■domine-domine seil:0b 俺の甘いものとついでにやらかしたっぽいもの 03
「お前が来るっていうから……風呂入って待ってた」
考えてることは同じだ、と言われる。
「かっこいい(笑) セリフは想定してなかったけど」
「なんですかその言い方は。口に出してないんですからあまり引っ張らないでください……」
「いじけるなよ」
「いじけますよ。ていうか、よくこの状況で人をからかえますね」
ベッドに並んで腰掛けて、身体を預けて、優しく抱きとめて、手には無造作にケーキがあって、こうしてみれば食器やテーブルもシンプルな統一感があってスタイリッシュだといえなくはないか?
空虚なこの部屋が、一枚のポスターにみえてきた。
まあ、クラインは兎も角、頭のてっぺんから足の先まで軍人の俺ではモデルのような華はないわけだが。
それでもいい構図でいい雰囲気の筈だ。
「『相手がボケたらツッコんで差し上げるのが礼儀です』って士官学校じゃ習わないのか」
「習いませんよ! それに俺はボケてません」
「あー……」
「な、なんですか」
「だよなー……本気っていうのが」
「だから、あわれんだ目でみないでくださいって」
「いやー。でも」
『キミがデザート』とかない、と一刀両断。
イロイロ台無しだ。
「あっ」
俺は仕返しすることにした。
「くれるっていったのに」
「言いましたよ」
涼しい顔をしてケーキを掬い、口に運ぶ。
「どうぞ」
しばらく無視し続けてから、俺は掬い取ったケーキを差し出した。
「……」
クラインは子供みたいな表情で俺をみて、スプーンを口に入れた。
「おいしいですか」
「おいしいよ」
チョット不満そうなのが可愛い。
二口、三口と食べさせて、俺は戯れから別の回路にシフトした。妙な支配欲に塗り替えられていく。
横顔がよぎるからだ。悪名高い腐敗の手=Aあのオキシダントブラストを躊躇いなく行使する、味方にも魔人≠ニ呼ばれる、怜悧な指揮官。
叱責されると俺でも少し怖い。感情的でない分、深く突き刺さるし何が間違いであったか、こちらも冷静に理解できて益々堪えるのだ。ああいうときは、この人は激情にかられることなどないんだろうと錯覚する。
そうじゃないわけだが。
こんな風に懐いてくれたり。わかりやすいところが好きだなんて告白されて、俺はいつ死んでもいいと思った。
「欠片が付いてます」
「どこ」
クラインが少しあわてて頬に触れる。
「顔を上げて下さい」
取ってあげるようなそぶりに、素直に俺を見上げる。俺はそっと覗き込むふりをした。泉のような瞳が綺麗だった。スプーンを持った手で頬を捕らえて口付ける。
「んっ……」
柔らかな唇を少し割って離す。舌の先が僅かに触れ合った。残った甘さに疼く。
「あなたでも、引っ掛かることがあるんですね」
「……」
俺はわざとクラインの顔をみないで手を戻した。もう一度ケーキを掬おうとする。
見なくても、どんな顔してるかわかる。怒るでも怖がるでもなく少しだけびっくりしたぽよんとした顔だ。畏怖すべき英雄じゃないときの、小さくてわかり辛く、そして柔らかな表情だ。俺はこの、猫のようなかわいやわらかいクラインが好きなんだ。多分、アミ達が言ってる萌えってやつを体感している。
半ばクリームに埋まったスプーンを、俺の手ごと白い手が引き寄せる。あたたかく柔らかなクラインの手。大事そうにおし包んだ俺の手を自分の顔の前に持っていく。そして、スプーンにはのっていないクリームを舐めた。
今度は俺がとろける番だ。少し固まっていた間に、クラインは俺の手についていたケーキの欠片を辿り終え、スプーンを咥えていた。
こんな風に懐いて、手から餌を食う子猫みたいに。色んな感情が溶け合って、俺を押し上げる。
届かない筈のひとに触れて、どうにだってできることに、俺は酔った。
俺は引き抜いたスプーンをテーブルに置いた。
残ったケーキを掬う。指先に絡んだ優しい甘いもの。可愛い恋人の好む柔らかな菓子。
クラインは愛おしげに眺めてから、ソレを口にした。
俺の手を舌が撫でる。甘いケーキと一緒に、掬われる。甘く、優しく、理性をたべていく。
本当の意味で手から、猫のように。
