スクヴス女学園09

 

 まぶしい光に目が覚めた。時間は…いつもどおりだ。いつの間にか僕は眠っていて、ほとんど夢らしい夢を見ずに、朝を迎えた。夢を見ないだけ眠りが深く、自分の呼吸音が心地よかった。久しぶりにぐっすり眠れたし、目覚めも心地よい。

 ベッドから降りると、昨日までの体調不良がウソのように、内側からパワーがみなぎっている。何というか、この仕事を始める前の状態に戻ったか、それ以上だった。一時期、僕はおかしくなっていたみたいだけど、それも消えている。気分爽快。

 夜な夜な淫夢を見たり、昼間女学生たちに欲情したりして、また、夜には悪い饗宴を繰り返して、精神的にも肉体的にもかなり参っていたが、今日はヘンな夢もないし、体も心も妙にすっきりしている。

 元気な証拠はまだある。空腹だ。そろそろ女学生たちが来てくれる頃だが…。

 いや、今日は来ないんだった。なんだかよく分からないが「吐く週」なのだそうだ。昨日までが息を吸い続け、今日から一週間かけて吐くとのこと。んー、二週間で一呼吸。よく分からん。んで、その切り替えの儀式とかで、今朝は全員が礼拝に参加しているらしい。

 テーブルに目をやると、丸いパンと固めのチーズが置いてあった。昨日のうちに、女学生たちが置いて行ったんだな。珍しく質素だけど、たまにはこういうのもいいな。僕は朝食を平らげる。そうだ、これが普通の朝の風景なんだ。静かで、起き抜けに”朝抜き”もなく、身支度を整える生活。ネクタイを締めると気が引き締まる。

 見慣れたカバン。そういえば辞表が入っていたはず。ガサゴソ…「あれ?」辞表がない。たしかにここに置いていたのに。…そうか、約束だったな。夕べ僕は、女学生たちを抱いた。それは紛れもない事実だ。その誘惑に負けたのだから、山を下りるのはナシになったんだ。

 僕は女の子たちに体で引き止められた。それも事実だ。たしかに情けないことだけど、昨日までの僕はどこかおかしかったんだ。今みたいな爽快な気分だったら、もっと真面目に、女学生たちを押しのけて自分の意思を貫き通せただろう。

 多分、辞表は彼女たちが持ち去ってしまったんだろう。でもいいさ。気が変わった。女学生たちに魅了されたんじゃなくて、今ならやり直せそうな気がするから。僕は身支度を整えた。

 今日から僕は生まれ変わったんだ。過去の事実は事実として否定しないが、それでも”これから”をどうするか、前向きに考えればいい。今の僕ならできそうな気がする。自信がある。

 僕は昨日までの饗宴や淫夢を思い出しても、一向に欲情しないし、朝立ちもなかった。体の爽やかな清々しさが、淫らな煩悩を吹き飛ばしてしまったみたいだ。この体には女体の肌の感触が刻みつけられ、今でもそのぬくもりを鮮明に思い出せるけど、それなのにペニスはピクリとも反応せず、「そんなことが何だ」と、元気が淫欲を吹き飛ばすんだ。

 あるいは、慣れというのもあるのかも知れない。女の感触にしばらくさらされ続けたおかげで、ちょっとしたことくらいでは、もうなびかない。抱きつかれたり裸を見せられたり、多分ちょっと刺激されたくらいじゃ反応しないだけの力がついたんじゃないかな。

 女性に触れ続ければ鈍感にもなるさ。よく夫婦生活に飽きる旦那がいるらしいが、それも慣れの一つなんだろう。僕の場合、不特定多数の娘たちにたいして、同じ気持ちになっているんだ。嫌気がさしているんじゃなくて、ちょっとの誘惑では…昨日までの彼女たちの乱痴気騒ぎ程度では、惑わされない強靭な肉体と精神へと、僕は成長できたんだ。

 吐く週だかなんだか知らないが、もう学生たちが襲いかかってきても、落ち着いて振り払えるだろう。裸で抱きつかれて柔肌を擦られても「おいたはだめだよ」と、紳士に諭すことができる。もう昨日までの自分とは違う。

 それにたしか、元の制服に戻るんじゃなかったかな。ちょっと聞き逃してうろ覚えだけど。あの裸同然の格好で迫られても、もう恐れはしない。そんな強靭な自分に生まれ変わったのだから、元の制服に戻ったならなおさら、しっかり仕事ができるというものだ。

 さて、そろそろ授業が始まる時間だな。気をしっかり持って、今日からちゃんとした用務員になろう。昼も夜も厳格な仕事人だ。それで彼女たちが過去の悪事を公表しても、それはそれで責任を取って山を下りるだけだ。秘密が守られていようがいるまいが、一線を越えることはもうしない。

 僕はエイッと気合を入れて部屋を飛び出した。

 清々しい朝。鳥のさえずりも聞こえない。…。静かだ。風もなびかず。木の揺れる音もない。虫の音も何も聞こえない。ただ校舎へ向かう自分の足音だけが聞こえる。職場に近づくにつれて、女性たちの足音や衣擦れの音が聞こえてきた。

 ちょっと奇妙だな。静かすぎる。礼拝はもう終わっているはずだ。特別な礼拝の日だけど、もう遠くで歩いている制服姿の学生を見かけるから、間違いなく礼拝は終わっている。小さな足音がかすかに届くだけで、あまりに静かだった。

 違和感がある。何だろう…? 校舎に近づくにつれ、昨日までとは違う雰囲気をひしひしと感じる。いつもと違う。一体どこが違うんだろう?

 …。そうだ! 声だ! 女の子たちも教師たちも、教団側の人間は一切口をきいていないらしいのだ。いつもなら遠くからでもきゃいきゃいうるさく聞こえてくる、美少女たちの明るい笑い声やマシンガントークが、まったく聞こえないのだ。実際、誰もしゃべっていないみたいだ。

 教義か何かなのだろうか。「吐く週」では一切沈黙していなければならないとか…? でも女教師たちが話す声は聞こえてきた。授業が始まったらしい。そりゃあ沈黙していたら授業にならないもんなあ。

 僕はしばらく校舎の外から、教室の外側を歩いていた。どの教室も真面目に授業している。女の子たちも、物音一つ立てずに聞いていた。天気がいい。花壇も手入れが施されていて、ゴミ一つ落ちていない。こうしてみると、僕の仕事なんてほとんどないんだよなあ。

 外回りは終わった。校舎の中に入ろう。僕は静かすぎる校舎に足を踏み入れた。

 「…?」何だろう、また違和感が…いつもと雰囲気が違うな。特に変わったところは見つからなかったが、どこか「空気」みたいなものが以前と変わっているし、外とも変わっている。僕が中に入ったとたんに感じた「雰囲気」だ。説明はできないけど、空気の変化みたいなのがたしかにあった。

 チャイムが鳴る。休み時間か。…。待てよ、ずいぶん短い授業時間だな。30分しか経っていない。「吐く週」だと授業が短くなるのかな。それともチャイムが誤作動したか。その証拠に、休み時間になったというのにあの元気ハツラツな女学生たちのおしゃべりも開放感もない。静かなままだ。

 「…!」教室からワラワラと制服姿の女の子たちが出てきた。やっぱり授業が終わったらしい。ときどき小さな会話が聞こえるが、いつものような楽しそうな会話じゃなくて、本当に事務的な必要連絡だけをやりとりしているようだ。明らかに、昨日までの彼女たちの態度じゃない。

 多分そういう教義だと返されるのがオチだけど、一応聞いてみよう。いま何が起こっているのか、この静かさは「吐く週」だからなのか、授業が短いのとか。「ねえ、一体…」僕は近くにいた女の子たちに声をかけた。

 「!!!?」その瞬間僕は半歩後ずさった。明らかに女の子たちの雰囲気が変わっていた。女学生たちは黙って僕を見上げている。抱きついてくるでもなく、明るく声をかけるでもなく、目の前の4人の女学生は無言で笑いもせずに、つぶらな瞳で僕を見つめていた。

