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第24話 愛別離苦


 僕はみさの手コキに耐え続けた。ここでみっともなく射精したら、その屈辱は相当だ。

 しかし、みさのエスコートにしたがって、見ている光景と同じ攻撃を身に受け、精力はみるみる激減していった。みさの優しい、やわらかくてしっとりスベスベの手や指先がペニスを極上のテクニックでいたぶる度、僕はじわじわ襲いかかる射精感に苦しめられることになる。

 少年たちが激しくてコキされれば、僕のペニスも激しくてコキされる。彼らが指先でじわじわいたぶられれば、僕のペニスも先端ばかり重点的にかわいがられる。見ている光景と同じ手コキ、同じ刺激が僕自身にも加えられる寸法だ。

 それも、最愛のみさの手でかわいがられ、刺激されているのだ。抵抗すれば霊力を切り離し、地獄に堕とされてしまう。僕はみさのなすがままに身を任せるしかない。

 が、なるべく射精を我慢し、時間を稼げば、夢から覚めるまでの時間、射精回数を減らすことはできるはずだ。神通力は使えないので、自分の実力だけで耐え続けなければならない。

 しかし、あまりにも魅力的なみさの両手は、僕の防御などあっさり振り切り、体の奥までダイレクトに、女手のいやらしい快感をどんどん送り込んで来る。耐えきれるはずもない。

 みさ:「ほれほれ! 今度は両手で握り締めて上下しているよ? よく見て?」男の子たちの股間に無数の手が群がり、女手で包まれながらひっきりなしにしごかれ続けているのを目の当たりにしながら、僕もみさの手に包まれて上下され、もみもみされてしまっている。

 僕:「あああ! みさ、出そうっ!」

 みさ:「くすくす。出して?」

 僕:「あうう!」感極まり、僕はみさの両手の間から白濁液を噴き出させた。

 みさ:「へへへっ…気持ちよかった?」

 僕:「うん…」

 みさ:「素直でよろしい☆ じゃあ、次いくよ?」

 休む間もなく、みさは僕を別の場所に連れて行った。

 ある男が女の子たちに取り囲まれている。それも、10歳~13歳くらいの、年少の小娘たちの集団だった。男よりもずいぶん背の低い女の子たちなので、彼の高さが際だってしまっていた。

 胸のふくらみがほとんどない、ぺったんこではあるが、肌のきめが細かく、大変みずみずしい肢体を具えた、若すぎる少女たち。未発達だが締まりの良さそうな無毛のオンナも露出され、何人かは足を開いて腰を突き出し、自分のオンナを男に見せつけている。

 このくらいの年齢が、彼の好みなのだろう。このロリコンども目。

 少女たちは一斉に、男性めがけて押し寄せた。ほかの人だかりと同様、もみくちゃにされ、ひっきりなしに精液を搾り取られている。

 とりわけ、彼の脈打ちを早くしているのは、女の子たちの太股であった。ゾンビ少女も混じっていたのだろう、彼の足下に穴が空き、彼の膝から下が地中に埋まって、彼は立ったままその場から逃げられなくなってしまっていた。すると、少女たちは普通に立ったままふともものあいだにペニスを収める、丁度良い高さになってしまう。

 交代で彼のペニスを股の間で挟み込み、ももをきつく締めると、その間からものすごい勢いで精液が噴き出していく。その光景をおもしろがった娘たちは、次から次へと、プニプニしこしこの生足でペニスを挟んで、激しく前後したり、ちいさなお尻を彼の腰にこすりつけるようにして腰をくねらせることで、ペニスをこねくり回しては射精の脈打ちを早めていた。

 この世界にとって、男が射精するのは当たり前となっている。少し触れられただけで出してしまい、極上の快楽を味わうことができるのだ。だから、女たちにとっては、ただ射精させるだけでなく、いかに強い刺激を与え、いかに強い快楽に溺れさせ、それによっていかに猛スピードで脈打ちさせるかの勝負になっている。

 脈打ちの速度が速ければ速いほど、男は強い快感を味わうことができる。その律動速度が速ければ速いほどいいということで、女たちはあの手この手で男をかわいがり、なるべく早く律動させるよう心がけているようだった。

 みさ:「えへへっ、女の脚ってすっごい気持ちいいよね?」

 僕:「ううう…負けるものかっ!」僕は半立ちになっているペニスに気づき、なんとか抑えようと必死に踏ん張った。

 みさ:「あ! ほら、あの子見て! あんなに子供なのに、すんごいいやらしい腰使いだよね!」

 僕:「うっく!」交代した少女は、大人顔負けのグラインドでスマタしたままペニスをもてあそんで、いつにない射精を実現させていた。

 みさ:「あの子もすごいね。体が細いから内股でおちんちん包んでも、亀頭が剥きだし。それをあんなちいちゃな手でスベスベとかわいがるなんて。」

 僕:「んああ…だめっ…」

 みさ:「おおおっ!? 達郎クン、あんなロリな女の脚とか見て立っちゃったのお?」

 うかつだった。僕のペニスは、美少女たちの痴態を見てあっさり充血してしまった。

 みさ:「ほれほれ。ワタシの脚でかわいがってしんぜよう☆」

 みさは浮遊している僕の前に回り、装束をまくり上げると、細くスベスベの脚でペニスを挟み込んだ。そして前後してシュコシュコと激しくペニスをふとももで圧迫しながらこすり、同時に内股に手を突っ込んで、ペニス先端だけをなまの手でかわいがり続けた。

 ペッタンペッタンと、みさのお尻がもっちもちで僕の腰にはりつく。彼女の臀部が僕の腰から離れるとき、引っ張られるように吸い付いてから名残惜しそうに離れていく。彼女の内股も同じ感触で、ペニスがじかにその天国を味わわされている。

 僕はまるで少女たちの太股を味わっているみたいに、みさの太股を感じ続けた。

 僕:「あああ! みさ! そんなに動いたら…」僕はみさの肩を抱きしめ、ブルルッと震えた。吸い付くような生足の感触が、ペニスを優しく包み込み、根本からしっかりとしごきながら、亀頭が細い指先でひっきりなしにくすぐられ刺激されている。

 女の子供たちに囲まれて禁断の生足攻撃を受けている彼と同様、その光景に釘付けとなった僕は、みさの生足に酔いしれ、あっという間に高められてしまうのだった。

 少女たちの気持ちよさそうな生足の攻撃を目の当たりにしながら、それと同様、否それ以上のやわらかい弾力を備えているみさの太股を、ペニスにダイレクトに刻みつけられ、そのスベスベに吸い付く肌触りにほだされてしまう。彼女のぬくもりを股間に感じながら、僕は精液がペニスにこみ上げるのをどうしても止めることができず、声も出せずに感極まってしまった。

 みさ:「はあっ、はあっ! い、いっぱい出たね☆」ペニスがオンナにもこすれているので、みさもちょっと興奮してしまっている。白濁液はみさの脚の間から勢いよく飛び出してしまっていた。

 久しぶりにあったみさの手や足にじかにペニスを攻撃されては、しかも地上での快楽の宴を目の当たりにしながらでは、どうしてもあっさり抜かれてしまうのは当たり前であった。

