戦意喪失プログラム 3

 

 あたりがうす暗くなってきた。夕焼けの赤みもだんだんと深くなっていく。遠くに町の防壁がうっすらと見えるけれども、まだまだしばらく歩かなければならなそうだ。道なりに進んでいたのでは日没には間に合わないから、僕は道をそれて町の方向へと直進することにしたのだった。

 だが、それは別の試練に見舞われることをも意味していた。道なりであれば、周辺の敵の中でも比較的弱い女敵が出現するのだが、道を外れて近道をしようとすると、強めの敵に襲われてしまうのである。

 どうしても倒せない相手ではないが、村娘や見せ女に比べるとどうしても苦戦を強いられてしまう。美形揃いの看板娘は相当やっかいな相手で、さっきはたいへんな目にあった。たまたま機転を利かせるのでなければ勝てなかったかもしれない。こちらのダメージも相当だった。

 それでも、エンカウント率は低いし、戦闘といっても剣や魔法ではなく、なんだかよく分からないくすぐったい戦いで経験値やゴールドを稼ぐシステムになっていて、まぁ、いまのところ進めやすいゲームにはなっているのかな。もちろん、その戦いががセックスというものであり、どんな行為であるかぐらいは、僕にも分かっている。決して生易しい道ではないことも。

 ただ、それでも、まだどことなく実感が湧かない。どんな行為をするものなのか、射精とはどんなものなのか、妊娠のメカニズムなど、ひととおりの知識と“実地訓練”は済んでいる、というだけのもので、自分が本当の主人公なのか、まだ実感になってない気がする。剣や魔法で痛みとしてあらわれるダメージの代わりに、その痛みが快感・くすぐったさに置き換えられただけって感じさえするのだ。

 とにかく、日が暮れてしまえば、人間が相手ではなくなり、より強力な化け物が徘徊すると聞いている。急いで戻らなくては。僕は足を速めた。

 「止まれ!」ぴりっとした声が横から聞こえてきた。低めの声だ。が、明らかに男性の声ではない。見ると、大柄な女性が息を切らせながら近づいてくる。逃げられないフィールドができあがった。

 その女性はとても背が高く、180センチ以上は確実にありそうだ。僕の頭が彼女のおへそにさえ届くか届かないくらいで、高く見上げることになる。皮でできたブラジャーとパンツ以外は身につけておらず、腰部分に剣をさしている。体格の良さや体の引き締まり具合から、RPGによく出てくる女戦士なのが一目で分かった。

 「貴様…なぜここにいるのだ。」「えっと、はやく町に帰ろうと思って…」「くっ…いいか、私とのいかがわしい行為は拒絶するんだ。わか…った…な?」「?」

 その戦士はとても苦しそうに顔を上気させ肩で息をしている。「わ…わたしは…おんなを…捨てた身な…のだ! 剣一筋で戦ってきた。い、いまさら…せんいそうしつういるすごときに…精神を乗っ取られてたまるか。うぐ…」戦士のお姉さんは腰をくねらせながら、自分と戦っていた。

 「おのれ…ここでキサマをたたきのめしたり切り捨てたりできれば…だが…そんな力すら入らぬ。なぜ、この私のそばに来てしまったのだ、少年よ。」「!」分かったぞ。このお姉さんは、ウイルスに毒されていながら、なおも自分を保ち続けようと戦っているんだ。このウイルスに感染した女性は、強烈な性欲に全身を支配され、正気をさえ失ってしまうんだ。

 だが彼女は、戦士としての誇りのためか、我を忘れることなく意識を保ち、なおかつできるだけ戦闘を避けようとして、道の周りではなく、辺境の地で、たった一人で自分と戦っていたのだ。だが、僕がそばを通りかかったために、自制が利かなくなり始めている。とっさに声をかけたのもそのためだろうか。

 「うっく…」お姉さんは腰をくねらせ、内股になって、全身をかけめぐるくすぐったい疼きをこらえていた。近くに男がいながらこれを我慢することは、並大抵の精神力では不可能なことだ。これをやろうとしているのだから、相当な我慢強さだ。

 ビキニタイプの皮のアーマーが濡れそぼっている。男性と同様、いやそれ以上に、我慢汁のようなものがあふれているのか、…いや、確か女性が性的に興奮すると性器から粘液が大量にしたたり落ちるので、おそらくそれだろう。

 僕に襲いかかりたい衝動と戦いながら、つい股間に手をやっては自分で引きはがし、快感と欲望に必死で抗っている。「よいか少年。汚らわしい性交をせずとも戦闘を終わらせる方法はあるだろう。それは、男性側が性的に興奮せず、セックスを拒絶すればよいのだ。」確かに、以前、見せ女に冷たい対応をしたら彼女の方が去ってしまい、戦闘が成り立たなかったっけ。それでも経験値とゴールドが手に入っている。

 「くれぐれも、その小さな、毛も生えておらぬ器官を勃たせてはならぬ。お前が一言、セックスなどしない、どこかに行けと、勃起なしで言えれば、それでいいのだ。さあ、少年よ。私を遠ざけるのだ。は、はやく!」

