スクヴス女学園（ないと・めあ）

スクヴス女学園１９

　上とも下ともつかぬ世界を彷徨っている。

　ずっと犯され続けて……あと何時間、解放されないのだろうか。そんなことをぼんやり考えていると、どうやら、すでにセックスの宴は終わっているようだった。周囲には誰もおらず、ベッドの上に寝かされてもいない。いつの間にこんな状態になったのか、まったく分からない。

　周囲は真っ暗で、何も見えない。何も聞こえない。女たちは姿を消し、僕は裸で、ふわりふわりと暗闇の虚空を彷徨っているのだった。

　どのくらい時間が経ったのだろう。自分が何者かさえ、忘れてしまいそうだ。

　このまま、永遠に……この暗闇を彷徨って、自分自身の何もかもを、忘れ去ってしまうのだろうか。

　僕はどうして、こんなところにいるのだろう。

　どうして自分は、不運を脱却するために、起死回生を図るために、なんとしても変えてやろうと努力すればするほど、かえって決定的な破滅に陥ってしまうのだろう。僕は、神に罰せられるために生まれてきたのか。ああ、断じてそんなはずはないのだ。

　スクヴス女学園……

　やっと決めた仕事先が、悪魔による快楽地獄であった。このまま消滅していくことが、自分の末路だというのだろうか。

　そんなことを考えながら、ただただ、重力のない漆黒の世界を、横たわって浮かんで、しずかに流されていく。

　それは同時に、ほんのわずかでもあるような、安らかな休息でもあった。

　寝ても覚めても、女学生たちとの性交漬けで、片時も休ませてもらえず、不可思議な拷問によって閉じ込められ、若娘たちの宴にいつまでもいつまでも、精を奪われ続けてきた。

　その狂気の快感からは解放されている。それだけでも、ありがたいというべきなのか。

　僕は依然として、夢とも現実ともつかない世界を、漂うばかりであった。

　ピピピ！　ピピピ！　ピピピ！

「！！？」

　身体がびくんとのけぞる。

　血の気のない全身に、急激に血流が染み渡ってくる、じわりとした熱い感覚！　ぎゅんぎゅんとこみ上げてくる、魔性のものとは違うエネルギー。これは間違いなく、生命そのもののエネルギーだった。

　身体に力が入っていく。それと同時に、急に眠りから覚める時のような、激しい倦怠感に襲われた。完全に脱力していたところに、無理矢理にでも動こう、起きようとする場合のように、はっきりと肉体は、元気を取り戻しながらも眠りへの誘惑に負け、そのままでいたい、浸っていたいという抵抗を続けるのだ。

　ほとんどの場合、そのような抵抗は一瞬であり、起きてしまえば身体の方が適応してくれるが、今は、まったく長時間、ゆったりしていたい誘惑が続き、身体ものろのろとしか動いてくれない。無理に動かそうとすれば、それだけいっそう誘惑が強まり、倦怠感と怠惰への誘いが全身を強烈に苛んで、再び僕は、何も考えられなくなって脱力してしまうのだ。

　起きようとして、さらに深い眠りに落ち、しかし目覚ましの電子音が僕をせき立て、さらにどうしても起きようとする。その戦いがしばらく続いた。

　ビクン！

　さっきとは比べものにならないほど、全身が電気に打たれたように跳ね上がり、びりびりとした刺激が一瞬で駆け巡る。

「うあっ！」
一気に目が開く。明るい光に瞬時にして包まれ、僕はまぶしくて目をぎゅっと閉じた。

　やがてゆっくり目を開けると、見慣れた天井が見えた。ここは自分の部屋。用務員室の天井だ。

　ゆっくり音のする方に手を伸ばす。今度は身体がスムーズに動いている。僕はアラームの時計を止めた。

　設定は……していなかったはず。

　そもそも、この時計は僕のではない。一体、誰が、どんな目的で、この時計を置いたのか……全くの謎だった。

　しかし、すでに何度もこの時計に助けられているのもまた、事実だった。本当に抜け出せない大ピンチのさなかに、ピピピッと電子音が鳴り、そこで僕は、魔界に引きずりこまれることなく、現実に戻ることができたのだった。

　今度もそうだ。

　快楽の宴で前後不覚に陥り、休息もかねてだが真っ暗な中で何も起らず意識混濁状態で眠っていたところを、この目覚まし時計に助けられたのだった。

　僕は時計を手に取ってみる。どこからどう見ても、普通の目覚まし時計だ。しかし、目覚ましの時間を設定する針がついていない。……これだと、設定できないんじゃないかな。

　そもそも、どうして僕が魔界や夢の世界へと陥っていきそうになる、その絶妙なタイミングで、この目覚まし時計がどこからともなく現れ、電子音を鳴らして僕を目覚めさせるのだろう。一体誰が、どんな手段で、そんなことができるというのだろうか。

「！」
よく見ると、時計の下側にマークが刻印されていた。このマークは……見覚えがある。えーっと……どこだったかなあ。

　あっ！　思い出した！

　この仕事を始めたばかりの頃によく言っていた、学校付属の定食屋だ。

　その看板に、確か同じマークが入っていたはずだ。

　宴が始まってからというもの、一度も店に行っていない。もしかしたら、そこに何か大きな謎解きの鍵が潜んでいるのではないか。

　幸い、美少女たちは用務員室にやってこない。おそらく監視はされているだろうけれども、目覚めてからセックスの暴虐が降りかかってくることはなかった。

　相変わらず僕は裸での行動を余儀なくされているが、この女の園で、いまさら服を着ることに執着はなかった。そのまま出かけよう。あの定食屋へ。

　言われてみれば、少女たちと堂々と交わるようになってから、食事の管理は彼女たちが行っていて、そこに絶倫の薬が混ぜられていたために、わざわざ定食屋に行く必要がなかったんだ。足が遠のいたのはそのせいでもある。

