魔族新法 2

 

 冗談じゃあない。女性たちはこの上ない快楽にやみつきになり、どんどん積極的に変貌していく。魔族の手先となって、ペニスを立たせることに余念なく、立てば立ったであらゆる手段を講じてでも射精させようとしてくるだろう。そうして、また気を失うほどの快楽を身に受けて、我を忘れていくのだ。

 そうなると、男たちは脱出の術を失ってしまう。躍起になってどうあっても勃起させようとしつこく迫ってきて、体を押しつけこすりつけて、萎えたペニスを興奮させるべく必死になる女たちに、僕たちはなすすべもないはずだ。抵抗もむなしく勃起させられてしまい、あとは法律に従って楽しく抜かれてしまうのである。

 世界中でそんなことが起これば、魔族たちは労せずして自動的に大量の精を世界中から集め、魔力を増やし、いよいよ手をつけられないほど強大になっていくのではないだろうか。

 女たちは絶頂の快感を求め、男たちはどんどん精を魔族に提供し、男女関係なく快楽の虜となっていく。

 生きるために必要な仕事はほとんど魔族が自動化するので、人間たちは徐々に仕事をせず、快感に浸り続けるだけの存在に落とされてしまうだろう。

 射精をいくらしても精液は異世界に飛ばされる。これは重大なことだ。着床しないということは、今後は決して子供ができないということである。その代わりに、今生きている男女が若返り、永遠の命を得ていて、人口のバランスがとれるというわけである。

 しかしそれは、生命の根源的なルールに反するはず。あってはならないことだ。

 いつまでも同じ人間が地球上に何万年も生存し続け、何らの発展も科学も持たずに、ただ魔族のために精を提供する発生装置に堕落してしまうことになる。

 ほとんどの人間にとって違和感なく受け入れられているこの状態は、人間から理性を奪い、快楽に溺れるだけの動物ーー動物以下だ!ーーに落ちきってしまうことになる。その危機感を持つことができるのは、僕のように偶然洗脳されきっていない、ごく少数の人間だけのようだ。

 性的興奮は徐々に収まってきて、まばらな周囲の男女に気づかれることがなかった。その代わりに、強い危機感と、この世界のゆがみに対する嫌悪感が、激しく心を揺さぶり続けた。

 なんとかして、元の世界に戻らないと。でも、一体どうやって?

 どう考えても、それは簡単なことではないのだった。人類の大半は魔族の出現に何らの違和感も覚えない。政府機関も完全に言いなりだ。一個人にできることは限られてしまう。団結をして、事態打開に向けて、じわじわ運動するしかないだろうけれども、果たしてそれにどれほどの効果があるのかは、はなはだ疑問といわざるを得ない。

 一瞬で人類の心まで支配できてしまう種族が相手だ。100%完全ではないにせよ、よほど強力な敵と思える。少数の被洗脳者が団結し抵抗しようとしたところで、あっさりとねじ伏せられてしまうだろう、それも、力によるのではなく、精神的な攻撃によって、あるいは快感攻撃によって。大半の人類は前者に屈した。屈しなかった者たちは、後者によって徹底的に骨抜きにされてしまうのかも知れない。

 女たちは、魔族の快楽に抗う方法を持たない。一度でも男を射精させ魔族からの“ご褒美”を拝領したが最後、やみつきになってしまって、洗脳されなくても抵抗の意志は完全に削がれるだろう。まして男たちは、その女たちの快感攻撃に抗う方法を、なにひとつ持ってはいないのである。

 抵抗しようとすれば、大量の人間女性が押し寄せてきて、勃起させられては抜かれの繰り返し、性欲のかぎり射精させられてしまうに違いない。男は、さっきの女子校生の手コキの様子を見ただけでも、自分も興奮してしまう生理を有しているのだ。それほど性欲に弱い存在でありながら、この世界に対抗するのは難しい。

 とにかく、精を魔族に提供すればするほど、敵は強大になっていく。勃起しないように心を強く持って、この世界に対抗するしかない。その中で団結も芽生えてくるだろう。

 やがて電車は、大きめの駅に着く。人の出入りが普段から激しい駅だ。

 ドアが開くと、複数の大人の女性が、上半身はスーツだが下半身はパンツまたは全裸という出で立ちで入ってきた。彼女たちは僕を見つけると、まっすぐにこちらに向けて歩いてくる。しまった、この美女たちはすでに、誰かを射精させて快楽の味を知っているに違いない。上気した面々の顔がそれを物語っていた。

 僕は立ち上がり、となりの車両に逃げるべく、車両の連結部分(電車と電車の間)に向かった。扉を開け、さらに先に進もうとすると、完全に裸の美女が、反対側の扉を開けて入ってきた。

「ああっ、しまっ……」
僕はとっさに後ろを向いた。だが、後方からも全裸の美少女が駆け込んでくるのが分かる。連結部に入ったとたんに、前方車両から乗り込んできた全裸の妖艶な女が僕の前を塞ぎ、後ろからも若娘が裸で僕に襲いかかろうと迫ってきたのだ。

 こうして僕は、電車の連結部に立たされた状態で、前後から裸の女体に挟み込まれる格好になってしまった。

 電車が動き出す! 床のスリ部分が、車内よりも激しく揺れ動く。それによって、前後の女性の体も左右上下に大きく揺れ、前後にも揺られ、そのたびにぐにぐにと、悩ましい女体が僕の体を包み込んで、全身を揉みしだいてくるのだ!

