ショタコンクエスト3


(時間少しさかのぼって)


 …。


 何もない暗闇…私はベッドに寝ているのか…。

 「!」下の方からモゾモゾと何かが這い上がってくる…そして布団の中に充満する…不快極まりない、覚えのある臭い…酒臭い…

 ああ…このどす黒い…おぞましい雰囲気…もう何度も何度も味わい、精神も崩壊しつつあった少女の私…

 「さ……ら………」「ぅぅ…」私の布団に忍び込んでくる黒い動物。いつも酒を飲んで…少女の布団に強制的に忍び込んで来るけだもの……止めて!

 動物は毎日のように私にのしかかる。ワインの腐ったような汚い息を吐きかけて…どす黒い声で私の名を口にする…汚らわしい声!

 「サラ…ぐふう…」「いや…」私の無防備なドレスはあっさりと剥ぎ取られる。私の無力な少女の肉体は…毎日この動物の餌食にされる!

 少女の肌は、醜い動物の汚らしい毛むくじゃらの肌に汚され、臭い加齢臭が刻み付けられる。抵抗できない私…声を出せば殴られる…その恐怖が私を硬直させた。

 おぞましい猛りが私の敏感な部分に押し付けられる。いつもそうだ。鳥肌の立つような思い…私にのしかかる重苦しい動物の体臭が、いつも吐き気を催させる!

 動物は私の体を使って性欲を満たす。私にとっては最初から最後まで苦痛しかない。「サラ…今日もおまえは美しい…おまえはいつまでも俺のものだ…」動物の股間に付いている排泄物が私の体にねじ込まれる。

 私は…幼い頃からずっと…こうやって汚されて来たんだ。いつまで続くのかという絶望感だけが、私の少女時代だった。

 この吐き気…おぞましさ…陵辱されている恐怖と悔しさ…いつもこの時間だけは地獄だ。何よりもいらだたせる事実。私は…この動物の精子から生まれたんだ!

 動物が激しく蠢くと、私は苦痛に歪み、全身を脂汗が包む。これが私の人生なのか…!


 ビクッッ!!「はっ!」

 気がつくと、私は宿のベッドにいた。ああ、またあの夢か…いつ見てもおぞましい。息が切れている。汗もかいていた。そんな時はいつも呪文のように同じ事を考える。

 ”私の名は、サラ=マルフゴールド。孤高の戦士であり、現在は王位継承者ルカ様のお世話をさせて頂いている…ボディーガードも兼ねて。私は誇り高き戦士であり、この剣の為に生き、剣がゆえに死ぬ身である!”…いや、むしろルカ様の為に生き、ルカ様の為に命を投げ出すのか…。

 段々息が整って来た。私は幼少の頃、父ピエトロ=マルフゴールドに、毎晩のように犯されていた。そのおぞましい体験がトラウマとなって、今でも夢に見る。腹立たしい。

 少女の頃、私は自分の無力を呪い抜いた。おぞましい動物を撃退できる力があれば…いつもそう願っていた。だから私は戦士になった。それも、最も扱いが難しい両手剣を使う道を選んだ。とにかく力が欲しい。私は自分の体を徹底的に鍛え上げた。もう汚された体なんだ。今更この肉体が崩壊しても構わない。そんな気合で鍛錬に励んだ。

 誰よりも早く、両手剣を軽々と振り回せるようになった。大の大人が全身の力を使ってやっと持ち上げられるような重量だ。それを私はレイピアよりも早く扱う事ができる。場合によっては片手でこの愛刀を操る事だってできる。

 こうして私はどんな男にも負けない屈強な戦士の仲間入りを果たした。女の戦士はまだ少ない。だから敵も多かった。力の割には見てくれが華奢な私を、力でねじ伏せようとする大人の戦士どもが後を絶たなかった。その度に完膚なきまでに痛めつけてやった。その内私は孤立した。

 私はトラウマもあって、「女」である事を捨てたんだ。男などもう要らない。一人で生きて行く。私の心は荒み果てていた。

 今から思えば恥ずかしい事だが、はっきり認めよう、私は父ピエトロに復讐する為に戦士になったのだ。力をつけて、動物を叩き殺す為に…。人知れぬ所で暗殺してしまう腹積もりでいた。だが、戦士になり、故郷に戻って暗殺を実行しようとした時には、ピエトロは梅毒が進行して、まともな判断ができなくなっていた。教会の施設に収容され、後は死を待つばかりになったピエトロは、見るも無残にやせ細っていた。

 私は、私がサラである事も分からなくなっていたこの男、衰弱し切った父を殺せなかった。

 私は目標を失い、少年戦士団を辞める事を申し出た(まだ元服前の戦士は少年戦士団に所属する)。流浪の身になって、どこかでのたれ死んでしまおうと思っていた。

 だが、そんな私の心境を、王は見抜いておいでだった。王は私を呼びつけ、少年戦士団からの解任を申し渡した後、引き続き別の職に就く様に任じたのだ。それが、世に公表されていない皇子、ルカ様のお世話だった。

 その頃、赤ん坊だったルカ様の面倒を見ていたのは、執事フロー様とマリア様ご夫妻だった。その見習いとして、私がマリア様に従ってルカ様のお守りをする事を命じられたのだ。私の戦士としての実力も買っておいでだった王は、ボディーガードの役割も求めていた。

 剣を振り回す事しかして来なかったこの私が、子供の面倒を見る事になった。そんなのできる筈がないと、最初の内は思っていた。でも、マリア様の優しいお心遣いと、丁寧なご指導、ルカ様の愛らしい表情が、私の心を段々溶かして行った。