 昨日までと明らかに豹変している彼女たちの目に、引き寄せられそうになる。ぞっとするほど色っぽい雰囲気だった。その唇はぷるんとやわらかそうで、赤い色というより透明の奥に赤が引っ込んでいるような、肉欲的な弾力だった。制服で体を隠しているのに、僅かに露出されている首筋や手が、透きとおるような肌の質感を具えていた。

 彼女たちのスカートから伸びる太ももやふくらはぎが、シコシコしていそうな柔らかさとスベスベ感を醸し出し、足首でさえ恐ろしくセクシーだ。特に見せようとしていないのに、制服の奥の体のラインが異様な艶やかさを演出し、彼女たちの大小の胸のふくらみが女っぽさに満ち溢れている。

 い、いや、違うぞ…彼女たちの姿は、たしかに昨日までの姿だ。服装は違うけど、肌のスベスベ感とか、女性としての肉体美は変わっていない。いつもどおりの若い娘たちなんだ。でも、彼女たちの雰囲気というか、オーラみたいなものが、昨日までと全然違うんだ。

 キャピキャピしてうるさいのでもなく、静かに歩き、大胆に飛び跳ねたりせずにおしとやかに振舞い、必要以上に口を開くことなく、静々と行動しているという、「態度の変化」が、彼女たちを変えたんだろうか。

 それだけじゃないような気がする。たしかにそれも女色を醸し出していて魅力的なんだけど、それだけでこんな変貌ぶりは出せない。なんというか、彼女たちの吐く息、彼女たちの毛穴から出る僅かな空気や水分、そしてほとんど認識できない体臭、そういうものすべてひっくるめて、なまめかしい雰囲気を、全身からあふれさせているんだ。

 校舎に入った時の違和感は、微妙な香りの変化だった。女の子たちの匂いが、ただのメスの体臭というのではなく、そこに今までにない香りがブレンドされているんだ。クサイほど強烈というのではなく、本当にうっすら感じる程度だ。でもそれが「なんとなく違和感」を僕に感じさせたんだ。実際に彼女たちを前にして僕はそれを確信した。

 いうなれば、この香りや雰囲気は、女の子たちの「フェロモン」みたいなものだろうか。昨日まではただの娘たちが、今日になって突然、全身から大量のフェロモンを吐き出し始めている、そんな感じだ。

 女学生たちは僕をキラキラした目で見上げながら、やさしく微笑んだ。「どうなさいました?…用務員さん…」「ああぁ…」囁きかけるような彼女の声。いつものようなハツラツとした言い方じゃなくて、まるで膝枕しながら語りかけているような、静かで大人っぽい口調だ。ゆっくり、優しい女の子の声が僕の耳をくすぐり、脳天から全身にかけて充血させる。僕は真っ赤になってしまった。

 4人の女の子に話しかけてから数秒も経っていないが、僕が話しかけてから彼女が答えるまで、かなり時間があったように感じる。その間中ずっと、僕の精神はなまめかしい雰囲気に翻弄され続けた。

 甘く語りかけるような口調で微笑む美少女に僕は我を忘れた。僕は何も言わずに突然彼女に抱きつき、その唇を奪った。「んむ…んむ…」小さな舌先が僕の舌をツンツンと刺激する。僕の唇は完全に美少女のぷるんとした透き通るような唇の肉に包まれ、挟み込まれ、滑り抜けて行った。

 「!」い、イカン! 僕は何をしてるんだ!あわてて女学生から口を離す。娘の唾液がまだ僕の口の中を痺れさせていた。「あ…」それでも女の子は驚くでもなく、僕のキスを受け入れ、相変わらず誘うような視線で僕を見上げていた。

 「ご、ゴメン…あ、あの、今日、その、みんな雰囲気違うから…その…。」「はい。今日から吐く週に入りましたので、制服に戻ったのです。」相変わらず脳天をくすぐる甘い声が返ってきた。「そ、そうじゃなくて…あの…」僕はしどろもどろになる。「たとえば沈黙の荒行みたいな規則があるの?」

 「いいえ。そのような教義はございません。」「じゃあどうしてこんなに静かなの?」「ふふ…特に静かにしなければいけないことはないのです。でも吐く週では誰も騒ぎ立てません。その必要がないからです…」「必要って…」「それと、授業はいつもの半分以下、内容は…ご自分でおたしかめになって下さいね。」「う…」

 「では失礼します。」女の子たちはゆっくり深々と頭を下げた。なんておしとやかな動きなんだ。「…フフ、キス、ありがとうございました。」美少女たちは僕の脇をすり抜けて行った。ふわりと彼女たちの髪の香りと体臭の残り香が僕をくすぐった。

 な、何かがおかしい…! 昨日までは、彼女たちは積極的に抱きついてきたり自分から服を脱いで僕を誘惑してきたりした。未熟だった僕は視覚から、そして女の肌触りから欲情し、そのたびに勃起してしまっていた。

 今日になって、もうきゃいきゃい抱きつかれたり肌が擦れ合ったりしたくらいでは、なびかない自信があったし、実際もう、その程度では心奪われることはなかった。それなのに、彼女たちは抱きついてくるでもなく、ペニスを後ろからまさぐるようなこともない。

 その代わりに、まるで僕の方から積極的に女の子たちに迫るように仕組まれ、見るだけで欲情せずにいられないほど、色気に満ちたモンスターに変貌していた。昨日までは彼女たちの方から僕にムリヤリ近づいていたのに、今は僕の方から近づくように誘っているかのようだ。誘惑の質が完全に変わっている。

 あるいは、僕を魅了するために昨日まで柔肌を押しつけていたのに、今はそんなことをせずに自動的に僕を惹きつけているような、そんな変化だった。これまでと”吸引力”が全然違う。昨日までは吸引力がなかったから自分から迫る必要があったが、今では吸引力に満ちあふれていて、そばにいるだけでフラフラと引き寄せられてしまう。

 静かな校舎が妖しい色香をいっそう強烈にし、異様なまでの魅力を女学生たちに与えていた。静かな足音と、かすかな衣擦れが逆に僕の情欲を体の奥から引き出してしまう。女の子たちが歩く時に、内股で自分の太ももをスリスリ擦りながらゆっくり歩くことを知った。その肌の擦れる音さえ聞こえてくる。その静けさがエロティックな雰囲気へと校舎全体を改造してしまっていた。

 こ、ここにいてはマズイ気がする。心のどこかで警鐘が鳴っている。女性の妖しいフェロモンが充満した校舎、どこに行っても、目の前には僕をやさしく見つめる、色っぽい娘たち、…ここにいたら僕は間違いなく性欲に我を忘れて、自分を完全に見失ってしまう。

 それも、彼女たちが積極的に迫るでもなく、数十人で囲まれて逃げられずに不可抗力で触ってしまうとか、そういうこととは次元がまったく違う。ここで性欲を満たすだけの動物に堕ちてしまったら、僕は完全に「自分の意思」で女の子たちに襲いかかったことになる。危険だ。

 僕は階段まで逃げた。だがどこに逃げても”艶っぽい女の園”の雰囲気から逃れられはしない。階段を上り、折り返すところがちょっと広くなっているが、そこに逃げても僕の理性を徐々に奪い続ける”空気”は充満していた。階段を行き来する美少女たちはまばらだが、それでも目の前にいる異性に、ちょっとでも気を抜くと飛びかかってしまいそうだった。

 「ああっ!」階段を見上げると、ミニスカートの学生のパンツが見えてしまった。細くすらっとした足、ふとももの内側真ん中がくびれてスジのように引き締まっていながら、白くキメの細かい肌だった。そんな両足の奥に潜む白い天使を、僕は目の当たりにしてしまった。お尻までぴっちり包み込む薄い生地を見たとたん、僕の服は完全に消えてしまった。

 ああ…あの時の異常がまたぶり返している。いつの間に僕は全裸になってしまったんだ。いやそもそも、一瞬にして脱ぎ捨てた僕の背広はどこへ消えてしまったんだ。とにかく今、僕は全裸で、しかもペニスはギンギンに勃起している。あわてて前を隠したが、もう何人もの女学生たちに見られてしまっている。

 娘たちは、全裸で前かがみになって局部に両手を伸ばしている僕の姿を見ても、特に何か反応を示すわけでもなく、妖しい微笑と視線で僕を一瞥しながら、静かに階段を上って行った。彼女たちが階段に進むたびに、僕はパンティやスパッツを”自分から”覗き込んだ。

 ペニスが脈打っている。今朝の自信はどこへやら、僕はまた性欲の固まりになってしまったみたいだ。いや、こんなに雰囲気が変わっていなければ、今朝の自信は打ち砕かれなかったんだ。うう…もうそんな言いわけしている場合じゃないぞ。とにかくこの状況から脱出しなければ!

