魔族新法

 


「さ、次はあたしたちの番ね☆」「もう一度立たせてあげる♥」
女子高生2人は、すかさず僕の両側にはりついてきた。

 同世代の生足も触り心地がよいが、十分発達したお姉さんたちの短いスカートから伸びる生足は、それ以上にみずみずしく滑らかで、心地よすぎる肌触りだった。

 これが……大人の男性をも悩殺してはばからない、高校生の太ももなのか。僕の細い足よりも一回り以上大きな生足が、すべすべと僕の両脚を撫でさすりながらむっちりと滑っていく!

 彼女たちのシコシコした内股の感触は、射精したばかりのペニスでさえも、妖しく反応させていく魔力を持っていた。あまりの心地よさに、すぐに体は復活、性欲が頭をもたげていく。

 勃起したペニスを、お姉さんたちは両側から責め始める。右側の女性が棒部分を握りしめた。やらやわとした手のひらが、しっとりとペニス全体を包み込んだ。小刻みに前後させるだけで、ペニス全体が揉みしだかれながら妖しくしごかれ始める。

 左側の女性は、小さな玉袋に指先を這わせ、ぷにぷにと押してきたり、手のひらでコロコロ撫でさすったり、指先でコチョコチョくすぐったりしている。

 彼女たちは交代しながら、棒と玉袋をしなやかな手で刺激し続けた。

 射精したばかりでも、性欲だけはすぐに回復するが、もう一度ドクドクできるまでに、もう少しだけ身体の準備が必要だった。それが整うまでは、ペニスをいじくられながら快楽に腰をくねらせ、すぐにでも絶頂したくなるのに、なかなかその多幸感がこみ上げてこないもどかしさの中で、快感だけを味わわされるのだった。

 女学生たちは太ももを強くからめ、こすりつけながら、しきりに手コキをし続けた。2人がかりで、僕の下半身に迫る魔の肉体が、射精の瞬間を今か今かと待ち受けながら蠢いていた。

「ね、お姉ちゃんの手、いい気持ち?」

 右側の女性が僕の顔をのぞき込んで、優しく微笑む。僕は彼女の顔から目が離せなくなった。腰を突き上げて快感に忠実になり、そこへ女手たちが容赦なく滑り込んできて、股間とその周辺を快楽一色に染め上げてくる。

 ペニスをしごく小刻みな手がどんどん速くなっていった。快感が高まり、僕はむっちり太ももに両脚を預けたまま脱力した。

「いっぱいイッてね☆」
きゅん♥

 急激に多幸感が高まったかと思うと、お姉さんたちはギュッとペニスを強く圧迫し、さらなる締まりで快感を高めてくる。

 ビクククン!!!

 射精したばかりで連続して絶頂した。快感はさっき以上に高まり、多幸感も長く続く。無理に連続して射精させられると、こんなに気持ちいいってあらためて思い知らされた。

「ああ来た来た来たッ!」「いく~~!!」
両側の女学生たちも、狂わんばかりの快楽に身をあずけ、数秒も持たずに倒れ込んでしまう。

 この快楽にやみつきになって、女性たちは男を射精させようと積極的になっているんだ。男を射精させることで、この上ない快楽に浸ることができる。気がついた後も、その快感が忘れられず、次の男性を血眼で探し、見つけ次第どうあっても勃起に持ち込んで、ドクドクさせ続けるんだ。

 気持ちよくさせるために、手段は選ばない。手も口もおっぱいも生足も、オンナでさえも、射精させるための武器にしかならない。また、彼女たちは相手を選ばない。コドモだろうと青年だろうとお構いなしに、徒党を組んで取り囲み、壮絶な誘惑を始めるのである。

 連続して射精させられ、一時的にだが、ずんと体が重くなった。僕はよろよろとその場を後にし、女性たちに見つからないように移動するしかなかった。

 歩いているうちに、性欲は元に戻る。そして、射精しすぎて重たくなっている体やペニスが回復していく。射精するまでの準備が自然と整っていく。こうして男性たちも、一日に何十回でも、射精し続けることができるのである。

 しかし、僕には分かっている。精神的な疲労感は、肉体の回復よりもはるかに遅い。その疲れがたまっている間は、体の反応の通りに、仕方なく射精させられるばかりとなる。本当なイヤなのに、ムリヤリ気持ちよくさせられ、ドクドクさせられてしまう。

 そんなことさえもが続くようなら、精神は完全に疲れ果ててしまう。人間は、快感の連続であっても、心は疲れてしまうんだ。飽きてしまったり、嫌悪感を抱いたりする。それなのに、女性に出会ってしまったら、勝手にペニスが勃起してしまい、さらにイヤなセックスを強要されることになる。

 そうしてついには、ぐったりと疲れ果て、デパートの男女のように、半分死んだような状態になるのだ。

 これは本当に異常な事態だ。その異常さを、みんなが受け入れてしまっている。僕も受け入れてしまっていた。そこから、この異常さに気づくことができたのは幸いだった。なんとかして、この異常事態を脱出しなければ、体はともかく、精神は崩壊してしまいかねない。少なくとも、自分が洗脳されていることに気づいている男にとっては、なおさらのことだ。