「ああああ！　そんなっ！」

　女の子たちが部屋に入ってこない理由が、一瞬にして理解できた。

　用務員室のドアを開けた時に、目に飛び込んできたものは、地面に情けなく放置されている、焦げ茶色の物体だった。

　それがなんであるのかはすぐに分かる。僕の顔もまた、同じように憔悴しきってしまっているのだから。

　それは……数学教師のなれの果てだった。

　僕はがっくりと膝をついた。涙さえ出ては来なかった。ただただ、恐怖と絶望の感覚だけが、全身を支配したのだ。

　僕の、せいだ……

　僕が彼に悪魔どものことを教え、秘密を知らせてしまったために、一晩で精魂を絞り尽くされなければならなくなったのである。そして、少女たちのエッチな誘惑と肉体の快楽に抗うことができず、射精をくり返してしまったために、脱出ができず、そのせいで、教師を助けにイクことができず、死なせてしまったのだ。

　僕が絞られ続けている間、この教師はそれを遥かに超える頻度で、悪魔どもと美少女たちの群に射精させられ、一晩で枯渇するほど絞り尽くされてしまったに違いない。

　間に合わなかったんだ。

　しばらく身動きがとれなかった。

　おそらく悪魔どもは、この男を用務員室の前に置いておくことで、彼を助けようとした僕への見せしめにしようとしたのだろう。二度とこのような気をおこさせないよう、わざと死体を放置したんだ。

　恐怖はさらに増していく。今度やったら僕はこうなるという警告だ。しかし、いずれにせよ遅かれ早かれ、結局は枯れ果てて、こうしてどこかにうち捨てられることになるのだろうか。

　恐怖と絶望の次にわいてきたのは、激しい怒りの感情だった。

　逆らえば、すぐにでもこうなってしまう。しかし、たとえ逆らわずに女の子たちと快楽に耽り続けても、いつの日にかは同じ運命だ。

　死がすぐに訪れるか、少し先になるか、その違いでしかない。おそらくは、死んだあとの魂まで抱え込まれ、魔界に送り込まれて、美少女たちの餌食になり続けるに違いない。永遠に……

　だとするなら、どっちみち死ぬしかないんだったら、最後の抵抗をしてやろう。

　定食屋に何か鍵がある筈なんだ。魔族どもの弱点を記した書物か、魔族どもの淫虐を食い止めるアイテムや魔法の類……そういったものが定食屋に隠されていて、あの女将がそれを守っていたと考えれば、つじつまは合う。つまりあの女将は、理事長やマミーとぐるである、ということだ。

　ゆるせない。

　しかしまてよ……だとするなら、僕の部屋に時計を置いたのは、女将ではないということになる。いや、そもそも、女将が時計を置く理由自体がないな。一体、何がどうなっているのだろう。

　女将を探し出して、無理矢理聞き出してみるか。それとも、女将に見つからないように、鍵となるものを探してみるか。堂々と入っていくか忍び込むかの選択だ。

　……僕は結局、堂々と定食屋の正面から乗り込むことにした。監視カメラとは違う方法で、僕の全身、行動は魔族に筒抜けになっているんだ。つまり、女将に見つからないように忍び込んだところで、あっさり捕まって、抵抗した廉で今度こそ地獄行きが確定となる。そう思ったからだった。

　女将は確か３０代の妙齢の女性だ。僕よりもずっと年上でもある。これまで抱いてきた娘たちはうら若き乙女ばかりであるから、熟女の魅力というものには弱いのかも知れない。その色香を駆使して僕を犯し抜く可能性は想定しなければならないだろう。さて、そんな相手に、どう対抗したらいいだろう。

　考えあぐねているうちに、定食屋に着いてしまう。まずは、何も企んでいないふりをして、顔を出してみたという理由で立ち寄ってみることにしよう。店内や厨房の奥を見回しながら、怪しいところを見つけたら、根掘り葉掘り聞いて、敵が馬脚を現したところで一気にたたみかけてやる。

　定食屋に入る。誰もいない。いつもいるはずの女将の姿もない。カウンターは目立つので、奥の座敷に上がって、そこで座りながら、辺りを見回した。畳も壁もテーブルも、特に怪しいところはないな。

「うがあああ！！」
「うわあああ！！」

　ぴしゅっ！

　突然絶叫が聞こえ、それにびっくりしてこっちも叫んでしまう。しかしその直後、腕にちいさな痛みを覚え、突如身動きがとれなくなった。

　現れたのは、３０代とはとても思えない若々しいグラマーな肉体を具えた女将だった。彼女も全裸で、物陰に潜んでいて、僕が油断した隙を狙って、突然襲いかかってきたのだった！

　しまった、と思った時には、もう遅かった。何かの薬を打たれ、ぞわっと全身がしびれたかと思うと、急に身体が動かなくなってしまったのだ。

「ついに捕まえたぞ。このネズミ野郎が。」
「……。」
身体も舌もしびれていて、声は出せても、言葉にすることができなかった。そのうち、声も出せなくなっていくのが分かる。

　身体はしびれているのに、股間だけは健常、いや、異常なまでに興奮してしまっている。壁に背中を預けたまま、足をだらんと投げ出して、ペニスを女将の前に晒した体勢のまま、動くことができない！

「コソコソと嗅ぎ回りおって。お前の子種を奪い、理事長さまに捧げてやる。これで私の株も上がるというもの、ふふふふ……」

　ちくしょう……なんてことだ！　女将に突然襲われ、いきなり捕まって、しびれ薬で抵抗できない状態にして、一方的に抜かれてしまうというのか。しかも、僕が抵抗しているのが分かっているので、今度こそ、絶体絶命のピンチだ。最後の一滴まで抜かれ果て、殺されてしまうかも知れない。

