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ナメてる戦隊フザケンジャー!


第19話 敵の新たなる猛攻!

 

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カリギューラ女王:「おおおおっ!! ついに新怪人の誕生か!」

ヘルサたん総統:「ええ。おっぱいんが健在なうちに、もう一人作っておく作戦よ。こうやって怪人を何体も制作しておき、数カ所で事件を起こせば、フザケンジャーは対応できなくなる。わざと活動を控え、フザケンジャーと戦わせなかったのも、この作戦のため。どんどん量産して、種を地上にばらまかせるのだ。」

フローリア将軍:「…。」

カリギューラ女王:「ふむむ。見事な作戦じゃ。これでポッティどもに一泡もふたアワも吹かせてやれるというものじゃ。ぬあっふぁっふぁ!」

ヘルサたん総統:「さあ、時は満ちた! いでよ、手コキ怪人てこきんぐ!」

怪人てこきんぐ:「おててててー!!!!!」

青い体の、手と腕が異様にキレイな美女が、装置から煙を吐き吐き飛び出してきた。もはや怪人登場はノリだけで進んでいるのである。

フローリア将軍:「あいかわらず安直なネーミングだな。」

ヘルサたん総統:「何か言った?」

フローリア将軍:「いえ、何も…。それで、今度こそ動き始めますか?」

ヘルサたん総統:「そうね。まずは様子見といきましょう。天国軍団とフザケンジャーは戦わせないこと。素人の男たちの精を抜き取り、雑用をこなす以外の仕事はさせてはだめよ。」

カリギューラ女王:「うむうむ。素人の天国軍団ではもはや、フザケンジャーには太刀打ちできないからのお。」

ヘルサたん総統:「レッドと戦うのはあくまで、常任天国軍団以上の実力者のみ。それ以外の者は、レッドが登場したとたんに逃げるがよい。淫夢で弱体化するか、さもなくばレッドが射精して元の神谷に戻った時だけ、取り囲むようにしましょう。」

フローリア将軍:「しかし・・・それでは、常任天国軍団とフザケンジャーレッドとの一騎打ちになりかねません。軍団とといっても、まだまだ常任は見つからない。一対一の戦いで、いくらフザケンジャーと佐伯仙術の神通力を封じるサッポロビアビートルの戦闘服を着ていたとしても、はたして勝てるものなのでしょうか?」

ヘルサたん総統:「そこは心配無用。レッドが強いのは、あくまであの神通力スーツとおかしな仙術のおかげでしかない。神通力が通じなければ、あの男のセックステクニックはまだまだ素人同然。鍛え抜かれしかも魔族並みに強化された常任天国軍団の肉体を前にすれば、ひとたまりもなく射精するでしょう。それに、時間をかければ、常任天国軍団は必ず増える。」

フローリア将軍:「…やはり、そこが狙いなのですね。」

ヘルサたん総統:「言ったはずよ。様子見だってね。負けたら負けたでさらに対策を打てばいいし、勝てるようなら引き続き常任天国軍団とメカニック怪人を増やしていってどんどんたたみかけていけばよい。」

カリギューラ女王:「ふっふふふ…女の手はやわらかくてすべすべ。白魚のように美しい。しかも器用で変幻自在に男のナニを扱うことができる。今度こそ、フザケンジャーの快楽に溺れる姿が目に浮かぶようじゃ。」

ヘルサたん総統:「さあ、カリギューラ女王。新怪人が生まれたらすぐに装置に入ってください。」

カリギューラ女王:「うむ。そういう段取りじゃったな。そうやってどんどん怪人を作っていき、増やしていくのじゃ。私も協力するぞ。」

フローリア将軍:「カリギューラさま、少しお休みになっては?」

カリギューラ女王:「何を言う。いよいよ念願が叶うのだ。のんきに休んでおる場合ではないわ!」

フローリア将軍:「…神通力の分離は、肉体に相当の負担となっているはずですが。」

 成分献血だって連続しては受けられない。そんなに四六時中装置に入っていては、ダメージも相当に大きいし、疲労も蓄積されているはずである。

カリギューラ女王:「はっはっは、大丈夫大丈夫! さあ仕事じゃ! がんばるぞー!」

 カリギューラ女王は意気揚々と装置に入っていった。

ヘルサたん総統:「フローリア将軍、装置に入るなとはどういうつもりかしら?」

フローリア将軍:「…。」

ヘルサたん総統:「怪人の制作が遅れて、みんなフザケンジャーに倒されてしまったら、計画は元の木阿弥に戻ってしまう。そのくらいのことがわからないの?」

フローリア将軍:「…まるで怪人がみんな倒されてしまうことを前提にした口ぶりですね。」

ヘルサたん総統:「…。くっくくく…フローリア将軍、ますます気に入ったぞ。お前のそういうところが私は好きだ。」

 ヘルサたん総統はにやりと悪そうな笑みを浮かべる。

フローリア将軍:「…。」

 ヘルサたん総統の目的はどこか別のところにありそうだ。フローリア将軍はヘルサたん総統にかしずきながらも、決して警戒感をゆるめないのであった。



######



マスター:「では神谷君。淫夢によって毒された肉体から、毒素をションベンとして排出する方を、これより伝授する。」

僕:「はい! よろしくお願いします!」

マスター:「いっておくが、そうそう簡単にマスターできる技術ではない。しばらくは私の手を借りるか、装置に入ってもらって、毒素を抜き出すしかない。ゆくゆくは自分でできるようになればよいのであって、すぐの効果を求めてはならん。わかったね?」

僕:「了解です。」

 今日はフザケンジャー本部で修行の日だ。まずは、マスターから淫夢の毒を抜き出す方、気の流れについてご指導いただく。

マスター:「まずは君の実力を見たい。例の佐伯仙術の呼吸をしてみたまえ。」

僕:「わかりました。…こおおおお・・・」

 呼吸をどんどん深めていく。体内に神通力が蓄積されていった。フザケンジャーのスーツを身につけていなくても、スーツ以上の神通力が体内を駆けめぐっている。蒸着すれば鬼に金棒、フザケンジャースーツの神通力との相乗効果で、僕は相当の攻撃力を誇り、また鉄壁の防御力を身につけることができるのだ。

マスター:「ふむ。それじゃあ、そのまま呼吸を止めなさい。」

僕:「…。」

 呼吸を止めると、溜め込まれた神通力が体内でしぼんでいく。ものの数秒で、神通力が消えてなくなってしまった。

マスター:「それじゃあダメだな。呼吸を止めても神通力を保持できなければ、話にならん。」

僕:「そんな・・・」

マスター:「そのたぐいの仙術は、神通力を体内で“発電”するイメージで気を練っているのだ。発電したら、その電気をどこかの電池に溜め込んでおかなければならない。体内に充電器を持っているというイメージで、どんどんそこに溜め込み、好きな時に好きなだけ神通力を引き出せるようにしておかなければならん。その充電器がない状態では、呼吸を止めたり、呼吸が乱れたりしたとたんに、せっかく発電したエネルギーが自然放電してなくなってしまう。」

僕:「うう・・・」

マスター:「そんなことでは、毒を放出するどころか、まともに戦ってはいかれまいに。もし異空間に引き込まれ、呼吸ができない(できなくても苦しくはないが)環境に追いやられたらどうする!? 仙術は使えず、あっさり敗北を喫してしまいかねない。…まずはそのところから鍛えていかないといけないね。時間かかるぞ?」

僕:「あうう…すいません。」

マスター:「何事もチャレンジだ。佐伯仙術で気を練り、神通力がたまったら呼吸を止める。それでも神通力が減少しないように、気を踏ん張りなさい。まずは、体の外に神通力を逃がさないこと。それができるようになったら、体内の1カ所に神通力を充電器のように溜め込んでおくように持っていく。何回もチャレンジしてみなさい。」

僕:「はい!」

 その後僕は何回となく、佐伯仙術で神通力を発電しては呼吸を止める訓練をくり返した。

 だが、何度やっても、呼吸を止めたとたんに神通力がしぼんでいく。

マスター:「だめだだめだ! まだ神通力が体から抜けていってしまう。いいか? 君の体は割れない風船だ。穴だらけでは空気が外に逃げてしぼんでしまう。特殊な呼吸で風船をふくらませても、穴が1カ所でもあいていればそこから空気が逃げてしまう。絶対にどこからも逃がさないように、体の風船をイメージするのだ。ほれ、もう一回!」

僕:「はい! はああああ…」

 体内に神通力が溜め込まれる。呼吸を止める。「ん〜〜〜っ!!!!!」全身をこわばらせて、神通力が外に出ないように強くイメージした。僕は風船だ、僕は風船だ。1カ所でも、針の穴以下の隙間でもあったら逃げてしまうから、ぴっちり絶対に外に逃がさないようにするんだ。逃がさないようにするんだ。

 だが、数秒で神通力は消えてしまった。

マスター:「違う! 力んだって結果は変わらんよ。力の問題じゃあない。イメージの問題、精神力だ。イメージが貧困だから、神通力を溜めておけんのだ。いったいぜんたい、君の体の中のどこにどんな風に神通力が発電されているか、ちゃんとイメージできてるのかね?」

僕:「うう・・・」

マスター:「神通力がどんな風に体内を流れていて、どこに穴があって、どこから何カ所から、どのくらいの量ずつ神通力が抜けていっているか、100%理解しているのか?」

僕:「すいません。まったくイメージできません。」

マスター:「じゃあ、背中におっぱいが5個くっついている女をイメージしてみろ。」

僕:「えええっ!? ・・・えーと。」

 背中におっぱいが五つ。

マスター:「次にそのおっぱいが背中から離れ、おっぱい爆弾として女の体の周囲を飛び回っているとイメージしろ。」

僕:「うう…」

マスター:「一個一個がどのスピードでどの場所を飛んでいるか、正確に把握できるか?」

僕:「あうう・・・」

マスター:「じゃあ、3個目と5個目は今どこを飛んでいる!?」

僕:「はうあっ! あわわ・・・」

マスター:「想像が追いついていないだろう! だから神通力が逃げるのだ。そういう想像力、イメージの力が足りなければ、神通力を体内にとどめておくことなどできん!」

僕:「すっ、すいません!」

マスター:「謝っている暇があったら呼吸しろ。イメージに一生懸命になりすぎて仙術の呼吸が止まってるぞ! 次はティッシュペーパーをイメージだ。表と裏があるだろう。じゃあ、それを器用に片面ずつ剥がしていって、表しかない状態にするまで剥がし続ける想像をせよ。」

僕:「えええっ!?」

 てぃ、ティッシュペーパー! 薄い紙がたしか二枚一組になっているから、それを引き剥がすのは簡単だな。その引き剥がした薄い紙にも表と裏がある。さらにこれを器用に剥がしていって…さらに薄い紙にする。ああ、それでも表と裏が必ずある。表か裏の片方しかないまでに薄く剥ぐって、どうやるんだよ!?

