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ナメてる戦隊フザケンジャー!


第15話 常任天国軍団初登場!

 

 転送された先は、以前も戦ったことがあるランドグシャ公園の裏の空き地。そこに申し訳程度にくっついている古い遊具で、小さな公園の体裁を取っている。

 以前僕が、天国軍団に射精させられ、佐伯長官に助けられた場所だ。

 警報が鳴ってから転送されたのだが、時空を飛び越えるために、到着の時間がずれてしまう。17分前の世界に飛ばされてしまうのである。

 結果、どうやら淫虐の宴が始まったばかりのところに転送されたみたいだ。大学生はまだ精を抜かれておらず、天国軍団に取り囲まれたばかりの状況だ。

僕:「そこまでだ! このフザケンジャーレッドが来からには、お前たちの勝手にはさせん!」

 見ると、天国軍団が7人、そして、見たこともない怪人が一人と、見たことのある戦慄の少女が一人。天国軍団が大学生一人を取り囲み、その後方に怪人とボウイ将軍がたたずんでいるという構図だった。

 「ひいい! なんなんだこの変態集団は!」大学生は女の輪をかいくぐって自力で脱出すると、一目散に逃げていった。

ボウイ将軍:「…思ったよりも早い到着、だな。」

 無口キャラ丸出しのボウイ将軍が、ため息混じりにつぶやく。清楚な風貌に無口な無表情。正直なにを考えているのかまったくわからない。

 天国軍団たちが僕を取り囲む。みんな戦闘員の格好になった。

 …そのうちの一人が、履き慣れていないように思われるものっそい高〜いハイヒールを履いていて、なんだかよろよろふらふらしている。

 「あの…たいへんそうですね、その靴。」

 「そうなのよー! ずっとつま先立ち状態だから歩きにくいし、急いでる時は走れないし、こないだなんかグキッてやっちゃって足首めっさ痛かった。」「…おつかれさまです…」「でもね? やっぱりこういう靴だと背が高く見えるし、足首とかふくらはぎとかがきゅっと引き締まって見えるから、やっぱりこれを選んじゃうのよねえ。女は美のためにはどんな犠牲もいとわないっ!」「はあ…がんばってください。」「うん。がんばる。」

 僕たちは身構えた。

 「たりゃー!」「とーう!」

 ハイヒールのお姉さんと僕は空中に飛び上がる。お姉さんが生手でペニスに手を伸ばす。「フザケンフィンガー!」僕はハイスピードで女体のあちこちを空中で刺激してやる。

 勝負は一瞬でついた。

 「ひゃあああっ! 何この感じ!? い、いいっ!! あぐっ!!!」ハイヒールはガクガク震え、地に足をつける時に足首をグキッてやりながら全身快感に打ち震え、そのまま果てて気絶してしまった。

 気がついた時には記憶は消えているものの、足の痛みは残るであろう。

 「フザケンショット!」僕は呼吸を整えて、残り6人に組み付かれる前に一気に勝負をかける。天国軍団たちは僕に触れる前に怒濤の神通力を身に浴び、それぞれ奇声を発して絶頂を迎え、その場に倒れ込んでしまった。

ボウイ将軍:「やはり…強いな。」

おっぱいん:「ちちちー!!」

僕:「そいつが…新怪人か?」

 ボッ!!

 僕が将軍に話しかけたとたん、彼女の顔面から爆発したような音が聞こえた、気がした。

ボウイ将軍:「そ、そうだ…そいつはパイズリ怪人おっぱいん。そのバストこそが武器。お、お前などこやつの乳房に包まれ挟まれしごかれていっぱい精子を…うぐぐ…と、とにかく、はあっはあっ、おっぱいんが遊んでやる。こいつのオッパイでイキ果てるがいい! お前の快進撃もここまでというわけだ。こいつは強いぞ。なにしろ女の女性性を代表する巨乳怪人だからな。どうせお前もデカパイが好きなのだろう。私はちっぱいだが…悪かったなっ! いずれにせよ、お前はここで死んでもらうぞ! おっぱいんで精気が尽き果てたところで、このボウイ将軍がじきじきに魔力を渾身込めてつぎ込み、生体エネルギーを根こそぎ精子に変えて放出させ、快楽の中で絶命するのだ! はっはは! 恐ろしいだろう! だが安心するがいい、おっぱいんもそうだが、何よりこの私の体は上級魔族、極上の快楽を約束しよう。死ぬ時の天国は、おのれの死をも受け入れ、我らの魔性の肉体にどうなってもいいという最高の幸福の感情を抱いて死んでいくことになるのだ。ふははははー!」

 …。

 …あれえ?

 この人、こんなに饒舌だったっけ?

 よく見るとボウイ将軍はハアハアと息を切らし、顔といい首といい耳の先端までが真っ赤になっている。とろんとした眼で僕を見据えながら、何かをガマンしているようでもあった。ちょっとよろけては体勢を立て直すくらい、膝に力も入っていないみたいだ。

僕:「あの…大丈夫ですか? もしかして、カゼ?」

ボウイ将軍:「ち、近寄るなっ! 触らないで! 近づかないで! こっち見ないで!」

僕:「うっわ・・・」

 敵だから僕を憎むのは当たり前だけど、女の子にこうして露骨に嫌われるとやっぱりグサッと来るのである。

ボウイ将軍:「ちっ、違うの! そういう意味じゃなくて、いやたしかにそういう意味なんだけど、でも違うの!」ボウイ将軍の眼鏡の奥で、つぶらな瞳がぐるぐると渦を巻いている。なにを言っているのかさっぱりわからん。

ボウイ将軍:「お、お前なんか嫌いだ! だいっきらい! でも私をキライにならないでー!」

僕:「なんじゃそりゃ。」

 ボウイ将軍は頭部全体を激しく上気させながらじりじりと後ずさる。と、そこに運悪く石が転がっていて、彼女はこれに躓いて「に゛ゃっ」と尻餅をついてしまった。

 なんだか彼女をほっておけなくなった。

僕:「…大丈夫か? ・・・ほら。」

 きゅっ。

 ボウイ将軍の小さくてやわらかい少女っぽい手を握り、彼女の肩に手を添えて全身を包み込むようにぐいっと起こしてやる。

ボウイ将軍:「ひゃああああ〜〜〜〜っ!!!!」

 勢いで体は起こせたものの、彼女はかなり気が動転し、また倒れそうになる。

僕:「なんだかよくわらかんが、今キミは調子が良くないみたいだ。そんな時は敵味方関係ないだろ。カゼとか治してから、お互い正々堂々と戦えばいいんじゃない?」

ボウイ将軍:「はうああ! ち、違うもん! カゼじゃないもん! とっとにかく触んなー!」

 ボウイ将軍は乱暴に僕の手をふりほどく。その顔面はもはや熟れすぎたトマトのようだ。よっぽど調子が悪いらしい。

ボウイちゃん:「お、おのれえ! フザケンジャーレッド、覚えていろよ! この借りはきっと返してやるー! うわあああん!」

 ボウイ将軍は泣きながらダッシュでその場を走り去っていってしまった。その後を大慌てでおっぱいんが追いかける。

 …なんだったんだ。

 僕の前には誰もいなくなってしまった。


######


ボウイ将軍:「あううう…はあっはあっはあっ…一度ならず、二度までもあの男に触ってしまった…うっくううっ…」

 ボウイ将軍は、人気のない林の中でついに膝を地に落とした。

おっぱいん:「ちちち〜…ちち?」

ボウイ将軍:「え、ええ…まだ、まだ大丈夫…でも…からだが熱い…」

おっぱいん:「ちち〜…」

ボウイ将軍:「ありがとう、心配してくれるのね。」

 ボウイ将軍は、魔界から人間界に移動する時に、魔力の大部分を魔界に置いてくると同時に、“恋着”という制約を受ける。男性に少しでも触れると、その相手に心底惚れ込んでしまうのだ。触れる回数や面積が大きければ、また、触れている時間が長くなれば、それだけ激しく心が奪われ、女体も強烈にその男に対して発情してしまう。