　僕の抵抗も、いきなりだが、ここまでなのか……。最後の賭と思って抵抗してみたら、あっさり打ち砕かれてしまったというのか。ああ……無念だ……

　女将は、いきり立ったペニスを口に含むと、右手で根本付近をぎゅっぎゅっとしごきながら、先っぽと真ん中をフェラチオ攻撃し始めた。

「あああ……」
くぐもった声が出る。

　熟女の手はとても温かく、手入れが行き届いていて、若くみずみずしく、しっとりスベスベなままだった！　若娘はあるがままでツルツルやわらかな手のひらだが、しっかり手入れすれば、３０をすぎた女性の手って、こんなにもしなやかなまま保っていられるんだ。

　しかもその女手は、定食屋を切り盛りしているとは思えないほどの熟練の手さばきで、根元をしごくこなれた手つきだけで、あっさり精を絞られてしまいそうだった。バイブ振動に近い上下運動に、大きなひねりが加わって、外側から密とただ上下にペニスをしごいているように見えながら、一本一本の指がバラバラにくねり、内部では振動も加わって、絶妙なハーモニーで根元を天国に誘っている。

　そして。若娘とは比べものにならないテクニックで、亀頭先端ばかりが執拗に舐めまくられ、尿道口をこじ開けて舌が暴れたかと思うと、次の瞬間には、亀頭は内頬に任せてカリの敏感なところで舌が大きくうねり続ける。

　しっとりやわらかな唇は強く肉棒を締め上げながら、猛スピードで右手の動きに合わせて上下している。強烈な吸引は、ややもするとそのままペニスごとの見込まれてしまうのではないかと思えるくらい強烈だった。

　玉袋の奥に添えられた彼女の左手は、会陰付近を執拗にこねくり回し、玉袋の精液を無理にでも押し出してしまうような動きで、ぐっぐっと刺激してくる。

　あとは無言だった。ぐっぽぐっぽと猛スピードで上下する女将の首。それに合わせて根元をしごく右手。男の脈打ちリズムのぴったり寄り添うような左手中指。これで擬似的に律動させ、本当の射精律動に持ち込もうとする中指だった。

　玉袋の精液はかき混ぜられ、すぐにでも尿道を通って押し出されてしまいそうな勢いだ。そこへ怒濤のフェラと手コキが襲いかかり、一気に絶頂点に追いやってくる。

　これが……大人の、熟練したテクニックなのか。

　どばあっ！　びゅくるるるっ！！！

　大量の精液が女将の口の中で爆発する！　それでも彼女は動きを止めず、それどころかさらに動きを滑らかにリズミカルに、そしてスピードを上げて責め続けた。

　うわあああっ！

　絶頂したばかりなのに、さっきとは比べものにならない多幸感が一気に襲いかかってきた。

　通常、射精直前の強いくすぐったさに我を忘れること１，２秒。そして数秒の射精を経て、あとは萎えるだけなのだ。だが、引き続きのしつこい攻撃によって、僕はさらに高められ、あの直前の快楽を遥かに超えらくすぐったさが、股間から全身へと拡がっていった。

　しかも、出した直後で脈打つことができず、通常の倍の多幸感が、２，３０秒は続いたのである。

　身体が動かないので、どうしようもないが、ただ気持ちよさだけが全身を駆け巡り続けた。その間、声を出すこともできず、力を入れることも身をよじることもできず、射精したくてもなかなか出ずに直前の快楽ばかりに苛まれた。何も考えることができない。

　びゅるるるるるるるるる！！！！！！！！！！

　さっきとは格段に脈打ちのスピードが違う！　声を出せたら絶叫してしまっていただろう。律動する快感がさっきとは比べものにならないほど強く、そのスピードも速かった。

　ちゅぽっ。女将はやっと口を離してくれた。

「どうだい？　夫を何度も昇天させた年増のテクニックも、捨てたもんじゃあないだろ。」
女将は不敵な笑みを浮かべた。
「でも、まだ気絶してもらっちゃ困るよ。もっと搾り取ってやる！」

　女将は僕の上に馬乗りになる。仰向けになることもできず、座位で結合した。

　すでにセックス慣れしているオンナは、若い僕のペニスなど瞬殺できるくらいに良好な具合に熟達していた。少女たちの直情的な締まりとは違って、温かく包み込む母性のような、それでいて快楽のポイントはしっかり押さえた、絶妙な締まり方をしていた。

　二回続けて射精してしまっていたので、すぐに壊れてしまうことはなかったが、それでも、いつ爆発してもおかしくなかった。

　女将は僕に頬ずりし、耳元に息を吹きかけた。そして、僕にしか分からない小声で、囁き始めた。ぎゅっと膣が締まり、そして緩んで、ペニスを天国へと誘い、僕は脱力しながら、熟女の甘い囁きに脳天がしびれた。

「しっかり聞いてよ。」
「！」
女将の口調が変わると、激しい腰の動きがゆったりした動きに変わり、僕はさらに安心感に包まれてしまう。

「いいかい。今夜９時。校舎の裏の草原に来て。そこで……悪魔どもと決着をつけようじゃないか。」
「！？」
「アンタは丸ごと監視されている。でも、周囲だけに聞こえる小さな声までは拾えない。だから、理事長の目を欺くために、しびれ薬を打ってアンタを犯しただけ。あたしは……敵じゃあない。このしびれ薬も、１０分もあれば効果がなくなる。」

　なにを……いって……いる？

「あたしは……この学園の女たちに、夫を殺されたのさ。セックスによって、男を枯れさせ、その精を女たちが吸って、魔王に生け贄を捧げる。全校の妊婦が生け贄となった時、恐ろしいサタンがこの地上に復活してしまう。夫もアンタも、そのための精の提供者にされたんだ。」
「……。」
「だから、身分を偽って、この学園に女将として忍び込んだ。いよいよ……夫の敵を討つ時が来た。アンタも、助かりたければ、今夜草原に来て。用意していた秘策をいよいよ実行に移して、悪魔どもを地獄に送り返してやる！」