とろけた瞳はクリームのように。
俺の心もとける。
「おいしいですか」
最後の欠片を舐めさせて、俺は優しく頭を撫でた。
心地よさげに目を細めて、肩が寄せられる。
時折舌を這わせながら、俺の手を、大事そうに掴んだまま、クラインは頭を傾けた。膝枕の姿勢になる。男の脚など硬いだろうに、目が合うと、嬉しそうに微笑んだ。
俺は背を屈めて顔を寄せ、囁いた。
「クライン……」
「なに」
「……いいですか」
「いいよ」
相変わらず軽い身体だ。引き上げるように肩を掴んで、向かい合わせで膝に座らせる。スリッパ代わりなのか、かかとを潰したスニーカーが転がる。靴下は履いてなくて、素足だった。
飾り気がなくていたいけで、この世の咎を忘れそうな抱き心地だ。俺は息が荒くなるのを精一杯堪えて、暖かさを堪能する。毎日こう出来ればどんなにいいか。アイスのようにすぐ溶けてしまう甘さ。儚い時間。
俺は自分の靴を少し乱暴に脱ぎ捨て、恋人を抱いたまま、彼のベッドに上がった。
膝を立て、身体を押し付けると赤い顔をされた。熱くなってるのは俺だけじゃない。改めて嬉しくなるが、そのへんをかわいがるのはまだ先だ。
上着を放り出し、先に裸になって、クラインを見つめた。膝の上で惚けた顔が可愛かった。細い指が胸板を撫でる。そんな色気のある仕草に、一気に火が点いてしまう。
スナップボタンを全部外して押し倒す。柔らかな肌に口付けて舌を這わせる。
「……っ……」
感じやすいな。もっと激しくしてしまいたくなる。腰を掴んで腹を撫でる。つきさしてしまいたい。
「そこ、好きだな」
快感に息を上げながらも、クラインは俺をみて少し笑った。困ったような、呆れたような、無垢で恥ずかしげな顔だ。
「……おかしいですか」
いかに少年ぽいというか少女のような雰囲気でも、男の腹に執着するなんて、言われなくてもイカれてる。
「変だ」
わかってるが、俺はクラインの小さな腹を触りたかった。薄く、柔らかく、かわいらしい。ゆっくり撫でるとクラインは震えるような息をついた。
「こんなトコ……さわっても……ジョスは気持ちよくないだろ……」
下着の縁をくぐり、際まで指を這わせる。
「植えても何も生えてこないし」
「あなたは気持ち良いんでしょう?」
肩を掴んでシーツに押し付ける。
「お前が……ハァハァしてるって思うと、なんかおかしくなってくる……」
「俺のせいですか」
「そうだよ」
クラインはつよく、俺の手を掴んだ。
「どこだって……ん……同……だけど」
もう甘いものはないのに、幸せそうに舐められる。
「……さわられたら……」
「……」
熱っぽく訴えられて、目眩がしてきた。更に強く、肩を掴んでしまう。痛いだろうか。傷つけたくないのにな。俺は熱さに任せてシャツの生地を引いた。少し痕があった。ソレはごく淡いもので、幸いすぐに消えそうだった。惜しい気にもなる。駄目だ。
「俺、は……っ……ジョスのて、……す……き……」
言葉が切れ切れなのは、俺の手を懸命に愛撫する為で、また、俺が彼の肌を犯すからだ。早くも消えつつある肩の痕も、彼が俺にしてくれるように、優しく舐める。綺麗な肌だ。サイバネティクスに詳しくないから、どこからが彼自身でなく、支給されたものであるか、俺には区別がつかない。
――俺も、あなたの身体が好きだ。
言ってしまいたい。が、いま口を開くと俺も言葉にしかねる。
仮に、その総てが神の創りたもうたものでなくても、
俺は、クラインが好きだ。
キスしたいが、このまま触れていいものか。好きにくわれて手はふやけそうだ。俺の頭の中も相当ふやけていて、あまり意味のないことかんがえてしまう。さわってしまうおうか。
「……ジョス、これ」
ティッシュで濡れた手を包まれる。変に気が利くというか。そんな気にしなくても。なんて矛盾した思いに惑う。
「ごめん、気付かなくて」
チョット気持ち悪いよな、なんて言わないで欲しい。気持ち悪くないです、かわいいです。そんな甲斐甲斐しくされると俺はこわれます。
もういいか。
