ナメてる戦隊フザケンジャー!
第14話 タイムフラワーの淫虐!
「ぇらっしゃーい!」「らっしゃい!」「いらっしゃあい!」とたんに威勢のいいかけ声が飛び込んでくる。
見ると、数人の裸の女が待ち構えていて、いきなり僕を取り囲み、ぐいっと手をひいて脱衣所の先まで強制的に引き込んでくる
「あいお客さん1名様ごあんなーい!!!!!」「はいはいはーい!!!」「らっしゃいらっしゃい!!!」
裸の女は4人いて、全員20代前半くらい、頭に威勢のいいはちまきを締めている。
「うゎ、わわわわっ!?」あれよあれよという間に引き込まれ、僕は4人がかりで洗い場まで強制的に連れてこられた。
中にもう一人、はちまきを締めた若い全裸の女がいて、なぜか太鼓の前で縁のところをカッカカッカカッカカッカとリズムよくやっている。
「はいよ!」「はいよおー!」女たちはたらいに湯をくんでは僕の顔面に力強くばっしゃばっしゃとお湯をぶっかけてきた!
「ぷわああ! ぐわああ!」この展開はまったく読めなかった。突然のことで僕の呼吸は乱れまくり、佐伯仙術でせっかく深めた呼吸のリズムが台無し。結果、強化していたパワーが消えてなくなってしまった。
「はいー! 頭洗いマース!」「あい頭ーーッ!!」「はいはいはいーっ!」
シャンプーが強制的にぶっかけられる。そして4人がかりでがっしがっしと乱暴に頭が洗われる。いや、もはや洗うというよりはただ単に髪の毛をむしりつかんで引っ張るだけのようにしか思えなかった。
「いたいいたいいたい! ぎゃああ!」シャンプーの濃いのが目に入る。
「はーーいっ! 湯船はいりまーす!!」「あいゆぶねえー!!」「はいーっ!」
僕は浴槽に座らされ、無理矢理押し上げられると、頭からどぼんと浴槽に突っ込んでいった。
「ぷわあ! がふっがふっ!」やっとの思いで浴槽から頭を出すと、女たちが強制的に僕を浴槽から出した。
「はい体洗いまーす!」「はいはいはーい!」シャンプーの痛みで目が開かなかったが、一瞬目を開けて見た光景は、さらに壮絶なものだった。女たちはボディーシャンプーを自分の体に塗りたくっていたのだ。
その直後、またシャンプーが目に入って、今度こそ目を開けられなくなった。
全方向からやわらかい圧迫が突然密着した。
「あああっ!」「はいはい全身で洗いマース!」「よっしゃよっしゃよっしゃよっしゃ!」「おっぱいあわおどりー!!」
4人がかりで、僕はアワだらけの若い女体に囲まれ、グニュグニュと全身を洗われてしまった。
4人分のオッパイが僕の上半身にはりつき、ぐにぐにとうごめきながらあちこちにこすれていく。さらにお腹も背中も脇の下も、ハリのある乳房が容赦なくなめらかに滑っていった。
彼女たちの肉体がぐいぐい押しつけられ、ぎゅうぎゅうになった状態で、ぬるんとしたせっけん攻撃が襲いかかっている。きめの細かい肌がさらにもちもちして、全身を覆い尽くしていた。
女たちのなめらかなふとももが、8本もあるのに、僕のたった2本の足に容赦なく絡み付き、にゅるんにゅるんとこすれていく。お尻にもふとももが這い回り、ヒザの裏でさえ生足の餌食になった。
もみくちゃにされてわけが分からなくなり、カッカカッカという太鼓の音と威勢のいいレディたちのかけ声しか聞こえなくて目も見えず、顔も水浸しでまともにしゃべれなくなっている。
そんな中であるにもかかわらず、女体の感触に押しつぶされそうになりながら、その柔らかさや弾力、オッパイの感触、ニュチニュチしたふとももの肌触りが全身まんべんなく押しつけられこすりあげられていくうちに、ペニスはすっかり反応し、心地よい感触のまま全身がモミモミされていくにつれて、徐々に性欲も高められてしまう。
「はいいっ! うでをあらいまーす!」「はい腕行きまーす!!」
わけもわからないまま、僕は椅子に座らされると、両腕を水平にあげさせられた。そこに二人の女がまたがり、片手ずつを股洗いしてきた!
滑らかな内股の肌が僕の腕を包み込み、なまめかしい腰使いでにゅるにゅると腕の付け根から先端までを滑っていく。オンナ表面と内股の感触が心地よく、僕は思わず腰をくねらせてカウパーを滲ませてしまった。
「仕上げーっ!」残りの二人の女がアワまみれの手でペニスに手を伸ばした。
にゅぐにゅぐとやわらかい女手がペニスをしごき、陰毛でさらに泡立てながら玉袋を丹念に指先で洗い、くすぐり、会陰を腕でこすり、アナルを指先で犯しながらせっけんの滑りでコショコショし続ける。下から手を入れられるイスであることに初めて気がついた。
「あ、あひっ! やめ…」わけが分からず思考停止している状態は、「なにもかもどうなってもいい」とイク寸前に思う心の状態に似ている。そうなると、口で拒否しても体はもはや正直な反応を示してしまう。
カッカカッカという太鼓のリズムに合わせて、4本の女手が僕のペニスや股間を丹念にリズミカルに愛撫し奥底まで洗いまくっている。その間中も、僕の腕は女の股でごしごしされっぱなしだ。
突然太鼓の音が変わった。ドドドドドという低い音。叩きまくっている。するとペニスをしごくぬるぬるのモチモチ女手は、これ以上ないくらいのスピードで激しくペニスをしごきたてた。
太鼓の響きとともに、精液が勢いよくおねえさんの手の中で爆発する。
「はい射精しましたー!!!」「ありあとっしたー!」「ハイ上がり湯どうぞー!」「はいいい!」
僕はアワまみれのままよろよろと湯船のところに座らされ、そしてまた強制的にお湯の中にドボンとたたき落とされた。
「もがー!」ほとんど溺れている状態で手足をばたつかせ、どっちが上かさえもわからない状態でもがいて、やっとのこと湯船から頭を出すことができた。もがいたおかげで、全身についた石けんやシャンプーはすっかり湯船で洗われ、取れてしまった。
「はい終了ですー!」「ありやとござっしたあー!」「ありあとやんしたー!」
僕はずぶ濡れのまま強制的に脱衣所のところまで押しやられ、しまいには蹴り飛ばされて洗い場から追い出される。勢いがついて、足下がよろけてしまい、僕は顔面から脱衣所の床に転び、鼻を強く強打した。
…さすがにぶち切れる。
「てめえいい加減にしろ馬鹿野郎! ふざけんな!」そう怒鳴り込んだ次の瞬間、次の展開が見え、激しく後悔した。
「えらっしゃーい!」「ヘイらっしゃい!」「お客様一名ご案内ーー!!!」「しまったああ!」
僕はふたたび取り囲まれ、湯船に頭から放り込まれた。
夢なのに死にそうだ。
ほうほうのていで洗い場から出ると、脱衣所の様子が一変している。
さっきまで誰もいなかった脱衣所だが、今度は違う。
裸の女たちが、脱衣所に大勢、待ち構えていたのだ。
