■出来損ないの聖餐 08
「それでは、私はこれで」
さすが本人? というか、彼女の声に先導され作業を進めると、触手っぽいナニカや、靄の向こうの肉塊的なものの姿が薄らいで、次第にみえなくなった。息苦しいくらいの存在の重さも、心や体からきえる。
同時に、彼女の気配も、透明になっていく。
「このまま不本意に食してしまわなければならないのかと残念に思っておりましたが、直前でお二人が自由に動けるようになられましたので上手くアレを戻す事が叶いました。ありがとうございました」
「いや、礼を言うのはコチラの方だ」
「それと」
「何だよ」
「……あなたは」
ユミナは少し戸惑った後、言葉を続けた。
「ご自分で考えているより清い人です」
「はあ?」
「真面目に聞くこと」
「はいはい……イヤ、悪かった」
「これからもあなたを喰……糧にしようとする存在はなくならないでしょう」
嫌な話だ。
「ですから、あなたは……」
声に、ノイズが混ざり始める。
遠くなった証拠だ。
「兎に角、私が言いたいのは」
昔のように癇癪を起こすのかと思ったが、それはなかった。
「どうか、お気をつけて」
「……ありがとう」
彼女は変わったのだろうか。
変わってないような気も、少しした。
「隊長、良かったですね」
朝日を吸い込んで、エストリタは嬉しさ一杯に微笑んだ。
「ホントにな……」
あとは、ある意味裸より恥ずかしいこの格好を何とかするのが問題かと、ユイはカゼをひきそうな肩を寄せて考えた。
(1stup→200211tue)
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