マスター:「呼吸を止めるな!」

僕:「はうっ!」

マスター:「佐伯君だって、自分の神通力がどこにあってどう流れているかはちゃんとイメージできているし、一度発電した神通力は使い果たすまでしっかり溜め込んでおけるぞ。それにひきかえ情けないとは思わんのか。」

僕:「ひええ…」

 …思ったより過酷な修行だった。佐伯仙術がただ座って呼吸を深めるなら、マスターの修行はそれに無理なイメージをともなう押し問答がついてくる。

 そんなこんなで、すでに時計は正午にさしかかっていた。

マスター:「む。では今日はここまでとする。」

僕:「はうぅ・・・ありがとうございました・・・」

 結局、呼吸を止めても神通力を溜め込んでおくという目的は、片鱗さえも満たせず、一歩も成長できずに終わってしまった。

マスター:「なぁに。1日でできるはずもない。笛を吹くのと同じさ。横笛や尺八のたぐいは、うまく空気を送り込まなければ音さえも出ないだろう? 今はその“音を出すようにする”段階でしかない。やっていくうちにコツはつかめる。」

僕:「はい・・・」

マスター:「今朝も言ったが、魔族は男の精神エネルギー、気持ちいいという感覚や性的な興奮といったイメージを魔力として吸い取っているのだ。逆に、こちらの神通力も同じイメージの力がものを言うのだとすれば、その本質はおのずからわかるであろう。この戦いは、セックスバトルという肉体的な戦いというだけではない。精神力の勝負でもあるのだ。そのことをゆめゆめ忘れてはならんぞ。」

僕:「ありがとうございました。」

マスター:「そろそろ昼食を作る時間だ。朝と昼はうちで食べていくといい。夕食は、さすがにうちも忙しくなるのでね。それぞれで食べていただくことになる。」

僕:「あ、はい。そうだ、何か手伝えませんか?」

マスター:「いや、けっこうだ。まだ別の修行をするといい。」

僕:「?」

マスター:「作るのと食べるのとを別に考えない方がいい。そのうちわかるさ。今はとにかく、神通力をうまく操る方法を見つけ出すことが先決だ。そうすればそこに侵食している淫毒の流れも見つけ出すことができる。これを股間に集中させ、尿道から放出する強いイメージを体内に流しさえすればいい。精進あるのみだぞ。」

僕:「はい。」

 佐伯長官たちと喫茶店で待っていると、マスター手作りの昼食が出てきた。

マスター:「当店自慢のしょうゆラーメンでございます。」

僕:「喫茶店なのにラーメン…本当に何でもありですね。」

マスター:「今時は“定番メニュー”だけじゃあやっていかれんのよ。朝食もランチも夕食もお酒もしっかりサポート、その上基本としてコーヒーとお茶がうまくないとね。」

佐伯:「どうでもいいが、ラーメンの具は?」

マスター:「メンマだけ。」

佐伯:「…。」

僕:「…。」

並木:「ずちゅるるる! うんまー ゜▽゜;」

僕:「・・・食ってる・・・・・・」

 まぁ提供していただく身だし、文句は言えない。僕たちはラーメンをすすり始めた。片隅に入っている3本の細いメンマはうまかった。

 昼食を済ませると、午後の修行の始まりだ。

 並木さんの指示のもとで、基礎体力のトレーニングを行った。走り込みから筋力トレーニングまで、しっかりプログラムされている。へとへとになったらポッティの回復術が施された。過酷でもがんばらないと。

 夕方になる。マスターに世話になっているのでせめてもの恩返しにと、喫茶店の掃除をみんなでやる。

 普段からきちんと掃除も行き届いていて、簡単な作業だけで掃除も終わってしまった。マスターは夕食の支度に入る。

 ちょうど基地に戻った時に、警報が鳴り響いた。

”ゼッタイ ナイ ト オモッテイタ いかムスメ マデモガ あにめカ シチマッテルヨ・・・ツギハ ゼッタイレイイキ アタリ ガ アブナイ デ げそ・・・”

 ちょっ…警報サイレンなのに何かしゃべってるぞ!?

並木:「怪人と天国軍団の反応をキャッチしました。場所は東京都月野市在住の杉原さん(仮名)宅の前の私道。そこで13人の天国軍団が杉原竹蔵さん(69歳・仮名)を襲っています。」

僕:「よし、すぐに出動します。…蒸着!」

”お兄ちゃん! お兄ちゃん! ハイハイハイ♪ (中略)愛ーしてる♪ ちんこおおおー^▽^!!!”

僕:「ぶっ!!!」

 なっ! なんなんだこの歌は。

佐伯:「ほう。今度のサイレンは歌つきか。凝ってるな。」

僕:「ちょwww警報いい加減にしてくださいよ! てか大の大人のレディがいいトシして嬉しそうに”ちんこー”って。いくら声優としての仕事だからって、お父さんお母さんが聞いたら泣いて嘆きますよ!」

 てゆーかこの歌を歌っているシス●ーぷり●ぷ●んは、みんな天国軍団か何かじゃあないのか!? いくら仕事だからって、ヤケクソとか割り切りとかいうレベルじゃあないぞ。

”お●んこちゅるちゅるワレメもヌルヌル♪ だんだんこすれておまん●いっぱい!”

僕:「ぶはっ!!!!!」

 い、いまハッキリおま●こって言った! 放送禁止用語なのにはっきり言い切りやがった。ナニを考えてるんだ。

 まぁ、歌っている人々よりも何よりも、歌詞と曲作ったヤツと歌わせてるヤツが一番頭狂ヤンキースですよ。

並木:「というわけで別の天国軍団の反応をキャッチしました。佐賀県滋賀市すあま町立セレブ公民館にて、あの反町大五郎さんが天国軍団26人に襲われています。」

僕:「だれだよ?」

佐伯:「決まっているじゃあないか。あのトップモデルの反町大五郎さんだよ。」

 知らないよぅ・・・そんな人は架空です実在の人物とは関係ありまん。

僕:「つーかセレブ公民館って…」

並木:「セレブな人たち御用達の公民館だよ?」

僕:「セレブは公民館なんか使わないだろ!」

佐伯:「むう。困ったな。同時に二カ所で天国軍団が騒ぎを起こすとは。はたしてどっちを先に行くべきか。」

 普通に話を元に戻す佐伯長官。だから地名とかのネーミングをなんとかしろと小一時間(ry

ポッティ:「それが奴らの作戦なのだよ。先般の陽動作戦といい、今回の同時多発天国軍団といい、こちらの手駒がレッド一人しかないことを百も承知の上で、同時に活動しておるのだ。」

佐伯:「よし、先に警報が鳴った月野に行くことにしよう。」

 そこだけ実在の地名がモデルなのね。地図とか見て適当に選んだわけじゃあないぞよ。

佐伯:「月野の天国軍団を蹴散らしてから、すぐにセレブ公民館に転送する。空間座標が正確なら時間がずれていくから、たとえ月野で結構な時間戦闘したとしても、セレブ公民館はそれよりも過去に転送されることになる。もしかしたら時間的に間に合うかも知れんな。」

僕:「それってけっこう僕を酷使することになりますよね? 労働組合作ってもいいっすか?」

佐伯:「別にかまわんが、組合員はお前一人だし、別に社員として雇っているわけでもないから交渉はおろか労働諸権利はいっさいないので。安心して過労死しろ。腹上死も可。」

僕:「そんにゃ〜…」

並木:「転送装置の用意が整いました。」

佐伯:「さっそく向かってくれ!」

僕:「ら、らじゃー・・・」

 僕は転送装置の中に入った。機械がうなり始めある。目の前が真っ白になっていった。

 気がつくと、僕は東京は多摩地方のとある街に着いた。大通りを少しそれたところに私道があり、その先には昔から居を構える杉原家があるのだ。その私道の真ん中で、天国軍団が竹蔵さんに襲いかかっているところだった。

 転送装置は時間をさかのぼらせる。不確定性原理とか何とかの影響で、時間と空間を同時に確定させて転送することはできないのだそうだ。時間を正確に指定すると空間がずれ、宇宙空間やら恒星の近くやらに投げ出されて死んでしまうらしい。宇宙の規模から考えて、わずかな空間のずれであっても命取りになってしまう。よく考えるとたいへんデンジャラスである。

 したがって、空間座標は絶対に正確に指定せざるをえないのだが、そうすると時間の方がずれていき、過去や未来に転送されてしまうらしい。数キロ単位の誤差はあるものの、おおむね正しい場所に転送されることが多いから、その分時間は不正確となる。

 ちなみに、可能性として、まったく別の世界に飛ばされてからもとの世界に戻っていることが考えられるらしい。その世界での出来事や記憶は「なかったこと」になるため、死ぬこともなく年も取らず覚えてもいないのだが、その辺はちょっと入り組みすぎていてよく分からない。

 転送装置から別のポイントに飛ぶ場合、時間は過去へとさかのぼるらしい。逆に、別の場所から転送装置へと戻る場合は未来に飛ぶ。転送装置を中心ポイントとすると、「下り」は過去旅行、「上り」が未来旅行といったところか。