 途中で、山道を発見した。この近辺に高い山はないけれども、小さな丘ならある。そこに木々が植えられ、ちょっとした森林になっているのだった。

 風に揺られる木々のかすかな音以外、何も聞こえない場所だ。たしかこの奥に、さびれた神社があったはず。

 ここならさらに、人もまばらなはずだ。夕方まで、ここに隠れていようか。

 僕は山道に分け入り、細く淋しい、ちょっと気味の悪いような一本道を、そろそろと歩いていく。

 今度は、誰かに出会っても逃げられるように、周囲への警戒を怠らなかった。

 くすんだ鳥居が見えた。

 朽ちかけており、傷みも激しい……ほとんど修復がされていないみたいだ。

 神社、というよりは、ちいさなお堂が、森の中にひっそりとたたずんでいた。誰もいない。僕はそのお堂のそばで、時間が経つのを待ち続けた。

 普段から人が寄りつかない場所だけに、新法以降、ますます人が寄りつかない場所になっている。そりゃあ、この世界は魔族の物になってしまって、神さまはとっくに効力を失っているんだ。いわんや修復もされず荒れ果てたお堂のような場所では、誰も寄りつかないに決まっている。

 格好の隠れ場所だった。……かくれんぼ、新法前はずいぶんやったなあ。男も女も関係なく、ひたすら無心に遊んだっけ。ときおり女の子のスカートからちらりと見えるパンツが目に焼き付いて、その日の夜にオナニーしたりもした。かわいいものだった。

 しかし、今は、まったく違ってしまった。

 純粋で、きゃいきゃい遊ぶばかりの男の子も、そこに混じって鬼ごっこをする女の子も、もはやそういう遊びはせず、新法に定められた新しい遊びに夢中になってしまった。クラスメイトや友達もみんな、体を重ね合わせ、肌をこすり合わせ、ペニスをビクビクさせ、絶頂に気を失い続ける。それ以外に何も考えない集団に変わり果ててしまった。

 僕だけが、かくれんぼ。

 鬼の少女たち、女性たちは、いつどこから襲ってくるか分からない。

 見つかったら、結局は僕の負け。勃起を抑える手立てを知らず、一気に射精まで持ち込まれてしまうだけだ。

 そうして、いつまで経っても、僕が隠れ役。鬼の女はさらに大勢押し寄せる。

 これから……どうやって生きていこう?

 普通に上の学校に行き続けて、大学を出てから就職。漠然と、そんなことを考えていた。でも今は、そんなコースはまるで考えもおよばない時代になってしまった。それも、ある日突然に。

 昔はこうじゃなかった。成長し成熟し、ある程度の高止まりのままの社会が、ずっとずっと続くと思っていた。でもある日突然、いっさいが様変わりしてしまった。就職もおぼつかなく、できたとしても過労だらけ。さもなくばリストラで路頭に迷う。過労死か餓死か。どっちつかずで精神異常に陥るか。ごくひと握りを除いて、生きていくだけで手一杯という時代に転落しきってしまっていた。悪者探しを国外に求め続けた。しかし国外は、もっとずっとドライでシビアな世界だった。いよいよ世人、八方塞がりの様相を呈する。最後に行き着くのは、自分でなんとかするという「原点」であった。

 そうだ。自分でなんとかするしかない。

 どうにか、なる。

 その最後の希望だけが、僕たちには残されている。

 この、魔族の支配した快楽の世界を脱出するか、世界を元に戻していくか。誘惑に簡単に負けない強靱な精神を持ち、洗脳から脱出して、僕と同じように洗脳から脱却できた男性たちが結束すれば、もしかしたら、魔族新法の欲情の罠を突破できるかも知れない。

 しかしそのためには、洗脳に気づいただけではダメだ。どうしても、射精を堪えるという精神力や、肉体的な抵抗感覚が身につかなければいけない。

 だとすると……僕では、どうにもならないのだろうか。

 このまま行けば、おそらく無試験で大学まで行かれるだろう。しかし、そこで学ぶものは何一つなく、ただセックスの相手との出会いの機会を増やすためだけに進学するのである。就職するもしないも自由。なんでも好きなもの(服以外)を買い、自由に飲み食いができる。働き手がいなくても、魔族の力によって経済は立ち回る。人間は性行為ばかりに耽り、努力なしで欲望のままに蠢く存在になる。

 それは堕落だ。

 魔族の目的は、男性の精を糧(魔力)として集めながら、同時に、人間を徹底的に堕落させ、人間の世界を完全にのっとりきることにある。その時こそ、今は姿を現さない魔族たちが本体を表し、世界中をのし歩くようになるのだろう。

 そうなる前に、人間の堕落を防がなければ。

 しかし、僕がそうするには、あまりにも無力だった。いつまで経っても性に不慣れ。慣れたとしても、快楽には弱い体のままだ。もっと成長して、ペニスも大人になっていってからでなければ……簡単に勃起してしまい、すぐに射精してしまう身体のままでは、魔族に対抗することはまったく不可能だ。