 一度、フザケンジャーを懲らしめるつもりで魔力を送り込むべく、彼のペニスを一瞬つかんでしまった。恋着は容赦なく、ボウイ将軍の心をむしばんだ。

 まだ完全に回復していないうちにもう一度レッドに出会って、話しかけられたとたんに、気が動転してほとんど我を忘れてしまったのだが、さらにあまつさえ自分から転んでしまい、レッドに手を握られて起こされてしまうという失態を演じてしまった。

 これにより、ますます恋着の呪いはボウイ将軍の全身を限りなく蝕んだというわけだ。

ボウイ将軍:「おのれ! 一刻も早く完全回復して、恋着を克服してやる!」

 恋着の呪いを克服する手段は二つしかない。ひとつは、その相手の男を殺すこと。精を吸いつくして絶命させれば、自然と恋心は消えてしまい、ボウイ将軍は冷徹な魔族に戻ることができる。彼女が人間の精を吸う時には、恋着が相当に彼女を蝕み、悲しませるのだが、吸いつくした後は何事もなかったようになる。こうやって彼女は“回復”を続けているわけだ。

 もう一つの手段は、その魔力の回復を100%にして、魔界にいる時と同じ力を取り戻すこと。そうすれば、恋着の呪い自体を体からはじき飛ばすこともできるようになる。そうなれば、もはやフザケンジャーレッドなど取るに足りないザコとなるのだ。

 彼女にとって、レッドに大量の魔力を送り込んでその場で絶命させ、前者の解決を図ることはたやすいことであった。だが、ボウイ将軍はそこに踏み切ることができないでいる。万が一失敗した場合、自分が瞬時にしてイキ果て、ひどくすると消滅してしまう危険性があるのだ。

 だが、それだけが理由ではない。

 『…そんな時は敵味方関係ないだろ?』レッドの、変態全身タイツの奥から、神谷達郎の優しい声がこぼれる。ボウイ将軍の中で彼の甘いささやきのようなこの台詞がリピートし続け、頭の中を駆けめぐっている。消そうとしても消えてくれない。

ボウイ将軍:「あわわわ…」ボウイちゃんはグルグル眼のまま真っ赤になって両手で頭上の妄想をばたばたと振り払った。「くっそ! 忌々しい恋着め!」

おっぱいん:「ちちち! ちちちち!」

ボウイ将軍:「ありがとう…あの男をあなたのオッパイで殺してくれれば、私は解放される。カタキを取ろうとしてくれる気持ちは嬉しいけど…あなどらないで。彼は、すでに二人の怪人を倒しているのよ。」

おっぱいん:「ちちー!!」

ボウイ将軍:「ふふ・・・勇ましいこと。でも…任務を忘れてはダメよ。私たちの任務は、あくまで陽動。そして、私自身の回復と、常任の天国軍団の育成にある。レッドと戦うのはそれからでも遅くはない。」

おっぱいん:「ちちっ!」

ボウイ将軍:「そうね。わかってくれてありがとう。さ、いきましょう。電車での移動は…あなたが目立ちすぎるわね。どこかで自動車を借りましょう。」

おっぱいん:「ちちちー?」

ボウイ将軍:「大丈夫、すぐに見つかるわ。」

 将軍と怪人は林を歩いて抜け、道路でヒッチハイクを決め込んだ。


######


佐伯:「レッド! 聞こえるかレッド! 速やかに応答せよ!」

僕:「あ、長官。もう終わりましたよ。天国軍団は全滅、被害者の大学生は精を吸われることなく解放されました。ボウイ将軍と怪人は取り逃がしましたが、深追いはしていません。」

佐伯:「そうか。わかった。とにかく、すぐに戻ってくるんだ。」

僕:「何かあったのですか?」

佐伯:「その任務が罠であった可能性が高いのだ。」

僕:「ええっ!?」

佐伯:「考えてもみろ。これまでレーダーにひっかからなかったボウイ将軍が、なぜ今更わざわざレーダーに映ったのだ? 明らかにレッドをおびき寄せたとしか考えられない。今のところ無事のようだが、なにを仕掛けているかわからんぞ。すぐに転送装置を作動させる。」

僕:「わ、わかりました!」

 罠と言っても、天国軍団7人を倒し、ボウイ将軍たちはわけが分からないままに走り去っていったし、それから数分以上、その場でぼーっとしていたのだが、何も起こらなかった。ほんと、何だったんだろうな。

 白い光があたりを包み始める。

佐伯:「本部から外部への転送は、過去への移動となる。逆に、外部から本部への転送は、未来への移動になる。数分前の過去に飛ばされ、戻ってくる時は数時間後の未来に戻ってくることになる。未来に戻ってくるということは、それまでの時間、レッドは存在していないことになる。おそらく敵の狙いはそこにあるのではないか。お前が戻ってくる前の時間帯に暴れ放題なのでは。」

僕:「えっでも、そうだとすると、転送装置の秘密を相手が握っているということになりますけど?」

佐伯:「うーむ、その秘密はおそらく知られてはいないはずなのだが、何らかの形で洩れているのかも知れん。とにかく、なるべく早い時間に転送されるように調整はしてみるが…」

 白い光が完全に身を包んだかと思うと、佐伯さんとの通信も途絶えてしまった。

 ………。

 ……。

 …。

 転送されてきた先は、ほんにぁら産業駅だった。時間は…駅の時計で午後3時42分を示している。

僕:「長官。佐伯長官。聞こえますか? 応答どうぞ?」

佐伯:「おお、レッド! 今どこにいる!?」

僕:「ほんにぁら産業駅です。本部への転送はできなかったのですか?」

佐伯:「本部に転送しようとすれば、空間座標が正確になるため、その分時間は大幅にずれていくことになる。本部に転送しようとすれば、おそらく深夜か翌日の朝方くらいになっていただろう。なるべく早く転送させるためには、場所を少しアバウトにして、本部から離していくほかはない。ちなみに時間座標を正確にし、瞬間的に移動させようとすると、到着する空間は大幅にズレ、宇宙空間に投げ出されることになる。」

 うーむ。あいかわらず難しい話だ。

 12時に転送して、同時刻12時ジャストに瞬間移動しようとすると、空間座標が定まらなくなり、どこに飛ばされるかわからない。逆に、指定した場所に正確に瞬間移動しようとすると、時間座標が定まらなくなり、何時に飛ばされるかわからない。