 私が一人前の乳母となる前に、マリア様は結核で倒れてしまわれた。フロー様はもう政治の仕事で手が離せなくなっていた。まだ子守の技術もほとんど身に着けていない私が、一人でルカ様の面倒を見る事になった。何もかもが試行錯誤の連続だった。別の熟練した者を皇子のお守りにつけるよう進言したが、王は聞き入れて下さらなかった。今思えば、ルカ様の存在を知る人ができるだけ少ないようにという配慮だけではなく、私自身の人間的成長をお望みだったのだろう。

 私とルカ様はすぐに辺境の山小屋に移り住んだ。そこで二人、身を隠しながら、そしてルカ様を女の子として育てながら、ここまで暮らして来た。

 そして今、私とルカ様はガイゼルの手を逃れて、宿を転々としている訳だ。

 ふう。今更あんな夢を見るなんて。あのおぞましい夢を見た後は、自分が戦士だ、誇り高い存在だと唱える事で平静を取り戻して来た。外はまだ暗かった、明るくなるまでにはまだ暫く時間もかかるだろう。そう思っていたら、久しぶりに自分の過去の遍歴を思い出した。

 思えば不幸そのものだった私を救ったのは、私を見捨てなかった王様、そして何より私の横でかわいらしい寝息を立てているこのルカ様なんだ。今、私は幸せだ。ガイゼルの脅威はあるけど、こうしてルカ様と一緒にいる今の時間は幸福そのものだ。これからもしっかりとルカ様をお守りしなくては。

 空が段々明るくなって来た。ちょっと早いけど、そろそろ起きるか。身支度を整えてからルカ様を起こそう。またいつもの可愛い『むにゃあ〜』が聞けるかしら♪

 「!?」ルカ様の布団がもぞっと大きく動いた。私が起こす前に起きるのかしら。ちょっと様子を見てみよう。私は目を閉じ、片目だけ薄目を開けて、様子をうかがう事にした。これで一人で起きられるようになったらまた一つ成長なさる。

 ルカ様が目を覚ました。私は寝たふりをして様子をうかがう事にした。ルカ様は一度目を開けたけど、それ以降起きる気配がない。二度寝してしまったか…。やっぱり私が起こさないと。

 いや、もう一度ルカ様は眼を開けた。自分でも不思議に目が覚めてしまったって感じかな。さて、これからどうなさるのかしら?

 ルカ様は布団の中でなにやらモゾモゾと蠢いている。そして真剣なまなざしで私の顔を凝視し始めた。

 ルカ様の顔が段々上気してくる。その呼吸も押し殺しているみたいだけど段々粗くなって行った。一体何を…えっ!?ま、まさか…

 ルカ様の布団から衣擦れの音に混じってスリスリと足をこすり合う肌の音がかすかに聞こえる。そして微妙なリズムで蠢く布団…。そんな、ルカ様…私を見ながら…ご自分を慰めているというの?そんな…

 そう…か。ルカ様も、もう女性を意識するお年頃になったのね。数日前からそんな疑惑があったけど、これではっきりした。多分、リルカに開発されてしまったんだわ。あの日、ルカ様はリルカに襲われた。そこで女に目覚めてしまった。

 それで前の宿での行動も裏付けられる。私が入浴している間、ルカ様は石の隙間から私を覗いていた。私の裸を見ていたんだ…。それに、過日うなされていたルカ様は夢精もなさっておられた。

 いつかはこういう日が来る。男へと成長する。ルカ様も例外じゃない。ずっと女の子の身なりをして育てて来たから、ついその事を忘れてしまう。

 私は戸惑った。こんな事は初めてだ。今ルカ様は、私を見ながらいけない事をしている…こんな時、教育者として、私はどうしたらいいのだ。いきなり飛び起きて叱ればそれがトラウマになってしまいかねない。だからと言ってそのままにしていてもいいものか…ああ、マリア様だったら、どうなさっておいでだっただろうか!

 ルカ様は顔を真っ赤に染め、私を思いながら、私を見ながら、時折女の子のように目を細めて、一心不乱にご自分を慰めている…。そのしなだれかかるような甘えた表情が…私をさらに戸惑わせた。

 いけない、私はルカ様のボディーガード、お付きの役割でしかないんだ。それを忘れてはいけない…。

 でも、ルカ様のもだえる顔と小さな体をくねらせる動きが…ああっ、いけない事だが、正直にカワイイ!一体どうしたら…

 ああ、ルカ様も『男』だ。でも、ピエトロや先輩戦士達のような、野蛮でおぞましい雰囲気ではない。美少年の上気した表情、目を見開いたかと思うと敏感に目を細め、それでも私から決して目を離さない懸命な情熱。他の男どものような欲望にまみれたいやらしさが感じられない。純情な視線が、快感にうめく小さな肢体が、愛らしくてたまらない!

 私はどこか男性恐怖の節があった。あんな体験を繰り返せば当然だ。でもルカ様は、そういう恐怖をまるで感じさせなかった。私は男嫌いで、女を捨てた身として今まで通して来た。でも今は、自分の体の奥に確かな疼きを感じた。ルカ様なら…かわいい彼なら…許せる気がする。

 このままルカ様に飛び掛ってしまいたい…。いや、ち、違う!私はそんなふしだらな思いを抱いているのではないっ!

 だめだ、私は戦士として、ルカ様の為に生きるんだ。悪い事を考えてはならぬ。気をしっかり持たねば!

