間に広がり、下半身がとろけそうになる。くすぐったい舌の動きと、やわらかい唇のしごきにさらされ、ペニスは先生の口の中で快楽におどり続ける。

 「だめ…だよぉ…」僕は強く腰を引いて先生の口から逃れようとしたが、みずほ先生は奥へ奥へと頭部をねじ込み、ついに僕のお尻が廊下の壁にぶつかる。これ以上後ろに引けないところまで追いつめておいて、みずほ先生はこれでもかと頭部を激しく前後させてきた。

 根本をチロチロと舐め回したかと思うと、次の瞬間にはカリや亀頭をやわらかい舌先がこねくり回す。それでいてぷるんとした唇はすばやく棒部分をしごき上げ、ペニスの敏感な部分すべてをまんべんなく責め上げてきた。

 先生の両手は玉袋やお尻の穴にあてがわれ、撫でさすったりくすぐったりしてかわいがってくれる。

 僕は静佳の股と直緒子の胸をまさぐりながら、先生の口でどんどん高められていった。

 「ねえ! 私の足ももっと感じてよぉ!」「アン、オッパイももっと激しくぅ!」「あうう…」両手とペニスを三者三様に責められ、僕は何が何だかわけが分からないまま忙しく腰と手を動かし続ける。

 「やっぱり私の胸が一番気持ちいいんだよね? 触り心地とか若さとか。」「ううん、私のふとももが感じるんでしょう? ツルツルで若くてやわらかいでしょう?」「何言ってんの。先生の口が一番気持ちいいよね。テクニックは随一よ。」

 「ちょっと、おちんちんを独り占めなんてずるいよお!」「そうですよ。だいたいテクニックなんていっても、若さには敵わないんだから。」「あら。若いだけなんて。大人の色気と技術の前には子供同然よ。」先生はフェラチオを続けながら腹話術のように器用にしゃべり続ける。

 「ああっ、せんせえ…」口を離して舌でカリの敏感なとことだけをピチャピチャと舐めてくるので、僕は強く腰を引いて感極まった。触られていないのにお尻の奥がジンジンする。このままだと射精してしまう。

 「何よ! 年増の口なんかに出したら承知しないんだから!」静佳が僕の手をぐいぐいオンナ表面に押しつけこすりあげる。僕は思わず射精を踏みとどまり、彼女のオンナをパンティ越しにくすぐってあげた。

 「違うの! 神谷君は私と結婚するのお!」胸の谷間に僕の腕を器用に挟み込んで、指の一本一本を丁寧に舐めてくる直緒子。神経が集中する手をこんなに気持ちよくされたのは初めてだ。直緒子ちゃんにどんどん心奪われていく。

 「ほらほら。ケンカはだめよ。みんなで仲良く、彼をいい気持ちにさせてあげましょう。終わってから、誰が一番気持ちよかったか聞いたらいいじゃない。」

 「おばちゃんは黙ってて! 私みたいなロリロリな若い同い年こそが彼にふさわしいんだから!」「いーい? 達郎! よく考えなさいよ! 今は26歳の妖艶な大人の女でも、結婚した時の年の差は9歳。あなたが21歳になったらこのオバンは30歳。あなたが35歳になったら44歳になるんだよ! それでもいいの!? やっぱり年上は私みたいな二歳くらい上でしっかりかわいがってくれる女房が一番なのよ!」

 「けんかは・・・だめ・・・おばちゃん・・・怒らない・・・冷静に…みんなで気持ちよく…がまん…がまん・・・オバン…」

 先生の口が止まった。

 「むきゃー! このガキども、言ってはならんことを!」

 先生は口を離し、美少女二人に飛びかかった。

 「なんだよ! 年寄りのヤキモチみっともないよ!」「結婚するのは私だよ!」

 3人がついにとっくみあいのケンカになった。

 「ぐあ!」僕は誰かに脇腹を蹴られ、もんどり打って廊下に投げ出された。

 静佳がみずほの髪をひっぱり、みずほが静佳の頬をつねりながら直緒子の貧乳にケリをどかどか入れていて、直緒子は先生の足にかじりついている。ギャアギャア言いながら、女たちはつかみ合いのケンカをしている。

 「ちょっ…みんな落ち着いて…」

 「うるせー!」

 どきゃ!

 「ぎゃああ!」

 誰かの足が思いっきり顔面を蹴ってきた。鼻血が吹き出す。

 「あうう…」

 だめだ、止められそうにもない。

 そうだ、こんな時は。

 僕は3人に気づかれないようにそろりそろりと玄関に向かう。その間にズリ降ろされたズボンを直し、一気に玄関のドアを開け、あとは後ろも振り返らず一目散に逃げ出す。

 あとは全力疾走だ。僕は家を飛び出してひたすら公園に向けて走り続けた。

 なんなんだ。一体この状況はなんなんだー!

 押しかけ女房が3人。最後は大げんかになってしまった。ま、そのおかげで逃げることはできたが、わけが分からん。

 やっとの思いで公園にたどり着く。トイレの裏のハッチ…そこにフザケンジャーの本部がある。

 「!」

 だが、公園の裏には何もなかった。おかしい。僕が近づけばハッチがあらわれ、そこから下に降りることができるはずなんだけど。

 ま、まさか。

 「ナメてる戦隊フザケンジャー!」僕は蒸着してみた。

 …。

 何も起こらない。

 そうか、これはカリギューラが見せる淫夢なのだ。

 …てか気づくの遅すぎ! 明らかに異常なシチュだったのになんで気づかなかったんだ自分!

 …もっとも、自分で「これは夢だ」と気づく明晰夢にするのは、通常ほとんど困難だけどね。たいていの場合夢だと気づかないで物語が進んでしまう。やむを得ないのか。

 とにかく、これが夢であるのなら、早く脱出しなければならない。女の色香や快楽に負けて射精してしまえば、夢精が起こり、さらにみだらな呪いは深くなり、フザケンジャーレッドとしても弱体化してしまう。何とかして夢から覚めなければ。

 夢の中では、ポッティの力によって、快楽に対する耐性が相当に高まっている。さっきも3人に囲まれて激しくフェラチオされたのに、あっという間に出してしまうということがなかった。

 ただ、そうは言っても、やはり快楽にほだされ、魅了され、心が折れてしまえば、夢精に至らしめられてしまうのも確実だ。何とかして、射精する前に目覚める方法を探らなければならない。

 家に帰れば求婚娘たちに捕まってしまう。かといってその辺をうろついていたり、この場所にしばらくとどまっていたりすれば、別のエッチなシチュエーションに巻き込まれてしまうだろう。一体どうすればいいんだ。

 どこかに隠れているしかない。

 淫夢は濃さも重要だが、時間も大切だ。夢を見る回数を重ねるごとに、淫夢の内容は過激になっていくが、夢精を重ねれば淫夢の時間が長くなっていく。両方組み合わせれば、天国の度合いが強くなり、なおかつ長時間におよんでいくことになるのだ。

 とにかく今はどこかに隠れて、時間が過ぎるのを待つしかない。

 隠れる場所…やはり公園のトイレか。

 僕は誰にも見つからないようにトイレに駆け込み、個室に向かう。ッと、その前に掃除用のモップを持って。個室の上が空いているので、たとえ鍵を閉めても誰かがよじ登って個室に入ってくる可能性があるから、このモップの棒でつついて、入ってこられないようにするんだ。

 個室に急いで駆け込むと、中に人がいた。

 「!」僕は一瞬たじろいだが、そこにいたのは黒い詰め襟を身にまとった中学生くらいの男の子だった。

 「はっ、早く締めて!」甲高い声で男の子は僕を促す。彼も女たちの魔の手からここへ逃れてきた身だろうか。とにかく、ドアを閉めて鍵をかけた。

 「…ふう。助かった。」男の子はため息をついて僕を見据えた。

 「あの…」首筋まで伸ばしたさらさらの髪。男の子ならぬ細くて華奢な体つき。眼がパッチリして顔立ちも整っている。間違いなく美少年タイプだ。

 「危ないところだったです。ボクもヘンなお姉さんに追われて、ここまで逃げてきたんです。」

 やっぱりそうか。

 「ボク、近くの中学に通う小泉あきらっていいます。」「あ…僕は神谷達郎。高校生だ。」「じゃあ、センパイですね。」「はっはは。」

 「とにかく、このおかしな夢から覚めるまで、ここでじっとしていましょう。」「そう…だな。」

 ん? なんだか奇妙だぞ。これは僕が見ている夢であって、小泉君が見ているのではない。あるいは淫夢というのは、男たちで共有するものなのだろうか。

 もう一度あきら君を見る。華奢な体つき、すらりとした男子の制服。どこからどう見ても男の子だ。とくに怪しいところもない。年上の女性に狙われやすそうないたいけな美少年である。

 「ねえセンパイ。そのトイレの鍵って、本当に大丈夫なんでしょうね?」あきら君が心配そうに覗き込む。

 「しっ。あんまりしゃべらない方がいい。外では女たちが僕たちを捜し回っているはずだ。できるだけ見つからないようにして、おとなしく隠れていよう。」

 「ボク、鍵を補強する器具を持ってるんです。」あきら君はポケットからスプレーを取り出すと、鍵のところにシューッと吹き付けた。泡状になった透明のカタマリはすぐに固まり、がっちりと鍵を固定して、内川からも外側からも外せなくなった。

 「ちょっ…これじゃあ僕たちも出られなくなったじゃんか!」

 「…くすくす、大丈夫ですよセンパイ。ボクたち、ここから出る必要なんてありませんから。」

 「あ、そうか、夢なんだったっけ。」

 「ううん。センパイはボクでイクんです。」

 「えっ…今なんて?」

 あきら君は学ランを脱ぎ捨てた。シャツも着ておらず、するんとした細い上半身があらわになる。

 「なっ、何をして…」

 「ボクを見ても何とも思いませんか? センパイ…」

 そんなことを言われても。男の上半身なんか見ても、何も感じるわけがない。

 でもさすがに少年だけあって、肌がとてもキレイだ。普通の男子に比べれば少し乳輪が大きめかな。胸も少しふくらんでいる感じがする。

 …え…

 「クスクス。下も脱いじゃいますよ?」

 制服のズボンを脱いだあきら君は、下着も着けていなかった。そしてそこにあらわになったのは、中学生の未発達の包茎ペニス…ではなく、つるんとした毛の生えていないワレメと、やわらかくてシコシコした太ももだった。

 ま、まさか!

 「お、お前…男じゃ…」

 「いつボクが男だって言いましたっけ?」「だって、女に追われているって。」「ええ。ボーイッシュな女の子が大好きなお姉さんに追いかけられていましたよ?」「そっ、そんな…」

 慌てて後ろを振り返る。個室のドアは完全に固められてしまい、脱出できなくなっている。閉じ込められたまま、裸の美少女が目の前にいる!

