『ラブリィ・ダーリン』

○最終話○ いつも二人で(その3)






「・・・でもさぁ、初めてって痛いんだよ? 知ってた?」
「えっ!?」

 痛い? それは、どれくらいの痛さなのだろう?

「どんな風に? さっきパパをつねったくらいの痛さ?」
「・・・う〜ん、男の人はそういう痛みないから、わかんないなぁ・・・でも、つねるより痛いと思うよ?」

「・・・・・・ちょっとくらいなら、我慢できるもん・・・」

 優吾は困ったなぁ、と言うような顔をしながら、華を見ていた。
 しかし、見ているだけで何もしようとしない優吾に華はどんどん悲しい気持ちになってしまう。


「・・・わかった・・・」
「ん?」

「パパは、私のこと、そういう目で見れないんだ・・・好きって、やっぱりパパとしてなんだ、そうなんだ」
「華ちゃん」

「私なんて、子供だし、女としての魅力がないんだ。どうせ、フェロモンいっぱいのダイナマイトバディが好きなんだっ!!!」

 わぁっと泣き出してしまい、優吾はおろおろするばかりだった。

「・・・なぁに、それ・・・・・・???」
「ハッキリ言ってよぉ、そういうのが好きだってぇ!!!」

 もう、自分でも何を言っているのかよくわからない。
 ただ女性として見てもらえない苛立たしさを何でも良いからぶちまけたかった。
 優吾は、小さく溜息を吐き、頭をぽりぽりと掻く。

「あのね・・・いつか、そう言う雰囲気になった時でもいいんじゃないかなぁ、なにも今日いきなりじゃなくてもさ、時間はこれからいくらでもあるし・・・」

「このままじゃ、いつそう言う雰囲気になるのかわからないよぉ!」

 パパはのほほんとしてるし、
 本当に、このままじゃ私がおばあさんになったって、何もしてこないかもしれないっ

 気が付いたら何もしないで一生を終えることだって考えられそうだ

「ヒドイ、パパ・・・ハッキリ言えばいいのにぃ」



 暫く優吾は黙って華を見ていた。

 だが、
 やがて小さな声でポツリと呟いた。


「僕は・・・華ちゃん大事にしたいんだけどなぁ」


「・・・え?」

 まさかそんな答えが返ってくるとは思わなかったので、一気に言葉を失ってしまう。
 どういうことだろう?




「それって、確かに愛を確認したりすることかもしれないけど・・・やっぱり子供を作る行為でしょう? 完全な避妊なんてないんだよ。と言うより、この家に避妊具なんてないし。もし、赤ちゃんができたりしたら・・・」

「・・・なによっ、分かった! 認知しないって言うんだ! 私はそれでも産むんだからッ!! パパの子供なら沢山産むんだからッッ!!!
1ダースでも2ダースでもドンと来いなんだからっ!!」
「・・・は、華ちゃん、認知とかじゃなくって・・・まだ高校生・・・」

「バカバカッ、年齢なんか関係ないでしょ!? それに大昔だったら私の年齢なんて適齢期よ。湯河のおばあちゃんなんか、私の年で赤ちゃん産んだんだから!!! それにそうよっ、本当のパパなんて17歳なのにママを孕ませて、蛙の子は蛙だもん、若くたって歳とってたってパパの子は私が産むんだから若い方がいいに決まってるでしょ!!!」


 優吾は華の意外な反論にあい、非常に戸惑った。
 彼が何かを言えば言うほど彼女の決心は固くなる一方のようで言葉もどんどん過激になる。まるで効果がない。
 しかも、今自分の子を産むとか何とか・・・・・・

「あの、華ちゃん・・・」
「あ〜もうわかったっ! パパは結局そうなんだ。私のこと大事にしたいとか言ってそういう風に見れないだけなんだ!! もし赤ちゃんが出来ても嬉しくないんだ!!!」