 私は女を捨てたんだ。それをこれからも貫き通そう。今日の事は…忘れるんだ。

 私はこれ以上ルカ様の視線に耐え切れなくなって、寝返りを打つ振りをして向こうを向いてしまった。

 それでもルカ様の興奮は収まっていない。いや、それだけじゃない、私自身の興奮も収まらない。心臓が高鳴り続けている。耳にジワジワと血液が充満して行くのが分かる。だめだと頭で分かっていても、段々制御が利かなくなる。

 もう我慢できない。神様許して!

 私は自分の内なる声に負けてしまった。「ちょっといたずらしちゃえ♪」そんな思いに支配されてしまった。

 私はわざとドレスの胸ボタンを外し、寝ている振りをして再び寝返りを打った。今度はさっき以上に私の肌がルカ様に晒されている。首、鎖骨、そして胸のふくらみや谷間まで、しっかりルカ様に見えるように巧みに布団を捲り上げたりして、肌を曝け出した。

 するとルカ様の表情がこわばった。年頃の男の子には、すぐ側で寝ている女がこんな格好をしているだけで、十分刺激になった。露出を高めた事で、ルカ様の興奮が最高潮に達したみたいだ。息が荒くなっている。今彼は私の事だけを考えている。私の事で頭が一杯になっている筈。そう思うと私の心臓の高鳴りもさらに増すのだった。

 ルカ様はビクッと反応すると、脱力した。呼吸が段々小さくなっていく。出し終わったのかしら。その満足そうな表情が可愛かった。そうか、私はこんなカワイイ子と旅をしているんだな。新たな発見だった。

 暫くしてルカ様は静かに布団を抜け出した。多分手を洗っている。水の音がする。そろそろ寝た振りも終わりね。

 ルカ様が戻って来た。「ルカ…起きているの?」ルカ様に声をかける。「うん。今日はちょっと早く目が覚めちゃったみたい。」私がずっと見ていたのを彼は気づいていないみたい。そういうあどけない言葉もカワイイよぅ…。「珍しいですわね。私に起こされないで一人で起きるなんて。いつも『むにゃ〜』ってお寝坊さんなのに。」「えへへ…」「丁度よいですわ。起きて朝の支度を致しましょう。」「はい。」

 私は何だか心が満たされ、ルカ様と一緒に朝支度を始めた。
 

######


 「まだ見つからぬか!」「はっ…申し訳ございません。全力を挙げてルカとサラの足取りを追っております。」

 ガイゼルは不機嫌そうにワインをあおった。

 「お前達、すべての町のすべての宿を探しておろうな。」「はい。特に高級ホテルを中心に探しております。身を隠しているといってもやはり王族。それなりの程度の所を泊まり歩いている筈ですゆえ。」「俺はこう言ったんだ。すべての町のすべての宿と。」「はっ。もちろんすべて探しております。」

 「良いか、お前達の浅はかな考えで行動するな。そんな浅知恵などとっくに見抜かれてるんだ。高級ホテルだと?そんな所に泊まるとでも思ってるのかばか者が!」

 ガイゼルは立ち上がった。そして棚からワインを持って来て、グラスに注がずに直接ビンから飲み干した。

 「ええい、イライラするわ、何日経ったと思っているのだ。何も知らせがないまま待たされる身にもなってみろってんだ。」「申し訳ございません…」「聞き飽きたわ!早く居所を掴むのだ。サラとルカは恐らく木賃宿…いや、旅人用のホテルの一番安いクラスにいるだろう。」「…。」「身をくらますにはそういう所が一番だ。目立たない事が潜伏の基本。よし、探すならそういう安い宿を中心に探せ。」「かしこまりました!」

 ガイゼルは苦虫を噛み潰すような顔を崩さない。「おのれ…ヤツラめ、宿を転々としておるな。一つの所に留まれば見つけるのはたやすいが、2,3日で宿を移してやがる。だが…必ず足取りを掴んでやる。甲冑を着た姉と、華奢な妹の二人旅などそうはない。そこを突いて聞き込みをすれば…いつかはその足取りをつかめる。…くっくっく…追いついてやるぞ。必ずな!」

 さらに一週間、半月が経過した。ガイゼルは待つのにも慣れ、荒れる事はなくなった。それに、目撃情報、裏金を渡しての宿の情報の収集も捗っているらしい。ルカとサラの足取りを順々にたどり、そこから『現在の位置』を割り出す。それで追いついた事になる。

 「どんな手を使っても構わん。ただし秘密裏にだ。どんどん金を使え。情報屋や闇暗躍稼業の者どもを使え。なんとしても女戦士とガキを見つけ出すのだ。」ガイゼルの命令通り、配下の者達は全力ですべての町を探し回った。そして…

 「おお!それは間違いのない事か!」「はい…聞き込み調査の末、ルカとサラはボッサの港、その片隅の小さな宿にいる事を突き止めましてござります。さらに我らの手の者がボッサに赴き、サラとルカの存在をはっきりと確認いたしております。」「くっくっく…ついにやったぞ。”姉妹”の足取りを掴んだ!しかもボッサだと…。すぐに俺の手の届く場所にまんまと入り込んでいるとはな。好都合だ。」

 そこにリルカが入って来た。「リルカよ。喜べ。ルカの居所が分かった。ボッサだ。」「…。そうですか…」「恐らく奴らは、ボッサから船でカルーメヤキの町に移るつもりなのだろう。」「カルーメヤキ…菓子の名産地ですね。」「そんな事はどうでもいい。情報によると奴らがボッサに入ったのは昨日の事。あの二人がどこからどこに向かって、いつ出発して、どの宿に移ったか、ちゃんと地図に書いて置いた。大体三日で別の地に移っておる。しかもほとんど渦を描くようにな。だから、奴らが明日出発する事も、その行き先がカルーメヤキという事も手に取る様に分かるわ!」