女将は大きく腰をグラインドさせた！　そして、ぎゅうっと、若娘に負けない膣圧でペニスを圧迫した。

「～～～ッ！！！」

　びゅくるるる！

　大量の精が、女将の膣にぶちまけられた。

「あははっ！　いいよ！　若いっ！　このまま気絶でもしてしまえ！　あははははっ！」

　僕はだんだん気が遠くなっていった。若いエキスが熟女に奪われ、そのとろけきるような安心感に、眠りにも似たような気絶の仕方をするのだった。

………………

…………

……

「はっ！」

　気がつくと、あたりは真っ暗だった。ここは……用務員室だ。

　女将が運んでくれていたんだ。

　時計を見る。定食屋の時計だ。８時４５分をさしていた。外は暗く、今が夜であることを理解した。

　ちょっと待て。整理しよう。

　定食屋に何かあると思った僕は、女将のところに向かい、あっさりと犯されて気絶した。

　だが一方で、理事長には聞こえない囁きで、僕に大事なことを伝えたのだった。

　かつて女将は、夫を理事長たちに犯し殺された。その報復として、女将として学園に潜入、いよいよ今夜、悪魔どもに一矢報いる時なのだと。そのために、学園の関係者のふりをし続けてきたということ。

　今夜彼女が何をするつもりかは分からない。僕に薬を打って犯したのはカムフラージュのためであり、真実を伝えるのが目的だったようだ。そして、僕と一緒に、悪魔を退治するつもりらしい。

　それなら、僕も同じ気持ちだ。

　あの許せない悪魔どもと、サタン復活という学園の陰謀を、なんとしても打ち砕く必要がある。

　女将が味方だというのも合点がいく。要所要所で、目覚ましを送り込んで、僕を助けてくれていたんだ。今日の逆レイプも、これ以上僕が若娘に精を奪われないよう、何か手を打っていたに違いない。だからこそ、９時前という丁度良いタイミングで、目が覚めることが駅探だ。身体もすこぶる元気だ。

　一時期は疑ってしまって、申し訳ないと思った。

　とにかく、もうすぐ時間だ。僕は急いで、校舎裏の草原へと足を速めた。

　僕の行動は、理事長たちに筒抜けになっている。きっと女将と会うことなど、とっくにばれているに違いない。気を引き締めなければ、失敗すれば命はない。

「……来たね。」

　女将は先に待っていた。今度は服を着ている。

　草原はそよ風に揺られて、軽く頭を振っている。赤い月が煌々と照らしているためか、女将の姿が妙に妖艶に思えた。

　とにかく、ここで悪魔どもを呼び出し、倒してしまわなければ。サタンが復活してしまえば、それこそこの世の終りになってしまうかも知れないんだ。

「夫を殺されてから、あたしはずっと教団のこと、悪魔のこと、魔法のことなどを調べ、必ず弱点があるはずと思って執念深く追いかけてきた。そして、それを見つけたので、学園に潜入した。あとは……”きっかけ”だけがあればいい。ずっとあんたを待っていたんだ。」
「……僕が、きっかけになる？」
「そういうこと。そして、その弱点というのは……これさ。」

　女将は、持参してきた大きな袋から、ちいさな箱を取り出して、僕に見せた。

「短距離空間転移装置。物体を瞬時にしてワープさせる魔法アイテムだよ。」
「あっ……」
「そう。目覚ましを用務員室まで転移させたのは、この装置のおかげってわけ。この原理を使えば、悪魔どもを殺すことはできなくても、魔界に送り返すことができる。魔族には魔の手段を、それしかないね。」

「そうなんだ。」
「！」

　振り返るとそこには、マミーが立っていた。

「用務員さんが怪しいそぶりを見せたから駆けつけてみれば……なるほどね……まぁいいわ。佐倉京子。佐倉満雄の妻であることは、とっくに分かっていた。何を企んでいるかと思っていたけど……用務員さんを襲った時には、改心したのかと思ったけど、それも我々をだますためだったんだね。」
「ああそうさ。今日こそは、満雄の敵を取らせてもらう。」

　女将はマミーに向き合った。マミーは腕を組んでざわざわと髪を逆立てつつも、妖しい笑みを崩さず、魔族らしい不敵な姿勢のままだった。

「そんなチャチな道具で、我々を倒せると思っているのかしら？　本当に……」
「ああ、倒せるとも。この男がいれば、ね。」

　女将は僕を指さした。一体、僕にどんな“きっかけ”が？

「この男の生命エネルギー、これを増幅させれば、お前たちを地獄や魔界に転移させることができる。そうすれば……」
「ふうん。つまり、用務員さんのエネルギーをこっちが奪ってしまえば、その転移はできないってことだね。」
「！！」

　マミーの背後に、複数の人影が現れた。すべて若い女性だ。

　彼女たちは、ぴっちりしたスーツに身を包んだ大人の女性たち、つまり、この学園の警備員たちだ。警備員は、みんな２５，６歳くらいの若い女性ばかりで構成されていた。

「彼女たちは、この学園の卒業生で、特に選りすぐりの女たち。体術も武術も頭脳も、セックスも超一流。だから殺すことなく、この学園に警備員として所属させたの。ふふふ……たまらない色気でしょ。」
「う……」

　警備員さんたちは、昼間と違って、上半身は黒のスーツでピシッとしているが、反面、下半身はパンツも身につけず、オンナも生足も露出させ、何も身につけてはいなかった。

　細く引き締まったふくらはぎが実に大人らしい。膝から上にまっすぐに伸びる太ももは、しっかり女性性を保っており、レディのスタイルを維持している。それでいて、もっとも特徴的なのは、小さくて丸く膨らんだヒップだった。

「みてごらん……この娘を。」

　そんな中に、ひときわ小柄な女性が、白衣を着て現れた。保険医の野口だ。

「彼女は、１０歳の肉体のまま２８歳を迎えている。コドモの肉体としなやかさを具えながら、２８歳の若さと色気、テクニックを兼ね備えている、教団バイオテクノロジーの最高傑作！」