 時間または空間が正確であればあるほど、もう片方の座標は乱雑性を増し、不正確になっていく。両方を正確にすることは、不確定性原理だかなんだかで不可能なのだそうだ。

 だから、なるべく時間と空間を我々の望むところに近づけようとすれば、両方をアバウトに設定しなければならない。

 本部近辺、なるべく早い時間に。そう設定すれば、僕は午後3時にほんにぁら産業駅に転送されることも十分あり得る話だ。

 それでも、歩きや電車でランドグシャから本部に戻るよりは、ずっと早く到着することになる。

佐伯:「よし、特別に許可するから、タクシーで戻ってこい。」

僕:「わかりました。」

 僕は近くのタクシーを拾い、とりあえず喫茶店“キノコぐんぐん伝説”を目指した。「撮影ですか?」運転手さんがいぶかしげに聞いてくるので、「ええまあ、そんなところっす」と適当に答えておいた。

 30分ほどで僕は本部に到着した。

佐伯:「お、戻ってきたな。」

ポッティ:「これまでのところ、敵の動きはないが。並木君、レーダーは反応なしかね?」

並木:「ええ。とくにはありません。」

僕:「あの・・・前から疑問に思ってたんですけど、そのレーダーってどうやって敵を察知してるんです?」

ポッティ:「ああ、簡単な原理じゃよ。敵の女性が男を射精させると種を少量飛ばすことになるのは説明したね?」

僕:「ええ。」

ポッティ:「その種を植え付けるようなセックスを始めると、微量ながら魔力も発散する。つまり、天国軍団や怪人や将軍が男を襲い、男の前に立ちはだかって誘っているあたりから洩れ始める魔力を、このレーダーがキャッチする仕掛けなのだよ。ちなみにボウイ将軍が回復を図っている時も、同じように種はばらまかれておるが、どういうバリアかはわからんがそれをレーダーに反応させないようにしておる。」

僕:「なるほど。ってことは、天国軍団が集結しただけでは反応はしないのですね?」

佐伯:「まぁそういうことになるな。その天国軍団がコトを起こした時点でレーダーが反応するのだ。」

僕:「さっき長官が罠だっていってましたけど…レーダーに反応しないようにあちこちで天国軍団が集結し、全国各地あちこちで同時に事件を起こすような作戦を敵がとっていたら?」

佐伯:「!?」

僕:「そうなると、レーダーが反応を示した時にはすでに遅し、僕の身はひとつしかないから、全部解決することはできない。僕をボウイ将軍のところに引きつけている間に、密かに天国軍団があちこちで集結しているのでは?」

佐伯:「…済まない。」

ポッティ:「…もうしわけない。」

並木:「…ごめんなさい。」

僕:「えっ・・・なんでみんな謝るんですか?」

佐伯:「お前の口からそんなクレバーな意見が出るとは思わなかった。オツムがかわいそうとばっかり思っていた。本当に申し訳ない。」

僕:「…本当に申し訳ないですよ!」

 めっちゃ腹立つ。

ポッティ:「とにかくその可能性は高いな。随所で一気に事件を起こせばフザケンジャーの手が回らない。ボウイ将軍のところにレッドをおびき寄せたのは、そのための時間稼ぎと見るべきだろう。」

佐伯:「だとすると、そろそろ準備が終わり、一気に決行される頃合いだな。」

並木:「全国の地図を用意します。」

佐伯:「なるべく多くの事件現場に駆けつけるのだ。そのための最短ルートを短時間で割り出し、次から次へと移動して、事件を解決し続けるしかない。同時多発があまりにも甚だしい場合は俺も移動することにしよう。」

並木:「最短ルートはコンピュータですぐに割り出せます。」

ポッティ:「時間軸がずれる転送装置は使えない。歩き、タクシー、電車など、あらゆる交通手段を使うことになる。最短ルートのみならず、時間との戦いでもあるぞ。」

佐伯:「なるべく早く天国軍団を片付けてしまうのだ。そしてすぐさま次の現場に急行。一人でも多くの男を救うぞ。」

僕:「ラジャー!」

 僕たちは身構えていた。すると、ほどなくして警報が鳴り始めた。

 にゃんにゃにゃんにゃにゃーん、にゃんにゃにゃんにゃにゃーん…

 ・・・こんどはネコか。

並木:「敵反応あり。場所は…き、キノコぐんぐん伝説です! マスターが10人の天国軍団に襲われています!」

僕:「な、なんだってー!」

並木:「他に反応はありません。すぐに急行してマスターを救わねば。」

 その台詞を聞くやいなや、僕はフザケンジャー本部を飛び出していた。

佐伯:「ま、待てレッド! これも陽動作戦かも知れん! 落ち着くんだ!」

 だが、僕はすでに佐伯さんの言葉が耳に入っていなかった。

 フザケンズックの力を使い、1分くらいで、キノコぐんぐん伝説に到着した。客のいない時間帯を狙って、10人の天国軍団が喫茶店に押し入り、マスターを引きずり出し、服を脱がせていた。そのままテーブル席のイスに縛りつけて騎乗位で抜きまくる算段だったらしい。

 「まて! マスターに手を出すな!」僕は喫茶店に飛び込み、一気に呼吸を深めた。

 「出たなレッド!」「今日こそお前を射精させて、フザケンジャースーツをはぎ取ってからたっぷり絞ってやる!」

 「フザケンショット!」僕は一気に天国軍団を倒しにかかる。彼女たちはすでに戦闘員の格好になっていた。

 10人いようと20人いようと関係ない。小さな光の玉は大量に戦闘員たちに襲いかかり、瞬時にして彼女たちをイかせてやる。光を浴びた天国軍団はみんな気を失った。

 「マスター、大丈夫ですか?」「…キミは…」イスに縛りつけられ寝かされていたマスターを解放する。

 「一体これは・・・?」「…いいえ、マスターはなにも知らなくてよいのです。いま、記憶を消しますので。」僕はマスターにフザケンジャービームを当てた。

 「うぐっ!」マスターは神通力を身に浴びた。男性がビームを浴びると、この事件のことについての記憶を失う。

 「…神谷くん…」気を失う前、マスターはそうつぶやいた。声で正体がわかってしまったらしい。

 「済みませんマスター。巻き込んでしまって。でも、その記憶も、気がついたらなくなっていますから。」僕は気絶しているマスターをイスにそっと寝かせた。

 「ふっふふふ・・・さすがに強いネ。フザケンジャーレッド!」

 「!!?」

 おかしい、たしかに全員にフザケンショットを確実に喰らわせたはずなのに。

 天国軍団の一人が生き残っている!?

 僕は身構えた。

 「フザケンジャービーム!」渾身のパワーを込めて、戦闘員にビームをぶち当てる。

 「ふっふふ…そんな攻撃じゃ効かないネ。ワタシのコスチュームは特殊ネ。HAHAHAHA!」

 よく見ると、たしかに普通の天国軍団の戦闘員とは違うみたいだった。

 天国軍団の戦闘員の服は、きわどい格好に黒いレザー調の衣装だ。が、この人の衣装はそれとは違っていて、露出部位とかはほとんど同じなのだが、生地が白くて、なんだかモコモコしているのである。頭部には何もつけておらず、顔も髪も露出されている。ふわふわした、白い天国軍団!