俺は手を繋ぐ事で両手を封じ、細い身体に覆い被さり、言葉も奪った。この人は、可愛らしく感じやすいわりに饒舌だ。ただ睦言でなくてソレは後ろ向きで、健気でいじらしいともいえなくないが、俺は胸が苦しくなる。まだエロゲばりの実況をされる方が、能天気な分ましじゃないだろうか。
かなしいこと言って欲しくない。
「大丈夫ですから」
囁いて、もう一度長いキスをする。溶けてしまうといい。
口の中を余さず辿っていると、手から力が感じられなくなった。本当に、溶けてしまったみたいに、クラインはしどけなく、儚い呼吸を繰り返す。唇を離した俺を、見つめている。非力な視線にあえかな期待。慎ましいが、求めてはいる。瞳に隠れた確かな色香が俺をたぎらせる。抵抗のない手を放し、ウエストを留める紐を解いた。
かわいい腹の下は、十分あつく、俺はその手触りを楽しんだ。一気に昇らせるつもりはない。できればゆっくり、甘く味わいたい。
うっとりとまどろんでいると、手を引かれた。
クラインがじっと俺をみている。欲情が混ざる薄い澱みも、綺麗な瞳のアクセントだ。
「ジョス……苦しそう」
いや、むしろ夢心地ですが、と思う。
「このへん」
僅かに身を起こして、使っていない手で、掴まれた。
「なっ……」
意外に強い力が込められて、俺は思わず焦った。まあ、意外もなにも、本気を出したらもぎ取られかねないわけだが。ソレは折角のラブシーン、忘れてしまおう。
位置的に、腿の辺りに触れてたんだろう。俺の昂ぶりを、くるしそう、と表現し、クラインはデニムの上からくにくにと握ったり緩めたりし始めた。目の前が白くなる。
「ダメですっ……」
俺は背筋がぞくりとして、飛び起きた。このまま脱力してクラインを押し潰したくなかったからだ。
「そうか」
クラインはゆっくり俺に沿って起き上がると、ベルトに手をかけた。まるで蜘蛛だ。
「脱がないとマズいよな」
ここ座れ、と言われて素直に従ってしまう。ベッドの縁に移動して、糸に絡め取られるように、俺は下着ごと服を奪われてしまった。脱がしたジーンズは綺麗に畳んで置かれる。丁寧で初々しい仕草だが、やっていることは恐ろしい。蜘蛛の巣に囚われるような甘さに屈する。
「……」
いけないことだ。
なんてこと、と思うが、抗えなかった。
優しく、甘く、口付けられる。手が好きだと言った、清楚な仕草と同じ、理性を掬いとる可愛い舌。
「ダメだった?」
「……」
いいえ、と首をふる。
そうか、と優しく腿を撫でられる。腰掛けた俺の足元に座り、クラインは俺を優しく見つめた。
「こんなに……なってて、俺のことばかり、気持ちよくしてくれようとしてたから、気になって」
すうっと指で辿られる。
むしろそういうのが苦しいんですが、と呻きそうになる。腰が震えてしまう。
「お前にも気持ちよくなって欲しい」
背徳感に脳が焼き切れそうだ。口の中の温度に、狂わされる。とても上手いが、あまり余裕はなさそうだ。懸命なトコロがまた、俺をおかしな気持ちに駆り立てる。
こんな風に、ご奉仕されるなんて、とか、邪な自分を殴る自分とか、純粋な愛情を歪めるなんて、とか。でも、もっと欲しいと思う部分は同じだ。深いところで、求めている。柔らかな熱を、優しい愛撫を。
耳に届くのは自分の抑えきれない吐息と、僅かな水音だ。時折震える身体も、もう隠せない。優しく吸い付かれて、軽く呻いてしまった俺を、クラインが労わるように見上げた。唇の端を伝う跡がなまめかしい。唾液と、多分、別のものが混ざってる。愛おしさと、このひとにこんなことをさせてるいかがわしさに、快感が増幅されてこわれそうだ。
「いきそう?」
俺はただクラインを見つめ返した。どうみても犯してるのは俺なのに、そうはならない。屈服させたいわけじゃないが、少し悔しい。子供みたいなのに、大人で、猫のように、いつも翻弄する。
フクザツな心中など知らずに、クラインは優しく、俺に告げる。
「出したくなったら、いつでも」
俺は脳味噌がぐちゃぐちゃになりそうなのを堪えて、口元を柔らかくゆがめた。にこやかな顔をしたつもりだが、堪えてるのでなってないかも。
手はそっと、黒い髪の上に置く。
「提督、ご命令を」
むき出しにしたクラインの肩が、薄く染まった。俺を恨めしげにみる上目遣いがいたいけだった。嬉しくなりつつも奥歯を噛みしめる。本当は越しそう。だけど折角だから。
