劇場版フザケンジャー! 恐怖のイマドキスクール!! ~その5~


 話は、イマドキスクールがヘルサ軍に襲撃された数時間前にさかのぼる・・・。



並木「長官、緊急入電です。イマドキスクールという施設に、メカニック怪人が出現。女子生徒たちを天国軍団に加え、男子生徒が次々と犠牲になっている、との事です!」

僕「メカニック怪人!?ついに、ヘルサの軍団が動き出したか」

 クラムボム公園の地下施設で並木さんの報告を聞き、僕、神谷達郎は戦慄した。新世界創造を企むカリギューラとヘルサが、天国軍団を組織してまたもや民間人を襲い始めたのだ。平和を守るフザケンジャーレッドとして、奴らの悪事を放ってはおけない!

 が、僕がフザケンスーツに蒸着し、いざ出撃!と踏み切ろうとしたところで

佐伯「待て。その報告は、どうも臭わないか?連絡をよこしてきたのは、どこのどいつだ?なぜそいつは、ウチの連絡先を知っているんだ」

 いかにも怪しんだ様子で、佐伯長官が意見をする。

 確かに、ここの秘密基地は、誰かに連絡をよこしてもらわずとも、高性能のレーダーで自動的に天国軍団やメカニック怪人の居所をキャッチできる。こういうところにすぐ気づくなんて、長官はさすがだな。

並木「えっと、連絡の相手は佐久葉素乃子という女性の塾長です」

ポッティ「佐久葉?はて、どこかで聞き覚えが・・・」

 うーむ、と、テルテル坊主が険しい顔で頭を何度もひねる。見た目はテルテル坊主だけど、この方は天界のとても偉い神様なのだ。

僕「イマドキスクールというのは、一体どういう所なんです?」

並木「ちょっと待って・・・」慣れた手つきで、並木さんはパソコンの画面を操作する。「うわ・・・」途端に、彼女の端正な顔立ちに険しいしわが寄った。

並木「何よこれ。表向きは単なる学習塾みたいなところだけど、正式な教育法人もクソもあったものじゃないわ。小学生の女の子に、ファッションだのヘアメイクだの、ロクでもない授業ばっかり教えているの!」

僕「どちらかというと、タレントの養成所みたいなところですかね」

並木「半分は当たっているんじゃないかしら。最近流行りの、JS(女子小学生)カリスマモデルの総本山みたいな場所ね。でも、最近では男子生徒の募集も請け負っているみたい。こちらは主に中学~高校程度の子たちが集められているんだけど・・・」

佐伯「ふうむ、やはりくさいな」

 アゴに手を当ててまま、長官はつぶやく。

佐伯「男は中学生、女は小学生。どちらとも二次性徴に差し掛かる年頃だ。これは俺の推論だが、もし俺がヘルサないしカリギューラの立場なら、イマドキスクールほど、天国軍団とその生贄の調達に格好な場所はないと考えるだろう」

僕「つまり、初めから天国軍団を組織するための施設、であると?」

ポッティ「うむ。佐伯君の推理は当たっておるかも知れぬ」

 ここで、考え事をしたままだったポッティがようやく口を開いた。

ポッティ「佐久葉という名前について、ようやく思い出した。みんな、よく聞け。その女は人間ではない。本当の名はメアリィ。低級淫魔の生まれでありながら、サキュバスの女王にまで上り詰めた者じゃ」

僕「女王!?まさか、ヘルサやカリギューラの他にも、そんな大物がいたなんて・・・」

ポッティ「いや、メアリィ自身の力は、そやつらに比べればそれほど大したものではない。じゃが、弱肉強食の魔界にあって、貴族や女王たちと肩を並べるまでに至った、並外れた狡猾さと執念深さを決して侮ってはならぬ。

 奴は地上に進出した際、スクヴス救済教なる組織を作り上げ、社会の裏で常に暗躍してきた。考えても見よ。それまでいいなずけやお見合い結婚が主流だった日本で、高度成長期と共に、なぜこうも性教育の研究が加速し、フリーセックスの概念が浸透したのか。既に日本国内の主立った企業やマスメディア関係などは、裏で奴らの傘下にあると言っても過言ではない。

 スクヴス救済教は、表向きキリスト教法人の体裁を呈してはいるが、とんでもない。中身は淫蕩と自堕落に満ちたセックス集団じゃ。教団に入信した者は全財産を没収された上、死ぬまで快楽漬けにされる。教団の養成所では、信徒たちのあまりの放蕩ぶりに、1km先からでも精液の嫌な臭いが充満しているという」

 ポッティの話に、僕は背筋を凍らせた。そんな所に興味本位で入ったが最後、人間としての自由も尊厳も価値観さえも奪われ、教祖佐久葉の人形として一生を過ごす運命が待っているのだ。

ポッティ「ともかく、イマドキスクールというのは佐久葉が独自に用意した、天国軍団の養成所と見て間違いなかろう。女子生徒の訓練が一通り行き届いたところで、今度は男の生贄を集め始めたのじゃろう」

佐伯「それで、男女ごと異なる年齢層にターゲットを絞った理由に合点がいったぜ。淫魔側にしてみれば、人間というのは男女とも、年齢が若いほど洗脳しやすいし、同時に精力値も高い。ときに神谷。お前さんも精通を迎えた時は、普段のオナニーと比べてずい分快感の格が違っただろう?」

僕「確かに。思春期に初めて射精した時は『こんなに気持ちいいものがこの世にあるのか』っていう、不思議な気分でした。オナニーでは既にイク時の快感を知っているので、そこまでの感動はありませんでしたね」

佐伯「俺だってそうだ。性に目覚めたての少年が射精時に得られる快感というのは、大人のそれとは段違いに強い。お前さんの言う『感動』が大きすぎるからだ。当然、魔族に提供されるエネルギーは、例えどんなザコでも通常の数百人分はある。つまり、俺や神谷ほどの逸材ではないが、そこらのスケベオヤジよりは格段にエネルギーが高い。いわゆる中間層という奴だ。

 神谷、どう考えてもこいつは罠だぞ。イマドキスクールにいる女は全員、佐久葉があらかじめ天国軍団として用意した連中だ。もしかしたら、ヘルサやカリギューラともグルかも知れない」

並木「でも、どうして今になって救援要請などよこしてきたのかしら。佐久葉にしてみれば、自分たちのアジトを知らせるなんて都合が悪いはずよ」

ポッティ「ふうむ。そこは、魔族たちもお互いに一枚岩ではないという事じゃろう。確かに、イマドキスクールは天国軍団の養成所にうってつけかも知れん。しかし、それがヘルサ、もしくはカリギューラの目の届かないところで行われたものだとしたら、彼女たちはいい顔をするものじゃろうか?特にヘルサなどは、せっかくの中間層をメアリィごとき下っ端上がりにネコババされたとあっては、魔王としてのプライドが許すまい」

佐伯「だとしたら、奴らが内輪揉めを起こしている今だからこそ、連中を一網打尽にする絶好のチャンスとも言えるな。・・・そうか。佐久葉という女はそれを見計らって、わざわざこんな大がかりなエサを用意してきたのか」

僕「でも、罠だとしても僕たちには関係ありません。イマドキスクールの塾長は魔族の女でも、生徒として集められたのは、みんな普通の子供たちです。彼らを快楽の苦しみから救ってやる事こそ、僕たちフザケンジャーの使命であり、カリギューラの新世界を打ち砕くための、一番の近道でもあるはずです」

佐伯「ほう、言うようになったな小僧。だが、こいつは危険な賭けだ。一歩間違えば、お前のフザケンジャーとしての存亡の危機に関わるかも知れんぞ?」

僕「それでも、僕は戦います。生きる目標や希望さえなかった僕が、自分の存在意義を見い出せるようになったのも、成り行きとはいえフザケンジャーレッドに選ばれたおかげなんです。自分がこの世に必要とされていると分かっただけでも、僕は自分の運命に全力を捧げられます!」

 僕は自らの決意を表明し、フザケンジャーレッドに変身した。

 そして、秘密基地に用意された転送装置に足を踏み入れた。相手が誰であろうと関係ない。天国軍団や生贄にされた人々をフザケンジャーの力で救い、必ずや悪魔共の野望を打ち砕いてみせるぞ!

ポッティ「・・・行ってしまったか。男子三日会わざれば何とやら。神谷くんもあれからずい分とたくましくなったものじゃ。佐伯くん。まるで、かつてのキミと同じように」

佐伯「バカ言え。俺に言わせれば、奴はまだまだひよっこさ。それに、魔界の貴族や王族共にひと泡吹かせようって言うんだ。俺と同じ程度では困る。フザケンジャーの力がなくとも、いずれは俺さえも超えられるようでなくては」

並木「けど、今回の敵はあのスクヴス救済教も関わっていると言うのでしょう?神谷くん一人で大丈夫かしら」

ポッティ「うむ。スクヴス救済教で厄介なのは、教祖のメアリィひとりではない。奴の傍らには、裏で大企業を牛耳る強力な幹部が何人も控えておる。とりわけ厄介なのが、奴自身の子供達でもある双子の兄妹。あの二人はいずれとも強大な魔力の持ち主であると同時に、教祖メアリィのためならば死をもいとわぬ。ドドリアさんとザーボンさんみたいなものじゃな」

佐伯「ボウイやフローリアと同格の強者が二人、か。フザケンスーツの力がある限り、メカニック怪人や天国軍団ならあいつ一人で問題ないだろう。が、ポッティの言う二人の内のどちらか、あるいは、佐久葉本人が待ち構えているとしたら・・・。

 どうやら、今回ばかりはこの俺も動かざるを得ないかも知れんな」





僕「ここがイマドキスクールか・・・」

 目の前の高層ビルを見上げ、僕はつぶやいた。スクヴス救済教というのは、僕たちが思っている以上にスケールの大きい組織なのかもしれない。気を引き締めてかからないとな。

 対天国軍団用のフザケンブレードを構え、僕はイマドキスクールの入り口をくぐろうとした。

???『気をつけろ。その先にはタイムフラワーがセットされている』

僕「誰だっ!?」

 聞き覚えのない声が、突然、僕の通信スピーカーに話しかけてきた。

 フザケンジャーの仲間たちではないようだが・・・。

???『既にイマドキスクールの施設は、ヘルサ空間と一体化しつつある。だから、タイムフラワーのような精神世界の産物も施設内であれば生成できるのだ。

 今回地上に送られてきたのはパンチラ怪人おいろけん。今のキミでも十分に勝てる相手だが、厄介な特殊能力を持っているぞ』

僕「そんな事を聞いているんじゃない!あんた一体何者なんだ!?」

???『キミのファンだよ』

 それだけ言うと、謎の声は勝手に通信を切ってしまった。ったく、微妙に古いネタを使いやがって。余計ワケワカランじゃねえか。

並木『神谷くん。一体、誰と話していたの?』今度はフザケンジャー本部からだった。

僕「分かりません。ただ、自分のファンだと・・・」

佐伯『驚いたな。全身赤タイツの早漏タイキックオタクに、まさかファンがいたなんて。日本はどうなっちまうんだ』

 うるせえな!大体このフザケンスーツや卑猥な武器の数々はあんたらが作ったんじゃねえかよ!

