性霊の棲家2

 

 まただ。たしかに隣の壁から音が響いて来る。こないだ見かけた女子学生が来ているのかな。でも大家さんは誰も入居していないって言うし…。

 学生専用といっても一応アパートなんだから、そうそう大きな物音を立てて貰っても困る。僕は玄関を出て隣の人に注意する事にした。あくまで優しく、だけどね。期待通り女の子だったら、しかもかわいかったら、これからいい事あるかも♪

 などという淡い期待を寄せつつ隣の玄関に行ってみる。が、内開きの玄関のドアは開けっ放し。中は家具も何もなく、人が住んでいる気配もない。恐る恐る中を覗き込んでみた。が、やっぱり誰もいない。

 変だな。物音の事もさることながら誰もいない筈なのにどうしてドアが開けっ放しなのか。そもそもここのアパートって、どうしてドアが内開きなのか。

 ま、考えてみてもしょうがなさそうだ。

 ついでにアパートの周りを歩いてみる。外から見るとたしかにボロだ。周りは山に囲まれていて、本当になあんにも無い。

 僕の他に二人住んでいるとの事だが、僕の部屋の反対側の端っこ、暗くなりかけているというのに電気もつけていない。真っ暗だ。一階も二階も静まり返っている。…不気味だ。

 きっと二人とも出かけているんだろう。まあいいや、部屋に戻ろう。

 と、隣の部屋の玄関のドアが開いた。中から背の低い、ショートカットの、恐らくここの学校の女子大生だろう、かわいい女の子が出て来た。さっきまでいなかったのに…

 「あ、こんにちは。」

 「こんにちはぁ。」昨日の甘い囁きとは対照的に、ハキハキとした爽やかな声で返事をして来る。スポーツでもやっているのかも知れない。赤い上下のジャージを着ていた。

 「あの、僕今年から隣に入居しましたんで…」

 「そうなんですか。」

 「よろしくお願いします。」

 「はい!よろしく☆」

 かわいらしく微笑む彼女。かわいいなあ。年上だろうか。でもいいや。こんな人が彼女になってくれたらなあ。

 彼女は出かけるらしく、そのまま山を下りて行った。僕は少し寒くなったので、自分の部屋に帰る事にした。

 少し冷静になって考えてみた。変な事ばかりだ。このアパートの造りといい、条件といい、昨日の夢も、今日会った隣の彼女も、他にいる筈の入居者も…。

 うん、考えない事にしよう!どうも考えるってのは苦手だ。

 テレビでも見ようか。

 テレビをつける。ニュースか何かやっている。興味なし。番組表をめくり、今日の放送を見る。映画やってるな。面白そうなのはこの位か。チェックを入れて置く。ついでに明日の分も見て置こう。…なんにもないや。

 ザ〜〜〜〜〜〜〜…

 テレビがいきなり砂嵐に変わった。なんだよ、ここは電波もろくに届かないのか。リモコンをいじってチャンネルをくるくる回す。が、どこに合わせても砂嵐と雑音。しょうがねえなあ。

 ドーン!

 また隣から壁を叩く音。あの子、かわいい顔して神経質なのか。テレビの砂嵐も気にさわると?うーむ、かわいくても、こう神経質じゃあ、付き合うのは嫌かも。いや、でもさっき山を下りたんじゃなかったか、彼女?いつの間に帰って来てたんだろう?

 テレビを消そうとした。が、いきなり画面が元に戻った。

 音はほとんどない。何かのドラマみたいだ。だだっ広い、薄暗い部屋が映っている。小さめの体育館に絨毯らしきものが引いてある、という所か。何の番組だろう。ドラマも当たり外れがあるからなあ。一応チェックして置くか。

 だけどこのドラマ、何かが変だ。ずっと音が出ない。広くて暗い部屋に何かが蠢いている。薄暗いので何が映っているのか分からない。

 ぼう…と、明かりがついた。いや、明かりというよりは、蛍の蛍光のようなぼんやりとした明かり、しかも上から照らされているのではなく、なにやら「蠢いているもの」自身が蛍光塗料みたいに白く発光していたのだった。明らかに電気の光ではない。が、画面はかなりはっきりして来た。