「!」いっぺんに青ざめる。まさのゆに入る前に危惧していた展開が、今度こそ始まったのか。このまま一気に「女湯」で絞られてしまう予感がする。まずいことになった。
だが、彼女たちは僕の姿を認めても、いきなり襲いかかってくることはなかった。チラチラと僕の方を見ながらも、何食わぬ顔で体を拭いている。
よくみると、僕がひどい目にあったどりふな洗い場入り口とは別のところに入り口があり、女たちはそこから出入りしているみたいだった。
その先は文字どおり女湯のようだ。10代から20代くらいの若い娘たちが、体を洗ったり湯船につかったりしている。
裸の男がまぎれていて、その姿を知っているのに、彼女たちは騒ぎ立てるでもなく、逆に好色に襲いかかってきたりするでもなく、ほとんど無視して入浴を楽しんでいるみたいだった。
それなら、こんなところに長居は無用だ。いつ彼女たちの気が変わって、襲ってくるかもわからないし、全裸の美少女たちに大勢囲まれていて、徐々に性欲が頭をもたげないとも限らないからだ。
僕はまさのゆの出入り口の方に歩いていく。絶対に女体には触れないよう細心の注意を払いながら、脱衣所から外に出た。
その先は銭湯の外、誰もいない道路。…の、はずだった。
だが、脱衣所から外に出た瞬間、僕はふたたび脱衣所の中に入ってきていた。
「…あれ?」もう一度外に出てみる。が、気がつくと脱衣所の中にいる。
なんだ? 脱衣所出口の空間が歪んでいて、出たら次の瞬間、そこから入っているのか。
ためしに、出入り口から外側に向けて手を伸ばしてみる。すると2秒後に、出入り口からにょきっと僕の方に腕が伸びてきた。間違いなく自分の腕だ。
空間が内部で繋がっている。外に出ようとしても、その先は脱衣所内部に繋がっていて、外に出ることができない。
実質、閉じ込められた形だ。
脱衣所から出ることができない。せいぜいのところ、女湯の中に飛び込むか、さっきの威勢のいいおねえさんたちのいる場所に飛び込むくらいしかない。後者は絶対にない。
かといって、女湯に入ってしまえば、それこそアワおどりの連続、浴槽ファックの連続となることが予想される。行くわけにはいかない。
さて、どうしよう。
脱衣所にいる裸の娘たちはきっかり20人。女湯から出てきて、体を拭いている。
よく見ると、体を拭いた後服を着るのではなく、彼女たちはふたたび女湯に入っていく。そして、一人が女湯に入ると、その代わりに誰か別の娘が、濡れた体で女湯から出てくる。結果、脱衣所は絶えず20人がいることになる。
女たちは、体を洗い、浴槽につかり、暖まって体を桜色に染めてから女湯を出て、体を拭いて、それからふたたび女湯に入って体を洗い始める。それを繰り返しているみたいだった。
以前見た淫夢で、更衣室で服を脱いではまた着るということをくり返している連中がいたな。それと同じ感覚か。
…てか湯あたりせんのか。
ともかく、若い女性たちが脱衣所で体を拭いていて、その中に僕一人、全裸で投げ出されて出られない格好になっている。
脱衣所の床はフワフワしていてキレイで、いつでもその場でセックスができるようになっていた。また、彼女たちが積極的に襲ってきたり、誘惑さえもしてこずに、僕を無視していて、近づいてもそれは変わらないので、手コキ耐久などでもなさそうなことがわかる。
これは淫夢。何か脱出のための突破口があるはずだ。
脱衣所は、湯上がりの女たちの熱気ですっかり暖まっている。玉のような水滴を全身から滴らせながら、洗いたてのキレイな体を桜色に染めて、彼女たちはオッパイをぷるんとゆらしながら体を拭いている。大小様々な乳房が踊っている。
年齢もさまざまで、10代後半から27歳くらいのおねえさんまで揃っている。
僕はできるだけ女の体を見ないようにしながら、さらにその熱気に当てられてペニスが反応しないように細心の注意を払いながら、突破口がないかどうか探し始めた。
それでも、辺りを見回せば女体の嵐だ。どこを見ても裸の美しい女の体が目に飛び込んでくる。夢なので、ぎゅっと目を閉じても視覚情報は容赦なく脳に飛び込んでくる。
そうやってじわじわ女体を見せて徐々に興奮させる作戦か。それなら、さっき乱れた佐伯仙術の呼吸法で乗り切ってやる。僕はふたたび落ち着いて呼吸を整え、だんだん深めていった。
がぶっ!
突然玉袋に違和感を覚えた。薄いシリコンのやわらかい幕がはりついたような感覚。これは!
僕はとっさに股間に手を伸ばし、その不気味な植物を玉袋から引き剥がした。考えるよりも行動が先に出た。
床からタイムフラワーが伸び、突然玉袋にはりついたのだ。
とっさに機転を利かせて引き剥がしたので、1秒くらいしかはりつかれなかった。
これで玉袋だけ1日経過したということか。油断も隙もない。
じっくり観察していると、あちこちランダムにタイムフラワーが伸び、引っ込んでいく。ついさっきこれが始まったみたいだ。
タイムフラワーは脱衣所の床をすり抜けてにょきっと生えてきては、ほろほろと枯れて床下に引っ込んでいく。突然床下から、床をすり抜けて上方まで生え伸びては、消えていくはかない毒花だ。
誰かが持っている花ということでもないので、自生のタイムフラワーだろう。今日の淫夢から登場したこのトラップ、なかなかやっかいな代物だ。
僕は念のため、玉袋を片手で軽くつかんで歩くことにした。はじめから手で押さえていれば、食いつかれなくて済むはずだからね。
「!」だが、その考えは甘かった。突然下から猛スピードで生えたタイムフラワーは、なんと僕の手の甲をすり抜けて直に玉袋に喰らいついてきたのだ!
床をすり抜けて上に伸びる魔界の植物だ。手で隠したところで、すり抜けてしまうのだ。
玉袋に一度はりついてしまえば具現化し、実体化するために、手で簡単に引きはがせるが、それでも数秒はかかってしまう。
はりついた次の瞬間にとっさに剥がすなら1秒で済むが、それでも1日分は経過してしまう。もし気づかなかったり、不意打ちだったり、今回みたいに手で守ったけれどもすり抜けてしまってびっくり、ともなると、引き剥がすまで10秒近くかかってしまう。
となると、足して11日分、ないし12日分の時間、玉袋は精子を溜め込んだことになる。
「うっく…しまった・・・そういうこと・・・か・・・・・・」
急激に性欲が高まる。何日も抜いておらず、性的なものへの衝動が格段に強まっている状態で、僕は裸の女20人がたむろす脱衣所から出られなくなっているのだ。
女たちが襲ってこない理由がわかった。タイムフラワーで僕を性的に疼かせて、僕の方から彼女たちに襲いかかり、セックスを求めるように仕向けているのだ。
そうはいくものか。
僕はドキドキと高鳴り続ける心臓まで押さえ込むつもりで、女体を見ないようにして呼吸をふたたび整えた。
がぶ!