 過去へさかのぼるということが物理法則を相当に冒しているため、さかのぼり方はかなり小さい。せいぜいが数分前への転送となる。が、未来への転送はまだその制約が小さいため、数時間から丸1日以上の未来への転送となることもあるらしい。

 この性質を利用すれば、天国軍団の警報が鳴ってから転送されても、被害が拡大する前に到着することができ(場合によっては事件が起こる前に転送され、天国軍団が男を襲い始めた直後に蹴散らすこともできる)、さらに今回のように、東京で事件を解決してから滋賀へと転送されれば、滋賀に転送される時にさらに時間をさかのぼることができるため、滋賀であっても被害を最小限に食い止めることができるのである。

 その結果、ある程度なら、複数箇所で同時に天国軍団が活動を初めても、僕はその全部を食い止め、天国軍団の狼藉をただすことができるというわけだ。

 と、いうことは、同時に複数箇所で天国軍団が現れても、同時に複数箇所にフザケンジャーレッドが出現することになる。ある時間帯、僕は世界のあちこちに同時に出現していることになる。同じ僕が何人もいるというパラドクスが生み出される。

 僕自身にとっては、何度も同じ時間帯に転送されて、結局一人だけで全部を解決することになるので、相当に疲労困憊するはずだ。

 とにかく、天国軍団の暴虐を止められるのが僕しかいない以上、酷使されるのは致し方ないのかも知れない。

 今まさに、若い女性の集団が初老の男性に襲いかかろうとしている場面に転送された。服を脱いで誘惑するよりも前に転送されている。ここで食い止めれば、被害は最小限で済むだろう。僕は彼女たちのもとへと走り寄った。

 「はっはっは! お前たちの快進撃もここまでだー! このフザケンジャーが来たからには、お前たちの好きにはさせないぞ!」

 「!!!」女たちが一斉に振り返る。竹蔵氏(仮名)は、いきなり若い女たちに囲まれてわけが分からない上に、おかしな赤い変態仮面が走ってきているので、ますます混乱しているようだ。

 「フザケンビーム!」僕は竹蔵氏にビームを当て、気絶させる。これで一連の記憶は失われるはずである。

 「ちちちちー!」モノカゲから怪人が飛び出してくる。こいつは…パイズリ怪人おっぱいんだ。Dカップ以上の巨乳ながら、形も良く、乳首がツンと上を向いていていやらしい。

 怪人が合図を送ると、天国軍団たちが一斉に動き出す。

 ここで彼女たちは戦闘員となって僕を取り囲み、一斉に襲いかかってくるはず。アクションの見せ所だ。フザケンスーツと佐伯仙術で、一瞬で蹴散らしてやろうぞ!

 「悪の快楽地獄から世界を救う!」びしっとポーズを取る。「破廉恥きわまる変態女に神の鉄槌!」別のポーズ。「淫魔の暴虐食い止める!」別のポーズ。「それがこの僕!」くるりと一回転。「正体不明の赤い純潔! ナメてる戦隊! フザケンジャーーーっっ!!!」

 きっ! 決まった! 今のは台詞もポーズも完璧だった! 我ながらかっこいいぞ! これからも登場時はこうしよう。

 いよいよ、天国軍団との戦闘開始だ。

 だが。女の子たちは襲いかかってくるかと思いきや、蜘蛛の子を散らすようにちりぢりになって逃げていく。

 「えっ!? あれっ!?」突然の拍子抜けだった。

 「きゃははは!」「ばーかばーか!」「今のポーズとか台詞よく考えろー!」「けっこう恥ずかしいぞ〜」「しんじゃえー!」

 「はうあ!」女の子たちは逃げ際に僕を指さして思いっきり罵倒し嘲笑してから、いなくなってしまった。

 怪人の姿もない。道ばたで倒れている竹蔵さん(仮名)と、決めポーズのまま固まっている僕だけが取り残された。さっきの怪人の指令は「散れ!」の合図だったのだ。

 「あう〜…」 ○| ̄|_

 そのままがっくりと失意体前屈。敵とはいえ、女の子たちに集団で一斉に罵倒されると激しくへこむ。それがウレシイという殿方も世の中にはいらっしゃるようですが、僕の心には相当にこたえたのである。

ポッティ:「何やっておるレッド! しっかりせい!」

僕:「そ、そんなこと言ったって…」もう二度と決めぜりふとかポーズとかは封印しよう。以前のシンプルな名乗りだけでいいやもう。

ポッティ:「これが敵の作戦なのだ! コトを起こしておいて、君が来たらちりぢりになって逃げていくのだ。陽動じゃな。そんなことでめげている暇はないぞ。今から5分後に滋賀に転送を始める。そうすれば、そこで事件が起こったちょうどその時間に転送されるだろう。」

僕:「待ってください。多分このままじゃあ、行ってもムダになると思いますよ。僕が到着したとたん、天国軍団は僕を罵倒嘲笑しながらどうせ逃げていくんだ。」

ポッティ:「おそらくそうだろう。だが、何もしないでいるわけにはいかないだろう? せめて事件を最小限で食い止め続けられれば、それだけでも収穫というものだ。…もっとも、天国軍団を逃がしっぱなしということは、彼女たちは体を乗っ取られたまま日常生活に戻ることになるから、チトかわいそうだがな。」

僕:「…。」

 僕は竹蔵さんを介抱し、木陰に寝かせると、その場をあとにした。私道から外れ、人気のないところに身を潜め、時間が経つのを待った。

 しばらくすると、僕の体が白く光り始める。と同時に、周囲の光景も白い光に包まれ始めた。いよいよ転送が始まるのだ。

 時間をさかのぼって転送されたため、転送された直後はフザケンジャー本部はほとんど情報を掴んでいない(ポッティ以外)。そこからしばらく経てば、佐伯長官たちも情報を把握できる仕組みだ。

 佐伯さんたちからすれば、僕が転送された直後にモニターを見るのだが、そこに映し出される映像は、僕がすでに戦い終わっていたり、少なくとも数分以上経過した状況が映ることになるのである。時間のズレというのは何ともややこしい。

 白い光は、佐伯長官たちがモニターで「天国軍団が散り尻になってがっかり」の僕の様子が映し出されているのを確認後、すぐさま転送遠隔操作のスイッチを押したために、発動したものだった。

 目の前の光景が変わる。東京の拓けた町並みから一転、周囲を山に囲まれたのどかで美しい田舎の風景に様変わりした。

 僕の目の前には、木造平屋建て、15メートルもないような小さな小さな建物がある。人気がなく、窓ガラスが割れ、もう30年以上も取り替えていないのではないかと思われるボロボロの畳の一部屋のみの建物だ。看板には木の板に手書きで“セレブ公民館”と書いてある。これだけが後付けでネーミングされたのは、看板だけなんだか新しいことからうかがうことができた。

 どう考えても、セレブが使うような建物ではない。

 そこに、あのトップモデルの反町大五郎さんが囚われていた。町中の娘たちが集結し、反町氏一人めがけて押し寄せてきているところだった。ご丁寧に数枚の布団を持参の上、畳の部屋に敷き詰め、裸にひんむかれた彼の手を縛ってそこに寝かせ、いよいよこれからコトを起こそうとしているところだった。

 「若い娘が普段寝ている布団の匂いはどお?」「これからいっぱいええコトしたるけんね。おとなしく…ふふっ、みんなに出すんよ?」

 女たちは震える反町氏を取り囲んで服を脱いだ。さすがにトップモデルの反町さんでも、26人の町中の娘たちの裸を前に戦慄しているらしい。

 よし、天国軍団は揃ったし、そろそろ飛び込むとするか。

僕:「あーはいはい。ふざけんじゃーれっどですよー。び〜む・・・」

 フザケンビームが反町さんに当たると、彼は白目を剥いて気を失った。記憶が奪われる。

「・・・。」天国軍団の女たちはきょとんとして、赤い全身タイツの変態野郎を見つめた

僕:「もーどうでもいーやー。散るなら散れよ〜」手の甲で女たちを追い払う仕草。

 女たちははっと気がついたのか、ばっと身を翻すと、無言で公民館を飛び出していく。一瞬にして、公民館(?)には、僕と反町さん以外誰もいなくなってしまった。

 やっぱり僕が登場したらちりぢりに逃げるよう指示が行き届いていた。思った通りだ。げんなりする。

 まぁ、戦わずして男たちを魔女どもの手から救えるのなら、それはそれでいいかもしれないけど。やっぱりやる気がでない。つい投げやりになってしまう。

 転送前からアレコレ考えていたが、やはり天国軍団たちが逃げるようになったのは、僕と彼女たちの実力があまりにもかけ離れすぎてしまっているからなのだろう。

 通常の戦隊モノでは、こちらがいかに強くても、ザコ戦闘員は果敢にアクションしながら挑みかかってくる。そしてあっさりとやられることで、戦隊側の強さやかっこよさを観客に見せつけるのだ。

 だがそれは、やはりクレバーな戦い方とは言えない。通常の戦隊モノでそうなってしまうのは、そのザコ戦闘員以上の実力者組織がないためである。だから、弱くても集団で戦隊に挑みかかるしか手立てはない。

 ヘルサたん総統は、そのようなムダをするような悪魔じゃあない。

 もし本当に僕たちを出し抜きたいなら、こう考えるはずだ。”天国軍団の数を増やして組織拡大に努めるとともに、一人一人のスキルをアップさせ、実力をつけさせていこう”と。

 これを手っ取り早く実行するためには、天国軍団の数を急速に増やし続けることを前提に、まずはフザケンジャーに戦闘員が極力倒されないようにしなければならず、そのうえで、彼女たちの中から“エリート”を見つけ出そうとするだろう。

