性霊の棲家3
あんまり考えていても仕方がなさそうだ。明日は入学式。遅れないように早めに寝る事にしよう。あ…。今日午後起きだったんだ。眠れる筈が…ない…。ぐう。
ジリリリリリリリ!
…るせーな!はっ!目覚ましだ!
飛び起きて目覚ましを止める。どうやらあっという間に眠りこけてしまったらしい。やっぱり精気吸い取られてるんじゃねえか?
身支度をして学校に行く。こじんまりとした、古そうな学校だ。人数もさほど多くない。何も変わった所はなく、大きな大学のようなサークル勧誘のやかましさもなく、滞りなく入学式を済ませた。教室に入り、カリキュラムの事や授業の取り方などを教わった。うん、これで僕は正式に大学生だ。
午後に家に帰って来た。テレビでも…いや、あれは変な映像を見せられるからダメだ。ここが幽霊アパートである可能性がある限り迂闊な事はできないぞ。さて。それならどうしようか。やる事がないな。
とんとん。「こんにちはー」
玄関のドアをノックする若い男の声。誰だ?新聞の勧誘か?
「宅配便でーす!」
本当に宅配便だった。実家から荷物が届いたのだった。大きな箱を開けると、ディスプレイ、キーボード、マウス、本体が入っていた。パソコンだ!やったー!欲しかったんだーパソコン。しかも最新式じゃん。ラッキィ!
早速設置し、起動させる。電話も通じているようだから、プロバイダと契約もしよう。インターネットだー☆
ところが初心者の為、どうもうまく行かない。ああでもない、こうでもない、とやっている内に夜になってしまった。
「ふう。これで大丈夫だな。」何とか一通り設定も終わった。疲れたから後は明日にしよう。
またベッドに潜り込む。見事なまでにダメ人間かも知れないな。
すぐに眠りこけてしまった。昔から寝るのは得意だ。
次の日。バイクで少し離れた所にある駅前のスーパーに買出し。コンビニがすぐ近くにあればいいのだが、ここは山の中だし、どうしても自炊していかなきゃやってられそうにもない。一通り食材を買ってアパートに帰り、冷蔵庫に詰め込む。
なんか、時間があっという間に過ぎて行く感じがする。大した事やってる訳じゃないのに。ああ、こうして僕は自堕落になって行くんだなあ…。
キビキビと買出しでも掃除でもやればいいんだけど、どうも動作がノロノロしがちでごろごろ横になったり漫画を読んじゃったりして、すぐに夕方になってしまう。
さて。
やることも一通り済んだし、インターネットしよう。
カタカタカタ…。パチッ。
うんうん、色んなサイトがあるなあ。この「2ちゃんねる」という掲示板群、結構面白いなあ。
インターネットも時間を食うという事を思い知らされた。気がついてみたら夜中の2時。もうそんな時間か。寝よう。
ベッドに潜り込んでまた爆睡モードに入った。
朝。いや…もう昼だ。自然に目が覚めた。腹が減った。ご飯を炊いて食事をする。皿洗い。やる事はあるけど、どれも退屈だ。
そう言えばここの所あいつらは出て来ないな。ベッドに入っても只寝るだけだし、風呂も普通の風呂だ。テレビも相変わらずつまんない番組をやっている。
まあ、出て来ないんならそれに越した事はない。あの現象が一過性だった可能性だってあるじゃんか。
さて、インターネットしよう。なんか面白いスレないかな…。
「新入大学生(しかも三流)はここに逝けゴルァ!」あ、これ僕にぴったり。行ってみよう。張られているリンクにアクセスしてみる。
するとインターネットエクスプローラの画面が真っ黒になり、そしてそのままだった。
「なんだこれ。新手のブラクラ?」
また、自動的に別のサイトに繋がった。そこにはこう書かれてあった。
「ようこそ、エッチ怪談の部屋へ。」
エッチ怪談?なんだそれ?
「このサイトはエッチな女の幽霊に気持ちよくさせられた、またはさせられているあなたの体験談を募集しています。男性専用。」
…要するにアダルトサイトか。でも、エッチな女の幽霊体験談って、まさに僕の置かれた状態がそれじゃんか。
色々投稿がしてある。いくつか読んでみよう。何々…。「テレビを見ていたら突然裸の女達が蠢く映像に切り替わりました。」「夜寝ていたらセクシーな女性に襲われました。」「風呂に入っていたら前後から二人の女に犯されました。」
え…。これって、全部僕が体験した事そのままじゃん。なんか嫌な予感…。
また突然、金縛りが僕を襲った。来た!そう直感した。
…が、それ以降変わったことはない。後ろから手が出て来る訳でも横から迫って来る訳でもない。なんなんだ!