僕「で、そのファンが言うには、イマドキスクールはヘルサ空間と一体化しつつあるから気をつけろ、と。あと、怪人の名前についても教えてくれました」

ポッティ『ふむ。通信相手の素性はともかく、イマドキスクールにヘルサの魔力が満ちておるのは事実のようじゃ。フザケンスーツを蒸着しているキミはともかく、普通の男が中に入れば、性欲が異常に増大し、ひっきりなしに何度も射精できるようになってしまう。タイムフラワーまで設置されているとなれば、なおさら厄介じゃ』

佐伯『施設内では、常にフザケンスコープによる監視を怠るな。怪人を見つける前に罠に引っかかっているようでは洒落にならんぞ』

僕「了解!」

 建物の自動ドアをくぐると、早速タイムフラワーの存在をスコープがキャッチしてくれた。入り口の絨毯に1つ、周囲の壁に3つほど。気をつけないと。この怪しげな花に吸い付かれると、それだけで精巣がパンク寸前まで膨張してしまう。

 早速、花びらが磁石のように飛びかかってくるが、先んじてフザケンビームで応戦してやったため、こちらに被害はなかった。皮肉にも、謎の通信に感謝しなければならないな。奴の言うには、怪人の名はパンチラ怪人おいろけんと言う。きっと、天国軍団のコスチュームみたいな、特殊な下着を身に着けているのだろう。多分、最初に戦ったスマタ怪人ふとももんの亜種みたいな奴かも知れない。となると、おっぱいよりも下半身の動きに要注意だな。

 イマドキスクールの内部は真新しく、清潔感漂う造りになっていた。今いるのは受付のフロアだが、まるで一流企業のオフィスのような豪華さだ。相当儲かっているみたいだな。

 僕はとりあえず、手当たり次第周りの教室を探ってみる事にした。すると目論み通り、ケバケバしい格好をした、10代後半くらいの若娘たちが集団で待ち構えていた。みんな、全身から微量の淫気を漂わせている事から、天国軍団化している事がすぐに分かった。

僕「おい、お前ら。スクールの生徒たちをどこへやった!?」

「え、生徒って・・・」

 僕の問いかけに、天国軍団は思わずたじろぐ。ちょっと大声で怒鳴り過ぎたかな?

 彼女たちはしばらくヒソヒソと耳打ちし合っていたが、やがて一人が前に出て

「それ、私たちの事なんだけど」

僕「ええっ!?」

 僕は驚きのあまり、笑う犬時代のビビる大木みたいな垂直跳びのリアクションをしてしまった。だってこいつら、どう見ても女子高生か女子大生くらいに体格が大きいぞ?もし自分が彼女たちと同い年だったら、間違いなく背比べ負けてるよな。

「ちょっ、失礼ね!私たち全員、こう見えても小学6年生なのよ!」

僕「んなアホな。ぬ~べ~やたるルートじゃないんだから、そんな発育のいい小学生が大勢いるわきゃないだろうが!」

「そんなの、最近の男子がガキ過ぎるだけでしょ!」

 そうだそうだ、クリームソーダ(古いよ)!と、周りの女子小学生(自称)から非難の声が殺到した。やっぱりこの年頃の女の子って、言っちゃ悪いけどクソ生意気だな。男が中二病なら女は小6病だから無理もないが。

ポッティ『レッドよ、どうやら彼女たちは本物の小学6年生のようじゃ。恐らく、スクヴス救済教の特殊技術で、どんなイモ娘もたちまちナイスバディ小学生に変えられたのじゃろう』

佐伯『小学生の若々しさと、大学生の成熟さを両方兼ね備えた女か。レッド、こいつらは通常の天国軍団とはわけが違うぞ。訓練のイメージを忘れるな!』

 隊長に言われるまでもなく、僕はその場で万全の戦闘態勢を整えていた。「ところであんた、例のフザケンジャーって奴よね」「こいつを射精させてイマドキ女子を目指すのよ!」ナイスバディの女子小学生軍団も、こちらの素性に気づいた途端、態度を豹変させ次々と飛びかかってきた。

僕「ならば、フザケンビーム・コンフューズ!!」

 僕は一歩下がって、フザケンブレードをフリスビーのようにねじって投げた。すかさず、もう一方の手からビームを発射。

 バチバチっ!ビームの粒子は回転する刃に弾かれ、四方八方に飛び散った。「きゃああぁっ!」天国軍団は、拡散したビームをまともに受け、あっという間に絶頂を迎えてしまった。まずはこれで一勝。

佐伯『うまいぞレッド。まさか、剣を起爆剤に利用するとはな』

僕「こんなもの、格闘ボタンとブーストボタンを同時押しにするだけで簡単に出せますよ」

並木『ゲーム脳も大概にね。さあ、天国軍団はまだまだ残っているわよ!』

 僕は教室を出て、残る天国軍団の足取りを追った。

 しばらくは、教室や廊下、階段などで天国軍団にフザケンブレードやビームを当て、被害に遭った男子生徒にもビームを当てて記憶を消す、という作業が続いた。大体、女子生徒5人と女教師1人の構成で、逃げまとう男子生徒に襲い掛かる、という場面に出くわす事が多かった。

 天国軍団は小学生とは思えないナイスバディで身体能力も高かったが、きちんと距離を取って応戦すれば勝てない相手ではなかった。セックスに関する知識だけは、子供と同レベルと言った感じだ。

 プールエリアに行くと、スクール水着や競泳水着の天国軍団が待ち構え、僕を水中に引き込もうとしてきた。だが、フザケンスーツが水中でも呼吸可能なところを逆手にとって、彼女たちのピチピチの肌や生足にはできるだけ触れずに絶頂させる事ができた。窒息させちゃまずいので、イかせた後は水槽からきちんと引き上げておいた。

 他にはカラオケエリアというのがあって、ここでは欧米風のエロティックな音楽に合わせて生徒たちが襲い掛かってきた。彼女たちの手に握られるマイクはバイブ付きだ。僕は妖艶な音楽に惑わされぬようスーツの耳栓機能をフルに使った上で、バイブ付きマイクを逆に彼女たちのオンナに突っ込んでやった。

 一階の廊下をしばらく進むと、広々とした体育館エリアがあった。ここが一番、建物の荒れようがひどく、大きめの機材が横倒しになったり、窓ガラスが割れたりしていた。極めつけに、入り口付近に新鮮な血痕が残っているのが生々しくて気色悪かった。

???『そこが怪人の出没した場所だ』

 再び、例のファンからの通信が送られてきた。

僕「またあんたか」

???『床にいくつか血痕が残っているだろう?それはサキュバスの血だ。生徒たちの中には何人かサキュバスが含まれていた。メカニック怪人は人間の男から精を奪い、人間の女を魔力によって操る。サキュバスにはどちらの能力も通用しないため、肉体ごと捕食するのだ』

僕「という事は、床の血痕を辿れば怪人の手掛かりがつかめる、というわけか」

???『いい判断力だ。今の勘の鋭さを大事にしたまえ。だが試練の道は容易ではない。そこでも怪人に操られた女子生徒たちが待ち構えているぞ』

 謎の通信の言う通り、体育館中には大勢の天国軍団がひしめいていた。僕は逃げ道もふさがれ、あっという間に取り囲まれてしまった。

 彼女たちは今までの天国軍団と違って、ピンクを基調としたフリルつきのかわいらしい上着と、膝上ギリギリまでむき出しのフリフリのミニスカートといういでたちだった。テレビのアイドルなんかが、よくコンサートの時に身に着ける衣装とよく似ていた。

佐伯『気をつけろレッド。そいつらの格好、もしかしたら天国軍団のコスチュームかも知れん。無理に突出せず、確固撃破で仕留めていけ!』

僕「了解です!」

 佐伯長官の忠告に従って、僕は天国軍団からいったん距離を取った。「待て待てー!」「私たちと一緒に遊ぼうよー」案の定、天国軍団が追いかけてくる。狙い通りだ。

僕「かかったな。今だ、フザケンマイン!!」

ボゥン!!