 そのエリートこそ、あのときのオーストラリア白人女性、“常任天国軍団”なのだ。

 なんじゃ虫、とか名乗っていたな。あの娘の実力は相当なものだろう。怪人ほどではないにせよ、少なくとも普通の天国軍団戦闘員よりも、実力ははるかに上と見るべきだ。

 そんな連中がもし量産されてしまえば、戦闘は一気に不利になってしまう。ヘルサたん総統がもくろんでいるのはそれなのだ。

 だとすると、天国軍団をただ逃がし続けているに任せるのは危険ということになる。彼女たちの中からいつエリートが誕生するかわからないし、これまで以上に訓練には力を入れるはずだから、エリートも出やすくなるというものだ。天国軍団の人数が増えれば増えるほど、常任天国軍団の数も増えるという仕組みである。

 なんとかして食い止めないと。

 ポッティたちは事件を食い止めるよう僕を送り込むが、それだけでは済まないだろう。なんとかして、天国軍団と戦い、彼女たちを一人でも多く倒しておきたいところだ。

 …そのために僕にできること。

 フザケンジャースーツのまま登場しても、捕まえられないようにたくみに逃げられてしまう。はぐれメタルが逃げ出したのを食い止められないのと同じように、普通に挑んでは彼女たちの一人も助けることができないのだ。

 …ここは危険だが、賭けるしかない。

 僕は公民館に残された天国軍団の布団に入る。彼女たちの残り香を嗅ぎながら、アレコレ想像してペニスをしごいた。気を緩めるとあっという間に射精感がこみ上げてくる。マスターがスーツに、というよりも僕自身に細工して、オナニーですぐに射精できるように改造してくれているのだ。

 あっという間に、ペニスから精液がほとばしった。布団を抱き締めながら、娘たちを思って気持ちよく発射する。

 スーツの解除を目的に自分で抜けば、スーツはあっさりとほどけてしまう。僕は元の神谷達郎に戻った。

佐伯:「レッド。応答せよ。」転送からの時間のズレがあるため、本部から連絡が入るのはしばらく経ってからだ。やっと佐伯さんたちのモニターが追いつき、僕にコンタクトを取ってきた。

僕:「聞こえてますよ。やっぱり天国軍団は逃げてしまいました。」

佐伯:「なっ…! どうしたのだ!? なぜ蒸着を解いて神谷に戻っている!? まさかもう終わったとか思って勝手なことをしたわけじゃ…」

僕:「違いますよ。どうせ矢継ぎ早に別の場所で天国軍団が暴れてるんでしょう?」

佐伯:「わかっているなら、なぜ…!?」

僕:「…僕に考えがあるんです。」

佐伯:「…。と、とにかく、まずいことになったぞ。日暮里工業地帯の海岸倉庫に天国軍団が出現だ。作業員34人が、集まってきた264人の天国軍団に取り囲まれている。」

僕:「規模が大きいですね。すでにそこまで組織は拡大しているということですか。」

佐伯:「異常なくらいだ。いまのところ、作業員のうちの一人が彼女たちの餌食になり、吸いつくされている。それに恐れおののいた残り34人が、倉庫に立てこもってバリケードを築いて、天国軍団の侵入を食い止めているが…倉庫の周辺を大勢で取り囲んで膠着状態になっている。」

僕:「なるほど…」

佐伯:「このままではいずれ彼女たちにバリケードを破られ、一気になだれ込まれ、天国絵図さながらという状態になってしまうだろう。その前に日暮里工業地帯に戻り、彼女たちを蹴散らさなくてはならん。すぐに蒸着するのだ。」

僕:「いえ・・・ここはあえて、このままで行きます。」

佐伯:「何をふざけているのだ。生身の神谷のままで、しかも250人以上の天国軍団を、たった一人で相手するというのか。バカも休み休み言え!」

僕:「このままでいい。すぐに転送してください。」

佐伯:「…。わかった。そこまでいうのなら、とっておきの考えとやらがあるのだろう。もうそれについては何も言わん。だが…ひとつ困ったことがある。」

僕:「なんです?」

佐伯:「転送装置を起点にして、そこから離れれば離れるほど時間は過去にさかのぼるのは知っているよな?」

僕:「ええ。」

佐伯:「逆に、転送装置に近づくようにワープする方向になったら…」

僕:「あっ!」

 そうだ! 東京、滋賀と、転送装置から離れるようにワープすれば、時間は過去へとさかのぼる。だが逆に、滋賀、神奈川、日暮里と、転送装置に近づくような方向へと転送される場合、時間は未来へと飛んでしまうのだった。

 ということは、ここから転送されても相当未来にワープしてしまうことになり、数時間後、ひどくすると丸1日以上は先に進んでしまう。そうなれば、天国軍団の暴虐を止められず、コトが終わったあとに転送されてくることだって考えられる。まずいことになった。

佐伯:「ポッティの計算では、今から日暮里に転送されると16時間かかってしまう。いくら男たちがバリケードを築いて抵抗しているといっても、それではさすがに間に合わないだろう。」

僕:「普通に飛行機や新幹線の方が早いですね。」

佐伯:「そこでだ。今からお前を京都まで転送する。そこから新幹線に乗り、東京に移動するのだ。」

僕:「わかりました。」京都まで転送されれば少しは時間が稼げる。そこから新幹線でいけば、数時間以内にたどり着けるだろう。

 目の前が白く光った。

 数時間後。

 僕は新幹線を使って東京まで行き、そこから電車で日暮里までたどり着く。駅から倉庫の方角は南。転送装置から離れていく方向なので、時間のロスはない。

 そんなこんなで、僕は倉庫の内部に転送された。

 だが…。

 時すでに遅し。

 倉庫の中はもぬけの殻であった。

 天国軍団たちはバリケードを突き破り、一斉に倉庫に入り込むと、立てこもっていた男たちに一気に襲いかかり、逃げまどう男たちを押さえつけてムリヤリに犯したのであった。

 倉庫のあちこちで、吸いつくされてしまった男たちの残骸、つまり衣類が残されている。最近は天国軍団も容赦なく、男たちを襲っては射精させ続け、これを魔性の“種”に変換して大気にばらまいているのである。

 天国軍団やメカニック怪人たちに射精させられた場合、枯渇や疲労、痛みが伴わなくなり、いつでもいくらでもいつまでも最高の絶頂とともに精を吐き続けることができてしまう。そしてその精には、男の生体エネルギー・精神エネルギーがともなっており、生体エネルギーが“種”に、精神エネルギーが彼女たち魔の者のエネルギー源(魔力)となるわけだ。

 今から18年前、佐伯長官がその種の原理を肉体に植え付けられ、長官の射精とともに大量の種が大気中にばらまかれた。射精の回数を重ねるごとに、この世界は徐々に魔界化していって、夢で見たような“新世界”が近づいていく。佐伯さんは七転八倒のあげく、カリギューラの魔の手から逃れ、みずからの肉体から種を永久に切り離すことに成功したのだった。

 今回の種は、佐伯長官の時よりもはるかに少ない。長官の精液に含まれる異世界の種が数億個とすれば、一人の男の一度の射精時に含まれる種はせいぜい1…多くても3程度だろう。

 だが、もしこれを一人の男で数百回、吸いつくすまでくり返し(彼女たちの魔性の肉体を前にすれば、素人男性など毎分射精してしまうだろう…怪人が相手ならなおさらだ)たとすれば。そしてこれを一人ならず数百人、数千人、数万人とくり返すことになったら。のみならず、こうした営みを数十年数百年とひっきりなしに続けたら。

 佐伯長官一人に頼らずとも、たやすくこの世界を淫魔界化することができてしまうのである。ヘルサたん総統が目的にしているのはそこなのである。

 新世界ができてしまえば、もはや人間界と魔界との境界線はなくなる。同じ世界となってしまう。そうすると世界観のバランスは魔界側へと傾き、パワーバランスが一気に崩れる。ポッティの定めた世界構成も崩れ、全ての世界が一気に魔族の手に堕ちることも十分あり得るのである。

 僕は、そんな悪魔どもの淫靡なもくろみを打ち破るべく、ポッティや佐伯長官たちの手を経て作られたフザケンジャースーツを頼りに、天国軍団や怪人どもの暗躍を阻止する使命を与えられた。淫夢と戦いながら、特別な呼吸法で神通力を高めながら、そしてポッティの力が込められた特殊スーツのとてつもない力を用いながら、悪魔の組織を壊滅させなければならないのである。

 だが、敵はただ単に女の色香を武器に男の精を絞るしか能のない破廉恥集団ではなかった。計算のうえ、裏をかき、巧みな戦略で僕たちを翻弄する、奸智に長けた高度な組織なのである。一筋縄でいく相手ではない。

 知ってか知らずか、敵は僕たちの転送装置の虚を突いてきた。普通の転送では間に合わないような場所でわざわざ僕を煙に巻いて、まんまと男たちを絞りつくしてしまったのである。

 知らずにやったとしても、これで僕が「転送装置から遠ざかれば時間をさかのぼり、近づけば未来に飛んでしまう」ことが敵にばれてしまったことになる。間違いなくこれから先、天国軍団たちは陽動作戦を交えながら、僕が時間内に到着できないようなルートで事件を起こしてくるだろう。こちらも対策を考えなければならない。

 と、そこへ佐伯長官から連絡が入った。

佐伯:「残念だが、今の転送技術では、敵が裏をかいてくることに対する対処法はない。陽動作戦としてわざと遠くに君を転送させ、本当の目的である「大量絞り」は逆に近くにしてくるだろう。」

僕:「そうですね・・・」

佐伯:「ここは読むしかない。遠くでの事件は、実は陽動で、もっと近くに本当に成功させたい天国軍団の暗躍があるかも知れないと見なしていくことくらいしかできないだろう。」

僕:「つまり、遠くの襲撃はあえて見過ごして、近くでの事件に注意しろと?」

佐伯:「残念だが、そういうことだ。これから先、世界に少しずつ種を蒔かれてしまうことは、食い止められないだろう。だが、より大規模で強烈な襲撃を優先させてつぶしていくことで、種の量を減らすことはできる。これをくり返しながら、敵の暗躍を根本的に止める手立てを考えていこう。やはり、向こうが作戦で攻めてくるのなら、こちらも作戦を立てなければ勝てないぞ。単純な実力勝負ではないのだ。」