　野口は白衣を着ていたが、白衣の舌は完全に裸だった。ちいさな胸、小柄な肉体、ツルツルのオンナ。それでいて、大人の貫禄と色気だけはしっかり放出しているのだった。その表情はうつろで、昼間のやかましい印象はまったくない。はじめから彼女は、魔族に操られた状態なのだ。

「くすっ……用務員さん。残念だけど、今夜あなたを殺さなければならなくなりました。警備員と保険医の肉体で、ね。せっかく、数学教師の死体を置いて警告したのに、抵抗しようとしたから、これ以上は生かしてはおけない。」
「くっ……」
僕は身構えた。

　こいつらに精を奪われ続ければ、女将の装置は作動しない。気をしっかり持たなければ。

「どお？　この鍛え抜かれたお尻。このお姉さんたちは全員、下半身のどこもかしこもで、男の精を奪い尽くすことができる、特殊な訓練を受けてきた、精のエキスパート。もちろん、上半身も鍛えているけど、下腹部だけで十分。……抜きまくってあげる。」

マミーが手を上げると、警備員たちが一斉に僕に襲いかかってきた。

「抵抗する必要はない。ただ……持たせてくれ。死んではだめだよ。」
女将は装置にスイッチを入れる。

　装置に僕の生命エネルギーを入れるのが先か、それとも精を抜かれて絶命するのが先か。まさに、悪魔どもを倒せるかどうかは、僕に掛かっているんだ。

　ぐちょお……僕は組み伏せられ、警備員のひとりに騎乗位で結合させられた。

「あぎっ！！？」

　女学生の膣とはまったく違っていた！　若さと大人の両方を兼ね備えた名器は、ぎゅんぎゅんとペニスを揉みしだいて、感じやすいところをしっかりと、丁寧に密集した筒で圧迫しまくる！　そのまま彼女は腰を大きくグラインドさせ、徹底的にペニス全体を揉みしだき、こねくり回し、甘い刺激を加えていった。

　これが……熟練した大人の性器か！

　瞬時にして搾り取られてしまいそうだ！

　警備員はさらに、グラインドの動きを続けたまま、小刻みにとんとんと全身を上下させ、ペニス全体を自慢のオンナで素早くしごき上げてきた！　入れて間もないのに、もう精液を奪われてしまいそうだ。

「がんばるんだよ！　抜かれちゃだめだ！」

女将が応援する。

「ふん……用務員を絶命させたら、佐倉、理事長室で折檻の上処刑だ。覚悟するんだね。」
マミーがにやりと笑う。

「～～～！！」
僕は渾身の力で射精を堪えきった。

「へえ。がんばるじゃない。若娘のセックスには慣れていても、熟練した大人の色気には勝てないと思ってい……あ……そういうことね。」

　マミーも僕も理解した。昼間女将が僕を熟練の大人のテクニックで射精させたのは、僕が夜に大人の女を相手にセックスさせられることを予測してのことだったんだ。

　すごすぎるテクニックと、夫で慣れたのか修行したのか、僕などひとたまりもないオンナの魅力で、女将がペニスを慣らしておいてくれたおかげで、僕は瞬殺されずに済んでいた。

　本来なら、学生たちをはるかにしのぐテクニックとオンナの具合を叩き込まれ、鍛え抜かれた肉体と磨き抜かれた肌を持つ衛兵たちが相手だ。

　普段は体術と武術を中心に侵入者を捕らえる仕事をしているが、山奥の宗教施設に来たがる人間はそう多くなく、来たとしても、理事長の判断で泳がせるなどして、彼女たちはほとんど警備員としての仕事をしていない。

　しかし、ひとたび男性相手に衛兵たちが動き出した時には、もはや極上の肉体とセックステクニックで止めどなく射精させ、力尽きたところで仕留めるという、百発百中の警備力を発揮するのだ。

　マミーの指令の下で、彼女たちは僕を取り囲み、一刻も早く、そして一回でも多く精液を抜き取ろうと身体を張り続けている。

　女将による”鍛錬”がなかったらと思うと、本当にゾッとする。

　衛兵たちは本気だ。快楽に負けて射精し続ければ、本当に死ぬまで絞られてしまいかねない。僕はじわじわこみ上げてきて鍛錬を打ち破ろうとする怒濤の快楽に抗いながら、死の恐怖と戦い続けていた。

　お尻の形のきれいなお姉さんたちは、交代で挿入しながらペニスをやわらかくしごき上げ、しっかりとハリのある大人の肉体で僕を責め抜いた。

　騎乗位で挿入する警備員は、これでもかと激しく全身を上下させ、おっぱいを揺らしながらペニスをしごき立てる。

　左右に別のお姉さんがはりつき、右側の警備員が僕の頬を撫でながらディープなキスをお見舞いしてくる。左側からは、僕の乳首をねぶるように舌で舐め上げ、もう片方の乳首を指先でこねくり回してきた。

　そして。僕の足の間に入り込んだお姉さんは、中指と薬指をずぬっとアナルにねじ込んで、前立腺を刺激してくる！

「ううぅ～～ッ！」

　今度は苦しい！　上半身にも下半身にも押し寄せてくる快楽の波が、数人がかりで一気に僕の全身を責め苛む。

　大人のテクニックに耐性を持つことができている僕であっても、この快感には抗いきれない。さっきからじわじわ高められ、かろうじて防御していたのが、一気に防御の壁を打ち破り、精液を絞り出そうとする女たちの動きに翻弄されて、堰を切ったように多幸感がこみ上げてくる！

「んあ！」
どばあっ！　快楽の汁が、激しい脈打ちとともに警備員の膣内にぶちまけられていく。それでも、彼女たちは位置を変えながら、僕の全身と前立腺をいっそう激しく刺激し続けるのだった。