 みさ:「さ。ほかにいってみよう?」

 みさに連れられていった先は、町中とは遠く離れた場所であった。そこには崩れたビルもなく、近くに山が見える、田舎の集落地だった。

 そうした場所にも、若娘たちがいる。が、都会ほど多くもないらしい。数は少ないが、純朴な雰囲気がかえって男心をくすぐる、そんな強豪たちであった。

 そこにも、男たちが異世界から転送されてくる。同じような地獄絵図がくり広げられているようだった。9割の男たちは快楽を求めて娘たちに近寄っていく。そして1割が逃げ惑う。構造もいっしょのようだ。

 だが、決定的に違う点が一つあった。純朴若娘が少なめな分だけ、ゾンビ娘の数が多い。走っているか、よたよた歩いているかで、上から見てすぐ分かるのだが、だいたい半分くらいがゾンビっぽかった。

 僕:「ゾンビ率高いな。」

 みさ:「気づいた? 都会は女の子も多いけど、こっちの方はゾンビ復活が多くなってるんだよ。そうやって人数バランスを取るんだね。世界中が女に満ちあふれるように、ね。」

 僕:「…。」

 この場所での宴は、少しだけ勝手が違っているが、それはゾンビ率が上がっているだけのことだから、誘惑の仕方、追いかけ方、男が好む年齢の娘たちが取り囲む有様、そのへんは変わっていないようだった。

 さっき不覚にも二度連続でみさに抜かれてしまったからな。パターンが一緒なら、もう二度と勃起などしない。

 若娘たちの宴を目の当たりにしても、僕は精神をまっすぐに保ち、決してペニスを充血させないでいられた。同じ手は食らわない。

 みさ:「まあ、もう少し見ていてごらん。」みさは余裕だ。

 みさに連れられたまま、僕はあちこちの宴を見て回った。逃げ惑う男たち。少年たち。若い男、年端もいかぬ男たちが、若く美しい全裸の少女たちに追い回され、捕まってはそこに人だかりができる。止めどなく射精し続ける快楽の宴。

 時間が経ってみたところで、僕にとって「見慣れた」光景は、いまさら勃起を誘うものではなかった。もちろん、興奮しようと思えばすぐにでもペニスを立たせることになってしまうが、これまでの経験から精神力を高め、興奮しないように体と心と股間を鎮めることができるようになっている。それも、神通力に頼らずにだ。

 僕:「…。」

 高校生集団に囲まれる大人の男。少年。同じくらいの年の男。パターンは一緒だ。意識しなければ乗り切れる。

 大人の女に囲まれる少年。年上の男性。年下の男性。これまた同じパターンだ。捕まれば最後、止めどなく射精し続けるだけの道具に成り下がる。哀れささえ感じる。

 娘たちの年齢もさまざま、男たちの年齢もさまざま。その組み合わせもいろいろあるが、そのことごこくを僕は乗り切り、勃起を抑えることができていた。これで一定時間が経過すれば、僕はこの淫夢から解放される。みさとはまたしばらく別れることになるが、次の新世界淫夢でまた会えるのさ。

 僕はまだ、新世界の住人でもないので、慣れとか飽きがある。これがあれば、あとはみさと一緒に過ごすことを楽しんでいればいい。空中を浮遊するだけだろうけどね。それでも、今は、僕は満足だ。

 みさ:「さて、そろそろかな。見てごらん?」

 みさにつれられてきた場所の人だかりは、少し勝手が違っているようだった。

 僕:「こ、これはッ!!? 全員が…ゾンビ娘だとぉ!?」

 その男性を取り囲んでいるのは、全員が復活したゾンビなのだった。

 みさ:「人間の娘がもともと少ないから、すぐに定員いっぱいになってしまうんだ。男たちはどんどん送り込まれてくるからね。そうすると、100%ゾンビ娘の出番ってワケ。」

 僕:「そんな…くっそ…」

 みさ:「自然にあふれている場所は復活もたやすい。だからゾンビ率も上がる。さあ、彼女たちの宴を見ていてごらん。町とは全然違うから。」

 僕:「町とは…違うだと…」

 みさ:「そう。生身の娘がメインの町では、ゾンビたちはその数の少なさから、どちらかというと補助的な役割を担うことが多い…もっとも、町でもゾンビの数が増えれば変わる。数が多くなったゾンビ娘は、もっとあけすけな行動になるの。見ていてごらん。」

 見ると、復活した死者たちは、男を取り囲み、ゆっくりと間合いを詰めている。飛びかかって終わりか。

 あちこちで同じように、男たちがゾンビ娘に囲まれている。

 だが、彼女たちは飛びかかっていきなり宴に持ち込むことをしない。惚けたように取り囲み、よたよたと周囲を歩き、クスクスと微笑みながら、男に裸体を見せつけ続けている。

 彼女たちのクスクスというかわいらしく妖艶な笑いは、普通のゾンビがグルルルルというのと同じ感じなのか。

 それにしても、あいつらはなにをしているのだろう。

 僕:「!」近くにいた輪で変化がある。追い詰められた男が、輪の中から脱出しようと、力尽くで走り出し、ゾンビの合間を縫って輪から飛び出そうとしたのだ。

 だが、ゾンビ娘たちは、1秒以内の動きなら相当な力強さと俊敏さを発揮する。彼女たちはあっさりと男を捕まえてしまった。裸体の横を全力で通り抜けようとしたが、ゾンビたちは男を瞬時に捕まえ、軽々と持ち上げてしまったのだ。

 この男はそれまでか。これで捕まってセックスの宴に持ち込まれるのだ。

 だが、ゾンビたちはそうしなかった。再び輪の真ん中に男を放り投げ、再び取り囲んで、うろうろしながらなにもしてこない。

 一体これは、どういうことなんだ。なぜあいつらは、飛びかかって快楽の宴に持ち込まないんだ?

 みさ:「ムリヤリ襲えば、一時の快楽を与えることができる、でも、ゾンビの恐怖心や、心の奥底の警鐘までは消せない。だから彼女たちは待っているの。男の方が性欲にまみれて、ゾンビ娘たちに自分から襲いかかっていくことをね。」

 僕:「なん…だと…」

 たしかに、女たちは男を取り囲んで、オッパイや、脇の下や、内股や、オンナやお尻を見せつけ、無造作にうろついているように見えながら、よく見るとなまめかしいダンスのようでいて、女体のエロティックなところをじっくり見せつけるための動きだったのだ。

 視覚だけではない。四方360度から投げかけられるクスクス笑いは、男の脳天に響き渡り、性的な興奮を否応なしにかき立て続ける。

 そして、大量に噴出される淫気が、彼の嗅覚を刺激し、さらに肌から直接吸収され、性的な弱体化と興奮を呼び起こしている。

 この三重苦に苛まれながら、男たちは、ゾンビたちに襲いかかって性欲を放出させないよう、必死でこらえ続けているのだ。

 よく我慢しているな。男たちはいきり立ったペニスをどうすることもできず、腰をくねらせ、身をよじって、快楽の衝動を抑え続けている。自分に負ければ、悦楽の宴が待っているが、それは自分の理性を捨てて動物になること! それだけはなんとしてもと、ゾンビたちのエッチな誘惑に耐え続けているのだろう。

 みさ:「さて。本領はここからだよ。」

 あちこちで男たちのうめき声が出始めている。見ると、彼らはゾンビ娘たちの目線に釘付けになってしまっている。そう、彼女たちには目を合わせたら男の身動きを封じる力があるんだ。一定以上の近さにあるゾンビと目を合わせたが最後、彼女から目をそらすことができなくなり、そのままふらふらと吸い寄せられてしまうのだ。