僕:「はい。」

佐伯:「そこでだ。260人もの天国軍団が魔力を得て、その中からエリートも出てくるだろうし、さらなる活動の場を近くに求めることも考えられる。つまり、その倉庫の近くで小グループによる事件が起こる可能性があるのだ。」

僕:「なるほど、精を吸った天国軍団の残党が、小さなグループとなって徘徊し、男を襲う可能性があると?」

佐伯:「ああ。多くの場合、天国軍団は一時的に操られていただけであるから、もしかしたら元の普通の女性に戻っている可能性もあるが、奴らの中でも見込みがありそうな女は操られたままになっている可能性が高い。その女たちのグループはおそらく、行きがけの駄賃とでもいわんばかりに、近くで別の襲撃事件を起こすに違いないのだ。」

僕:「わかりました。事件を察知し次第、急行します。」

佐伯:「そうしてくれ。ひとまず駅に向かって歩くんだ。もし何もなければそのまま電車で帰ってこい。」

僕:「ラジャー。」

 僕は倉庫をあとにし、駅に向けて歩き出した。



######



ヘルサたん総統:「くすくす…おもしろいわね。」

カリギューラ女王:「うむ。どうやら奴ら、転送装置を使っておるようじゃの。まぁ、魔界のように膨大な魔力を無尽蔵に爆発させてもなんの影響もない場所とは違って、人間界では単純なワープは使えまい。」

ヘルサたん総統:「そうね。魔力でワープすれば時間も空間も正確に数億光年先でさえも瞬時にして移動できるけど、人間界でそれをやったら、世界がめちゃめちゃになる。自分が転送された分、膨大なパワーがまき散らされて、何もかも破壊しつくされてしまうか、本来この身に降りかかるはずの時空の歪みを周囲に押しつけているために、世界の時間が止まってしまってそのまま永遠に動かなくなることだって考えられる。神通力でも同じね。」

カリギューラ女王:「だから、空間座標は正確にできても、時間がどうしてもずれてしまう転送装置を使うしかなかった。しかもポッティがきちんと管理していない状態で使うと、暴走して完全に異世界に飛んでしまい、戻れなくなる可能性さえ秘めておるのだ。そんなものに頼るしかないとは、まったく馬鹿な奴らよ。」

ヘルサたん総統:「これを使わない手はないわね。天国軍団の組織拡大と充実に、陽動作戦をさらに強化していきましょう。」

カリギューラ女王:「ふっふふふ・・・ダミーの事件を遠くで起こし、フザケンジャーを転送させておいて、本命の作戦は近くで起こすのだな。そうすれば、遠くの現場に行く時は時間をさかのぼれるが、近くに戻る時には大幅なタイムロスとなってしまう。その間に事を済ませてしまえば、精も吸い放題というわけじゃ。」

ヘルサたん総統:「いいえ。ここはあえて、本命を遠くにしましょう。」

フローリア将軍:「…。」

ヘルサたん総統:「人間どもだって、あたしたちが転送装置の性質を知ったことくらい理解できる。ということは、あたしたちが“近くで本命の事件を起こすつもりで、遠くに陽動事件を用意する”ことくらい予想できるというわけ。当然、その予測の元で、遠くの事件を無視しようとするでしょうね。」

カリギューラ女王:「な、なるほど…我らはさらにその裏をかくというわけか。」

ヘルサたん総統:「そゆこと。まず、遠くで比較的小規模の事件を起こす。じつはその時に、周囲に、ポッティたちに感づかれないようにして大勢の天国軍団を用意しておくの。次いで近くで比較的中規模の事件を起こす。フザケンジャーは”まんまと裏をかくことができた”といって、嬉々として近くの現場に急行し、事件を解決していい気になるでしょうね。」

カリギューラ女王:「ほほう! そこでさらに待機させておいた大勢の天国軍団が一斉に動き、遠くの小規模の事件と見せかけて、本命として、遠くの大規模な事件にして、男どもを吸いつくすのだな。何と頭のいい作戦なのだ!」

フローリア将軍:「…。」

ヘルサたん総統:「あら。何か言いたそうね? フローリア将軍?」

フローリア将軍:「転送装置は、遠くに行けば過去にさかのぼれます。ということは、近くでの中規模の事件を食い止めたあとに、遠くの大事件現場に駆けつけることは不可能ではないはず・・・総統、もう私たちにウソをつかないでくださいませ。」

ヘルサたん総統:「…ふふ…本当に鋭いわね。カリギューラ女王もすばらしすぎる部下を持ったものだわ。」

カリギューラ女王:「そうじゃろうそうじゃろう。フローリアは私の誇れる最大の部下にして、誰よりも信頼の置けるきわめて有能な友人なのだ。朋友といって差し支えない、かけがえのない部下じゃ。」

フローリア将軍:「カリギューラさま・・・」

ヘルサたん総統:「ええ、そうよ。遠くを本命にするというのはウソ。遠くに行けば時間をさかのぼれるのだから、彼らの予想の裏をかくことはできない。あくまで大規模な事件は、近くで起きなければならない。当然、フザケンジャーもそこへ駆けつけてくるでしょうね。遠くの陽動作戦は無視してくるでしょう。」

カリギューラ女王:「なんと…!? それでは、フザケンジャーのヤツに作戦を食い止められてしまうというのか!?」

ヘルサたん総統:「だからこそ、常任の天国軍団が是非とも大勢必要なのよ。近くの事件については、必ず常任天国軍団を、場合によっては怪人まで配備して、フザケンジャー対策に当たるのよ。男たちを射精させながら、同時にフザケンジャーともまともに戦える体勢を作らなければならない。それがあっての陽動作戦なの。」

フローリア将軍:「…。」

ヘルサたん総統:「その一方で、陽動と位置づけられる小規模の事件は、極力数多く頻発させること。フザケンジャーがこないからこそ、そこで種をばらまき、魔力を吸い上げておく必要があるし、そこでこそ常任天国軍団探しも行われなければならないの。つまり、近くではフザケンジャーとの死闘をメインにし、遠くでは組織拡充をメインにするのが、あたしの本当の狙いなのよ。」

フローリア将軍:「…。」

ヘルサたん総統:「まだ何か言いたそうね? いいわ、あなたが言う前に話しておきます。さっきから“近く”“遠く”といっているけど、転送装置ってどこにあるか?」

カリギューラ女王:「あっ!」

ヘルサたん総統:「レッドの転送経路と時間軸のズレをたどれば、どの方角にどのくらいの距離進んでどのくらいの時間が遅れたり進んだりしたかがわかる。ということは、レッドの出現と時間のズレから、転送装置のある空間座標を割り出すことができるわけ。転送装置は、必ずフザケンジャー本部にあるわ。ポッティが厳重に管理するためにね。」

カリギューラ女王:「つまり、フザケンジャーの転送と時間のズレから、敵の本拠地である本部の場所がわかるということじゃな?」

ヘルサたん総統:「ええ。ポッティがバリアをはって、我々からはわからない場所に本部を設置しているのだろうけれども、フザケンジャーの動きから、本部の位置はかなりの精度で特定できるの。」

フローリア将軍:「そして、あなたはすでに、本部の場所を特定し、敵の本拠地がどこにあるのかを知っているのですね。」

ヘルサたん総統:「…。その通りよ。フザケンジャー本部は、今”キノコぐんぐん伝説”とかいう喫茶店のキッチンにあるわ。そこから異次元への扉が繋がっているみたいね。」

カリギューラ女王:「なななっ、なんとお! すでに敵陣がわかっておるのか。それなら、一気に攻め込んで全滅させてしまえば、あとはやりたい放題ではないかっ!」

フローリア将軍:「…すぐにそういうことを言い出すアホがいるから、本拠地特定のことは黙っていたのですね?」

ヘルサたん総統:「その通りよ。」

カリギューラ女王:「…あの・・・もしかして私、今ひどい扱い受けてね?」

ヘルサたん総統:「いい? フザケンジャー本部にはポッティが控えているのよ? 佐伯もいる。きっとレッドだっている。そんな中に、いったい誰を投入するというのよ。あたしたちは魔界からのバリアをくぐり抜けられないし、人間界に行っているボウイ将軍はまだ恋着の呪縛から解放されていないし、何人かの怪人を送り込んでも、何千人もの天国軍団を送り込んでも、ポッティと佐伯の連携には敵わない。わざわざ組織をつぶされるために攻めてもしょうがないじゃない。」

カリギューラ女王:「うう…」

ヘルサたん総統:「本拠地なんて攻めなくても、レッドを廃人にしてしまえば、フザケンジャー本部などあっさり内部崩壊する。そうなれば組織的な作戦によって敵を翻弄し続けることもでき、ポッティや佐伯がいかに強大であっても、いつかはほころびてしまう。本拠地の特定には、もっと別の意味があるんだよ。」

カリギューラ女王:「とゆと?」

ヘルサたん総統:「ふふっ…そのうちわかる。ま、ひとつは打ち明けてもいいかしら。敵の動きを先に察知できるってところかしらね。」

フローリア将軍:「通信の盗聴です。これによって敵の考えや動きを察知し、裏をかくことができます。」

カリギューラ女王:「おおっ、なるほど! それはすばらしいことじゃ!」

ヘルサたん総統:「とにかく。レッドの移動手段が、人間界の交通機関か、自分の足か、さもなくば転送装置しかないのだとすれば、裏をかくことは簡単なはず。すでに奴のところには常任の天国軍団メンバーを一人送り込んでいるところよ。神通力が通用しない相手、どこまでがんばれるかしら。見物だわ。」

カリギューラ女王:「ふはーははは〜!」

フローリア将軍:「…。」



######



 駅に歩いている途中で通信が鳴る。

佐伯:「神谷、天国軍団の活動をキャッチしたぞ。駅から15分歩いたところにあるアパートで、28歳の男性が天国軍団7人の餌食になっている。すぐに向かってくれ。地図情報を伝送する。」