パソコンの画面が切り替わった。ブラウザの画面がどんどん大きくなって行く。いや、視覚的にどんどん近くなって行く!まるで画面の中に吸い込まれて行くみたいだ!やばい!
直感的に、ネットの中に閉じ込められる気がした。そんな事ありえない筈だが、先日の体験もある。このままだと取り込まれてしまうぞ。
だが、やっぱり体は言う事を聞かなかった。どんどん画面の中に入って行くような感覚。一瞬目の前が暗転する。
「こんにちは。」
気が付くと僕は奇妙な世界の中にいた。目の前には女の子がいる。しかもそれは現実のそれではなく、人気アニメキャラクターそのものだった。僕の目の前で等身大の絵が動いているのだ。背景もアニメそのもの。なんという倒錯した状況だろう!と、僕の体もアニメ化されている事に気がついた。また、その僕が裸である事も…。僕は絵になってしまっている!
「どうしてあなたは裸なの?」
「それが…。僕にも分からないんだ。」
「じゃあ、「ぼく」も裸にならなくちゃね。」
「え!どうしてそうなる!」思わずツッコミを入れてみた。
「うぐぅ…。だってえ。」女の子は服を脱ぎ始めた。話の展開がもはや意味不明だった。
裸になった女の子は、僕に擦り寄って来た。思わず彼女を抱きしめる。僕は、アニメとエッチしている!しかも空想なのではなく、僕にとっては現実に起こっている事だ。しかもよく知っているキャラクターだ。この倒錯性がいやがうえにも僕の性感を高めた。
アニメ絵というものは現実と違ってかなりデフォルメされている。本当は毛が生えている筈の腕、足、脇などが、処理されないままツルツルだったり、シミ一つない完璧な肉体だったり、ありえない程形のいいおっぱい、くびれた腰、ふくよかなお尻。
何よりも顔の描き方が特徴的である。目が異様に大きく、顔の半分を占めている。たいてい二重まぶただ。髪の色は、現実にいたらかなり「やばい人」になるであろう程、毒々しい黄緑色だったりする。つまり人間のいい所、美しい所を極端に強調し、また醜い所を極端に捨象して描くのである。世の中には現実の女を捨ててアニメに走る輩もいるそうだが、決して肯けない事ではなさそうだ。只倒錯しているという点を除けば…。
僕の目の前にいる彼女もそんなふうにデフォルメされた一人だ。彼女の柔肌は恐らく現実以上の極上品であろう。彼女を抱き締めているだけで感じまくってしまう。
不意に彼女は、僕のペニスを自分の太ももに挟み込んで来た!そのまま足をスリスリさせる。
「う…イク!」僕はたまらず出してしまった。こんなに早くイかされるとは思わなかった。
「好きだよ。」女の子はさらに擦り寄って来た。出したばっかりだというのにまた感じてしまった。これは…何かに似ている。
そうだ、色情霊どもに犯されている時と同じだ!やっぱりこれも性霊の仕業だったのか。いかん、このまま快楽に身を任せると、とんでもない事になりそうだ。ここは逃げなければ…。
ふと、女の子の身につけていた小さなリュックが目に留まった。
「ねえ、一つ聞いていい?」
「うん?」
「君のリュック、どうして羽が生えてんの?」
「うぐぅ…それは禁句だったのにぃ!」
「禁句?」
「…殺す!」
「なんでやー!」
彼女は僕の体から離れると、その目に殺意をみなぎらせつつリュックから「バールのようなもの」を持ち出して襲い掛かって来た!やばい、殺される!直感的にそう思った僕は一目散に逃げ出した。とにかくここから離れなければ。でも一体僕が何したってんだ。一体何がどうなってるんだ。
あまり走るのは得意じゃない。心配なので走りながら後ろを振り返ると、裸のまま、何か訳の分からない物体を振り回しながら女の子が追いかけて来る!が、彼女も走るのはあんまり得意じゃなさそうだ。見る見る内に彼女が遠くなって行く。多分彼女はたいやき屋に追い掛けられない限り足は遅いのだろう。
…。ここまで来れば大丈夫だろう。もう女の子は追いかけて来ない。これからは下手な事聞かない方がよさそうだ。
「ふう。なんとか逃げ切ったようだね。」
「え?」いつのまにか、隣にさっきの子とは違う女性がいた。
「てゆーか、…誰?」その女性は、全身黒いタイツのような物に身を包み、所々防具のような物がついており、背中に巨大なブーメランを背負っている。中世日本の「妖怪退治屋」といった所か。かなりの美人で、赤いアイシャドウが輝いている。
「誰って、一緒に逃げて来た仲じゃないか。」…そうだ、違うアニメの登場人物だ。僕はこの人を知っているぞ。えーとたしか名前は…。
「かえでちゃん!」
「それはキキョーの妹のババァ巫女だ!あんなのと名前間違えんなー!」怒った彼女は背中に手を伸ばしブーメランを手に取った。
こ、今度こそ殺されるぅ…。
超高速でブーメランが飛んで来る!もうダメぽ!