 足を投げ出して座っていた僕は、腰をかがめたまま身を乗り出した。放送されているものが信じられなかった。薄く光っている「それ」は、中心に向かって、体をくねくねと動かしている。裸の女だった。しかも一人ではなく数十人はいる。一体これは何だ?光を発する裸の女達が、中心にある「もの」に向かって体をくねらせながら、淫靡な行為に及んでいる。中心にあるもの、女達の発する光しかないので顔は分からないが、どうやら人間の男のようだった。

 つまり広い部屋の真ん中にいる一人の男に向かって、何十人もの光る女達が群がり、彼の体を包み込み、愛撫し、挿入させて犯し、射精させている映像。自慰行為に及んでいる女もいれば、女同士で抱き合っているのもいる。だが基本は真ん中に一人だけいる男とのセックスだった。女達の胸も体も丸見え。オンナまで光ってよく見えている!

 女達はミダラに男を襲い、代わる代わる挿入させて、妖しく腰を動かしている。こんなエッチな光景そこらのエロビデオでもめったにお目にかかれない。それ所か、そもそも画像でモザイクがないなんて…。

 バカな!こんな放送あるものか!テレビでこんなもの放映したらそれこそ大変な騒ぎになる!これはまともなドラマじゃないぞ!?いや、ドラマかどうかさえ分からない。一体これはなんなんだ!

 カメラがズームアップする。男の体中を、スベスベした柔らかい女の手が這い回っている。頭も顔も胸も手も胴体も足も、足の裏まで、スリスリと手のひらでこすられている!ペニスの根元に一本、亀頭あたりに一本、上下にしごき立てる手、亀頭の上側に手のひらをあてがい円を描くようにして撫で回している手が一本、玉袋に二本の手。玉袋の下側に指先をくねくね動かしながら愛撫する手が一本ある。その下で、お尻の穴にも細い指が入り込んでいる。カメラが後ろに回ると、首筋、背中にも沢山の手が這い回っている。お尻の下にもニ、三本の手が滑り込んでムニムニと揉んでいるようだ。また前に戻って男の胸がアップになる。女達の手は代わる代わる胸を撫で、乳首を摘み、また胸全体を揉みしだいている!

 誰かが男の前に立った。腰のくびれた、スタイルのいい若い女だ。ペニスに群がっていた手が一斉に離れると、女はそのまま騎乗位で男を犯し始めた。ペニスがすっぽりとオンナの中に入っている。すぐにオンナの中から顔をのぞかせ、またすぐに肉に包み込まれて行く!何本もの手が再び玉袋やお尻の穴をコチョコチョといたぶっている。

 依然として音はまったく聞こえないが、きっとこの部屋中はあえぎ声で充満しているのだろう。なんてエロチックな光景なんだ…。僕はいつの間にか、テレビを見ながらズボンを脱いで、小さく呻きながら自分のペニスをしごいていた。自分でしごいていても、まるでテレビの中の光景、その真ん中にいる男が僕自身であるような錯覚を受ける。ペニスをしごいているだけなのに、玉袋も、お尻の穴も、むしろ体中がムニムニした女の手で愛撫されているみたいに、くすぐったさを感じる。

 「はうっ!で、出る!出ちゃう!イッックウウウウ!」

 程なくして僕は自分の手の間から精液を噴出させた。隣に住んでいる子が女の子である事もすっかり忘れていた。恥も外聞もなく大声であえいだまま、僕は射精してしまった。

 「は、はあ、はあ、はあ…」

 しばらく余韻に浸っていた。この映像が何であれ、僕はこの光景を脳裏に焼き付けていた。しばらくこの記憶だけでオナニーができそうだ。それ位僕にとっては衝撃的な放送だったのだ。

 放送…だったのか?

 テレビの画面はスポーツニュースになっている。今のは一体、何だったのだろう…?

 とたんに恥ずかしくなった。隣にいる女の子に僕の大声が確実に聞かれてしまった。何でそんなに堂々とあえぎ声を出せたのか。ああ、どうしよう!もー顔を合わせられないじゃんか。教訓。男は黙って白しぶき!