 「男の子のふりをして僕をだましたのか。」「やだなあ、だましたなんて。センパイが勝手に勘違いしたんじゃあないですか。学ランを着ていれば男だ、って限らないですよ?」「うう…来るな…」

 僕はモップの棒を構え、あきら君、いや、あきらちゃんが迫ってくるのを防いだ。

 「忘れたんですかセンパイ。ここはあなたの夢、いいえ、正確にはカリギューラ女王様の世界の片鱗なのですよ?」

 次の瞬間、モップが消え、僕の服が完全に消えてしまった。

 「ああっ!」

 僕はガチャガチャと乱暴に個室のドアをこじ開けようとした。だが、鍵が完全に固められてしまっていて、どうしてもあけることができない。

 「セーンパイっ!」「あふ!」

 あきらが後ろから抱きついてくる。女の子のきめの細かい肌が僕の背中やお尻にまとわりついた。そして後ろから両手を伸ばし、ペニスを一心不乱にしごいてきた。

 「や! やめっ!」僕は身をよじらせ、彼女の両手を引き剥がすと、個室の反対側に逃れた。

 「クスクス。どこへ逃れようって言うんですか。ボクの体からは逃げられませんよ?」ふたたびあきらちゃんが迫ってくる。たしかに閉じ込められた個室内部では、逃げ場などどこにもない。

 「あきらめちゃいなよセンパイ。ボクの体で出してください。」「こっ、断る!」「クスクス。女の体は、胸とか腰のくびれだけが魅力じゃあないんですよ。ほら、肌のきめは細かいし生足はスベスベだし、胸がぺったんこでも、キレイな体でしょう?」「くっ、来るな!」「いいんだよセンパイ。ボクに抱きついても?」「ゆ、誘惑なんかに負けるものか。」

 あきらちゃんはクスクス笑いながら、僕の乳首やペニスに手を伸ばす。乳首をくすぐり、また、亀頭を撫でさすり揉みしだき、じわじわと女の子の手でエッチないたずらを仕掛けてきた。

 「ほら。ボクの体とかアソコのワレメを見て、僕の手でくすぐられてたら、そんなに大きくなっちゃったよ?」

 女の子の手のいたずらな指先にくすぐられ、また、彼女のキレイな細い体や生足やオンナ表面を目の当たりにして、不覚にもペニスはくすぐったく反応してしまった。

 「えい☆ えい☆」あきらは執拗に僕の乳首を指先でくすぐり、僕に振り払われたらその手をペニスに持っていってはまた乳首をかわいがった。くすぐられるたびに僕は身をよじり、股間と胸を矢継ぎ早に女の指で責められて、徐々に徐々に精力を消費していった。

 逃げても突き放しても、ここは狭い個室。あっという間に追いつめられ、いけない指先が執拗にかわいがり続けている。

 だんだんと振り払う僕の手に力が入らなくなってきた。振り払っても振り払っても、あきらちゃんの両手は乳首や脇の下や玉袋や棒や亀頭にしつこくまとわりつき、執拗にくすぐり続けている。

 ついに僕は根負けし、脱力してしまう。膝が笑って、足がガクガク震える、もう、ちょっとした衝撃だけで地べたにへたり込んでしまいそうだった。

 あきらは僕を導き、洋式の便座に腰掛けさせられる。

 「じゃあ、ボーイッシュ美少女の生足で出させてあげるね☆」

 あきらは僕の上に座った。足を開いてペニスを内股に挟み込むと、きゅっと締め上げてきた。

 「ああっ、ふとももやわらかい!」シコシコした肌触りがペニスにまとわりつく。それだけではなく、美少女の細い背中が僕の上半身にまとわりつき、甘い髪の匂いが顔面をくすぐってくる。外見は男の子っぽいが、こうして肌を合わせてしまえば、もはや立派な女であった。男の精を搾り取る魔力をその四肢に秘めている。

 細い彼女の両足の間から、亀頭だけがぴょこっと顔を出した。

 「クスクス。先っぽくすぐってあげるね?」「や、やめ…」

 あきらは両手の指先を駆使して、亀頭全体をすばやくくすぐってきた! やわらかいタッチでありながら、感じやすいところにしっかりと指先を這わせ、とんでもない早さでくすぐり続けている。

 しかも、彼女の生足がペニスを包んで、スリスリと小刻みに動かしているために、棒もむっちりしたふともも攻撃でしごきたてられているのである。

 「くすっ。このままボクの足の間で射精してもいいよ? センパイ…」

 「あああ〜…」

 こっ、ここはガマンだ! もう少し経てば、夢から覚める。それまでの辛抱だ。

 だが、亀頭全体を這い回るあきらちゃんのくすぐったい指先の攻撃は、僕を射精まで追いつめるに十分な力を持っていた。

 さらに、時折彼女は左右の足をすばやく動かして、ペニス全体をしごきながらやわらかい内股で激しく揉みしだいてくる。そのたびに僕はイキそうになって、射精の脈打ちを根性で押さえつけるしかなかった。

 「ガマンなんてしなくていいんだよ? ドバッと出して☆」亀頭を手のひらで撫でさすりながら、あきらはぐいぐい背中を僕の上半身に押しつけてくる。

 限界を迎えては、夢だからと踏ん張って律動を奥へと押さえ込む。これのくり返しだった。

 「ま、まけないぞ・・・」僕は荒い息づかいで、自分に言い聞かせた。

 ぐちょ。

 「ああ!」

 ペニス全体が熱い肉に包まれた。あきらがちょっとだけ体をずらし、ペニスを便座座位の体勢で飲み込んでしまったのである。

 「ボクの女の子の部分でしごいてあげる!」

 あきらは激しく体全体を上下させ、万力のような少女の締め付けで執拗にペニスをしごいていった。やわらかくて熱くて直情的な筒の感触が一気にペニスを沸点に達せしめる。

 「ほれほれ。まだイかないんですかセンパイ!」ぐしょぐしょ音を立てながらオンナがペニスをむさぼり続けている。かわいらしいお尻がペッタンペッタンと僕のふとももにつぶれては名残惜しそうに離れていった。

 イキそうになっていたのを押さえつける、これを何度も繰り返してきたため、今度こそ抑えきれなかった。

 「あ・・・きら・・・」僕はぎゅっとボーイッシュ美少女を後ろから抱き締めた。これに答えるように、彼女はぎゅううっと膣を締め上げ、最後の仕上げに入った。

 「あう!」あきらの頭部に顎を乗せ、強く抱きついたまま、彼女のオンナの中に大量の精液をぶちまけた! 僕が出している間中、彼女は腰を前後左右になまめかしく揺り動かし、ペニスを揉みしだいて、最後の一滴まで絞り出してきた。

 「あはっ、いっぱい出したねセンパイ☆ そんなにこの男の子みたいな体が気に入ったの?」「うう…」

 まずい、淫夢で射精してしまった。ということは、現実世界では夢精してしまっているということだ。

 「気持ちよかったでしょ、センパイ。もうこんな戦いはやめて、ボクたちと一緒に快楽に満ちあふれた世界を作りましょう?」

 「そっ・・・それだけは・・・」

 「ふうん。まだ強情なんだ。でも、これからも毎日、もっともっとエッチな甘い夢を見せてあげる。骨抜きになって、現実世界でも気持ちよくなって、いっぱい女の体にまみれさせてあげるからね。そうしたらきっと、考えも変わるはず。くすくす・・・」

 周囲の風景が白くなっていく。僕が射精してしまったためにゲームオーバー。このまま夢から覚めるのだ。

 ………。

 ……。

 …。

 はっ!

 僕は夢から覚めた。

 「ああ〜…」下着がぐっしょり濡れている。思った通り僕は敗北し、夢精してしまっていた。

 たしかに気持ちよかったけど、その分だけ喪失感も大きい。これでフザケンジャーレッドとしてのパワーも半減してしまった。ここで戦闘にかり出されれば、あっという間に組み伏せられて射精させられてしまうだろう。

 夢の中ではいつでも夏休み気分♪ …って、現実には夏休みではないが、事情あって登校フリー状態だ。あまり状況は変わってないのかも。

 僕は着替えを済ませ、佐伯さんに通信連絡した。

佐伯:「神谷君か。おはよう。」

僕:「おはようございます…」

佐伯:「なんだ。落ち込んだ声だな。今朝は耐えられなかったのか。」

僕:「はい…すみません。」

佐伯:「気にするな。魔族の淫夢なのだ。いかにポッティのバリアがあっても、常人では耐えきれないものばかりである。それも、この先どんどん内容が過激になっていくし、夢精すればそれだけ深みにはまって時間も長くなり、なかなか抜け出せなくなる。むしろ俺たちは、夢精を何としても避けるというだけでなく、たとえ夢精しても弱体化しないで戦える方法を探らなければならないのかもしれんな。」

僕:「…。」

佐伯:「とにかく、すぐにフザケンジャー指令本部まで来るんだ。今日はトレーニングにしよう。」

僕:「分かりました。」

 僕は公園裏の本部まで直行した。

僕:「おはようございます。」

ポッティ:「ふむ。元気を出しなさい。あまり気にせんでも良い。」

僕:「ありがとうございます。」

ポッティ:「もちろん、引き続き淫夢には抗い続けなければならんが、その一方で、現実世界での弱体化を何とかしなければならんだろう。」

僕:「…。」

佐伯:「応急処置ではあるが、フザケンジャーのレッドスーツに細工は施してある。」

僕:「あー、静電気みたいのが走るっていう…」

佐伯:「強化電流だ。思った以上にきついはずだぞ。体中がしばらくバチバチとはじけることになるからな。それによって性感神経をマヒさせ、少なくとも淫夢による弱体化くらいは緩和できる。ま、痛覚を刺激して他の感覚をごまかすくらいの処置だが。」

ポッティ:「それとて万全ではない。敵も魔力を駆使して痛覚をマヒさせて快感に変えるくらいはできる。それさえもごまかすほどの痛覚刺激となれば、麻酔なしで重度の虫歯を治療したうえ歯を抜きまくるような痛みを全身に与えなければならん。死ぬぞ。」