 「ではガイゼル様、我々はカルーメヤキで待ち伏せをするので…?」「ばかめ。そんな余裕など与えぬ。早速今晩実行だ。この時を待ってはや半月!待ちくたびれたわ!」「はい…」「リルカよ。おまえにもう一度チャンスをやろう。今度はおまえの思う通り、好きなように配下を使え。思う通りに”リルカ隊”を結成し、入念に作戦を練り、計画を立てるのだ。」

 ガイゼルは喜びの表情で立ち上がった。「ふはは、リルカの事だ、今度こそ間違いなく計画を実行してくれるだろう。」「命を掛けてでも…」「さあ、さっそく計画に取り掛かれ。実行は今宵、あまり時間は残されておらぬぞ!」「はっ!」

 リルカは早速、忍者部隊を結成した。自分を隊長とし、念入りに作戦が立てられる。問題はサラの防御、そして町が騒ぎにならないように配慮する事、最後にルカが逃げないよう逃げ道を塞ぐ事だった。

 リルカは人員を集めた。リルカ自身が隊長となり、全指揮を取り仕切る。隊員は以下の精鋭。宿の者を皆殺しにするアサシン6名。サラ対策の魔法使い3名、二人を拘束する屈強な戦士4名、そしてリルカと共にルカの童貞を奪うメイド3名。合計17人の手だれが集められた。

 最後にリルカは、自分の計画をガイゼルに報告した。「ふん。大体それでよかろう。しくじるなよ。」「かしこまりましてございます。」「そうだな、ルカの逃げ道を塞ぐ作戦に多少不備があるな。」「…。」「ボッサとカルーメヤキの間に島がある。ショータン島だ。お前も知っておろう、ここは俺が取り仕切る島だ。統領のモンペイが俺の忠実な僕だからなあ。」「…存じております。」「ならば。付け加える事は分かっておろう。リルカよ、自分が絶対に失敗しないという前提で計画を立ててはならん。プライドが許さないだろうが、それでは策略はうまく行かんのだ。あらゆる状況を想定して、そのすべてに細かく対応できて始めて策士と言えるのだ。分かるか?」「…はい…」「ではそこだけ計画を練り直せ。」

 ガイゼルは悪党だが、策士でもあった。もし戦争になり、彼が軍将となれば、大軍を相手に少数で勝てるだろう。その実力や読みの深さ、正確さは逸材と言うべきものであった。その使い方さえ誤っていなければ…

 リルカは十全の計画を隊員に説明した。訓練をずっと受けて来た精鋭達だ。一度聞いただけで工作の全容を理解し、かつそれを正確に実行に移す実力があった。リルカ隊は早速闇夜にまぎれて行った。

 「待ってろよ…もうすぐ俺様がこの国全体を掌握するんだ…ふははははは!!」


######


 ボッサの町は夜が早い。ここは港町。旅人を迎え入れる中継点として栄えているが、その傍ら庶民の主な収入源は漁業である。その為ここの人達は皆朝が早い。だから日が沈んで大して時間も経たない内に、町全体が寝静まってしまう。

 さらに時間が経つと、町は闇夜に包まれる。外を出歩く者は皆無だ。そんな静かな夜中。物陰にリルカ隊が潜んでいた。

 作戦通りリルカ隊は3部隊に分かれている。まずはアサシン6名が静かに宿に潜入。かれらは音を立てずに秘密裏にすべての仕事を完遂する特殊訓練を受けた忍者達だ。

 アサシン達は、宿の主人、従業員、客達を、物音を立てずに次々と暗殺してゆく。即効性の猛毒を塗った鋭いナイフで寝ている人達の首を静かに切り裂くと、かれらは声一つ出さずに絶命して行った。ルカとサラの部屋以外すべての部屋の者を殺すと、アサシン達は外に出た。これで宿の中で騒ぎは起きない。宿の外も静かなまま、誰も入って来ないし誰も出て行かない。

 アサシン達が戻ったのを見て、リルカは作戦第二段階に移行した。戦士4名と魔法使い3名が宿に侵入。静かにルカ・サラの部屋に向かう。かれらは物音を立てないようにして奥の部屋目指して悠然と歩いていく。物音を立てて走りでもしたらその隙に逃げられてしまう可能性だってある。

 だがかれらは、アサシン達の様な特殊訓練を受けている訳ではない。忍者達は雪原を足跡を残さずに走り去る事もできるし物音を立てずに走ったり飛び跳ねたりもできる。だが戦士と魔法使い7名が音を立てないように行動しても、どうしても小さな物音は出てしまう。特に戦士の鉄の鎧は歩く度にカチャカチャと響く。その音にサラが気づかない筈がなかった。


######


 「ルカ様…ルカ様…起きて下さい。」「むにゃ?」僕はサラに起こされた。まだ真っ暗だ。「何か様子が変です。さっきから尋常でない物音がします。」「…!」「いいですか、わたくしが合図したらランタンを明るくして下さい。敵が侵入しているのが分かったら…来たッ!」

 サラはとっさにドレスを脱ぎ落とし、愛用の両手剣を手に取った。サラが鞘から剣を抜くと同時に勢いよくドアが開けられた!「ルカッ!」サラの合図で僕はランタンを強に設定、部屋全体が明るくなった。

 ランタンの明かりは四人の戦士を映し出した。かれらの持つ四本の剣が一斉にサラに襲い掛かる。戦士達はサラを取り囲んで、銀色に光る剣を振り下ろした。前後左右からの同時攻撃だ!