 「う、うん、…。僕はあなたとはセックスしたくありません立ち去ってください!」「そ、そうだ…それで…」

 女戦士が一瞬安堵の表情を浮かべた。が、次の瞬間その表情は悩ましい苦悶に一変した。「あはっ…あうふうううっっ! だ、だめだ…その程度では…心がこもっておらぬ。わ、私の体を見て…心の底から拒絶してくれ…たのむ…ううぅ…」

 僕は女戦士を見た。とても大きな人だ。剣術で鍛え抜いているのか、全身が引き締まっている。腰がキュッとくびれて、それでいて腰回りは僕の二倍はありそうだ。僕の首あたりまで太ももが大きく長く、僕の小さな体では、まるで丸太のような太さに見える。それでいて、全身の肌がつるつるしていて、吸いつくような美しさときめの細かさを備えている。男性のようなごつごつした感じがまるでないところは、やはりうら若き美女なのだ。

 「は、はやく…拒絶してっ…もうこれ以上はぁん…耐え…」快感をこらえるお姉さんの大きな体がなまめかしく揺らめくたびに、あふれる色気と初々しさが放出されている。だめ…勃起しちゃ…うぅ…

 僕はぎゅっと強く目を閉じ、興奮しないよう自分を必死で抑えた。立ち始めたペニスは再び萎えた。どきどきはしているし股間にわずかな性欲の疼きがあるものの、このままセックスを拒絶すれば、今度こそ棒読みではなく、心の底から戦闘を避けることができるはずだ。

 「僕はこれ以上エッチなことはしないぞ。立ち去ってください!」僕は目を閉じたまま言い放った。これで…

 がし! 突然僕の華奢な両肩が大きな手で抱かれた。「はあっ、はあっ…」盛りのついた女戦士は、真っ赤な顔で僕を見下ろし、大きな手で僕の方にがっしりと捕まっている。「少年よ…くふふ…まだ勃起はしないのか。」「なっ…」「そのカワイイちんちんをぴょこんと立たせて見せよ。」スベスベの手のひらが僕の肩を、腕を、脇腹や横尻まで、大きく撫でさすった。

 「お姉さん、正気に…ッ!」「私は正気だよ…ふふふ…」女戦士はほとんど自制が利かなくなってしまっている。いったいどうしたら…

 こうなったら、突き飛ばして本気で拒絶するしかない。「うわああ!」僕は女戦士のお腹を突き飛ばそうと、手を突き出した。

 がっ!! 「あ!」瞬時に女戦士は僕の両手を掴んでしまった。さすがに戦闘訓練と実戦を積み重ねてきただけあって、こういうとっさの動きはエキスパートだった。

 「うわあ!」お姉さんは僕の小さな体を突然押し倒し、僕の腰の上に馬乗りになった。

 「さあ、我慢して、わたしが言ったとおり、勃起しないでいてごらん…クスクス…そうしたら立ち去ってあげる…」「そん…な…」

 革製のパンツと思っていたが、前面が皮になっているだけで、それ以外の部分は薄い布地であった。しかも上も下も、皮の部分は取り外せるようになっていた。女戦士はビキニアーマーの皮部分を取り外し、下着同然の姿となった。

 それだけでお姉さんは動かない。だが、僕の細い腰全体を包み込む彼女の股やツルツルの太ももの感触が、むっちりと僕に吸いついている。きめのこまかい肌触りが下腹部全体を覆いつくしていた。

 ペニスは僕のお腹方面に反り返った状態で、やわらかく圧迫されている。薄い布一枚を隔てて、彼女のオンナがペニスを包み込んでいるのが分かる。「勃起したら動いてあげる。」お姉さんは僕を見下ろしたまま不敵な笑みを浮かべた。体の大きさがあまりにも違うために、彼女の腰や脚は僕の腰回りだけでなく膝まで包み、お腹さえもその大柄な肢体で包み込んでしまっている。

 耐えきれるはずはなかった。パンティ越しのオンナ表面の下で、ペニスはどんどん硬さを増していった。「ふん。少年よ。勃起してもぷるぷるしたままだな。大人のように黒光りもしなければ、毛も生えておらず、ぴょこぴょこ私の下でもがいておるぞ。私の勝ちだな。」

 お姉さんは腰だけを前後に小刻みにゆり動かし始めた。すると彼女のふとももやお尻が小さく僕の足や脇腹を滑り、オンナ表面部分はパンティごと僕のペニスを執拗にこすりあげる形となる。

 そのとたんに強烈な快感が全身を駆け巡った。すでに愛液にまみれていたパンティは、ぬるぬるとペニスを濡らし、それが潤滑液となってスリスリとペニスをスムーズにオンナ表面部分がこすれていくのだ。

 ひとたまりもなく、僕は女戦士のオンナの下で精液を爆発させた。彼女の股の間から白濁液が飛び出していく。「ふふ…剣一筋の私だったが、少年をイかせるのはたやすいな。どれ、とことん絞り尽くしてみるか…快感に気を失うまで、な。」