 快楽に耽る一方で、精神は正常を保ったまま、いつの日にか自分が大人になったら、仲間を集めて抵抗を始める……それしかないのだろうか。いったい何年かかるというのだ。それまでに、人間の堕落が完成してしまうのではないか。

 助けを求めようとしても、誰が洗脳を解かれているのか、まだ分からないままだ。学校で見た初老男性ーー体は若者に戻っていたがーーくらいなもので、それ以外に、洗脳が解かれたとはっきりしている男性には出会ったことがない。パパでさえ、理解してはくれないだろう。

 時間がだいぶ過ぎた。まだ夕方ではないが、午後もずいぶん経過しているようだった。

 たしか、夕方近くになれば、高校生以上の女性たちは、駅や電車に多く集まり、自宅の最寄り飽きに付き次第、近所の男性宅に赴くことになっている。

 では、それ以下の年代の少女たちは、どこにいるのだろう。下校時刻は、やはり早いはず。今時分に、帰り始める子もいるだろう。そんな少女たちは、電車に乗る必要もないので、徒歩で自宅に帰る。あるいは、近所の男性宅に押しかける。

 さもなくば、公園や、道ばたにいて、通りかかった男を誘惑することになる。

 ……つまり、小中学生たちは、街中に繰り出すことになるんだ!

 この場所は、安全だろうか? 僕はにわかに怖くなった。

 この時間帯は微妙だ。オフィスに行けば、まだ大人の女性たちがいるはず。学校にも、まだ下校せずにセックスに耽っている男女がいるだろう。駅や電車は高校生以上の女性が増え始めている。かといって街中は、下校を始めた少女たちが大勢繰り出しているんだ。

 どこにも逃げ場がなくなる時間帯ではないか。

 さすがに、このさびれたお堂にまで上がってくる子はいなかったが、下の方を見れば、すでに下校中の男女が交わり合っている光景が小さく見えている。少年少女たちは、学校でも、下校中でも、快楽に交わりながら進んでいるんだ。道路のあちこちで、彼ら彼女らの人だかりができはじめていた。

 今、街中に繰り出すのは危険すぎる。中学制服のお姉ちゃんたちも混じり始めている中で、僕も少年たちと同じく、快楽の誘惑に四六時中晒され続け、射精し続けてしまう羽目に陥る。何とか、隠れ続けなければならない。

 この場所がひとまずは安全だろうけれども、いざとなった時の逃げ道も確保しておかなければ。

「ん?」
お堂の裏側に、何かがある。井戸のような大きなコンクリートの物体だ。木の板でできた蓋がしてある。

 蓋を開けてみると、それは井戸ではなく、地下へ続く階段のようだった。

 奇妙だな。

 こんなところに階段があるなんて。つまりは地下へ行く道があるということなんだ。こんな場所に? なぜ?

 下り階段はところどころ電気がつけられており、下の方まですっかり見通せた。つまりこの場所には電気が通っていて、誰かが普段から使用しているということだ。

 お堂というのはカモフラージュで、地下には何か秘密の地下設備がある……そう考えると、ちょっとドキドキした。

 ……行ってみようか。

 僕はおそるおそる、階段を降りていった。

 下まで降りてみると、四方八方、コンクリートで覆われた地下室だった。意外と狭い。数歩も歩けば行き止まりになるような、小さな地下室のようだった。「秘密の隠れ家」を見つけたみたいで、僕はさらにドキドキした。少年は、こういうのが大好きな生き物である。

 どうやら、倉庫か何かで、何かを収納しておくためのスペースのようだった。内部は今、がらんとしていて、1本の鉄棒以外、何も置かれてはいなかった。電気はしっかりと付いていて、消すスイッチなどは見当たらない。つまり、ここはずっとライトが付いたままの場所ということになる。

 ここにしばらく隠れていればいいかな。でも、この入り口は比較的簡単に見つけられたし、女の子たちが万一このお堂に来て、地下室を見つけてしまえば、僕は逃げ道を断たれることになる。やっぱり危ないかな。

「!」

 この地下室、よく見ると、まだ続きがあるぞ。天井の一部が金網になっていて、鉄棒を引っかければ外れるようになっている。金網には簡易な折り畳みハシゴが付いていて、上に上がることができるようになっていた。……通風口か何かかな。

 試しにハシゴを登ってみると、そこは天井裏のような風体だった。ところどころに明かりがともされ、先に進むことができるようになっている。通路はずっと奥の方まで続いていた。

 天井裏なので、立ち上がって進むことはできないが、体育座りができるくらいには高さがあった。這って進むというより、四つん這いでさくさく進むことができる場所だった。

 掃除が行き届いている、つまり普段からよく使用されているということだ。いったい誰が、何のためにこの設備を作ったのか、皆目見当も付かない。

 何より奇妙なのは、床一面に白い絨毯のようなものが敷かれていて、それが布団のようにふわふわしており、ずっと深くまで手足がめり込んでしまうことだった。

 あちこちの天井に、ジュース缶サイズの穴が空いており、そこから空気を取り入れているみたいだった。

 とにかく、これがどこまで続いているのか、確認してみよう。もしかしたら、よい隠れ家になるかも知れない。


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