性霊の棲家4

 

 ちょっと安心し始めた。僕の抗議に彼女達も納得してくれそうだ。やっぱり普通に恋愛したい。こんな形でもてるのは嫌だからね。

 だが彼女の言葉の意味はそうではなかった。彼女は僕に抱き付きそのまま力任せに押して来た。急だったので僕はよろめき、そのまま二人は洋式個室の中に傾れ込んでしまった。彼女はそのまま素早くドアの鍵を閉めた。狭い二人だけの密室になってしまった。勢い余った僕はそのまま便座に腰掛けてしまった。流れるようなスムーズな動きで、彼女は僕の唇を奪った!

 「むぐっ!」

 女の子の柔らかい唇が僕の口を塞いでる。キスをしていると、何もかもを許せるような、不思議と心が落ち着いてくる。

 しばらくキスをして、彼女は唇を離した。どうやら「納得」をさせられるのは僕の方みたいだ。

 彼女は僕の顔を覗き込んだ。見覚えのある顔だった。

 「あっ!き、君は…。」

 「やっと気づいてくれた?」

 彼女はたしかに、僕のアパートの隣に住む子だった。ショートカット、整った顔立ち、ジャージ姿ではないが細い体つき。気になるあの子だったのだ!

 「隣からいっつもあなたのあえぎ声が聞こえて来るから、あたし、あなたが欲しくなっちゃった。ねえ、いいでしょ?」

 甘い囁きが僕をくすぐる!僕は思わず、うん…、と答えてしまった。

 「そ。よかった。」彼女はズボン越しに、僕のペニスをまさぐった。さっき出したばっかりなのに、彼女の柔らかい指の動きで、あっという間にまたムクムクとペニスが勃起してしまった。

 「そうそう、一つゲームをしない?」

 「ゲーム?」

 「声だしちゃだめゲーム。」そのまんまだ…。

 「はあ…。」

 「もしあなたが勝ったらもういたずらしないであげる。でもあなたが負けたらもうあなたはあたしのものよ。」

 「…。」

 「じゃあ今から、スタート!」

 要するにお互いに何をされても声を出してはだめというゲームらしい。もちろんあえぎ声も禁止である。我慢しなければならない。先に声を出した方の負け。なんかゲームをするかしないかの僕の意思とは関係なくゲームが始まったらしい。こうなったら意地でも声を出すものか!

 まぁ普通あえぎ声を出すのは女の方だから、僕の方が有利だろう。

 女子大生は便座に座っている僕のズボンを器用に脱がせた。いきり立っているペニスをつかんで優しく微笑むと、そのままペニスに顔を近付けた。そして僕のペニスを口に含み、捕らえ、しっかりとくるみ込んで来た。亀頭をチロチロと舐め、そのままペニスを唇でしごいて来た!

 依然として無音のまま、ちゅぱちゅぱとフェラチオの音だけが響いて来る。彼女の言う通り男子学生はほとんどいないのだろう、誰かが入ってくる気配はまったくなかった。

 僕も負けてはいられない。手を伸ばし、ワンピース越しに彼女の胸をサワサワとまさぐった。

 おっぱいが気持ちよかったのだろう、彼女はフェラをやめて僕から離れた。二人の息遣いは既に荒くなっていた。が、はあはあという荒い呼吸は「声」の内に入らない。

 彼女は服を脱ぎ始めた。それに合わせて僕も服を脱いだ。二人は裸になった。

 もし性霊だったらあっという間に僕は再び気持ちよくなり、果てていただろう。だがどうやら彼女は生身の人間らしい。さっきオナニーで抜いて置いたから、中々射精には至らなかった。その分僕の方が有利という訳だ。

 とはいうものの、さっきまでの彼女の攻撃で僕のペニスはビンビンになっていた。幽霊とセックスした事はあるけど生身の人間とは初めてだ。しかも相手は好きな人。その想いがいやがおうにも僕を興奮させた。

 僕は彼女の乳首を指で転がした。すると彼女はピクッと体を震わせた。僕の攻撃が効いているようだ。感極まったので、彼女は僕に無言で迫って来た。そのまま僕は彼女の乳首を口に含んだ。舌で転がしてあげる。

 彼女は上気して、柔らかい腕を僕の首に回して来た。

 おっぱいへの攻撃で何とか彼女に声を出させられないものか。といってもセックスはまさに初心者なのでそこまでのテクニックを身に付けている訳ではない。

 不意に彼女は胸を僕の口から引き剥がした。そしてくるりと後ろを向くと便座に腰掛けている僕の上に腰掛け始めた。まさか…!