僕:「ひええ…」

佐伯:「その方法には限度があるってことだ。何か別の対策を打ち出さなければならないだろう。そこでだ。」

 並木さんがガラガラと大きな機械を運んできた。

僕:「…なんですかこれは?」

佐伯:「まだ試作段階だが、夢精による弱体化を回復させる装置だ。」

 横に置いたカプセルの中に寝そべるところがある。それだけのシンプルな装置だ。

僕:「要するに、ここに横になればいいんですか?」

佐伯:「ああ。さっそくやってみてくれるか?」

僕:「分かりました。」

 僕は全裸になってからカプセルの蓋を開け、その中に寝そべった。並木さんが僕の手足、胴体などを固定する。

 きっと電流とか、痛いのが流れてくるんだ。でも、それは覚悟の上である。夢精してしまった反省も込めて、痛みには耐えよう。

佐伯:「よし。艾を用意しろ。」

僕:「…もぐさぁ!!?」

 並木さんが艾を僕のヘソ下、丹田のあたりにどっさり置いた。重さを感じるほどで、直径10センチはあるだろう。

僕:「ちょっ、なんですかこれっ!」

佐伯:「お灸だが?」

僕:「なんでお灸なんか…」

佐伯:「点火。」

並木:「了解。」

 並木さんが無表情で火をつける。カプセルが閉じられた。内部に煙が充満する。

僕:「げほっ! けほっ! くっ、苦し…並木さ…助け…げほごほお!」

佐伯:「そうやって丹田の経絡を刺激するとともに、特殊な艾の煙で体の中から淫気の毒素を追い出すのだ。」

僕:「ぐああ! 熱い! くるしい! 息が… 熱が… ぐはあああ!」

佐伯:「体内のすべての空気を残らず吐き出せ。そのあとわき起こる自然な呼吸に身を任せるのだ。」

僕:「そんなこと言ったって…げほげほおお!」

佐伯:「その呼吸法が完全にマスターできれば、煙など気にならないし、さらには一秒間に10回呼吸できたり10分息を吸い続けて10分吐き続けたりできるぞ。」

僕:「やめてください師範代!」泣きそうである。てかすでに涙声なんですけど。でも誰も助けてくれない。

佐伯:「言ったはずだ。修行のメニューに瞑想を入れるって。」

僕:「ええっ! これがぁ? がはっぐはっ!」

佐伯:「さあ、呼吸を佐伯仙術のものにしつつ深いトランス状態に入って悟りを開き、無の境地に達するのだ!」

僕:「ムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリ!!!!!!!!!」

 僕の懇願は全員によって完全に黙殺天使ドクロさまであった。

 そんなこんなで30分。何とか艾は燃え尽き、僕はお腹に大やけどを負ってやっとカプセルから解放された。

僕:「ぜえ、ぜえ…」

ポッティ:「これで夢精による弱体化は避けられるだろう。だが、淫夢の呪いが深まることまでは抑えることはできぬ。君の精神が悪魔の快楽に方に傾き、セックスの虜となってしまえば、いかにお灸を据えて体を元に戻したところで、精神は完全に悪魔のものとなってしまうだろう。そうなれば、もはやフザケンジャーレッドとなったところでみずから射精し敗北を選ぶことになる。君の精神力次第というわけだ。」

僕:「あうう…もしかして、夢精するたびにこれを?」

佐伯:「ま。それがイヤなら夢精しないこった。」

僕:「うう・・・がんばります。」

佐伯:「じゃあさっそくエロビデオ鑑賞と行くか。」

僕:「はうあ!」

 そう、このあと電流エッチビデオと強制運動と並木さんのタイキックが待っているのだった。

 あとポカポカクイズもある。

 …やるしかなかった。



######

 一方、その頃。

カリギューラ女王:「おおっ! ついに誕生するのか! 新しい怪人が!」

ヘルサたん総統:「ええ。準備が整ったわ。あと1分ほどで、神通力でコーティングされた魔力の注入が終わる。そうすれば、あそこの扉から新しいメカニック怪人の誕生よ!」

カリギューラ女王:「楽しみじゃのう!」

ヘルサたん総統:「ふとももんはレッドに敗北してしまったけど、モノは悪くなかったわ。あとは量産にこぎつけられればいいのだけれど。今はまだムリね。だからこうやって一体ずつ怪人を作っていって、徐々に増やしていくしかない。ま、気長にやりましょ。」

フローリア将軍:「…魔力充填完了しました。」

ヘルサたん総統:「時は満ちた! 出でよ新怪人、名付けてフェラチオ怪人ふぇらちおん!」

怪人:「ふぇららららー!!」

 青い体をした美しい女が扉から全裸で飛び出してきた。

フローリア将軍:「…。」

ヘルサたん総統:「ほら! そこ! 『もーちょっとマシなネーミングと鳴き声にはできないのかしら』とかって思わない!」

フローリア将軍:「いっ、いえ! 滅相もございません! 私は決してそのようなことは…」

ヘルサたん総統:「…まあいいわ。とにかく、ふぇらちおんを人間界に転送し、天国軍団を引き連れて、また一暴れするわよ! まずは地道に男から精を吸い取り続け、淫気を大気に放出していくのだ。」

カリギューラ女王:「そうすれば、ますます男たちは射精しやすくなり、世界を徐々に変えていくことになる。怪人や天国軍団の阻止区も拡大し、全国津々浦々、さらには世界中で、我らが男を襲えるようになるのだ。そうなればもはやフザケンジャーなど恐るるに足りぬ!」

ヘルサたん総統:「さあ、ゆけ、人間界へ! 男たちを舐め尽くせ!」

怪人:「ふぇらららー!」

 怪人は異空間へと消えていった。

カリギューラ女王:「では私はカプセルに入るぞ。」

ヘルサたん総統:「お願いね。今の怪人を作るためには、あなたの神通力の部分がどうしても必要なの。」

カリギューラ女王:「分かっておる。任せておけい!」

 カリギューラ女王はみずからカプセルに入っていった。

フローリア将軍:「…。」

ヘルサたん総統:「決行は明日より。…それまでは退屈ね。あ、カリギューラちゃんにおもしろいマンガとかないかって聞いとけば良かったわ。フローリア将軍、今流行のおもしろいマンガとかって何か知らない? カリギューラ女王の側近なら何か知っているんじゃない?」

フローリア将軍:「パン●ポンクっていう大きなウサギさんのお話がありますが。」

ヘルサたん総統:「…。」

フローリア将軍:「…。」

ヘルサたん総統:「…。」

フローリア将軍:「…。」

 暗転。

######



 夜になった。へろへろにしごかれた僕はポッティに回復してもらい、いよいよ最後の、べえべえの時間(ポカポカクイズ)に突入した。

ポッティ:「いいかね? 2分以内で解くように。午後3時に姉のカナちゃんが妹のチアキちゃんを迎えに、妹の小学校までダッシュで向かいました。チアキちゃんは午後2時45分に小学校を出発しています。さて、二人が出会った瞬間のカナちゃんの走るスピードは時速何キロでしょう?」

 なんじゃそりゃー! 絶対解けないだろそれ! 情報が足りなすぎる。距離だの時間だのが思いっきりはしょられてるぞ!

 …金属バットが僕の頭上でフワフワ浮かんでいる。

 答えるしかないのか。

 ・・・はっ、そうか!

 これは計算問題に見せかけて常識を問う問題なのだ。つまり、カナちゃんとチアキちゃんが出会った瞬間のカナちゃんのスピードに、地球の自転速度を加味すればよいと言うことになる。カナちゃんが走っている間も地球は回っているからね。地球の自転速度は時速に直すととんでもないスピードになる。ダッシュで走ったといっても中学生の女の子の走るスピードは自転速度に比べれば誤差の範囲内だ。よし、攻略できたぞ!

僕:「ふっふふふ…ポッティ。きょうびの男子高校生を甘く見すぎていたようだな。答えはおよそ時速1700キロ! どおだあ!」

 どきゃあ!!

僕:「ひぎゃあああ!!」金属バットがひしゃげた。

ポッティ:「ほっほっほ。甘いのお。地球の公転速度を忘れておる。さらに、太陽系が銀河系内部で回転しておることも、銀河系自体が宇宙空間を移動していることも考慮に入れんとな。」

 うう…う…スケール大きすぎてついて行けない。カナちゃん速すぎ。

ポッティ:「ほれ。次に行くぞ。次は文学史の問題じゃ。『人間失格』を書いたのは」

僕:「太宰治っ!」

 ガコ!

僕:「ぎゃあ!」正解のはずなのに金属バット。

ポッティ:「問題は最後まで聞かんか。『人間失格』を書いたのは太宰治ですが、では『トイレット博士』を書いたのは?」

僕:「えええ〜〜〜!!」

 金属バットが3発お見舞いされた。

カリギューラ女王:「トイレット博士はとりいかずよしじゃ。常識だろ常識。」

 …え?

僕:「今ここに魔王がいなかった?」僕は辺りをきょろきょろと見回す。

ポッティ:「何を言う。殴られすぎておかしくなったか。魔王がこの秘密基地に来るわけがないわい。ほれ。次の問題じゃ。」

僕:「あうう〜…」

 そんなことをしてるうちに夜も更けた。ポカポカクイズだけあって、理不尽な問題にも磨きがかかっている。

ポッティ:「うむ。今日はここまでにしようぞ。」

僕:「あうう…」やっと解放された。

 僕は佐伯さんたちに挨拶を済ませると、ふらふらと本部をあとにした。体は完全にポッティによって回復しているが、やっぱり精神的にきつい。

 精神的な疲れが異様な眠気を誘う。僕は家に帰るなり支度もそこそこに、そそくさとベッドに潜り込んでしまった。

 ………。

 ……。

 …。

 朝になった。

 僕はいそいそと支度をして、制服を着て、学校に行く。

 駅までとぼとぼと歩く。そこから電車に乗って、ほんにぁら産業前の駅で乗り換えて。そのまま満員電車にゆられて学校にたどり着くのがいつものルートだ。

 …。

 駅に着いた。

 僕以外に誰もいない。

 おかしいな。いつもならすでにサラリーマンやらなんやらで、人がごった返しているのに。小さな駅ではあるが、この朝の時間帯ならそこそこに人がいるのだが。何かあったのかな。

 そうこうしているうちに電車が到着する。

 僕はそこに乗り込んだ。

 車内もがらんとしていた。誰もいない。辺りをきょろきょろしてみるが、はるか後方の車両に誰かが座っているのを確認できたくらいで、結局人がほとんど乗っていないのである。

 「…あ! あれはっ!?」

 電車の窓から空を見つめる。キレイな朝焼けだくらいにしか考えていなかったが、冷静に考えてみるとおかしい。早朝でもあるまいし、今の時間で朝日が昇ったばかりのように空が赤いということなどありえないのだ。

 だが、今は空が真っ赤になっている。よく見ると太陽はずいぶん上に昇ってしまっており、角度的に朝焼けはおかしい。

 人がぜんぜん乗っていないし、駅に人影がないのも、その影響なのか。

 「さ、佐伯さん! 応答してください! 佐伯さん!」僕はリストバンドに向かって通信を試みた。だが、佐伯さんからの応答はない。というより、フザケンジャーレッドのリストバンドのはずが、ただの布のリストバンドになっている感じがする。

 こつ、こつ、こつ…

 「!」

 後方に乗っていた乗客がこちらに歩いてきた。それは23歳くらいの若い女性であった。

 「なっ…!」OL風の女性は、上半身をカーディガンで覆っていながら、下半身は白いパンツ一丁だったのである。

 女性は黙って僕の左隣に寄り添うように座った。

 「あ!」今度は前方から、制服に身を包んだ女子高校生が歩いてきた。彼女も上半身はセーラー服でありながら、下は白のショーツである。彼女も僕の右隣に座った。

 い、一体、何が起こっているというのだ!? いつもは満員のはずの電車はガラガラで、しかも電車に乗っていた女性たちは下半身だけパンティ姿だ。それも、こんなに空いているのに、彼女たちはわざわざ僕の両隣に座っている。

 僕は思わず目を伏せた。両隣を見てしまえば、彼女たちの生足が間近に見えてしまう。僕は顔を赤らめ、目のやり場に困ったので、斜め前方に視線を落とし、両側の娘たちを極力見ないようにした。

 すると、駅員の制服を着た若い女性が歩いてきた。一目見てこの電車の車掌さんだと分かった。

 彼女でさえ、上は制服でありながら、下がパンティ一枚なのである。

 車掌娘は僕の真ん前にたち、吊革につかまった。

 はうう・・・目のやり場に困って斜め前方を見ていたのに、その位置に車掌さんのパンツと生足がグッと迫ってきている。どこを見ても女の足からは逃れられなかった。必ず誰かのふとももが視線に入る。