 みさ:「ゾンビ娘の目の秘密は、脳への幻覚攻撃。男たちの脳に、その娘とのセックスの映像を直接送り込んでるんだ。」

 僕:「なんだと!?」

 みさ:「脳の中で自分とその男が交わっている姿を何度も叩き込む。目、耳、鼻で誘惑するだけでなく、いわば“想像”でも誘惑するの。」

 僕:「なんてことだ…」

 ゾンビ娘たちは代わる代わる、男と目を合わせ、自分とのセックスの想像を次々と叩き込む。そのあまりにも甘美なイメージは、男たちの理性の最後の砦を打ち砕くに十分な破壊力を持っていた。

 女の体を見ただけでは、男は興奮しない。それをイメージに取り込んで、快楽と魅力を想像するプロセスをとおして、初めて欲情するものだ。そのイメージに直接働きかけ、男たちの理性の砦をたやすく打ち崩す、魅惑的な誘惑の数々が、かれらの脳に刻みつけられ続ける。

 「うあああ…」ついに男たちは根負けする。ふらふらと吸い寄せられるようにゾンビ娘の群れに近づき、そして…

 「クスクス…」ついに男は、ゾンビ娘に抱かれた。彼女の生足が男の股の間を滑っただけで、さんざんこらえていた体液が感極まって放出される。

 男はたまらず、ゾンビ娘を押し倒した。そして彼女に一気にペニスを突き立てた。

 みさ:「ふふっ、こんなにまじまじと、ゾンビ娘とのセックスを見たことがないでしょう? よく見てごらん、男たちの恍惚の表情を。」

 ほかの輪でも、男たちは耐えきれず、次々とゾンビ娘たちに抱かれていった。

 「うっ!?」男は脈打ちながら萎えることのないペニスを、ゾンビ娘のオンナにねじ込んでしまう。その瞬間、彼の表情が一変した。

 「あがあああ!!」そのまま体を突っ張らせ、痙攣を始める。半分白目を剥いて、彼女の上に乗りながら、男はだらしなく涎を垂らし、がくがく震えながら叫び続けた。

 僕:「なっ…あれは普通の快感じゃあない。一体ゾンビ娘との本番行為に何が隠されてやがるんだ!」

 みさ:「強制蠕動。バイブ振動。膣自体が激しく自動的に前後してペニスをしごく。…復活するとき、アソコは魔性のそれに改造されているの。もちろん、締まりも生前のそれとはまったく質が違う。今、男たちは、入れた瞬間、それまでの脈打ちとは比べものにならない速度で激しく精を放出している。本来なら30分で脱水状態を起こし絶命するほどに!」

 僕:「なんだとお!!」

 みさ:「それに、ね…ゾンビは絶えずあそこから粘液を滴らせる。催淫効果たっぷりのぬっとりした奴をね。これをおちんちんに浴びれば、徹底的に弱体化され、これまで刺激されたことがない童貞以下のおちんちんになってしまう。そこに極上の魔性オソソが一気に襲いかかったら…クスクス、誰だってああなるよね。」

 ゾンビ娘たちは男を乗せ、または男の上に乗り、オンナを蠕動させながらみずからも腰を振って、いっそうペニスを快楽にさらし続ける。正常位で結合した男を抱きしめたまま自分の腰を左右に揺り動かし、いっそう悩ましくペニスを責め立て、こねくり回している。

 騎乗位で結合したゾンビ娘も、幼い体つきには似合わない腰使いで凄艶な動きをくり出し、射精スピードを徹底的にはやめ続けていた。

 どの輪っかでも、同じような宴になっていて、娘たちはどんどん交代しては、ペニスからあっという間に精液を大量に搾り取っていく。

 彼女たちがすぐに交代するのは、順番待ちが切羽詰まっているわけでも、みんなで平等に仲良く交代するわけでもない。あまりに射精が激しすぎて、彼女たちのお腹がすぐに膨らんでしまい、交代せざるを得ないのだ。その腹部にたっぷり濃い白濁液を溜め込んで交代。それは“種”となってさらに大気中に放出され、世界をさらに魔界へと変えていくのだ。

 みさ:「どお? 達郎。さすがに我慢できなかったでしょう?」

 僕:「あうう…」ペニスは情けないほどはち切れんばかりに膨張してしまっていた。ゾンビ娘が本気を出すとこんなにセクシーでなまめかしい色気と快感攻撃力に満ちあふれて板だなんて!

 みさは白装束を脱ぎ、裸になった。僕は約束通り、みさに抱きつき、空中で正常位でみさと結合した。

 ぎゅみい!

 幽霊の膣が、はち切れそうになっているペニスを包み締め付け、熱を帯びていた膨張が周囲のさらに熱い肉の中でとろけていく。

 みさ:「私、ゾンビ娘たちと同じことができるんだよ?」

 僕:「あああっ! それだけは…普通に出させてっ!!」

 みさ:「だめー☆ うりゃあああ!」

 僕:「ひゃあああああ!」

 オンナが蠕動する。振動する。前後する。これまでもみさと結合し、戦ってきたことがあったが、今度ばかりは、興奮しきってしまった僕に勝ち目はなかった。

 みさ:「さすがに粘液は出せないけど、十分だよね? ほら、気持ちい?」みさは空中で腰を左右にひねり、上に覆い被さる僕をさらに攻め続けた。間違いなくみさ自身も、前の夢よりはるかにパワーアップしている。

 一気にたたみかけるようなみさのオンナの攻撃と、さんざんゾンビ娘たちの痴態を見せつけられて興奮した精神によって、僕は瞬時にして射精という恥ずかしい想いをせざるを得なくなった。

 僕:「あああ! みさああ!」僕は彼女を抱きしめたまま、その膣内で大量の精液をぶちまけてしまった。

 僕:「みさ…」

 出し尽くして、たっぷりと濃い体液をみさの子宮に満ち満ちさせたときに、僕は彼女の髪を撫で、みさを愛でた。

 みさ:「ふふっ…達郎とつながっていると、気持ちいいね。…好きだよ、達郎…」

 僕:「僕も…」ああ…幸せだ…

 ふとペニスを引き抜いて、僕は地上の楽園を見下ろした。相変わらずゾンビ娘たちが男を取り囲み、次々と異世界からワープしてくる少年や青年たちを毒牙にかけていった。

 …。

 なにかがおかしい。

 僕:「あっ!」

 僕は佐伯仙術の呼吸をしていない。つまり、この世界の濃い淫気をたっぷり吸い込んで、性的に興奮しやすい体になっているということだ。これまでの経験があったので、普通の男のように狂ったりはしないが、淫気の影響は多少でも残ってしまう。そうすると、みさに見せつけられた宴を目の当たりにし続ければ、どうしてもペニスがはち切れてしまうではないか。

 僕:「…だましたな。」怒ってはいなかった。

 みさ:「うん…ゴメンね。」

 みさは、自分と僕とがセックスを合法的に行うために、あえて勃起させるような状態に持ち込んで、宴を見せつけてから僕の精液を抜き取ったのだ。そして最後は、念願の中出しをたっぷりするため、ゾンビ娘が多い地域にまで連れてきたのだ。