 そのままスムーズに、あまりにもスムーズに、僕のペニスはオンナの中に入ってしまった。所謂駅弁スタイルだ。

 挿入の瞬間僕は思わず声を出しそうになってしまった。ムニュムニュとした、粘液質の、それでいて引きちぎれそうなほどきついオンナの感触に、もう少しで負けそうになってしまった。

 彼女はそのまま上下に腰を動かして来た!便座ごとギシギシと音を立てている。僕も彼女も無言のまま耐え抜いた!女の手や唇、足等からは想像も付かない位強く圧迫されたペニスが、そのままの状態ですばやく上下にしごかれている。

 僕は何度も声を出しそうになった。が、寸前の所で耐えていた。彼女も同じらしかった。あえぎ声一つ出さないで、必死に上下する。

 無言の攻防が続いていた。僕がイかずに済んでいるのは偏にさっきのオナニーの成果だ。

 突然彼女は僕のペニスを離した。そして今度は僕と向かい合った。向かい合ったまま再び腰を落とした。再び生暖かい感触に包み込まれる!

 今度の彼女の責め方は、上下ではなかった。巧みに腰を揺り動かし、僕のペニスを咥え込んだまま前後にねぶって来る!

 「…!」

 僕は必死に声を出すまいとがんばった。が、彼女は僕の肩に手を乗せ、挿入させたまま体を離し、僕の顔を覗き込んで不敵な笑みを浮かべた。それは勝利宣言と捕らえてもよかった。

 キュウウウウウウウウウウウウ!

 今までに味わった事のない快感が僕の全身を貫いた!彼女のオンナがいっそう強くまるでオンナの中のペニスの体積がゼロになってしまうかと思う位に、締め付けて来たのだ!これが彼女の得意技だった!

 「ぎゃっ!」

 僕は思わず声を出してしまった。と同時に、精液を彼女の中に勢いよくぶちまけてしまった!

 「はあはあ、ふふ…。あたしの勝ちね。」彼女は勝ち誇って僕のペニスを離した。僕は負けてしまった。

 「じゃあ、これからも学校で天国を見せてあげる。約束よ、いいわね?」

 負けた以上、それに従うしかなさそうだ。これからどうなるんだろう、という一抹の不安を覚えた。

 彼女は服を着て、じゃあね、とウインクすると、男子トイレを出て行った。僕は暫く呆然としていた。

 暫く経って、のろのろと服を着て、トイレを後にした。今日はもうこれ以上授業を受ける気になれなかった。そのまま家路についた。これからどうしよう。

 家に着くと畳の上に仰向けに横になり、そのままぐったりした。なんかここの所、家でも学校でもエッチしてばっかりだな。女性不信になりそうだ。

 夕食の後インターネットする為にパソコンの電源を入れる。もう変なサイトにはつながらないだろうな…。

 と思っていたら、いきなり初めからエッチ怪談のサイトにつながった!どうやらブラウザを立ち上げると同時に開かれるホームページアドレスにこのサイトが繋がるように書き換えられているみたいだ。インターネットオプションを開き、ホームページをチェックする。「about:blank」になっている。…ここが書き換えられているんじゃないのか。

 突然目の前が真っ暗になった!またあのヴァーチャル何とかって所に引き込まれるのか!ダメだ!何とか抜け出さなくては!