「うわああああ! いいかげんにしてくれえ!」
僕は大慌てでタイムフラワーを引き剥がした。呼吸に意識を集中することができない! 呼吸に関心を寄せれば、下から生えてくるタイムフラワーを避けきれなくなる。
また4秒かかってしまい、僕は半月抜いていない状態になった。
佐伯さんなら、こんなトラップはものともせず、普通に避けながら瞬時にして深い呼吸ができるのだろう。僕は自分の修行の未熟さをいやというほど思い知らされた。
「ううっ…」どうしても目の前の美女に目がいってしまう。
彼女はピンク色に染まった体をほこほこさせながら、湯上がりのもちもちした肌を具えて、丹念に体を拭いている。ツルツルの脇の下、Bカップの控えめな乳房、毛が生えておらずむき出しの女性器、つるんとした滑らかな内股、タオルを滑らせると足が細いのにぐにゃっとつぶれ、さらにヒップはぷるんと弾力を持ってタオルにはじかれている。
女湯で体を磨いたばかりのみずみずしい女体が僕の目の前にある。ううっ、がまんだ、たえるんだ、ここで僕を無視する女性の体の虜になって、飛びかかってしまえば負けなんだ。
かぷっ♪
「はうああ!」そこへ容赦なく4本目のタイムフラワーが玉袋に喰らいついた。
目の前の娘の肢体に釘付けになっていたため、引き剥がすのに時間がかかった。
合計30秒間、タイムフラワーの餌食となり、一ヶ月射精していない体となってしまった。
「も、もう…ッ!」
僕は耐えきれなくなって、目の前の20歳くらいの女性にしがみついてしまった。
すると、さっきまで僕のことを「いないもの」としていた(といっても内心は気にしていたらしくチラチラと好色な目を向けていたが)おねえさんは、アッサリと僕を受け入れ、僕の方に向き直って、僕の首に手を回してキスをしてきた。体が密着する。湯上がりの女の人のキレイな体が僕にはりついた。
体が熱い。暖まった直後の女体はあまりにも心地よかった。
「ああっ! 気持ちいっ・・・」僕はおねえさんの生足に自分の足をこすりつけながら、女体の腰やお尻などにしきりにペニスを押しつけこすりつけた。すると熱い体が弾力を持ってペニスを包み、跳ね返してくる。その感触は、1ヶ月抜いていないペニスには最高のごちそうだった。
おねえさんのほうも、興奮してしきりにおっぱいを僕の上半身に押しつけこすりつけしながら、チュッチュッと僕の唇を奪い続ける。
「あぐ!」ペニスがおねえさんのお腹にめり込んだかと思うと、ぐいぐい押しつけていた快感が実を結び、ペニスから体液がこぼれ、次いで勢いよく、彼女のオッパイまで精液がはね、飛び出していった。僕は彼女の熱い体を抱き締めながら、快感にゾクゾクと震えた。
精液に汚れたおねえさんは、優しくほほえみかけて僕にチュッと唇キスをすると、すたすたと女湯に入っていった。
だが、そこへさらにタイムフラワーが襲いかかってくる。玉袋めがけて一直線、喰らいついてきた。今度は注意していたので、とっさに手で振り払うことができたので、1日分程度で済んだ。
僕はなるべく下方に注意を向けながら、脱衣所を歩き回り、タイムフラワーを一秒以内で振り払いつつ、外に出るためのヒントを探し続けた。
タイムフラワーはどんどん自生してくる。シューティングゲームのように反射神経をとがらせながら、はりつく毒花をどんどん手で振り払っていく。
今のところ、すべて1秒以内に振り払っている。
だが、このやり方には問題があった。
ひとつは、上の方には注意を向けられないこと。もし手がかりが天井とかにあった場合、下を見ていては見つけられないし、かといって天井に注意して見回していようものなら、たちまち数十秒間もタイムフラワーにはりつかれてしまう。
もう一つは、とっさに引き剥がせば長時間はりつかれずに済むものの、それでも最低1秒はかかるということ。これは僕の反射神経からしてそうならざるを得ない。ということは、一本一本は、1日程度しか玉袋の時間を進められないが、これが数本、数十本となっていけば、積み重なって、結局大幅に時間を進められてしまうのである。早く出口を見つけなければ。
だが、20本くらいに吸いつかれた当たりから、ペニスはギンギンに勃起し、ガマンの限界を迎え始めていた。足下に注意して手がかりを探そうとすると、女たちの生足や女性器をどうしても目の当たりにせざるを得なくなる。
初めのうちは、視界に入っても目を逸らす・ぼやかすなどして、意識を女体から背けて対処していたが、玉袋に精子がパンパンに溜め込まれた状態で禁欲させられている状態では、どうしても女の体に目がいってしまい、ついには釘付けになってしまう。
そうなれば、もはや一秒以内にタイムフラワーを引き剥がすことは不可能となる。
3秒、7秒、18秒と、引き剥がすまでに時間を取られるようになってしまう。はりついた瞬間ならすぐに取れるが、はりつかれる時間が長引くほど、吸引力が増してしまい、引き剥がすのに苦労する構造のようだ。
およそ40日、禁欲したのと同じペニスになった。すでに古い精子細胞は体内に取り込まれ続けているが、精神的な側面、つまり性欲に関しては、取り込まれることなく容赦なく蓄積されていく。
性欲で足下がおぼつかなくなる。ついよろけた弾みで、そばにいた若い女性の体に軽く触れてしまう。
そのとたん、電撃が走ったように股間がくすぐったくなった。僕の腰や脇腹に、女の子のお腹や腕が、一瞬だけ、ぺたっとはりついただけなのに、僕はそのもちもちした肌触りの刺激だけで、我を忘れてしまった。
抑制していたものが一気にせききった感じだ。風呂上がりの濡れた柔らかい肌が、いつでも僕を受け入れてくれる。そう思ったとたんに、精液をこの子の体に吐き出したい衝動に急激に駆られ、もはやそれに抗う気力さえもわき起こらなかったのだ。
僕はその女の子にぎゅっと抱きついた。掃除の行き届いているやわらかい絨毯に寝かせると、一気に彼女の上に乗っかり、足を開いて腰を落とした。僕よりもわずかに年上くらいの女性だったが、ひょっとすると年下かも知れない。そのくらい若々しい体であった。
女の子は力を抜いて僕を受け入れる。するとペニスはいきなり根本までするんと入ってしまったのだ。
「んっ!!」くぐもった声しか出なかった。入れた瞬間に、精液が勢いよく膣内にぶちまけられたのだ。あまりに甘美できつい、熱肉の筒は、一瞬にして股間をとろけさせ、全体を優しく包み込みながら性感神経だけをこれでもかと刺激しつくすオンナのじかの感触、そのあまりの気持ち良さに、出し入れしたいとか外に出すべきとか考えるいとまもなく、意思と無関係に射精してしまったのである。
しかも、一度出したのに、ペニスがジンジン疼き続ける。一ヶ月以上抑制され、まだまだ出しつくしていない感じが残り、性欲はいささかも衰えない。
僕はペニスを引き抜くことなく、ズリズリと激しく彼女のオンナでペニスをしごいた。するとぐにぐにと絡み付く熱いオンナはますますペニスをとろけさせ、出したばかりだというのに1分も経たないでふたたび高められた。
女の子は優しく僕にキスをすると立ち上がり、女湯に入っていった。
僕も立ち上がり、何か方法はないかを考えた。
このままでは、いつまでも同じことのくり返しだ。白く美しい裸体の群れを前にして、タイムフラワーによって何日も何ヶ月も射精していない状態を強制的に作らされる。向こうからそれ以上なにもしてこなくても、裸の女が、しかも抱き締めればいつでも受け入れてくれる美少女たちが、僕の周りに大勢いて、ほくほくした熱を帯びて湯上がりのもち肌をさらしているのだ。禁欲させられた以上は、もはや彼女たちに飛びかからざるを得ない。
そうやって、意思を強く持っていたにもかかわらず、あっという間に自分の理性を保つことができずに、あっさりと精を放ってしまう。敗北しっぱなしだ。