 爆音とともに、床上から激しい爆風が噴き上がる。先頭を走っていた天国軍団は、今の爆発で一人残らず絶頂を迎えてしまったようだった。フザケンマインは設置型地雷で、爆発すれば対女性用の強力な快感ガスを発生させる。ビームやブレードなどのスタンダードな武装に加え、こうしたトラップ型の武器も兼ね備えてこそ、フザケンジャーは攻守に渡って柔軟な戦い方ができるというわけだ。

「いやぁん。ホコリがついちゃった~」

 残った天国軍団たちは、スカートの裾を持ち上げ、バタバタと体中にまとわりついたホコリを払っていた。おかげで、ミニスカートに隠れていた女の子のパンツが一人残らず僕の視界に晒された。

「ぶうっ・・・!」

 いかん、思わぬハプニングについ鼻血が出てしまった。

佐伯『何やってんだレッド!ちょっとパンツが見えたぐらいで鼻血ブーしやがって。それでもフザケンジャーか!』

僕「す、すみません。彼女たちのパンチラがあまりに刺激的だったもんで、つい・・・」

佐伯『バカ野郎、パンツなんてたかが布だぞ!気をしっかり持て!』

 長官に叱咤され、僕は改めて戦闘態勢を取った。そうだ、パンツなんてただの布だ。これくらいの光景はフザケンジャー本部の訓練(AV鑑賞)で死ぬほど見てきたじゃないか。気持ちを落ち着けてさえいれば負けるはずがないんだ。

「えぇい、こうなったらお色気攻撃よ!」

 天国軍団は、その場で全員くるりとかわいらしく回転してみせた。ふわり・・・またもやスカートがめくれ上がり、白やピンクのかわいい女の子パンツがあられもなく晒される。「ぶぅっ・・・!」ああ、また鼻血ブーしてしまった!女の子たちのクルクル回る姿もかわいいし、見えそうで見えないミニスカートが、ふわりと風でめくれ、わずかにチラチラパンツの見える光景がたまらない!

佐伯『ぬう・・・そういう事か』

 ここで、佐伯長官がひとりごちた。

佐伯『レッド、奴らのコスチュームの特性が分かったぞ。そのアイドル風衣装は、パンチラを色っぽく演出するために一番適した装備なんだ!』

僕「なるほど。だからスカートの丈も思い切り短いし、外見もフリフリのプリーツ型だったんですね」

佐伯『更に下着も清純さを意識したカワイイ系。まずいぞレッド。思春期真っ盛りのお前さんにとっては、こういうちょっぴりエッチ系のシチュエーションが一番キツイだろう?』

僕「はい。下手なお下劣系AVよりよほど刺激が強いです」

ポッティ『うむ。スクヴス救済教の目指している嗜好はまさしくそれじゃ。肉体的快楽よりも、精神的興奮に呼びかけて誘惑してくる。だから、スクヴス救済教にとって、セックスバトルのテクニックは二の次なのじゃ。快感よりも、誘惑に耐える心の強さを身につけよ!』

 ポッティの言う通り、アイドル衣装の天国軍団と戦うには、スカートめくりしたい、パンツを見たい、という男心をくすぐってやまない願望を必死に抑えなければならない。パンツを見なければいい話だけど、見ないようにすればするほど見たくなってしまうのが男の悲しい性というモノ。もし、パンツを見ても警察につかまったりしなければ、世の男たちはかえってパンツに興味を示さなくなるだろう。

「よし!」僕は決意を固め、天国軍団に突撃した。天国軍団も同時に飛びかかる。飛びかかった拍子に、パンツがふわりとめくれるが、次の瞬間、僕は彼女たちの前から姿を消していた。

「え、どこどこ?」「後ろ!?」彼女たちは辺りをキョロキョロと見回すが、僕の姿を見つけられない。「上か!」一人が天井を見上げてようやく気づいたが、既に僕は彼女たちの頭上まで迫っていた。

「わっ!!!」

 僕の大声に、天国軍団は一瞬ひるんだ。その隙に着地し、僕はフザケンブレードに気の力を込めた。「こおおお・・・!」これは、佐伯長官が得意とする神通力、通称『佐伯仙術』だ。全ての気をブレードの刀身に込めたところで

僕「フザケンスラッシュ・タイフーン!!」

 フザケンジャーの加速装置を使って、僕はその場で竜巻のようにグルグル高速回転した。天国軍団の密集していたど真ん中で発動したため、ブレードの刃は彼女たちの体を容赦なく切り刻んだ(実際はイかせているだけだが)。ふふふ、見たか。後ろに逃げたと見せかけて天井から奇襲をかける、これぞ対チャパ王戦法!

「うぅ・・・」

 生き残った天国軍団の一人が、ほうほうのていで体育館から出ていこうとする。すかさず、僕は先回りした。

僕「怪人はどこだ?答えてくれたらこいつで優しくイかせてやる」

 相手の身柄を取り押さえた上で、バイブ機能をONにしたままのフザケンブレードを見せつける。「さ、最上階。屋上に続く、階段に・・・」絶頂を迎える寸前だったためか、女の子はすぐに答えてくれた。お約束通り、僕は彼女のオンナ目がけてフザケンブレードを突き刺してやった。

佐伯『いいぞレッド。残りの天国軍団も大分絞られてきた』

並木『後は最上階に何人か女子生徒が残っているだけだわ。男子生徒が一人混じっているけど、今から行けば間に合うかも知れない!』

 僕は二人の誘導に従い、最上階へと続く階段を上った。この階層は全部で20階建てだが、フザケンジャーの加速装置と、本部で培った短距離走の訓練の成果をもってすれば、2分とかからず目的地までたどり着くことができた。

 直通の廊下をひたすら走っていくと、エレベータ付近に残りの天国軍団の姿を見かけた。彼女たちも体育館の時と同じアイドル衣装だが、せいぜい7~8人しか残っていないため、正攻法でも十分だろうと僕は考えた。

「フザケンビーム!!」走りながら、目の前の天国軍団にビームの狙いを定める。・・・が、物陰から素早く現れた何かが、こちらの攻撃をあっさりと弾いてしまった。

「僕の妻たちを傷つける者は許さない!」

 ビームを弾き、甲高い声でそう叫んだのは、目の前の天国軍団よりもおでこひとつ分小さい、年少の男の子だった。だが、普通の男の子と違って、両目は真っ赤に輝き、お尻からトゲトゲしい尻尾、背中からは蝙蝠のような翼を生やした異形の姿だった。

僕「な、何者だ?キミは」

ユルゲン「僕はユルゲン。メアリィ女王陛下の忠実なる下僕だ」

 メアリィ、という事は、こいつは教団側の幹部か。こんないたいけな子供まで利用するなんて・・・。

ポッティ『レッドよ、そやつは恐らくインキュバスじゃ』

僕「え?インキュバスって言うと、サキュバスの男版・・・みたいな奴ですよね」

佐伯『珍しいな。男の悪魔なんて、中世の時代に絶滅したものと思っていたが』

「いや・・・」ここで、佐伯長官は頭をひねる仕草をした。

佐伯『並木くん。ちょいと、イマドキスクールのコンピュータにアクセスして、生徒の名簿を調べてくれないか?』

並木『分かりました』

 しばらく経って「あっ!」と、並木さんの驚く声が上がった。

並木『神谷くん、よく聞いて。その子は元々人間の子供よ!今日、関口勇樹っていう中学2年生の男の子が、イマドキスクールに体験入学しているの』

僕「えっ、それじゃあ、背中の翼とかは・・・」

ポッティ『恐らくは、何らかの方法でサキュバスの魔力を流し込まれ、無理やりインキュバスの肉体に改造させられてしまったのやも知れぬ。淫魔共は人間の男から精を搾り取るだけでなく、見込みのある人材とあれば、淫魔化させて仲間に引き入れる事さえあるのじゃ』

佐伯『恐らくそいつは、最近入った男子生徒たちの中でもとりわけ精力値が高かったのだろう。俺やお前ほどの、デーモンの息子とまではいかないだろうが』

 そうだったのか。悪魔共め、こんな幼い子供まで自分たちの手駒に利用するなんて。でも、彼は一応中二なんだよな。それでも周りの女の子たちに身長勝てないなんて。ちょっと同情してしまう。

 まあ、事情が分かったからには、この少年も何とか助けてあげなければ。恐らく、他の天国軍団同様、フザケンジャーの力で絶頂に導いてやれば、呪縛が解けて元の人間に戻れるんじゃないかと思うのだ。彼を救う方法はきっとあるはず。絶対にあきらめるな!

僕「関口くん、目を覚ませ!キミは、残忍非道な悪魔たちに操られているんだ」

ユルゲン「黙れ!そんな名前は今日限りで捨てた。僕はこれからインキュバスとして、女王陛下のために生きていくんだ!」

 関口少年は逆上し、指先から電撃の帯をひたすら投げつけてきた。プレジャーボルトと呼ばれる、電流で性感帯を刺激する魔法だ。こうなったら、僕もフザケンジャーの武器で応戦するしかない!

僕「キミは本当にそれでいいのか?人間としての人生を捨てて、キミの両親がどれだけ悲しむか考えた事はないのか!」

 僕はしっかりと狙いを定め、少年の体にフザケンビームを何発もお見舞いする。関口くんは魔法でバリアを張るものの、こちらの方がパワーが勝っているおかげで、攻撃を防ぎきれず苦悶の表情を浮かべていた。まだ、インキュバスに転生して間もないから、魔法を使いこなせていないのだろう。

ユルゲン「両親だって?そんな奴らが僕たちに何をしてくれるって言うんだ。父さんも母さんも、僕が欲しいものは何でも買ってくれたし、テストの点が悪くても、夜遅くまでゲームをやっていても嫌な顔ひとつしなかった。でも、二人は僕と一緒にいる時、一度だって僕に対して笑顔を見せてくれた事はなかったんだ!僕はあんな奴らを少しも愛していない。あいつらだって僕がどうしようと知った事じゃない!」

僕「そんな事は・・・」

 きちんと諭してあげようと口を開いたその時「そうよ!そうよ!」と、周りの天国軍団たちがそろって便乗した。

みはる「私は赤ちゃんの頃からパパやママに抱いてもらった事なんて一度もなかった。だって、生まれてすぐ保育施設に預けられたんだもの。パパもママも共働きで忙しいから私なんてお荷物にしかならないのよ!」

まなみ「そうよ!私がちょっと言う事を聞かないだけで、ママはバットで私をぶつのよ。母親に『殺してやる!』って言われた私たちの気持ちが、あんたなんかに分かるもんか!」

エレナ「私なんて親の都合で、5歳の頃からやりたくもないサッカーをずっとさせられてきた。イマドキスクールに入るまで、私はサッカーしか知らない女だったのよ。女の子のたった一度きりの人生をメチャクチャにしやがって。あんな奴ら親じゃないわ!いつか、児童相談所に虐待で訴えてやる!」

 僕は、関口くんや天国軍団の悲痛な訴えに、どう答えていいのか分からなかった。彼らはよほど悲惨な家庭環境で、つらい子供時代を過ごしてきたのだろう。いいや、彼らに限った話じゃない。今の大人たちなんて、プライベートの時間が欲しいなんて理由で、大切な子供を平気で捨てられるんだ。

佐伯『おい神谷、何ボサッとしていやがる!さっさとフザケンビームかブレードでとどめを刺してしまえ!』

僕「でも・・・でも、これじゃあ、この子たちがあまりに浮かばれないじゃないですか。フザケンジャーの力で悪魔の洗脳を解いてやったとしても、この子たちには孤独で悲惨な人生しか待っていないんですよ?」

佐伯『甘ったれるな!そいつらの両親は、確かに救いようのない人間のクズかも知れん。だが、夜遅くまでこんなチャラチャラ男遊びをしたあげく、ヘルサの怪人に突け込まれたのはそいつらの自己責任だ。特に、そこの関口とか言うふがいないクソガキ。大人の作ったくだらないしがらみなんて、男ならてめえの拳ひとつでぶち破ってしまえばいいだろ!』

 長官・・・確かに、長官の言う通りだ。いくら現実が悲惨だからと言って、悪魔に身を捧げる人生を送って幸せになれるはずがない。本当の幸せってやつは、人間として生きてこそ全うできるものなんだ!