 どうしよう…。

 「やっほー☆ 楽しんでる?」オレンジ色の声が前方から聞こえた。聞き覚えのあるかわいらしい声だ。

 見ると、左斜め前に、白い和服を着た美少女が立っている。

 「あっ、みさ!」

 「どもー。」明るい美少女がニコニコしていた。

 「…そうか、やっぱりこれは夢、淫夢なんだ。道理でおかしいと思った。」

 みさは僕の7世代前のご先祖サマの幽霊で、カリギューラ女王とヘルサたん総統によって、現代風のかわいい肉体を手に入れて復活したのだが、今のところ僕の夢の中、しかもカリギューラたちの新世界を紹介する夢の中にしか出現することができない女の子である。江戸末期の人間なので苗字はない。

 こいつが登場するということは、この電車の中は、ある程度人間界が淫魔界化した世界を先行して僕に見せつけている夢の出来事ということになる。

みさ:「だいぶ男の種が空気中に放出された世界だよ。先日よりもずっと淫気が濃くなっているでしょう? ここからさらに濃くなって、ピンク色の霧が地上を覆うようになった時、淫気は完全に地上のあらゆる空気や物体と一体化して、桃色の色素さえ抜けて、完全にカリギューラさまの統括に入る。そうなれば人間界は魔界も同然、ヘルサたん総統とともに、魔王様たちの共同統治が始まるの。」

僕:「くっそ、誘惑になんか屈するもんか。」

みさ:「まぁまぁ。そんなに硬くならないでよ。カタいのはアソコだけでいいから。それにこの夢は、新世界のすばらしさを紹介するために擬似的に作られたんだし。君がその魅力を分かってくれるのならそれでいいんだよ?」

僕:「誰がこんな世界など!」

みさ:「そうかしら? これだけ淫気が濃くなるとね。社会構造自体が大きく変わってしまうのよ。みんな女の人はパンツ一丁でしょう?」

僕:「下品だ。」

みさ:「そんなことないよう。ちゃんと理由があるんだから。いい? ここまで来るのに世界中でかなりの男性が精を魔族に提供したわ。おかげで女性を発情させる淫気が強烈に大気を汚染し、女たちを淫乱化したの。」

僕:「それで、周囲の彼女たちが恥知らずになったというわけか。」

みさ:「ひどい言い方しないで。生物としての本能が変わったのよ。いーい? この世界の今の状態はね…」

 みさの話によると、世界は半ば淫魔界と融合し、各個人ごとの多世界化もだいぶ進んだらしい。その結果、男たちは相当数異世界に飛ばされ、その世界で女たちに囲まれて幸せに暮らしている。僕もそんな異世界に飛ばされた一人だ。

 現在の人口比率は、男性の減少と、女性の増加(老いた者が若返り、さらに進むと幽霊やゾンビなどのアンデッドが増加していくのだという)との影響の結果、男性1人に対して女性45人となっている。

 生産や経済に影響が出るものの、そこは魔界のいいところ(?)で、作物は自動的に実り、機械も高度化して、人間はあまり労働せずに済んでいるとのこと。運転操作やサービスに関わるわずかな業種以外は、ほぼ全自動でまかなわれているらしい。さらに新世界が進行すれば、人間は完全に労働から解放され、同時にあらゆる欲望が自動的に満たされるようになるとのこと。だから、男性が減っても近代文明が崩壊するわけではない。

 ただし、淫気は確実に女性に影響を与える。世界はわずかな男性と大勢の若い娘で構成され、男女比率がどんどん大きな差として開いていく。

 淫気が女体を根底から変革せしめ、かつてよりもずっと露骨に発情しやすくなっている。理性を保つことはできるものの、寝ても覚めても淫気を吸い込み続けているため、男性以上に性欲が強まり、男が時々エッチな空想をしては密かに興奮するよりもはるかに高い度合いで、体がセックスを求めて疼くようになっているのだという。

 四六時中ほてっていて、それがはっきりと性欲としてむらむらわき上がるのは、だいたい3分に1回の割合だそうである。

 少しガマンすればすぐに収まるが、それでも甘い雌の体臭は強くなり、性器もしょっちゅう濡れそぼってしまう。誰もがそうなので体液が滴ることを気にする者はいないが、股間にあてがうために、すぐ乾く特殊な素材の生地が必要だった。

 そのため、女たちはスカートやズボンをはくことができず、濡れてもすぐに乾く魔界のパンツだけを身につけるようになった。そういえばフザケンジャーのスーツも神通力によって体液を瞬時に洗浄乾燥させる機能があったな。構造は同じというわけか。ただし神通力と魔力ではプラスとマイナスの違いがあるけどね。

 そうなると法律の方も変更を余儀なくされる。もはや下半身は魔界の用意した特殊素材のパンティだけをはかなければならないとされたのである。もちろん公然わいせつには当たらず、その条文は削除された。

みさ:「この法律が今日から施行され、みんな下はパンツだけなんだよ。これぞ歴史に名を残す『すと魔女法』!」

僕:「うまいこと言ったつもりかよ。」

みさ:「興奮するでしょう。若い娘がみぃんな下はパンティだけなんだよ?」

僕:「…。」

 女たちは自分たちの体の変化をまだ完全には受け入れていない。恥じらいが残っている娘も多いのだそうだ。

 まだ多くの女性が、家の中に引きこもっているらしい。パンツ姿で外に出歩くことに対する抵抗感があるためだ。

 彼女たちは家で、あふれ返る性欲を自分で鎮めるために、一日に何回もオナニーを自宅でし続けているという。それでもいつかは、自分では処理しきれなくなり、男性を求めて外に出ることになるのだという。

 今の段階で外に出ているのは、すでに肉欲を受け入れ、自分の体の変化に適応したごく少数の娘たちだけだという。

 サラリーマンやOLがおらず満員電車でないのも、電車の中に人気がないのも、みんな自宅にいたり別世界に飛ばされたりしているからなんだな。

みさ:「それでも彼女たちはたいへんだよ? 外に出られた娘はごく少数派だと言っても、それ以上に男性が少ないからね。男を見つけること自体困難なの。」

僕:「…。」

みさ:「それで、運良く男を見つけると、そうやってそばに寄ってくるのよ。見てごらん、彼女たちの表情を。」

 見ると、娘たちは顔を上気させ、息づかいも荒くなっている。制御しきれないほどではないけれども、性欲の衝動につき動かされている顔だ。車掌でさえ職務を放棄して僕の目の前に立って若い体を見せつけている。

みさ:「まだ新世界への移行途中だから、人間世界にも理性的な反応が残っているの。パンツ一枚になることはできても、昼間衆目のもとでの性行為および自慰行為、性器露出は禁止されているのよ。」

僕:「そうか、だから彼女たちは露骨に襲いかかってきたりしないのか。」

みさ:「君も劣情に駆られて彼女たちに触ったりしちゃだめよ? 触っていいのはあくまで不可抗力と、衆目にさらされない場所でお互いの同意を得た状態の元でのことに限られるの。」

僕:「ホテルとか、人目につかない場所だな。」

みさ:「ええ。しかも、まだまだ彼女たちにも理性が残っていて、露骨に男を誘うことができないでいる。せいぜい、そうやって体を見せつけて、君の方から誘ってくるのを待つか、不可抗力を悪用して男を触って、それで男を興奮させて誘わせるしか方法がない。」

僕:「…。」

 つまり、僕の左右と前方にいる若い女性たちは、生足を見せつけながら僕を見つめているわけだが、それで誘惑して僕の方から誘わせようとしているのだ。さらに左右の女性は、不可抗力と称して、生足や体をぐいぐい両側から押しつけてきている。これで僕を興奮させて、誘わせようとしているわけである。

 それでも、僕が拒否をし、あるいは逃げてしまえば、セックスは成立しない。そこは厳しい法律の目がある。

みさ:「あー、でも、以前も言ったけど、女の方からの夜這いは合法だから。いつでも男の部屋に入ることができる。日没後は、わいせつ罪とかの影響がなく、自由に誘ったり襲ったりできるんだよ。法律って、イロイロ抜け穴があるからおもしろいよね。」

僕:「くっ…」

 女たちの体や心をここまでもてあそんでおいて、何を言っているんだ。

みさ:「ね。もっと町の様子を紹介したいんだけど、ほんにぁら産業前の駅で降りてみない?」

僕:「…。」

みさ:「まだこの状態で学校に行っても、ほとんど誰も来ないわよ?」

 …それもそうだな。オフィス街が今どうなっているのかも気になる。ほんにぁら産業前の町はオフィス街であるだけでなくショッピング街にもなっている。新世界がどれだけくだらなく、女たちを苦しめ、数少なくなった男たちを快楽地獄に貶めているか、この目で確かめたかった。それによって、この新世界に対する嫌悪感を高めておきたい。

 ちなみに、僕がみさと話をしているのは、周囲の人間たちにとっては「普通のこと」と映るらしい。やはり夢の世界だからか。

 駅に着くと、僕は途中下車した。

 賑わっているはずのオフィス街はがらんとしている。機械のモーター音だけがあちこちから聞こえた。新世界になる前に人の力でやっていたことが、ことごとくヘルサたん総統の用意した魔性の機械でまかなわれているんだ。

みさ:「こっちだよ。」

 僕はみさに手を引かれて、ショッピング街の方に足を運んだ。

 店が建ち並ぶ町並み。休日になると人でごった返すところも、かなり閑散としている。

みさ:「あー、そうだ。そこの喫茶店は無人だね。そこでこれに着替えて来なよ。」

 みさは黒いビキニパンツを取り出した。

僕:「何これ?」

みさ:「さっき説明したじゃない。パンツ一枚でなければならないって。男性もだよ? しかもブリーフタイプだけ。」

僕:「ええー!」

みさ:「イヤそうな顔をしなさんな。法律だぞ法律。」

僕:「うう・・・」

 僕は喫茶店に入る。たしかに無人だ。客もいなければ店員もいない。コーヒーでも軽食でも、ボタンで自動的に出てくるんだ。

 渡された魔性のパンツに着替える。ぴったりフィットしていながらペニスを圧迫しないやわらかい生地だ。このままおしっこをしたとしても全部瞬時に吸収の上洗浄乾燥してしまうスグレモノだ。

 うーん。上半身ブレザーに下半身ビキニパンツはたしかに違和感のある格好だ。みんなが恥ずかしがるのもうなずける。

みさ:「さ、街の様子を見てみましょう?」

 喫茶店から出てきた僕の手を引いて、みさが案内を始めた。

僕:「なあ。みさは和服のままでいいのか?」

みさ:「私幽霊だから。しかも今は案内役だし。」

僕:「ふうん。」

みさ:「あ。もしかして私のパンツとか見たかった?」

僕:「めっそうもないです。」

みさ:「少しは見たがれこのトンチキ!」

僕:「すいませんでした。謝るからグーで殴らないでください。」

 そんな感じで街を歩いている。電車やオフィス街に比べれば人は多いが、ほとんどみんな女性で、全員が白やピンクや黒のパンティ姿であった。上半身が普通の私服や制服や軍服や特攻服なので、そのギャップがかえっていやらしかった。