一回り二回りして、脱衣所を探し回ってみたが、とくに手がかりになりそうなものはない。スイッチもなにもない。ということは、別の何かで、たとえば●●回射精したら終了とか、射精しないのであれば何人をイかせれば終了といったたぐいのもので、ある条件をクリアすれば脱出できる構造ということになる。
しかし、相手の女をイかせれば終了になるというのは、ちょっと考えにくいし、そもそも不可能だ。もし本当にそのような条件なら、別の方法を探し、突破口を自分で編み出さなければならないだろう。
じっくり考えている余裕はない。こうしている間にも、突然ランダムにタイムフラワーが玉袋に襲いかかってくるのだ。
すでに数回、5日分、はりつかれては瞬時に引き剥がしている。考えながら、タイムフラワーと戦わなければならない。
タイムフラワー。こいつがくせ者だ。タイムフラワーさえなければ、こんな脱衣所に魅力的な女性が裸で体を拭いていても、なんとか乗り越えられたはずだ。それどころか、僕の家に居座る例の3人組の攻撃も跳ね返せただろう。
タイムフラワーで玉袋の時間が進められた結果、僕は我を忘れてしまい、簡単に女体の誘惑に負け、しかも行為に及んだ直後に射精するほど追いつめられてしまうのだ。
これを克服する方法はふたつ。
ひとつは、佐伯さんのように仙術を深め、たとえ何時間タイムフラワーにはりつかれていようともものともしない精神力、強さを身につけること。これが根本的な解決となるだろう。
だが、どうすればそれができるようになるのか、しかも“今”それができる状態を作り上げられるというのかがわからない。5日抜いていない状態であるが、かなり性的に興奮してしまっている。股間がじわりとくすぐったく疼く。
もう一つの方法は、そもそもタイムフラワーを登場させない方法。床から伸びてこないようにするのだ。
タイムフラワーはもともとヘルサたん総統が織りなす“ヘルサ空間”でのみ生きる架空の生命体だ。意思はなく、ひたすら本能的に男性の玉袋にはりつき、時間を進めてパンパンに精子を溜め込む役目を持っている。
カリギューラの淫夢の中にタイムフラワーが出てくるということは、カリギューラの呪いに、何らかの形でヘルサたん総統が介入してきたことを意味する。つまり、この淫夢は魔王二人分の息がかかっているということである。
ということは、弱体化した僕程度では、魔王二人分の淫呪を跳ね返すことはおろか、いささかも弱めることは叶わないだろう。
タイムフラワーが出てこないようにするのがダメなら、少し高いところに登って、花が届かない位置に移動したらどうかな。
僕は脱衣所の棚のところによじ登り、その上によろよろと立ち上がった。
だが、僕が高いところに行けば、花はグッと長く伸び、容赦なく花弁を玉袋に吸いつかせてくることがわかった。数メートル上に上がっても、茎が数メートル伸びてしまうので、結果は同じであった。
これなら、たとえばビルの屋上であっても花を伸ばしてタイムフラワーをお見舞いすることができるだろう。上に行く作戦はダメだ。
これで、10日は抜いていない状態になった。
そろそろ限界か。早く突破口を見つけなくては。
最後に残された道はひとつ。自分の意思をしっかり持ち続け、たとえ何日も抜いていない状態であっても、それでもセックスを抑制する鉄の覚悟である。
僕はあえてあぐらをかいてその場に座り、こおおおっと深く呼吸をした。どんなに性欲に苛まれても、ここをてこでも動くものか。
さっそくタイムフラワーが玉袋にはりつく。放置しても良かったが、長引けばそれだけ剥がれにくくなる性質を持っている。僕は呼吸を乱さずに、落ち着いて、はりつく花はりつく花をひたすら剥がしにかかった。
佐伯さんは何年も抜いていない状態がリアルで続いているのに、平然としている。結局、がんばってその状態に近づきたいなら、それなりの苦しみを伴わなければならない。これも修行なのだ。
一ヶ月以上抜いていない状態と同じになった。性欲に疼きまくる。今すぐにでも立ち上がって、誰かに抱きついてしまいたかった。だが、そこをあえて動かずに、ひたすら抑制するばかりである。呼吸は乱さず、強化は続いているものの、その分精子は玉袋に溜め込まれ続け、弱体化もしている。
強化と弱体化はとんとんであったが、次第に弱体化の方が強くなっていく。やはり短時間で修行の成果など出るはずはない。
僕の目の前を毛の生えていないツルツルのオンナが通り過ぎた。そこに入れたいという急激な衝動を抑え込むことに必死で、ヘンな汗がじっとり全身ににじみ出る。
ああっ、精子を出したい、気持ちよくなりたい。
性的な衝動はあまりに深く、そしてあまりにも惨めだった。
実際の時間は数分もしていないのに、もう何回も出してしまっている。
玉袋に精子が溜め込まれ、外に吐き出すというメカニズムが働いている以上、性的な疼きは収まることを知らない。
ああ、これは男のサガであると同時に、生物としてののっぴきならない苦悩でもあるのだ。
いくら射精しても、次の日には溜め込まれ、せっせと吐き出さなければならない。そうやって半狂乱になってメスを求め、同性と戦い、生殖の闘争に駆り立てられ、つき動かされ、本能的に苦痛を与え合っている。瞬間的な快楽のために行う性的衝動は、生物としての罪なのかも知れない。
知恵を持つことが人間の罪であるのなら、生殖のため、生存のために、オスどうしで闘争し、メスとの間で「やらせろ」「いやだ」の闘争をなし、そのほかにも自分の生命のために仲間や他の生物種と闘争し、状況によっては殺しあいにさえなるようなこの衝動は、生物の罪である。
ああ! 生物の罪!
他を助け、愛を持って生きることはできないのか! 愛を持つが故にそれが衝動となり、障害物に対して危害を加える。生きるか死ぬかの状況の時に、生きるために奪い合うことは生物の罪過であり、子孫を残すために同性異性に危害を加え、異性を奪い合うことも同様にして、生物の根源的な罪過なり!
食べることも、セックスも、生物としての連鎖は、避けられない罪悪である!
魔族はこの罪悪をまるごと受け入れ、奪い合わないようにいっさいを無条件で与える。食料も財物も、女も!
ああ、しかし、それがまた、新たなる堕落となるなんて!
佐伯さんが女性を嫌いだと公言してはばからない理由はわからないが、僕が今考えていることに近いのかも知れない。
しかし、おお、この考えには何かが足りないように思うのだ。そしてそれが、この問題の根本に関わり、魔族を排除しなければならない根源に関わっているのである。
それをこの夢の中で見つけることは困難だろう。
僕もまた生物であり、根源的な罪過によって、性的に駆り立てられ続けているのだから。
…世界は、信頼に足るものなりや?
閉じていた意識をゆっくり開く。あいかわらず女たちが体を拭いている。僕は依然として、生物の罪過の渦から抜け出せないでいる。
すでに2ヶ月近く抜いていない状態となっていた。
性欲は全身をむずむずと駆けめぐり、もはや居ても立ってもいられない。自分の体でないかのように、生物としての本能がむき出しとなっている。
かろうじて座っていられるのは、自分が生物の罪のまっただ中に置かれていて抜け出せないということを、自分自身で認識しているからである。そして、何かが足りないというその部分の片鱗が、言葉にはならないが、ほんの砂粒一つ分だけ、見えてきた気がしていたからである。
瞬間的にだが、仙術の深い呼吸がタイムフラワーの衝動に勝った瞬間があった。
精子細胞は放出されなければ体内に吸収されるが、性欲だけは容赦なく蓄積されると思っていたが、そのこと自体が幻想ではないのか?