 だがサラは冷めた視線を戦士達に向けていた。そんな戦法など飽きる程に経験済みだ、という主張がサラの大きな剣から発散している。サラの剣さばきの方が数段上だった。たった一薙ぎで、戦士達全員の剣を弾き飛ばした!サラの周りに円を描くように振り払っただけで、戦士達の手が痺れ、刀を叩き落されてしまった。

 「貴様ら、ガイゼルの手の者か!」「くく…やはり噂に聞く両手剣のサラ、だ。俺達四人がかりでもまったく歯が立たねえとはな…。」「刺客とあってはここで死んで頂こう。」サラが身構える。このまま一瞬で四人の戦士達を一網打尽にする気だ。

 そこに3人の魔法使いが押し入って来た!なにやらブツブツ言いながらだ。「サラ、危ない!」僕はとっさに叫んだ。

 バチイッ!強いラップ音が部屋に響き渡る!その瞬間、サラは剣を奪われた。大きな剣は床を回転して滑りながら僕の側まで流れて来た。僕は剣をよけるとサラを見た。

 サラはその場に立ち尽くして両手をだらんと下げている!魔法使い達がサラを脱力させる魔法を使ったのか!これでサラは身動きが取れなくなってしまった。「サラ!しっかりして!サラ!」

 サラは四人の戦士達に取り押さえられた。床に這い蹲る格好で、サラは戦士達に押さえつけられている!

 「る…ルカ…逃げて…」

 「くっくっく…最強を誇る戦士のサラ様も、熟練した魔法には叶わないのね…」悠然と入って来たのはリルカだった。「貴様…」「ふん。力任せの剣で我らを倒す事はできない。例えどんな戦士よりも強くても、忍者にも魔法使いにも対処できない。ボディーガードが聞いて呆れるわ。」「くっ…」

 「サラをいじめるな!」僕は恐怖に震えながらも、リルカを睨み付けた。「久しぶりね坊や…。やっと見つけたわよ。」「ルカ…早く…逃げて!」サラが這い蹲りながら声を上げる。「そうは行かないよ。ここでお前達の旅は終るんだ。」リルカが勝ち誇った。

 だめだ、サラを見捨てて僕一人逃げるなんてできない。それに…怖い…。でもサラは逃げろと言う。僕は戸惑いと恐怖で数歩後ずさった。

 「おっと、どこへ逃げようってんだい。」リルカがジャンプし、前転しながらカーブして僕の後ろに降り立った。あっという間のでき事で、一瞬リルカの動きが分からなかった。リルカは僕を羽交い絞めにしてしまった。

 「ふん。相変わらず女の振りをしてるんだねえ。…それもおまえなら許されるな。どこからどう見ても女の子にしか見えん。常人なら騙されているだろう…」「く…ル…カ……」「は、離せえ!」

 僕は手足をばたつかせて抵抗した。リルカの力は思った以上に強く、ガッチリと僕のわきの下に手を入れて僕の肩を引き寄せ、自分の体にピッタリと吸い付けている。「敵でもあんたは王族だ。手荒なマネはしたくない。おとなしくしてる事だ。悪いようにはしないから。…むしろいい事してあげる。」

 リルカはさらに強く僕を抱き寄せた。後頭部にふくよかな胸が当たる。リルカが力を込めると僕の体がリルカにめり込んで行った。彼女は僕を女としての自分の魅力にうずもれさせて、勃起させようとしているんだ。いや、も、もう騙されるもんか…サラ!

 「…。」リルカは太ももを僕の体の外側からこすりつけた。そのしなやかな感触に一瞬感じたが、目の前でサラが危ない目に遭っているのでリルカへの敵意の方がまだ強かった。

 「…。」リルカは僕の耳の後ろに吸い付いた。くすぐったさが全身を駆け巡る。でも誓ったんだ。この女は忘れる。僕にはサラが…!サラだけが大切な人なんだ!

 「…。ルカ…、ちょっと見ない内に随分我慢強くなったじゃないか。勃起もしないなんて。」「だ、だれが…おまえ…なんかに…」「へぇぇ!ガキにプライドを傷つけられるとは思わなかったねえ。だがいいかい?どんなに強がってもチンチンを触られれば勃起するのが男ってもんさ。おまえは女の経験も浅いから、すぐに落とせる。」「ふ、ふざけるな…おまえが手を伸ばした瞬間、僕はおまえを突き飛ばしてやる!」

 リルカは小さくため息をついた。風が髪の毛をくすぐる。どうやら鼻で笑ったようだ。「触るのは私ではない。…もうよい、入れ。」「はい。」ドアから三人のメイド服を着た若い娘が入って来た。三人のメイドは押さえつけられているサラを完全無視して、まっすぐ僕の所に走り寄って来た。

 「フフフ、ルカぁ…年頃の娘三人がかりでコチョコチョされたら、ひとたまりもないでしょうねえ。さあ、サラの見ている前でいやらしい液を一杯出しなさい…!」「サ、サラ!」サラは悔しそうに無言でこちらを見ていた。

 「クッソ、離せ!」「おっと、危ない危ない。」リルカの役目は僕を後ろから固定する事だった。鍛えられたきめの細かな太ももの肌が僕をすべり、僕の足に絡みついて、ばたつかせる華奢な足をガッチリ固めてしまった。これでメイド達に好きなようにされてしまう!「サラ…僕は負けないよ!こんなリルカなんかに!」