 よく見ると、てかよく見なくても、彼女は日本人ではなかった。金髪ストレート、碧い眼、ふっくらした体つきと大きな乳房、スタイルの良い足やお尻を持っていながら腰はきゅっとくびれている。僕と同じ年くらいの白人女性だった。目の下の泣きぼくろがとってもチャーミングなのに全体的な童顔が男心をくすぐる。

 ヘルサたん総統め、ついに外国人にまで手を出しやがったか。白人だからコスチュームも白いというわけかな。

 「この衣装、魔界に大量に生息する魔虫、サッポロビアビートルの腸のスジだけを集めて編んだ特殊な衣装ネ。この生地は神通力の伝導率が極めて高く散らしてしまう。だから、フザケンビームもショットも、つまり神通力を飛ばしたり流したりしてワタシの体に浸透させることは不可能ネ。触れても神通力は流れないッ!」

 「な、何だと!?」

 「1着の衣装を作るのに5000万匹のサッポロビアビートルが必要ネ。だから大量生産はできないけど、ワタシのような者なら着る資格があるネ。」

 「貴様、一体何者だ!?」

 「ワタシはオゥストレーリアから来た、サラ=マグダガル=ナンジャムシ・コンジャムシ。サラと呼べばいいネ。」

 「なんじゃ虫?」「なんじゃ虫いうな!!!」「…。」

 「で。ワタシ、ただの天国軍団と違うネ。”常任の”天国軍団!」

 「じょ、常任だと!?」

 「そう。キミも、天国軍団が、そこら辺の女性を勝手に集めて、彼女たちの意思を無視して勝手に体を動かして戦わせていることは知ってるネ?」

 「ああ。」

 「彼女たちは心の底では苦しみ、泣き叫び、狂わんばかりになっているのに、狂うことも叫ぶことも許されずに、体は自動的に動くばかり。でも、その中に、このセックスを楽しみ、快感に積極的になる者が現れる。”別にいいや、この気持ちいいのを楽しんじゃおう”ってネ。」

 「…そういう輩が常任の天国軍団となるのか?」

 「そうヨ。そうやって快楽に忠実になる女に、魔族のこと、計画のことについての情報が染みこんでくる。これを受け入れ、魔族に忠誠を誓った女が、晴れて常任の天国軍団になるネ。常任、つまり、一時的にかき集められた弱い天国軍団ではなく、専門的な知識と訓練を受け、特殊なコスチュームを与えられ、天国軍団を専門の仕事にする女のコトよ!」

 「くっそ…」

 「さあ、どうするネ? ワタシを倒すためには、フザケンジャーの色々な道具は使えないヨ。フィンガーもソードもだめネ。神通力が流れない以上、それで常任天国軍団戦闘員を倒すことはできない。」

 「…実力で倒すしかないというわけか。」

 「HAHAHA! おかしな呼吸もポッティの神通力も散らしてしまうワタシに実力で勝てる? キミ、そういう力を借りなければほとんど素人ネ。それに対してワタシはひととおりの訓練を経て精力を高め、テクニックを身につけ、肌を磨き抜いた常任天国軍団。しかも金髪で白人で美しいプロポーションネ。」

 「くっ…」

佐伯:「レッド! すぐに戻るんだ!」

 佐伯さんから通信が入る。

佐伯:「今朝の怪人がまた暴れている。場所はバシノミヤ神社。巫女の姿をした天国軍団35人とパイズリ怪人おっぱいんが、アニヲタ3人に襲いかかっている。彼らを萌え死なせてはならん! すぐに転送をかけるぞ!」

僕:「えっ! でも…」

佐伯:「得体の知れない相手に闇雲に戦いを挑んではならない。ここは一度戻って分析し、常任天国軍団の対策を立ててから戦うのだ。」

僕:「そんな…」

 そうこうしている間に、僕の周囲は白い光に包まれ始めた。

サラ:「ふっふふ…また会おうレッド、いや神谷達郎。武士の情け、マスターはこのまま放置しといてやるネ。」

 HAHAHAという高笑いを聞きながら、僕の体は転送されていった。

 ………。

 ……。

 …。

 転送された先は、杉戸村から少し離れた小さな街にある由緒正しき神社、バシノミヤである。その歴史は古く、古代から連綿と受け継がれてきている神社であったが、近年規模が縮小し、元旦以外に誰も来ない小さな神社に成り果てていた。が、某アニメの影響で一躍活気を取り戻し、今では毎日大勢の観光客が訪れる、日本有数の名所としてその名を轟かせている。

 やってくる観光客の客層はほぼ一種類に集中されている。

 さすがに夕方、交通の便もあまり良くない場所のためか、この時間になると一気に人がいなくなる。そこへ天国軍団が現れ、バイトしていた巫女さまたちを巻き込んで、3人の清楚可憐な男性を虜にしている最中であった。

 古来よりの正統な由緒格式を重んじる巫女衣装に、大流行の萌え要素を加味し、ねこみミコ、うさみミコ、カンガルーミミコ(語尾が”カンガルー?”)、オオサンショウウオミミコなどのツケ耳をしてグッズを売っているおねえさんたちである。中にはうら若き女子校生も混じっているし、神主の娘たちもいるらしい。

 流行に合わせた時点で、一方がもう一方に完全に飲まれてしまういい例である。

 どんな調味料を混ぜても、マヨネーズを混ぜた時点でそれはもはやマヨネーズ系なのである。

 「あひゃひゃひゃひゃ! うさみみ巫女さんの上半身裸ーの、ひんぬーぱいずり最高! もへ〜!!」「うほほおお! 袴を脱いだだらしない格好のねこみみタン騎乗位ぐっじょ〜ぶ!!!!!」「はっ、袴っ娘おしりやわらかでゴワスー! またイクでゴワスー!」

 3人の男たちが、群がるミコミコ萌え娘(全員アニメ声を作っているにゃん♪)に群がられ、あひあひ言いながらどんどんと純情な精液を吐き出し続けている。

 ・・・たすけたくないなあ。

 ま、そうも言ってられないだろう。しかたない、とっとと全員をフザケンショットでイかせ倒しておくか。

 「まてーい!!」

 「!」僕が出ていく直前、別の場所から男たちの声が響き渡った。

 神社の片隅にある、手水舎の低い屋根の上に、4人の男たちが危なっかしげに立っている。待てと言ったのは僕ではなくそいつらだった。全員おかしな全身タイツに身を包んでいる。

 「レッド!」「シュイロ!」「カーマイン!」「アカネイロ!」

 「…4人揃って、成金戦隊! カネモチダー!」4人の全身タイツの男たちは、落ちそうになりながらなんとかポーズを取る。

 …なんなんだこいつら。

 つーか、みんな赤じゃないか。

 成金とか、赤とお金は関係ないじゃないか。

 「破廉恥極まる変態女どもめ。この正義の味方、カネモチダーが来たからには、お前たちの好きにはさせん! とーう!!」

 ポーズを取ってジャンプで降りるかと思いきや、柱を伝って注意深くよっこらせと降りていく全身タイツども。よく見ると股間のところの生地が切り抜かれて、チンチンが丸出しになっている。

佐伯:「…便乗犯だな。」

僕:「便乗犯?」

佐伯:「実は、我々フザケンジャーの活躍は、表には現れていないものの、ひそかに裏で、とくにネット世界ではちょっとした噂になっているのだ。目撃した一般人が掲示板とかに書きまくったのだろう。魔族のこととかは知られていないものの、集団痴女が最近あちこちに出没しては男を襲い、そこにちょくちょく全身赤タイツの変態仮面が出てセックスして遊んでいるって書き込まれている。」