 お姉さんは僕の横に寝そべると、僕に背中を向けた。そして僕の脇腹に大きなお尻をぐいぐい押しつけ始めた。「さあ少年よ。今度は自分からこのお尻に股間をすりつけるのだ。私のお尻は…やわらかいぞ?」

 僕は言われるままにお姉さんに後ろからしがみつき、お尻部分にペニスをこすりつけた。薄いパンティはくっきりと臀部の割れ目を浮かび上がらせている。その間に肉棒を挟み込んだ。「うあ…すごい…やわらかい…」「さあ、圧迫してみせろ。」

 僕はお姉さんの腰に手を回し、しっかりしがみついた。そして一心不乱に腰を前後させ、ペニスを彼女のお尻にひたすら押しつけ続けた。やわらかい弾力が跳ね返ってきて、ペニスを肉の圧力で締め上げていく。ぽよぽよと臀部の肉が僕の腰を包み込んでくれている。

 彼女の背中の、下の方に顔を埋めると、大人の女のスベスベした背中の感触にほおずりする。突き上げるように腰を振り続けると、ペニスはいつの間にか彼女のお尻の、さらに奥にある会陰の方へと入り込んでいく。臀部のやわらかさと、太もものシコシコした感触と、ペニスを包み込むアナル・会陰周辺部分の感触が、いっぺんに股間に襲いかかってきた。僕は我を忘れてひたすら腰を前後させ、ペニスを彼女のお尻に押しつけこすりつけ続ける。

 「ああっ!」僕はまたもや、女戦士のふっくらしたお尻に精液を放出してしまった。

 「ほれほれ。続けて出すのだ。」今度はお姉さんの方が積極的にお尻をゆらして、ペニスに引き続き快感を送り込んでくる。臀部のやわらかい肉がぷるぷるっとうねりながら、集中してペニスをこすりあげていく。やわらかい圧迫がいっそう強くなり、僕は彼女に密着したまま、萎える暇もなく快感に翻弄されていく。

 お姉さんがうつぶせになると、僕の体も自然に彼女の上に持ち上げられてしまう。そしてさっき以上に妖艶な腰の動きによって、僕の下腹部はさらにいやらしいお尻に翻弄されてしまう。自分の体重が彼女のお尻めがけてぐっと腰を沈めるため、密着の度合いはいよいよ強烈なものとなる。

 僕の腰は女戦士の筋力によって上にはね飛ばされ、次の瞬間重力によって再びふかふかのお尻めがけて落とされていく。僕はなすすべもなく、女戦士のダイナミックな動きに身をゆだねるほかはなかった。…程なくして、精液が彼女のパンティをさらに汚してしまう。

 彼女は全裸になった。くるりと体を回転させて仰向けになると、大きなふとももを僕の腰に巻き付け、ぐいっと引き寄せた。ペニスは、今度はじかに彼女のオンナ表面に押しつけられてしまう。僕が身をよじると、小さなペニスはいともあっさりと彼女の大きなオンナに吸い込まれてしまった。根本まで飲み込んでいるのに、膣奥には当然届かない。

 がっしりと力強いふくらはぎが、僕の腰とお尻を包み込み、ぎゅっと引き寄せたまま離さない。「あ…ああ…だめえ!」身を引こうにも動くことができない。わずかに腰を前後させることくらいはできたが、逃げることはかなわなかった。

 今までに味わったことのない、引きちぎられそうな圧迫がペニスを襲った。オンナの周りの筋肉をフル稼働させて、お姉さんは万力のように強く強くペニスを締め上げた。膣圧に加えて随意筋を駆使して、ペニスをこれでもかと圧迫する。その強烈な感触だけで、体の奥からくすぐったさがこみ上げてくる。

 「快楽も度が過ぎれば気を失うことになる。もちろん、一度や二度気絶したくらいで行方不明などにはならないが…くっくくく、気を失うってことはそれだけ時間が経過するということ。どんなことになるか、分かるよな、少年?」「…はっ!!」

 お姉さんはふくらはぎを緩めたり、ぎゅっと引き寄せたりしながら、無理矢理に僕の腰を、お尻を、すばやく力強く前後させてくる。火のような快感が圧迫とともに僕に襲いかかった。

 このままさらに一方的に射精させられたら、夢心地になって気を失ってしまうだろう。だが、そうなれば、日没も近い状態で、次に気がつく時には確実に夜中になっている。それは絶対にまずい状態だ。人間ではなく、はるかに強力なモンスターが周辺をうろつくことになるから。看板娘や女戦士に遠く及ばない実力の僕が、夜中に投げ出されることになれば、無事に帰れるかどうか分からなくなる。

 なんとかしてこの場を脱出して、気絶だけは避けないと。僕は下腹部をふんばらせた。

 だが、そんな僕の必死さをあざけり笑うような、鍛え抜かれた筋肉の締まりだった。根本まで入れさせられた瞬間に襲いかかる万力締めと、あまりにもスムーズなふくらはぎによる強制ピストンのダブルパンチで、僕はどんどん高められ、脱力させられていった。