僕:「わかりました。」

佐伯:「すでにあの倉庫で男たちが吸いつくされている。その精気によって強化された女たちでもあるし、油断はしてはならんぞ。」

僕:「ラジャー!」

 脳裏に緑の線で描かれた地図が浮かび上がる。ここを右に曲がってすぐのところだ。

 僕はすぐにアパートを見つけ出し、その中の一室に飛び込んでいった。

 そこでは、イスに縛られた独身男性が女たちに犯されているのだった。机に置かれたPCからはゲームの音楽が流れ、エッチな女の子のシーンが描かれている。

 「ほらほら。二次元じゃ味わえないでしょう? ホンモノの女のアソコだよ?」「あうああ〜!!」「いくら睦月●奈があずにゃんに似てるからってそれだけの理由で古いゲーム買っちゃう奴にはオシオキが必要ネ。」「ひいいっ! 出るぅ!!」「うふふっ、ゲームと同じ体勢でズコズコしてあげただけで、すっごいいっぱい出してるよぉ〜?」「やっぱり吸いつくし決定だね☆」「うぐぐ・・・」「昼間っから働きもせず職探しも放棄してエロゲーやってるお兄さんは絞りつくされても誰も悲しまないかもね。」「にゃはは、かわいそー」

 言いたい放題だ。

 とにかく、彼を助けないと。

 「そこまでだ!」男の体に夢中になっていて僕に気づかなかった女たちは、一斉にこちらを振り向く。

 とっくにフザケンジャースーツを解除し、僕は神谷達郎に戻っている。これは賭けだ。天国軍団は、こっちがフザケンジャーになっていれば、あっさりと逃げていってしまう。力の差が歴然としすぎているからだ。その結果、彼女たちを助けることもできずに、天国軍団がちりぢりになって潜伏、そのまま増殖し続けてしまっている。

 だがもし、こっちが神谷達郎だったらどうだろうか。敵は僕の方が弱いと見て、あるいは少なくとも集団戦であれば勝てるかも知れないと考えて、襲ってくるのではあるまいか。

 「…か、神谷…フザケンジャーの…」全裸の女たちが後ずさる。まずい、神谷でも彼女たちは逃げてしまうのか。

 ここはヘタに挑発すれば、彼女たちの恐怖をあおってしまう。だが、黙っていれば膠着状態に陥り、念のために逃げておくという選択肢を彼女たちに与えてしまう。

 「わけあってフザケンジャーにはなれないが、お前たちをこの命に代えてもイかせ倒し、悪魔の洗脳を解いてみせる!」

 「・・・どうしよう?」「えっでも、フザケンジャーが出たら一目散に逃げろって指令だよ?」「でもさ、フザケンジャーじゃないじゃん。」天国軍団の女たちはひそひそ話し合っている。

 「フザケンジャーじゃないけど、中の人だよ?」「フザケンジャーのスーツがないってことは、経験浅い弱小17歳の神谷のままってことじゃん?」「おっ、この娘びっくりするとネコミミが生えるのか。いよいよあずにゃんネ。」「どうしよう。神谷だったら逃げろって指令じゃないし。」「弱い神谷だったら、倒せるんじゃね?」「なんか理由あってフザケンジャーになれないって言ってたよ?」「もしかして一回誰かに倒されて射精し弱体化してるのかも。」「手負いってこと? じゃあ、私たちが戦闘員のスーツを着て戦えばなんとか倒せるかも知れないね?」「ぷっ、考古学研究部のクセに20世紀のセックスを知識として知らないなんて設定的におかしいネ。」「こっちは7人いるんだし、集団で手足を押さえつけて犯せば、連続射精させることができるんじゃね?」「そしたら私たちすっごい手柄になるよね?」「・・・やっちゃおか?」「やっちゃお?」「よし、やっちゃお。」

 …なんか一人だけ気の抜けたおにゃのこがいませんか? しかもどっかで見たことがあるような…?

 天国軍団は一斉に戦闘員のスーツに変身した。どうやら僕と戦う算段ができ上がったらしい。もくろみは成功だ。神谷の姿なら、天国軍団も逃げないかも知れないと思って蒸着を解いたのだった。うまくいったぞ。

 たしかにフザケンジャーの神通力は使えない。その意味では、彼女たちの言うとおり弱体化している。それに対して天国軍団は、生身の女性に比べれば、ずいぶんパワーアップしている。あの戦闘員の格好は、肌のきめ細かさやテクニック、オンナの具合を格段に高める魔力が込められているのだ。

 それでも、僕には佐伯仙術がある。これによって、フザケンジャーのスーツがなくても、神通力を身にまとい、そこそこの戦いができるようになっているのだ。さすがに怪人レベルに通用するほどではないが、なんとか天国軍団たちを倒すことならできるだろう。

 「こおおおお…」呼吸を深め、体に神通力をまとっていく。

 「それっ、一斉に押さえつけろー!」天国軍団が一斉に飛びかかってきた。

 ばちばちばち! 体表面全体に強烈な静電気のようなスパークがまとわりつく。夢と現実の戦い両方で培った、佐伯仙術の神通力だ。

 「フザケンショット!」どばばばば! 強烈な神通力の流れが、飛びかかってきた女たちに被弾する。6人の娘たちは体内に神通力を流され、全身のあらゆる性感神経を一度に全て徹底的に刺激するのだ。ついでに被害男性にも神通力を流し、回復と記憶操作を行った。

 「あが!」「なっ、なにこれえ!」「きゃああああっ!」女たちは動きを止め、思考が完全に停止する。そしてその場に折り重なるように崩れ落ちてしまった。天国軍団として操られていた魔力から、彼女たちは解放され、元の人間女性として気を失ったのであった。

 やはりノーマル天国軍団なら、フザケンジャーにならずとも一瞬で勝つことができる。

 「さすが神谷ネ。おみごとヨ。」

 「むっ!?」

 飛びかかってきたのは6人。天国軍団は全部で7人。ひとりだけ、僕には飛びかかってこなかったのだ。気を失っている被害者男性のPCから起動しているエロゲーをやって気を抜いていた若い娘だった。

 「フザケンジャーに蒸着せずとも、その神通力があれば、もはやノーマル戦闘員では歯が立たないほどのパワーを発揮できる。神谷のままでも戦える実力。強いネ。」

 「お、おまえは・・・」

 他の女たちの影に隠れてチラチラ見えていただけだったので、よく見えなかったが、彼女たちが倒されて残された女の子は、全身真っ白い体、きめの細かい肌、ふくよかな胸、太めの足、整った西洋風の顔立ちに碧い眼をした金髪美人である。どこかで会ったはずだった。

 「なんじゃ虫!」「なんじゃ虫って言うな! サラ=マグダガル=ナンジャムシ・コンジャムシ!」「なんじゃ虫じゃないか。」「ナンジャムシ!」「なんじゃ虫でしょ。」「サラって呼べやガデイム!」・・・あんまり本人も自分の名前が気に入ってはいないみたいだ。

 こいつはオーストラリアから来た、”常任天国軍団”だ。普通の天国軍団が、悪魔の力によって脳を乗っ取られ、深層意識を保ったまま全身を操られて男を射精させるのに対し、常任天国軍団は、洗脳ではなく、完全に自分の意志で天国軍団になった、いわばエリートである。

 普通の天国軍団は、自分の脳を操られ、悪魔の意のままに勝手に体を動かされる。そのため、目の前の光景や自分の言動は、自分の意志ではなく、勝手に体や口が動いてしまうのだ、という感覚のまま任務を遂行する。だから、彼女たちは笑って男を犯しながら、心の中では苦痛とおぞましさに泣き叫んでいるのだ。それを表面にわずかさえ出すことができないことも、徹底的な苦痛であるはずだ。

 だから、彼女たちをイかせて倒し、記憶を奪い、魔力を掃除して、気絶させることは、すなわち彼女たちの解放であり、救済でもあるのだ。逃がしている場合ではない。

 それにたいして、常任天国軍団は、完全に自分の意志で天国軍団をやっている。乗っ取られたり体を操られたりすることもなく、自分の判断で行動し、それがなおかつ悪魔の指令どおりとなっているのである。従って心の底から苦痛はない。

 洗脳され、操られている天国軍団の中から、好色で、そのまま快楽に身を任せてしまいたい、自分から積極的に悪魔の言うとおりに動いてセックスを楽しもうとする女たちが現れる。そんな積極的な女たちを集め、さらに鍛え上げ強化してから、特殊なコスチュームを着せ、数ランク上のエリート集団として、”常任天国軍団”を任じられるのである。

 そのコスチュームがクセモノだった。

 「HAHAHA! オマエの神通力は、このワタシにはいっさい通用しないネ。オマエの強さはもっぱらその神通力。それが通用しないとなれば、結局オマエはセックスに不慣れな、しかも四六時中タマタマに精子を溜め込むやりたい盛りの17歳素人男子!」「うぐっ・・・」

 そう、ノーマル戦闘員なら触れることさえなく神通力を流して、一瞬で倒すことができるものの、その神通力さえも通用しない常任天国軍団相手では、ほんとうに生身だけで戦わなければならないのである。

 神通力もフザケンジャースーツもない神谷のままでは、ノーマル戦闘員の数段上を行く常任天国軍団にはまるで歯が立たないだろう。抱き合った瞬間漏らしてしまうかも知れない。そのくらい、サラの体はキレイでぷるぷるすべすべなのだ。

 せめて蒸着して、すこしでも有利にしておかないと。

 「ナメてる戦隊!」僕はリストバンドを発動させ、蒸着の準備に入った。

 「おおっと! 蒸着はダメヨ! もしフザケンジャーになったら、日暮里中に潜伏している全ての天国軍団を一斉に動かすヨ!?」

 「うっ!?」

 「このニポーリに、現在398人の天国軍団があちこちに潜伏してるネ。町中の数十カ所に数人ずつのグループで行動している。ここでワタシが合図を出せば、彼女たちが一斉に行動し、街は大混乱に陥ること請け合いヨ!」