僕:「うーむ…街中で下着姿というのは、やっぱり相当いやらしいが、そういうファッションだと思えば慣れるかもな。異常は異常だが。」

みさ:「彼女たちは必要に迫られてあの格好なんだけど、法律がこれを追認した形ね。」

僕:「…気のせいかな。僕の周りに女の人たちが集まってきているような。」

みさ:「そりゃあそうよ。今や貴重となった男子が街にいるんだもの。みんな誘って欲しくてうずうずしてるの。見てごらん。魔界の淫気のおかげで美しい肉体を手に入れた彼女たちの姿を。」

 老若男女いるはずの街は一変してしまっていた。男性の多くは異世界に飛ばされてしまい、ほとんどいなくなってしまっている。女性はというと、若い娘と子供ばかりだ。一定年齢以上は若返ってしまい、おばちゃんもおばあちゃんもいない。

みさ:「私もそうだったけど、女の足ってよく見るとそんなにキレイじゃあないのよ。毛穴は目立つしシミもあれば吹き出物もあるし、きちんと処理しないなら毛だらけだよ。形だっていいわけじゃあないし、みずみずしいとも限らない。でも新世界になれば、根本的に改善されるの。間近で見ても毛穴は目立たないし汚れない。形もきゅっと引き締まるし足が長くなるのは嬉しいわね。毛だって、ガムテープも毛抜きもなしに抜け落ちるし、肌にハリが出てみずみずしくなるし、シミもほくろも吹き出物も蚊に刺されたあともキレイになくなってしまう。色だって白く美しい(望めば褐色系も可)。足だけじゃなくて全身がそうなるのよ。」

 …そういえば天国軍団もそうだったな。

みさ:「それに、淫気を吸った女の体臭は男を興奮させる甘い香りになる。発情した娘はキレイな足を男に見せつけて、甘い娘の匂いで男を引きつける。…興奮して来ちゃうでしょう?」

僕:「…。」

 たしかに、これで理性を保つのは難しいだろう。僕はなるべく彼女たちの足を凝視しないようにして、勃起しないよう細心の注意を払ってきた。だが、その心をくすぐってくる甘い香りはたしかに、彼女たちの体から発していたものだった。

 大気を覆う悪魔の淫気は女たちを狂わせる。そしてそんな狂った女たちの肢体と体臭が男たちを狂わせる。

 だが、その一方で、人間世界の理性的なシステムを破壊することに対しては、どこかでまだ、抵抗感があるのであろう。女たちは露骨に男に襲いかかることなく、黙ってそばにいてパンツと生足を見せつけながら女の香りを嗅がせるにとどめている。白昼堂々の破廉恥な行為は違法となっている。もちろん下着姿自体が十分破廉恥なのだが、その先の一線を越えてはいけないのである。

 彼女たちの方にも羞恥心があるのかも知れない。あくまで男の方から声をかけられるのを受け身になって待っているのだ。

 あるいはどこか道徳じみた感覚が残っているのか、それ以前なら逆ナンパだってしていたかも知れないような女性でさえ、露骨に男に手を出さないでいるのかも知れない。

みさ:「そっちが正解。キミに声をかけたくても、そんなことをすれば声をかけられない女たちとの間でいざこざが起きる。これだけ男女の比率が開いていれば、そんないざこざは必然的に大乱闘にまで発展する。だから、違法ではないけれども、女の側から露骨に誘うことは自粛しているというわけ。」

僕:「…。」

 向こうの方に別の固まりがある。誘惑に慣れていない(僕もだが)男子小学生が、ブリーフをこれでもかとふくらませながら顔を真っ赤にして歩いているのである。

僕:「あんな子供にさえ…。」

みさ:「チンチンが立つ年齢なら、女たちは群がるわよ? もちろん、キミがその気なら、オソソが濡れる年齢の小娘も相手にできるよ?」

僕:「ひどい…」

 少年の周りに女たちが群がっている。みんな年上のレディたちだが、相手が男性であるというだけで見境なく、彼の周りを取り囲んで、うら若き肉体を見せつけ、甘い香りに包んでいる。2,30人分の体臭が少年を包み、彼の興奮をいやがおうにも高めているのである。

 露骨な誘惑によって彼のペニスはブリーフを完全に押し上げ、すでに先っぽが濡れていて歩きにくそうだ。女たちは“あと少し”と言わんばかりに、しきりにしつこくまとわりついている。

 その一団が僕の一団を横切るさい、十数人が、僕の一団の方に吸い寄せられ、混ざってきた。少年の方の一団は数を減らし、それでも彼を追ってどんどん進んでいく。

 僕の周囲を取り囲む女の数が増えた。これは瞬時にして、小学生男子と高校生男子を比べ、よりいい男の方に一部の女たちが“乗り換えた”ことを意味する。

 ああ、こんなところにも露骨に「選択の論理」が働くんだな。

 よく見ると、遠くでも近くでも、女たちのカタマリができている。ショッピングなどを楽しみながら、今や珍しくなった男に群がり取り囲み、あわよくば誘われることを心待ちにしているのだ。もっとも、そうそう簡単に誘われるわけでもなく、どちらかというと珍しい男の姿を見たいという娘たちも多いみたいだ。

 さっきの小学生もそうだったが、やはり男の側にも羞恥心があり、簡単には女を誘おうとはしない。性欲につき動かされていながら、露骨に女たちに飛びかかることもなく、声もおいそれとはかけようとしない。女たちの無言の誘惑にあらがいながらひたすら歩いていくばかりである。

 もちろん、いとも簡単に性欲につき動かされ、とっくに誰かを誘ってホテルや人気のない路地裏に行って天国を味わっている男たちもいることだろう。ただ、彼らはすでにそういう場所に移動しているので、こうした表通りにはいないということである。

 そんな男たちは依然として少数派である。喜んで誘いに乗るように見えるかも知れないが、実際には大多数が尻込みするのである。

みさ:「もっと淫魔界化が進めば、そんな状況も変わるよ。尻込みできないくらいに露骨にセックスにとりつかれることになるわ。」

僕:「…そうだろうな。」

 性欲自体は圧倒的に男の方が上だ。いくらでも誘ってやり放題、しかも合法となれば、理性のタガが外れるのも時間の問題であろう。今はまだ、どこか自制心がきいていて、淫欲の材料がたくさんあるのにその誘惑に男も女も心の隅で抵抗している。ただし淫気が女体をむしばんでいて男女比率が極端になっているために、女たちの方が大胆になっている。そんな感じだった。

みさ:「どお? 魅力的な世界でしょう? これから先、もっともっと淫気が濃くなって、法律ももっと改善されて、快楽に満ちあふれた世界になっていくのよ。すべての幸福がここにはある。分かった?」

僕:「…。ああ。よく分かったよ。やはり新世界は最悪だ。」

みさ:「まだそんなことを言っているの? じゃあ、実際に肉欲に溺れている路地裏に行ってみようか。」

僕:「誰が行くか。」

みさ:「何が気に入らないの?」

僕:「魔族が露骨に人間をモノとして扱っているってことがよおく分かった。そんな世界が気に入るわけがない。」

 僕が来ただけで女たちが集まってきて無言のおねだりをする。まるで、人影が見えたらエサを求めて集まってきて顔を出す鯉のようだ。

 男にとっては、誰でも選び放題、誰とでも好きなだけセックスを楽しめるハーレムかも知れない。だが、それは所詮、淫気によってその肉体をムリヤリ性欲へと駆り立てることで、女性を狂わせ、さらに男の数を減らしてセックスの機会を激減させることによって、初めて実現できたことでしかない。

 そこでは女たちは、男の性欲を満たすための道具でしかない。しかも、そのほとんどは誘われもせずに、生殺しの状態になる。誰とも交わることができず、満たされないまま“その他大勢”に成り果てているのである。彼女たち一人一人に目を向けるかぎり、その世界は悲惨以外の何物でもないではないか。

 本来なら、男性の方が多くて、淫気もなく、一対一の平和な男女関係を築くことができる。しかしそのことごとくが奪われ、女性たちは満たされない苦しみの中、したくもないはずの相手でも選んでもらおうと必死にならざるをえない。彼女たちにとっては間違いなく、新世界は地獄であった。

みさ:「…それは違うわ。キミはふたつの勘違いをしている。」

僕:「…。」

みさ:「まず、男が少ないために彼女たちのほとんどが選ばれずに満たされないという点だけど、誘うのは一度に何人でもいいの。それに今の段階では、自分でスルとか同性でスルよりも男性でシた方が気持ちいいから誘惑しているだけで、選ばれなかったからって地獄の苦しみを味わうわけではないよ? 選ばれなかったら、他に方法はいくらでもあるからね。」

僕:「…。」

みさ:「それに、選ばれずに満たされない思いをしたのは、むしろ新世界前の男性側だけだったんだよ? そこでは男女の比率が同じくらいと考えられているけど、実際はとんでもない格差があった。世の中は男ばかり。女なんてめったにいない。いたとしてもすでに恋人がいるか既婚者か。出会い自体がなくて苦しんでいたのは男性の方よ。」

僕:「ま、女性の方は仮に出会いがなくて一人でもそれほど気にはしないと聞くしなあ。でもめったにいないってのは極論じゃあないか?」

みさ:「そんなことないよ。出生率はだいたい女一人に対して男1.05人。そこへきて少子化がどんどん進行していて、女性を巡る男性の競争は激化の一途をたどっている。男がわずかに余り続けて積み重なっているのに、下の世代がぐんぐん減っているから、ますます出会いがなくなっている。」

僕:「…。」

みさ:「それなら男女比を逆転させればいいじゃない。ポッティはわざわざ男が余って男が苦しむように世界を作りやがった。だが、その比率を逆にして進行させれば、つまりだいたい男性一人にして女性数人という比率にすれば、男が苦しまずにすんだのにね。」

僕:「そこがおかしいのだ。実際、日本が戦争に負けたあとというのは、本当にそれに近い状態になった。だが、それは男にとって単純に選び放題、幸福だったとは考えられない。」

みさ:「あの時代は『結婚しなければ半人前』と見なされていたし、恋愛結婚ではなくお見合いで周囲が勝手に縁談をまとめる風習だったからね。全然違うわよ。それは風習や考えの方がまちがっていたのであって、それが男女を不幸にしていたということ。」

僕:「納得が行かない。女が多ければいいって、そんなの男の側の勝手な都合じゃあないか。そりゃあ、その方が男にとってはいいだろう。だけど、今のパンツ娘たちの姿を見ると、男にとって都合がいい状況にしかなっていないように見える。新世界は地獄だ。」

みさ:「じゃあ、今の世界の中でうち捨てられた男は一生独身で一人さみしく死んでいけばいいっての?」

僕:「じゃあ、新世界でうち捨てられた女は一生独身で一人さみしく死んでいけばいいってのか?」

みさ:「新世界に死はない。いつかは満たされる。満たされない間といってもそれは男によって満たされないというだけであって、魔界は他の快楽の代用をいくらでも用意してくださってある。でも、今の世界では、余った男の救済はない。彼らが幸せをつかもうとあがけばあがくほど、それは横恋慕となり他者への迷惑となるため、厳しく禁じられ、ストーカーとして厳罰が下される。社会は強者だけを幸せにするのだ。ポッティは弱者を救済する意思などかけらも持ってはいない。」 