 彼女の気持ちもよく分かったし、僕もやっぱり、みさとつながりたかった。だから、みさのしたことを怒らなかった。

 僕:「なあ、みさ。ここから先は、こういう宴のくり返しなのか?」

 みさ:「うん。基本的にはそうだよ。そのあとで色情霊も加わって、全員が洗脳され、一気に魔界化する。あと一歩といったところね。こうなったらもう、誰にも止められはしない。一ヶ月ほどで終焉の鐘が鳴り、完全に新しい世界に移行することになる。そのあとは…すばらしい世界だよ。」

 僕:「誰もがセックスの虜となり、快楽を吐き出し続ける。24時間、永遠に、か。じゃあ、それ以外のすべての願望は犠牲になるってワケだな。」

 みさ:「ううん? 必ずしもそうじゃないよ。セックスには飽きないけど、実は抜け道もちゃんとあるんだ。食べる悦び、眠る悦び、いろいろなヒトとしての楽しみを味わう空間もあるんだ。」

 僕:「そうなの?」

 みさ:「地上、空、海は性の楽園となる。でも、地中奥深くは例外となるの。」

 僕:「そうなんだ…」

 みさ:「ゾンビの温床である表面部分よりもさらに地下に穴を掘れば、セックス地獄からは逃れられるけど、普通の男たちにはそこに行く方法がない。だからみんな逃れられない。でも、私と達郎だけは、そこに行くことができるんだよ。…行ってみる?」

 僕:「行こう!」

 みさ:「新世界でも、私の功績と、達郎がフザケンジャーだったことで特別扱いされるから、特別に地下に行くことが許される。理性も残る。だから、私たちだけは、好きなときに地下に行けるんだよ。夫婦として、ね?」

 夫婦! ああ、なんとすばらしい、心地よい響きだ。十無が死ぬほど焦がれ、ついに生涯叶わなかった関係性ではないか!

 自然と僕の頬が緩む。

 みさ:「ちょっ、ニヤニヤしないでよ、気持ちが悪いよ。」

 僕:「あっはっは、ごめんー!」

 とにかく僕は、みさに連れられて地中に潜り、地下数キロにある特別施設に連れてこられるのだった。

 僕:「おおお! マックデウナルゾもあるし、ぼんくら寿司もジョナサンジョースターもある。好き者屋もある。なんと、十万石まんじゅう屋までそろっている!」

 みさ:「和洋中! 料理はなんでも自動で出てくるよ!」

 そう、みさはもともと餓鬼霊。食べることへの執着はひときわ強い。だから、宿泊施設などのほかに、レストラン関係が充実しているのだ。すべて無人だが、思念したメニューはすべて自動で出てくる。なんでも無料で食べ放題だ。

 みさ:「こうして、私たち二人だけの愛の園もそろっているんだよ? 達郎がその気になれば、ここで私とずっと二人きりで過ごせるし、気が向いたら地上に出て快感に浸っていることができる。言ったでしょう? すべての快楽と幸せが、新世界にはあるんだよ。セックスも、睡眠も、食事も。そして…私も、ね…」

 僕:「…。」

 みさ:「さ。なにか食べましょう。」

 僕:「…。」

 僕は、みさと新世界のことを考えていた。同じ問題だ。みさとは暮らしたい。でも、こんな形であるべきではない。ここでの幸せな暮らしは、全世界を犠牲にした上でのことだ。僕たちが幸せになるには、世界をヘルサたん総統に捧げなければならないのだろうか。それしか方法がないのだろうか。

 いや…なにか、みさと結ばれ、しかも世界を犠牲にする方法によらずに、円満に解決する手立てがあるのではないか。

 そのために、今の僕にできることはなんだろう。

 解決に至るための大切なパズルのピースが、未だにかけたままだ。このままでは、みさを失うか、世界を失うことになる。

 なんとかしなければ。

 今の僕にできること、…それは強くなることだ。修行を重ね、そうだ、マスターの修行さえ受け、もっともっと強くなることだ。そしてヘルサたん総統の魔の手をはねのけながら、別のやり方でみさと結ばれる方法を見いだすんだ。

 いずれにしても、修行して強くならなければ、このままでは、新世界を食い止められないし、たぶん、みさとも円満に結ばれないだろう。ここは彼女のために、自分を律し、厳しい修行にも耐えなければ。

 みさ:「で? なににする? ステーキ? ハンバーグ? フォアグラ? それともキャーヴィア~?? なんでもいいよ?」

 僕:「いや…拙者、修行中の身なので、肉も魚もない、精進料理を所望いたす。」

 みさ:「はあ? アンタ何言ってんの? バッカじゃないの?」

 僕:「なっ…!! おまえ! フザケンなよ、いくら自分がニク食べたいからって…」

 みさ:「そういう問題じゃあないよっ! ばーか!」

 僕:「てめえ! とにかく今は修行中! 肉は食わん! 精進料理を出す店はないのか。」

 みさ:「はあー…だめね。なあんも、分かってない!」

 僕:「言い過ぎだぞみさ! 豪華な料理を食べたいからと言って精進料理をバカにするな。」

 みさ:「分かってない。まったく分かってない。精進料理をバカにしてるのは達郎の方だよ。」

 僕:「どういうことだよ。」

 みさ:「教えたって理解できないだろうさね。自分で見つけなさい。とにかく今は、肉を食べるぞ。がっつり! ニク! にーーーくーーー!!!」

 結局根負けし、高級焼き肉バイキングの店に入った。食べ放題なのに霜降りだのリブロースステーキだのがそろっているという、新世界前では考えられないようなところだった。

 みさの餓鬼霊としての能力は健在。僕がおいしいものを食べると、彼女の舌にも同じ味わいを感じることができる。同じ満腹感を得られる。この世界では、いつでも空腹になれるし、いつでも満腹になれるし、それらを感じないでいることもできる。眠ることもできれば、寝なくても大丈夫なのだ。

 僕が食べるのを見ているだけで、みさも同じ感覚を楽しめるんだ。だから、みさはどんどん自分の食べたいものを僕に無理にでも食べさせようとする。幸い、この世界では満腹になっても、次の瞬間には空腹になることもできるので、みさはいつまででも好きなものを食べさせることができるのだった。

 というわけで、みさのチョイスでまずは高級霜降り肉やら国産最高級和牛などを皿いっぱいに盛り、それを炭火の上品な網で丹念に焼いていく。元の世界でならこれだけで数万円は飛んでいるよなあ。

 いざ、焼いた肉を口に運ぶ。こんな軟らかそうなお肉、めったに口にできないぞ。

 みさ:「…お前は、それを食するに足る人間か?」

 僕:「う゛っ…」

 口を開けていざ、お肉を食べようとした瞬間、手が止まってしまう。

 僕:「い、いやいやいやいや…」

 いったん、肉を皿に戻す。な、なにかの聞き間違いか、空耳だよな。

 もう一度仕切り直しだ。脂ののったおいしそうなお肉を再び食べようとする。

 みさ:「…お前はそれを食するに足る人間か?」

 僕:「はうっ!」

 またもや手が止まる。そして静かに肉を皿におく。これを食べるに値するほどの人間かどうか、そんなことを言われてしまっては食べ物を口に入れられんではないか。

 そんなこと言われたって、食べたいんだから食べるんだろうが。べつになにを悩む必要があるものか。

 もう一度、震える手で肉を口に入れようとする。

 みさ:「お前はそれを食するに足る…」

 僕:「だあああああああああっ!!!!!!!! 食えるかああああ!!!!!」

 みさ:「ほっほっほ…」

 みさはころころと笑った。なんなんだ一体。

 その後許され、僕はあれもこれもと高級な肉をがっつり数十キロは食わされたのである。満腹になってはさらに空腹にさせられ、もう一度全メニューを食べるのを強要される。不思議と飽きることもない。もちろん、この世界ではカロリーという概念が意味をなさないので、いくら食べても太りはしない。排泄もない(したければできるが)。