 「吐く週」だけあって、休み時間が長い。授業が短いらしいから、その分たっぷり休み時間がある。その間、女の子たちは思い思いに歩き回ったり、椅子に座って背筋を伸ばしたり何かに祈るようなポーズを取っている。しかし見事なまでに静かなままだった。

 僕は階段を上り、全裸のまま廊下を歩き出した。その時、誤って一人の女の子にぶつかってしまう。足早に通り過ぎようとして彼女の横をすり抜けようとしたら目測を誤り、僕の腰が彼女のふくよかなお尻にぶつかってしまったのだ。

 女の子の横尻の弾力が、僕の腰を勢いよく跳ね返した。そのぽよんとした感触で、理性が途切れた。僕は無言でその美少女に抱きつき、裸のまま制服姿の彼女に腰を押しつけてしまった。女学生の方も僕の背中を抱きしめ、ゆっくりとほお擦りをしてくれた。それでますます僕は止まらなくなった。

 僕は彼女のスカートを捲り上げるとスベスベの生足に自分の両足をこすりつけ、パンティ越しにペニスを擦った。女の子は騒ぐでも嫌がるでもなく、それどころか、やさしく僕を受け入れてくれる。周りにも大勢の女性がひしめき合っていたが、誰も騒がない。みんな動物のように蠢く僕を、受け入れるようにやさしく微笑むばかりだった。僕の様子を見ながら、その行為を全員が(されている子も含めて)肯定してるんだ。

 女の子が少し足を開くと、ペニスがふとももの間に包まれた。「んあああ…」僕は一心不乱に腰を前後させる。吸いつくような彼女の足の肌がペニスを包み込み、やさしく締めつけながら精力を削って行った。僕は自分からペニスを股の間で前後させて、快感をむさぼる。女学生はそれを受け入れて僕にされるままになっている。

 「も、もう出るよ、だすよっ!」「…。」「んあっ!」ぴゅうっ!精液が女の子の足の間で飛び出し、内股全体を濡らして行く。射精の満足感に酔いしれながら、僕は彼女と唇を合わせた。

 校舎内でこんな破廉恥なことをしているというのに、周りの子たちも、通りがかるセクシーな教師も、騒がないし注意もしない。まるで僕が、ここで女の子の体で性欲を満たすのが当たり前のことであるかのように、全員が僕の行為を受け入れて優しく包み込んでくれる。「見て見ぬフリ」でさえないんだ。

 一体どうなってしまっているのか。それを考える暇もなく、僕のペニスはもっと快楽を求めて疼き続けた。スマタで精液を受けた女の子はスカートを元に戻すと、僕に深々と頭を下げて静かに歩いて行った。

 僕はフラフラと歩いてやっと廊下の突き当たりに辿り着いた。さっきと反対側の階段だ。そこもちょっと広くなっている。たしか以前、ここで裸同然の娘たちに大勢囲まれたんだっけ。

 「ぅ…」女学生が一人うつ伏せで横たわっている。両手を重ねるようにアゴの下で組んで頭部を支え、僕に足を向けながら廊下にうつぶせになっていた。彼女のミニスカートはお尻まで完全に捲れ上がり、ぴっちりしたスパッツがあらわになっている。スパッツの下には何も穿いていないのか、お尻の形やワレメ、オンナの形までくっきりスパッツに浮き出ている。

 そんな格好のまま、背の高い彼女は(多分陸上部か何かでスポーツをやっていそうだった)、顔をこっちに向け、しっとりした視線で、目を細めて僕を見つめている。女の子はアゴを腕の下に少し落として、鼻から上だけを僕に見せる状態になった。すると視線の魅力が強くなった。

 こんな風に誘われて、僕はもうひとたまりもなかった。ふらふらと彼女に近づき、誘われるままに陸上部員の上に乗った。彼女の細く引き締まった、それでいて上に盛り上がっているやわらかい臀部に、自分の腰を乗せ、強く押しつける。ぎゅみっと弾力が僕の腰を跳ね返した。

 いきり立ったペニスは、臀部の肉やワレメの感触に押しつけられ、オンナのスパッツ越しのやわらかさと弾力に揉みしだかれた。いや、自分からペニスをこすりつけて女の肉で揉みしだいたんだ。

 僕は彼女の髪の匂いを嗅ぎながら腰を上下させ、我を忘れてペニスを押しつけ続けた。腰をリズミカルにお尻にぶにぶに押しつけるだけじゃなく、くねらせるように回転させる。亀頭がオンナのワレメにスパッツ越しに擦れると、全身を快感が通り抜けた。女の子の方もゆっくり優しくお尻をくねらせたり、僕の腰をお尻で持ち上げたりしてきた。

 僕は股の間にすっぽり女の子のお尻を挟み込み、締めるように引き締めたり緩めたりし始めた。するとやわらかいお尻の肉がぐにぐに蠢き、ペニスを臀部のワレメに挟み込んだまま揉みしだく。「ああっ、出すよっ、ねえ、気持ちいいよぉ…」「…。」「あう!」

 僕は激しくガクガク腰を振ると、陸上部員のお尻の感触にたまらなくなって、精液をスパッツに振りかけた。出し終わると一瞬、我に返って、罪悪感からすっくと立ち上がる。それなのに立ち上がってふくよかな小尻を見たとたんに、また激しく欲情してしまうのだった。

 「!?」僕の目の前で不思議な光景が起こった。白濁液で汚れたスパッツは、ところどころ色が濃くなっている。精液で濡れたからだ。そのままスパッツを脱いで着替えるつもりなのかと思った瞬間、彼女のスパッツは元の色を取り戻したのだ。「え…」濃い精液がスパッツを濡らし、箇所によっては白く盛り上がっていたはずなのに、一瞬にして消えてしまった。

 まるで砂漠に落とした水が吸い取られるみたいに、みるみるうちに、大量の精液がスパッツお尻に吸い込まれ、吸収され、元のように乾いたスパッツに戻ってしまった。まるで子宮以外でも精液を吸収しているみたいな、女体が全部スポンジのように男の精子を体全体で吸い取っているみたいな、そんな光景だった。

 陸上部員は何事もなかったようにまた前を向き、床の上にうつぶせになりながら両足を静かに開いたり閉じたりしている。太ももが床に擦れている。10センチくらい開いてはまた閉じる。一体彼女はここで何をしているんだろう。よくは分からないがそういう趣味なのかなあ。それとも儀式なのかなあ。

 そんなことはもうどうでもよかった。小刻みに開閉を繰り返し、オンナを浮き上がらせ、お尻の肉を柔軟にぷるぷるうごめかす彼女の姿に、僕は再び心を奪われた。

 僕はまた彼女の上に乗った。それでも美少女は僕を受け入れお尻をぎゅっと僕の腰に下から押し上げてくる。今度はスパッツ越しにペニスがオンナ表面にあてがわれ、彼女が足を閉じるとペニスが柔らかい肉に包み込まれた。

 ペニスの周りにはむっちりと太ももの柔軟さが絡みついている。それだけじゃなくて、オンナのワレメをはっきりと感じるくらい「ホットドック」されていたし、臀部の肉は今度は僕の腰とお腹をグニグニしてくれている。僕はまた我を忘れて、腰を激しく上下させる。女学生の方も腰を上下させて応える。

 スパッツの生地に阻まれているが、それでも若い娘の柔肌の刺激に翻弄され、高められるに不足はなかった。僕はまた、あっという間にイキそうになり、陸上部員の背中に顔をうずめながらペニスを擦り、腰を回転させつつ、ペニスをオンナの肉でモミモミし続けた。「またでるぅ…ああっ…やわらかいよぉ…すごっいっ…」「…。」「んんっ!」