 そこまで一気に言うと、優吾は黙り込んでしまった。

 華はそれを見て、今の自分の言葉にハッとする。
 言っているうちに、これまで考えもしなかった言葉がどんどん出てきた。
 それが、信じられないことに確信すらもって。

 だが、今のは明らかに言いすぎだ。
 華は、彼の表情を恐る恐る確認する。


 すると・・・

「華ちゃん、生理終わったのいつ?」
「・・・・・・え? ・・・・・・今月はまだ・・・・・・そろそろかもしれないけど・・・いつも不順だし・・・」

 それを聞いて再び黙り込む優吾。
 彼が何を考えているのかわからない。
 ただ無言のまま華をじっと見つめ、少し眉を寄せて───



 だが。


「・・・わかった」


 そういって、ゆっくりと顔が近づいて、唇が重なった。
 けれど、今日のキスは、昨日のとは全然違っていた。

 最初は重ねるだけのものだったが、暫くすると華の口の中に彼の舌が侵入してきて、優しく絡め取る。
 ビックリしてひっこめたが、優吾はそれを許さなかった。

 こんなキスは、知らない。

「・・・・・・ん・・・ん、・・・・・・っ」

 どちらのものかわからないほど唾液が混ざり合って、溢れてきたそれを必死でのみ込む。
 その間も、優吾の舌は求めるように華に絡みついていた。


 これ、キスなの?

 う、うそ・・・
 どうしよう。

 キスだけで、こんなにドキドキして、これから私、どうなっちゃうの?
 体がフニャフニャになって力が入らないし・・・


「華ちゃん、こういうこと、わかる? ちゃんと理解してる?」

 唇を離して、確認するように華に問いかけてきた。

 それを聞いて、彼が何を言っているのか理解した。
 そして、華は意を決したように大きく頷く。


「・・・・・・そっか・・・じゃ、途中でイヤになったらちゃんと言うんだよ?」

 イヤになるわけがない。
 こんなに好きなのに、私はきっと、この先もっともっと好きになると思う。


 パジャマのボタンを一つ一つ丁寧に外され、やがて花柄のレースをあしらった可愛らしいブラジャーが見えてくる。
 キスをしながらブラジャーのホックを外され、露わになった胸を直に触られる。
 その手は思ったよりもずっと大きくて、ゴツゴツしていた。

「触られるの、イヤじゃない? 大丈夫?」
「ん、変な気分」

 くすっと笑い、顔を胸に埋め、そこら中にキスを振らせると、キスをした部分がピンク色に残って薔薇の花びらが咲いた後みたいだった。
 頂を口に含まれたところで、

「・・・ふっ・・・・・・ぅん・・・」

 変な声が漏れて来ちゃう。
 恥ずかしくて慌てて口を押さえると、ダメだよって言って手をどかされてしまった。

「パパ〜、何か、変だよ〜」
「段々気持ちよくなってくるよ」

 気持ちイイ?
 よく分からない・・・そうなのかな

 でも、何だかお腹の辺りがキュってしてきてぞわぞわする


 ううう、それにしても恥ずかしい

 胸を揉まれたり舐められたり吸われたり、まさかこういうことまでするものだとは思わなかった。
 恥ずかしさで、顔だけじゃなく体もピンク色に染めて身を捩る。
 今、自分がどうなってしまっているのか分からない。

 パジャマのズボンに手をかけられ、それも簡単に脱がされてしまうと残るはショーツだけになってしまう。

 だが、あまりの緊張と未知の恐怖で体が震えてきてしまった。


 や、やだ、なんで震えるのよぅ!!

 おさまれ、おさまれっ



 しかし、華がいくらそう思っても体の震えは一向にとまらない。

 優吾はそんな華に気づくと、穏やかに微笑み安心させるかのように彼女の頬を優しく撫でた。
 それから、ふっと彼の体が華の上からいなくなったかと思うと、彼女の隣に寝転がりにっこり微笑む。
 何が起こったのかわからない華は、目をパチパチさせて優吾を見た。


「やめよう」


「えぇ!?」
「だって、華ちゃん、まだ心の準備出来てないんだよ。口では色んなこと言えてもね、それはこうなることをちゃんと理解できてない証拠。コワイのに無理しちゃだめだよ」

 彼は再び起きあがると、脱がしてしまったパジャマを手に持って華に着せてあげようとする。


 華は、そんな優吾を何だか妙に冷静な気分で見ていた。

 もしかして・・・最初から私が震えてしまうって考えて、する気なんてなかったんじゃ・・・・・・

 なんだか本当に、このままこれでやめたら、次があるかなんてわかったもんじゃない。
 しかも、こんなにアッサリと退かれて・・・

 大事にされてるのは分かったけど、もっと感情的になってくれてもいいのにっ


「はい、華ちゃん足をだして」

 ズボンを穿かせようと、足に裾を通そうと奮闘している優吾の腕を掴み、それを制する。
 首を傾げて不思議そうな彼を無視して、華はさっさとショーツを脱ぎ始めた。

「は、華ちゃんっ!?」
「さぁ、パパも脱いで! 私はキレイサッパリなぁんにも着てないのよ。女の子の方にここまでさせておいて、このままにしておくの?」




その4へつづく


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