 「…どうやら、サラのために操を立てているようね、ルカ。くっくっく、たまらないわ。その大事なサラが無力に這いつくばっているのを見せ付けながら、そのオチンチンを誘惑にさらす…経験浅い少年が好きな人の前で女の体に負けて、快楽に溺れながらおのが無力に悔しがる様…ああっ、想像するだけでぞくぞくしちゃうっ。」リルカは体をくねらせ、段々息が荒くなって来た。

 僕は何とか脱出しようと体をくねらせ、もがく。だが僕が蠢けばそれだけリルカの柔肌が体に刻み付けられるだけだった。メイド達が手を伸ばす。

 「さあルカ。娘達の手をじっくり味わいなさい。…お前達、アソコ以外を可愛がってやれ。」メイド達は言われるまま、ルカの体中を柔らかい手でさすり始めた。リルカがしっかりとルカを捕まえて置く為服を脱がせる事はできなかったが、メイド達の手は容赦なく僕の上着の中に滑り込んでスベスベさすって来るし、スカートの中にも手がさすっている。特にペニス以外の下半身に二人分の手がスリスリ愛撫している。

 僕のおなかや腕、脇の下、乳首や首筋まで、一人のメイドの両手が服の中で蠢き、魅惑的な手の感触で翻弄している。背中には相変わらずリルカの肉体の弾力が押し付けられ続ける。僕もリルカも裸じゃないのがまだよかった。

 そして僕の両足が満遍なく別のメイドにさすられる。太もも前後、ふくらはぎやヒザの裏までゆっくり丁寧に柔軟な手のひらや手の甲が滑り回り、極め付けに内股が丹念に愛撫された。

 最後に三人目が腰周りを担当した。薄い生地のパンティを脱がし、ペニスには決して触れないように注意しながら、メイドの手や指先が両足の付け根やお尻、会陰やお尻の穴周辺をくすぐり続ける。

 「どお、ルカ。全身撫でてもらって、気持ちい?」「くっ…気持ちよくなんか…」「強がっちゃって。サラ以外では感じないというのかしら?…ふん、そこまでは進んでいないみたいだけど。」「…。」

 メイド達の優しい愛撫に僕は震え、体をくねらせ始める。ペニス以外にも敏感な部分がある。内股、会陰、ヒザの裏、お尻。乳首、わきの下、首筋。そこにしなやかな”女性”がねじ込まれる度に僕は小さく呻き、ビクンと反応した。

 でも僕は負ける訳には行かない。サラがこんな目に遭っているのに、感じてなるものか。僕はちょっとでも気を緩めると全身のくすぐったさに呻いてしまうが、気をしっかり持って快感攻撃に耐え抜こうとした。

 僕の肌に直接触れているのは、魅力的ではあるがまだ手だけだ。リルカの肌の弾力を味わっているけどそのなまの感触は二人の服が阻んでる。そしてメイド達の愛撫もリルカの命令でペニスには触れない。棒部分にも亀頭にも玉袋にも、誰も指一本触れようとはしなかった。

 だから僕は誘惑に負けずに済んでいる。ペニスは半立ちになっていたが、全身に力を入れて勃起しないように踏ん張っていた。このまま静まってしまえば僕の勝ちだ。

 「ふうん。信念は本物のようね。そういう意思の硬い子、嫌いじゃないよ。」リルカが甘く囁いて来た。「私が一番好きなのは、そういう意思の硬い”男”を柔肉でねじ伏せる事さ。早く勃起してしまえ。」「誰が…お前達なんかに!」「いいねえ、その抵抗するようなくぐもった声。ますますいじめたくなっちゃう。」

 僕は両目をきつく閉じ、全身を這い回る手の感触に耐えていた。ペニスはちょっと大きくなっては僕の心の一喝でわずかに縮み、上にピクンと小さく跳ね上がっては気合で下に萎えさせる動作を繰り返していた。

 「さて…いつまでも遊んではいられないわね。作戦をとっとと決行しないと。…本当はもっとがんばってる姿を見たかったけどね。いい?ルカ。どんなにがんばってもしょせん女の色香を直に食らえば男ならひとたまりもない。体は正直なもんさ。今からそれを教えてあげる。…やれ。」

 リルカの合図で、メイド達が一斉に僕のペニスに手を伸ばした!棒部分がムニムニの手でわしずかみにされたかと思うと根元やカリの部分を指先でコチョコチョとくすぐって来た。玉袋も容赦なく引っかくように指先でコロコロ転がし、お尻全体がグイグイ揉みしだかれ、鈴口に手のひらを押し付けて円を描くようにこねくり回したり亀頭全体をぎゅっと握って来たりした。

 「うわああ…いや…はあうっ…ずる…い。」合図を受けるまで触りたくてウズウズしてたメイド達が一斉にペニスを集中攻撃。さっきまでかろうじて勃起を我慢していたが、こうなってはもう立たないようにするとかの次元を超えていた。

 ペニスはあっという間にピクンピクンと脈打ちながら膨らみ、スカートを押し上げる位に硬く反り返ってしまった。

 「ほおら、言った通りでしょ。」リルカが勝ち誇る。「さあ、もう立ってしまったんだから観念しなさい。」僕の腕を捕まえていたリルカが、手を離して僕の服の中に手を滑らせた。ペニスを触られながら同時に乳首をこねくり回されると、さっきまでの愛撫よりも数段快感だった。