 精液はスパッツ越しに浮き出たオンナ部分全体を濡らした。そこだけ体液で湿っていて、やはり色が濃くなっている。しかし、みるみるうちに蒸発するみたいに、精液は女の肌に吸い込まれて行った。まるで女体のきめの細かい細胞の一つ一つが、精液を吸収しながら潤っていくみたいだ。

 僕は足取りもおぼつかない状態になりながら、階段を上る。まっすぐ歩けないのは、校舎に充満する淫気に当てられ、常に下腹部にくすぐったい疼きを感じながら、勃起し続けているからだ。

 ある程度上ったところで、僕は階段の端っこに腰を下ろした。これなら上を見ずに済む。ときどき女の子が上ってくるが、下り向きに腰を降ろしているので彼女たちの下着を見なくて済む。上を見ないんだから、この位置に座っているのが安全かも知れない。

 すると、縁のない透明の丸いメガネをかけ、パッチリした目が自慢の、髪の毛を後ろに束ねた清純そうな娘が上ってきた。普通に制服姿だし、かわいい感じの真面目そうな子だったけど、淫気によってやはり妖しい女色の雰囲気が醸し出されていた。

 「…ぁぁ…」ここも安全ではないようだ。上に登ってくる彼女の胸元から、カワイイ乳房が見えてしまっている。上から覗き込んでいるため、ちょっとぶかぶかの制服の子が上がってくると、容赦なく胸チラしてしまうんだ。清純そうな子はわざとなのか、紺色の制服の奥にあるノーブラのふくらみや、左右に僅かに広がった谷間を僕に覗かれているのに、平気なふうでそのまま上ってくる。どうぞ覗いて下さいと言っているようなものだ。

 僕は思わず座ったままの体勢でめがねっ娘に手を伸ばし、首筋の辺りから制服の奥に手を突っ込んでしまった。手に吸いつくような肌の感触と、乳房のふくらみが僕の心を掻き乱す。彼女は足を止め、低い位置に突っ立ったまま、僕に胸をまさぐられるに任せていた。その表情はやっぱりやさしい癒しの微笑だった。

 僕は美少女の胸を片手でこねくり回しながら、もう片手で彼女の頬をさすり、首筋に手を這わせた。どこを触っても肌の感触がスリスリして心地よい。そのうち僕は、ガマンができなくなって、閉じた足を開いた。足の間からペニスがヒクついている。

 彼女はすべてを分かったように微笑んだままペニスに顔を近づけた。そしてその小さめのプルプルの口で亀頭を包み込み、舌先で敏感な部分を舐め回した。僕がくすぐったさにのけぞると、彼女は一気に喉元奥深くまで飲み込んでしまった。

 僕は乳房をこねくり回す手を休めずに、もう片方の手で彼女の頬やうなじをさすったり掴んだりしながら、彼女の首の動きをサポートした。女学生の方も僕の手の求めに応じて、どんどんスピードを速めていく。小さい口からは想像できないほど長い舌が、ペニスに絡みつき、亀頭に押しつけられる喉チンコ周辺がぬるぬるしていた。

 彼女はディープスロートを繰り返しながらも嗚咽しないテクニシャンで、小さな指が根元を掴んでペニスを揉みしだきながら、実にスムーズに唇を滑らせていく。玉袋に添えられた手がやさしくさすり続ける。

 「ああ…いい気持ちだ…またこみ上げてくるよ、いい?」「…。」「うぐっ…」僕は彼女の口に精液を噴射した。女の子は黙ってエキスを残らず飲み込んでしまった。

 めがねっ子は深々とお辞儀して階段を上って行ってしまった。手にはまだ彼女の貧乳のスベスベした感触の名残が残っている。まだまだ体が疼き続けていた。

 絶対ヘンだ。この雰囲気だけじゃなく、僕の体もおかしい。今朝からたしかに元気いっぱいで、気持ちもすがすがしく爽快だ。それは今でも変わらない。いや。変わらないからこそ不気味なんだ。昨日までのけだるい感覚も重い心も、今日になって消し飛んでしまっていて、いくら運動しても疲れを知らないし、落ち込むことがない。

 昨日までの後ろめたさや陰鬱な感覚もないし、疲れやだるさもない。心身ともに絶好調だ。それだけに恐怖だ。絶好調すぎる。この校舎に入って、何度射精したか分からないのに、まだまだペニスは勃起したままで、体の奥が疼き、元気すぎてまともに歩くこともできない状態だ。

 そうだ、射精し続けているのに、まったく衰えないし、それどころか、ますますヤリたくなって、気持ちがどんどん高揚していく自分が怖いのだ。体にかかっていたセーブ機能のタガが外れて、全力全開なのに、それに気づいていない清々しさがある。

 それに、本当は誰がどう見てもいけないことをし続けているのに、罪悪感がどんどん消え去っていくのが不気味だ。たしかに周囲は僕の行為を受け入れていて、「いけないことではない」と言っているみたいな反応だった。それも不可思議なんだけど、それにしたって後ろめたくなるはずなんだ。それがなぜか、僕の方でも、ヤッて当然という思いが心を支配して行く。

 感覚が麻痺しているのだろうか。あるいはこの校舎内で、知らず知らずのうちに洗脳されているのだろうか。だんだんと自分を取り巻くこの異様な光景が、当たり前のことのように思えてくる。異様さを感じなくなり、しっとりした視線を送る女の子たちに、次々と求めては精を放っているんだ。一体どうしてしまったんだろう。心の奥底で警鐘が鳴り続けているのに止められない!

 チャイムが鳴った。女学生たちは、静かに教室に入って行った。誰も無駄話をしない不気味に静まり返った校舎内。授業中の方が教師たちの声が響く分、うるさいくらいだ。廊下には人影がなくなった。教室から声が聞こえてくるだけの状態。それでも妖しい淫気は目に見えない霧のように漂い、僕を狂わせ続けている。

 僕はペニスをギンギンにしながらフラフラと廊下を歩く。早く授業が終わって欲しい。休み時間になったら、また触り放題、射精し放題だ…さすがに授業中に乱入して破廉恥な行為はできないんだろうなあ…

 「…であるからして、三億以上の精子がたった一つの卵子めがけて競争することになります。受精できる精子はたった一個、失敗したものは全部死滅する運命にあります。」

 女教師の声が聞こえてくる。僕は思わず教室の窓から覗き込んだ。「競争に勝った精子が卵子に結合し、子宮めがけて分裂を始めることから妊娠が始まるのです。これを着床と言います…」

 これは…性教育なのか…保健体育? よりによってこんな授業を覗いてしまうなんて。ヤバイ。僕は足早に教室を去る。性欲ギンギンの男が乱入なんて、正当な性教育を台無しにしてしまう。次の教室は数学かな。英語かな。

 「…この突起がクリトリスであり、女性はここに性感帯が集中していますが、もちろんここにしか性感帯がないということではありません。女はココロで感じる生き物なのです! 一方男性は…」

 なっ…何をやってるんだ!?黒板に生々しい男女の裸が描かれ、色っぽい大人の女が、女学生たちに向けて性感帯の講義を行っている! こんなのもう保健体育でもないぞ! 「このペニスとクリトリスは、もともと同じ器官だと言われています。ペニスには生殖の機能が備わっていますが、クリトリスは退化し、性感神経だけが残ったのです…」

 いっ、一応マジメな授業らしいが…女学生たちはノートを取りながらも、興味津々の様子で、顔を上気させている。「ですからみなさんも、オチンチンをかわいがる時は自分のクリちゃんをかわいがるように、やさしくしてあげて下さいね。デリケートな器官ですからね。」うう…この教室はさっきよりもやばい! 僕は足早に立ち去った。

 「えー、それでは朝倉さん、今教えたとおりに、この模型を舐めてみて下さい。」「…!」次の教室では女学生がペニスの模型を舐めている。一体何の授業なんだああああ!!!

 だめだ、授業中はどの教室も性教育かハウツーセックスしかやってないぞ。一体どうなってるんだ。もうこんなのまともな授業じゃないよ。学校全体が狂ってる。どうなってるんだ一体!!?