「あははっ！　耐えきれなかったね！　でもこれからもっともっと出してもらうよ！」
マミーが高らかに笑う。僕が枯渇して死ぬのが先か、女将の秘策が先か……もっと我慢しないと。

「ほぉら。警備員のお尻がぷにっぷにだよ！」
２人がかりで、ペニスがお尻の肉に包まれる。そして挟み込むようにして圧迫しつつ息を合わせて臀部の肉を上下させ、ペニスをめり込ませた状態で激しくしごき始めた。

　しっかり成熟した大人ならではの膨らんだお尻が柔らかすぎて心地よい。アナルへの刺激と絶妙に相まって、僕はどんどん高められてしまう。ひねる腰つきが絶妙で、僕はまた、すぐにでも高められてしまいそうだった。

　だが、ここで快感に負けてしまったら、女将も僕も命はないんだ。死の恐怖が後押しして、僕は快感に没頭しそうになる自分をかろうじて律し、理性を保って女体の攻撃に耐え続けた。

「しぶといね……野口！」

　マミーが合図をすると、白衣の下が全裸で、小学生としか思えない２８歳のレディが前に進み出てきた。宗教施設の生体実験によって、子供の身体のまま頭脳だけが大人になった保険医、マッドサイエンティストだ。

　ちくっ

「！！！」

　首に注射を打たれた！

「なに……を……」
マミーらしくない、と思った。淫魔たるもの、セックスで殺すはず。薬物でとどめなんて……そんな……

　どびゅびゅぶっ！！！

「うわああああ！！！」

　そう思った矢先、大量の精液が衛兵たちのお尻の間から勢いよく噴き出していった。

　違う。毒薬で殺す気なんて、悪魔どもにははじめから選択肢になかったんだ。

「どお？　この秘薬は、一定時間、前立腺が痙攣して一定のリズムで脈打ちする効果を持ってるの。射精のときと同じリズムで痙攣するから、イクのと変わらないでしょう？」

　お姉さんたちは身体を離す。代わりに野口が、僕の腰に跨がってきた。

　野口はツルツルのオンナ表面でペニスを挟み込むと、腰を悩ましく前後させて刺激してきた！

「うあっ……！？」

　子供と変わらない身体。それでいて、大人顔負けのテクニックの持ち主だ。オンナ表面がペニスをこすれる度に、精力がぐんぐん目減りするのが自分でも分かる。

　そして、お尻の奥がたえずビクンビクンと律動しているので、それが射精時の脈打ちとまったく同じなので、受けた快楽がいつ射精に変換されてもおかしくない情勢だ。

　こんなのずるい……と思いながらも、野口がひとコスリする度に気持ちよさが増していき、そこに心地よいリズムの脈打ちが相乗して、直前の多幸感に変わってしまう。

　もはやイッているのか、薬による強制律動なのか、判別がつかない。ただ、止めどなくあふれてくる、作りたての精液ばかりが、野口の股の間からぴゅっぴゅっと溢れ落ち続けるばかりだった。

　やがて野口は、ペニス先端を表面に突き立てると、ぐっと腰を落として、ペニスを膣内に完全に収めてしまった！

「うあああ！　きついいい！！」

　大人の女でもない、女学生の若い膣でもない器官が、一気にペニスを責め立てた！

　あまりにも小さく、キツキツで、それでいて大人のペニスを根元まで飲み込んでしまう、改造されたオンナ。野口のそれは、子供の形状をしているが、内部は完全に悪魔そのものであった。

　勝手に蠕動してペニスを揉み立てながら、野口自身の飛び跳ねるような騎乗位が、これまでにない快楽を生み出してしまっている。薬の効果で勝手に律動し、それが社製の脈打ちだと身体が勘違いして、どばどばと精液が吹き出てしまっている。

　……このまま、殺す気だ。

　戦慄を覚えたが、この怒濤の快感を、僕はどうすることもできなかった。

「……そこまでだ！」
女将が大声を張り上げる。バッグから取り出し、準備の整った“装置”がそこに在った。

「……何をする気かしら？」
マミーが手で合図をすると、衛兵たちが女将を取り囲む。１，２秒もあれば、彼女の動きを封じて取り押さえることなど、造作もない立ち位置と動きだった。

　マミーが女将に手を出さなかったのは、僕を殺してから取り押さえ、捕まえて、おそらく理事長の前で拷問死させる気だったからなのだろう。そして、おかしな動きを女将が取れば、即座に衛兵たちが彼女を取り押さえる算段ができていたからなのだ。

　しかし、女将の方も、自分が取り押さえられる前に、この悪魔どもを倒す秘策を打っているに違いない。僕はそれを信じ、賭けたのだ。

「残念ながら、人間が悪魔を殺すことはできない。夫を女学生たちに殺された恨みは、直接果たすことはできない。……でも、魔界に強制送還することは、できるんだ。」
「なんだと……」
「……これに見覚えはある？」

　女将が取り出したのは、ちいさな炊飯器に御札がついた代物だった。

「でっ……電子ジャー！！！」

　マミーが青ざめる。

「そう……文献を調べて、悪魔を魔界に送る方法が書かれていたのを見つけ、苦労して手に入れたアイテムさ。現代は便利で、スイッチ一つで魔力ともども発動させることができる。しかも、使用によって命が尽きることもない。……魔●波だ！」

　女将が手元のリモコンスイッチを押すと、警備員が彼女に飛び掛かる前に魔法が発動した！　その渦を巻く強風は、まず衛兵たちを蹴散らし、周囲に倒れさせる。魔力のない者は弾く構造のようだ。

「ぐああああ！！」
マミーが渦の中に巻き込まれる！　その渦は竜の形を取って、すぐに炊飯器の中に押し込まれていく！
「ああああ！　お母様ッ！！！」
断末魔の叫びもむなしく、マミーは炊飯器の奥に拡がっている深淵の闇、魔界へと封じられていった。