僕「関口くん。かつては僕も、人生の生き甲斐や目標が何一つ見つからず、ふらふらと毎日を過ごしていくだけだった。でも、今はフザケンジャーとして生きていく事で、自分の生きている実感を噛みしめられる。今の自分に悲観しなくたっていいんだよ」

ユルゲン「そんな事をしたって、誰が褒めてくれるって言うんだ?例えあなたの力で全てを救ったとしても、あなたがしてくれた事を覚えている人は一人もいないよ」

僕「それでも構わない。フザケンジャーになれただけでも、僕は人生の、現実の面白さをほんの少しでも理解できたんだから、それ以上は何も望まない!」

 僕は、立て続けにフザケンビームをお見舞いした。その内、関口少年の側が魔力のバリアを制御しきれず、その場でがっくりと膝をついてしまう。

 チャンス!僕はフザケンブレードを手に、関口少年にとどめの一撃を振り下ろした。・・・が。

???「そこまでだ」

 何者かが、背後から僕の腕を掴んだ。一瞬、強い力を込められ、フザケンブレードが落ちてしまう。その動きはあまりに素早く無駄がなく、気配すら気づかなかった。

僕「そ、その声は・・・」

ゲティ「そう、私はインキュバスの黒騎士ゲティ。キミのファンだよ」

 そうか、謎の通信相手の正体とはこいつか。インキュバスという事は、こいつもスクヴス救済教の手先なのか。

僕「だが、なぜだ!」

 僕は力ずくで、つかまれた腕を引きはがした。

 ゲティと名乗る男は、ウェーブのかかったきれいな黒髪を腰までたらし、目つきも切れ長で鼻筋も整っており、男でさえ思わず見とれてしまうほどの美形だった。背丈も佐伯先輩より更に頭ひとつ分ほど高い。多分、190以上はあるんじゃないかな。表情一つ変えない物静かな雰囲気と、全身黒ずくめのコートと帽子とが、悪魔としての不気味さを際立たせていた。

僕「今まで僕を助けておきながら、なぜ今になって邪魔をする!」

ゲティ「キミが、ヘルサの軍勢と戦う事に私は邪魔立てしない。しかし、ここにいるユルゲンたちは既に私たちの兄弟だ。私の想定を外れた行動であれば、私はキミのいかなる行動も黙認するわけにはいかない」

僕「なるほど。それで飲み込めたぜ。お前は佐久葉素乃子に仕えるインキュバス。だから、ヘルサの私兵を始末させるため、今まで無線を通して僕を動かしてきたんだ」

ゲティ「ふふ、相変わらず勘が鋭いな。私はキミのそういうところが好きだ」

 こいつ、男に対してよくそんな事が言えるな。気色の悪い野郎だ。

ゲティ「だから、キミの目的はメカニック怪人であって私たちではないはずだ。キミに憐みの心が少しでもあるのなら、この子たちの事は放っておいてはくれまいか」

僕「いいや、憐れに思うからこそフザケンジャーの力で彼らを救ってやりたいんだ。お前たちの洗脳を解いた上で、人生をしっかりやり直させるんだ。お前たち悪魔に、子供たちの人生を奪う権利なんてない!」

 僕はフザケンブレードを構え、ゲティに斬りかかった。こいつがどれほどの力を持っているか分からないが、それでもここで背を向けるわけにはいかない!

 ・・・が、一瞬の内に、僕は腕の向きを反対側にねじ込まれ、背後から取り押さえられてしまっていた。いつの間に回り込まれたんだ!?

僕「そんな・・・!」

 僕は震撼した。速すぎて何も見えなかった。世の中にこれほどの達人がいたなんて。これが、本物の悪魔の力なのか・・・!

ゲティ「残念だ。クラムボム公園にフザケンジャーとして姿を現したその日から、私はキミの目を見張る成長が楽しみでならなかった。その、類まれなる才能の芽を、自らの手で刈り取らねばならないとは。だが、我が主のためとあっては、どんな悲痛な運命も喜んで享受しよう」

 ゲティはそのまま、僕の腕関節を自分の側に強く引き込んだ。こいつ、恐らく知っているんだ。人間の体を、簡単にバラバラにしてしまう方法を。

ゲティ「さらばだ。未完の好敵手よ」

 ダメだ。このままでは、腕どころか、全身の関節が引きちぎられる・・・!

 その時、ボッ!と、鋭い閃光が僕たちの間を突き抜けた。

ゲティ「!!」

 ゲティもたじろぎ、つい僕の腕を離してしまった。僕は、彼のうろたえる表情を初めて見た。

佐伯「お前の相手はこの俺だ」

 そして、背の高いたくましい体つきの男が、ゲティの前にさっそうと立ちはだかった。

僕「さ、佐伯長官・・・!」

 頼もしい味方の登場に、僕は思わず歓喜の声を漏らした。この人がそばにいるというだけで、自分まで力が湧き上がってくるかのように頼もしかった。

佐伯「言っておくが、お前を助けに来たわけじゃない。お前の成長を妨げるわけにはいかないからだ。だから、お前が自分の力で解決できる仕事に、俺は一切手を貸さない。そして、他の奴にもお前の仕事を邪魔させるわけにはいかない」

 そう言って、長官は「こおおお・・・」と、全身に神通力を張り巡らせた。やはり、この人の力は、僕がフザケンスーツを蒸着している時以上にすごい。確かに、これならあのインキュバスとだって互角以上に渡り合えるかも知れないぞ!

佐伯「神谷、ボサッとするな!」

 思わず見とれていた僕に対し、長官は怒鳴って目配せする。「あっ・・・」僕はその時になって初めて、関口くんと天国軍団がエレベータで脱出しようとしている事に気づいた。

ゲティ「私の兄弟たちに手出しはさせぬ」

 関口くんの後を追う僕の前に、例の黒騎士が立ちはだかる。「お前の相手は俺だと言ったはずだ!」すかさず、佐伯長官も神通力で取り押さえにかかった。

 僕もぐずぐずしてはいられない。早く関口くんたちにフザケンビーム(もしくはブレード)を当てて、悪魔たちの洗脳から解き放ってやらないと。

「ぱぱぱ、ぱんつー!」

 だが、更なる新手が僕の行く手を阻んだ。全身を青のペンキで塗ったような、人間の大人よりもやや大柄な体に、不気味な鳴き声を放つ絶世の美女。こいつがゲティの話していた、パンチラ怪人おいろけんか!

 こいつに一瞬の注意をそらされたため、関口くんたちはエレベータで下の階に降りてしまった。

佐伯「やむを得ん。神谷、ひとまず怪人を退治するんだ!」

僕「でも、関口くんたちを放っておくわけには・・・」

佐伯「だが、そいつを野放しにしても、今度は外の人間が快楽の餌食にされる。ここは、少数よりも大勢を救う選択肢しかないんだ!」

 くそっ、悔しいが長官の言う通りだ。関口くんたちは外に逃げて教団のメンバーと合流するだけだが、怪人は人間の男から精を吸い取り、人間の女を洗脳する事しか頭にないんだ。こうなったら、何としても目の前の怪人をやっつけてやる!

ゲティ「こっちだ佐伯翔。早く・・・ふふ、早く私のところへ来い」

佐伯「いいだろう。神谷、この場は任せたぞ!」

 そう言って、佐伯長官は黒騎士の後を追った。





 ひたすら階段を駆け上がり、佐伯はやがてビルの屋上に立った。ここまで来ると、見事に誘いに乗せられた気がしないでもないが、このままあの得体の知れないインキュバスを見過ごすわけにもいかなかった。この男さえこちらで足止めしておけば、怪人の方は今のフザケンジャーレッドでどうにかなる、と踏んでの事だった。

 屋上には夏の季節に似つかわしくない、冷たい風が吹いていた。漆黒の空には、晴れやかな満月がひたすら輝き、広い屋上の中心で、月の光を全身でめいいっぱいに浴びる黒騎士の姿があった。

 その立ち姿は、まるで己に陶酔しているかのように見えたが、こちらの存在にはきちんと気づいていたようで、気配を感じた途端素早く振り返った。

ゲティ「待っていた。私は、キミのようなサムライスピリットにあふれた強者をずっと待ち侘びていた。今夜ばかりは、私たち二人を引き合わせてくれた唯一神とやらに感謝しよう」