僕:「…。」

 思い当たる節はいくらでもあった。だが、何かがひっかかる。目先の快楽しか見ていないような。男女ともに何かにつき動かされ、それに隷従させられているような、激しい違和感を感じる。

みさ:「淫気が女たちを駆り立てているのはたしかなことよ。でもね、それはあくまで過渡期でのこと。これを過ぎてしまえば、ずっと楽になる。それに、今のこの過渡期だって、彼女たちはそんなに苦しんでいるわけではないんだよ? たとえば、絶頂人気アイドルとつきあいたいと思う?」

僕:「別に。」

みさ:「知り合いだとしても?」

僕:「高嶺の花すぎるだろ。」

みさ:「それと似た感覚だよ。だめだったらだめでしょうがないかって感じなの。今の君は彼女たちにとってアイドルと同じ。アプローチしてもダメモト。うまくいけばおいしい思いができる。それだけのこと。だから、男女比率が1対45であっても、彼女たちはあまり気にしていないの。」

僕:「…。」

みさ:「性欲につき動かされていても、自分で何とかできるからね。それに、だめだったらだめで“今は”仕方ないって考えるから。」

僕:「…今は?」

みさ:「キミの勘違いのもう一つは、昼間しか見ていないですべてを判断したこと。さ。家に帰りましょう。新世界の夜を見せてあげる。」

 ふっと目の前が暗くなった。

 次の瞬間、僕は見慣れた風景の場所に立っていた。自分の家である。

 外を見ると辺りはひっそりと静まりかえり、真っ暗で、赤い月が出ている。瞬時にして夜になってしまったのだ。

みさ:「忘れたかしら? 女性が男性の家を夜這いしても合法だってこと。」

僕:「…あ。」

みさ:「昼間は人間の活動を根底から覆しかねない露骨な乱交は禁じられているけど、夜はその限りではない。どの娘でもキミの家を訪ねて、今度は露骨に誘うことができるのよ。争いもないし、受け身になって待っている必要もない。これがあるから、彼女たちも昼間はおとなしいってわけ。」

僕:「ま、まさか、45人がどっと押し寄せてくるのか?」

みさ:「ううん、そんなことないよ? 一人とか、数人とか、そんな感じかしらね。1対45といっても、1年365日。日割りにすれば、押しかけてくる女もそんな多いわけではない。誰も来ない日だって結構あるよ。もっとも、淫魔界化が進んで男女比率がもっと開けば、変わってくるけどね。」

僕:「えっと、別の場所に逃げてもいいですか。」

みさ:「夜の街を歩いて誰かに見つかれば、それこそ物陰に引っ張り込まれて交代で犯されるけど?」

僕:「地下に潜伏してもいいですか。」

みさ:「そんなのあっという間に見つけられるよ。今も男たちがセックスを逃れて純潔を守る秘密組織があちこちに潜伏してるけど、ことごとく見つけられて一網打尽にされるからね。」

僕:「夢から覚めてもいいですか。」

みさ:「だめ。」

僕:「家に鍵は…ついてないんだよなあ。ってことはバリケードとか作って…」

みさ:「ムダだと思うよ? …ほら、聞こえてきた。」

 家の周りにバイクの爆音が聞こえる。一台二台ではない。エンジン音はたしかに、複数台、僕の家の前で停車したようだ。

みさ:「”昼間は”ダメモトだけど、夜になれば、自分から誘えるし、気持ちが一線を越えれば襲うこともできる。これがもう一つのあなたの勘違いだよ。性欲につき動かされても自分で何とかできるレベルだし、夜は夜で今度は自分の好きなように男と交わることができる。こうして一日を通してみれば、こんな人数バランスでも、けっこううまく行ってるでしょ。ね?」

僕:「ね、じゃあねえええ! 誰か来たよぉ!」

 ばたん! いきなりドアが乱暴に開けられた。もはや鍵というものが撤廃された世界で、誰でもが自由に人の家に出入りできるのである。

僕:「そもそも鍵がなくて誰でも入れるっておかしいだろ!」

みさ:「あら。珍しくもないんじゃない? RPGでも勇者は勝手に人の家に入り放題じゃない。そんな世界はロスじゃ日常茶飯事!」

僕:「ウソつくなボケ! 泥棒とか強盗だったらどうするんだよ!」

みさ:「心配ご無用。私有財産ってのはそもそも資源や財が有限であるから必要な制度に過ぎない。新世界では働かずとも欲しい物は何でも手に入るようになる。空気のように、ね。過渡期だからまだ何でも空中の無から取り出せるわけではないけど、簡単なものなら自動的に手に入るようになっているわ。帰り道に自動販売機があった?」

僕:「見てないよそんなの。」

みさ:「すべて撤廃されたの。好きな飲み物が自由に手に入っているからね。…何でも好きなだけ手に入るなら私有財産はいらない。したがって人の物を泥棒する必要もない。この世界には泥棒も強盗もないのよ。もちろん、そのうちお金も消えてなくなるわ。あと、ついでに言っておくと人はけがをしてもすぐに治るし病気にもならないし、死ぬこともない。したがって殺人や傷害も成立しない。犯罪が存在しない世界なのよ。…って、聞いてるの!?」

僕:「あわわ…」

 入ってきたのは、よりによってとてもコワいお姉さんたちであった。

 どぎつい茶髪や黒髪混じりの金髪。厚化粧。それでいて童顔。紫の濃い口紅が攻撃性と、子供なのに背伸びをしているようなあどけなさのギャップを醸し出している。上半身はいわゆる特攻服で、天下無双とか御意見無用とか聖●魔Uとか刺繍してある。・・・せいきまつ?

 そして下半身は、法律を遵守しているのか、全員、露出度が高い純白や黒のパンティ一枚姿であった。中には違法なパンストで足の美しさを強調している娘もある。

 だぼだぼした特攻服は胸がはだけており、サラシをゆるめに巻いて胸の谷間を強調したあられもない姿を露出していた。

 彼女たちは女性のならず者集団、いわゆるレディースと呼ばれている凶悪な暴力組織である。

 新世界の前であればまったく接点のない相手だけれども、ここへ来れば彼女たちといえども淫気の影響を受けざるをえない。

 …そういえば、昼間にこんな格好をした娘たちがいたな。

 逐一顔を見ているわけではないが、おそらく昼間見たレディースグループ、OLなど他の女たちの集団に混ざっていた一団だろう。

 「・・・おい!」

 「ひっ!」

 マスクをした不良娘のくぐもった低い声が玄関に響く。特攻服のパンティ姿は、全部で7人いた。

みさ:「あらら。よりによって相手が悪いわね。淫気に真っ先に毒されて、硬派のレディースから一転、男日照りの世の中に咲いた無法のあだ花、暴力と性力を駆使してチ●ポから子種を吸い取る美しき暴走少女軍団! その名も”ちーむ紗宮刃棲”! 夜露死苦!」

僕:「ひええ…」よろしくじゃあねーよ。チームサキュバスの面々を前に、ここで夢から覚める前に殺されてしまいそうな身の危険を感じている。

みさ:「じゃ、あとはがんばってね。」

僕:「まああああ! 待った待った待った!!」僕は大慌てでみさの前に立ちはだかった。

みさ:「まだ何か御用でも?」

僕:「何とかしてくださいよ! このままじゃあ暴走レディースに嫐り殺される! たすけて!」

みさ:「やぁよ。ここからがお楽しみタイムなんじゃない!」

僕:「そんなこと言わないで! コワいよ! 僕とみさの仲じゃないか!」

みさ:「べええ〜!」かわいらしく舌を出すみさが今度ばかりは憎らしい。

僕:「カンベンしてくださいマジで! あっ、そうだ! このコワいお姉さんたちじゃなくて、みさならシてもいいよ! だから何とかして!」死の恐怖は僕を見境なくする。

みさ:「ん〜☆ それはかなりイイ提案なんだけどね。…あのね?」

 みさは僕の肩にぽんと手を置いた。次いで、レディース軍団たちのところにすたすたと歩いていった。

 「あっ!」みさの体は完全に特攻軍団の体をすり抜けてしまった。少女たちもみさが近づいてきてすり抜けたのに、いっさい無反応である。

みさ:「私は霊体。新世界の人たちからは姿も見えないし、声も聞こえない。もちろん触れることもない。触ったり会話できたりはあくまでキミだけなんだ(会話中の違和感はない)。だから、助けようと思っても、キミが襲われるのを阻止しようと思っても、結局何もできないんだ。というわけで、あきらめて新世界の魅力を存分に味わってね。」

 「あああ…」も、もうだめだ。絶対彼女たちにボコボコにされて瀕死の状態で人生最後の射精をしたあとコンクリ詰めにされて海に沈められる運命なのだ。

みさ:「そんなに心配しなくったって、彼女たちは優しくしてくれるよ。何しろ新世界だしね。もちろん、ヘタに逆らえば何されるか分からないけど。でもここはキミの夢の世界。殴られても蹴られても痛みは感じないはずだよ?」

僕:「そ、そうなの?」

みさ:「じゃ、がんばってね。」

 みさは消えてしまった。

 こうして、レディース軍団が僕の家に押し入ったところから、シナリオが再開されるのだった。

 「さっきからぼーっとつっ立ってんじゃねーよ!」

 「ひい!」

 ふたたび怒号が響く。だめだ、間違いなく殺される。特攻服にパンティ姿の美少女たちに殺されたら浮かばれないが、にっちもさっちもいかない絶体絶命の状態だった。

 「てめえ! なんで昼間ウチらをシカトしやがったんだコラ!?」

 「あうう…」

 「たっぷりお礼させてもらうぜ。覚悟しな。」

 「ううう…」足がガクガク震える。半泣きだ。お父さんお母さん先立つ不孝をお許しください。

 「やめろ!」

 彼女たちの背後から厳しい声が響く。

 ざっ! っと、集団が割れた。そこから、リーダーとおぼしき美少女がずんずんと歩いてくる。

 金髪に厚化粧、攻撃的な視線と童顔のギャップ、特攻服を脱いでサラシ姿とパンティ。そんな出で立ちは他のメンバーと変わらないが、やはり全員を統括する貫禄が違っていた。

 「いいか! てめえらは手ぇ出すんじゃあねーぞ!」「オス!」

 御意見無用の無法者が気を付けをしてずらっと並んだ。すごい統率力だ。

 「あ…」リーダーは僕の顔を見るなりみるみる赤面していった。

 「あの・・・さ・・・」リーダーはうつむき加減になってもじもじしている。

 「がんばってリーダー!」「しっかり総長!」「気合いっすよボス!」「勇気出せヘッド!」「言っちゃえよカシラ!」「応援してるぜ代表!」「あんたは大将!」

 …呼び方統一してないのかよ! 一人は応援すらしてないし。

 「オレ…あいや、あっ、わたっ。私!」

 「…。」なんだか雰囲気が妙だ。いきなり殴られるかとびくびくしていたが、総長だかヘッドだかカシラだかはしどろもどろして一向に何もしてこない。

 「わたし! 本当は昼間、アンタにさそってほしかったんだっ!」

 少女はキャッと両手で顔を覆い隠した。

 「わああ!」「言った!」「告った!」「さすがカシラ!」「あんたは大将!」周囲がはやし立てる。

 …なんなんだ。

 無法な暴力の爆走軍団のはずなのに、もう完全に軟派ではないか。だめだめではないか。

 「…部屋へ案内して。」言うべきを言ってすっきりしたのか度胸がついたのか、リーダーはずいっと迫ってくる。

 「いや…その…」

 「おい! うじうじしてんじゃねーよ!」

 「口出すな!」リーダーが一喝すると、騒ぎ始めたメンバーたちが口をつぐむ。

 「いいから部屋に案内しろよ。言うこと聞かないとどうなるか分かんねーぞ!」

 僕はびくびくしながらリーダーを自分の部屋に案内した。

 「てめえらは外で待ってろ! 家から出ろ!」「お・・・オス!」「総長お気をつけて!」「あんたが大将。」

 …さっきから一人ヘンなメンバーがいないか?