 僕は淫らな授業風景に引き寄せられるように、隣の教室に入ってしまった。しかし教師も学生も、僕を一瞥しながらも授業を続けている。「なのでオッパイが小さくても大丈夫ですよ。裏スジを包み込むようにやさしく擦ってあげれば、立派にパイズリができます。表側は手で支えて体全体を上下させる時に指でしごくようにしてあげましょうね。」ここも同じだ。

 僕は女の子の机の間をペニスをいきり立たせながら歩いた。甘い香りが鼻をくすぐる。フェロモンが強くなっているみたいだ。僕はガマンできなくなってとうとう座って授業を聞いている女の子の目の前にペニスを差し出してしまった。

 彼女は鉛筆を置いて、両手でペニスを包み込むと、やさしくしごき始めた。時折チロッチロッと舌先が亀頭をかわいがる。向かい側の女学生が手を伸ばし、僕の股の間にふにふにした手を後ろから入れてくる。玉袋に届いた指先がコロコロと愛撫し始めた。

 「乳房は元々授乳のために必要なものというわけではないんですね。むしろ二足歩行を始めてから、お尻と同じふくらみで男性を魅了するために発達したの。だから女の魅力的な部位でオチンチンをかわいがるのは、とても理に叶ったことです。」「うう…」手のひらで裏スジをさするようにペニスを引きながらしごきたてる女の子が、甘い視線で僕の目を見つめている。

 「はあっはあっ…も、もうイクよ? ううっ…」「…。」「くうっ!」ぴゅる。白濁液が女の子の顔にかかり、スベスベのほっぺたに粘液がべったり張りついた。「!」粘液は首筋の方へと滴りながら、女の皮膚細胞に吸収されていく。間違いない、彼女たちは体中で僕の精液を吸い取っている!? そんなバカなことがあるんだろうか。

 性欲は衰えない。僕は教室の中でペニスをいきり立たせたまま、女学生たちの間を歩き、上からノーブラの美少女たちの胸チラを楽しんだ。髪の長い娘の斜め前に立って、彼女の制服に手をつっこむ。すると彼女は手を伸ばして僕のペニスをゆっくりしごき始めた。

 「パイズリで肝心なのは肉のやわらかさと肌触りの心地よさです。肌触りがスベスベしていると男性は悦びます。では心地よい女の肌触りとは何でしょう?」何事もないように淫乱な授業が続けられる。

 反対側の斜め前の子も手を伸ばして、二人がかりで棒と玉袋を刺激し始めた。後ろ斜めの二人も体をよじらせて、僕のお尻に手を伸ばす。四本の手が文字どおり、四方から僕の下腹部をまさぐってきた。お尻をさすったり股の間をさすったりして僕を高めて行く。僕はその場から動けなくなり、触られるに身を任せた。

 「これは女にとって一生モノの大切なことですよ。きめの細かい美しい肌とは、何よりもみずみずしい肌なのです。つまり水分をたっぷり含み、皮膚細胞に蓄えて逃さない力のことです。保湿力といいます。水分が足りない肌はカサついたり吹き出物の原因となります。また、肌が老化すると保湿力も衰えますから、いつまでも若々しい肌を保つためにはいかに保湿力を保ち続けるかがカギになるんですよ〜!」

 お尻の穴に指先が捻じ込まれてグリグリ刺激されると、内側から強烈な快感が込み上げた。「うあっ!」僕は促されるままに美少女たちの手で果てた。イク寸前、女の子の手が受け皿を作っていて、精液はしなやかな手のひらに注がれた。しかし白く濁った池は手のひらから吸収されて、あっという間に跡形もなくなってしまう。

 「一方、女の体のやわらかさは、体内の脂肪です。男性に比べて脂肪を溜め込みやすくできています。皮下脂肪が全身に厚く覆われているため、女の体はどこもかしこもやわらかいんです。だから痩せ過ぎるのは良くありません。ダイエットは程々が良いでしょうね。だからといって太り過ぎると健康に悪いし、見た目も悪くなるから要注意です。健康的な体重は、身長から100を引いた値と言われており…」

 授業はもう性教育なのかエッチ講座なのか健康授業なのかサッパリ分からない。たしかにどれも密接に関連してるんだろう。だからってこの授業は…教育界が知ったらなんていうかな。

 僕はマジメな授業を淫らな気持ちで聞きながら、椅子に座る女学生たちに次々と性欲処理を求めた。ある娘は制服を脱いで上半身をはだけ、今しがた授業で習ったパイズリで精液を絞り上げた。ふくよかな胸の娘はむっちりとペニスを挟んで刺激し、あっという間に僕を絶頂に追いやる。貧乳の子は一生懸命裏スジに柔肌を押しつけながら、全身を上下させ、けなげに手でサポートしながら僕を気持ちよくさせてくれた。

 「最後に、人間も含めて特に哺乳類は、水と油の両方をバランスよく含んだ神秘の存在です。ただの細胞がそれだけの機能を持っているのは奇跡としか言いようがない。その奇跡は、この大自然から授かっています。水も油も自然界から摂取するからです。皆さんもそれを忘れずに生かされていることをよぉく知っておいてくださいねえ。」「はぁ〜〜い♪」キーンコーンカーンコーン…

 「ではここまでにします。『吐く週』の特別授業だから時間が短いですね。ではごきげんよう。」女教師は僕の破廉恥な行為を一部始終見ているのに、何も言わずに出て行ってしまった。女学生たちは無言で席を立ち、上品な振る舞いで廊下へと歩き出す。手コキやパイズリをしてくれていた子たちも何事もなかったように出て行った。

 僕は異様な雰囲気に圧倒されて「射精マシーン」と化していた。心の奥底の警鐘が強く鳴っているが、精神的に麻痺していて警告に従えない状態になっている。それでも何とか自分を見失わずに心を保ち続けた。何とかまだ、この状況を”異様”と考えることができた。まだ異常だと思える、正常な気持ちがあるうちに、何とかしてこの女地獄を脱出しなければ。

 僕は魅惑的な女の子たちの間を掻き分けるようにして廊下を渡り、階段を下り、校舎をどうにか抜け出した。途中、何度も”寄り道”をしてしまう。女の子たちは何も言わずに僕のペニスをしごき、口に含み、胸に挟み、ふとももに包み込んでくれた。

 外に出ると、しとやかで淫らな雰囲気からも解放された。あれほど連続射精しながらも衰えなかったペニスが少しずつしおれて行き、いつの間にか僕は、背広姿に戻っていた。太陽がまぶしい。あれだけ抜かれたのに頭がふらつくことも股間が痛むこともなく、全身に力がみなぎり続け、気分も爽快なままだ。いても立ってもいられないほどテンションが上がっている。

 さて困った。持て余す体力をどうしよう。仕事が終るまでどこにいよう。校庭を走ろうかな。僕は校庭に向かった。

 「!」女の子たちが体操服にブルマかスパッツ姿で走ったり飛び跳ねたりしている。休み時間が長いので、みんな校庭に出て遊んでいるんだ。まずい、建物の中みたいなフェロモン充満はないにしても、これだけ大勢の、肌を露出した若い娘たちにまじって運動して、理性を保ち続ける自信はない。校庭はあきらめた。

 水泳場も…水着の女の子がいるよなあ。茶道室…は絶対避けるべきだ。ただでさえしっとりフェロモンが漂っている女学生たちの中で一番しとやかな雰囲気を醸し出す和服美少女に囲まれるなんて、ひとたまりもない。どっちにしても運動系はだめだ、彼女たちの汗が蒸発すると、淫らな体臭が僕を刺激し続けてしまう。肌の露出も激しいし。

 そうだ、離れに小さな小屋があったはず。たしか音楽練習室。校舎内にある広い音楽室と違って、小さなピアノが置いてあるだけのこじんまりとした建物だ。声楽部の人たちや軽音楽の練習に使われているらしい。

 僕は練習室の窓から中を覗いてみた。誰もいない。よし、しばらくここに隠れていよう。体力を持て余したら腕立て伏せでもしておけばいいや。僕はそっと小屋の中に入った。

 奥にピアノがある。音楽室や体育館の豪華なグランドピアノではない、普通のピアノだ。向かい側には椅子が積んであって、真ん中は何もない。楽器を運び込むから机も何もないんだな。床はきれいな赤い絨毯が敷き詰められている。これなら横になれそうだ。