「うああ……やめ……」僕はなんとかして脱出を図ろうとしたが、前に逃げようとすれば前方のお姉さんが立ちふさがり、後ろに逃げようとすれば後方の若い娘がぎゅっと僕の背中にしがみついて離れない! そうして、連結部の激しい揺れに身を任せて、ぐにぐにぎゅみぎゅみ、女体を踊らせて僕に押しつけこすりつけ続けるのだ。

「ふふっ、立ってきたね……」「もう少しです」
女たちはひしゃげ潰れ続ける乳房を、積極的に僕の胸板や背中にくすぐったくこすりつけ続け、床の大きな動きに合わせて、四本の生足が僕の両脚に絡みつき、スベスベスリスリとこすりあげてくる。

 ペニスは抵抗もむなしく、前方の大人の女と後方の比較的若い子の女体の感触にほだされ、むっくむっくと充血していく。何とか性欲を押さえようと力んでも、それを優しく包み込んでしまうツルツルのオンナ表面、太もも、おっぱい、お腹の感触が、むぎゅむぎゅと半立ちのペニスをこすり、さらに膨張させようと床の動きで蠢いてくる!

「あああ……」ついにペニスは我慢ができず、大きな隆起となって前方のお姉さんのお腹を跳ね返す。

 すると美女はすかさず、細くやわらかくしなやかな右手でペニスを握りしめると、いきなり激しく引っ張る要領でペニスをしごき始めた。リズムに身を合わせるように腰を前後左右に踊らせながら、ものすごいスピードでシコシコしごき上げてくる!

 後ろの娘は積極的に胸を僕の背中にこすりあげながら、腕を前に回して、僕の乳首を幼く太い指先でまさぐり、くすぐってくれる。

 女たちの手の感触が滑らかすぎて、僕はつい腰を引いてしまうのだが、後ろの女の子がそれを許さず、ぐいっと腰や足を突き出し、前方のお姉さんがしごきやすいように僕の腰をそり返させるのだった。

「ほらほら、イッていいよ? いっぱいドクドクさせてよ!」美女の手はますます速度を上げていく。僕の両脚の間に、細く引き締まった生足をねじ込み、玉袋をこするようにスリスリしてくる。

「いい気持ちになってくださいっ!」後ろの少女もぐにぐにと腰を左右に揺らして、僕のお尻を押し上げながら、女体の感触を強く刻み込んでくる。

 手つきを変えながら、先端や根元や棒全体と、責める部位をわずかずつ変えていって、ペニスの快感が一層高まるように調整されている。大きく発達した大人の乳房が僕のお腹や胸に潰れた。

 女性経験のない僕にとって、あまりにスベスベでやわらかな心地よい女手が、じかにペニスを握っただけでも、興奮ひとしおというところだ。しかし、彼女たちは一気に、余裕をまったく与えない様子で、猛スピードで射精へと僕を追い込んでいく。初めての女体体験にしては、あまりに刺激が強すぎるのだった。

「あああ! イクっ!」この快楽に抵抗できるわけがなかった。

 僕は激しくペニスを律動させながら、お姉さんの手の中で爆発していった。精液が出る感覚自体はペニスに伝わっている。絶頂時の多幸感がいつもの倍以上に強く、イク時の脈打ちも早い。それでも、体液そのものは外に放出されることはない。放出される前に異次元に飛ばされてしまうのだ。

 この世界が魔族の物になってから、男性の絶頂にも変化が訪れていることが、このとき初めて思い知らされたのだった。

 刺激を与えられている時の快感が、これまでの数倍に達しており、どんなにがんばっても、普通の男性では、数分も持たずに射精してしまう。まして女体に慣れ親しんでいない僕のような男では、前後から挟み込まれて手コキされるだけで、あっさりイかされてしまうのだった。

 そして、絶頂した時の快楽も、これまでの射精時の多幸感をはるかに上回るものだった。脈打ち速度はおよそ2倍。数秒で終るはずの律動も、十数秒間続く。その間、あのきゅんとくすぐったい性感が股間から全身へと突き抜け続け、理性が飛んで頭の中が真っ白になってしまう。