 「おらおらおらおら! これでどうだ!」ぐっぐっぐっとお姉さんは僕の腰をゆり動かし続けた。こんなスピードをリズミカルに続けられる持久力も、戦士ならではのパワーの産物だ。だめだ、気絶だけは…ぜったいに…「これでもか!」お姉さんは両手で僕の上半身を撫でさすってきた。乳首を指先がくすぐりながら、肩も腕もさなかまでも大人の女のしなやかな両手が這い回った。

 愛撫攻撃によってとろけそうになり、腰が脱力した瞬間、万力締めとスムーズな出し入れの快感がダイレクトに全身を駆け抜けた。「あああーーー!」僕はがくがく震えながら、体液を彼女のオンナに放出しまくった。脈打っていようがお構いなしに、お姉さんのふくらはぎは僕を強制的にピストンさせ続けるのだった。

 「あが…」気持ちよさが全身をかけめぐる。眠る前のとろけるような感覚と、何か優しいものに全身包みこまれているかのような安心感で、意識がもうろうとしてくる。

 僕はお姉さんのお腹に顔面から倒れ込み、そのまま気を失ってしまった。気を失う最後の瞬間まで、僕の腰はお姉さんの脚によってつき動かされ続けていた。

 ………。

 ……。

 …。

 どれくらい気を失っていたであろう、全裸の僕は風の冷たさでやっと目を覚ました。

 …一体どれくらい気を失っていたのだろう。大柄な戦士のお姉さんに気絶させられるほど抜きまくられ、感極まって眠ってしまったのだ。このゲームのルールで、いくら射精しても枯渇はないし疲れることも痛むこともない。ただ、イキすぎて、あまりの心地よさに寝てしまうことはあるらしい。眠るといっても、意識が飛んでしまうのだから、気絶と一緒というわけだ。

 あたりはすでに真っ暗だった。遠くに町のわずかな明かりが見える。そこに町があるということが分かる程度の、ごく小さな光だ。経費節約のため、大々的に明かりがともされているわけでもなさそうだ。物音もなく、あたりはひっそりとしてしまっている。

 人影はない。女たちは、それぞれ家―といっても町や村ではなく、女たちだけで作られた集団塒のような秘密の場所なのだが―に帰って眠っているのだろう。いくら性欲に支配されても、それよりも強い、食欲のような生存欲求に含まれる睡眠欲が勝るらしい。

 「…あ、いけない…」思い出した。彼女たちはただ眠るために家に帰っているのではない。もちろん、男たちも夜の荒野を出歩くなどという愚かなまねは決してしない。夜に出歩くことはたいへんに危険なことなのだ…この世界では。

 昼間は人間の女性が徘徊しているこのステージでも、夜になれば、人外のモンスターたちが周囲をうろつくことになる。当然、敵のレベルも格段に上がってしまう。だから人間は、夜はおとなしく家にいて、安易には出歩かないというわけだ。

 普通のRPGでも、夜になったとたんに敵が強くなるケースはある。だが、このステージでは、化け物といっても女性型となっている。男性型のモンスターは、戦意喪失プログラムがばらまかれたとたん、魔界へと回収されたか、間に合わなかったものは女たちに吸いつくされてしまって、もはや残っていないと聞く。さらにごく一部は女性化し、女性型モンスターとして生まれ変わった者もいるらしい。いずれにしても、美しい女の怪物が、この夜の世界を徘徊しているのである。

 …それにしても、女性型でモンスターというのは、いったいどういうものだろう。オオコウモリやオオアリクイやオオサンショウウオやドラゴンといった敵が女性型というのは、いまいち想像がつかないな。

 ッと、期待している場合じゃあない。女戦士はおろか見せ女や村娘にも満足に勝てないこの体で、さらにそれよりもはるかに強力とされるモンスタータイプになんて絶対勝てるわけがない。急いで戻らなければ、今度こそ吸いつくされてしまいかねない。

 街まではもう少しだ。僕は飛び起きるようにして体勢を整えると、街にめがけて走り始めた。

 しばらく走ると、街の壁がだんだん大きくなってきた。もう少しだ。

 ぐちょお! 「わあっ!」突然下半身に冷たいものがぶつかり、ぞっとして立ち止まった。股間を見ると、青白く光る半透明の物体が下腹部に張りついている。「なっ、何だよこれっ!」ゲル状の気色悪い物体がペニスの周りにべっとり張りついている。僕は急いでそのおぞましい物体を取り除こうとした。

 わずかな弾力と、指の間をすり抜ける液体状の物質。無機質で意思を感じさせない以上、何か樹液のような、気持ちの悪い物質にしか見えなかった。だが、この質感や色から、これがどんなものか、想像に難くはなかった。青い半透明のゲル状の物質、これはRPGでは最弱とされるモンスター、スライムだ。

 しかし、この世界ではモンスターは女性のはず。それなのに、この奇妙な物体は女性の形どころか、完全に不定形の液体になっている。もともとは体当たりで戦うしか能のないスライムだった敵の、哀れななれの果てとでもいうのだろうか。