僕:「うわあ…僕ってとことん報われないですね…」仮にドラム缶風呂に入ったら間違いなく廻って川に落ちるタイプなのだ。

佐伯:「ヒーローは孤独なものさ。どうせ連中は、本当のところなど知らずに表面だけ見てうらやましがったり蔑んだりするものさ。それが昂じて、こうしてニセモノの変態仮面が出始めたってわけだな。セックスの快楽だけを求めてやってきた、君とは違うホンモノの変態集団だ。まぁ、魔族の恐ろしさを思い知るだけだろうから、好きにやらせとけ。」

僕:「そうですね。」

 僕は天国軍団の前に出るのをいったんやめ、ことの成り行きを陰からひっそり見守ることにした。

 「うっはあ!」「なっ、なんだこりゃ!?」「おおっ、いい!」「ああ〜もう出るぅ!」

 耳の生えた袴半裸美少女たち35人に突っ込んでいったニセ正義の味方どもは、あっという間に集団で組み伏せられ、一気に全身を責められてしまう。

 上着を脱いで上半身裸+赤い袴の娘、上着だけを身につけて袴を脱ぎ捨てた娘、身につけてはいるけれども相当に着崩して、袴姿のまますぐにでも挿入ができる娘など、大勢のあられもない萌え美少女軍団が、男たちをいきなり咥え込み、全身でこすりあげ、そして挿入しては矢継ぎ早に射精させていく。

 ニセのバトルスーツなので背中にチャックがついており、女たちは遠慮なくこれを外し、男たちを丸裸にしてしまう。そこへ強化されたモチモチの少女肌がはりつき、まんべんなく刺激していく。

 フェラチオ、手コキ、脇コキ、パイズリ、スマタ、挿入。ペニスはひっきりなしに代わる代わる絞られしごかれくすぐられ、どんどん白濁液を搾り取っていく。ペニスに触れていない娘たちは、その自慢の肉体を男たちに押し当て抱きつき、ずりゅずりゅとあちこちでこすりあげ続ける。感じやすい部位はすべて同時に責めまくられた。

 「あひいいい!」「やっ、やめ…」「もう出ないよぉ!」

 はじめの一発は抱きついて数秒で、それからの二発は快感を楽しみ、あとの二発は、「こんな天国を味わっているのに萎えてしまうのはもったいない、もっと気持ちいい状態を持続したい」という根性で、男たちは積極的に精を放出する。

 だが、それとて限界になるに決まっている。これ以上出せば普通なら痛みを伴い一向に立たなくなるし、性欲も激しく減退することになる。

 だが、女たちは容赦せず、しきりに全身を押しつけこすりつけては誘惑しつつ、ペニスには手や舌や胸やお尻が覆い被さってぐりぐりもごもご。ムリにでも半立ちに持ち込んではいきなり挿入して精を絞り上げ続けた。

 天国軍団の魔力によって、男たちはたしかに何度でも射精できるようになっていく。痛みで悶絶することもなく、いくらでも絞りたて揉みたてられて射精させられる。が、その恐怖は計り知れないものがあるし、なにより、快楽が深まりながら心の奥底に溜まる減退感が入り混じって、出したくないのに出させられてしまう極度の疲労と苦痛が、男の体を苛み続けるのである。

 股間以外は苦しくてたまらないのだ。

 当然、これが続けばやがては気を失ってしまうし、相手が上級淫魔であればそれでも激しく精を絞るので、ヘタをすると絶命してしまうのである。

 こんな状態にあっという間に陥ったカネモチダーどもは、泣き叫んで解放してもらおうと懇願し、あるいは女たちを押しのけてその場から逃げだそうとする。

 だがもちろん、天国軍団はそんなに優しい集団ではない。泣いて懇願しようともフェラチオで答えるばかりであり、逃げようとしようものなら集団で組み伏せられて挿入の嵐をお見舞いされてしまう。天国と地獄の同時進行であった。

 もうすぐこの4人も絞りつくされて気を失ってしまうだろう。

佐伯:「あー、一応念のため言っておくが、こいつらは助けなくていいからな。ビームで記憶を奪おうものなら、こいつらはまた同じことをしでかす。徹底的に懲りて二度と同じことができないよう、またその恐怖をネットとかで広めてこれ以上おかしな連中が増えないように、ここで絶命寸前まで懲らしめていただくことにしよう。」

僕:「もちろんわかってますよ。」

 女の群れが離れると、だらしなくペニスをしおれさせた4人組の便乗犯と、アニオタ3人が、気を失ってぐったり折り重なって倒れている。

 そろそろ頃合いかな。

僕:「とーう!」

 僕はホンモノのジャンプで袴娘たちの前に躍り出た。

僕:「天国軍団! お前たちの傍若無人ぶりはモノカゲからたっぷり見させてもらった。観念するがいい!」

 僕はびしっとポーズを決める。

僕:「ナメてる戦隊!」

 シャキーン!

僕:「フザケンジャー! レッド!」

 びしい! き、決まった…完璧なポージングだ。体の切れも抜群である。

おっぱいん:「ちちちちちーー!!!!」

 メカニック怪人が手を上げて天国軍団に合図をする。いよいよ彼女たちが一斉に襲いかかってくるのか。フザケンショットで迎え撃ってやる。

 「きゃーー☆」「にゃはは〜〜♪」

 天国軍団袴娘たちは、僕に立ち向かうどころか、くるりと後ろを向くと、四方八方、一目散にあちこち走り出した。

僕:「えっ!!? あれっ!?」

 あれよあれよという間に、天国軍団たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていく。林の奥に、境内の裏側に、神社の出口に、女の子たちは入っていき、いなくなっていく。

 35人いた天国軍団はアッサリ逃げ、いなくなってしまった。どさくさにまぎれてか、おっぱいんの姿もない。

佐伯:「むうっ!?」

僕:「これは一体…」

佐伯:「くっそ、ヤツらめ、天国軍団がいくら束になっても叶わないとわかったか、レッドと戦わずして逃げおった。」

僕:「どうしましょう?」

佐伯:「まずいな…天国軍団の女は体を乗っ取られ、心に反して操られている。神通力を体内に流し込んで絶頂させないかぎり、奴らは操られたままとなる。」

僕:「しかし…追いかけるにしても35人ちりぢりで、捕まえられないです。」

佐伯:「うぬぬ…奴らの作戦が見えてきたぞ。レッド、いったん本部に戻るのだ。緊急ミーティングを開く。」

僕:「ラジャー!」

 フザケンジャー本部に転送された時、時計は午後11時30分を示していた。

ポッティ:「戻ってきたか。」

佐伯:「ではさっそく、ミーティングの結果を報告する。…並木君。」

 並木さんがすっと立ち上がり、ホワイトボードに何かを書いていく。僕が転送されるまでは数時間の時間のズレがあったから、その間ポッティと佐伯長官と並木さんで色々話し合ったらしい。

並木:「ここ最近の敵の動きから、我々はヘルサたん総統のもくろみを読めるところまで読みました。奴らの目的は、“常任の”天国軍団の育成です。」

僕:「常任…つまり、一時的に体を乗っ取られて魔族のために働かされる天国軍団ではなく、心の底から魔族に忠誠を誓い、何もかもを投げ捨てて自分から天国軍団のメンバーを専門に行う者…」

佐伯:「その通り。たとえるなら、普通の天国軍団は、強制的にラチされてアルバイトをさせられているだけの存在(無給だけどね)。それに対して、常任天国軍団は自分の意思で正社員となった者たちだ(無給だけどね♪)」