性欲、つまり心だ。ある一定以上の日数が立てば、生物としての性欲自体は一定水準のまま、それ以上は高まらない。高い水準で衝動的に駆り立てられるものの、2ヶ月でも3ヶ月でも、実際にはそれほど変わらないのかも知れない。
それが強欲に過ぎないのであれば、本当は自分が思っているよりもずっと「肉体が要求する」性欲は小さいものなのだということがわかるはず。
突破口はそこにありそうだ。
一定水準のままずっと何日も長い時間を過ごすことになるから、つい「性欲は増大し続けている」と錯覚してしまうに過ぎない。だとすれば、性欲はある水準のままだという前提で行動すれば、我を忘れることはないのではないか。
呼吸が勝っている間、そのようなことを考えていた。希望が見えてきた。
だが、すぐにタイムフラワーの誘惑が勝り始めた。
性欲は“一定水準のまま”僕の肉体と精神を苛む。これは射精するまで持続する。たとえ性欲がうなぎ登りに増大していなくても、同じムラムラがずっと続くのであれば、やはり苦しい。
脱出のために、いくつかの可能性を試してみるしかない。
僕は目の前の大人のレディに手を伸ばし、ツルツルの股間に触った。とたんに強い衝動に駆られ、そのまま抱きついてしまいたくなるが、座る姿勢は変えなかった。
こちらが射精せずに誰かをイかせることができれば、あるいは何かが変わるかも知れない。まずはそれにかけてみることにしたのだ。
だが、そのもくろみは見事にはすれてしまった。
オンナに指を這わせ、するんと内部につっこんで丹念に愛撫をし始めたとたん、27歳くらいの妖艶な美女は僕の方に向き直り、いきなりしがみついてきたのである。
そう、「手を出した」ということは、相手がセックスを許すことに直結する。性的な関係を求めて手を伸ばしたのだから、相手はこれを受け入れ、経験豊かなお姉さんならなおさら、自分から積極的に僕を求めて襲いかかってくることになる。
彼女は僕の脚を広げ、前方に投げ出した。いきり立ったペニスがさらにあらわになる。
そこにまたがってきて、大きく脚を広げたまま挿入。背の高い美女の胸が僕の顔面をめり込ませた。
すでに何人も数え切れない男性器を律動させてきた、経験豊かなオンナである。二ヶ月以上射精しないで溜め込まれた経験浅い高校生の精を絞ることなどわけなかった。
僕は後ろに手をついて上体を起こしたまま、お姉さんのオンナをガマンしようと踏ん張ったが、お姉さんはもぎゅもぎゅと膣を蠕動させながら腰を妖しくくねらせてペニスを揉みしだき、ゆっくり優しく、かんで含めるように出し入れしてくれた。
その優しくもいやらしい動きに翻弄され、ガマンの限界はあっという間に訪れた。
「あうう!」生物の罪。そんな思考をすべて吹き飛ばしてしまうほどの快楽の波であった。それが悪魔の力なのか。
精液が膣内にほとばしる。完全敗北であった。お姉さんはペニスを引き抜くと、女湯に入っていった。
それでも性欲は収まらない。タイムフラワーがすぐさまはりついてきて、取り外すのに10秒はかかったので、なおさら性欲に疼いた。
次の手だ。僕は立ち上がり、Aカップの美少女の近くに立つと、彼女のお尻や、小さくふくらんだかわいらしい胸、細いながらもスベスベしているきめの細かい整った顔立ちやほっぺを凝視しながら、ひたすら自分でペニスをしごいて抜きにかかった。
女体に触れず、実際に肌を重ねることを決して望まず、自分だけで抜いてしまえば、半分は女体の誘惑に勝ち、その肉体に絞られることは避けられる。
僕はその隣の色っぽい大人の女性にも目をやり、腰のくびれ、細い足、女性器表面、Cカップの形の良い乳房などを見つめながら、一心不乱にペニスをしごいた。
華奢な幼い方は、腰のくびれはないが、若々しくてみずみずしい。大人の方は、少しだけ肌に衰えがあるものの悪魔の力で十分若さを保っているし、何よりボディラインが美しく、脇の下もツルツルスベスベで気持ちよさそうだった。
その女体に触れてしまいたいという衝動を幻覚に抑えつけながら、自分で精子を吐き出そうと思っていた。抜かずにいたので、イクまでにはそれほど時間はかからないはずだ。
だが、そのもくろみさえも見事に外れてしまった。大人の女性と美少女は、お尻や胸、谷間、性器、生足や脇の下などをしきりに見せつけながら、自分の体をオカズにしてもらおうとし続けている。
そして、いくらしごいても、自分の手では決して精液が出ることはなかったのである。
寸前まで高められはするが、急に衰えてしまい、どうしても脈打ちまでにいたらない。かえって苦しみが増すだけだった。
「あああ…だれか…助け・・・」思わずそうつぶやいたのがいけなかった。
別の若い女性が僕の背中に張りつき、後ろから両手でペニスをがっしり掴むと、スピーディにしごきたててきた。
「はうああ!」誰かになんとかしてもらおうという願望が聞き届けられ、背中に女体の感触が張りついたままクチョクチョとペニスがしごかれる。
イク寸前まで高められていたのだから、ひとたまりもなかった。僕は目の前の二人の美しい体を凝視しながら、3人目の女性に生手で抜いてもらったのだ。白濁液は10代の美少女のお尻に振りかけられた。3人は浴槽に入っていった。
そこから先は、ほぼ完全にたがが外れた状態だった。
それからというもの、僕は追い立てられるように女たちと交わった。タイムフラワーで精子をため込まされ、性欲に疼いてはいてもたってもいられなくなって、すぐ近くの女性にしがみついてしまう。
水滴のしたたる全裸の美女はとても抱き心地がよく、肌もスベスベしっとり、それでいて体は湯上がりの熱を帯びて熱く、抱きしめるととろけそうに我を忘れてしまうのである。
全裸の娘を床に寝かせ、上に乗ってはペニスを押しつけこすりつけて高めていく。女の子特有のなめらかすぎる肌触りと柔らかさが、股間のいきりたちを受け入れてグニグニとうごめき、ペニスが女体に押しつけられる度に僕は快楽にうめく。
そうやって僕は、女の子たちの足やお腹、お尻や胸にどんどん精子を吐き出していった。
射精直後から容赦なくタイムフラワーがはりついてくる。
1日一回オナニーをして抜いているのだとすれば、それでも次の日にはむらむらと性欲がわき上がり、時間があって精力が有り余っている限りは、精液を自分で吐き出しているわけだ。
しかし、そのサイクルがもし、1分に一回訪れるとするなら、自分は何というものに駆り立てられているのかと、心が空しくなるものである。しかもそれが、ガマンしきれないほどの、禁断症状にも似た、のっぴきならない性欲の疼きであったならなおさらである。
今まさに僕がその状態に陥っている。タイムフラワーによって、四六時中精子がパンパンに溜め込まれた状態で、快楽に弱くなっており、そこへ若い娘たちや妖艶な大人の美女たちが風呂上がりの裸体をさらして、間近で甘く誘惑しているのだ。脱出経路が分からないまま、僕は追い立てられるように精を吐き続けた。
ぷるんとしたやわらかい肉体に抱きつき、一緒に床に寝そべると、お姉さんはいきなりペニスを挿入してきて自分から側位で腰を振ってくる。はゾクゾクしながら脱力し、だらしなく涎を垂らして股間が溶けていく感覚に酔いしれながら射精した。
次にはわずかに胸がふくらんだだけの美少女が相手。僕は彼女の控えめな胸を撫でさすりながら、そのみずみずしくハリのある裸体に惚れ込み、座位で密着しながら結合。吸いつくようなもち肌がこすれながら、彼女はかわいらしい笑顔で僕の体液を搾り取る。
次の女性にバックで結合すると、僕は必死で腰を前後させる。タイムフラワーでさんざん溜め込まれているせいで、数回の出し入れだけで精を放ってしまう。
騎乗位でぶるんぶるん震えるおっぱいを目の当たりにしながら、僕はまたもやイかされてしまう。
怖い。
むちむちしたレディのふとももの間から精液を吐きながら、僕は本気でそう思った。このまま快楽におぼれ、自分が自分でなくなってしまうのではないかという恐怖。それでいて、そこからもはや抜け出せなくなっているのではないかという焦り。性欲の虜となったとたんに、そうした恐怖すら快楽に飲み込まれてしまう。
実際、コトに及んで我を忘れている瞬間は、自分のアイデンティティがすべて崩れ、この主観が快感一色に染め上げられてしまっているのだ。この快楽が一秒たりとも消えることなく永続し続ければ、もはや自分が何者であるかを数億年も数兆年も思い出せない状態に陥るのだろう。
うつぶせに寝そべった女の子のお尻の上に股間をのせてゆっくり腰を振りながら、アナルを別の娘に舐めさせて昇天。女の子の臀部の柔らかさと、自分のお尻の穴にちゅぷちゅぷと繰り返されるくすぐったい舌先の刺激は強烈だった。3ヶ月分溜め込んだ精液を一気に放出しきるくらいに過激な快楽であった。
セクシーな美少女に精を放出する度に、彼女たちは女湯に入っていき、再び体を洗い始めるのだ。その代わりに、入っていた人数分だけ、別の全く見ず知らずの女性が女湯から出てきて、ほこほこした体をタオルで拭き始める。そうして常に20人が脱衣所でキープされていて、僕はその中から誰でも好きな女性を選ぶことができた。
・・・まてよ?
女湯では、浴槽に美女たちが入り、残りは泡だらけで体を洗っているのだが、そこにタイムフラワーは出てきていないぞ?