 それにしても、思い出す度に興奮して来る。さっきの映像が完全に頭の中に焼き付いている!詳細までキッチリと思い出せるぞ。あ、また立って来ちゃった。イカンイカン。風呂にでも入ろう。

 風呂を立て、服を脱いで、体を洗う。人知れずキレイ好きなのだ☆

 そしてぬるめの湯につかる。一人用の風呂、とはとても思えない。浴槽が2メートル以上ある。何でここのアパートってなんでもスケールがでかいんだろう?

 「ほふー☆」

 ほふー、である。誰が何と言おうとも、湯船につかって「ほふー」はこの世の天国である。オッサンクサイと言われようとも、人類が滅亡するまで、「ほふー」は永遠に不滅なんである。

 あ、またさっきの映像を思い出してしまった。ペニスが頭をもたげる。だめだ、さっきイッたばかりだろぉ!最近どうも変だ。連続して射精はできるは、何度でも立つは。いつの間に僕は絶倫ちゃんになったんだ?うーむ、祖父が聞いたらこっそり買っている精力増強薬ゴーヤグラをかなぐり捨ててこのアパートに引っ越して来るかな。

 「ふぐっ!」

 また体が動かなくなった!やばい!湯船での金縛りなんて致命的だ!って、起きてる時に金縛りになんて遭うものなのか?

 そう言えば昨日も、あのミダラな夜が金縛りから始まったんだっけ。また女があらわれる、てんじゃないだろうなあ。

 昨日の事を思い出すついでにさっきの映像も思い出した。一人の男に群がる大勢の女。ペニスはもうビンビンになっていた。

 正直言って、期待していた。昨日のように美女が僕を犯しに来るかも。夢でもいいからもう一度あの甘美な思いを…。

 って、確かここは風呂の中!やばい、いつの間にか僕は寝ているのか?そのままだと溺れる!のぼせる!死ぬかも!起きろ!えーい、起きろぉぉ!

 僕は必死で体を動かそうとした。そして、体が動いた。いや、正確には自分の意思に反して動かされた、と言った方がいい。浴槽の縁に寄りかかって「ほふーJAPAN」していた僕は上半身を起こし、湯船の真ん中あたりに座る格好になった。相変わらず手足は動かない。なのに自然と背中だけ動いたとでもいうのか。

 そして期待通りに美女があらわれた。

 体を起こしたら人一人分のスペースが背中の後ろに開く。そのスペースに人の感触がした。柔らかい二つの胸が僕の背中でグニャリとつぶれ、そのまま上下に優しくこすって来る!ぷにぷにぷに…。

 「はああっ」

 僕はどうも、背中を愛撫されたり包み込まれたりすると弱いらしい。自分の背中がウィークポイントだと初めて知った。

 耳元に吐息が掛かる。何とかして彼女の方を振り向こうとしたが、体は動かない。

 真ん中に座っている僕の後ろから、ムチムチした女の肌が愛撫して来る。そして僕の前にもやっぱり人一人分のスペースがある。

 僕の目線は少し下を向いている。いきり立った自分のペニスが丸見えで、ちょっと恥ずかしくなった。と、どこからか長い髪の毛が浮かんで来た。明らかに僕のじゃない。髪の毛はゆらゆらと浴槽に浮かび、どんどん束になって行く。そしてその束が一つの塊になり、湯船の上に持ち上がって来る。水の上に盛り上がる髪の毛は、ついに女の頭にまとまった。どんどん盛り上がって行く。髪の毛だけかと思ったら、湯船の上にずぶぬれになった若い女の頭部が浮かんで来た。水の下には何もない。水の上に、生首があるのだ。生首は、上に上がっていく過程で、どんどん自分の体を形成して行ってる。スベスベした肩、ふくよかな胸、柔らかそうなおなか、シコシコした足と、どんどん「それ」が女になっていく!恐いのに、まだ体が動いてくれない!