 手ですくってみても、振り払ってもみても、指の間をすり抜けたり再び集まったりして、いっこうに取れる気配がない。おぞましさに全身鳥肌が立った。スライム状の物体は、ぐにゅぐにゅと僕の股間を滑っている。

 これでも、性別は雌なのだろう。だが、もともとタマネギの形からわずかに変形するしかない、弾力ある粘液は、結局のところ女性の形を保つことなんてできず、わずかに股間に張りつくしか、今はできなくなっているのだろう。

 きっと、このスライムは、新しい世界のシステムについて行けないのだ。これはチャンスだ。いや…もしかしたら、モンスタータイプなんて、程度の差はあっても、こんなものなのかも知れない。考えてもみよう。オークのような豚のモンスターの性別が雌になったとて、顔に巨大な豚の鼻が付いてずんぐりした体型では、人間の男性の心を動かすことは難しいはずだ。…好きずきはあるけどね。

 ということは、逆に夜の方が攻略しやすいってことにならないか? ルールでは、セックスを心から拒否すれば、そのまま戦線離脱が可能となる。ゲル状の物質や豚の体に欲情するはずもないから、あっさりと拒否をして、脱出してしまえばいいんだ。それだけでもゴールドや経験値はもらえるし、ひょっとしたら昼間の美女を相手にするよりもずっと楽かも。

 ぐちょお…

 スライムの形状が変わり始めた。一部分が細長く盛り上がっていく。それとともに、ゲル状だった物質の硬度が上がり、水っぽい物体から徐々にぷよぷよした弾力へと変質していく。例のタマネギ型になるのかな。

 細長く盛り上がったところはタマネギ型にはならない。その部分は筒のようになり、先端をこちらに向けている。中心に穴があいていて、そこから粘液が滴っている。

 穴はしっかり閉じられ、縦のスジになっている。筒はある程度の長さになると、半透明のまま薄く光って、そこで動きを止めた。

 「こ、これは…」その筒の形…というより、閉じられた穴の表面部分に見覚えがあった。形、大きさともに、女性器そのものの形である。これまでの戦いで、人間の女性たちが見せてきたオンナ表面と同じ「入り口」が、僕に向けてそそり立っている。

 そういえば、膣の表面は見たことがあるが、内部の構造は知らなかったな。指先で表面をさすってみると、あまりにもスムーズに指がワレメの奥に滑り込み、スライムの内部がきゅうっと指先を締めてくる。その奥には何本ものヒダやくびれがあり、異物を簡単に入れておきながら強い圧力で締め上げる構造になっていた。

 なるほど…スライムはただのゲル状の物質ではない。認識が甘かったか。この新世界でスライムは、自分自身を女性器に擬態することによって、つまりただのスライムから《バルトリンスライム》へと進化することによって、立派な敵モンスターとして生き延びてきたというわけだ。

 しかし…僕は指を離した…「お前とはセックスはしない。どっか行けよ。」僕は冷たく言い放った。人間の女性の持つ全体の雰囲気とか、体の肌触りとか、僕を魅了する笑顔とか、そういうのをひっくるめて、女性の魅力に感じるのであって、ただ女性器だけの物体に過ぎないバルトリンスライムでは、興奮もせず、戦う気には本当になれなかった。

 やっぱり、モンスタータイプの方が興奮せず、扱いやすいってのは変わらないな。僕は本心から戦闘を拒否した。ペニスの勃起もない。ぐちょぐちょ音を立てながら、バルトリンスライムは僕の体を滑って下の方にゆっくり落ちていく。これで戦線離脱だ。

 「ん?」バルトリンスライムはなかなか地面に落ちない。それどころか、僕の両足の間に滑り込んで、筒状の物体をうねうねさせながらしつこく食い下がっている。「…いくら挑発しても無駄だよ。スライムのくせに。」

 スライムは僕の股の間を滑りながら、しきりにぬるぬると自分自身をこすりつけている。筒状にまで硬質化したスライムの体は、人間の肉と同じくらいの弾力があった。その周囲は粘液でぬとぬとしている。僕がきつく足を閉じても、そのぬめりのせいでスムーズに両足の間を物体が通り抜けてしまうのだ。

 だんだん、女性の腕がローションをつけて僕の股を滑っているような感覚に近づいてきた。細い腕がスベスベにゅるにゅると、玉袋をさすりながら敏感な内股を滑っていく。その質感もきめの細かさも、確かに女性の肌の感触に似ていた。そして滑っているのは、女性の腕を模したというより、筒状の女性器を模したものであるから、そのツルツルの部分が僕の股を滑っていることになる。

 もし、仮にこのバルトリンスライムに挿入してしまったとしたら、普通の女性との性交では味わえないことがひとつできる。それは、挿入中の自分のペニスを外から見ることだ。締め付けられる時、ペニスはどんな風になっているのだろう。半透明の物体であるから、その様子はすぐに分かる。もしかしたら、それはそれでなかなかエロチックな光景なのではないか。

 い、いやいや…! 相手はただのゲル状の化け物。僕は何を考えているんだ。ここでもう一度バルトリンスライムを拒否すれば、敵の魅力(オンナそのものの形状と肌触りと股滑り)に心を動かされなかったということになるから、今度こそ戦線離脱できる。よし…拒否の台詞を言うぞ。