 必死で脱出したいと念じ、何度も気合を入れて幽霊を撥ね退けようとした。

 だが、霊能力なんてない僕はまるで抵抗できなかった。やっぱりヴァーチャルリアリティの中に入り込んでしまっていた。

 …。だが、誰もいない。というよりもアニメではない。目の前に広がっている世界は現実の世界そのものだ。絵ではない。荒涼とした森の中。目の前に古い井戸があるだけで、冷たい風が吹いている。何も起こらない。

 そうか、きっと僕の精神力で登場人物を消したんだな。我ながら中々やるじゃん。

 と思っていたら、いきなり後ろの方でザーッという砂嵐の音が聞こえた。振り返るとテレビが置いてあり、それが砂嵐を発していたのだった。ってかコイツはどこから電源を取ってるんだ?

 砂嵐が止んだ。何やら奇妙が映像が流れて来る。これは…。どこかで見た事あるぞ。そうだ、映画だ。見ると呪われるビデオの話だ。ヴァーチャルリアリティは映画の世界も再現できるのか。

 待てよ、性霊どもの仕業だとしたら、この後の展開は…。

 背筋がゾッと震えた。嫌な予感が走る。

 ついにテレビは、自分の後方にあるのと同じ古い井戸を映し出した。確か映画ではその井戸から手が出て、体が出て、睨み付けられて殺される…というストーリーだった筈。やっぱり僕の精神力では除霊はできないらしい。

 テレビの井戸から手が伸びる。髪の長い、白い服を着た女が顔を覗かせる。やっぱり思った通りだ。そして恐らく僕はこの女霊とエッチさせられるんだろう。それだけは勘弁願いたい。気持ち悪い。

 そういう訳で、早速逃げる事にした。踵を返し、テレビとは反対側へ走ろうとした。

 が、自分の目の前にある古井戸からも、女霊が妖しい笑みを浮かべながら出て来ていた。テレビからも井戸からも女霊が出て来ている。

 とっさに右に逃げようとした。が、それも無駄だった。走り出したとたん誰かが僕の足を掴んだ。思わずつんのめり、地面に倒れ込んでしまった。足元を見ると、なんと地面から手が出ているのだ。地面から泥だらけの女霊がどんどん這い出してくる。僕の足首は強い力で掴まれたまま。身動きが取れない。

 テレビの方を見ると、既に女霊は井戸を抜け出し、テレビの画面から上半身を乗り出していた。井戸の方は完全に抜け出していて、二本の足でこちらに向かって歩いて来る!そして僕の足元の女霊も土から完全に抜け出して、僕の太ももを優しくさすり始めていた。

 左右から二人の女霊が見下ろす。みんな同じ顔だ。二人はそのまましゃがみこみ、右側の女霊が僕の上半身をさする。上半身下半身ともに、三人の、六本の手が這い回って来た!

 「う…、くぅ…。」三人に同時に責められ、僕は全身のくすぐったさに呻き始めていた。このまま感じてしまったら、またいつものパターンで何度も犯されてしまうに違いない。できるだけ精神を集中させ、感じまいとして踏ん張った。だが若い女の巧みな愛撫攻撃は、どんなに頑張っても僕を快楽の淵へと落としてしまう。結局僕のペニスはどんどん膨張して行く。だめだ、立っちゃだめだ、と、いくら自分に言い聞かせてもほとんど何の効果もなかった。

 三人の女霊は僕の服を脱がしにかかった。上着のボタンを外し、ズボンのチャックを下ろし、シャツを脱がせた。僅かに残っていた理性が僕のパンツに手をかけさせた。両手で自分の下着を掴み、下ろされまいと頑張った。僕の最後の抵抗だった。

 しかし残念ながら、トランクスだったのである。もちろんブカブカだ。足元にいた女霊の柔らかい手が僕の太ももを這いながら、トランクスの中に入り込んで来た!パンツを下ろさなくても手は十分にペニスを掴む事ができた。

 今度は左側の女霊が、お腹からトランクスに手を突っ込んで来た。そしてトランクスには言うまでもなく排尿の為の窓が付いている。右側の女霊にその窓のボタンを外された。そのままその窓から手を入れて来た!