 ついに女は、僕の目の前に立ちはだかった。そのまま前の女は足を開き、浴槽の縁に右足を乗せ、僕に近づいて来る。僕の顔めがけて、僕の口めがけて、ピンクに染まったオンナが迫って来る。

 ついに僕の口がオンナに塞がれてしまった。その時僕の体が自由になった。が、前後を二人の女に挟み込まれ、逃げる事はできなかった。はあはあという甘い吐息が僕の性欲をくすぐり、僕はそのままオンナを舐めた。外側を丁寧に舐め取り、割れ目の中に舌をねじ込み、チロチロと愛撫する。女の手が僕の頭を押さえ撫で回している。女も感じているようだ。

 そして僕の後ろで自分の胸をこすりつけていた女も、さらなる行動を開始した。僕の背中に胸を押し付けたまま柔らかい手を前方に伸ばし、ピクピクしている僕のペニスを握ったのだ。そのまま上下にしごいて来る!

 「むむぐぅ!」

 僕は腰をくねらせ、女の手で感じさせられていた。そのとたん、またあの映像が脳裏を支配した。今は二人だが、確実に僕はあの男のように犯され始めている!

 自分のオンナを舐めさせていた女が腰をかがめた。僕と向かい合いになってじっと見つめて来た。ソヴァージュのかかった、一昔前の髪形をした、丸顔の女性だった。しっとりとした目つきで僕を見つめて来る。ドキドキしてしまう。

 そのまま彼女は僕に抱き付いて来た。ペニスをしごいていた後ろの女も手を離し、再びおっぱいで背中をこすり始めていた。そしてソヴァージュの彼女も僕の首に手を回して、自分の胸で僕の胸を愛撫する!後ろから前から、柔らかいおっぱいがこすり付けられ、這い回っている!

 「うう…。」

 僕は腰をくねらせ、女達のなすがままに任せていた。スベスベの女体が気持ちよすぎる!まるで僕の肌を吸盤のように吸いつけながら、ナメクジのようにヌヌッッと上下に移動している!

 そしてソヴァージュの女は、上下させながら器用に僕のペニスを咥え込んだ!

 「んあっ!」

 だがすぐに女はペニスを離す。そしてまた挿入して来る。体を下に移動させる度に生暖かいものに包まれ、上に移動するとそれが取れる。挿入を繰り返している格好だ。挿入したままとはまた違う「初めて入れた時」の新鮮な快感が絶えず僕に襲い掛かって来ている!

 「はっ!ぎゃっ!ふっ!ぐっ!」

 ペニスが包まれる度に僕は感じてしまった。

 そして何度も出し入れを繰り返している内に僕は耐えられなくなって来た。

 「あ!もうイク、もう出る、イッちゃう!ダメだ!あああっ!」

 一際奥までペニスが飲み込まれた時についに出してしまった。ソヴァージュごとブルブルと震えて、僕の精液を受け止めている。

 「はうう…」

 出し尽くした、という感じだ。後ろに寄りかかり、背中におっぱいをこすり付けていた女に体重をかけて安堵する。後ろの女は、パーマをかけた、やっぱり一昔前の「不良少女」みたいな子だった。でも美人だ。

 「さあ、もう出て…」

 そう言うとパーマの女は僕の体を抱き起こした。僕もそれに合わせて湯船から出る。完全にのぼせていたみたいで、フラフラする。いや、さっき思いっきり射精したからか。

 再び洗い場に腰掛ける。訳が分からずボヤーッとする。

 女達は多分幽霊だ。本物の幽霊だ。しかも今度の場合夢なんかじゃない。幽霊はいる。現実なんだ。しかもこんなに気持ちいいとは…。

 そう言えばもうセックスも終わったから彼女達ももういないかな?と思っていたら、女霊達はまだ消えていなかった。ボディシャンプーをしきりに体に塗りつけている。幽霊も体を洗うのかなあ。ぼんやりとそう考えていた。

 「立ってよ。」

 ソヴァージュが促した。言われるままに立ち上がる。すると僕の前にパーマの女が、後ろにソヴァージュの女が、立ったまま近づいて来る。ま、まさか!