 みさ:「ほい! 二件目! マックデウナルゾの全メニュー制覇するぞ! おらああ!」

 僕:「ひいいぃぃ!」

 そんなこんなで、僕は延々といろいろなものを食べさせられるのであった。

 数トンは食べただろうか。やっとみさは満足し、僕を解放してくれた。

 みさ:「さて。そろそろ戻りましょうかねえ。」

 僕:「ああ…」

 ここは地下に作られた特別施設、僕とみさとの「愛の巣」だ。そこを離れるのはやっぱり名残惜しい。

 みさ:「あ。そうだ。ゾンビ娘は感じることがないから無敵って思ってない?」僕を引き上げながらみさが尋ねてきた。

 僕:「思ってるよ。」

 みさ:「ゾンビ娘にも弱点がある。復活したら、その肉体を維持できるのは1時間が限度なんだ。」

 僕:「えっ、そうなの?」

 みさ:「うん。エネルギーが足りなくてね。だから、一刻も早く男性の性を吸い取らないと、1時間で崩れ落ちてしまうんだ。」

 僕:「…。」

 みさ:「男性の精を奪えば、一回の射精分の精で1時間ずつ、ゾンビ娘の寿命が延びる。でも、達郎も見たとおり、1回分絞るなんてことはここではもうしていない。入れたが最後何時間でも絞られ続ける。一回の性交で、2,3年はその身体を持たせることができるでしょうね。」

 僕:「でも、誰からも精を奪えなければ、寿命が尽きて土に帰ってしまうわけか。」

 みさ:「そうね。ただ、遺伝子情報は残っているから、いつかまた別の土から形成される。…彼女たちに生前の記憶がなかったのは分かったでしょう?」

 僕:「ああ。」

 みさ:「ゾンビ娘も長く生きていれば、記憶も言語能力も、身体能力も、生前のものが取り戻されるようになる。彼女たちの生きる目的はそこにある。ゾンビとして失われた記憶を取り戻し、全うに生きていく。そのためには大量の男性の精が必要となるってわけ。」

 僕:「じゃあ、精を奪えていないゾンビ娘は、そのまま性交を遠ざければ勝てるんだな。」

 みさ:「ええ。達郎も見たとおり、これからゾンビ娘が増えていったとき、彼女たちはあけすけに襲いかかることができなくなる。本能的にそうなるの。そうすると誘惑攻撃で、男性の側から積極的に精を提供するように…」

 僕:「視覚、聴覚、嗅覚、そして想像に訴えてくる誘惑攻撃か。」

 みさ:「そういうこと。誘惑攻撃に、最長1時間耐えきったら、ゾンビ娘を倒すことができるわ。」

 僕:「残念ながら精を提供してしまったら?」

 みさ:「誘惑に耐えなければいけない時間が延びるから、勝ち残るのは絶望的ね。」

 僕:「まあ…そうなるわな…ちなみに、かなりの精を受けたゾンビはもう崩れ落ちる心配がなくなるんだろう?」

 みさ:「ええ。生前の記憶まで取り戻せたゾンビ娘は、もう死ぬことがなくなって、崩れ落ちもしない。」

 僕:「そうなってしまうと無敵なのか。」

 みさ:「いいえ。そこまでになればゾンビ娘にも性感神経が備わるから、普通に戦って倒すこともできる。神通力も通じる。」

 僕にとって見れば、完全体のゾンビ娘の方がよっぽど倒しやすくなるわけだな。不完全な状態の方が、誘惑攻撃しかできないものの、その誘惑攻撃に対し僕は無防備だから、ずっと苦しい戦いを強いられることになる。

 これをなんとかすればいいんだよなあ。

 みさ:「もうすぐ地上だけど、今度は空中を浮遊してはいられない。色情霊が出始めているからね。」

 なるほど。がんばるしかあるまい。

 周囲が明るくなってきた。いよいよ地上だ。

 地上に出た。目の前にくり広げられている凄惨な光景に息をのんだ。

 地上は。まさに酒池肉林の天国だった。ゾンビ娘の数が格段い増え、裸の男女、とくに女が地上に満ちあふれている。その多くがゾンビ娘だ。

 まだ1割ほど残っていた、理性ある男子も、つぎつぎと魔の手に堕落し、積極的にセックスを楽しんでいる。男1人につき女50人以上が群がる割合にまで、女が増えていて、あちこちに人だかりができている。その人の山も、前半ではまだまばらだったのが、もう密度も上がり、走って逃げ惑うことさえできないほどであった。

 ビルも建物もほとんどがゾンビ娘になっているので、地上にはほとんどなにも残っていない。ただ広大な土。遠くに見えるはげ山。数メートルおきにできている人の山。というより、女体の山。それが地平線の先まで、延々と続いているのだ。

 空を見上げると、さまざまな道具を使って、最後の理性が残っていた数少ない男たちが空中に避難している。が、彼らにも50体をくだらない半透明の色情霊たちが群がり、ひっきりなしに精を奪い続けていた。

 男たちに逃げ場はまったくなかった。

 それは僕にとっても同じようだった。

 みさ:「夢から覚めるまであと少し。がんばってね~☆」

 僕:「こおおおお…」みさに空中浮遊されていないので、僕は堂々と体に神通力をまとうことができた。これで、多少のことでは揺るがないし、生身の娘と、完成ゾンビを倒すことができる。

 濃い神通力で淫気を寄せ付けず、誘惑にも快楽にも強い状態ができあがった。ただ、心の弱さだけは、神通力でどうするわけでもない、僕自身の強さが求められる。

 僕:「こおおおおお!!」呼吸を深め、強烈な電撃の玉を無数に周囲に張り巡らせる。これで、飛びかかってくる若娘、近づく完成ゾンビ、取り囲もうとする美女集団をどんどん一網打尽にしていく。

 いうまでもなく、世界中の女を僕の神通力で倒すことなど不可能だ。僕に近づく女たちを撃退するくらいしかできない。

 しかも、未完成ゾンビ、神通力が通用しない娘は、これで倒すことができない。

 僕の存在を見つけた女たちがじりじり近づいてくるが、僕は彼女たちを神通力でどんどん倒していく。が、神通力が通用しないゾンビも結構混じっている。

 神通力が通じる相手はどんどん倒れていくが、通じない初期ゾンビは残って僕を取り囲んでいく。

 結果、僕の周りにはすぐ、神通力が効かないゾンビの人だかりとなった。

 それでも僕は、佐伯仙術の呼吸法を崩さない。敵を倒すことができずとも、自分の身を守り、強化することにはつながる。なんじゃ虫との戦いの経験から掴んだことだ。決してあきらめてはいけない。必ずどこかに突破口はある!