 もう僕はメイド達やリルカを突き飛ばす気力が薄れていた。その気になってもすぐに全身を電流が駆け巡るように快感が走りぬけ、戦意を失わせてしまう。

 それでもこの快楽に身を任せてしまう訳には行かないと頭で分かってる。その思いが僕を理性の内に留まらせていた。何とかしてサラと一緒にこの危機を脱出しないと…

 僕は快感に気が遠くなりながら、まだ全身を力んで抵抗していた。「へぇ、そこまでしてこの従者が気なるの?這いつくばってるだけの役立たずなのに?」「う、うるさい…サラを侮辱するな…はあはあ…うっく…」僕のこの抵抗はリルカをますます興奮させるだけだった。

 「いいわ。手で一回抜いてしまおうと思ったけど、それじゃあ大人の女へのインパクトが足りないわね。もっとすごい事して、メロメロに酔わせてあげる…。さあお前達、この子が自分を見失うよう、しっかりご奉仕して差し上げなさい…部屋中に音が響き渡る位に!」「はい。」

 リルカはメイド達のために僕のスカートを捲り上げた。ペニスが反り返ったまま露出される。そこに一人のメイドが顔を近づけた。一体何をする気…

 「うわっ!」そのメイドは僕のペニスをいきなり口に入れてしまった!そんな、アソコを口に入れるなんて!

 僕はびっくりして腰を引いた。「ほら、逃げるんじゃないよ。」リルカが腰をグイッと押し出した。僕は今されている事の意味が分からずに怖くなった。「…そうか、もしかしてフェラチオも知らないのか。いいかいルカ、ペニスを可愛がるのは何も手やオンナだけじゃないんだ。そうやって口でも男を気持ちよくしてあげられるのさ。フェラチオって言うんだよ。」「そ、そんな…!」「そこだけじゃないよ、場合によってはオッパイやお尻の穴とかでも…くく、その内教えてあげる。」「いや、…こわいよぉ…」「心配しないで。女の体はね、どこもかしこも男を喜ばせられるように神が作り給うたのさ。さあ、メイド達に体を預けてしまいなさい…」

 メイドの口の中がどんどん唾液で満たされて行った。そしてメイドはゆっくりと、ペニスを吸い始めた。そのとたん口がきゅっと締まり、ペニスを圧迫し始める。柔らかい唇が根元を強く締め付けたかと思うと、ゆっくりと首を引き、唇の壁が棒部分を滑ってゆく。

 亀頭の辺りまで来たら、また根元に向かってゆっくりと移動して行った。亀頭の先でベロと思しきヌメヌメした物体が蠢いていて、僕は恐怖から快感に心も体も支配されて行った。

 口の動きが段々早くなって行った。唾液が口からこぼれ、ペニスは吸引圧迫を受けながら滑らかにしごかれ続ける。手とはまた違った快楽が下半身から全身に広がり、僕は気が遠くなった。

 「まだまだこんなものじゃないよ。」リルカが合図すると他の二人も近づいた。二人目が下に潜り込み、玉袋を口に含んだ!玉袋まで柔らかい口の中にくるみこまれ、快感が倍増する。そして三人目が奥へ手を伸ばし、会陰や玉袋を執拗にくすぐり続けた!

 「うぅ…ル、ルカ…だめ…!」サラが呻き声を上げる。

 「うああ…!」「フフ、凄いでしょお?」「口の中…なんか…ぬるぬるしてて…ふああっ!」玉袋がモゴモゴと口で揉まれる。その舌先が玉袋のあちこちをつついて、三人目の指先の動きも手伝って体の奥の疼きがいきなり表面に出て来た感じだ。執拗にペニスをしごきながら亀頭を舐め続けるメイドが上目遣いに僕を見た。その視線に釘付けになり、あっという間に高められてしまった。

 「あっ!またくすぐったいのが奥からっ!」それも今までに感じた事のない強烈な疼きだった!ジワリと高まった射精感が一気にペニスに向けて噴出する。

 僕はメイドの口の中に射精した。その瞬間メイドの動きが止まり、ビクビク脈打つペニスからほとばしる体液をグイグイ吸い込んで行った。まるで体の奥にある快楽の素がペニスから放出され、その素を求めてペニスをくわえたメイドが吸い続けると、ますます強烈に快楽の素が強制的に奥から口の中に吸い出されている、そんな感覚だった。

 その射精の動きを玉袋担当のメイドが素早く揉みしだく事で助け、体の奥に手を入れているメイドが妖しく微笑んだ。ペニスを吸い続けるメイドは最後の一滴が出し尽くされるまで僕と目を合わせて離さなかった。

 射精が終るとますます気が遠くなり、何もかも出し尽くしたような疲労感と満足感に襲われた。頭が真っ白になり、立っていられなくなった。足元がふらつく。目の前がボ〜っとかすみ、くらくらして倒れそうになる。

 「ふふ…よっぽど良かったみたいね。放心してるわ。」リルカの声が遠くに聞こえる…僕は完全に魅了され、我を忘れてしまった。

 「へっへっへ…リルカ様ぁ…そんな見せ付けておいて我々には何もないんですかい!」サラを押さえつけていた戦士の一人が野太い声を上げる。魔法に集中している間周りが見えなくなる(睡眠に近い)魔法使い達を除いて、つまり戦士四人が、目の前にフェラシーンを見せ付けられて興奮し切っていた。

 「…ルカを陵辱してしまえばその女には用はない。そしてもうこの子は私達の虜。後は続きをするだけ…。良かろう、殺す前に好きなようにせよ。どうせ宿の者は全員始末したんだ、多少騒がれても問題なかろう。ただし、魔法使いは起こすな。」「ありがてぇ!」