並木:「天国軍団は肉体を強化され、ひととおりのテクニックを瞬時にして仕込まれますが、常任の天国軍団はこれに加えて、特別室にて特訓プログラムをこなし、さらにコスチュームも上等品となります。」

ポッティ:「おそらく転送装置と同じ原理で、短時間でもしばらく訓練できる疑似空間を用いておるのだろう。そこで鍛え上げられ、身も心も魔族となった“もと人間”たちといった方がいい。」

並木:「天国軍団が戦闘員となった時、つまりそれぞれの私服やコスプレを脱いであられもない格好になった時、彼女たちの肌の質感や防御力やアソコの具合は、人間だった時の実力のおよそ3倍となります。しかし、常任の天国軍団は、おそらくはそれ以上の強化を施されることでしょう。戦闘データがないために、具体的に何倍になるのかはわかりませんが。」

佐伯:「奴らは他の仕事や家族や恋人などを全て捨て、天国軍団を専門職にしている。それだけにスケベさも半端ではない。並の天国軍団とは実力が格段に違うと見るべきだ。」

ポッティ:「それに、あの白いコスチュームは、サッポロビアビートルの腸のさらにその筋部分でできている。微細な細胞の固まりだが、これをかき集め乾燥、繊維化して、天国軍団の戦闘員用衣装として編み出される。あの衣装は、身につけている者の体を神通力から守ってくれる。つまり、フザケンビームもその他の攻撃も、全てバリアのように周囲に散らしてしまい、女体を流れることがないのじゃ。」

佐伯:「ついでに言うと、俺やお前の特殊呼吸も、波動としてはポッティの神通力と同じ性質のものだから、やはりあのコスチュームの女性には通用しないのだ。」

僕:「でも別にあの衣装は全身を覆っているわけではないですよね。肌部分に直接触れて神通力を流すわけにはいかないのですか?」

佐伯:「そこはうまくできてやがる。どんなにパワーを流そうとしても、1メートル圏内にサッポロビアビートルの生地があれば、神通力は女体の皮膚細胞や性感神経に到達する前に、生地の方に吸い上げられ引っ張られてしまうのだよ。後はこれを空気中に散らすばかり。つまり、あれを身につけている間は、神通力は絶対に女体を流れない。」

僕:「そんな…じゃあどう戦えばいいんですか。」

佐伯:「神通力を直接体内に流すしかない。とはいっても、粘膜で覆われた口腔やアナルやヴァギナであっても、神通力が流れる前に外に出てビートル生地に吸い上げられてしまうから、挿入して神通力を発射するだけでは勝つことができない。それだと神通力は流れない。」

並木:「コスチュームは簡単には脱げないようにできているから、全裸にはぎ取るという手段もナシね。」

ポッティ:「となればチャンスはひとつ。実力のみで戦い、相手をイかせた瞬間に神通力を流し込むしかない。あの生地は乾燥されたと言っても生きておる。魔界の虫だからな。当然、生きるために着ている者から魔力を吸い上げている。だから常任の天国軍団は魔力を消費しながら戦っていることになるな。」

佐伯:「そこで相手を絶頂させれば魔力が相当に消費され、一時的に弱る。すると魔力の供給が一時的にでも絶たれるはずだから、サッポロビアビートルの生地の力も弱まってしまう。そこに神通力を流し込めば勝てる。」

僕:「うう…」

ポッティ:「もっと自信を持ちたまえ。神通力や仙術の力がないというだけのことで、たとえば感じにくくするフザケンジャースーツの力は健在だし、呼吸法によって回復・精力増強させることもちゃんとできる。総精力値は蒸着時の方がはるかに高い上、回復させながら戦い、しかもあまりダメージを受けないスーツであるからして、根気強く戦えば敵の方が先に果てるだろう。」

僕:「うーむ…それでもきついですね。」

佐伯:「ああ。普通の天国軍団が瞬時にして倒されるザコであるなら、常任天国軍団は実力だけで時間をかけて倒していく必要がある。なかなかの強敵だぞ。」

僕:「そんな連中を育成しているというのですか。」

ポッティ:「うむ。おそらく間違いないだろう。だから一時的に活動をストップし、淫夢も見せずに、我々の油断を誘った。その間に、男を襲わずに、まずは天国軍団のメンバーを増やして操りながら、色々な雑用をさせつつ魔族のことや快楽のすばらしさをたたき込み続けたのだろう。」

並木:「女はね、カタいようでいて、一度タガが外れると男以上に淫乱になる生き物なの。きっと彼女たちは、男を襲う仕事はしない代わりに、別の何らかの仕方でその体に何度も快楽を与え続け、洗脳していったに違いないわ。」

佐伯:「それでも多くの女性が、操られている自分の現状を悪夢ととらえ、心の底でもだえ苦しみ続けることになる。が、その中に、なかなかの頻度で、敵の洗脳に“堕ちて”しまう女が現れる。それが常任天国軍団の候補者だ。」

並木:「候補者は一定の訓練を受け、心の底からの忠誠を誓った上で、常任の天国軍団になることが許されるということね。さっきあなたが出会ったなんじゃ虫とかいうかわいいオーストラリア人もそのたぐいというわけ。」

僕:「…。」

佐伯:「おそらく、表面上休止している間に、我々の気づかないところで、奴らは相当人数の天国軍団を作り上げ、その中のごくわずかなエリートが常任の天国軍団に仕立て上げられてきたと見ていいだろう。一定人数の常任天国軍団の養成も終わったところで、活動を再開したのだ。ただし、すでに数多くの天国軍団と常任天国軍団を配下におさめたことをアピールするため、ボウイ将軍が陽動作戦を打ち出した。」

並木:「わかりやすくレーダーに映ることで、レッドをその場におびき寄せ、同時に別の場所でも事件を起こす準備をしていた。結果、バシノミヤ神社では3人、いえ3人と4匹の男の精を絞ることに成功した。」

佐伯:「しかも一度レッドをキノコぐんぐん伝説におびき寄せて、時間稼ぎをしつつ常任天国軍団の存在をアピールするという演出までして来やがった。これはつまり、今後の奴らの組織力が牙を剥き、少数で動いているフザケンジャーなどあっさり煙に巻いてみせるということを言いたかったのだ。」

僕:「実際、僕がバシノミヤ神社で彼女たちに向かい合ったら、天国軍団はみんないなくなってしまいました。」

ポッティ:「うむ、あれも敵の作戦勝ちということだろう。陽動作戦、人海戦術、敵の心理の裏をかく、組織力と計画力で、我々を大きく出し抜いていることを示している。」

佐伯:「それだけじゃあない。これまで天国軍団をレッドに立ち向かわせていたはずのメカニック怪人が合図をすると、全員捕まらないように逃げてしまった。ということは、敵は天国軍団とレッドを戦わせないようにする作戦をとっているということになる。」

僕:「サッポロビアビートルで1着コスチュームを作るのに5000万匹必要とか言ってましたね。さすがに天国軍団全員にそれを着せるわけにはいかないから、常任以外は普通に神通力を通してしまうコスチュームを着ることになる。当然、あっという間に神通力と仙術の餌食になるわけですね。」

ポッティ:「敵もただ手をこまねいて、フザケンショットで一度に10人単位で倒されて行くままにしておくはずがない。レッドが強くなれば、敵もさらに上を行くための手を打ってくる。淫夢へのタイムフラワーもその一環だろう。」