 僕はリーダーを部屋に入れた。

 「ふう。やっと二人きりになれたね。」

 「…え?」

 とても同一人物には思えなかった。低いドスの利いた声でやりとりしていたリーダーの声ではなく、妙に甲高い少女の声色で、僕を上目遣いに見ている。

 「私、本当は君と昼間抱き合いたかったんだ。それは本当だよ。でも…私奥手だから、誘惑とかできなくて。こうして二人っきりになって、イロイロお話ししたかったし、やっぱり抱いて欲しかったし。…でも、その前に知っておいて欲しいことがあるの。素の私が出せるのは二人っきりのココだけだから。」

 「あっ、あの…」なんだかよく分からない。

 っと、その前に。

 僕はハリセンを取り出した。

 スパーン!

 「みぎゃああ!」

 ハリセンがうなると、ベッドの背後に隠れていたスケベ幽霊の頭部にクリーンヒットする。

 「出刃亀幽霊は消え失せろ。ココは二人っきりだ。」

 「あうう…」消えたふりして聞き耳を立て、さらには僕とレディースのリーダーとのやりとりをじっくり見ようとしていたアホ先祖は、両手で頭を抱えながらふらふらと部屋を出ていった。さすがに対魔ハリセンは効くみたいだ。

 まったく油断も隙もアリはしない。

 「抱いて欲しいのは、この世界が魔界化して、淫気に満ちあふれているから。私だって女だ。やっぱり性欲には勝てない。」

 「…あの…ずいぶん正直なんですね。」

 「敬語でなくてもいいよ。私こんな化粧してケバくしてるけどまだ16歳。あなたより年下なんだよ?」

 「えええっ!?」どう見ても年上にしか見えなかった。

 「そんなことより!」

 「!」

 リーダーは真顔になった。

 「あなたはこの新世界をどう思う?」

 「…。」

 この人は…何かが違う。そんな感じがした。ただの性欲にとりつかれたレディースのリーダーというわけでもなさそうだ。

 そもそも淫気を吸って性欲に狂ってしまっただけなら、新世界がどうとか真顔で離したりしないだろう。

 「何か、とてつもない、禍々しいものが忍び寄っている感じがする。私はこれをいち早く察知したけど、他のメンバーはみるみるうちに変わってしまったの。」

 「キミは…何者なのだ?」

 「私は昔から霊感が強くて、わけあってこんなチームを作ってるけど、世界が異常に変わっていくことを察知できた一人よ。他の人間たちは、世界や自分が変わっていくことに気がつかずに、パンティ姿になることがさも自然であるかのように、何も考えず気づくことなく、みるみるうちに変貌してしまった。硬派だった暴走チームは男を求め性欲に駆られる無法女のばらばらな集合になってしまった。」

 「…。」

 「私は実力でリーダーの座を奪い、ふたたびチームに統率を取り戻した。見境なく暴力で男を襲う集団から、一定の規律の下で同意の上セックスをするチームへとまとめ上げることができたの。」

 「…。」この人は…

 「触れ込みとしては、暴力と性力で精を奪う爆走チームって銘打って周囲を威嚇してるけど、それはあくまで表向きだけ。本当は、性欲に負けて狂っていくメンバーたちを守り、彼女たちの暴走を私の恐怖で統率させるのが目的なの。性に無法となった新世界において、恐怖で統御し、彼女たちが暴徒となることを抑えているのよ。」

 この人は、リーダーとしての力でもって、メンバーたちを恐怖で縛り、暴走を食い止めているのだった。多くの女性は新世界の変化に気づかずに自動的に豹変していくが、その異常性に気づく少女もいるのだ。このリーダーは、彼女なりに考えて対策を立てているというわけだった。

 「そこで、これまでもこうやってターゲットの男性のところに押しかけて、サシで話をして、相手の男性の理解と納得を得てから、しっかり同意のもとでのセックスをしてもらって、メンバーたちの性欲を満たしてもらうことにしたの。威嚇のため、表面上は暴力で脅して強制的に犯しているように見せかけるけど、そういう演技をするように男性に頼んで、同意してもらった相手だけとするんだ。そうやって、無法なセックスへの暴走を食い止めているわけ。」

 「同意、か。」

 「私はかなりの淫気を吸っても、ある程度は平気だった。そこに潜んでいる魔物の影を察知して、何とか抗おうとしていたしね。」

 この子はヘルサたん総統やカリギューラ女王のことはよく知らない。だが、その片鱗は感じ取っていたのである。そして人類の行く末に危機感を募らせていたのである。

 「でも、結局私も人間。日々吸い込み続ける淫気には勝てない。結局、ターゲットの男性は私が惚れた相手、セックスしたい相手になってしまう。そうして私も結局、性の奴隷に成り果ててしまっている。」

 彼女もまた自分と戦い、性欲の虜とならないように踏ん張ってきたのだ。理性を保ちながらも、肉体の限界を超えてしまうことはやむを得ない。そうなった時に、こうやってターゲットの家にバイクで押しかけるのだという。

 「ここはあなたの夢。今ごろの本来の私は、まだこの世界がどうとかいうことには気づいていない。でも、本当に新世界が進行すれば、きっと同じようにどこかで会うことになるかもね。」

 「…会わないことを願うよ。」

 「私もそう願ってる。お互い、無関係な世界に生きている。出会うこともなく、知らない者どうしでいたいものだ。こんな、魔物の淫気にまみれた、異常な世界にはならないように。」

 「そうだな。」

 「それはそれとして。」

 しゅるっと、リーダーは服を脱いでしまった。

 「えっ…!?」

 「本物の私は、どこかで馬鹿やってるでしょうけど、淫魔界化のことも分からないでしょうけど、ここでこうしてあなたの夢の中にいる私は、性欲にとりつかれてしまっている。メンバーたちはもっと疼いている。」

 「ちょっ…ちょっと!」

 「”同意”してくれないの?」

 「それはカンベンしてくれ。君の推論はほとんど正しい。男が射精すればするほど、世界が淫魔界化していくのが“新世界”だ。残念ながら、その危機は、夢ではなく現実に迫っている。そして、僕が見ているこの夢は、そうした新世界の実現をもくろむ悪魔、カリギューラが僕に見せている淫夢なのだ。この淫夢で僕が射精してしまうと、現実世界で夢精をしてしまい、世界の淫魔化を阻止する活動に支障を来してしまうのだ。夢でもセックスはできない。悪いがメンバーたちを引き連れて帰ってくれ。」

 「…。分かった…」

 リーダーは後ろを向いた。パンティまで脱ぎ捨てて全裸になった彼女のぷっくりお尻がいやらしい。

 リーダーが脱ぎ捨てた服を拾ったその時である。

 「あっぐううう!」

 突然彼女はガクガクと膝を震わせ、その場にへたり込んでしまった。

 「うっくう!」

 「だっ、大丈夫か!?」

 「だ、め・・・性欲がッ!」

 理性のタガが外れそうになるほど衝動的に疼き、リーダーは立ってさえもいられなくなったのだ。

 「この状態ではきっと、外のメンバーたちはもっと狂おしい疼きにむしばまれて、苦しんでいるはず…うう…」

 「…。」

 「男が捕まらなければバイブとかで何とかなるけど、こうして目の前にあなたがいるのに、自分で慰めろと言うのは酷なもの。」

 「止められないのか?」

 「むりっぽい…」

 くっそ、カリギューラの奴め、人間をこれほどまでに苦しめやがって。絶対に許せない。夢であっても、その登場人物である彼女たちの苦しみは本物なのだ。

 「・・・やっぱり、女はだめだ…ね。この淫気には…勝てない…。あああっ!」

 リーダーは悩ましく腰をくねらせ、股の間から大量の愛液を滴らせながら…いや、もはや噴水のように放出させながら、もだえ苦しんでいる。

 部屋中に甘い香りが充満した。

 淫気を吸って狂った女の体液は、男の淫欲を極端に刺激する芳香を発するのである。

 「も、もう! だめえ! こんなの初めてっ!!」

 リーダーはがばっと僕にしがみつく。両手をまっすぐ僕の肩の上に置いてがっしり掴むと、性欲に負けた雌の上気した顔でじっと僕を見上げてくる。甘い体臭が僕の脳天を直撃した。

 これまで理性的で、男性から同意のうえ性欲を解消させてきたチームは、リーダー自身の統制が崩れてしまった今となっては、もはや理性も崩れ、性的な集団と成り果ててしまっていた。

 「ねっ、ねえ、私たちを…助けてっ!」

 「ああ。誓うよ。絶対に、人類をこれほどに苦しめる新世界にはしない。魔族の企みは食い止めてみせる!」

 ごすっ!