佐伯「キザな野郎め。お前なんかに感謝されて、ポッティもいい迷惑だぜ」

ゲティ「ふふ、キミの魂は闘志と気迫にあふれたいい魂だ。フザケンジャーレッドも素晴らしい気迫に満ちていたがまだ未熟だ。今の彼では私と相対するには不釣り合いだ。

 見ろ、佐伯翔。あのヘリには私の母と妹が乗っている。私にとってかけがえのない家族であり、全ての淫魔たちが女王とあがめるお方だ」

 ゲティの指差す方角で、一機のヘリが漆黒の彼方に消えようとしているのが見えた。

佐伯「ありがとうよ。わざわざ親玉の居場所を知らせてくれて」

 佐伯にとって、あれは神通力で仕留め切れない距離ではなかった。裏社会を牛耳るスクヴス救済教の黒幕を潰すチャンスは今しかなかった。

 しかし、指先に念を込め、弾丸のように発射させようとしたところで、ゲティが日本刀を手に立ちふさがった。

ゲティ「佐伯仙術などくだらん!誠の男ならば、そんな小手先の技術など捨てろ!」

佐伯「どけ変態野郎!こちとら、てめえの時代劇ゴッコに付き合っている暇はねえんだ!」

 佐伯は構わず、念動力の弾丸を指先から解き放った。

 しかし、ゲティの目にも止まらぬ居合によって、たちまちあっけなく両断されてしまった。今は、この男と決着をつける他ないようだった。

ゲティ「使いたまえ」

 すると、ゲティは刀を鞘に納め、あろうことか、佐伯に投げ渡してしまった。

佐伯「どういうつもりだ」

ゲティ「私もインキュバスの力は封印する。男同士でフェアな勝負をしよう。今、キミが手にしているのは『村雨丸』と呼ばれる刀だ」

佐伯「村雨丸・・・」

 佐伯は、その刀に聞き覚えがあった。遠い戦国時代の日本から、京都の足利家に伝わる名刀として知られている。しかし・・・

佐伯「いいや、待て。そいつはおとぎ話の産物だろう。大人をからかうのもいい加減にしろ」

ゲティ「戯れなどではない。村雨丸を持つ犬塚信乃(いぬづかしの)は実在の人物だ。日本をサムライが支配していた時代、私は彼と一度刃を交えた」

佐伯「な、なんだと・・・」

ゲティ「信乃だけではない。キミたち人間がおとぎ話だと思っている者たちは、皆歴史の片隅に間違いなく存在していた。異界の者が関わった事件のため、公式の記録からは抹消されたのだ。だが、私は若かりし中世の時代から、彼らが恐ろしい悪魔の軍勢と果敢に戦ってきた事を知っている。私は桃太郎や力太郎、坂田金時(金太郎の成人名)と戦った事もあるのだよ。彼らは心に残る素晴らしい好敵手だった」

 話を聞いて、佐伯は開いた口が塞がらなかった。こいつ、マジでどうかしてるぜ。元から頭がおかしいのか、あるいは若い頃におかしな病気でも発症したのだろうか。

ゲティ「今の日本で、桃太郎ほどの英雄を盗賊と罵る輩がいるのは悲しい事だ。それはオーガー(食人鬼)の残党共が流したデマゴーグだ。オーガー族は鬼ヶ島を不法占拠し、日本列島の植民地化を企んでいた。私はオーガーの側に与していたから真実を知っている。

 キミもまた、彼に劣らない強敵になってくれることを切に願う。私は淫魔に生まれながら、不能のため子孫を残す事ができなかった。事情は異なるがキミと同じで私も女が嫌いだ。だから、修羅道の世界にのみひたすら全力を費やしてきた。ふふ、殺し合いは楽しいぞ佐伯。キミたち日本人にもサムライの血が流れているのなら、私の言っている事が分かるはずだ。キミが修業で培ってきたものはセックスバトルなどではなく、節義や体面をかなぐり捨てた、男と男の、野性に赴くままの決闘に傾けるべきだ。

 だから、村雨丸も私ではなくキミにこそふさわしい。その刀に大和民族の魂を込めてみせろ」

佐伯「黒澤映画の見過ぎだ馬鹿。だが、こいつは確かにいい刀だ。これだけ刀身が鋭ければ、佐伯仙術をフルパワーで流し込んでも耐え切れるだろう。ありがたく使わせてもらうぜ」

ゲティ「いい返事だ。科学技術の発展した日本にあって、母は人間の自堕落ぶりにひどく落胆されたが、いつの世もサムライスピリットは根強く息づいているものだな。私は日本が好きだ。騎士に生まれながらソードではなくカタナを選んだのもそのためだった。だから、キミの魂に応えて、私も妖刀村正で挑ませてもらおう」

 そう言って、黒騎士は魔法で新しい刀を呼び寄せた。佐伯が受け取った村雨丸よりも刀身が長く、切れ味も鋭そうだった。

佐伯「って、ちょっと待て。お前、フェアな勝負とか言っておいて、自分は最強の刀じゃねえか!どうせならそっちを寄こせよ!」

ゲティ「これは人間が使うべきではない。この刀には幾千の殺人鬼たちの魂が宿っているのだ。故に、これは悪魔の刀だ。勇者のキミにはふさわしくない」

 互いに刀を抜き、二人はそれぞれ位置についた。佐伯はどことなく不安だった。エロ小説なのになんで月夜の決闘なんだろうか。この小説はいつから外人ウケを狙い始めたのだろうか。読者的には一刻も早くオカズが欲しいだろうに、自分だけこんなに尺取って大丈夫なんだろうか。

佐伯「・・・・・・」

ゲティ「・・・・・・」

 だが、ジョークなど考えている暇などない事に、佐伯もゲティもすぐに悟った。相手の構えには一切の隙がなく、どちらも初手を打って出られない。緊迫した面持ちの中、じりじりと、時間をかけて、少しずつ歩み寄るしかなかった。

ゲティ「まずは、一手・・・」

 やがて、黒騎士が一歩前に出た。イカズチのようなスピードで、刀が真上から振り下ろされる!とっさの機転で、佐伯は刀を頭上に置き、敵の一撃を食い止めた。金属の鈍い音と共に、激しく火花がこすれ合った。

佐伯「つあぁっ!」

 佐伯はそのまま押し返して、相手の姿勢を崩そうとする。が、これはゲティに読まれ、素早く後ろに下がられてしまった。しばらく、二人は円を描くようにその場をグルグルと回り、相手の出方を伺った。

 今の打ち合いだけで、佐伯は黒騎士ゲティの底知れない強さを実感した。桃太郎と戦ったという話も、あながちホラ話とは言い切れないだろう。確かに今の未熟な神谷では、例えフザケンスーツを蒸着していたとしても、この戦いにはついていけないかもしれない。一方のゲティも、きれいな顔に若干の冷や汗がにじみ出ており、上級悪魔とさえ互角に渡り合ってみせる自分に脅威を感じているであろう事は幸いだった。

 佐伯にしてみれば、こんなに気持ちが高揚するのは生まれて初めてだった。セックスバトルでは女に対する恐怖と憎しみしか感じなかったが、男同士の殺し合いには、醜くも美しい、すがすがしく爽やかな気持ちが確かに実感できた。自分もゲティも同じ女嫌いだからこそ、修羅の道に独特の悦びを感じるのだろうか。

ゲティ「ふふ、いいぞ。その顔だ。その、晴れやかな表情が見たかった。ようやく戦いの楽しさが分かってきたな。平和ボケの日本人がついに闘争本能を呼び覚ました!」

佐伯「ああ。俺も、これ以上お前の道楽を否定するのはよそう。今はもう、フザケンジャーの使命も悪魔の野望を打ち砕く事も関係ない。男に生まれたからこそ、男が戦う兵士として生きる理由が今分かった。ここまで来たら、とことんやろうぜ黒騎士」

 佐伯は、ひたすらゲティと剣の腕を競った。戦う男としてこの場は後に退けなかった。人生のすべてを投げ打ってでも、目の前の男と決着をつけたいという不思議な気持ちにさせられた。男女のセックスとは違った意味で、佐伯は戦いの世界に魅了させられてしまった。



 佐伯長官は無事でいるだろうか。僕だって負けていられない。

 僕はフザケンブレードを構え、パンチラ怪人おいろけんと対峙した。

ポッティ『レッドよ。ここで取っ組み合いになっては逃げ場がなくなる。ひとまず適当な個室か広場を探し、敵を誘い込むのじゃ』

 唯一神ポッティが通信機から呼びかける。

 確かに、この狭い廊下では、185cmもあるメカニック怪人相手に体格差で不利だ。僕はいったん、近くの個室に逃げ込み、怪人を誘導する事にした。

 そこは会議室のようで、リング状のテーブルが中心に置かれた広い部屋だった。しばらくはこのテーブルを合間に挟んで、遠くから相手の出方を伺うとしよう。

僕「フザケンビーム!!」

 テーブル越しに、僕は指先から七色の光線を放った。まずはこれで様子見・・・と思いきや

おいろけん「グエっ!」

 怪人は反応しきれず、まともに光を浴びてしまった。「あ、あれ・・・?」僕は拍子抜けだった。メカニック怪人なんていうのは、天国軍団の数十倍の力を持っている奴だから、あっさりかわされるかと思っていた。かわされるのは想定の上で、むしろ相手の隙を作る目的で攻撃したのだが・・・。

僕「フザケンビーム!!」

 僕は試しに、もう一度ビームを撃ってみた。「ウゲェ・・・!」またもクリーンヒット。わざとくらっているわけではない。単に、動きが鈍くて攻撃をよけきれないようだった。

 ・・・なあんだ。こいつ、ひょっとしたら怪人の失敗作か何かじゃねえのか?これなら初期のふとももんやふぇらちおんどころか、ザコの天国軍団にすら及ばないぜ!はっはっは、こいつはいわゆるボーナスステージってやつだな。黒騎士の方を長官が引き受けてくれてよかったぜ。あいつマジでヤバい奴だったし。

僕「はーっはっは!残念だったな。今のでおぬしの技は全て見切ったぞ。はっきり言って私の敵ではなーい!」

おいろけん「ぱ、ぱぱ、ぱんつ・・・」

僕「中々の腕だが相手が悪かったな。よーく頑張ったがやはり王者はこの私だ!いくぞ、これで終わりにしてやる!!」

 僕は勝ちを確信して、フザケンブレードを手に真っ向から斬りかかった。

並木『待って、落ち着いて神谷くん!何か、おかしいわ。メカニック怪人ほどの相手が、たかだかビーム2発でこれだけダメージを受けるだなんてこと・・・』

僕「はは、ビビり過ぎですよ並木さん。あ、そろそろ処刑用BGMを流してくれちゃって構わないんで。ちゃっちゃっと終わらせましょう」

 僕は怪人の懐まで接近し、ブレードを足元から頭上へと一気に斬り上げた。「!!」最後の気力を絞ってか、怪人が素早く後ろに引き下がった。ちっ、惜しくもかわされた。だが、そんなに速い動きじゃない。更なる追い打ちをかけてやるぜ!