 ゾンビたちは視覚、聴覚、嗅覚で僕を責めてくる。が、佐伯仙術の呼吸を続けているかぎり、彼女たちの裸体になびくことはないし、クスクス笑いが脳天をくすぐってくるが、心を強く持っていればなんとかはねのけられる。嗅覚攻撃は神通力が有効だ。淫毒も寄せ付けないし、仮に体内に入ったとしてもすぐに放り出せる。

 本当の問題は、イメージ攻撃だ。

 ゾンビ娘たちは、少しずつ僕との間合いを詰め、ある程度の至近距離になったら、イメージ攻撃に出てくる。僕と目を合わせれば、即座に僕の脳内に、淫行の様子を叩き込んでくる。これは佐伯仙術では和らげられないだろう。そうなったら、自力で誘惑をはねのけるしかない。

 下を向いて彼女たちと目を合わせない方法もあるが、そうすれば、きっと無理にでも顔面をねじ込んできて僕の目をじっと見てくるだろうし、目をぎゅっと閉じて視線を回避することもできるが、視界をふさげば、彼女たちが手の届く距離まで近づいてくるは必定、目を開けたときには地獄の始まりだ。

 やはり、しっかり彼女たちの目を見て、しかも誘惑をはねのける以外に手はない。

 仮に誘惑をはねのける実力が身についていくのであれば、不完全ゾンビの群れに取り囲まれても、恐れるには足らない。彼女たちは短時間で自滅し、土に帰っていく。男の精を糧に生き延び、完全ゾンビになる以外には、彼女たちはその身を保つことができないのだ。ひたすら待てば、不完全ゾンビたちは滅びてしまう。

 逆に、誘惑に勝てないようであれば、不完全ゾンビたちに次々と精を提供してしまい、彼女たちを完成へと近づけてしまうことになる。

 ふと上を見る。空中に浮かんでいる男たちに、半透明の色情霊たちが群がっている。幽霊のため、男の体をすり抜け、また幽霊同士をもすり抜け、幾重にも重なって、集団で男を責め、連続して射精させ続けている。精は地に落ちることなく空中に分散し、世界をさらに魔界化させ続けている。

 やはり空には逃れられない。

 逃れるにはみさの力を借りて、地中深くに潜るほかはない。それはそれで、彼女と永遠を過ごすのも悪くはないが、その一方で世界は確実に魔界と一体になっていく。

 これは夢の中。新世界も疑似体験に過ぎない。だからみさも、夢から覚めるまでずっと地中に僕を連れて一緒に過ごすことを許さないし、そもそもそれでは根本的な解決にもならない。

 夢なので、時間のすすみが早く、すでに空にも色情霊たちが渦巻いていて、あと一歩で魔界化してしまう状態なのだ。これをしっかり心に焼き付けて、こうはならないよう、気持ちを新たに覚悟を決める必要がある。

 …みさとのことは、その後で考えることにする。これはけじめだ。

 僕は意を決し、不完全ゾンビ娘たちの目をじっと見据え、彼女たちのイメージ攻撃を受ける覚悟で挑戦を受けて立つことにした。

 目の前に立っていたのは、やや幼い感じの、かわいらしい美少女だった。僕より年下のように見えるし、それでいて出るところはしっかり出ている、成長した女でもあった。

 ばしい!

 周囲がフラッシュをたかれたように白く光る。僕の精神の中になにかが入り込んでくる感覚。いや、どちらかというと、僕の心が吸い出されて、どこか別の世界に連れて行かれるような感覚に近かった。前後左右の間隔も時間の感覚も薄れていく。

 「!」

 気がつくと、僕は狭い空間の中に閉じ込められていた。アパートの一室のような、それでいて生活感覚はまったくない、無機質な部屋の中だ。出入り口も窓もなく、白い壁に囲まれている。床には赤い絨毯が敷いてあり、大きめのベッドが据え付けられているだけだった。布団はない。が、ベッドそのものがやわらかく、体が沈むようにできている。

 そこに僕が座らされていた。ベッドにお尻がやや沈み、ふかふかな感じが心地よい。

 僕ともう一人、目のあったゾンビ娘がいる。僕たちは横に並んで、ベッドに座っていた。お互いの生足が密着していて、彼女の太股の感触をじかに自分の足に感じる。

 「!?」声が出せない。聞こえるのは、ベッドのシーツのサラサラとした音と、僕たちの息づかいの音だけであった。体も動かず、自由がきかないのに、勝手に動いてしまう。僕の体が勝手に操られているみたいだ。

 右側に座った美少女の生足に、勝手に僕の右手が伸びていく。そして、彼女のスベスベでもっちもちした太股に触れると、手のひらで優しく撫でさすっていくのだった。

 予想外だった。

 イメージ攻撃というから、てっきり全裸の彼女の姿をまじまじと見せつけられ、セクシーポーズでも取られ、彼女の女体の魅力を存分に叩き込まれるだけだと思っていた。だから、彼女の痴態や魅惑的な姿を目の前で目の当たりにし続けても、動かずに我慢していれば、やがて誘惑から脱出できるだろうと思っていたのだ。あるいは、映像として僕と彼女が交わっている姿を、エロビデオでも見せられるように目の当たりにして、それでも動かずに我慢すれば勝てると思っていたのだ。

 つまり、彼女のイメージ攻撃は、視覚に訴えるものと勘違いしていたのだ。

 しかし、そうではなかった。視覚のみならず、触覚もなにもかもが、フル稼働させられるのだ。しかも体の自由がきかず、あらかじめ設定されていたのだろうシナリオ通りに、体が勝手に動いていくのである。

 美少女の生足はとても触り心地がいい。弾力があって、もちもちしていて、スベスベしていて、手も指もどこまでもめり込んでいく。そのハリのあるみずみずしい感触は、どうしても女の脚の魅力を存分に僕に伝え、なおかつゾワゾワと性的な魅力で僕の心を犯し続ける。手のひらに刻み込まれる生足の感触で、僕の性欲は一気に高まっていってしまう。

 ゾンビでありながら、土から作られ依然として“完成”には至っていない、ただ遺伝子を借りただけの土塊の固まりであるにもかかわらず、すでに彼女の体は女としてできあがっており、その体温や呼吸や鼓動まで人間の娘と変わらないのだった。それでいて極上の肌触りは健在、吸い付くようなきめの細かさを普通の若娘以上に備えているのだった。

 普通の男だったら、この時点で耐えきれなくなるだろう。何しろ魔界化している世界の中で、男たちの性欲は極限までに高められており、ちょっとした誘惑や刺激だけで爆発してしまうからだ。抱きついて女体の柔らかさを股間に感じただけで精液を噴き出してしまうほどに弱体化されているのである。

 そして、彼女の魅力にほだされ、実際にセックスしたいと強く願った時点で、誘惑攻撃は終了する。元の世界に引き戻された(幻覚から脱した)男は、即座に彼女に吸い寄せられ、実際に抱きついて悦びの種を吐き出し続けることになるのだ。

 もちろん、これしきの攻撃で負ける僕ではない。「こおおお…」体は操られているが、呼吸を佐伯仙術に変えることはできるみたいだ。それによって、興奮の度合いや、女体の肌触りの感触を和らげることができる。全身の周りにラップが貼られているみたいに、じかに触れている感触がやや遠のくのである。これによって、シコシコした女の脚の感触から、僕の手や足や股間を護ることができる。

 さらに体は勝手に動き、キス、抱擁と進んでいく。そして僕は、ゾンビ娘を押し倒し、両足を開いて腰を据えた。

 ペニスがオンナにねじ込まれていく。入れないように腰を引こうとしても、体は勝手に挿入に持ち込まれてしまい、どうしてもシナリオ通り、根本まで入っていってしまうのである。こうなったら、最後まで入れて、それでも我慢し続けるほかはない。