 「てめえ・・・」

 「この赤いボタンを押せば、洗脳電波が天国軍団を操ると同時に、彼女たちの体からも同じ電波が発散される。それまで何も知らずに普通に行動している娘たちが突然体を乗っ取られ、すぐそばにいた男、子供でも老人でもホームレスでもお構いなしに襲いかかる仕組み。数ヶ月チンチンを洗っていない老人にニコニコフェラチオする女の子の気持ちはさぞかし苦しいダロヨ。」

 「くっ、悪魔め・・・」

 「それだけじゃあない。そうやって飛び交っている洗脳電波が天国軍団どうして増幅され、それまでまったく関係なかった女たちがどんどん天国軍団になっていくように仕掛けられているネ。オマエたちがいくら奔走しても、日暮里中の3歳から35歳までの全ての若娘がどんどん暴走していくのを決して食い止めることができない。歴史に残る大パニック事件へと発展するネ。」

 「おのれ!」

 「HAHAHA!、安心するネ。プッシーの情け、オマエが蒸着しなければ、このスイッチは机の上に置いて、放置しといてやるヨ。」

 なんじゃ虫は、赤いボタンのついた小さな装置を机の上に置いた。PCではあずにゃんがアクロバット体位で結合している絵が映し出されている。

 交換条件だ。僕はリストバンドを外し、床に投げ捨てた。

 「それでいいネ。これでオマエはなんの武器も持たぬただの男子高校生、ひ弱な神谷達郎。洗脳電波をまき散らさなくても、ここでオマエを枯渇させ吸いつくしてしまえば、いずれ世界は同じことになるネ。」「そんなことは…絶対にさせない。」僕は服を脱いで戦闘態勢に入った。

 僕はサラと向き合った。きわどい常任天国軍団のコスチュームは、体のほとんどを隠さず、抱き合えばそのまま裸のつきあいになり、挿入も可能だった。コスチュームはあくまで、性の訓練で鍛え上げられた肉体をさらに魔性の力で数倍にも高める役割と、僕の神通力を散らして絶対に体内に流されないようにする効果があるに過ぎない。つまり、女のやわ肌の魅惑的な露出と、その密着する肌触りの感触を何ら妨げることはないということだ。

 どう考えても、勝ち目は薄いだろう。スーツや神通力の助けを借りなければ、僕はただの感じやすくイキやすい男の子でしかない。恋人がいるわけでもないし、やりまくって経験豊かなわけでもない。

 そりゃあ、これまで、夢といわず現実といわず、何度も何度も女たちと肌を重ねては来た。だが、それはあくまで、テクニックと体力と精力のぶつかり合いというよりは、神通力対魔力の戦いに近い状態だったのだ。

 事実、タイムフラワーによって神通力を奪われた状態では、多くの女性にいいようにもてあそばれ、何度も何度も射精し続けてしまったのであった。

 今、夢ではない状態で、天国軍団よりはるかに強い、しかも白人美少女を相手にして、こんな僕が勝てる自信はまったくないのである。

 だが、フザケンジャーにもなれず、佐伯仙術も使うことができない状態で戦わなければならないのである。敵がわざわざ、日暮里をパニックに陥れるスイッチの存在を明らかにし、これを脅しの道具に使うということは、それだけの自信があるからなのである。フザケンジャーになればすぐにスイッチを押し、取り返しのつかない事態に陥らせるつもりだ。だが、フザケンジャーにならなければ、生身の僕を吸いつくすまで射精させ、じっくりいたぶったあとで、余裕の表情でスイッチを押せばいい。必ず勝てる自信があるのだ。

 フザケンジャーになっても、敗北をしても、ニポーリの街は淫らな悪夢を迎えることになる。それは表面上の天国とは裏腹の、地獄絵図そのものとなるだろう。

 絶対に負けるわけにはいかない戦いだ。

 だが、実力にあまりにも差がありすぎる常任天国軍団を相手に、どうすれば勝利することができるというのだ。

 敵の体に神通力を流すことができない以上、愛撫と肉棒だけが武器となる。肉体だけで戦い、相手をイかせなければならない。

 そして、敵の攻撃を生身で受け止め、なおかつ射精しないようにしなければならないのだ。だが、そうすれば彼女のあまりに甘い肢体を身に受け、あっという間に高められてしまうに違いない。神通力が役に立たないなら、僕のそのままで防御もしなければならないのである。

 …。

 …いや。待てよ?

 神通力そのものが、佐伯仙術そのものが封じられたわけではないじゃないか。ということは・・・。

 「こおおおお・・・」僕は再び呼吸を整え、一気に深めていく。強力な神通力が体にまとわりつき、僕を強化していく。

 「HAHAHA! 無駄ネ。どんなに神通力を強めても、ワタシにはいっさい通用しない! 頭のてっぺんからつま先まで、挿入さえしたところで、絶対にこのコスチュームに守られる。全身に大量に浴びる実験をして実証済みネ。」

 サラが僕にぎゅっと抱きついてきた。外人だけあって背が高く、僕とほぼ同じくらいの背の高さで、生足を僕の内股にこすりつけながらしっかりほおずりし、滑らかすぎるみずみずしい白い肌をこれでもかと刻みつけてくる。

 吸いつくようなツルツルした白い体は、まるで作り物のように滑らかで、確かにこの肌でこすられたらあっという間に出してしまってもおかしくないくらい、どこもかしこも心地よいのだった。

 「こおおお」さらに呼吸を深めていく。

 「無駄無駄無駄ァ〜〜〜ッ!! どんなに強くしてもこのコスチュームを破ることはできないネ!」サラは僕にしがみついたまま後ろに倒れていく。そのまま正常位での挿入に持ち込むつもりか。よし、相手の意向にのってやる。

 僕は呼吸を乱さないようにしながら、サラの上に注意深く乗っていく。天国軍団が用意したものと思われる真新しい敷き布団がそこにはあった。いいだろう、このまま挿入に持ち込んでやる。

 サラは両足で僕の腰を蟹挟みすると、腰を突き上げてペニス先端をオンナにあてがう。そしてそのままふくらはぎをむにゅっと押しつけて、僕の腰を落としにかかってくる。僕は抵抗することなく、スムーズに腰を落とし、ペニスをどんどんサラのオンナにねじ込んでいくのだった。

 「さあ、搾り取ってやるネ!」根本まで咥え込んだサラは、一気に腰を前後左右上下にランダムに乱れさせ始める。

 膣の締まりは相当で、まるで子宮の奥に掃除機が内蔵されているみたいにどんどん吸引されている。それでいて絡み付くヒダや膣壁はペニスのすべての性感神経を的確に快感にさらし、これでもかと蠕動しては白濁液を誘い続けていた。

 なるほど、天国軍団とは比べものにならない具合の良さだ。魔族によって改良されたのか、常人ならざる心地よさを持つ名器となっていた。そこに魔力も加わって、ペニスの奥にある性感神経までも一気に刺激することができるみたいだ。

 それに加えて、サラの動きはあまりにも計算しつくされた正確さを保ち、訓練を重ねたであろう極上のテクニックを駆使している。男が感じやすくなるであろう順番で、前後し左右し、さらに小刻みに上下してはペニスを揉みしだき、しごき、こねくり回している。吸いつく力と引き剥がす力のバランスが良く、あまりにやわらかい筒がきつくペニスを絞りこすりもみ上げていく。

 特に感じやすい先端やカリには膣の締まりと揉みしだきが集中し、どう動いても心地よく刺激できるようにきめ細かい突起とうねりが具わっていた。普通の男では、入れた瞬間発射してしまうこと請け合いであった。

 それが、徐々に動きをスムーズにしていくのではなく、いきなりハイスピードでの腰のラッシュで責めているのである。なるほど、本来の僕ならひとたまりもないであろう。胸板に吸いつく彼女の大きな乳房も、僕の首に回っているスベスベの腕も、僕のお尻を揉みしだきながら腰を上手にコントロールするふくらはぎも、僕を瞬殺するに十分な武器の集合体なのである。

 「こおおおお…」「HAHA! 無駄だと言っているダロヨ! たとえ密着していても、挿入していても、絶対に神通力は流れないネ。」そう言いながらサラは、下からグングンと腰を突き上げて、これでもかというスピードでペニスをしごきたててきた。

 「・・・まだ気づかないのか?」「ワット!?」「おかしいとは思わないのか? 生身の神谷なのに、ちっとも射精する気配がないことに。」「むっ!?」

 いよいよ反撃タイムだ。僕は主導権を奪い返し、自分から強く大きく、そしてすばやく腰を上下させ、ペニスでオンナのあちこちをかき回し、特に感じやすい部位やクリトリス周辺を集中的に攻撃した。キス攻撃や乳首舐めも併用し、すばやく全身を撫でさすりながら、全身くまなく男の愛撫攻撃にさらしながらの連続攻撃だった。

 「あっふうう! なっ、なに…ワタシを感じさせているだと!? そんな…」「次のなんじゃ虫の台詞は、神谷ごときにそんなテクがあるわけない、だ…」「かっ、神谷ごときにそんなテクがあるわけ・・・はっ!?」

 「お前のもくろみでは、素人同然の僕が挿入したとたん、怪人に近い実力を持つ常任天国軍団の膣の気持ち良さに心奪われ、頭の中が真っ白になって、入れた瞬間に射精し、それでも腰の動きを止めずに責め続けることで連続射精を誘い、ものの数分で骨抜きにし、1、2時間で枯渇させ、半日程度かけて吸いつくす算段だったのだろう?」「うっく・・・」

 「だが残念だったな。僕はまだ一回も射精していないぞ?」「そんな・・・なぜ・・・あうう、はあうっ、ああっ、ああ!」サラの方が逆に追いつめられている。「感じているな? それも大誤算だったはずだ。」「うう・・・ウソだ…神谷がこんなに強いワケ・・・」

