『ラブリィ・ダーリン2』

○第4話○ 告白1〜兄・秀一の場合〜(その4)







「・・・・・・はぁっ、・・・はぁ・・・・・・」


 少しして、息も整いはじめるが、頭の芯がぼぅっとして身動きがとれない。
 なのに、身体の火照りがおさまらない・・・

 何かが足りないと思ってしまう。


 それが何かなんてもう分かってるけど───



「スッゴイかわいかったよ」

 華が黙っていると、優吾がやっと現れて心の底から嬉しそうに抱きついてきた。

「・・・パパ・・・ひ、ひどい・・・よ」
「どうして?」

 不思議そうな顔。


「・・・だって・・・」

「?」


 やっぱり、こんなのやだ。


「パパと一緒がイイ・・・・」


「・・・え?」


 目の前にいなくて、やだよ。
 一人だけで、そんなの・・・・・・

 もう顔はゆでだこみたいに真っ赤かもしれない。
 普段だったらもっと別の言葉が出てくるのかもしれないけど、何だか身体が変なんだ。

 こんな自分はおかしいって思うのに止まらない感じがする。



「・・・だ、だから、パパのでされたいって・・・言ってる、のに・・・っ」


 殆ど半泣き状態。

 あぁ、なに言ってるんだろう・・・


 優吾は、ポカンとした顔のまま止まっている。
 華の言葉が頭の中に入り、何を言っているのか理解できるまでに少しの時間が必要だったらしい。
 だが、一端それを理解できてしまうと、歓喜のあまり顔が笑ってしまう。

 泣きそうになりながら、こんな可愛らしい口でそんなことを言うなんて信じられなくて、でもこれは現実なんだと噛み締め、ちょっと震える腕でむぎゅうっと華を抱きしめた。


「うん、うんっ。沢山しようね」

「うん。・・・・・・・・・ん?」


 勢いで思わず返事してしまった。

 沢山?



 気のせいかな。
 何か変なこと言ってた気がするけど。






「華ちゃん、今日・・・このまま・・・いいかな・・・?」


 突然真剣な顔で聞かれた。
 そして、華の答えを待つかのようにじっと見つめて。


「もっと華ちゃんに近づきたい・・・」


 最初、彼が何を言っているのか本気で分からなかった。
 でも、いつになく真面目な顔をした優吾を見ていたら、どういうことを言っているのか分かった気がした。


「・・・ん、い〜よ」

 小さく返事をすると、ニッコリ微笑み、キスをしながら優吾がゆっくりと入ってくる。
 何もつけないその感覚に奮えてしまう。
 いつも必ず避妊をする彼が何故そうしようと思ったのかはよく分からなかったけれど、いつにも増して過敏になっている身体は、更に刺激に反応して何度も彼を締め付ける。
 それには優吾の方も、溜息を漏らす程の感覚を味わっていた。