 最後に、魔族の空気を吸ったためか、射精し終った後のプロラクチン分泌が極端に制限され、出し終わったあとに必ず訪れるはずの、急速に性欲が衰えていく機能がほとんど働いていないということ。玉袋の中の精子をすべて吐き出したあとに疲れてくる、いわゆる”賢者モード”の機能が働いていないということになる。その結果、絶頂直後であるにもかかわらず、すぐにまた性欲がぶり返し、そのまま連続して性行為に及ぶことができる状態が作り上げられている。同じ女性に再び絞られたいという衝動が強く働くのだ。

 しかしその願いはおそらく果たされないだろう。前後の女性は強く悲鳴を上げると、その場に崩れ落ちてしまった。魔族によって女体に与えられる快楽は、男性の比ではないのだろう。彼女たちに男を襲うモチベーションを持たせるために、気を失うほどの快楽を一度に与えるのである。その結果一時的に、一気に何度も絶頂させられるほどの快楽によって、完全に我を忘れてしまうのであるが、やがて気が付き、完全に快楽の虜となって、すぐにまた同じ快感を得ようとして、血眼になって男を捜すのである。

 僕が車両に戻ると、すぐそばにいた女子大生とおぼしき若娘が近づいてきた。彼女は上半身裸で、下半身がパンティーのみという、あられもない格好をしていた。スレンダーな女性は、ブラジャーをしていなくても大丈夫なくらいに小ぶりな胸を突き出していて、それでいて下腹部の成長は完全に大人の女そのものであった。スベスベのほっそりした、それでいて内股まわりはしっかり肉付きの良い生足が、僕の欲情をひたすらかき上げるのである。

 彼女は正面から僕に抱きつくと、細く引き締まったツルツルの太ももを僕の脚に絡めてきた!

 女性特有のそのすべすべの肌触りは、射精した直後であるにもかかわらず、あまりにも心地よく絡みつき、有無を言わさず僕の勃起を誘い続ける。それだけの豊かな魅力を、彼女は十分に持っているのだった。

 胸は小さめだが肌のきめが非常に細かく、細いあごのラインや首筋、細めの腕、小さな肩、細いウエストが悩ましい。かてて加えてツルツルの脚は女性的に発達していて、もっちりとした滑らかさを僕の両足に刻み込んでくる。

 出したばかりなのにペニスがくすぐったくうずき、また充血して勃起を始めようとする。僕は何とかして勃起をこらえようと、ぐっと踏ん張りながら女体を引き離そうとした。吸いつくような肌はベリベリと音を立ててもちもちと僕から離れていく。

 だがそれでも、20歳になったばかりくらいの美女は、しつこくしつこく抱きついてきて、全身を押しつけこすりつけようとしてくる。そのやわらかい弾力に僕はだんだん敗北しそうになってしまう。

 抱きついては離れ抱きついては離れを繰り返し、ペニスはいよいよ隆起し充血していく。ガマンしきれるはずがなかった。

「やったね!」
ペニスがヒクヒクいいながら激しく反り返っている様を見て、彼女は自分の勝利を確信したのだった。ここまで男根を追い込めば、あとは法律に従って射精させる大義名分がついた、というわけだ。

 法律に逆らってでもこの快楽地獄から脱出しようと、彼女を引き剥がし、強く腰を引いて、女体の快楽から逃れようとした。しかし、それがかえっていけなかった。ペニスの位置が低くなったので、すかさず女子大生はペニスを握り締め、ぐいっと体を密着させつつ、股の間にペニスを挟み込んでしまった。

 もちもちと両足の内股で包み込まれ、ぎゅっと圧迫してくる! さらにペニス上部には、ツルツルのオンナ表面がみゅちっと密着してくる。配布された薬を飲んだ男女は、パンフレットに書かれてあったとおり、首から下の毛がすっかり抜け落ち、腕にも脇の下にも脚にも、そして股間にさえも全く毛が生えていないのである。僕もすっかり同じだった。だから肌触りのきめの細かさはより密着度を高め、何にも妨げられずにじかに触れ合ってしまっている。

「うああ……気持ちいっ……」僕は腰を引きながら悩ましいため息をつくしかない。「私の脚、いい気持ちでしょー? このまま出していいからね?」女子大生は腰を前後させて、脚を小刻みにスリスリさせながら、内股とオンナ表面でペニスをしごき上げてくる。僕は彼女と唇を合わせながら、小ぶりなお尻を撫でさすり、快楽に身を震わせ続けた。

 だんだん高まってくる。彼女は腰をひねりながらも前後運動を激しくし、決してゆるめることなく、さらにペニスをもちもちとかわいがり続けるのだった。「あああ……」彼女の控え目な胸板はしかし、密着の度合いを高めてさらにやわらかくみずみずしい肌触りを具えており、これをこすりつけ続けながら、若い肢体を存分に僕に味わわせるのだった。