一番初めに、ここに行けば泡まみれで抜かれたり浴槽で抜かれたりするはずだからと、足を踏み入れることを却下していたのだ。
だが、ここまで精子を吐き続け、数え切れないくらいになってしまっていれば、もうどっちでも同じことであった。
そうか、初めに却下したこの女湯に行くことが、出口なんだ。そこに足を踏み入れればさらなる快楽地獄が待っているはずだからと、尻込みをしてしまったのが、僕の敗因となった。
ここで勇気を持って女湯に飛び込むこと、つまり快楽に抗うためにこそ、積極的に快楽の中に身を投じて、なおかつその誘惑におぼれることなく、打ち勝つことが大切なんだ。
「たりゃー!」僕は意を決して女湯に飛び込んだ。
すると次の瞬間、目の前が真っ白になり、女湯の風景は跡形もなく消え去ってしまった。僕の目論見が当たったのだ。
勇気がなければ、事態を打開することができない。これはいい教訓となった。
………。
……。
…。
「う!」何かに揺り起こされるように、僕は突然目を覚ました。全身がだるい。
上半身を起こすだけでも一苦労だった。体が重苦しい。
一晩の間に、一体何度ペニスが律動したことだろう。初めの2,3度は精液も出ただろうけれども、残りの数え切れない回数は、もはや一滴も出ることなく、脈打つばかりの空しい絶頂だったはずだ。
しかしそれでも、快楽はいっこうに変わらない。肉体の弱体化も甚だしい。
が、別に筋肉痛になっているわけでもないし、疲労感だとか、病気だとかのたぐいでもない。体の動きが相当鈍くなっているが、健康に影響があるわけではなかった。
むしろ、精神的な影響がきわめて強いのである。肉体の弱体化は、いわゆる衰弱ではなく、性的なものに弱くなったという意味である。だから、機敏に動こうと思えば動けるのだが、どうしてもそういう気分になれず、体の動きが結果的に鈍くなってしまっているのだ。このだるさも精神的なものであろう。
なんとかして身を起こし、パンツを洗濯機に放り込むと、シャワーを浴びて着替えを済ませた。
鏡を見る。目の下のクマがどす黒く刻まれている。体は元気を取り戻しているが、性的な弱体化は確実に僕自身を苛んでいた。
全身の性感神経が敏感になっている。こんな状態で天国軍団と戦えば、間違いなく自分から腰を振ってイキ果て、フザケンジャーから神谷に戻ってしまうことだろう。
この弱体化を食い止められるのは、フザケンジャー本部にあるハリの装置だけだ。
僕は一刻も早く回復するために、本部に向かって歩き始めた。
肉体の性的な弱体化は露骨に出ている。
道で一人の女性とすれ違ったが、それだけでペニスがギンギンに勃起してしまったのである。別に彼女が肌の露出を上げていたとか言うことはなく、どこにでもいそうなごく普通のレディなのだが、その女性が通りがかっただけで肉体が激しく興奮し、ペニスがフル勃起した上、服や風がこすれるだけで全身がくすぐったくなるほど、性感神経が敏感になってしまっているのだ。
ここで心が堕落して、性的な快楽におぼれてもいいと本気度思ってしまったら、完全に敗北であることがイヤというほど分かった。
早く本部に行かなくては。僕は重苦しい体でありながら、歩くスピードを速めていった。
佐伯:「・・・なるほど。事情は分かった。」
僕は佐伯長官にことのいきさつを話した。できるだけ具体的に、覚えている限りのことを話す。
佐伯:「とにかくまずは、その体を治すことが先決だ。」
並木さんはあえて奥に引っ込んだ。これほど弱体化した僕の前にレオタードの美女がいたら、どんな危険なことが起こるか分からないからだ。僕も納得の上、佐伯さんの指示である。
だから、僕は自分から装置を運び、そこに自分で入っていったのだった。
そのとたんに、全身が完全固定される。蓋が閉められると、回復のためのミストが噴霧される。
ポッティ:「知っておると思うが、夢精の回数が多ければ多いほど、刺された針の痛みは倍増する。今度ばかりは、相当に痛いのを覚悟しておくべきだ。」
僕:「もちろん。分かってます。覚悟はできています。」
ポッティ:「具体的には、麻酔なしで全部の歯と生爪を剥がしてからその血だらけの傷口に800度に焼けた鉄の串を何本も刺され、塩や薬剤などのしみる薬を爪のところに漬け込まれた上、腰から下を硫酸につけられて焼かれ、とどめに背中の肉をノミとトンカチで背骨ごと削り続けられるような痛みくらいになりそうだ。」
僕:「に゛ゃああああ!!! そういう具体的なことを言わないで! どかーんどかーん!」
佐伯:「心配すんな。それでもポッティの神通力が効いてるから絶対に死ぬことはないし、その苦痛はわずか0.03秒間だ。」
僕:「それでもいやああ!」
ポッティ:「いっぱい夢精しちゃったんだからしょうがないじゃないかね?」
僕:「そりゃそうですけど、アンタが余計なことを言わなければそれでも覚悟はできてたんだ!」
佐伯:「天帝はお怒りだ。」
僕:「やっぱりそうなるのか〜! やめてとめて(ry とめった!」
鍼が体の奥まで貫く。一応血管は極力裂けてあるためか、全身から血が噴き出すことはなかったが、それでも流血は避けられない。神経をぐりぐりするために、その痛みときたら、本当に一瞬でショック死してしまいそうであった。
が、その苦痛はわずか0.03秒間で、本当に消えてなくなってしまった。
鍼が引き抜かれ、僕は機械から解放された。
みるみるうちに体が回復していく!
体が活力に満ち、それでいて性欲は減退、体を突き抜ける魔性の快楽疼きも消え去っていた。
並木さんが僕の「とめった」を聞きつけてやってきた頃には、僕は彼女のレオタード姿を見ても何とも思わなくなっていた。
呼吸が整うと、精神的にもだいぶ落ち着いてくるのだった。
だが、それでも気分まで爽快となるわけにはいかない。
佐伯:「いくつか問題がある。ひとつずつ確認しておこう。まず、精神的な問題だ。…こっちに来い。」
僕はAVルームに連れてこられた。並木さんがエロビデオをセットする。ちんちんが勃起したら電流が全身に流れるイスで、僕は佐伯仙術の呼吸を深めていった。
集団で男の全身を撫でさすり、そのまま手の攻撃だけで射精させていくという、ありきたりのエロビデオだ。
実際、こういうビデオ制作には制約やしがらみがあまりにも多すぎて、結果、ほとんどが似たり寄ったりになってしまう。看板となるのは「ペニスをしごいて射精させる係」(たいてい2人程度)で、こいつらが多額のギャラをせしめていく中心だ。有名女優となればなおさら。
あとは、それに準じる数人が配置され、手で男の体を撫でさする仕事。ごくまれに、フェラチオすることができたりもする。ギャラは安め。
残りの大多数は、ぺえぺえだ。つまり、裸になって「見てるだけ」が仕事であり、表面上謳っているのとは違ってそれ以上は何もしないのが通例である。ギャラは…言わずもがな。そんなだから、積極的に男に触ろうともしない。もったいないから。あとは顔を覚えてもらって少しずつ有名になっていけばという腹づもりなのだろう。
従って、女50人が男の体を徹底愛撫! なあんてタイトルに書いてあっても、実際に男に触れるのはせいぜい5人まで、それ以外は指一本触れずに見てるだけである。それ以上の「サービス」は制作側としてもできない。予算がないのである。
と、そんなことを考えながらじっくりAVを見ていたら、だんだんあくびが多くなった。いつまで同じシーンが繰り返されてるんだ。間延びしすぎだ。フェラチオシーンだけでかれこれ25分くらいになる。興奮しなければ、エロシーンは実に退屈なんだな。同じようにやる気なさそうに首を振っているだけで、モザイクも激しいし、つまんない。
そんなこんなで、ビデオ一本見終わると、イスのベルトが外された。ペニスはいっさい勃起せず、電流は流れなかった。
呼吸を整え、かつ深めているため、簡単には興奮せず、勃起をコントロールできていた。シチュエーション自体は超好みではあったが、気をたしかに持っていれば、それでも快楽の波にほだされずに、理性を保つことができている。