 僕の右ふとももからブカブカのトランクスに手が滑り込み、またおなかからも柔らかい手が滑り込む。そして足の付け根の敏感な部分や、玉袋、会陰、ペニスの根元を指先でコチョコチョさすったり、くすぐったりしている!そしてもう一人がトランクスの排尿窓から手を捻じ込み、ペニスをゆっくり優しく指先で擦り続ける。

 三人がかりで集中して責められる。三人が片手ずつをトランクスに入れていたが、もう片方の手も次第にトランクスに滑り込み、スベスベと下半身をさすって来た。

 足元の女霊は僕の両ふとももから手を滑らせている。左側の女霊は片方の手を僕のおなか部分からトランクスに突っ込み、もう片方の手は僕の左胸全体をさすっている。右側の女霊も同じように排尿窓からペニスをやさしくさすりつつもう片方の手が上半身にあてがわれた。

 優しく柔らかい手のひらや指先がゆっくりと僕を可愛がり続ける。きっ気持ちいいっ!ペニスはもう制御不能に陥り、彼女達にされるままになっていた。どんどん僕は脱力して行き、快感に身を任せたくなる誘惑に駆られる。

 ぴょこん、と、ペニスが排尿窓から顔を出した。右側の女霊がトランクスの中で悶えていたペニスを引きずり出したのだ。

 「あ、だめ!」僕は身を悶えさせたがもう遅かった。女の手が、何本もの手が、露出され始めたペニスを直にまさぐり始めた!上半身をさすっていた手がペニスを掴み、揉みたてている!

 一気にトランクスがずり下ろされてしまった。足元まで下ろされたパンツはそのまま僕の足かせになり、自由に身動きが取れなくなった。つまりもう逃げられない。

 完全にむき出しになった下半身にしなやかな女の手が群がる。細い指が亀頭を撫で回し、別の手で根元からしごかれ、玉袋も揉まれている。僕は膝を立て、足を開いた。勝手に無防備になって行く。お尻の穴をまさぐる指もあった。そして…。

 「ふぐっ!」

 誰かが僕のお尻の穴に指を突っ込んだ!激痛が全身に走った。そのまま出し入れして来る。

 「い、痛い!やめて!やめ!あぎゃ!」僕は悶絶した。指の動きは止まらない。ますます出し入れが早くなって行く。痛みがさらに増して行く。誰なんだ、アナルが気持ちいいなんて言った奴は!痛いだけじゃないかあ!

 指の動きが止まった。多少痛みが和らいだ。もう抜いて欲しい。そう思っていたら不思議な感覚が肛門に走った!ゆ、指が、指が震えている!?バイブレーターのように!機械的な振動がお尻から全身にかけて広がって来る!

 「え!?あ、は…、ひぃぃぃ!」さっきまでの痛みと違って体の奥がジンジンとして来る!ペニスへの刺激とはまた違った、今までに味わった事のない快感だった。ペニスのさらにまた奥が、体の中が、すっごい気持ちいいい!

 今までのセックスはむしろ体の表面への刺激だったのに対して、今されているのは体の中からの刺激だった。その上ペニスを中心に体全体が愛撫されている!中から外から、文字通り体全体を犯されてる!

 「う、うわあああ!」どびゅびゅびゅびゅ!あっという間に上り詰め、女霊の手の中にしぶきをあげてしまった。

 しかしそれでも彼女達の手は休まらない。お尻の指はさらに深く沈んで行き、一層強くバイブして来る!女達はペニスをしごきながら、お尻を犯しながら、体をさすりながら、どんどん着物を脱ぎ捨てて行く。

 ひとしきり射精し終わった後脱力したが、その脱力がいけなかった。力を抜いて快感攻撃に無防備になったとたん、強烈な刺激が体を支配した。通常ある程度は快感に対して力を入れるなり気を引き締めるなりして、多少の耐性をもってセックスに及ぶものである。が、そのタガがすべて外れたので、僕は快感ダメージを100%受けてしまったのだった!