 「うぐぐ!」ゾンビ娘のオンナは、人間の娘と決定的に違っている。みさの説明どおり、かなり特殊な構造になっている。

 オンナは勝手に蠕動し、振動し、激しく前後し続けていた。いや、挿入が果たされたとたんに、括約筋で動いているみたいに、ゾンビ娘の自由自在に膣全体を揺り動かすことができるのである。

 それによって、根本から先端まで、極上のやわらかい締まりでペニスが揉みしだかれる。優しく大きく揉んだかと思うと、激しく絞るような動きに突然変わったりする。強弱もスピードも彼女の思うがままだ。

 振動もまたしかりだった。小刻みにバイブしたかと思うと、大きくブルルッと震えたりして、変幻自在にペニスの根本、さらに奥まで、性感神経全体を刺激してくる。振動が玉袋や前立腺にまで響いて、心地よすぎる快感が股間全体を覆い尽くしてしまうのだ。

 そして、彼女自身が動いてもいないのに、ペニスは激しい収縮にさらされたままたっぷりの愛液でスムーズに前後し、大きくしごかれ続けている。出し入れしないのにペニスがオンナのしごきにさらされ続け、蠕動と振動のタイミングにぴったりあわせて甘く優しく僕の股間をとろけさせ続けた。

 それでいて僕をしたから抱きしめるゾンビ娘は優しく微笑み、僕の目を見据え続け、しきりに上半身におっぱいを押しつけこすりつけながら、腰をゆったりと左右に振り続けた。これによって、オンナの形状が変幻自在にひしゃげ、一瞬一瞬違う味わいをペニスに叩き込んできた。

 一気に射精感が高まる。イク直前の多幸感がグッとこみ上げた。まずい、止めなければと思った矢先、股間に違和感を覚えた。

 「うああ!」

 どこまでも高められているのに、いっこうに脈打ちが始まらない。いわゆる“寸止め”状態のまま、ペニスはこれでもかとゾンビ娘のオンナにかわいがられむさぼられ続けている。

 からくりが分かったぞ。どうあっても、ゾンビ娘の誘惑には勝てず、ほぼすべての男性が、彼女たちの瞳に捉えられたが最後、必ずふらふらと吸い寄せられ、彼女たちに精を提供してしまう理由が分かった。

 このイメージの世界では、絶対に射精できないんだ。

 どんなに気持ちよくても、どんなにイキそうになっても、律動は始まらない。耐えられず、どうしても出したくなったら、イメージではない、実際の世界で、なまのゾンビ娘に抱きつき、抜いてもらうしかないんだ。

 たいていの男は、ごく初期の段階で、彼女たちの裸体を目の当たりにしたり、勝手に体が動いて彼女たちに触れたり抱き合ったり、それだけで誘惑に勝てなくなり、現実に戻されて実際の彼女に抱きついてしまう。

 だが、それにさえ強固な意志で抗い、頑としてゾンビ娘など抱くものかとがんばり続ける男も、ごくまれにはいるのだろう。それでも、そんな男たちでさえ、ゾンビ娘たちの魔性の膣にペニスをかわいがられ、しかもいつまで経っても決して射精できないと来れば、ほぼ確実に快楽に屈し、どうあっても出したくなって、結局ゾンビ娘の本物の膣にペニスを飲み込まれてしまうことになるわけだ。

 そして、イメージどおりの、あるいは淫毒がある分だけそれ以上の至高の快感がペニスを襲い、頑固な男たちもやはり、射精地獄の軍門に下ってしまうのである。

 「こはあああああ!!!」僕はさらに呼吸を深めた。佐伯仙術は、初期のゾンビ娘、イメージならなおさら、彼女たちには通用しない。だから、その神通力は100%、自分の強化にのみ使われる。興奮を静め、女の肌触りの感触を感じないようにし、ペニスの快感を半減させ、さらに、イキたくてたまらない状態にある玉袋を鎮める。

 脈打ち直前だったペニスのくすぐったさが押さえつけられる。先端までこみ上げていながら、律動しないがためにどうしても放出できない精液が、強制的に股間の奥に引っ込められ、体細胞ごと体の中に解消するイメージだ。これによって、イキそうになっていた股間を鎮めていくのだ。

 神通力によって強化されたため、ゾンビ娘の膣といえども、これ以上僕のペニスを快楽にさらすことはできなかった。完全に戦闘モードに入っていた僕にとって、淫毒も淫気も通用せず、ゾンビのイメージ膣も通用しないのなら、この誘惑に屈する道理はないのである。

 身を守ることに専念することによって、僕の防御力はここまで強くなれるんだ。なんじゃ虫との戦いで得た経験知である。しかもここは夢の中、イメージの力が大きく作用する。本来の僕の神通力を大幅に超えて、佐伯仙術が効力を発揮しているんだ。

 明らかにゾンビ娘の行動に狂いが生じ始めた。挿入してゆったり腰を振ればそれだけで、100%の男が誘惑に屈するはずであり、それ以上のシナリオなど用意されているはずがないのだ。だから、ビデオを巻き戻して再生し直しているような、退屈なループになった。生足をさすり、押し倒して挿入、少し時間が経つとまた生足を触るシーンに戻る。イメージがぼやけていって、彼女の「男の脳に侵入」攻撃に限界が来ていることを物語っていた。

 「!」ふっと現実に引き戻された。目の前のゾンビ娘が動きを止めている。信じられないといった風だった。

 別の女が僕の目を見つめてきた。するとまたさっきのような部屋にイメージとして連れ込まれ、僕は立ったまま妖艶な大人のレディにひざまずかれてしつこくフェラチオ攻撃を受けた。

 だが、同じように佐伯仙術で身を固めると、彼女の舌のなめらかな動きをほとんど感じず、ぷるんとした唇でいくらしごかれても、いっさい精力を消費せずに済んだのだ。そうして、またイメージに異常を来し、僕は元の世界に戻される。

 「こおおおお…」バチバチバチ!

 神通力が僕の周囲に充満する。これを直接彼女たちにぶつけても効果はない。が、僕の中に、ある確かなひらめきがあった。

 「…ヴァジュラ!」神通力が青から金色に変わる。このエネルギーは、もはや佐伯仙術ではない。魔を滅する、もっと深い力だ。

 未完成なゾンビたちは、かりそめのエネルギー、魔力で動いている。男たちから精を提供されなければ、1時間くらいで土に戻ってしまう。つまり、魔力が尽きてしまうのだ。

 「アヌッタラサムヤックサンボオディ!」ゴオオオ!波動のエネルギーがさらに周囲に満ちあふれていく。

 そう、別の夢、杉戸村の夢の時に、化け物になった哀しい女性を撃退した力だ。白い肉のかたまりとなった、触手で精を奪うおぞましい魔物を浄化した力である。

 あのとき確かに、ヴァジュラの力は消えてしまった。が、その感覚がかすかに残っていた。その感覚を頼りに神通力でエネルギーを増幅させれば、神通力の効かないゾンビどもでも、そのヴァジュラのエネルギーなら通用するのではないかとひらめいたのである。

 色情霊も、ゾンビも、一瞬で消滅させる力だ。たぶん半分餓鬼霊であるみさにも効くだろう。すべても魔性のもの、魔性の力を借りたものを消し飛ばし、人のうちにある魔性さえも抜き払う究極のパワーだ。