佐伯:「ふむ…精神的な弱体化はなさそうだ。魔性の肉体の虜となって、自己を見失う兆候はあるかもしれないが、少なくとも現時点で、セックスの快楽に魅了されてはいないようだ。」
僕:「そうですね。見ている間も、夢のことがフラッシュバックしませんでした。」
佐伯:「それならひとまず安心だ。今後も気をたしかに持っていれば、夢で誘惑に負けても現実への影響は小さくて済む。」
僕たちは司令室に戻ってきた。そこにポッティと並木さんがいる。緊急ミーティングが始まるんだ。
ポッティ:「…最大の問題点は、カリギューラの淫夢の質が大きく変わったということであろう。タイムフラワーはヘルサたん総統のもの、これがカリギューラの淫夢に出てきたということは、カリギューラの呪いにヘルサたん総統が介入してきたということを意味する。」
僕:「ええ。そのことは僕も気づきました。ということは、僕は二人の魔王に淫呪をかけられているということでしょうか。」
ポッティ:「うむ…それが、少し奇妙なのだよ。まず、今回のタイムフラワーの件は、おそらくはヘルサたん総統がカリギューラにタイムフラワーを託し、カリギューラがこれを使用して念を送ってきた、ということだろう。これにより、君の夢の中にタイムフラワーが登場している。干渉の仕方としてはこれが一番妥当だろう。」
佐伯:「俺も何人かの魔王から淫夢を見せられているが、二人の魔王がひとつの夢を見せることはまずないんだ。二人の魔王が見せるなら、一晩に二回淫夢を見る。」
ポッティ:「うむ。神谷君が一度しか淫夢を見ていないということは、その夢はあくまでカリギューラが見せているもの。干渉の仕方としては、タイムフラワーをヘルサたん総統がカリギューラにあげたと考えるのが自然だ。その意味では、カリギューラの夢にヘルサたん総統の道具が登場しても不思議ではない。」
僕:「…じゃあ、僕に淫夢を見せているのはあくまでカリギューラ女王なんだ…」
ポッティ:「それが・・・そうとも言い切れないから奇妙なのだ。カリギューラは“杉戸村”には関わっていない。」
僕:「!!?」そういえば、奇妙だ。淫夢は一回。カリギューラだけが見せているのに、なぜ杉戸村伝説のことが出てくるのだろう。しかも、僕が実際に足を踏み入れて以来、突然始まった淫夢だ。その前にはそんな夢はカリギューラも用意していない。そもそも、カリギューラも僕もあずかり知らぬ伝説で淫夢を形成することは困難なはず。
ポッティ:「それとは別に、何らかの形で、ヘルサたん総統が淫夢に影響を与えているとしか考えられない。」
佐伯:「つまり、あくまで淫夢を見せているのはカリギューラ一人だけだが、そこにヘルサたん総統の影響が入り交じっているということか。」
並木:「ひとつは、タイムフラワーという“道具”、そしてもう一つが”杉戸村伝説”…」
ポッティ:「杉戸村伝説は、その昔ヘルサたん総統が土地の邪神ヨウコヒメと結託して作り上げた、魔界からの干渉であるから、これを淫夢の題材とするためには、カリギューラか神谷のどちらかが伝説のことを知っていなければならなかった。」
僕:「たしかに先日杉戸村には行きましたけど、伝説のことは知らなかったです。」
並木:「ではカリギューラがヘルサに伝説のことを教わった?」
佐伯:「可能性はあるが…それならもっと前の段階で淫夢化していてもおかしくない。おそらくカリギューラは伝説のことを知らない。」
ポッティ:「どうやっておるのかは皆目見当もつかないが、カリギューラの淫夢の中にヘルサたん総統が介入し、神谷君により妖しい淫夢を見せていることになる。しかも、淫呪をかけているカリギューラ本人に、介入のことを知られないようにしながら、な。」
佐伯:「タイムフラワーは実体化したものだから、気づかれずに神谷君の夢に登場させることは困難だ。だから、ヘルサたん総統はカリギューラを言いくるめて、自分のタイムフラワーを直接カリギューラに渡したのだろう。だが、杉戸村伝説のことは知らないとなると、密かに介入・干渉していることになるな。一体どうやってそんなことをしているのか…」
ポッティ:「黙って他者のかける淫夢に介入することはそもそも困難なのだ。カリギューラの淫夢はあくまでカリギューラ自身が管理しており、そこに他の魔王が手を入れることはそもそもできないし、仮にできたとしても相当目立つ行為だから、管理者にすぐに気づかれてしまう。それを気づかれずに介入しているとなると、その技術や方法はかなりやっかいだな。」
並木:「…。もしそれが本当なら、ヘルサたん総統は杉戸村伝説以外にも、随所でカリギューラの夢に干渉できることになる。それも、カリギューラ女王のあずかり知らぬところで、ね。」
佐伯:「ああ。もしかしたらすでに、色々な場面で、ヘルサたん総統の手が入っているのかも知れないぞ。お前の気づかないところで。」
僕:「そうですね。何か気づいたらすぐ報告しますよ。」
ポッティ:「ま、干渉の件は、おいおい調査を進めていくことにしよう。」
佐伯:「最大の問題は…」
僕:「…タイムフラワーをどうするか、ですね。」
佐伯:「ああ。タイムフラワーが吸いつくこと自体を避けられないとなると、相当やっかいなことになる。いつでも溜め込まれ、すぐに射精してしまう。これはカリギューラの淫夢を見続けた男が陥る淫呪のひとつと、同じ効果だ。今のお前に、これをガマンしろというのも酷な話だ。かといって、この調子で夢の中で射精し続ければ、“とめった”が猛烈に痛いというだけでは済まなくなる。」
僕:「…。」
佐伯:「今は平気だが、いずれは精神的にやられてしまうことになるだろう。このまま連続して頭の中が真っ白になり続ければ、女体に溺れ、セックスに夢中になり、射精の快感の虜となって、抜けられなくなってしまう。その結果、いくら肉体を回復させても、現実において射精したい、女の快楽に溺れていたいと願望し続けることになり、天国軍団や怪人との戦いで使い物にならなくなってしまう。」
僕:「まずいですね。フザケンジャーレッドになってもすぐにイッてしまって、スーツが解けてしまう。勝ち目がなくなります。」
ポッティ:「こればっかりは、君次第なのだ。」
僕:「わかっています。気を強く持って、性欲の虜にならないようがんばります。修行あるのみです。」
佐伯:「その心意気はいいのだが、敵は君のその鉄の意志をとろけさせようとしてきているわけだ。このまま淫夢が強化され続け、夢の中でイキ続ければ、意思の力だけではどうにもならなくなる可能性もある。」
ポッティ:「うーむ…かといって、これ以上神谷君の夢に干渉はできぬぞ。ただでさえ、カリギューラのみならずヘルサまで夢に干渉しているとなっては、神谷君の脳へのダメージは相当なものとなっているはずなのだ。そこに私が強化策を講じて介入すれば…」
並木:「残念な脳が余計にかわいそうなことに。」
僕:「並木さん…僕ってそんなに頭悪いように見えます?」
並木:「前回のグラマーと古典が赤点だったじゃない。」
僕:「はうああ! なんで知ってるんですか!」
並木:「フザケンジャーの情報収集力を甘く見ないコトね。」
僕:「うう・・・」グラマーのテストの点があまりにひどくて粉末化した生々しい傷跡があらためて胸をえぐるのだった。
佐伯:「とにかく、敵が淫夢を強化するからといってその分だけポッティの神通力を強化するのはダメだ。そんなことをすれば、相手はもっと淫夢を容赦なく強化してくるようになるだろう。コーヒーに砂糖を入れすぎたからと言ってインスタントの粉を増やしたら苦くなって、砂糖を追加するようなものだ。そのうち飲めんようになる。」
ポッティ:「そもそも、敵が淫夢にタイムフラワーを持ち込んだということは、我々がこうして“とめった”装置で淫夢による弱体化を回復させていることがばれたということでもある。」
僕:「…どうでもいいけど、この装置”とめった”が正式名称なんですか?」
佐伯:「なにお言う!? お前が命名したのではないか。」
僕:「別に命名するつもりじゃ…」やめて! とめて! と、懇願しているにもかかわらず鍼が容赦なく体の奥深くまでぐっさり刺さり込むから、ついつい「とめった!」になるだけで、正式名称にされるともう情けなくて涙しか出てこない。