　僕が時間を稼いでいる間、女将は炊飯器のスイッチを入れ、機械仕掛けの魔法発動の準備をしていたのだ。詠唱も魔力もなしに発動できるよう、事前に入念な作業をしておいて、いざ使用する際には２０分程度あれば良かったのだ。

「……これで、一人目。」
女将が僕の方を見る。
「すごい……」
「まだ終わりじゃない。あたしはもう１人を片付けてから脱出するから、アンタは先に……ぐっ！」

　僕の目の前で先行がレーザーのように突き抜ける！　青白い光の線は、性格に女将の胸板を打ち貫いた！

「ああっ！」
僕と同時に声を上げたのは、理事長だった。女将は声もなく倒れる。

「女将さん！」
僕は思わず女将の方に走り寄った。

「ぎゃあああ！　マミーーーーー！！」
理事長は炊飯器の方に走り寄る。自分の魔力で呼び戻そうと試みたようだが、すべては無だ。もはや魔界と現世との連絡路は立たれたあとだった。

「逃げ……ろ……」
女将は僕を見上げた。
「でも……」
「いや……逃げられはしないか……それなら……」

　彼女は胸元から大きなペンダントを取り出し、僕に握らせた。ふたを取ると、純銀のナイフが出てきた。

「それは……理事長を倒す最後の切り札になる。それを使って」
「どう使うんですか！？」
「ないふを……」

　女将はそこで事切れてしまった。

　なんということだ……

「なんということだ……」
理事長も同じ台詞を吐いた。

「お前たちは……ずいぶんなマネをしてくれた。」
すっと立ち上がった理事長から、青白いオーラが充満する。その目はいかりと憎しみに満ちあふれて僕を見据えていた。

「くっ……」

　僕は身構えた。女将の死を悲しんでいる暇はなさそうだ。さっきのレーザーのようなもので、今度は僕が殺される。あの銀のナイフで反射でもさせようというのか。……そんなのムリだ！

「ふふ……ふふふふ……よくも……マミーを……魔界に戻されたら、１０００年は戻ってこられないというのに……おのれ……」

　理事長は怒りに震えている。絶体絶命だ。

「ふふ……そう……恐怖に絶望するがいい……お前は……絶対に殺す……」
「うああ……」
僕は恐怖に後ずさる。

「いいだろう……逃げても無駄と完全に分からせてから、淫魔らしい絶望的な仕方で殺してやる。逃げてみろ。逃げてみろおおお！！！」
「ひいい！」

　僕は訳が分からなくなって、一目散に逃げ始めた。

　だが、もはや理事長のいいなりに洗脳されきっている衛兵警備員たちが、僕の行く手を阻んでくる。

「うわああ！」
僕は方向転換し、さらに別の方向に逃げる。しかし、行く先行く先、突然のように衛兵が現れ、僕を捕まえようとしてくる。彼女たちに捕まれば最後、また快楽地獄に突き落とされ、今度こそ、射精しっぱなしになって殺されてしまうだろう。

　下半身裸のお姉さんたちは、機敏な動きで僕の前方に突然現れ、僕を捕まえようとしたり、ペニスに手を伸ばしてきたりする。

　そのつど僕は、右に曲がり、左に曲がり、衛兵たちを避けて走り続けるのだった。

　幸いなことに、僕はまだ捕まることなく、走り続けることができた。後ろを追いかけてくる大勢の警備員たち。僕は彼女たちに追いつかれまいと、必死で全力疾走し、近くにある建物の中に飛び込んだ。よし、ここで鍵をかけ、突破口を見いだせば……

「ぜえっ、ぜえっ、ぜえっ……あぐっ！？」

　だが、そこに待ち構えていたのは、どこから先回りしていたのか、すでに裸になっている理事長と、全裸の大勢の美少女たちだった。

「ふふ……ようこそ、女の園へ……」
「うぐあ……そんな」
「バカな男……ここがどこだか分かるかしら？」

　体育館……ではない。入ったことのない建物だった。非常に広い空間で、体育館にとてもよく似ているが、下が赤い絨毯敷きになっていて、広大な場所であるにもかかわらず、どこかまがまがしい気に満ちた空間だった。

「まさか……ここは……」

　戦慄が走る。見覚えがあった。いや……見覚えがありすぎた。絶対に入ってはならない場所に、僕は入り込んでしまったのだ。

　玉座とおぼしき場所に、黒い銅像が飾られている。これは、ビデオで見た悪魔像！

「そう……あなたはまんまと、礼拝堂に入ってきたのです。」

　なんということだ。礼拝堂は、悪魔の本拠地ではないか！

「衛兵たちを操り、あなたをこの場所に来るよう誘導していたことにも気づかないなんて。本当に愚かな種馬ですこと。」

　理事長は落ち着いた口調でにやりと笑った。だが、その雰囲気からは、怒りと憎悪のすべてがにじみ出ていた。

　僕は衛兵たちに追い回され、逃げ続けているようでいて、実際には礼拝堂に来るように操作されていたんだ。彼女たちは、僕を捕まえようとすればたやすく捕まえることができたが、わざと捕まえずに、いつの間にか礼拝堂にたどり着くよう、先回りをしていたんだ。

　理事長のいうとおりだった。僕は愚かだ。

　ここに来てしまったということは、もはや絶体絶命であることを意味する。まがまがしい気に閉ざされ、出口はもはやなくなってしまっている。抜け出すことは不可能だった。気づいていれば……対策が打てたはずだが、足を踏み入れた時点で、僕の負けだ。

　この場所は理事長の魔力が最大化され、女学生たちの淫靡な能力もマックスになる。あの数学教師は、この場所で絞り殺され、枯れ果てたミイラにされたのだ。僕が……今度はそうなる番だった。