 僕はあお向けに横になり天井を見つめた。学園内のこの豹変振りは一体なんだろう。僕も変わってしまった。女たちも、僕も、当然のように淫欲にまみれ、エロチックな雰囲気の中で、ところ構わず交わり続けている。まるで何かに命じられるように僕は彼女たちに精を吸い取られ続けている。何かが狂っている。

 チャイムが鳴った。女学生たちも静かに授業に戻っただろう。校舎内では淫らな授業が続けられ、30分も経てばまたフェロモンを吐き出し続ける、いやらしいモンスターたちが学校中に解き放たれる。僕はぼんやりと天井を見つめてあれこれ考えた。吐く週…有り余る体力。女学生たちの変貌、淫らな行為をしてもまったく問題にならない反応…性教育ばかりの授業…んー、いくら考えても何がなんだか分からないぞ。そのうち授業が終わるチャイムが鳴った。

 がちゃ。「!」「あ、こんにちわ〜」ドヤドヤと女学生たちが入ってきた。「なっ…君たちは?」「コーラス部員です。ここで練習するのです。」「あっ、そ、そうなんだ…じゃあ僕は退散するよ。」僕は立ち上がった。待てよ?「って、もう授業は終わりなの?」「はい。午前中だけなのです、”吐く週”ですから。あとは任意でちょっと部活をやるか帰宅します。」

 相変わらず妖しい雰囲気を醸し出し続け、そばにいるだけなのに、どんどん引き寄せられていく魅力がムンムンと発散している。早いところ退散した方が良さそうだ。「じゃあ頑張ってね」僕は足早に立ち去ろうとした。「あン、用務員さんも私たちの部活を見学して行って下さいよ。」「う…」

 僕は女の子に手を掴まれた。二の腕を包み込む彼女のしなやかな手のひらが、痺れるくらい心地よい。だ、だめだ、10数人の女学生たちと小さな小屋で一緒にいたら、この淫気にまたやられてしまう…! でも彼女たちの部活を見るのも用務員の仕事だっけ。水泳部とかさんざん見たからな。ここでコーラス部だけ拒否というわけにもいかない。

 「じゃ、じゃあちょっとだけ。」僕は部屋の片隅に腰を下ろした。できるだけ淫気に当てられないように呼吸を浅くし、香りを嗅がないように口呼吸をした。「それじゃあ皆さん、いつもどおり準備して下さい。」

 「なっ!!!」女学生たちはいきなり僕の見ている前で制服を脱ぎ、パンツ一丁の姿になった。「ちょっ、ななな…何してるんだっ!!」「あぁ、私たちこの格好で歌うんですよ。」「何でそんな…」「えっとですね、ちゃんとした歌は腹筋を使うんです。お腹をへこませてハラから声を出す。いい声はいい腹筋の動きでないと出せません。なので私たちは、部員のお腹を見てちゃんとした声を出せているか動きをチェックするんですよ。」

 それでも全国のコーラス部員がパンティ以外脱ぐなんてありえない。ここの娘たちだけだ。「腹筋だけなら何も…」「いつもお腹を捲り上げ続ければ姿勢が悪くなるので、いっそ上半身は全部脱ぎます。」「し、下は…」「スカートが邪魔で下腹部の筋肉が分からないからパンツだけですぅ。」「そんなぁ…」

 これは運動部よりもキツイ。彼女の全身の毛穴という毛穴から絶えず発散し続ける強烈なフェロモンが、薄着だから大量に噴き出している。しかも密室の中で、大勢の若い娘の体臭が充満し、肌をほとんど露出した姿が男の情欲をこれでもかと掻き立て続ける。僕は口呼吸と彼女たちの姿を見ない対策で乗り切るしかなかった。

 絶対おかしい。お腹だけ出すんだったらそういうユニフォームにすればいいし、スカートやズボンもちょっとだけ下ろせば邪魔にならない。それにノーブラというのも納得行かない。第一、お腹を出して練習なんて聞いたことないぞ。

 「では始めましょう。まずはいつもの発声練習歌から。」そのドキッとするようなセクシーな声に思わず見てしまう。あられもない姿の美少女たちがオッパイを曝け出しながら一列に並ぶ。さっきから話をしていた部長らしき女の子が指揮棒を振る。並ぶ乳房もいやらしかったが、僕に背中を向ける部長のスベスベの肌の動きもなまめかしかった。「はぁ〜〜ん…うふ〜ルルル…」女学生たちが歌い始めた。見てちゃだめだ、僕は顔を伏せてしまった。

 ♪〜♪〜♪〜♪〜

 「…ぐぅ…」僕は目を閉じてフェロモンも嗅がないようにしていたが、あっという間に限界に達した。女の子たちの甘い歌声が、僕の耳を容赦なくくすぐった。甲高い、甘美な、美しい声が、やさしく柔らかく囁きかけるように練習室に響き渡る。しかもこの練習用の歌がどことなくあえぎ声のような、男を誘うような、いやらしい曲調になってる。

 口から吸い込まれたフェロモンも、僕の体を蝕んでいるようだ。鼻みたいに直接脳を刺激しないまでも、体内にいやらしい空気が充満する。淫らなセイレーンたちの歌声が、その代わりに脳を直接刺激した。僕はたまらなくなって女の子たちを見てしまう。裸同然の姿で甘い誘いの調べを奏で続ける美少女たち。も、もうだめ…

 僕は立ち上がって女学生たちに歩み寄る。またいつの間にか全裸になっていた。理性をなくした僕は、とにかく何でもいいから熱いたぎりを鎮めてもらおうと、合唱の列に吸い寄せられてしまう。

 指揮棒を振っている部長の邪魔はさすがにできない。僕は列の端に立っている子に抱きついた。その子は歌をやめて、僕の首筋に手を回した。全身を包む女体の肌触りが、一層僕を無我夢中にした。まわりの子たちは、僕の狼行為を気にも留めずに歌い続ける。

 僕は絨毯の上に彼女をあお向けにすると、上にのしかかった。ペニスをパンツ越しの彼女の腰周りに擦りつけながら、体を前後させた。控えめな胸が僕の顔や上半身に擦れながら潰れる。女の子のふともものスベスベ感が僕の足を蝕んでいった。

 裏スジが柔らかい生地と肉にこすれ、女体を使った床オナニー状態になって、僕をどんどん高めた。一心不乱に下半身を肉布団に押しつけ、こすりつけていると、体の奥がジンジンし始める。強く全身を前後させて甘い肌の感触をむさぼり続ける。女の子は無言で自分の胸を突き上げて、下からオッパイを押しつけ続けた。

 「うぐ…出そうだ…」「…。」「ふあっ…」僕は彼女の純白パンティに精液をぶちまけた。玉袋を女の足にこすりつけながら奥に溜まっている体液をすべて放出しつつ、彼女の首筋に強く吸いついた。「はあっ…はあっ…」僕が離れると、白濁液がパンツの奥に染み込み、やがて消えてしまった。

 それでも僕は収まらない。立ち上がって次の娘に抱きつき、さっきと同じように上に乗った。不思議と本番挿入する気にはなれず、美少女の顔や首、胸、わきの下や手、お腹、お尻、足に激しく欲情しては、ペニスをこすりつけたり、さすってもらったりした。

 ペニスは彼女のプニプニしたお腹に包まれ、四つんばいになって腰をくねらせるだけでその肉のやわらかさに翻弄される。彼女は潤んだ瞳で僕を受け入れつつ、じっと見つめ、やさしく微笑んでいる。その表情を見せつけられて僕の腰が動きを早めた。

 「ああっお腹柔らかいっ…」「…。」「ん…」濃い液体がペニスから飛び出した。おへそのくぼみに溜まった池が、あっという間に地下に染み込んでしまった。僕は立ち上がって次の娘に手を出す。

 やっぱり挿入ではなく、あお向けに横たわる女の子のわきの下にペニスをこすりつける。ここまで女まみれになったら、挿入への欲望が強まるものだが、どうしてもそうする気にはなれない。あるいはそうしなくても十分だからなのかも知れない。事実、僕は美少女たちの肌の感触や舌の蠢きだけで、あっという間に射精してしまっていた。