ポッティ:「敵は、淫夢による肉体の弱体化をあきらめ、その代わりに精神的に快楽づけにして追いつめる作戦をとりはじめているということだ。奴らの狙いは、君をセックスの虜にして、現実世界においても戦えない心にしてしまうこと。これから先は、君自身の心の戦いとなるだろう。」
僕:「そこが最大の難所というわけか。気を確かに持つというだけでは、あの苛烈を極める誘惑にはいずれ勝てなくなる。何か具体的な対策が必要ですね。」
ポッティ:「うーむ…」
佐伯:「要するに、玉袋に精子がパンパンに溜め込まれた状態で、手コキで何回か寸止めされてイキそうになっているところに、一気に挿入腰フリが襲いかかっても、相手がイクまで射精しないようにすればいいんだな。」
僕:「ムリです。」
佐伯:「ムリか。俺ならできるけど?」
僕:「ムリです。」
佐伯:「そうかムリか。」
僕:「絶対ムリです。」はじめからそれができるなら苦労はしない。そんな修行をあらためて始めても、今晩にはもう、淫夢の続きが待っているのだ。間に合わない。
並木:「射精しないようにする、ということが目的なのではなくて、射精が続くことによって心が犯されないようにすることが目的です。そう考える他はないのでは?」
佐伯:「ああ。だが、人間の心というものは、強いようでいて案外にもろい。それも、生物としての三大欲求に関わっている分野ならなおさら、肉体の欲求に簡単に心は動かされてしまう。肉体が性的な快感をひっきりなしに与えられ続ければ、そしてそれに肉体が反応し続け射精し続ければ、いつかは心まで犯されてしまう。肉体の制御が一番手っ取り早いのだ。」
ポッティ:「難しいのお。やはり、夢に干渉することができない以上、淫夢が終わった後、現実世界で回復を試みるしかあるまい。“とめった”の他に、心を回復させる装置ができないか、検討してみることにしよう。」
並木:「できるのですか?」
ポッティ:「正直、微妙じゃ。催眠や洗脳装置のたぐいならすぐにできるが、そんなことで脳を無理に作り替えようとしても、すぐにボロが出る。強烈な淫夢の怒濤の攻撃には耐えきれないだろう。もっと根本的なものが必要だ。機械の中に入って回復するのではなく、環境的なものとしての装置、装置というよりもプログラムのようなものを用意せねば。」
佐伯:「こいつを女嫌いにするのか?」
ポッティ:「いいや。あくまで魔性の快楽に抵抗することが目的じゃ。…神谷君、君は夢の中で”生物としての罪”という考えを起こしたのだったね?」
僕:「あ、はい。そうです。」
ポッティ:「そしてその思考には何かが足りない、と?」
僕:「ええ。」
ポッティ:「私の口から答えを言うわけにはいかないが、存外それがヒントになるかも知れん。セックスにいやがおうにも駆り立てられる惨めさ、そのために何かを奪い続けることのむなしさ。これは多くの者が、生きるためには仕方ない、子孫を残すためにはしょうがないといって思考停止している分野でもある。」
僕:「…。」
ポッティ:「生物としての欲求につき動かされて駆り立てられ、闘争をくり返し奪ってでも欲求を満たすようにせざるをえない苦しみ。他を苦しめ、あるいは魔の者に与えられて強制的に満たされることのむなしさ。一体なにが足りないと思う?」
僕:「・・・わかりません。」
ポッティ:「よく考えるといい。闘争し、他を傷つけ苦しめて奪うことを正当化するのでもなく、かといって魔族どものように奪わなくても与えられ続けて堕落することを正当化するのでもない、本来あるべき姿を、な。」
僕:「…。」
ポッティ:「その答えが仮に見つかったとしても、もちろんそれだけでは魔族に対抗できるわけではないが、少なくとも今以上には心をしっかり保つことができるようになるだろう。」
僕:「ポッティは答えを知っているのですか?」
ポッティ:「あくまで自分自身で体得するのだ。人に言われて、言葉にしたところで、その言葉が軽々しく空回りするだけとなる。心の底から納得することはできないだろう。自分で気づかなければ意味がない。」
僕:「そう…ですよね。」
佐伯:「とにかく、今日はここでしばらく瞑想してもらおう。その答えの探求もそうだし、仙術の修行もして、少しずつでも強くならなければ。」
ぴよぴよぴよー。ぴよぴよぴよー。
並木:「残念だけど、そうも言っていられないみたい。レーダーが敵をキャッチしたわ。」
僕:「なんか、毎回警報の音が違いませんか?」
並木:「敵はランドグシャ遊園地裏の小さな公園。以前親子が襲われた場所ね。そこで大学生の男性が天国軍団の襲撃を受けています。敵の数は9人、うち天国軍団が7人です。今から転送装置を使えば、17分30秒前に到着します。」
僕:「あの。。。警報・・・」
並木:「残り二人の反応は異常です。おそらくはメカニック怪人と、…●バサ将軍です。」
佐伯:「いやいや、たばさじゃなくて、ながとでもなくて、ボウイ将軍だから。」
並木:「あ、まちがえました。残り一人はボウイ将軍と思われます。」
僕:「警報の音…」
佐伯:「ボウイ将軍か。まだまだ太刀打ちできない相手だが、そいつが来ているということは、何か大それたコトを企んでいるに違いない。」
ポッティ:「うむ。しばらく敵は動かなかったからな。いよいよ動き出したということで、こちらとしても敵の動きは小さいうちにつぶしておかねばならぬ。」
佐伯:「よし、フザケンジャーレッド出撃だ! 肉体の弱体化も回復したし、精神的にも問題はなさそうだ。先に出動して、大学生を救ってから瞑想をしよう。」
僕の声は完全無視ですかそうですか。
とにかく出動が決まったので、僕は蒸着した。転送装置に足を運ぶ。20分くらい前の世界に転送されるということは、その20分間は、本部と連絡が取れないと言うことだな。ボウイ将軍もいるというし、気をつけて戦わねば。
転送装置がうなりを上げる。僕は白い光に包まれ、転送されていった。
佐伯:「…なあポッティ。心を鍛える装置なんて作れるのか?」
ポッティ:「ぶっちゃけムリ。」
佐伯:「やっぱり、レッド自身が戦って克服するしかないのか。」
並木:「…あなたもじゃないの? 佐伯長官。」
佐伯:「俺がか?」
並木:「生物の罪の話で、足りないものがあるってレッドは言っていたよね。じゃあ、なにが足りていないの?」
佐伯:「…。」
並木:「生きるために奪ったり闘争したりすることは罪。かといって、魔族にすべての快楽を与えられて堕落するのは悪。じゃあ、第三の道は?」
佐伯:「…。」
並木:「女は、嫌い?」
佐伯:「ああ。嫌いだね。時々むかつくことを言う。」
並木:「…。」
佐伯:「だが、考える余地はあるかも知れない。俺は戦いの末、罪も悪も避けるために、女嫌いになった。徹底的な禁欲は、第三の道にはなり得ないだろうな。」
ポッティ:「…。」
佐伯:「こんな俺でも、メシは食う。生きるために、な。…いいだろう。神谷と一緒に修行するさ。」
並木:「…。少し暇ができたら、私と外に出かけてみない?」
佐伯:「あぁ?」
並木:「この答えは、座っているだけじゃあ多分つかめないものよ。」
佐伯:「じゃあ、お前とショッピングにでも出かければつかめるのか?」
並木:「それはわからないけど・・・俗世を超越したところには答えはないと思う。」
佐伯:「…。」
ポッティ:「…そういえば、どうしてレーダーにボウイ将軍がキャッチされたのかのお。これまでヤツはバリアを張って、決してレーダーに映らないようにしながら精を吸い続け、魔力を回復させ続けたというのに。」
佐伯:「!」
並木:「ま、まさか! すでに完全回復を!?」
ポッティ:「いや、時間的にそれはありえない。うっかりバリアを外してしまったのか、さもなくば…」
佐伯:「しまった、罠だ! レッドをおびき寄せたんだ。」
並木:「しかし、転送はもう済んでいます。我々がレッドに干渉できるのは、レッドが戦い始めてから17分後です!」
佐伯:「急いでモニターを確認するんだ!」
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