 「みさ…地中に逃げろ。」「わわわっ! その力はやばいって達郎!」みさは慌てて地中に潜って逃れた。

 ゴゴゴゴゴ…地が震える。空気が震える。ゾンビどもはうろたえる。ヴァジュラの力が充満した。

 「摩訶滅魔…邪悪な者どもよ、土に帰れ。」黄金に光る手が円を描き、そこから一気にヴァジュラのエネルギーが四方八方に広がっていった。

 「ぐぼぼおおお!」ゾンビどもは金色の光を身に浴びて次々と崩れ、土に帰っていく。僕を取り囲んでいた不完全ゾンビたちは一瞬で消滅し、さらに数百メートル先の不完全ゾンビも光を浴びて消滅してしまう。

 それだけでなく、完全ゾンビたちでさえ、不完全ゾンビのように瞬殺はされないが、男たちから奪ったエネルギーがッヴァジュラに相殺され、じわじわとエネルギーを失って、結局土に帰っていくのだった。

 空中を漂っていた色情霊たちも一瞬で消滅してしまう。

 人間の娘たちは、快楽の虜になったその魔性の部分だけが浄化され、次々と気を失っていく。

 男たちは射精の奴隷から解放され、淫気淫毒からも自由になり、理性さえも取り戻した。

 地下を除く、周囲と上空1キロの範囲はすべて浄化された。

 「ふうう…」ヴァジュラを放出し、周囲を男しかいない浄化された空間に作り替えた。やり切った僕は、澄んだ目で、なにもない平原を見渡した。

 たしかにヴァジュラの力はものすごい。周囲の魔の者すべてを一瞬で片付ける。セックスの虜になった男女さえ浄化され、彼ら彼女たちは理性を取り戻し、胸や股間を手で隠して赤面している。僕の力で彼ら彼女らを助けることができたのだ。

 だが…

 それは付け焼き刃に過ぎなかった。

 ヴァジュラの力が及ぶのは、一瞬だけのこと。しかも、僕の周囲1キロだけのこと。もはや魔界と一体になり始め、無限の大地となったこの世界には、ほとんど何らの影響もないに等しい。

 一度浄化された空気も、1キロ先は淫気に満たされ、その淫気がどんどん流れ込んでくる。

 1キロ先で浄化されなかったゾンビや人間や幽霊たちが、どっと押し寄せてくるのが分かる。

 一瞬だけ穴が空いたようにキレイになっても、その周りが穢れきっていれば、小さな穴はまた、魔の者に満たされてしまうのだ。

 一瞬助かった男たちも、すぐに幽霊やゾンビの餌食になるだろう。女たちは淫気を吸って再び男を襲う若娘集団に戻ってしまうだろう。

 ヴァジュラの力といえども、この新世界を丸ごと浄化することはできない。せいぜいのところ、僕自身の身を守り、ついでに一瞬だけ周囲の男女を浄化することしかできないのだ。

 …やはり、こうなってしまってからでは遅いのだ。

 こうなる前に、フザケンジャーとして、ヘルサたん総統らの陰謀を打ち砕かなければ、世界は救われない!

 「達郎!」

 僕の背後に、裸になったみさが現れた。白装束が地に落ちているので、今脱ぎ捨てたのだろう。

 「みさ…なんのつもりだ。」

 僕は身構えた。

 「達郎、そんな力まで手に入れてしまったキミは、やっぱり危険だよ。この世界で、ゾンビや幽霊の魅力に心奪われていれば、夢から覚めず、ずっとこの地下で私と暮らし、その間中キミは眠りっぱなしで、実際の世界が魔界化すれば、本当に新世界が訪れたというのに。」

 「みさ…」

 「…分かっているの。分かってるんだよ。もう、達郎が決して、この新世界を受け入れはしないし、私が体を張って説得しようとしても、たぶんキミは神通力を私にぶつけて、それでお別れする方を選ぶって。」

 「…。ごめん…」

 「だからね、達郎、もう私、キミを説得するのはやめる。これで最後とかも言わない。これ以上迫ったりもしないから。」

 「そんな…どういうこと…」

 みさはまたもや、ぽろぽろと涙をこぼした。

 ああ! みさは、今度は自分から、僕と決別しようとしているのだ。

 何となく、そんな気がした。僕への想いを自分からあきらめようとしているのか。

 「好きだよ。達郎。」

 「!!」

 「でも、私の気持ちは決して報われない。私の想いは絶対叶わないって分かったから。」

 どきっ!

 心臓が急激に高鳴り、ふわっとした感覚が全身を包み込む。

 この感覚、ドキドキした状態は、ああ! まさか、あのなんじゃ虫に感じているのと同じ感情だ!

 「み、みさ…」

 「でも…私、あきらめないから。」

 ドキドキドキ! 急に心臓が高鳴る。頭に血が上り、赤面し、ぼうっとなって、性的なものとは明らかに違う興奮を覚えている。

 佐伯仙術が使えなくなっている。もちろんヴァジュラも出せない。

 みさの哀しそうな、それでいて弱々しく甘くささやくような、かすれた声を聞く度に、心臓の高鳴りはいや増していくのが分かった。

 「待ってるよ、達郎。キミが振り向いてくれるまで、私、ずっと待ってる。」

 「み、みさ!」

 「きっと、待ち続けるのはつらいことだと思う。キミが振り向くまで、あるいはとことんまで振り向かれなくても、報われない好意をずっと持ち続け、ずっと伝え続け、焦がれる想いを秘めながら、それをがつがつと出さずに、ただ静かに、微笑みながら、相手を許し、認め、キミに受け入れられていないことだって受け入れて、それでも好意を寄せ続けて、無理強いしないでいる。そして穏やかに日常を過ごし続け、やるべきことをやり、ただひたすら、それをくり返すだけの人生になるんだ。それは、とってもつらい、言ってしまえば…苦行だね。」

 「待って! みさ!」

 「でも、あなたが好きだから。私、待ってるよ。きっとあなたは私のおぞましさに恐怖し、迷惑に思い、私を嫌い憎み、呪いさえするんだ。できうることなら、永遠に離れて安心したいとさえ思うんでしょう。でも私は、それでも、静かにあなたを待ち続ける。この異世界のどこかで、ずっと、ずっと…あなたのことを、微笑みながら、優しくしながら、助けながら、そのいいところを褒め、難しいところを補い、キミにつらいことがあっても、少しでも寄り添って、わずかでも慰めと励ましになるようなことをする。それでも迷惑がられ、周囲の人もきっと私に反感を覚えるでしょう。その攻撃をさえ、受け入れます。あなたが、好きだから。尽きるまで想い続け、恥知らずな一生となるのでしょう。それもまた、罰せられる私を受け入れることもまた、待つことの一環なんだ。だから、この苦行を受け入れて、ずっと待っています、あなたのために、あなたのゆえに、あなたを、愛しているから!」

 「お前は一体誰のことを言っているんだ!」

 「クスッ…達郎、好きだよ。」

 「みさ!」

 周囲が白くなっていく。いよいよ夢から覚めるんだ。

 「達郎、私のこと、忘れないで。私の体も、心も、忘れないで。」みさが裸になったのは、彼女のすべてをさらけ出して、それを僕に見せるためだったのだ。

 「わっ! 忘れるものか! みさーーー!!」心臓のドキドキが止まらない。周囲はさらに白さを増し、なにも見えず、聞こえなくなっていく。

 ずるいよみさ! あらためて告白して、一方的に告白するだけなんて! ああ! みさー!

 ………。

 ……。

 …。




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