「この色魔……変態」
「そうですね」
恥ずかしさに俺の顔をみることができなくなって、再びうつむいてしまう。
ひざまずいた姿勢で、俺の立てた膝の間で、柔らかな頬を赤くする。違わない。このイカれた光景に、俺はすっかり舞い上がっている。なんという可愛さだ。
ウブな仕草で震えて、でもあの目はずっと、吐き出しそうなアレをみてる。
「提督だってそうですよね」
「……そうだけど」
いつ言おうかって、ずっと考えてたのかよ、と濡れた猫みたいな顔でクラインが呻く。
「キモい。サイアク」
俺の脚の内側を指で滑らせて、熱っぽい声が罵る。なのに感触は愛おしげで、淡い瞳は優しくあつい。
とろんとした舌が少し見えて、こぼれそうな先を拭う。次に柔らかい唇の感触。軽いキスを受けて、俺は目の前が霞んできた。
「ジョス……」
咎めるように舌が触れる。もっとして欲しい。次の言葉までの一瞬。
そして俺を促す細いつぶやき。
ココは階級で呼んで欲しかったがあまり虐めるのもかわいそうだ。
「存分にやれ」
色気も情緒もない言葉に、冷静な自分なら苦笑するだろう。だが今は壊れそうだし。コレでもクラインは結構打ちのめされている。俺の上手いとはとても言えないリードに、こんな風に溶けてくれるなんて。
「……っ」
髪の中の指に、思わず力が入ってしまう。撫でるというより頭を掴むような。痛いんじゃないか。でも余裕がなくて、まっすぐな黒髪を乱してしまう。
俺は情けないだろう顔で呼吸を繰り返し、してくれることを受け取った。
「く……ぅ」
吸いついて、柔らかで暖かな舌を絡めていく。気持ち良かった。
「もう……」
言葉が追いつかず、しゃべるのをあきらめてティッシュの箱に手をのばすが叶わない。間に合わなくてそのまま、放ってしまう。なにもみえない。
クラインの小さな手に絡め取られた左手が逆に、強く、握ってしまう。好きだ。
出すなんて一瞬なのに、長く感じてしまう。
「……!」
綺麗な髪に、ボタンの外れたシャツに、優しげな、なにもしらないみたいな顔に。クラインが途中で離した。だから白く、飛び散った濁りがこの人を汚す。
「な……」
なにやってんですか、俺は上手く出せない声でうろたえた。
「ぁう」
快感にまた、今度は肩を握り締めてしまう。放ったばかりの溝を舐められて、俺は両目を閉じてしまう。
「……!」
「!?」
「……いた」
クラインは右目を押さえてティッシュを抜き取った。
「目に入った……」
「ちょ、乱暴にこすったらだめです、多分」
毒じゃないけど、どうなるんだっけ? ならないのか? だめだ何も浮かばない。
「もちつけ」
間抜けな中腰の俺を座らせて、自分はティッシュでまぶたと口元を拭う。
「洗ってくる」
洗面所で水の流れる音がして、クラインはすぐ戻ってきた。簡単に顔を洗い、うがいをしたようだ。デンタルリンスの人工的な香りがする。とりあえず、目にみえる異常はなさそうだ。しかし髪までは取り切れなかったのか、白く飛沫が残っている。どうにもいかがわしい有様だ。
「飲むとか無理だし、せめて綺麗にくらいしてやろうと思ったんだが」
ごめん、と一緒に持ってきた濡れタオルで俺の腰を拭く。熱すぎず心地よい温度だ。
「だ……大丈夫なんですか」
「精液くらいで何もならないよ」
あまりその、ズバリな単語を口にしないで欲しい。
「……」
硬いままだったトコロが疼いてしまう。ソレをみてクラインは少し呆れた顔をした。
「なに反応してんの」
タオルを放り出して、俺の膝に上る。
「ジョスってエロいよな」
解けた部屋着の紐が腹に当たってくすぐったい。脚の間にはまだ布越しだけど、丸い感触。小さいお尻が触れてる。
腰骨の位置までボトムスがずり落ちてしまって、下着がみえている。セクシーというよりは、子供っぽい。恋人が出来たからって服装を変えるような機微はこの人にはない。洗い晒しのパジャマなのか部屋着なのか、そんなのとただのパンツらしいパンツ。まあ、私服を持ち込んだところで着る機会などまずないだろう。提督は多忙だ。それに、クラインのように現場上がりの、ワケアリの前線を渡り歩いていれば、荷造りは簡素を極めてしまう。名家の出の由緒あるご身分の方々なら、愛用のティーセットはおろか、ワインセラーまで持ち込むと聞いている。どっちもどっちだが、と苦笑する。