ふわっ・・・



 その時、偶然にも、ヒラヒラのミニスカートが思い切り反対側にまくれ上がった。僕の視界には、上品な純白のレース下着があられもなく晒された。「ぶうっ・・・!」思いがけないハプニングに、つい鼻血が噴き出してしまう。こんなにかわいくてエッチぃ女の子パンツを見たのは初めてだった。未成年の僕には刺激が強すぎる・・・!

おいろけん「ぱぱ、ぱんつー!」

 僕が鼻血ブーで悶えている隙に、おいろけんは会議室を出て、階段に逃げてしまった。くそ、逃がすか!

 僕も急いで階段を上った。・・・これがいけなかった。

僕「ぶはっ・・・!」

 見上げた先にローアングルでパンチラが晒されたため、またも鼻血が暴発してしまった。そうか、階段パンチラを演出するためにわざと逃げたわけか。ミニスカートの女の子が階段をのぼる光景って、悩ましくて男心をくすぐられるんだよな。

ポッティ『ぬう、パンチラ怪人とはそういう事か。怪人の得意技はパンチラ!際どいミニスカートに隠されたパンツを、エッチなシチュエーションでかわいらしく見せる事により、未成年の童貞心を巧みに刺激する。快楽ではなくお色気重視だからこそ、身体能力に限っては通常の怪人よりも弱かったのじゃ。ヘルサめ、あえて童貞の神谷くんが喜びそうな嗜好の怪人をチョイスしてくるとは』

並木『神谷くん、できるだけ怪人のパンツを見ないようにして!パンツを見れば見るほど、あなた自身の精神が弱体化してしまうわ!』

 並木さんは簡単に言うけど、僕みたいな若い男にとってそれは地獄の責め苦だった。女の子のパンツって言うのは、見えそうで見えないというのが一番刺激的なのだ。これは悪魔たちとの戦いだと分かっていても、ちょっとくらいなら・・・という願望が、僕の中でどんどん膨れ上がってしまう。

 だが、同時に目が覚めたような気がした。今回の怪人は、今までに増して相当手ごわい相手だった。肉体よりも精神に響きかける誘惑の方が、よほど強烈だという事を思い知った気がした。

 怪人はいったん廊下に出て、手前のドアをくぐった。よし、こちらもすかさず追撃だ。もちろん、何らかのアクシデントでパンツ丸見え!という事態に陥らないよう慎重にね。

僕「えっ!?」

 扉をくぐった先は、だだっ広い体育館だった。あれ、確かここは1階の施設だったはずなのに・・・。

ポッティ『どうやら、ヘルサ空間の侵食が深刻な事態に陥ってしまったようじゃな。だから、上の階に行ったつもりが、いつの間にか1階に戻されていた、などという現象が起こりうるのじゃ』

僕「なるほど。さっきの異次元に続く扉を開けた事で、体育館にワープしてしまったわけですね」

ポッティ『その通り。ところで、今のネタはどうじゃったかの?「しんしょく」が「しんこく」。この、母音が一緒というところのツボがたまらんでな』

僕「あぁ、うるせえよジジイ!律儀に説明されると余計恥ずかしいだろうが!」

 気を取り直して、僕は再び怪人と対峙した。「かいじん」と「たいじ」というのも母音が一緒で・・・あぁもう、こっちにまでポッティ病が染つっちまったよ!

おいろけん「ぱぱ、ぱんつー!」

 怪人は壇上に上がって、パチンと指を鳴らした。突如、怪人の左右に大きめの扇風機が設置される。これもヘルサ空間の魔力という奴か。

ポッティ『いかん!レッドよ、目を逸らすのじゃ!』

 ポッティの忠告が耳に届く前に、左右二台の扇風機がクルクルと風を送り、おいろけんのミニスカートが、ふわり・・・とめくれ上がった。

僕「Oh!モーレツ~!!」

 僕はまたも鼻血を噴き出してしまった。何回目だよこれで。ある意味射精させられるより体力的に(精神的にも)キツイ。ヘルメットかぶってるからティッシュで拭けないしさ。

おいろけん「いや~ん♪」

 怪人は更に、両手でスカートを隠す仕草を披露した。しかし、風の力が強すぎて、一方を押さえると一方のスカートが極端にまくれ上がって、パンツの隠れるいとまがない。「ぶうっ・・・!」更に鼻血ブーがエスカレートした。あぁ、頭がクラクラしてきた・・・。

おいろけん「ぱぱ、ぱんつー!」

 隙をついて、おいろけんが一気に飛びかかった。貧血で立ちくらみを起こしていた僕は、反応が遅れてあっさり組み伏せられてしまった。

僕「くそっ、HA☆NA☆SE!」

 仰向けにされたまま、必死にもがくも体格差があり過ぎて、どうにも脱出できない。

 怪人が立ち上がると、上体を拘束されていた僕も同時に起こされ、背の高い怪人に抱き寄せられる格好になった。

 ぐっ!怪人はスラリと伸びた美脚を僕の腰に巻きつけ、自分の側に引き込んだ。この時、怪人のミニスカがまくれ上がり、パンツ部分が、ちょうど僕の股間に押し当てられた。

ポッティ『まさか・・・!』

 通信スピーカーの向こうで、ポッティのうろたえた声がこだまする。

ポッティ『レッドよ、急いで脱出しろ!あれは高野真美のパンツ攻撃じゃ!』

僕「え?た、高野って・・・」

ポッティ『説明しとる暇はない!パンツ攻撃とは、パンツで己の陰部をガードしつつ、スマタでオンナの甘美な感触と、パンツのやさしい生地とを同時に味あわせる脅威の射精テクニックじゃ。あの佐伯長官さえも、17年前の戦いでこの攻撃に成す術もなく翻弄されたほどじゃ。特に、ミニスカートやパンチラの似合う娘ほど攻撃力は倍増するぞ!』

 ポッティは律儀に説明してくれた。どっちなんだかはっきりしろよ腐れテルテル坊主。

 彼の言う通り、怪人はタイツに覆われた僕の股間に、容赦なくパンツをグリグリすり付けてきた。ああ、女の子のパンツってものすごく肌触りがいい!天国軍団の下着とさえ比較にならない!



どぷぴゅ!!



 パンツのひときわ柔らかいくぼみ部分に、盛り上がったペニスががっちりと食い込んだ瞬間、あまりの気持ちよさに先っぽから精液がぶちまけられた。射精している間もグリグリとパンツ攻撃に晒され、次から次へと新鮮な精液があふれ出る。

 絶頂を迎えた事でフザケンスーツの蒸着も解け、僕は素人童貞の神谷達郎に戻ってしまった。

おいろけん「ぱんつ!ぱんつー!」

 変身が解けたのをいい事に、おいろけんはパンツ攻撃で更に激しく精液を搾り取ろうとした。僕はフザケンジャーの力も使えず、かといって力技で脱出する術もなく、かわいい女の子パンツ相手にこちらのパンツをベトベト粘液で汚していくしかない。絶体絶命だ。マジで強えよ、この敵・・・。

ポッティ『いかん、このままでは神谷くんの強力な精エネルギーが怪人に吸収され、収拾がつかなくなる!今のは「きゅうしゅう」と「しゅうしゅう」をかけたネタで・・・』

並木『いつまでおふざけやってるつもりですか!フザケンジャーだからってマジでふざけたら切れますよ私!』

ポッティ『す、すまんこってす。神谷くん、気をしっかり持て!キミにはフザケンジャーの力がなくとも、淫夢やイメージトレーニングを通して培った佐伯仙術がある。どんな力でも構わん。とにかく、ありったけの気力を解放し、怪人を引きはがすのじゃ!』

 懸命に訴えかけられるが、僕は怪人のパンツが気持ちよすぎて、どうしても力が入らなかった。思えば精通を迎えたての時も、クラスの女子のスカートの中をよくオカズにしていたっけ。あの時から密かに憧れだった女の子向けのパンツが、今僕の股間を実際に優しくかわいがってくれる。夢みたいな心地よさだった。

 ああ、もう戦いの事なんか忘れて、もっともっと女の子パンツの感触を味わいたい。そう思えてしまうほど、パンチラ怪人おいろけんのパンツは僕の心を魅了してやまなかった。

ポッティ『神谷くん、佐伯仙術じゃ!早く、佐伯仙術を・・・』

並木『いいえ、ポッティ。もっと確実な方法を見つけたわ』

ポッティ『む、並木くん。それはどういう事じゃ?』

並木『これは、女性だからこそ分かる事よ。大丈夫、私に任せて』

 そう言って、『神谷くん!』並木さんは、再び通信スピーカーから僕に呼びかけた。

並木『よく聞いて、神谷くん。おいろけんのパンツ攻撃を破るのは、それほど難しい事ではないわ』

僕「な、並木・・・さん」

並木『確かに女の子のパンツはかわいいわ。生地の肌触りだって、男性用のブリーフやトランクスとは比べ物にならないほど。・・・でもね、パンツは所詮一枚の布に過ぎないのよ!』

僕「・・・!!」

並木『そう、一枚の布に過ぎないから、ちょっと液体がかかっただけでもすぐ汚れるし、どんなにかわいい勝負パンツでも、1年もはき続ければババアみたいヨレヨレ、しわくちゃになっちゃうの!