 「ぐふう!」

 筋肉のついた太い足が僕のおなかにくい込む。リーダーの膝蹴りが腹部を直撃したのだ。痛みはないけれども、何かがぶつかってきたような衝撃が腹部から全身に走る。

 「ちっげーよ! やらせろつってんの!」

 「あぐ…リー…」もはやさっきまでの理性的なリーダーではなかった。性欲に負け、僕の体を求める暴力集団に成り下がってしまっていた。もはや僕の理性的な言葉は、彼女には届かない。

 「おらおら! お前もオレの匂いでたまらなくなッてンだろ!? チ●ポがパンツからはみ出しそうになってんじゃあねえか!」

 間近で芳香を発するメスの愛液。大気が女たちを狂わせ理性を奪う魔性の香りなら、その彼女たちの体から発する芳香は、男の理性を奪う魔性の香りであった。

 すでにペニスははちきれそうになり、小さなブリーフを押し上げてしまっている。

 「オトコを見せてみろよ。自分からパンツ脱いだら、オレたちがシてやんよ。」

 「だ、だめ…」「あ゛あ゛!!?」

 脇腹に数発の膝蹴りが入る。痛くはないし内蔵が傷つくわけではないが、蹴られるたびに僕の中で何かがダメージを受けている。性欲が高まると同時に体の奥深いところでさみしい悲しさが充満していった。

 「…ふん。オレ一人の体臭じゃあ、お前を狂わせられないってのかよ。さすがはフザケンジャーに選ばれただけのことはある。ポッティのバリアで、快感も軽減され、性欲にほだされることなく理性的でいられるってわけか。けっ。」

 「リーダー…」

 「おいてめーら!」

 リーダーが号令をかけると、サラシ+パンティ姿のレディースメンバーたちが一斉に部屋に押し入ってきた。

 彼女たちは体臭を外に逃がさないようにパンツを脱がなかったが、この部屋に入ったとたんそれも脱ぎ捨て、全員が全裸になった。

 「…あ…ああ…あぐああっ!」

 甘い香りが急に強烈になる。いや、今までもリーダーの香りだけでギリギリ限界、どうにかこうにか理性を保っていられたのだ。

 普通の淫夢ならとっくに負けていた。ポッティのフィルターがあったからこそ、リーダーの愛液の揮発する香りを嗅がされても、悩ましく腰をくねらせてカウパーを滲ませフル勃起することになっても、まだ暴走せずに済んでいたのだ。

 だが、その香りがいきなり8人分に増えたのだった。レディースたちの性欲はピークに達していた。霊感が強くて世界の変化に敏感に気がつき、何とかそれにあらがおうとしていたリーダーでさえ、狂ったメスに成り果ててしまっていた。当然、他のメンバーたちはとっくに性欲の虜となり、僕一人めがけて暴力と性力で襲いかかろうとしていた。

 「うう!」いつのまにか僕は、自分からブリーフを脱ぎ捨て、上着も全部脱ぎ捨ててしまっていた。

 「ふふふ…オレたちがいっぱい気持ちよくしてやるよ。覚悟しな。」

 リーダーは引っ張るように正面からペニスをしごき、強烈な香りをペニスに刻みつけながら股間を甘く刺激し続けた。

 リーダーの手はやわらかくてスベスベだ。その肩も、腕も、脇の下もツルツルで滑らかな感触を備えている。淫気に毒された女たちは美しい肌を手に入れる。他のメンバーたちも同様であった。

 「これまでは一度射精したら淫夢から冷め、夢精していた。でももう、お前は数回夢精している。一度の射精では目覚めなくなってるからな。オレたち全員で出すまで起きさせてやらねえ。」

 「あうう! そんな…」

 「抗いたいんならやってみろよ。オレたちでハメても射精しないんならお前は助かる。あははっ! ぜったい無理!」

 リーダーの言うとおりだった。彼女の生手でしごかれているだけで、いつでも出してしまいそうだった。

 まだポッティの力が効力を発揮していて、普通ならとっくにイッてしまっているところを、何とかこらえているけれども、限界を突破するのは時間の問題だった。

 「バックで入れろ!」

 リーダーが命じると、メンバーたちが動いた。いやがる僕を殴りつけ抑えつけ、手足をつかんで、ムリヤリぐいっと体を動かしてくる。

 リーダーは僕のベッドに上がり、四つん這いになって待っている。何とか逃れようとする僕にケリを入れながら、メンバーたちは力ずくでリーダーのいるベッドに僕を持ち上げ、彼女の後ろにあてがってしまった。

 あとは自然な流れであった。

 ベッドの周りをぐるりとレディースたちの裸体が並ぶ。彼女たちは自分で自分のオンナを慰めながら、僕たちが挿入する様子をじっと見つめている。そこから大量の淫気が揮発し、僕をさらに狂わせた。

 僕は無言でリーダーの膣にペニスをねじ込んだ。すでに性欲に負けているオンナは、あっさりと根本までペニスをくわえ込んでしまった。

 蹴り慣れているふとももに太さはあるが、お尻は案外に小さい。全体に小振りな体つきだったため、背中も肩もかわいらしかった。

 そうだ。彼女たちは15,6歳の、僕と同い年や年下の娘たちなのだ。顔つきはまだまだ幼い。真っ赤な口紅や、攻撃的な金髪、硬いパーマで背伸びをしているが、それがかえって童顔を際だたせ、魅力的なギャップとなって僕に迫ってきているのだ。

 リーダーのオンナはあまりにも甘美だった。ペニス全体を万力のように締め上げる膣は、まだまだ幼さを残しており、その直情的な締め上げは、大人の真綿で締めるような熟した感触はない代わりに、青いつぼみらしくぐっぐっとやわらかく圧迫し続ける。

 「あああ!」僕は彼女の背中にしなだれかかり、上に乗るように覆い被さると、彼女の両手首をつかんだ。小さな頭部が僕の顎の下に来る。

 僕の腰よりもひとまわり小さいお尻がグニグニと蠢き、僕の腰をくすぐるようにこすりあげていた。ペニスもこねくり回され、直情的な締め上げから一転、甘美な揉みしだきに追いつめられていく。

 「あははっ、やっぱりナマち●ぽイイ! おらおらさっさとイッちまえよ!」リーダーはぎゅううっとペニスを締め上げながら小尻を大きく回転させつつ、くいっくいっとこすりあげてペニスをしごいた。

 腰全体がとろけるように脱力してしまう。僕はリズミカルに腰を振ってペニスを小刻みに出し入れしてリーダーのオンナを愉しんでしまった。

 彼女の足がぷるんと波打ちながら僕の両足にはりついている。興奮して筋肉が盛り上がるとその硬さも甘美な刺激になって僕を射精へと追いつめていく。上半身をくすぐる彼女の背中のスベスベも心地よかった。

 「ああっ!」僕は動きを止めた。次の瞬間直前まで高められた多幸感が全身を駆けめぐった。何も考えられなくなる。

 精液がリーダーの膣にたっぷり注がれてしまった。

 「あははっ、いっぱい出てるよ!」律動が終わるまでリーダーは腰をくねらせ続け、精液を一滴残らず絞り上げるのだった。

 レディースたちの体臭は、僕を萎えさせることを決して許さなかった。

 出しつくしたのに、玉袋の精液はあっという間にふたたび溜め込まれてしまう。一度の射精で許されるはずもなく、しかも夢から覚めることもできなかった。

 次の娘がベッドに乗ってきた。僕は押し倒され、手足をメンバーたちに固定されあお向けに寝かされた。

 そこへマスクをしたコワい娘が騎乗位でハメ込んでくる。

 彼女は自分から全身を上下させてペニスの感触を愉しみながら、甘美な筒でペニスをこれでもかとしごき上げた。

 大の字に寝かされて、手も足も力ずくで押さえ込まれているので、まるで身動きが取れない。誰かが玉袋に手を伸ばして指先でコショコショくすぐっている。そして若いオンナがペニスを執拗にしごき続けるのだ。その運動は僕が射精するまで休むことなく続けられた。

 体液は容赦なく騎乗位娘の膣に吸い上げられていった。

 次の娘も女性上位で挿入してくる。彼女は背中をこちらに向けた女性逆上位で、発達したヒップを餅つきのようにぺたぺたと僕の腰に打ち付けながら、激しくペニスをしごき続けた。やはり手足が固定されていて、僕は受け身のまま彼女の膣のうごめきに身を任せるしかない。

 抑えていないリーダーやメンバーたちが僕の乳首や脇腹をくすぐり、撫でさすり、首筋までかわいがってくる。耐えきれるはずはなかった。

 さらに精液がレディースに搾り取られた。

 次の娘は僕の下であお向けになる。僕は他のメンバーたち数名に腰を掴まれ、ムリヤリ正常位で結合させられてしまう。

 きつい化粧でかわいらしい顔立ちのレディースは、僕の体に下からがっしりと抱きつき、控えめな胸をぐいっと持ち上げて僕の上半身に押しつけてくる。そして僕の顔をじっと見つめて微笑みながら、膣内射精を今か今かと待ち焦がれていた。

 メンバーたちは僕の腰をつかんだまま無理にゆり動かしてくる。力を入れて抵抗しても、暴力女数名の力ずくには勝てず、僕の腰は勝手に正常位娘のオンナめがけて大きく上下させられる。

 気持ちよくなってイキそうになっても女たちの手は止まらず、根本から先端まで正常位のオンナにしごかれまくった。

 「あ! あふ!」射精の律動が続いているのに僕の腰は勝手に動かされ続け、1秒でも絶頂の幸福を長引かせられるのだった。

 次のメンバーはペニスを側位で責めたてる。背中にも別の女がはりついて、横向きにサンドイッチされながら、僕は女体に包まれた状態でペニスをいたぶられるのだ。

 みずみずしく滑らかな肌触りは、汗で吸いつくように僕の体にはりついてくる。蠢くたびにボフボフと空気の音が聞こえる。その分心地よい感触が全身を包み込んできて、僕はあっという間に感極まった。

 射精後は反対側を向かされ、さっきまで僕の背中から抱きついていたレディースに挿入させられた。彼女は大きく足を開いてペニスを受け入れると、上側の片足をがっしりと僕のお尻に回し、生足の筋力を駆使して勝手に僕の腰をぐいぐいゆり動かして、ペニスを強制的に出し入れしてくる。

 いくら射精しても疲れることがなく、女たちの愛液の体臭によって、玉袋の精液が急ピッチで生産され、すぐに復活、何度でもイクことができた。新世界になると、男は四六時中セックスを愉しみ、何回でも射精ができる仕組みだ。

 ベッドがレディースたちの愛液でぐっしょりになる。そこから揮発する淫気が、絶えず僕を狂わせ続けた。いつしか僕は、自分から彼女たちの若い肉体を求め、抱きつき、どんどん挿入しては腰を振って、体液を爆発させ続けた。そうすると彼女たちは大量の愛液を再生産して、さらにベッドをびしょびしょにしていく。

 8人の娘と僕の体は、淫気にあふれる体液によってローションのようににゅるにゅるになる。それが娘たちの快感攻撃力を格段に高め、さらに僕を感極まらせるのだった。

 延々と悪循環に陥るかと思いきや、意外にあっさりと終わりの時を迎えた。

 レディースたちが性的に満足し始めたのだ。娘たちはだらしない顔でイキ続け、一人また一人と、ベッドから降りていく。

 最後の娘を座位で犯し、若い肌の感触に全身をしごかれながら精液を放出すると、彼女もまた絶頂する。

 「あふー…良かった…」

 女たちは僕の部屋にへたり込み、自慰行為やバイブでは味わえない快楽を十二分に堪能すると、満足のため息を漏らした。

 「よし、てめーら退散するぞ!」「おう!」

 女たちは一斉に特攻服とパンティを身につけ、部屋から出て行く。僕はベッドにあお向けになって、ぐったり脱力してしまっていた。彼女たちの甘い残り香が僕の脳を未だにくすぐっている。

 「…。」最後に部屋を出ていこうとしたリーダーがこちらを振り返った。

 「…。」僕も無言だった。お互いに気まずさだけが残ったようだ。彼女の言いたいことも何となく分かった。だから彼女が何かを言う必要もない。

 リーダーは無言で部屋を出ていった。

 目の前がだんだん白くなっていく。いよいよ夢から覚めるのだ。一体目覚めたら、どんなことになってしまっているのだろうか。一度の夢精では済んでいないはず。弱体化も甚だしいだろう。起きて体が動くようなら、佐伯さんたちに相談しよう。

 ………。

 ……。

 …。


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