邂逅した艦隊に、茶会にでも招かれたらどうするつもりなんだ。
ああ、そういうのは制服でやり過ごすつもりなんだ。似合うし、いいけど。
提督、かわいすぎます。
俺はいつもの、あの帽子が本体なんじゃないか、マントが操ってるんじゃないか、などと不敬なジョークのネタにされる提督セット≠ェ激しく好みだ。礼装なんか見たら、鼻血が出やしないか気が気でない。
蟲の殻の剣、儀礼用の中折れ式リボルバー。剣呑な武器まで、小さな身体に纏う。初めて逢ったときのそのアンバランスさに、人形のような凛々しさに、こっちをみた表情のあどけなさに、そのイノセントな魅力に落とされたんだ。
今なら言える、ときめいた。
一目惚れなんだ。
すきだクラインあいしてる。
ブリッジでの勇姿を崩壊させるだらしない格好も、そのギャップにたぎる。かわいい。抱きたい。
俺は恋人を膝に上がらせるだけで、突き挿しかわいいお腹を圧し、内側を撫でてやり、奥まった高まりを愛でる夢に溺れた。
「おれは……さいてい……です」
この、華奢な感触が好きだ。おそらく、耳まで茹で上がった俺が、やわらかな目で見上げるクラインを抱き締めた。裾から手を差し込んで背中をたどり、片方の手が、ヤワな腰を、俺の腹へ押し付ける。布越しでも十二分な刺激だった。
「うん……でもいいよ」
クラインは俺の首に腕を回し囁いた。
「ジョスが気持ちいいなら」
それでいい、と胸に顔を埋める。
提督、自重w¥o来ません。
「さっきのは、お前ああいうの好きそうだからやってみた」
残念ながら好みを主張出来るほどの場数は踏んでない。だが確かに背徳的だった。この人の背中には、白い翼が生えてそうなのに。
「あと懲罰」
首筋に、甘い感触がある。
つよく吸い付いて舌先で圧してくる。
指先が濡れるのも構わずに、愛撫の跡をそっと撫でる。他の奴には解らないだろうが、満足げな笑み。何度も、そこに可愛い仕草で口付けて、俺に告げる。
「とにかく拷問だ」
耳に甘噛みの感触があって、快感に背筋が凍る。ため息がでてしまう。
膝から降りると、クラインは俺の傍らに座った。
「仕返ししてやろうと思ったのに」
提督って言ったからか? プライベートでそう呼ぶとすごく嫌がる。じゃあなんて呼べばって言うといつも少し考えて、クラインでいいって。そのうち何か可愛い愛称でも考案しよう。
「さっきはしくじった」
「そうですよもうあんなマニアックなことしなくていいです」
「どの口が」
「いや、でもですね、アレはダメです」
ダメじゃないけど。天使なのにいけない。
「よ、汚れるし、いきそうだったらこちらで何とか出来ますから……」
「お前」
クラインはしどろもどろな俺をみて苦笑した。
「俺にやらしい事させたがるのに、やったらやったで慌てるし説教するし」
ヘタレだヘタレ、と好きに言ってくれる可愛い人。
「今日だってケーキ食べてただけなのに、なんか違うものたべちゃってるし」
「そんなのご自分だって……あんなこと」
悪戯はした。でも、おいしいって言ったのはあなただ。
「あんな挑発されたら、あてられますよ」
「餌付けしたのお前だろ」
だから、そういうのが。
疼きを堪えて、俺は目をそらし息を整えた。
「提督……っ」
つい口走って、うろたえる。
申し訳なさげな俺を眺め、クラインは困った顔で笑った。でも、とても甘い顔だ。
もっと、甘くして味わいたい。
「お前は俺をどうしたいんだ」
ラフに座ると、はだけた上着の中身が丸見えだ。柔らかい身体。今は恋人に、注いでしまいたい。溢れてしまえ。
「俺は……お前に気持ち良くして欲しい」
額に手を当てる。熱はない。そのまま、頬を優しく挟んでキスをする。
薄いミントの味しかしないのに、甘かった。柔らかなケーキの甘い匂い、スポンジのように罪を感じない軽い身体。咎を突き立てるのは俺か。
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