と、ブーメランが当たる直前で、僕の視界が突然パソコンの画面に移った。画面は相変わらず真っ暗だ。元の世界に戻ったみたいだ。
「はあ、はあ…。今のは一体、何だったんだ。…性霊!そうだ、この幻覚も奴らが見せたものだな!やい!いい加減にしろ!」僕はブチキレて誰もいない部屋の中で一人喚いた。もちろん何の反応もなし。
まったく、油断も隙もありゃしない。テレビを見れば画面が摩り替えられ、インターネットをすれば変な世界に引き込まれる。何とかならないものか。
「メールが〜きてるよほほ〜ん!」パソコンがしゃべった。メール通知だ。おかしいなあ、まだ誰にもアドレス教えてないのに。スパムか。
メールは差出人不明でタイトルもついていない。ウイルスの類はついてなさそうだ。普通はそれでも開かないのが賢明なのだそうだが、まだそれを知らなかったネット初心者の僕はそのメールを開いてしまった。
「こんにちは。あのね、ヴァーチャル・アニメ・リアリティの世界では余計な事は言わずに、エッチの事だけ考えてね。そうしないとバグって女の子は君に暴力を振るって来るぞ♪」と書いてあった。なんだこりゃ。
「初めからそんな世界に引き込むなっての。」
なんか疲れた。もう出てくんな、と言いたい。パソコンの電源を切って布団に入る。もう寝よう。時間的に少し早かったが、もう何もする気になれなかった。明日から授業だし、早目に寝て置くのもいいか。ぐっすり。
次の日。珍しく早起きだった。と言うより寝たのが早かったから起きたのも早かった。身支度をして学校に行く。
学校も歴史があるらしく、古い外観だ。他の学生に混じって教室に赴く。流石に文学部というだけあって女の子が多いな。
教室に着いた。さて、新入生が始めにやる事といったら…。友達作りだ。いくら文学部でも、僕のように少なからず男子学生がいるだろう。教室を見回してみた。
…。いないんである。大講堂という程でもない小さな教室なので、どんな人がいるかはざっと見渡せる。教室の中にいたのは、みんな女子学生だった。そんな、男が僕しかいないなんて!
鐘が鳴った。仕方ないので、適当な所に座る。教師が入って来て特に挨拶する訳でもなく教壇に座ると何やら手に持っている本を音読し始めた。
あー、とか、うー、とか言っているようにも聞こえる。何を講義してるのかさっぱり分からない。教師は下を向いたまま、ただボソボソと音読するだけである。何の本だかも分からないし、紹介もされていない、もちろんその本を僕は持っていない。どうやらやる気のない授業らしい。いきなり変な授業を取ってしまったようだ。
こんなんで楽に授業を受けて、テストも楽で、と言うんだったら有難いが、テストだけは難しいというのも困る。それに初めての大学の授業だし、せめて今日位は真面目に講義を聞きたいと思っていたので、訳の分からない教師の話を聞き取ろうと、教壇の方に集中し耳を済ませた。
と、どこからかいい匂いがして来た。甘い香水の香りだろうか。
「あ…。」周りを見ると、僕の左右隣、前後、斜めに至るまで女子学生が座っていたのだった。別に席がない訳ではない。むしろ教室の席はガラガラに近い。なのに僕の周りに一杯女子学生が集中して座っている!僕の周りにぐるりと、二重に女子学生が座っていて、甘い香りはそこから流れて来ているようだった。僕のすぐ隣、前後、斜めを囲んで8人、さらにその周りをぐるりと囲んでいる女子学生が16人、合わせて24人が、僕の周りに固まっている!