 魔法使い達がサラの抵抗力を奪い続ける間に戦士達がサラの甲冑を剥ぎ取り始めた。欲望を丸出しにした汚い男達が、サラを殺す前に楽しんで置こうとしているのだ。

 「イ、イヤ…ひぃ、ひぎゃああああああ!!!」「!」「なっ…!」地獄の底から湧き出るような野太い絶叫がサラの口から突然吹き出した。まるで魔法を使っているみたいに部屋中に響き渡り、周囲にいた男達もリルカも、僕までもが背中にツララを突き刺したような恐怖感に襲われた。硬い壁がビリビリと小さく振動する。

 「ま、待て、それ以上は止めろ!魔法使いが目覚めてしまう!」リルカが男達を制止する。もとより男達は野蛮な興奮が一瞬にして鎮められていてこれ以上襲う気力がなくなっていた。「コイツ…レイプされた事があるッ!それがトラウマになってやがるのか。…。くっ…だがなサラ、世の中には絶叫すら許されない女もいる事を忘れるなよ。お前達、サラを刺激しないようにしっかり押さえていろ!」「は、はい…」男達が暴れるサラを再び押さえつけ、その口を塞いだ。

 あんな…あんな怖い声を出すサラは…これまでずっと一緒にいて只の一度もなかった。いつも沈着冷静で、厳しくて、それでいていつも僕を見守ってくれる優しさがあって…。そんなサラが今怯え切って狂気の叫び声をあげたのだ。そんなになるまでリルカ達はサラを追い詰めたのか…

 サラの叫び声が僕を正気に戻した。メイド達の舌先の刺激が、口の中のヌルヌルが、僕を快楽の淵に突き落としていたがそれも消え去った。修羅場に怯えたメイド達の口の動きも止まっている。「…何をしている。休んでないでルカをもっと悦ばせろ。」「は、はい…」メイド達が再び動き出した。

 「…離せ…」僕は低い声でつぶやいた。萎えた小さなペニスに再び舌先が這い始めたが、もうくすぐったくもなかった。「…離せよ……」「何をつぶやいておる?すぐに私達がサラの事なんか忘れさせてあげるよ…だからおとなしくしていなさい。」「…離せえ!」

 ぶわっ!僕の周囲に風が巻き起こる。「むうっ!?」リルカが一瞬ひるんだ。そのスキに僕はペニスに群がるメイド達を蹴飛ばし、一気にリルカの拘束を解いた。「きゃあっ!」メイド達は驚いてしりもちをついた。僕はリルカの手を掴み、足を引っ掛けてメイド達めがけて投げ飛ばした!リルカは軽々と宙を舞い、メイド達の上に落とされた。「ひゃあっ!」メイド達はリルカに押しつぶされて気を失った。

 「な、ば、バカな!この私がこんなに簡単に…いや、こんなガキにこんな力があるなんて!」リルカはひらりと身を起こした。いつまでも敵に背中を見せる忍者じゃあないみたいだ。

 「そのオーラ…魔力かッ!」僕の周りにうっすらと光の膜ができていた。これが僕の力を倍増させているんだ。それに…僕はサラをこんな目に合わせたこいつらに怒り狂っていた。

 「よくも…よくもサラを……許さない。僕は…お前達を絶対に許さない!」また一陣の風が巻き起こる。魔法なんてサラにも習って来なかった(サラは元々魔法は使えない)。でも僕の中に確かな”力”を感じていた。

 「ふん…魔力はあるみたいだが…訓練されていないみたいだな。無駄な”気”があちこちに発散しているぞ。そんな付け焼刃で我々に対抗しようというのか。」リルカが身構えた。片足を少し後ろに引くと、リルカの足がメイド達にぶつかった。「貴様ら!いつまで寝ているのだ!起きろ!」「はっ…リ、リルカ様…」メイド達が気づき始めたがその表情は硬く全身が震えている。「邪魔だ!下がれ!」「はっ!」

 メイド達を退けるとリルカは僕に向き合った。「しょうがないね…少し痛い目を見て頂きましょうか、”王子様”!」「…許さない…」僕はうわごとのようにリルカ達への憎しみを繰り返した。「る、る…か……」サラがくぐもった声を出す。サラも正気に戻りつつあった。

 「ふふふ…どうやらおまえの”怒り”が魔力を引き出してるみたいだけどね。そんな程度じゃあこの百戦錬磨のリルカは倒せない。それを思い知らせてから…もっとすごい天国を教えてやるよ。掛かってきな。」

 僕の足元にはサラが手放した大きな両手剣がある。そして僕の感情が乱れる度に風が吹き抜ける。リルカは両手に金属の棒を掴む。「東洋の棒術を見せてやるよ。」長剣の様に一箇所を持つのではなく両手の距離が離れている。バットのように振り回すのではなくこの棒一本で身を守ったり鳩尾に突きを入れたりする道具のようだ。リルカが棒を回すと両端が唸った。

 「ルカ…逃げて…逃げて…」サラが声を絞り出す。「憎しみは…何も変えない。戦ってはいけない…」サラの言葉も僕の怒りを抑える事はできなかった。僕は絶対リルカを許さない。サラの為に…戦うんだ!

 僕はリルカを簡単に投げ飛ばせるだけの力が沸いて来てる。それも魔法の力だ。今なら重い物でも振り回せそうだ。足元にあるこのサラ専用の両手剣も持ち上げられるかも知れない。あるいはこの魔力を使ってみようみまねで魔法を放つべきか…。一体どっちを手に取るべきか。剣か、魔法か。


−選択肢−

サラの剣で戦う
魔法を使ってみる

 

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