■夢をみた 06

 これは夢だと気付く。寝ている間に脳が行うデフラグ。みたいな感じのソレ。
 だから不安になる必要は無い。望まない快感に絶望して身の内を暴かれて、喰われる事も。アレはもういない。
 これは安堵か。布団の中にいると思い出して、目を開ける。
 サクランボに似た色の瞳が一対。
 深夜に何故かじっと己を見つめる幸せそうな色。
「何で起きてる?」
「みてたの。ずっと。今日も駐在さん可愛いなって」
「お前ね」
 実にしょうもない。どうしようもなくしょうもないけど、魂とかがあるかどうかとか、多分コイツには関係無い。
「だったら、俺が寝言でうるさかったとか、ゴソゴソ動いて気が散って寝られない、とかではないんだな?」
「ないよ。いつもどおり微動だにしてないよー。いっつも思ってるけど動かないで寝れるとか器用だよね」
 それとね、と嬉しげに付け足す。
「えとね、ぷうぷうしてかわいい。駐在さん肺呼吸するでしょ? だから息するとチョットだけ体が動いてなんかふわふわで可愛いの」
 どこからかのびてきたスライムの部分が触手を形作り、頬をつついてきた。ソレを握って、温度を確かめる。ふわふわしているのはお前だと思う。
「どんな夢、みてたの?」
「昔の。古い夢だよ。そのうち100年になる」
 3桁は言い過ぎか。でも、早くそうなればいい。
 終わった事で、理不尽に求められる事も無い。
 ソレは半分ウソだ。これからもずっと、理不尽に誰かの糧になってしまうかもしれない。自分が永らえる限り、その可能性はゼロにならない。
 ソレでも生きていける。無味乾燥な生でなくて、今は暖かいからだ。
「うわー」
「何だよ」
 半ばめり込んだような体勢で、形の無い伴侶の体にもたれる。本来ルナの体表に体温などはない。ほんのり暖かいのは、そうしてくれるからだ。余分に魔力を消費してまで、暖めてくれるからだ。
「駐在さんかわいいー」
「うるさいな」
 だから一緒に生きていける。
 暖かい手? を取って、無意味なようで何がしか意味のある日々がある。

 (1stup→201231thu) clap∬


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