 くちょ…「!」

 バルトリンスライムはオンナ表面をペニス先端にしきりに押しつけてきた。萎えたペニスの先端は完全に皮にくるまれており、もちろん入るわけがない。スライムはそれでも、しつこくオンナ表面を亀頭のあたりに押しつけこすりつけ続ける。

 本物の女性器と同じ弾力とやわらかさを備えた上、全体がぬるぬるしている。亀頭に与えられるくすぐったい感触は、確かに性感神経を刺激された証拠だった。

 「ちょっ…違…だめ…拒否…いわなきゃ。。。ああ…」ペニスが情けなくも反応し始めてしまった。ここで拒否しなければ敵の誘惑に負けてしまったことになる。早く、はやく拒否するんだ。

 ぐちゅ…ぐちゅ…ペニスの皮が少しずつこじ開けられる。バルトリンスライムの表面によって、そして自分自身の亀頭によって。いやらしい音が股間から響き始めた。一瞬、股間に走るくすぐったさにゾクッとしてしまった。そのとたん、亀頭の先端が皮の間から顔を出してしまった。ほんの一瞬だけだが、入れてみたい衝動に駆られた。

 だが、それだけですでにアウトだった。萎えたままのペニスに挿入するのは不可能だったが、わずかに固さを増していった半立ち程度のペニスでも、オンナ表面は容赦なく亀頭を飲み込むことができたのだ。

 あとは敵の思うつぼであった。相手の誘惑のすべてをはねのけることさえできない軟弱な精神で、僕はバルトリンスライムにさえ欲情してしまったのだ…ほんの一瞬でも、敵の魅力に感じ入ってしまえば、そこにすかさずつけ込んでくる。モンスタータイプの手強さはそういうところにもあるのだ。

 亀頭部分が小刻みにしごかれ、こすりあげられる。粘液がたっぷり染みこんだ入り口付近は、あまりにもなめらかに亀頭をこすりあげ、それでいて指先を圧迫したあの名器の締まりによって亀頭までも毒牙にかけようとしていた。

 先端から全身にかけてくすぐったさが広がる。ペニスはどんどん硬くなっていき、上に向けて隆起していく。自分でこれを止めることもできず、勃起が強まるにつれてバルトリンスライムがさらに奥の方にペニスを飲み込んでいく様子を、ただじっと黙って見ているほかはなかった。

 ついに、バルトリンスライムは、完全に勃起したペニスを根本まで包み込んでしまった。青白い半透明の物質に締め上げられるペニスの様子が丸見えだった。強い締め付けが棒全体を覆い尽くす。根本付近とカリヒダの付け根、そして亀頭周辺が特に強く締まり圧迫し、感じやすいところに的確にギザギザの隆起が襲いかかり、全体が呼吸しているみたいに緩やかに蠕動している。

 「ああ…だめ…」僕はバルトリンスライムごと両手でペニスをつかみ、怪物を引き抜こうとした。しかし、スライムは一定の質感を保ったままぎゅっとペニスに張りついて、引っ張ってもたたいても決して離してくれなかった。

 ぐちょ! ぐちょ! ぐちょ! …

 「あっ…すご…ほんものみたい…」僕は立ったままぶるるっと震えた。バルトリンスライムがペニスをしごき始めたのだ。引き抜こうとしても離れないくせに、あまりにもスムーズにそしてリズミカルに、ペニスに張りついたまま激しく前後している。根本に食い込むオンナ表面は、なめらかに亀頭の付け根まで移動したかと思うと、次の瞬間には一気にまた根本まで食い下がってくる。それがぐちょぐちょと繰り返された。

 バルトリンスライムの内部に張り巡らされたヒダや突起やギザギザが、棒全体を甘くくすぐりながら強くしごきたてる。見せ女や戦士の膣と同じように、ペニスを甘美に刺激しながら、しっかり締め上げて全体を強くこすりあげてくれる。

 ヒダがペニスを滑っていく様子がよく見える。股間しか刺激されていないのに、まるで全身が包み込まれているかのような、甘美な陶酔感覚が僕を支配した。膣のスピードは徐々に上がり、粘液もどんどん増えて、僕の下半身全体をしとどにしめらせていく。

 「あふっ…」僕は快感をこらえようとして、強く腰を引いたが、バルトリンスライムは執拗に股間の奥までねじ込んできて、根本までしっかり食いついてくる。そして相変わらずリズミカルにペニスを刺激し続けてきた。

 「だ、だめ…いや…こんなものに…あふっ!」僕は数歩前に歩いた。股間から広がる強烈な快感によって、ほとんど力が入らなかったが、何とかして街にたどり着かないと、という思いが、僕の歩みを進ませるのだ。