「……見てごらん。」
理事長が合図をすると、ひとりの女学生が前に進み出た。彼女は魔方陣の真ん中に全裸で立っている。表情はうつろなままで、何も考えていないようだ。
「この子は、数学教師の子を身ごもった学生。種馬の精を吸い取った、サタン様復活の大切な生け贄。」
少女は、まったく無表情のまま、ナイフを取り出し、自分の手首をためらいもなく切り裂いた。ついで首筋にナイフを当てると、やはりひと思いに自分の首を切り裂いた！

「ひい！」
鮮血がほとばしる！

　そんな……精を吸った少女、妊娠した少女が、まったく躊躇せずに自分から死を選ぶなんて！　そもそも自分を傷つける時には、ためらい傷といって、思いきって切り裂けないために、何度も刃を当てるものなのに。少女は一声も発することなく、その場に崩れ落ちた。

　すると、床が青く光り、少女の身体はズブズブと魔方陣の中に吸い込まれていく。あっという間に彼女の身体は、跡形もなく消えていった。

「こうして……全校生徒の血を生け贄に捧げ、すべての妊婦をサタン様に提供した暁には、サタン様が復活！　……これでこの世界は、我ら悪魔、サタン様のもの！」
「く……狂ってやがる……」

　だが、ただのカルト的な狂信儀式とはわけが違うのは、一目で分かった。実際に彼女の身体は、魔界に吸い込まれて消滅してしまっているし、そのあとにこの礼拝堂に満ちる邪悪な気がさらに濃くなっているのを、肌で感じたからだ。ぞわっと悪寒が走る。

「さあ、……ここにいる女たちで残りはすべて。彼女たち全員を着床させれば、サタン様は復活する。そうしたら……お前はサタン様の手で始めに殺されるのだ。ふふ……ふふふ……」
理事長が僕に向き直る。まずい……なんとかしなければ！

　女学生たちは完全に意志を失っているようだ。さっきの野口と同じ表情だ。理事長に操られているのか？

　いや……もしかしたら、本来彼女たちはすでに、自分の意識や意志というものを失ってしまっているのかも知れない。昼間は、あたかも意志を持って行動しているように振る舞っていて、本当の姿は、この動く人形のような、不気味な無表情なだけかも知れない。そんな気さえしてくるほど、彼女たちはゾッとするほど感情を持っていなかった。

「さあ……死ぬ前に、天国を見せてあげる。この私が、直々に搾り取ってあげる。淫魔の膣は、魔性そのもの……もはや成功のことしか考えられなくなり、理性も意志も完全に失うのだ。人形にしてあげる……そのあと、彼女たちと交わって、天国のうちにサタン様の復活を見よ。そして、サタン様の手で、……死ね。」

　マミーを封じられた怒りで、理事長も平常心を忘れているようだ。全裸のまま、じりじりと僕に迫ってくる。なんて美しい身体なんだ。背が高く、スレンダーでいて、おっぱいなどの出るところはしっかり出きっている。それで、オンナはこれまでに味わったこともないほどだとされる。夢で見たモンスターどもをはるかにしのぐ快楽を、彼女の膣は誇っているに違いない。ハメ込まれたが最後、理性が飛び、何もかも忘れ去って、ただ射精の快感だけに我を忘れる廃人となることは必至である。

　逃れなければ。脱出しなければ。

　だが、出口は不思議な力でかき消えていて、はめ込み式の窓からも出られない。通風口はたくさんあるようだが、人間が通れる大きさではない。礼拝堂を逃げ回ろうとしても、大勢の女学生たちに取り巻かれてしまっているので、今度はすぐに捕まってしまうだろう。

　捕まればもはや、女学生たちの集団逆レイプにあって、最後の一滴まで絞り尽くされてしまうはずだ。このまがまがしい空間では、一度性交におよべば、もはや身体の自由も利かないはず。促されるままに挿入し続け、果て続け、枯渇することなく精液を奪われ続けることになる。

　サタン復活まで、一時間もかからないはずだ。

　サタンがどんなものなのかは、分からない。魔界のゲートをくぐり抜けるために、これほど大がかりな人命を犠牲にしているんだ。それほどまでしなければ復活できないほどの大物となれば、その実力は理事長をはるかにしのぐことになる。

　僕なんて瞬殺するに決まっている。そしてそのあとは、淫靡な呪いで魔界に引きずりこまれ、魂が永遠に淫魔の呪縛から逃れられなくなって、何億年も射精し続けることになるんだ。

　そんなの……いやだ！

　だが、目の前には理事長、背後には大勢の女学生たち。若い女性の甘い香りが部屋中に充満している。本当に、もはやこれまでなのか……

「はっ！　これだ！」

　女将から最後に渡された、銀のナイフ！

　これが、最後の解決手段になる。死ぬ間際、彼女は僕に使い方を教えようとしたが、それを伝える前に、女将は事切れてしまったのだった。

　僕は銀のナイフを取り出す。これを正しく使えば、サタン復活を防ぎ、理事長らを封じることもできる筈なんだ。僕も解放され、この邪悪な悪魔集団も根こそぎ、壊滅させることができる。

　だが……使い方を誤れば、ナイフは効果を発揮せず、僕はセックス地獄に陥ってしまうことになるだろう。

　いったい……どうするのが正しい使い方なんだ？

「それで、どうするつもりかしらね？」
理事長は僕の間近まで迫ってきた。捕まる前に後ろに飛び退き、難を逃れたが、そうすると女学生のおっぱいがポヨンと、僕の背中に当たるのだ。

　賭けるしかない。

　ナイフである以上、武器になる。銀でできているようだが、ちゃんとした刃物として使えそうだ。切ろうと思えば何かをきったり刺したりができる。その上、神聖な気のようなものが込められているに違いない。正しく使えば、一気に形勢を逆転できる！

　思いつくのは……３つしかない。

①理事長を攻撃

 ②サタン像を攻撃

 ③自殺

　どれが正解だ？

　

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