 あっという間に二度目の精液を放った。気持ちよすぎて声も出なかった。

 頭の中が真っ白になりつつ、訳の判らないまま、しかし段々警戒心も強くなって来た。いけない、このまま快楽に身を任せてはいけない!その気持ちが三度目の射精を食い止めた。もしこのまま完全に警戒心を解いてしまったら連続して射精させられていただろう。

 その気持ちを汲み取ったのか、すっかり裸になった女霊達が手を離した。三人共妖しい笑みを浮かべながら僕を見下ろしている。ほんの少しの間僕は休む事ができた。

 足元にいた女霊が僕に跨って来た。左右の女霊は動けないように僕の上半身を押さえている。

 ペニスが女霊のオンナにすっぽりと収まったとたん僕は一瞬我を忘れた。そして挿入した瞬間イッてしまった。それでも萎える事なく感じ続けていた。彼女のオンナが僕を包み込んだままバイブしてきたからだ!指だけじゃなくオンナまでもがバイブ機能を備えていたのだ!

 「あが…」

 僕を押さえていた女霊の一人が僕の顔に跨った。僕は促されるままに彼女のオンナに舌を入れた。舌までバイブされている。そしてもう一人は騎乗位で結合している女霊の後ろに回り、玉袋をさすりながらお尻にまたも指を入れて来た。もちろん指バイブだ。

 女性特有のスベスベで柔らかい感触、オンナのきつい締め付けに加えて、人間業とは思えない(幽霊だが)バイブ機能が僕の全身を襲っていた。

 ああ、きっとこないだ見たテレビでの集団逆レイプもこんな風にバイブされてたんだろうなあ。

 何度射精しても一向に萎える様子を見せない。このままだと犯し殺されてしまうかも知れない!恐怖に駆られた。何とかして抜け出さなければ!

 思い出した!これはヴァーチャルリアリティだ。それなら前の時と同じように、エッチに関係のない事を言えばバグが出て抜けられるかも知れない。多少危険だがやってみるしかあるまい!

 「あふ…。君たち、ど、どうして、髪の毛切らないの?床屋、は、はう!い、行かないの?」快感に翻弄されながら、やっとの事で聞いてみた。

 ピタリ、と彼女達の動きが止まった。三人は僕の体から離れた。試みは成功のようだ。女霊の表情は怒りに震えている。だが危険なのはここからだ。アニメの時も僕を殺そうと襲い掛かって来た。きっとこいつらもそうするに違いない。

 離れた隙に僕はトランクスを脱ぎ捨て、裸のまま一目散に走り出す。とにかく逃げ切れれば勝ちだ。

 が、少し甘かったようだ。さっきまで何度もイッていた体は、予想以上に疲れ果てていた。全力で走っているのに、のろのろとしか進まない。水の中を歩いているような、あるいは全身筋肉痛になっているような、そんなもどかしい動きしかできなかった。やばい!追いつかれる!

 あっという間に三人に先回りされた。そして三方向から羽交い絞めにされた。うわあ!

 「こっちへ、…おいで。」一人が囁く。そのまま三人は土の中に沈んで行った。僕の体も一緒に下に沈んでいく。た、助けてくれ…!僕はこれから、どうなってしまうんだ?

 そのまま暗い土の中にどんどん潜って行った。息ができない!段々気が遠くなって行く。も、もうだめかも。

 …。

 「う…。」

 気が付いたら薄暗い穴倉のような所にいた。どうやら土の中に空洞があって、そこに引き込まれたらしい。

 だが、さっきとは違う点があった。一つは明かりと呼べるものがない筈なのに、ほんのり明るい事。光源は分からないが土でできた壁がはっきり見える。もう一つはその空間がもはや実写ではない事。絵になっている。アニメだ。当然僕の体も絵になってる。

 「気がついたかい?」後ろから女性の声がした。女があらわれた。今まわりを見渡して、空洞の中に誰もいないのを確認していたから、「あらわれた」と言うのが正しい。そして彼女は、あの妖怪退治屋だった。「かえ…」いかん、また名前を間違える所だった。

 「あんた、三日も気を失ってたんだよ?」

 「え…。」

 「妖怪があんたの体に入り込んだんだ。」

 「はあ。」

 「何とか二匹の妖怪をおびき出して退治したんだけど…。」

 「?」

 「残り一匹がまだあんたの体の中にいるんだ。」

 「そう、ですか。」例の如く訳の分からないままストーリーが進んでいく。

 「で、最後の一匹をこれからおびき出すんだけど、協力してくれるかい?」
 

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