「・・・はぁ、・・・パパ、パパ」

「ん、華ちゃん。だいすき」

「あぁんっ」


 緩やかに動き始め、顔中にキスの雨が降ってくる。


 スキ、ダイスキ。

 キス一つ一つがそう言ってるみたいだった。




「・・・んっ、・・・ふぁっ、パパ、私っ、・・・私ね・・・」

「・・・うん?」


 熱っぽく潤んだその瞳とか、甘い声を発する唇とか、全部全部釘付けになる。

 けれど、今、もの凄く言いたくなった。

 伝えたいって思った。




「パパを、あいしてるの」


「・・・っ・・・」


 こんな言葉じゃ足りないけど、それ以外思いつかない。
 照れくさいけど、初めて面と向かって口にしてみた。



 パパは・・・

 最初、息を呑んでスゴク驚いた顔をしてた。
 だけど、次に泣いちゃうんじゃないかってくらい顔をくしゃくしゃにして、何度も何度も激しく唇を重ねてきた。

 そして、突き上げられる感覚は勢いを増して、その分追いつめられるスピードも上がってしまう。
 何度もかき混ぜられて、頭の中も身体もおかしくなってしまいそうだ。


「はぁっ、あん、・・・あっ、あぁん、・・・んぅ、っあぁっ!」

「・・・はっ、・・・華ちゃ・・・ん、・・・っ」

「パパ、パパ、ッ・・・ッ!」

 繋がった場所からえっちな音が沢山聞こえて、スゴク恥ずかしいけど、自分がそれだけパパを求めてるんだって思ったら、何となく納得出来るような気がした。

 もう余計な事なんて考えていられない。


「あっ、あ、あん、もぅ・・・わたしっ、ダメ」


 限界だと訴えると、優吾は頷いて、突き上げる勢いを速めた。
 華は何度も頷いて、一生懸命彼にしがみつく。
 そうでもしないと振り落とされてしまうのでは、と思うくらい激しくて、それには内心驚いていたが、そんな彼にドキドキしているのも事実だった。

 ドキドキして、いつもよりも身体が敏感になっているような気もする。

 ギリギリまで追いつめられて、身体が変になる。



「・・・・・・あ、あ、あぁっ」

「・・・んっ、・・・華ちゃ、ん・・・っ」




 一際大きく突き上げられた瞬間、


「・・・っんっく、っ・・・ぁあああっ!!!」



 ビクンと身体が跳ね上がり、弓なりに背中を反らした。

 息をするのも忘れるほど。


 頭の芯まで彼に支配されて───



 その少し後、耳元で優吾の色っぽい喘ぎ声を聞いて、ぶるぶる奮えながら抱きしめる腕が力強くて、守られてるみたいで、それがこの上なく心地よかった。


 そして、ずっとずっとこんな風に側にいれたらいいな、と思った。
























「・・・・・・ねぇ、華ちゃん」


 暫くして、優吾が華に抱きついたまま顔をあげた。
 その顔は上気していて、やけに色っぽい。


「・・・ぅん?」


「・・・・・・・・・どうしよう」


「え?」


 首を傾げると、何故か彼は嬉しそうで。
 しかも微妙に困惑した顔をして、どうしようだなんて言われても、なにが言いたいんだかさっぱりだった。


 優吾は視線を宙に彷徨わせ、もう一度華を見る。


「う〜ん・・・」

「?」


 こまったな〜、って言いながらギュッと身体を密着してきた。




 ・・・・・・・・・ん?

 あれ?




 え?



 あぁっ!?



 ・・・・・・えぇ〜〜〜〜〜〜っっ!?





「パ、パパ・・・!?」


「・・・わかっちゃった?」
「なっ、なんで?」


「・・・だって、あんなの言われたら僕、変になっちゃう」



 あんなのって?



 ・・・・・・・・・も、もしかして、

 あいしてるって言ったこと?



 それで?



 ・・・・・・・・・うそぉ







 つまり、

 パパは、終わったはずなのに、全然おさまってなくて。
 いつでもスタンバイオッケーな状態。

 繋がったままだったから、それがスゴクわかるんだ・・・


 華が驚きのあまり固まっていると、優吾は瞼や頬や唇にキスの雨を降らせる。


 そして、


「・・・・僕も、あいしてる♪」



 笑って、もう一度強く抱きしめられた。


 その後、再び緩やかに動き始めた彼に素直に身体が反応してしまったのは、言葉の威力だけじゃなくて、やっぱりこの笑顔のせいかもしれない。


 幸せだよって顔に書いてあるみたいで、

 いつも、私でいいんだ、って自信をくれる。









 ───だけど、



 その夜のパパは、

 何でそんなに元気なの? って聞きたいくらいで。


 二人して眠りについたのは、外がうっすら明かるくなり始めていた頃。
 それまでに私は身動き一つとれないくらい、指一本動かすのも大変なくらいクタクタになっちゃって、何が何だか分からない状態だったんだけど。



 でも、何となく実感したかも。



 パパが言ってた『めちゃくちゃ』






第5話へつづく


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