 「はうああ!」

 女達は僕の体を二人で挟み込んだ!グリグリと体を押し付け、上下にこすり、手で僕の体を撫で回して来た!体中に石鹸がついているから女体がぬめぬめしてて気持ちいい!二人がかりで僕の体を強制的に洗っている!首から下を徹底的に愛撫されながら、僕の体はあっという間に泡まみれになった。ぬるぬるした柔らかい女体が、僕をサンドイッチして隅々まで洗う。首すじ、手、わきの下、胸、背中、おなか、お尻、足、足の裏。そしてついに4本の手は僕の大事な部分に伸びて行った!

 玉袋を隅々まで指が這い回る。その後ろに手が伸びてお尻の穴まで洗って来る!陰毛にも丁寧に石鹸をつけて来る。ペニスは最も念入りに洗われた!根元、真ん中、亀頭、尿道出口に至るまで、何度も何度も這い回って来る!石鹸のにゅるにゅると、手のスベスベと、柔らかい感触が、いやおうなしに僕を高めてしまう。

 「はう!やめてぇ!またイッちやうよう!」

 思わず懇願したが、女達は手を止めない。

 「あ!また出る!イクぅ!」

 発射準備完了。という所でやっと女達は手を止めた。

 「じゃあ最後はあたしの中で洗ってあげる。」

 パーマの女はくるりと後ろを向くと、そのままバックの体位で僕のペニスを自分のオンナにあてがった。

 ずぬぬぬ…。

 どんどん中に入ってゆく!

 「はう!…も、もう!」

 動かす間もなく、僕はパーマの中に出してしまった。さっきまでの石鹸愛撫で僕の性感は限界にまで高められていたからだ。

 「あふ…」パーマの女は、僕がイこうとイクまいとお構いなしにそのまま腰を前後させて来た!ヌチュヌチュといやらしい音が立ち込めている!不思議と僕は疲れる事なく彼女のオンナの中で再び勃起して来た。後ろからは相変わらずソヴァージュの女が体をこすりつけて来て、僕の性感を高め続ける!

 「あ!またイッちゃうよ!」

 僕は女達に完全にリードされながらどんどん気持ちよくなっていった。そして…。

 「うあっ!」

 ドクドク!

 また射精してしまった。ここまで連続して射精しているのに、全然疲れる事もないし睾丸が痛む事もなかった。

 「不思議がらないで。あたしたちを受け入れるのよ。ほら、快感に身を任せて…。そうしたら、あなたは天国をもっと味わう事ができるわ。」

 ソヴァージュが甘く囁く。だが僕は戦慄していた。もし仮にこのめくるめく快感に身を任せて、とめどなく射精してしまったら…。きっとどんどん精気をこの色情霊達に吸い取られて、死んでしまうんじゃないか。いやだ!まだ死にたくない!

 そう強く念じ、体をガクガクと震わせた。

 「…そう。残念ね。でも、これからもずっと気持ちよくしてあげる。恐くなくなるまで、ね?」

 「助けて…。」思わずつぶやいた。「まだ死にたくないんだ。」

 「あら、どうして死ぬの?」パーマが僕の顔を覗き込んだ。

 「だって性霊って、快感に溺れたら精気を吸い取られてしまうんだろう?」

 「誰がそんな事言ったのよ。大丈夫、死ぬ事はないから安心して。だって殺しちゃったら、あたしたちの欲望のはけ口がなくなっちゃうじゃない。」

 たしかにそうだ。…いや!騙されないぞ!

 「疑いが晴れるまでまだ時間が掛かりそうだね。」

 そう言うと二人の女はすうっと消えて行った。一体どうなってるんだ…。

 シャワーを浴び、風呂を出た。パジャマに着替えてベッドに横たわる。たしかにあれだけ射精させられているのに全然つらくなかったし体が多少重く感じるが、性霊に犯された後、つまり今この瞬間もそれほど疲れている訳じゃない。気持ちよかっただけだ。

 でも、快感の虜になる事は避けた方がよさそうだ。抜けられなくなりそうな気がする。一線を踏み越えないように気をつけよう。

 …てゆーか、なんで僕がこんな心配をしなくちゃならないんだ。このアパートはどうやら、若い女の霊、しかも飛びきり美人でエッチな幽霊の溜まり場なのだろう。今更部屋を変えてくれとは言えないしなあ。これからどうしよう。
 

 

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