 歩いていようともお構いなしに、甘美な刺激はひっきりなしに送り込まれ続けている。できれば走りたいと思ったが、どうしても力が入らず、よろよろと動くばかりだった。

 「ああっ…!」モンスターが恐ろしかった。人間相手なら、まだまだ精を抜き取られてもゲームオーバーにはほど遠いという思いが、どこかにあったのだ。しかし、怪物に犯され、射精させられてしまうことで、人外の強烈な快感にほだされ、一気に終焉近くまで追いやられてしまう気がしたのだ。その恐怖感が、安易な射精をかろうじて食い止めてくれていた。

 「ダメ! 離してっ! おねがい…」僕はついに道路に倒れ込み、左右に転がって快感にあらがいながら、どうにかしてバルトリンスライムを引きはがそうと必死でもがいた。しかし、どうあってもペニスを包み込む粘液の筒はペニスから離れようとせず、それどころかますます暖かい刺激と締まりで応えてくれるのだ。

 ペニスをしごくスピードが格段に速くなった。最後の仕上げ、射精前に一心不乱に出し入れするのと同じ早さで、オンナがペニスを追いつめる。「やああっ!」僕はあお向けになって両足を開き、ぐいっと腰を突き上げた。快感に負けたのだ。

 びゅるうっ! 僕の見ている前で、ペニスから白濁液がほとばしった。半透明のオンナ内部で、びくびくっと精子が放出されているのが分かる。「はああ…っ!」僕はイキながら、全身を駆けめぐる心地よさに酔いしれ、バルトリンスライムを見つめていた。

 体液はバルトリンスライムと一体化し、ますますぬるぬるになっていく。スライムの体が少し大きくなった気がした。

 …いや、気がしただけではない。実際にコイツは巨大化している。筒を形成するのでほとんど精一杯だったバルトリンスライムは、筒の他に薄い膜を形成することができていた。その膜は僕の玉袋に張りつき、ラップのように密着した。そして女肌と同じ感触で玉袋をスベスベにゅるんとさすり始めたのだ。「ひゃああっ!」出したばかりの敏感なペニスは、萎えることもなく疲れることもないまま、連続して膣スライムの餌食になり続けた。

 ぐにゅううう…

 「ひっ!」ペニスを飲み込んだまま、筒部分が何重にも右回りにねじれていった。すると膣全体が強烈に締まり、心地よさが倍増する。バルトリンスライムは、ペニス周辺をネジのように締め上げつつ、再びゆっくりしごき運動を始めた。

 「ああ!」ペニスには萎える瞬間を与えられなかった。勃起したまま、さらに強烈な快感を送り込まれる。スクリューのようになったギザギザはさっきよりもずっと強く甘美に棒全体をしごきあげていく。ぐぽぐぽと音を立てながらスライムの膣がペニスをいたぶり続け、僕はあお向けのままのけぞって強烈な快楽に痙攣し続けた。

 玉袋を覆ったスライムの膜も、ぬめぬめと容赦なく敏感なところを揉みしだき、くすぐったく撫でさすってくれる。二発目まで高められるのはあっという間だった。僕はまたもや精をスライムめがけて提供することになる。

 今度は右回りに回転しながら、激しくペニスを出し入れしてきた。スピードもはじめから仕上げモードだ。やわらかい圧迫がますます強くなっていく。ときおり捻りも加えられ、本物の女性の動きもしっかり演出してくれる。

 3発目を放出すると、バルトリンスライムは元の大きさの二倍ほどになった。

 ぷるん…「…ああ!!」なんとバルトリンスライムが二匹になった。一定の大きさに成長したため、バルトリンスライムが細胞分裂を起こし、二体に増えたのだった。コイツは精を吸って大きくなる化け物だが、一定量に達すると分裂し、増えていくものらしい。

 と、いうことは、このまま精を放出し続ければ、バルトリンスライムはどんどん増殖し、そのまま僕めがけて襲いかかってくることになる。最後の一滴まで吸い上げられてしまうぞ。

 にわかに強い恐怖が全身を駆けめぐった。このまま快楽に浸っているわけにはいかない。恐怖心が興奮をある程度静め、僕を冷静にした。

 「えーい!」僕はバルトリンスライムごとペニスを両手でつかみ、今度は自分の手で筒を動かした。するとバルトリンスライムは動きを止め、僕の両手に身を任せる。

 「くそっこのっ…」僕は一心不乱にオナホールのようにバルトリンスライムを動かし続けた。ペニスには相変わらず甘美な刺激が伝わってくる。が、恐怖心と、さっきのようなねじれもなく玉袋への愛撫もないことから、何とかガマンできるレベルだった。分裂したおかげで、玉袋を覆う膜が出せないのだ。

 ぶるんとスライムが震えた。次の瞬間、硬質化していた筒は砕け、さらりとした液体になってしまった。スライムだった残骸は一瞬にして地に落ち、道路の隙間に染みこんでいった。僕はコイツを倒したのだ。思った以上に簡単に感じてくれる化け物らしい。

 すかさず、分裂したもう一体のスライムがペニスを飲み込んできた。そしてぐちょぐちょとペニスをしごき始めた。「ま、まけるものか…」僕はさっきと同じように両手でスライムの体をつかむと、ぐいぐいペニスでしごきあげた。