 大体、女性用の下着なんて外側のデザインがかわいいだけで、裏返せば汚いったらありゃしないわ!トイレの後は必ず黄ばんで汚れるし、生理とかですぐ血が染みついちゃうし、最悪の場合ウ●コついていたりするんだから!』

僕「そっ、そうか!」

 並木さんの話を聞いて、僕はちっとも女の子パンツを気持ちいいとは思わなくなった。おかげで、硬質化していたペニスはしおしおと萎え、全身にも体力がみなぎって、怪人の拘束を力ずく(若干佐伯仙術を駆使したが)で解くことができた。

僕「分かったよ美世シュート兄ぃ!兄貴の言った事が、言葉ではなく『心』で理解できたッ!女の子のパンツがかわいいのは見た目だけ。実際には女の子の生理現象で、男性用のそれよりも汚れやすいし、時間が経てば劣化するんだ!という事は、並木さんのパンツもヨレヨレで汚くてウ●コついているんですね?」

並木『その通り。私のパンツもいとこのお姉ちゃんのお下がりの虫に食われた汚ったないババパン・・・後で覚えてろよてめえ!「ぶっ殺す」と言った時、既に行動は終わっているんだッ!』

 なんだよ、女の子のパンツが汚いって言ったのはあんたじゃねえか!こっちこそ、いつもオカズにしていた並木さんが汚いウ●コつきのババパンだと知ってすげえショックなんだよ!

 まあとにかく、パンツなんてただの布だと分かれば何も恐れるこたぁない。「なめてる戦隊、フザケンジャー!!」ビシッと変身ポーズを取って、僕は再び全身赤タイツの変態野郎・・・じゃなかった、スーパーヒーローの姿に戻るのだった。

おいろけん「いや~ん♪」

 おいろけんは、再び左右の扇風機を使って、風パンチラを演出していた。・・・が、女の子のパンツが汚い事を知っている僕にとって、それは何の興奮材料にもならなかった。

僕「はっ、それが何だっての。パンツなんてたかが布だろ。どうせ、お前のパンツだってウ●コついてんじゃネーノ?」

 怪人に向かって、僕は存分に余裕をアピールしてやった。「ぱんつぅぅ・・・!」怪人は顔を歪め、憤怒に打ち震えている。案外図星だったりして?

おいろけん「ぱんつー!」

 いたたまれなくなった様子で、怪人は突撃してきた。しかし、怪人の足元に運悪くバナナの皮が置いてあって・・・

おいろけん「いや~ん♪」

 すってんころりん、大股開きのまますっころんでしまった。次の瞬間、ミニスカートがもろにまくれ上がり、純白のパンツが僕の視界に余すことなく晒される。が、悪いけど何とも思わなかった。

僕「だから、汚ねえモノを見せんなっつってんだろうがぁぁ!」

 僕はむしろ、怪人が転んだ隙をつき、フザケンブレードでメッタ斬りにしてやった。刀身から繰り出される快楽装置に、怪人は激しく悶え狂った。

並木『今日の神谷くん、ちょっと怖いわ・・・』

ポッティ『女の子のパンツが汚いと知って、男のロマンを見事にぶち壊されたからのう』

(じゃが、高野真美のパンツはシミひとつない、本人の体のサイズにもジャストフィットする、まさにパンツの中のパンツとも言うべき完璧な芸術品じゃった。まあ、今は戦況が有利に運んでいるから、それはあえて言わんでおこう・・・)

 やがて、怪人はがっくり膝をつき、息も絶え絶えになってきた。お色気攻撃も通じないと分かって、万策も尽きたようだ。

 よしっ、今こそトドメのチャンスだ!

並木『神谷くん、あとひと息よ!今からレーザーブレードのテーマを・・・』

僕「いいえ、並木さん。今回は劇場版ですし、嗜好を変えて、宙明節ではなく公平節で行きましょう!」

並木『分かったわ』

 並木さんに気を利かせてもらい、体育館には僕のリクエスト通りのBGMが流された。次の瞬間、僕の気力は130まで上昇した。見えたぞ、水のひとしずくっ!

僕「はああああ・・・とぉりゃあぁぁっ!!」

 僕は右手を掲げ、五本の指先にありったけの佐伯仙術を込めた。

僕「いくぞ、キング・オブ・ファックの名のもとに!俺のこの手が真っ赤に燃えるぅ!ヴァギナを掴めと轟き叫ぶぅ!」

 神通力によって右手が黄金色に輝き、僕は怪人にトドメの一撃を放った。

僕「ばぁぁぁくねぇつっ!フザケン・フィンガァァァーーーーーーーっ!!!」



バチィッ!!



 指先からほど走る黄金の輝きが、パンチラ怪人おいろけんの女性器をひと息に貫く!想像を絶する快感が、怪人の全身に電流のごとく駆け巡った。

 極めつけに、僕は右手の力だけで怪人の大柄な肉体を持ち上げた。

僕「セックスバトル国際条約第一条。性器を絶頂に導かれた者は、失格となる!ヒィィィィト・エンドっ!」

 女の性感帯を余すところなく刺激する攻撃が、怪人の体内で爆散!

 にしても、このセリフ回し絶叫が多過ぎて疲れるなぁ・・・。声優さん喉潰しちゃうぞ。

おいろけん「ぱ・・・ぱんつ、ぱん・・・ぱんつ(今こそお前が、真のキング・オブ・ファック・・・)」

 そのセリフを最後に、全身青ペンキの美女モンスターは跡形もなく砕け散った。『やったぁ!』スピーカーの向こうで、並木さんやポッティの歓喜の声が湧き上がった。

 僕もまた、怪人との戦いに勝った達成感に心が打ちひしがれていた。今回の怪人は、今までのふとももんやふぇらちおんと比べればずっと弱かったはずだ。ここまで苦戦させられたのは、僕が肉体や技術の訓練ばかりに目を向け過ぎて、セックスバトルに最も肝心な『精神』の修行を怠ったためだ。快楽よりもお色気重視の怪人を作り出したという事は、ヘルサが『精神』の部分にも着目し始めたという事だ。今後とも、天国軍団との戦いには気が抜けないだろう。

並木『神谷くん、安心するのはまだ早いわ』

僕「分かっています。もう一人、厄介な敵が残っていましたね」

並木『ええ。佐伯長官ほどの人でも、あの得体の知れない力を持った黒騎士相手にどこまで戦えるか・・・。お願い、すぐ屋上まで加勢しに行ってあげて!』

 僕は勝利の余韻に浸る間もなく、再び屋上へと急いだ。本音を言えば、外に脱出した関口くんたちの行方も気がかりだった。だが、それ以上に、かけがえのない仲間である佐伯長官を見捨てるわけにもいかなかった。



 その頃、フザケンジャーレッドが体育館を後にしたのを見計らって、物陰から姿を現した少女が一人・・・。

ボウイ将軍「総統閣下。パンチラ怪人おいろけんが、フザケンジャーレッドによって討ち取られました」

ヘルサたん総統『全く、とんだ失敗作だったわね。視覚攻撃を強め過ぎたせいで、基本性能が大幅にダウンしてしまったのかしら』

ボウイ将軍「申し訳ありません。例の黒騎士などにしてやられなければ、レッドの戦いに私も加勢できたのですが・・・」

ヘルサたん総統『ええ、私も計算外だったわ。魔界でも1、2を争う伝説の剣豪が、まさかメアリィ女王の息子だったなんて。ただ、私たち淫魔とは、どうあってもセックスバトルが成立しない事だけは幸いね。人間の女相手なら長身イケメンのルックスと愛撫攻撃だけでイかせられるでしょうけど、挿入戦ができない以上、淫魔クラスの相手には一切のダメージを与えられないもの。黒騎士の側も然り』

ボウイ将軍「そればかりか、こちらの手駒に加えるはずだった天国軍団まで、大した力を発揮できずに、フザケンジャーによって全滅させられました。しかも、適性のいい者に限ってメアリィ側に横取りされて・・・」

ヘルサたん総統『私としては、痛み分けの形だと思いたいわね。今回の件で、確かに私たちは物理的な利益を何も得られなかったけど、代わりに「情報」という、最も価値の高い利益を手にしたわ。それは、人間の男が、快楽よりも興奮による射精で、より濃い精を提供できる、という事。

 だから、今回ばかりはフザケンジャーやスクヴス救済教の者共に勝ちを譲っておけばいいわ。最後に勝つのは私たちよ』



 ヘルサ空間の呪縛が解けたおかげで、僕は直接階段を上がって屋上にたどり着くことができた。

 しかし、周囲を取り巻く異様な熱気と重圧に、僕は一歩も踏み出す事ができなかった。

「つあぁっ!」甲高い怒号を上げながら、二人の剣士がひたすら刀を打ち合っていた。一方が斜め上から袈裟斬りを仕掛ければ、一方がタイミングを見計らって打ち返し、高度な技と駆け引きの応酬が立て続けに繰り返されていった。

 こんな壮絶な戦いを見たのは、生まれて初めてだった。どちらも急所狙いの攻撃。戦争を知らない時代に生まれたからこそ、互いの命を懸けた真剣勝負に僕は身も心も打ちのめされていた。二人の戦いに比べれば、僕とメカニック怪人の戦いなんてほんのお遊びみたいなものじゃないか。

 既に佐伯長官も、黒騎士のゲティも全身に痛々しい擦り傷を負ってボロボロだった。顔中に冷や汗が流れ、激しく息が上がっている。長官には気の毒だけど、これでは僕みたいな素人の高校生が加勢したところで、かえって足手まといにしかならないだろう。どちらも、常識で考えられる力を遥かに超越した達人なんだ。僕はただ、二人の戦いの行く末を黙って見守るしかなかった。

「・・・・・・」

 激しく打ち合っていた二人の動きが、やがてピタリと止まった。しばらく、二人の激しい息遣いと、冷たい風の音だけが辺りにこだまする。

 なぜ動かない?いや、相手の殺気があまりに強烈過ぎて動けないんだ。それに、長官も黒騎士もお互いに息が上がった状態。これ以上激しい動きで戦いを続ける余裕がないのだろう。僕は直感した。恐らく、次の一撃で勝負が決まる・・・!

 二人は一歩ずつ、徐々に、徐々に、ゆっくりと歩み寄った。僕は思わず息を飲んだ。頼む長官、あんな悪魔になんか負けないで・・・!