つまり↓のような状態だ。×が僕で○が女子大生達。
○○○○○
○○○○○
○○×○○
○○○○○
○○○○○
なんなんだ一体!電車とかで席がガラガラなのに態々隣に座られるのと同じで、奇妙な気分だ。
「…っ」授業中なので声は出せないがかなりドキドキしている。相手がみんな若い女の子だから。隣に座っている子の柔らかそうな腕と手の甲、指先。前に座っている子のシャツからブラが透けて見える。斜め前の子は足を組んでいて、ミニスカートから細い生足が伸びている。後ろからは、甘い息が吹きかけられている。
そんな事で興奮してしまうなんて情けないが、何か強い力に惹きつけられているかのように僕は前の子のブラや足から目が離せなくなった。もう授業には集中できない。僕のズボンの中は、いきり立ってしまっている。なんとか周りの子に勃起している事を悟られまいとする。
「!」
両隣の子が、まるで申し合わせたかのように、いきなり席を詰めて来た。二人とも半ズボンなので、生足が僕のズボンにぴったりとくっついた。ここの教室は、椅子が一つ一つ並んでいるのではなく、一本の長いす状態になっており、座る人の間隔を広げる事も縮める事もできるようになっている。二人は完全に僕に密着している!そのまま何をする訳でもなく彼女達は授業を聞いているようだ。一体どうなってるんだ?
僕は下を向いてしまった。興奮は極限に達している。出してしまいたい。そういう思いが僕を支配していた。が、今ここでオナニーをする訳には行かない。早く授業が終わってくれる事を待ち望んだ。誰にも触れられていないペニスがジンジンとうずいている。ほんのりくすぐったい!イク事を我慢するのはなんとつらい事か。
両隣の女の子達は、頻繁に足を組んだり戻したりしている。その度にスリ、スリ、とズボン越しに足がこすり付けられて来る。も、もう限界だ!
キーンコーン…。
やっと鐘が鳴った!教師は黙って出て行く。僕の周りにいた女の子達は文房具を片付け始める。僕はすばやく荷物をまとめ、席を立とうとした。が、はちきれんばかりにペニスが勃起している事をまわりの子に悟られてはいけない。僕はゆっくりと、そーっと、腰を引きながら、まだ席を立たない女子大生達の前をすり抜けていく。もちろん椅子と机の間隔は狭いので女の子の前を横切る度にスベスベの足や体等に触れざるを得なかった。その度にさらに僕の性感は高められていく!
「…今度は、半ズボンで来てね。」二人目の女の子からやっと脱出できた時、後ろから誰かが囁いた。やっぱりわざとだったんだ!いたずらだったんだ!僕は悔しい思いを隠せなかったが、その前にもう我慢できないこのペニスを沈める事にして、逃げるように教室を立ち去った。
そしてそのままトイレに直行!この興奮を鎮める為にはとにかく出してしまう以外になかった。
注意深く周りを調べた。男子トイレには誰もいない。洋式の個室に入りズボンを脱いで、空気中にペニスを晒した。トランクスはもう我慢汁でびっしょり濡れていた。
僕はさっきの授業での光景やズボン越しに感じた隣の子の足の感触等を思い出しながら、必死に自分のペニスをしごいた。さっきまで我慢に我慢を重ねていたから、しごき始めてすぐに射精感が込み上げて来た。そのまま便器に射精する。
「はあ、はあ、はあ…」
何とか興奮は収まって来た。さっきのは一体何だったんだろう。何でこんないたずらをされるんだろう。トイレットペーパーでペニスを拭き、ズボンを穿く。こんな嫌な気分でのオナニーは初めてだ。
ガタタ!上から物音がした。とっさに見上げると、上から誰かが覗いていた!女子大生だ。
「いけない!」彼女はそう言うと、パタンと下に飛び降りた。僕は頭に血が上って、水を流すのも忘れて勢いよくドアを開け、逃げようとする女の子を捕まえた。
「お前!一体どういうつもりなんだ!」
「いてて…、離してよぉ!ごめん、謝るからぁ!」
はっと我に返った。いけない、今僕は女の子に暴力を振るおうとしている!彼女の腕を離して冷静になった。冷静になった時、思い出した。ヌードである訳でもない、他愛もないいたずらでこんなに興奮してしまった事、昨日までの数々の体験。そうだ、これもきっと性霊の仕業に違いない。学校にまで色情霊がついて来るのか!
「おまえも幽霊だろう!」
「はあ?なに言ってんの?」
「え…。ち、違うの?」
「あたし正真正銘生きてます!勝手に殺すな!」
「…そもそも何でこんな事するんだ!」
「だってえ、ここの学校男の子が極端に少ないし周りは山ばっかりで出会いがないし、つまんないんだもん。」
「だからって僕をおもちゃにしてもらっては困る。」
「そんなぁ…。いいじゃない、別に女の子にもてて嫌じゃないでしょ?」
「いや、迷惑だ。」
「そう…。じゃあ仕方ないわね、納得してもらうしかないみたいね。」