 全身に力を入れて快感を感じないようにしながら、一心不乱に両手を動かしていると、やがてバルトリンスライムは体をペニスごとくねらせ始めた。同じような膣内で何度か射精しているためか、今度は何とかガマンができた。敵も相当ダメージを受けている。あと少しだ。

 しばらくすると、バルトリンスライムは液体になった。僕は勝ったのだ。多くの経験値を得て、僕はレベルが上がった。

 股間がじんじん疼く。僕もあと少しでイクところだった。とにかく宿に戻り、性欲を処理してしまおう。街に戻るのが先決だ。

 僕は早足で町に向かって走っていった。

 あれ以降、敵に遭遇することもなく、どうにか僕は村にたどり着くことができた。

 電気もなく、あたりはひっそりと静まりかえっている。人間の女たちと同様、男たちも、夜は寝静まっているのだ。電気もテレビもなく、燃料の不足のために明かりもないため、そして何より、夜は強力なモンスターが村の外をうろついているので、結局暗くなったらすることもなく、やりたいこともできず、ただひたすら眠るしかない。こんな時分に起きているのは、僕と、雄の犬と、宿屋の管理人くらいのものであった。

 体の疼きは収まっている。僕は宿屋に直行し、宿泊することにした。今日の長い戦いのおかげで、それなりに小金も貯まっている。品薄なのでたいした買い物はできないだろうけれども、この先の軍資金にはなりそうだ。といっても、この時間では店なんてやってないから、買い物は明日だけどね。

 ベッドに横になる。今日一日のことを考えた。そこそこの戦いで、レベルも上がったけれども、どうしても射精回数が多すぎる気がする。何というか、やるべきことやメカニズムとかは身について分かったんだけど、結局それだけ。快感を与えられて、わけも分からないうちに精子を出して、見えない衰弱の波が近づいてきているのを許してしまっている。

 それに、挿入している時も、自分のペニスの小ささにはうんざりさせられる。やはり長さ、太さ、硬さの面で、決定的に弱い。射精しやすく、それでいて敵の女に与えられるダメージも小さい。このままでは、レベルも頭打ちになってしまいかねない。少なくとも、この先遠く魔王のところまで冒険を続けることは困難だろう。

 解決方法はただひとつ。僕が大きくなって、ペニスを成長させるしかない。大人になるまで10年近く、待っていればいいのだろうか。…そうなる前に、僕は女たちの餌食にされ、食い尽くされてしまうのは明らかだ。魔法の力でもいいから、瞬時にして大人に変身できるなら、戦闘中でもパワーアップできるなら、10年を待たずして冒険を先に進めることができるだろう。

 そんな都合のいいアイテムや魔法があるかどうかは微妙だが、探求してみる価値はありそうだ。とにかく明日、町の人に聞いてみよう。

 横になってそんなことを考えているうちに、だんだん眠くなり、僕は暗い部屋の中で深くまぶたを閉じていった。

 …。


 気がつくと外が明るい。すっかり朝になってしまっていた。僕は外に出て、町の人たちの様子を改めて観察した。寝るのが早いためか、日の出とともに起きているみたいで、とっくに活動を始めている。僕だけが寝坊しているのだった。

 早速聞き込みを開始してみた。僕は少し太めの中年男性に声をかける。「あの…」「おー、済まないな。たった今、全部売り切れちまったよ。もうちょっと早く来ないと、ウチのパンはあっという間になくなるよっ!」「えっと…そうじゃなくて…僕、この世界で女の人たちと戦っているんですけど…」「え…」

 おじさんはあっけにとられた顔をしたが、次いですぐに、とびきりの笑顔に変わった。「がっははは! アンタが冒険を! こりゃ珍しい! はははは!」「あの…」

 笑い終わった男性は、笑顔のまま僕を見下ろした。「いやはや、今のご時世にそんな冒険をしようなんざ、珍しいからな。偉いもんだ。だが…いかんせん若すぎだと思ってな。悪い悪い。」「ええ…分かってます。だから聞きたいんです。ここで早く大人になる方法ってないですか?」

 「……んー…いんや、分からんな。聞いたこともない。」「僕、おじさんみたいに大きなアソコになって、もっと戦って、先に進みたいんです。何かご存じでしたら教えてほしいんですけど…」「ぐふっ。俺のは自然にこうなったのよ。ま、レローシア…ここから東の大きな町だけどな…そこから毎朝パンの行商をするに当たっては、このムスコはそれなりに役に立っておるから、お前さんの気持ちも分からんでもないが…悪いな。」「そうですか…ありがとうございました。」

 「そう言えば、この村の村長にはもう会ったのかい?」「…いえ、まだです。」「会ってみな。あのジジイはただのスケベじゃあない。けっこう物知りだから、何か知ってるかも知れねえぜ。」「あっ、はい、ありがとうございます!」「明日はもっと早く来て、ウチのパンをよろしく。」「はい! ぜひ!」

 パン屋のおじさんは裸のまま村を出て行った。早朝にパンを売りに来るということは、日没前に隣の町から毎日やってくるということで、あの人はモンスタータイプの敵に襲われてもものともせずにここまで毎日来られているんだ。すごいや。
 

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