 僕はくぐもった声を出し、射精直前のあの多幸感に酔いしれた。ここまで来てしまったらもう、耐えることはできなかった。びゅく! びゅくくっ! また我を忘れるほどの絶頂感が訪れた。女の内股の中で、ペニスがいつまでもビクビクと律動し続けた。その間じゅう、彼女の華奢な体を抱き締めて、ぶるぶる震えながら、快楽以外に何も考えられなくなってしまう。

「ひい!」彼女もまた魔族の快感に耐えきれず、電車の中で気を失ってしまう。性器や乳房だけではなく、まさに全身のありとあらゆる性感神経が擦り切れるほどに責めたてられ、大量の愛液を噴き出させながら崩れ落ちていくのである。

 僕は彼女の体を支えて椅子に寝かせ、よろよろとその場をあとにした。

 このままでは四六時中抜かれっ放しになってしまう。勃起さえしなければ、彼女たちはそれ以上襲うことはできないので、やはり僕自身がしっかりと誘惑をこらえて、海綿体に充血しないよう踏ん張りきるしかない。

 電車の中はそれでも、人がまばらだ。近くにいた女性が前かがみになり、胸の谷間を強調してくる。かと思いきや、さらに反対側にいた女性はいきなりスカートをまくり上げ、お尻をむき出しにして見せ付けてくる。僕はぎゅっと目をとじて、女体を見ないようにし、さらに抱きついてくる若娘たちを引き剥がして、勃起しないように踏ん張り続けた。むぎゅむぎゅとやわらかい弾力が次々と僕にぶつかってくるけれども、それでも僕は誘惑に負けずに、勃起させないように我慢し続けた。

 幸い、電車の中の人数はそれほど多くなく、僕が誘惑に屈せずに歩いて行けば、とりあえずは勃起を逃れ、最後の車両までたどり着くことができるのだった。男の数もそれほど多くはなく、あちらこちらで誘惑の大狂乱というわけには行かなかった。女たちも実際のところ、それほどしつこいわけではなく、僕が離れて行けば、それ以上に追いかけてくることはなかった。電車が駅に着けば、また他の男性が乗ってくるのであって、そっちを狙えばいいということが分かっているのだ。

 それは僕の方も同じだった。駅についてしまいさえすれば、僕は電車を降りて、密室の誘惑から完全に脱出することができる。それまでは彼女たちのくすぐったい誘惑には絶対に屈しないつもりである。

 そうこうしているうちに、電車は駅にたどり着く。僕は一目散に電車を降り、人を逃れるように歩きだす。早く職場にたどり着いてしまえば、一旦は誘惑を逃れることができるはずだ。法律では、仕事中であってもペニスが勃起したかぎり、近くの女性に襲われてしまうことになる。しかし、僕の職場には、ほとんど女性はいない。だから、一旦は逃げ場を作ることができるのである。

「!!!」

 街の様子は一変していた。自分の住んでるところよりも多少は都会であるこの場所が、人の数も少なく、車もあまり通っていない、実に閑散とした状況に陥ってしまっている。法律が施行されて初日というだけあって、洗脳されたとはいえまだ羞恥心が残る男女の多くは、あまり外には出たがらないらしい。さもありなん。僕だってここに来たくはない1人なのだ。

 男性にとってみれば、無料で若い女たちを好きなだけ抱くことができ、強い快楽を得ることができるはずなので、性欲みなぎる男たちは我先にと街に繰り出し、いくらでも誰とでも、セックスの快楽を満喫しようとするように思われがちだ。しかも何度射精してもすぐに復活できる状態になっているので、日がなたっぷりと、女たちと抱き合おうとするように思われる。

 しかし実際に、いざ法律が施行されてしまうと、尻ごみしてしまうのは男の方なのである。どちらかというと女の方が堂々としている。さらにそれに加えて、男を射精させたときの強すぎる快楽の報酬があるので、女たちはさらに多く街に繰り出すのである。

 ただそうはいっても、まだまだ男女ともに恥ずかしがって.なかなか家から出てこようとはしない。その結果、都会なのに人がまばらという状況が生まれてしまう。

 それはそれで、幸いというべき状況でもある。以前と同じように、盛り場に若い男女が大勢たむろしていたとすれば、そこに繰り広げられている状況は、まさに酒池肉林、人間が人間として振る舞う理性的な特徴を完全に失った、快楽の園まさしくそれであるに違いない。

 そそくさと足早に職場に向かって歩き出した。途中、何人かの女が誘惑してきたが、見向きもせずにすたすた歩く。集団で取り囲まれて抱きつかれる、などということもなく、どうにか会社のあるビルにたどり着いたのだった。

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