 「サラ…お前は自分のテクニックに自信を持ちすぎたな。そしてコスチュームで神通力が“自分の体に流れない”ことに安心しすぎていたのだ。そのため、僕が単純に無力な男と見誤った。」「うっく、うっく、そんな…AH! そーぐっど〜!!」

 「神通力を君の体に流せないのなら、そのパワーはもっぱら、僕自身の強化に当てればいい。」「・・・はっ!」「気づいたようだな。神通力で体をコーティングし、サラの滑らかな肌を直接感じないようにし、全身の性感神経を鈍麻させて感じにくい体に仕立て上げる。そのうえで、射精のコントロールを果たし、総精力値を引き上げればいい。攻撃に使えないなら、防御を万全にすればいいということさ。」「うぐっ・・・」

 「それだけじゃない。僕の神通力は、自分の肉体の能力を格段に高める効果もある。こんなところで並木さんとの体術の訓練が役に立つとはな。」そう言って彼女の乳首を舌先で転がしながら脇を両手でなめらかに撫でさすり、ペニスは変幻自在に膣内のあちこちをヒネリながら攻撃し続けている。

 「あがが・・・そんな・・・」「体の動きをごく自然にし、スムーズな動きができるようになる。体力は消耗するが、激しい動きを持続することも可能だ。そしてなにより、通常の2倍近くのスピードを得ることができる。これによって、僕としては丁寧でゆっくりかつ複雑な動きであっても、神通力のおかげでスピードアップするから、同時に君の全身をすばやく丹念に責めることができるというわけさ。」

 「あぐっ、こうなったら、ワタシの精力を温存させて…」グッと全身をこわばらせるサラ。守りに入ったか。これによって、自然な膣のうごめきやしごき効果での僕の自滅を誘いつつ、自分はイかないように踏ん張り精力を保たせる作戦だな。

 だが。

 「甘い!」ズドドドドドドド!!!!「オラオラオラオラ!」「むっ、無駄無駄無駄無駄…ああっ、無駄じゃないっ! いっくう〜!」サラは全身をのけぞらせてガクガク震える。

 相手が守りに入ればこっちのものだった。全身への愛撫で追いつめられたからこそ守りに入ったと見るべきであって、あとは上半身の愛撫をやめ、腰の動きだけを超絶スピードアップ、一気にペニスで膣をしごき上げ、高速で突き続けるだけでよい。いくら守っても、ここまで快感攻撃にさらされたオーストラリア娘は、あっという間に残り精力を削り取られ、絶頂に達してしまうのだ。

 僕の下で体をこわばらせたまま、サラはアクメを迎え、僕にぎゅっとしがみついて天国を味わうと、そのままぐったりと気を失ってしまった。

 僕の勝ちだった。

 ぴきーん!

 「あぎゃあああ!」僕はもんどり打って部屋を転げ回った。神通力のおかげとはいえ、一気に肉体の限界を超えたスピードで動き続けたのだ。神通力を解いたとたんに強烈な痙攣を起こしても仕方のないことだった。足がツるとはいうが、まさに全身がツッた状態だった。

 少し経って、痙攣が治まると、痛みも引いていった。が、鈍い筋肉痛は残っている。明日まで残ってしまいそうないやな感じだ。

 「あんまり神通力の防御&スピードアップにばっかりは頼れないな。もっと体を鍛えて筋肉を鍛え込んで、神通力にも耐えられる肉体を作り上げないと。」

 サラが気を失っている間に、僕はあの物騒な日暮里パニックスイッチを破壊しようと思った。

 「…あれ?」だが、そのスイッチは、プラスチックでできたおもちゃだった。小さなプラスチックの箱に赤いボタンがついているが、中には何も入っておらず、バネの力でボタンを押した気になることができるだけの単純な幼児向けのおもちゃだった。

 つまり、日暮里中の天国軍団を暴走させることなど、はじめからできなかったのである。なんじゃ虫のハッタリだったのだ。

 「くっそ! コイツ、だましやがった!」怒ってみても、なんじゃ虫は女の悦びを満面にたたえた表情のまま気を失っている。後の祭りだ。

 リストバンドを締めると、佐伯さんからの通信が繋がった。僕は事情を説明した。

佐伯:「そうか。よく頑張った。これなら常任天国軍団が襲いかかってきても、なんとか勝つことはできそうだな。」

僕:「そうですね。でも油断はできません。もしこんな名器のテクニシャンが大勢量産されたら、いくら神通力でも、一人一人着実に倒していっても限度があります。第一僕の筋肉が持たないでしょう。」

佐伯:「その通りだな。ちゃんと鍛えて強化するのはもちろん、常任天国軍団が量産される前になんとか魔族どもを撃退しないとな。それはそうと、そのアパートの隣の部屋が空き室になっていて鍵もかかっていないみたいだから、裸の女たちに服を着せてそこに寝せるんだ。それが終わったら電車で本部に戻れ。」

僕:「了解。」

 僕はサラを始め、天国軍団だった女たちに服を着せ、隣の部屋に運んだ。こんな姿を人に見られたら間違いなく警察を呼ばれるよなあ。

 幸い目撃者はいなかったみたいだ。僕は悠然と電車でフザケンジャー本部まで帰ることができた。

佐伯:「ご苦労だった。」

僕:「なんとか常任の天国軍団に勝つことができましたね。」

佐伯:「ああ。だが、日暮里に集結していた天国軍団たちは、脳を操られたままあちこちに散ってしまっている。今のところ普通の生活に戻っているみたいだが、呼び出しがかかったら仕事中だろうがなんだろうが勝手に体が動いて、天国軍団の仕事にかり出されてしまう。1日でも早く、彼女たちを解放してやりたいものだ。」

僕:「…そうですね。」

並木:「それにしても、レッドスーツで挑んでも、天国軍団は逃げてしまうし、その間にも操られ続け、さらに増殖し続けてしまう。何か手はないかしら?」

ポッティ:「…そんな女たちを放置すれば、ますます常任天国軍団が増えてしまう。人間というものは、どうしようもなく追いつめられても何もなすすべがない場合、その状況に適応してしまうものだからな。体の自由がきかずにセックスばかりさせられ続ければ、いつかはそのセックスを受け入れてしまう。常任天国軍団が量産されるのも時間の問題…。」

佐伯:「くっそ…」

僕:「こんなのはどうでしょう。フザケンアイビームです。」

佐伯:「アイビーム?」

僕:「高速のレーザー光線を目から放出する機能を付加するのです。そこに神通力が乗せられ、彼女たちから魔力を追い出すのです。アイビームなら、見た女に神通力を当てることができます。ビームのスピードを光の速さに近づけることができれば、ちりぢりに逃げていく女たちを睨み回すだけで、次々倒すことができそうですが。」

ポッティ:「…検討はしてみよう。だが、それほどのビームとなると、乗せられる神通力はわずかにしかならないだろう。」

僕:「かまわないでしょう。ほんのわずかでも彼女たちに当てることができれば、絶頂させられなくても、少なくとも魔族に操られた状態から解放し、その前後の記憶をリセットできるはずです。少なくともそのくらいの量を当てられる威力であればよいのです。」

ポッティ:「うーむ、もしかしたらできるかも知れんが…しかし…」

マスター:「いや。難しいと思いますよ。」

佐伯:「マスター…」

マスター:「確かに機能的にはそういうこともできるでしょう。でも、人間の視線って、案外まっすぐじゃなくて、ふらふらしてるんですよ。ちりぢりに逃げていく天国軍団を視線でとらえ、遠くに離れていてもそこに神通力のビームを当てて解放するなど、ほとんど不可能です。ビームは彼女たちには当たらない。その背中をじっと見つめているにもかかわらずです。遠くに行けば行くほど、アイビームは当たらなくなるはずです。」

僕:「やっぱりダメかあ・・・」

マスター:「それに、神谷達郎の姿で天国軍団のみならず、常任天国軍団をも倒したという情報は、敵にも知れ渡っているはず。蒸着を解いて近づいても、今度からは神谷であってもちりぢりに逃げていくでしょう。だったらレッドスーツは身につけたままの方がいい。それより、銃を開発すべきです。」

ポッティ:「銃?」

マスター:「左様。2種類欲しいですね。ひとつは、フザケンジャーが装備していて、いつでも取り出せる誘導弾の銃です。発射されたら最後、魔力を求めてどこまでも追いかけていく神通力の弾丸を込められるものです。」

佐伯:「なるほど。それがあれば、戦闘員たちがちりぢりに逃げても現場で連射して、神通力を確実に当てることができるな。」

マスター:「その場に怪人や将軍がいないことが条件です。より強い魔力を持つ連中に弾丸は向かってしまう。そしてそんな弾丸など彼女たちはものともせずはじき飛ばしてしまうでしょうからね。」

ポッティ:「完全というわけにはいかんのだな。」

マスター:「ええ。それから。もう一つのタイプは、本部から絶えず発射されるものです。これは拡散するタイプの噴霧状の神通力が発射されるタイプがいい。」

並木:「なるほど、それを絶えず発射し続けて、どこかに潜伏している戦闘員を捜していくのですね?」

マスター:「そうです。どこにいるかわからない相手であれば、どこにでも拡散できる神通力の弾丸を微粒子状にして大気にばらまき、魔力を帯びた女性を見つけたら一気に降りかかる。これにより、潜伏中の天国軍団でも、彼女に気づかれることなく魔族の支配から解放することができる。あまり強力なものはできないでしょうから、長い長い年月をかけて世界を浄化していくイメージですね。」

ポッティ:「わかった。作ってみよう。ただ、完成まで相当時間がかかるぞ?」

マスター:「かまいません。それまでは地道にレッドにがんばってもらいましょう。修行もしてもらわないといけないし、ね。」

僕:「はい。」

マスター:「あと、佐伯長官。あなたにも修行が必要だ。」

佐伯:「・・・ふん。」

並木:「じゃあ、今日はもう遅いから、解散としましょうか。」

僕:「はい。お休みなさい。」

マスター:「お疲れ様でした。」

 僕は家路についた。
 

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