ゲティ「はぁっ!」

 先に動いたのはゲティだった!

 真空が音の速さで突き抜けるがごとく、血塗られた刃が空を一閃する!「ぐぅっ・・・!」佐伯長官の口から苦悶の呻きが漏れ、次の瞬間、左肩に大量の血しぶきが噴き上がった。

 しかし!

佐伯「ずあぁっ!!」

 刹那、長官の手に握られた真っ白な刀が、黒騎士の脇腹を見事に突き貫く!先の一撃をも上回る、疾風のごとき速さだった。事実、お互いに打ち合ってこの場に至るまでおよそ1秒しか経っていない。「やった・・・!」僕は思わず叫んだ。いかに悪魔と言えど、これは致命傷だろう。そうか、今のは肉を切らせて骨を断つ作戦。この勝負、佐伯長官の勝ちだ!

ゲティ「誇りたまえ。この私に・・・」

 かすれた声で呻くと「がはっ!」黒騎士は膝をつき、口の回りが大量の吐血で真っ赤に染まった。なんかどっかで聞いたセリフだよな?「はあ・・・はあ・・・」佐伯長官も激しく疲弊した様子で、しばらくその場で荒息をむさぼっていた。

並木『神谷くん、チャンスよ!黒騎士にとどめを!』

 並木さんの通信を聞いて、僕は我に返った。よし、相手が致命傷を負った今なら、フザケンジャーの力もどうにか通じるはず。

 僕は重体のゲティに向け、フザケンビームの構えを取った。「ヒヒィィン!!」その時、不意に馬のいななき声がして、頭上から高熱の炎が降りかかった。「うっ!?」フザケンスーツの耐火力と、とっさにフザケンブレードを振り回したおかげで難を逃れたものの、ゲティを狙ったビームを全く見当違いの方向に飛んでしまう。

 僕の目の前には、全身を紅蓮の炎で包まれた、キリンの身長にも匹敵する巨大な黒馬が立っていた。

 九死に一生を得たゲティは、すかさず黒馬の背にまたがった。

ゲティ「こいつはスレイプニル。ラグナロク(最終戦争)からの、かけがえのない愛馬だ」

佐伯「貴様・・・本気じゃなかったのか」

ゲティ「ふふ、それはお互い様だろう。キミも礼に応えて佐伯仙術を封印していた。だが、今回は私の負けだ。少なくとも剣の勝負では完敗だった。桃太郎も強かったが、キミも彼に劣らぬ良きライバルになれそうだ。よしんば、キミがそのフザケンスーツとやらを蒸着できれば、黒騎士対黒騎士のドリームカードが実現するだろう」

佐伯「いいや。俺はもう二度と、修羅道の誘惑には屈しない・・・!」

ゲティ「いずれ決着の日は訪れよう。キミたちが淫魔への抵抗を続ける限りは。再び会いまみえるその時こそ、お互いに本気の勝負をしよう。フザケンジャーレッド、キミの成長も楽しみにしている」

 そう言い残すと、ゲティは手綱を強く叩き、炎の黒馬を走らせた。どういう魔術なのか、6本の蹄が直接空中を蹴り上げている。火の粉を散らしながら、黒騎士はやがて空の彼方へ消え、何も見えなくなってしまった。

僕「長官。あいつ、桃太郎がどうとかって・・・」

佐伯「気にするな。元から、頭のおかしい野郎なんだ」

 長官は立ち上がろうとするが、全身の、特に左肩の痛みが響いて「くっ・・・」と、再び膝をついてしまった。

僕「あ、じっとして。僕が佐伯仙術で治療しますよ」

 僕は指先に神通力を込め、長官の筋骨隆々の肩に手を添えた。柔らかな光に当てられて、刀傷は次第にふさがり、痛みも薄れていった。僕も今まで散々鍛えられてきたおかげで、佐伯仙術でこれくらいの応用はできる。まあ、複雑骨折とか、腕が切断されていたりとか、そこまでだとさすがに厳しいけど。

僕「やっぱり長官はすごいですね。あんなに恐ろしい悪魔と互角以上に戦って、そのうえ勝ってしまうんですから」

佐伯「・・・いいや、俺は負けた」

僕「えっ?」

佐伯「黒騎士にじゃない。奴と戦っている時、俺は、戦いを心の底から楽しいと思ってしまった。フザケンジャーの使命ではなく、楽しみのために戦っていたんだ。本当なら、あいつを半分放置してでも、インキュバス化した関口を助けてやるべきだった。俺はセックスの誘惑には勝ったが、修羅道の誘惑には勝てなかった・・・」

 長官は、僕に背を向けたまましばらくうなだれていた。

 何だか、僕は長官に対して無神経な振る舞いをしてしまった気がする。長官はデーモンの息子である以上、あらゆる煩悩を捨て去らなければならない身なのに、今また、自分から誘惑の道に屈してしまったのだ。

佐伯「それに、あれは恐らく奴の全力じゃないだろう。黒騎士と言うからには、本来は闇の鎧をまとった姿だったはず。それに、スレイプニルと言えば、神族オーディンの愛馬。・・・今のままではダメだ。もっと、佐伯仙術の更なる力を極めなければ」

 そう言うと、長官は黒騎士との戦いに用いた日本刀を手に取った。

僕「長官、その刀・・・」

佐伯「村雨丸だ。黒騎士にもらった」

僕「え?村雨って、それ八犬伝の刀じゃあ・・・」

佐伯「ああ。だから、頭のおかしい奴だって言っただろう。だが、佐伯仙術を伴うにはうってつけかも知れんな。佐伯仙術と、この刀本来の強さをうまく組み合わせられれば、愛撫合戦や挿入戦に持ち込まずとも、淫魔に強烈な性感ダメージを与えられるはず」

ポッティ『二人とも、今回ばかりは本当によくやってくれた。唯一神のわしからも礼を言わせておくれ』

 ここで、ポッティから通信が来た。ちなみに、神通力を通して佐伯長官の耳にも聞こえている。

ポッティ『ヘルサの送り込んだ怪人は倒れ、スクヴス救済教の野望も打ち砕くことができた。後は警察に任せれば、イマドキスクールの生徒たちを保護してもらえるじゃろう』

僕「でも、肝心の佐久葉という女の教祖は逃がしてしまったし、結局、あいつらの手助けをしただけのような・・・」

佐伯「それに、生徒たちも全員を救えたわけじゃない。インキュバス化した関口勇樹と、何人かの女子生徒は行方をくらましたままだ」

並木『あまり気を落とさないで。どんなに完璧なヒーローでも、全ての人を救うなんてできっこない。最善を尽くす事が、今の私たちにとって一番大切な事だと思うの』

ポッティ『うむ。スクヴス救済教は、いずれ我々の前に再び姿を現すじゃろう。その時こそ決着をつけるのじゃ。しかし・・・奴らの犠牲になった娘たちには気の毒な思いをさせてしもうた。神谷くんも、彼女たちの異常な発育ぶりに気づいておったじゃろう?あれは、メアリィ女王の開発した特殊な粘液によって、無理やり肉体の成長を早めた結果なのじゃ。大体、1年経つごとに、5年分歳を取るよう設定されておる。つまり、10歳の時に肉体改造を受ければ、11歳の時は15歳、12歳の時には20歳、実際に20歳を迎える頃にはもう・・・』

 ポッティの話を聞いて、僕は背筋が凍った。肉体改造を受け、10年経った頃には、もう肉体の年齢が60近くなっているわけだ。きれいになりたい、スタイル抜群になりたいという、無垢な思春期の少女たちの弱みにつけ込み、こうも残忍な真似をやってのけるなんて。

 僕は何としても、イマドキスクールの生徒たちの無念を晴らし、必ずや悪魔共の野望を打ち砕いてみせると心に誓った。

佐伯「歳を取って死ぬだけならかわいい方さ。佐久葉の本当の目的は、そいつらの中で、更に選りすぐりの精鋭を見つける事だったはず。つまり、奴に見込まれた女の子は、手頃な年齢で老いをストップさせられ、今度は淫魔の肉体を与えられるんだ。そこで、死ぬまでずっと佐久葉のために男の精を求め続ける」

僕「長官。僕は、人間の弱みにつけ込む悪魔のやり方が許せません。確かに、悪魔の誘惑に屈する人間の側にも問題があるのかも知れない。だけど、自分の利益のためだけに、無関係の人々を利用する者がいる限り、この世から悪が消え去る事はないでしょう。僕は例え法に反しようとも、そんな連中から罪のない人たちを守り抜いて見せます!」

佐伯「今の言葉を忘れるな小僧。世の中が乱れていくのは悪人がいるからじゃない。悪人と戦おうとする者がいないからだ。人はいつの時代も強い心を持った勇者を、英雄を求めている。それは何も、表向きの歴史に記されるものでなくたっていいんだ。社会の闇にはびこる者たちを倒せるのは、影の世界でこそ英雄になれる者・・・つまり、フザケンジャーレッド。お前しかいないんだ!」

僕「はい!」

 佐伯長官の励ましを聞き、僕は心身ともに元気がみなぎってくるような気がした。ようし、これからは悪魔の誘惑などに屈せず、自分の信じられる正義の心を最後まで貫いてみせるぞ!

僕「あ、ところで長官、その村雨丸とかいう刀ですけど。あなた、銃刀法の免許とかって持ってます?」

佐伯「う、そ、それは・・・」

僕「長官が修行してくれるのはありがたいですけど、無闇に刀を振り回して、警察につかまったりなんかしないでくださいね。僕、こんな歳で警察のお世話になんかなりたくないんで」

佐伯「てめえ・・・一発試し斬りさせろ!佐伯仙術込みで!」

僕「そ、そんな~!」

 そんなこんなで、恐怖のイマドキスクール事件は、僕たちフザケンジャーの活躍によって見事に一件落着したのでした。もちろん、この事実が表沙汰になる事はないだろうけど、僕たちのした事で一人でも多くの命が救われたのなら、僕は他に何もいらないと思った。

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