 女の子が可愛らしくわきを締めると、むにむにの肉に亀頭が包み込まれる。僕はクリクリ腰を小刻みに動かして、亀頭をツルツルの脇に押しつけ続ける。ほどなくして彼女の脇のくぼみに粘液を吐き出した。それも彼女の肉体に吸収された。もう女の皮膚が精液を飲み込んでしまう状態に、違和感さえ感じなくなっていた。

 次の女学生と横向きで抱き合いながら、お互いに積極的に太ももをこすりつけあう。組み合ったり挟まれたり挟んだりしながらスリスリと擦り続けるとペニスは彼女の足や腰の肉に当たり、滑って行く。それだけで天にも昇る心地にさせられた。

 僕がイク時、決まって彼女たちは無言だ。何も言わずに僕を受け入れてくれる。そのしっとりした視線と甘い微笑が、僕を安心させる。何もかも忘れて、精液をどんどん提供してしまう。肌をこすり合わせ続ければ、それだけ男を惹きつけるフェロモンが大量に発散され、密着している僕の体細胞や呼吸器官から、すべて吸収されて行く。

 次の娘も横から抱き締めたが、今度は彼女は僕に背中を向けた。ペニスはお尻の肉やワレメ、股の間で前後し続ける。お尻に当たった時は、腰を僕の方に突き出して臀部の肉を存分に堪能させ、偶然股の間に納まった時は、すかさず足を閉じてペニスを締めつける。ペニスがふとももから抜け出すのを阻止するみたいに、温かい股が引き止めてくれる。それでも抜こうと僕が腰を引くと、名残惜しそうに肌が擦れる。

 彼女の背中もスベスベして心地よく、僕は上半身を女の子のキメの細かい背中にこすりつけ続けた。「すごい…どこもかしこも気持ちいいよぉ…」「…。」「イク…」パンツ越しだが、臀部のワレメにペニスを挟みながら、僕は果てた。彼女の腰周辺が粘液まみれになるが、すぐにさらさらの状態に戻ってしまう。

 次の娘が仰向けでオッパイを強調する。僕が両膝を立てて、ペニスを乳房に収めながら前後している間も、他の娘たちは淫欲を誘う甘い歌声で僕の心をかき乱し続けた。行為が終わった娘も、元のポジションに戻って魅惑の歌声を披露した。僕はセイレーンたちの魔力に囚われて、精を提供し続けるエサになった気がした。

 次の娘にもあお向けになってもらい、その足元ににじり寄って彼女の両足を持ち上げる。その格好で僕はふとももの中でペニスを前後させた。女の子は膝から先を両脇に散らすようにして一生懸命股を締めてくれた。目を細めて僕を見つめてくれる彼女を覗き込んで見つめながら、僕は長い彼女の足をぎゅっと抱きしめて絶頂した。

 最後に部長の番だ。指揮棒を振っている彼女の後ろに抱きつき、立ったままペニスを小さなヒップに押しつけた。すると部長は指揮を辞めてぐりぐりとお尻を回し、リズミカルに腰を前後左右させる。歌は指揮ナシでも狂わずに続いた。

 いや、部長はちゃんと指揮し続けていた。指揮棒ではなく「尻文字」のように腰を規則どおり動かして、僕のペニスをヒップでかわいがりながら、同時に部員たちに指揮していた。部員たちは部長の腰の動きを見て、歌い続けることができた。

 「いよいよクライマックス!」部長は両手を巧みに自分の股に押し込んでペニスを誘導すると、ふとももの間に完全に挟み込んでしまった。そのままペニスを腰の動きでこねくり回してくる。四分の四拍子のグラインドがこれでもかと、僕の肥大クリトリスを揉みしだき続け、僕はもう堪えられなくなっていた。

 「んああ…もうだめえ…」僕は彼女のお腹や乳房をぎゅっと抱き締めたまま、ぴゅるっといやらしい汁をこぼした。それを合図に、丁度歌も終わった。彼女のふとももに粘ついた汁が滴るが、すぐにみずみずしい細胞に取り込まれてしまう。いま彼女たちは、全身で男の精を食べているんだ。すると精液の全エネルギーを摂取することになるッ!

 「それじゃあ、『吐く週』ですし、今日はここまでにしましょう。」「ありがとうございましたですー。」女の子たちは服を着て、僕に一礼すると練習室を出て行ってしまった。外で部活をする声もほとんど聞こえず、また静寂が戻ってきた。

 背広姿に戻った僕も外へ出た。やっぱり誰もいない。部活をしている学生の姿もなかった。「吐く週」とかいうものの影響なのか、校舎にも校庭にも人っ子一人いなかった。そろそろ夕方になる。もうすぐ空も赤くなるだろう。

 …。どうしようか。学生がみんな寮に帰ってしまったとあっては、用務員としての仕事はないなあ。設備を見回るわけでもなし、掃除をするでもなし。そういうのは学生や教団側がすでに完璧に終わらせている。やることもないし、もう一度校舎を見回して誰もいなかったら帰ろうかな。そして今日一日のことをよく考える必要がありそうだ。落ち着いた環境でないと頭が回りそうもないからね。

 「おい。」「ひゃあっ!」突然後ろから声をかけられて、僕は飛び上がらんばかりの声を出してしまった。「!!」あわてて後ろを振り向くが誰もいない。それが二度僕をびっくりさせた。「ひいっ出た…」声だけ幽霊かと思った。

 「おい!」「だっ誰だ…!? すっ…姿を現せぇ〜」上ずった声で勇気を振り絞る。「どこ見てんのよ!下!シタ!もっと下〜!!!」「…え…」

 視線を40センチ下げると、小さな頭が見えた。「あ…」小学生のようなちっこい体、幼い顔立ち、サイズが合わないのでオーダーメイドで特別にあつらえた白衣、おしゃまなガキが身につけそうなボディコンの服。少しでも大きく見せようと無理して履いたハイヒール。コイツは…保険医の野口真理恵だ。

 「…な、なあんだ、お前か。びっくりした。」「こら。年上のレディに向かってお前、はないでしょう。おねいさんと呼びなさいオネイサンと!」「…おねいさん」「よろしい。」「はぁ…」「何よそのため息。」「別に…なんでもないです。」

 幽霊じゃなくてほっと一安心。しかし、よりによってこんなところで野口に出会うとは。「で? 何か御用ですかオネイサン。」「ええ。その後、調子はどうかなって。」「おかげさんで…良くなってるような良くなってないような…そんな感じですよオネイサン。」「何よそれ。」「その…」まさか一日中女の子たちの体で抜きまくったとは言えない。「体も心も元気で気分爽快なんだけど…その分アッチも爽快過ぎるんですよオネイサン。」「…なんかひっかかる”おねいさん”ね。」「気のせいですよオネイサン。」「ぐぅ…」

 「まぁいいわ。もう一つ用事があるのよ。これを理事長さまから預かったの。」野口は白衣のポケットから小さな手紙を取り出した。「…何で理事長さまからお前なんかに”僕への言伝”を…?」「あら。こう見えても私は理事長さまから相当信頼されてるのよ。」「ちっこいからか?」「殺すぞ。」「わ、分かった、とにかく理事長さまからの手紙を拝見させていただきますよオネイサン。」「うむ。では私は忙しいのでこれで。」「ああ…どうもありがとう。」野口は去って行った。やっぱり不思議な人だ。ヘンともいう。

 とにかく、理事長さまからの伝言を見ないとな。小さな手紙にはきれいな女の字でこう書いてあった。

 「用務員様、お仕事お疲れ様でございます。さて、わが教団は現在「吐く週」に突入しており、先週まで吸ったものを吐いている儀礼祭の期間に当たります。カリキュラムもそれに合わせて組んでいるから、いつもと違うことに戸惑われたかと思います。」

 …いつもと違い過ぎるよ。ってか僕の破廉恥な行為は理事長さまの知るところになってしまっているんだろうか。不安がよぎる。次のページを捲った。

 「特に授業は半日程度で終わってしまい、学生たちは寮に帰ります。部活をしてもよいのですが、そのつど届けなければならないなど、煩雑な手続きがありますので、大抵の学生は夕方前には寮に帰ることになります。従いまして、用務員様のいつものお仕事も、午前中でなくなってしまうかと思われます。」