僕:「…。」

並木:「天国軍団はもっぱら男の精を搾り取る要員と雑用係。レッドとは戦わない。その一方で、レッドに対抗できるコスチュームとテクニックを身につけた常任の天国軍団が、レッドと対峙することになるものと思われます。」

ポッティ:「いずれそうなるだろう。今すぐそうなるかどうかは怪しいがな。常任天国軍団を育成しているといっても、心から魔族に忠誠を誓う“堕ちた女性”を見つけるだけでも、相当苦労するはずじゃ。数多くの天国軍団を操りながら、その中から見つけ出していかなければならんのだからな。…しばらくは、常任と普通の天国軍団が入り混じった集団と戦うことになるだろう。」

佐伯:「そうだとしても、常任天国軍団がそのグループにいなかったり、少なすぎたりする場合は、バシノミヤ神社の時のように一目散に逃げられてしまうことも覚悟せねば。」

僕:「淫夢で僕を堕落させ、天国軍団の組織を強化していく作戦、か。侮れないな。…僕は今まで、佐伯仙術のハシリのような程度の技で天国軍団をばっさばっさとなぎ倒し、淫夢でも同じ呼吸法で射精しないようにできたからって、いい気になっていました。もっと日々修行に励み、神通力を高めるだけでなくテクニックや我慢強さの方もしっかり鍛えなければと反省してます。」

佐伯:「立派な心がけだ。やはりヒーローには向上心がなくてはな。さっそく明日から修行を再開するぞ。今まで以上にハードになるから覚悟しろ。」

僕:「はい!」

マスター:「…お邪魔しますよ。」僕が覚悟を決めたところに、あるはずのない声がした。

佐伯:「!!!」

 フザケンジャーの関係者しか見つけられない、公園裏のマンホールの地下。そこが疑似空間となっており、フザケンジャー本部が設置されている。特殊なバリアで、魔族の方々も見つけられないのだから、普通の人間が入ってこられるはずがないのである。

 だが、現に、キノコぐんぐん伝説のマスターが本部に入ってきてしまった。

並木:「なっ…!? ばかな! ここにはバリアが!」

マスター:「ふふふ…」

僕:「そ、そんなはずは! たしかに僕はフザケンビームを…」

マスター:「ああ。たしかに力一杯浴びたよ。あのときは不覚にも縛られた末、気を失ってしまったからね。すぐには駆けつけることができなかったが。どうやら私は、神通力とやらを受けつけない体質らしい。」

ポッティ:「おぬし・・・ひょっとして修験者か。」

マスター:「ええ。ずっと昔に、ほんの少しだけ、色情霊を退治する仕事を手伝ったことがありましてね。その時に少しばかり修行をしました。いや、本当に少しばかりですよ。3年山ごもりをしただけですから。」

佐伯:「ま、まさか、”1000日修験”では!?」

マスター:「ほお、あなたもその道にお詳しいのですな。左様、若い頃に、1000日かけてありとあらゆる苦痛を身に与える荒行と呼ばれるものをやりました。おかげで、魔力や神通力は跳ね返せるようになりましたがね。」

 知らなかった。そういえばマスター、父の友人のつてで知り合った人生の先輩が、昔何をしていたのかは全然知らないぞ。

マスター:「おかげで、霊障のたぐいや、不運や偶然のいたずらのたぐいをはねかえし、実力だけで人生を切り開く力を身につけたのですよ。ただ、魔性の者に対して攻撃を加える方の修行はおろそかにしてしまって。身を守るのが精一杯でしたのでね。」

ポッティ:「ふうむ。もしやおぬしは…」

マスター:「昔のことですよ。年を取ってからは、小さな店で細々と暮らすのが精一杯の小物でございます。…でも、年の功は少しはあるようで。神谷君…いやフザケンジャーレッドの記憶操作のビームをはじき、ネットで情報を集め、勘を頼りに公園まで来てみれば、あなたたちが話している魔族のことを聞くことができました。」

ポッティ:「…この場所を見つけ出してしまうとは。なかなかできんことだ。」

マスター:「ふふふ…」

 オールバックをかっちり固め、苦労の皺が顔面に深く刻まれた黒ヒゲのマスターが、渋く笑ってみせる。

マスター:「キノコぐんぐん伝説の店主、遠藤瀏斉(えんどうりゅうざい)ともうします。46歳妻子なし。今後ともよろしく。ふふふ…」

佐伯:「…アンタ、何が目的だ!?」

マスター:「いえいえ、何も。ただ、私は色情霊や淫魔のたぐいが嫌いでしてね。若い頃に戦った血がたぎるのですよ。」

ポッティ:「…。」

マスター:「といっても、その頃の私も弱小で、雑用係程度の手伝いしかできませんでしたけどね。事実、積極的に邪霊を倒すというより、防御の方が専門でしたし。まして今は年も取り、第一線での活躍ももう望めないでしょう。精力は減退し、まともに戦えばアッサリ負けてしまうほど衰えてしまった。」

佐伯:「…。」

マスター:「そうそう、運転手くらいならできるかも知れませんよ。あと、うちの店は自由に集合場所や会議室にしてくれてかまいませんので。店の奥から指令本部に繋がるようにすれば、もっと人目にも魔族目にもつかなくなりますので。」

並木:「…。」

マスター:「それと。レッドくん、君は現在、一度射精するとそのスーツが脱げてしまうのだったね?」

僕:「よく知ってますね。」

マスター:「店での戦いの時に天国軍団の台詞を聞いていたからね。他の手段、スイッチや言霊などを使う方法では、敵に操られた時などに簡単に脱げてしまうからなのだろう。」

ポッティ:「…たしかに。」

マスター:「射精しても脱げないようにしてしまうと一生脱げなくなってしまうし。」

佐伯:「…。」

マスター:「それなら…むうん!!」

 どごお!

僕:「ごはああ!!」

 マスターはいきなり僕にボディブローを思いっきり喰らわせた! 痛みと衝撃でもんどり打って床に転げ回る。

佐伯:「何をする!?」

マスター:「精とは気。射精時の快感が一定の気の流れをもたらす。それが魔族の力の源となり、さらにフザケンスーツを脱ぐ手段ともなっている。こうして気の流れを変えてしまえば…」

 スーツが回復をしてくれるので、痛みはすぐにひいていった。

マスター:「気の流れは川に似ている。せき止めれば溜まるし、堤防で狭めれば流れは急になる。さらに杭などで流れの方向も変えられる。」

僕:「…?」

マスター:「これで、射精してもスーツは脱げないようになったはずだ。ただし、自分の意思で射精したら脱げるようにしたいと願ってイッた時には簡単にスーツは脱げる。便利だろう?」

佐伯:「何だって!?」

マスター:「敵が何らかの強化をしたら、こちらもそれ以上の強化策を施すのが常識。その上でアイデアで工夫して敵を出し抜くのが肝心だ。組織力に差があるなら、実力と発想で乗り切るしかない。そうだろう? 佐伯殿。」

佐伯:「うぐぐ…」

マスター:「射精時の気の流れを無理矢理ある方向に流すよう、肉体に衝撃を与え、そこに私の気を込めたのだよ。これによって、フザケンジャーレッドは何度イッても神谷達郎には戻らず、そのまま戦うことができる。それでいて戻りたい時には戻れる便利さ付きだ。」

佐伯:「勝手なことを…こおおお…」

 ばちばちばち! 佐伯長官の体が光る。まるで電気を帯びたみたいだ。まずい、ここで一波乱か!?

ポッティ:「待つんだ佐伯長官。」

佐伯:「いきなり来て仲間になるだと!? 信用できるか。ヘルサたん総統やカリギューラ女王の仲間だったらどうする!?」

マスター:「ほお。ラスボスの名前はヘルサたん総統、カリギューラ女王かね。いいことを知った。」

佐伯:「いい加減にしろ。これでもくらって気絶しやがれ!」

 佐伯長官からありったけのビームがぶちまけられる。だが、その神通力は何も破壊することなく、マスターの周囲をぐるぐる回ったかと思うと、そのまま消えてしまった。音も立てず埃ひとつ立たなかった。

佐伯:「なっ…!!?」

マスター:「我流、か。すさまじいパワーだ。これなら上級淫魔でもアッサリ倒せそうだねえ。では私は、佐伯殿の1000分の1のパワーで対抗しよう。」

 佐伯さんを指すマスターの指先がほのかに光った。

佐伯:「うぐっ!」

 突然佐伯さんは肩に激痛を覚え、右手で押さえて膝をついた。

佐伯:「馬鹿な…佐伯仙術の神通力は防御も完璧なはず…」

マスター:「ええ。完璧ですよ。パワーも私の千倍以上ある。守りも鉄壁だ。しかしね、私はその気の流れを、パワーは同じまま、数ミクロンまでに狭めて見せたのですよ。ホースの水も狭めれば勢いよく水が出る。1000分の1の力でも、気の流れを極端に狭くすれば、鉄壁の神通力ガードさえ突き抜けさせることができるというわけですな。」

佐伯:「うぐぅ…」

ポッティ:「やめるんだ。この男は敵ではない。」

僕:「そうですよ。僕が小さい頃からお世話になっているすごい方なんです。」

佐伯:「…。」

マスター:「信用しないならそれも結構。たしかにいきなり来てすぐに信用しろという方がお門違いでしょう。時間をかけて和解すればよいのです。もし信用していただけるのなら、魔族のこと、フザケンジャーのこと、もっと教えていただくことにしましょう。…そうそう、はじめは運転手からスタートします。昔もそうでしたからね。ご用命がある時はキノコぐんぐん伝説へ。」

 マスターはマンホールを登って出て行った。

並木:「…。」

ポッティ:「あの男、その昔実在していた、”性霊バスターズ”の生き残りなのだよ。」

佐伯:「なっ!?」

僕:「性霊バスターずぅ?」

ポッティ:「男を襲い精を抜き取る色情霊を専門に退治する組織だ。私は直接タッチしていないが、彼らは霊力とセックス力で色情霊たちを撃退し、性霊界に押し戻す仕事をしていた。今から35年ほど前、性霊バスターズのメンバーたちは全員、ある事件を追って性霊界の奥、地獄や魔界にいたるまでのところに深入りしてしまった。そしてそのまま行方不明になってしまったのじゃ。」

僕:「…。」

ポッティ:「マスターはその時、性霊バスターのリーダーであった。遠藤瀏斉といえば、正統な修験道の修行をしっかりマスターした者でもある。1000人が挑んでも1人しか達成できないといわれる荒行じゃ。相当に謙遜していたが、実力ははるかに高い。年齢による衰えもあって、第一線というわけにはいかないだろうけれども、セックスバトルという観点からいえば大先輩に当たる。」

佐伯:「くっ…」

ポッティ:「長年かけて体系化されてきた理論の通りの修行をした相手、勝てるはずもあるまい。悔しがる必要もなかろう。それに、私の知る限り、あの男はずいぶん遅く修行を始めている。確か大学生の頃に性霊がたむろすアパートに引っ越してしまって、事件に巻き込まれているうちに興味がわき、そのまま性霊バスターのメンバーとなった。”付き添いの運転手”から下積みを始め、セックス力と霊力の修行を積み重ね、ついには1000日修験を経てリーダーにまでたたき上げてきた男。それからほどなくして性霊バスターズは消滅・解散の憂き目を見たが、彼の実力は努力のたまもの、老いても健在というわけだ。」

並木:「すごい・・・」

 後は僕の知るとおりだ。喫茶店を経営し始め、ヒットはしないものの細々と存続して、恋愛も結婚もせずに年中無休で働き続け、幼い僕もよく面倒見てくれていた。僕が失恋して登校拒否となってマスターのところに入り浸っていた時も、温かく見守りながら時に厳しく接してくれた人だ。

 ポッティのいうとおりだとすると、修行は30歳近くなってから始めたことになるのだが…ちょうど佐伯さんと同じくらいの年に。

ポッティ:「それにしても、フザケンジャースーツの気の流れをも変えてしまうとはの。たいした技術の持ち主じゃ。」

僕:「あっ、そういえば、僕ってどうなったんですか?」

ポッティ:「射精の時の気の流れ、具体的にいうと“ああ気持ちいい”という性的な悦びの情念が、敵の魔力の源になる、奴らはそういう快楽をエサにして成長しているのだ。その快楽と依存が射精時に大量に放出されることによって、淫魔を強化し、フザケンジャースーツも脱げてしまう。だが、その気の流れが対外に放出されないようになったのだろう。そうすることで、いくら射精してもそれだけではスーツが脱げることにならんのだ。」

佐伯:「つまり、何度イッても強化されたまま再戦できるというわけか。」

ポッティ:「うむ。その一方で、気の流れを変えている杭を抜いた状態、具体的には「スーツを脱ぎたい」と思ってオナニーして射精した場合には、簡単にスーツが脱げる仕組みになっておるようじゃ。」

僕:「むむむ…女に負けてイッても神谷に戻らないなら、戦いやすくなりますね。」

ポッティ:「そうとも限らんぞ。その慢心がさらなる敗北を呼ぶ可能性もある。それに、気の流れを変えてスーツが脱げないようにしただけのことであるから、魔族にイかされたダメージはやはり体内に蓄積されてしまう。射精を重ねればあっという間に体力が尽き、その気の行き所がなく体内に溜め込まれるために精神までもむしばまれるだろう。」

僕:「…。」

ポッティ:「したがって、一度射精して神谷に戻れば後は抜きまくられて絶命してしまうのと同様、神谷に戻らずとも、抜きまくられれば力尽きて絶命してしまうことになる。安心は禁物じゃ。」

佐伯:「くっそ、やっぱり余計なことだったか。…いや、少しは戦いを有利にできるわけか。とにかくいずれにしても、これまでどおりイかないように細心の注意を払いながら戦うに越したことはないな。」

ポッティ:「うむ。それと、射精してもフザケンジャーとして戦うのがいやなら、いつでも“射精と同時にスーツが脱げる”状態に戻せるぞ。さっきも言った通り気の流れを軌道修正しているだけだから、その修正したものを元に戻せばよいのだ。どちらの状態も選べるようになっているみたいだ。好きな方で戦うといい。」

僕:「はい。」

佐伯:「さあ、今日はもう遅い。解散にしよう。」

 僕は佐伯さんたちに別れを告げ、家路についた。僕にはこれから先、夢の中での戦いが待っている。

 おそらく一度も射精せずにすませることはできないだろう。なんだか今日は疲れ果てていたし、何もする気になれなかった。僕はそのまま、レッドスーツを取ることなく、ベッドに倒れ込むと、すぐに眠りに落ちていったのだった。

 

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