 …。僕は三枚目をめくった。

 「そこで、たいへんお手数でございますが、午後は特別任務をお引き受けしていただきたいのです。普段は日が暮れる時間まで校内を見回っていただくのですが、今週はその時間までお手すきになるはずです。ですから、勤務時間中、学校の代わりに学生たちの寮を見ていただきたいのです。」

 「寮といっても、用務員様が入ることは差し支えございません、わたくしが保障いたしますので、どうかこの任務に今週だけ当たっていただきたいのです。わたくしといたしましては、儀礼の週間なのに学生たちが自分の部屋でくつろいでしまっていないか、今週こそ大切なのだからそこだけが心配なのです。注意をする必要はありません、用務員様がいらっしゃると学生が知っているだけで引き締まります。よろしくお願いいたします。佐久葉より」

 手紙は以上だ。どうやら午後の空いた時間で、学生寮を見ろってことか。そうだなあ、同じ給料もらっているのに半日で帰ってくつろぐというわけにもいかないし…空いた時間に他の仕事を頼むのは当然か。

 それにしても…よりにもよって学生寮か……。多分、ちゃんとおとなしくしているとか、部屋で祈ってるとか、そういうことをする大切な週なんだろう。それなのに学生たちが怠けてないかを見る役目って感じだ。たしかに、僕がくるかもと思えば、彼女たちも羽目を外さないだろう。それを狙って僕を使おうということのようだ。

 理事長さまのお言葉だし。断るってわけには行かないよなあ。完全に女の子の生活空間に入ることになるけど…仕方ないか。

 って、今日のあの色っぽい雰囲気が、寮でも充満してるんだろうか。シッポリ空気に包まれて、また我を忘れてしまうんじゃないか。僕は不安になった。なまめかしい雰囲気と静かでしなやかな女の子たちの、誘うような視線に当てられて、理性のタガを外して襲いかかってしまわないか…大丈夫かなあ。

 でも、ここでぼーっとしてるわけにもいかないな。理事長さまの手紙は一種の辞令のようなものだ。サボってるわけにもいくまい。何としても、ここはやらないといけない。気をしっかり持って、男を誘う甘い空気にほだされないように気をつけないと。

 自信がなかったが、もう時間もないので、僕は学生寮に向かって歩き出した。

 小さな森を抜けたところに、女の園のさらに奥地である、女の伏魔殿がある。言いすぎか。森というより、土の道が整っているから、歩くと林に近い。学校からすぐのところに、女学生の寮がある。「吐く週」の間、つまりこの一週間、僕は午後から、この学生寮にもお邪魔することになった。

 西洋風のきらびやかな飾りつけが施された建物だ。さすがに全学生が入っているから、大きい。こんな建物がさらに奥までいくつかある。五階建ての大きな洋館が四つだ。いや、一つは、もっと近代的なビルディングになっている。一番奥の建物は、もっと機能的な感じ…多分教師や管理側の建物か。

 つまり、実質、学生寮は三つ。多分学年ごとに分かれてるんだろうな。それでもかなりの大きさで、まあ一学年全員を収容しているだけはある。んー。たしか一学年で200人前後いたような。五階建てで大きな建物だけど、そんなに全員収容できるのかなあ。一部屋に何人詰め込まれているんだろう。まあいいや、行ってみれば分かる。

 中世ヨーロッパ風の外観とは裏腹に、中に入ると近代的な造りになっていた。やっぱりいまどきの子は、こういう設備が整ったところじゃないとだめなんだろうね。鉄筋で、全館冷暖房完備。部屋数も多いみたいだ。ベッドなど必要な物は、全部支給されている。ちょっとしたマンションだな。

 学校の校舎内ほどの強い淫気が流れてはいなかったが、やっぱり甘い香りは漂っている。若い女の匂い、かすかな淫気はフェロモンが漂っていることを物語っている。それでも惑わされないのは、校舎よりもずっと低い濃度だったからだ。

 このくらいなら何とか自分を保てそうだ。まぁ実際、女の子の姿を見るまでは安心できないけどね。ロビーには誰もいない。みんな自分の部屋にこもっているのか。僕はロビーを抜けて、建物の案内図を見る。ちゃんとエレベーターがついているね。んー…

 さすがと言おうか。一階は大浴場や食堂、日用品や本の売店、倉庫、クリーニング屋も反省室なんてのも揃っている。ここにいれば外に出なくても生活できそうだ。トイレも各階にたっぷりある。へえ、やすらぎの間なんてのもあるんだ。公園みたいなものか。あとは、機械などの設備だ。この一階だけで、ちゃんと街になっている。

 それに、地下まであるみたいだ。外からでは分からなかったが、地下があるとなると、実質六階建て。そのうち、フロントが共同空間でも学生たちの部屋は五階分。一つの階にルームが20あって、一つのルームに2人から3人が入っている。たしかに一つの階で60人だから、最大300人が収容できるってことだ。建物一つで一学年なら、かなり余裕のある寮だね。

 ルーム内も八畳×四、洗面所とキッチンまでついてる。やっぱりお嬢様ばかり集まっているだけあって、豪華なもんだ。「へえ…現在地下ルームは使われておりませんので立ち入り禁止、か。たしかに200人なら地下なしでも十分収容できそうだな。」つまり半分が三人部屋、ということになるな。

 寮全体で100ルームある。そのうち、使われているのは80。この建物には80もの巣があるんだ。もしこんなところで理性のタガが外れてしまったら、すべての巣を一晩中渡り歩いてしまうのか。それどころか、全学年分だとすると240ルーム。死んじゃう…気をつけないと。

 それにしても、やっぱりというか…ずいぶん静かだ。さっきから人影が見当たらない。売店にも誰もいない。店員の姿もなく、ひっそりと静まり返っている。寮の管理人っていないのかな。それとも向こうの無機質な建物で一括管理してるのかも。とにかく、上に行ってみよう。廊下を歩いたというポーズでもあれば十分だ。

 左右の端に階段がある。二階にあがってみた。「…。」やっぱり誰もいない。廊下に出ている女の子の姿がまったくない。儀礼中だから、やたらに外に出ないのか、それとも普段からこんな感じなのか。多分、普段だったらあちこち友達のところに行き来して、うるさいんだろうなあ。

 静まり返った廊下を歩く。左右にドアが並んでいる。ドアの間隔がかなりあるのは、中が豪華なのを物語っている。それにしても珍しいな。玄関のドアなのに大きなガラス窓がはめ込んであって、中が簡単に覗けるようになっている。プライバシーとか何とかは共同生活では無意味なのか。あるいは中のプライベートルームだけしっかりしてるのかな。

 物音一つしない廊下。本当に学生たちはここにいるのだろうか。全員帰宅したとは思えないくらいだ。誰かいないかを、たしかめるため、僕は右の扉からちょっとだけ、中の様子をうかがった。

 「…。」ドアの先は通路、キッチンと続いて、その奥が居間になっている。フローリングだ。居間から三方向に扉がついており、そこはガラスが嵌め込んでない。なるほど、3つの部屋がすべて居間に通じ、学生たちはそこを通って玄関に出るんだな。


 □
□■□
 ▼◇
 ●


 ざっと見た感じこんな構造になってる。●が玄関で僕のいる位置、▼が通路、◇がキッチン等で、■が居間。□が学生たちの部屋だろう。▼の隣や奥のスペースは多分、収納になっているのだろう。間取りも広くて完璧だ。なかなか快適そうだ。

 この部屋にはところどころ、大きな鏡が置いてあったので、玄関のガラスから覗いただけで、部屋全体を見ることができた。学生たちの姿はない。とてもきれいに片付いていて、でも荷物とか鏡が置いてあるから、無人というわけでもなさそうだ。多分奥の部屋に引っ込んでいるのだろう。

 女の子の部屋を覗き続けるというのはいいもんじゃない。僕はほどほどにして、先に進んだ。左側は対称になっているのかな。覗いてみる。やっぱり同じだ。対称になっていて、間取りは変わらない。誰もいないことも。

 端から端まで覗きながら歩いてみたが、ついに誰とも出会わなかった。みんな自分の部屋に引っ込んでるのか。まぁ儀礼週間ならそういうこともあるんだろうな。かえって好都合だ。僕はその足で三階に登る。部屋を覗きながら反対の端まで歩き、最上階まで行ったらエレベーターで降りよう。

 

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