『ワガママで困らせて。』
○第2話○ 流花に触りたい【前編】 テッちゃん、私のカラダ、好きにしていいよ。 流花がショーツとブラだけになってオレを誘う。 胸の谷間が、くびれた腰が、小ぶりの尻がオレの脳天を直撃して。 だからオレは直ぐに堪らなくなって、流花の首筋に吸い付いてブラのホックをすかさず外す。 ぼよよん、胸がたわわに揺れた。 流花、こんなに胸がでっかかったんだな。 オレの想像じゃこの半分・・・いや、更に半分・・・ え? それじゃ無くなっちゃう? うそだよ、そんな想像してないよ(ホントはしてるよ) 大きくても小さくてもいいよ。 流花ならどんなだっていいと思ってるよ。 流花、 流花・・・ 「・・・・・・流花ぁ・・・・・・・・・っ、・・・ん〜〜〜〜・・・・・・・・・っ、・・・・・・・・・・・・・・・、・・・・・・ハッ・・・・・・!!!!」 まさに『バチッ!!』と目が覚めて。 飛び起きたオレは、一心不乱に辺りを見回した。 いないいない、流花がいない。 ブラのホック外したばっかなのに、これからなのに。 ・・・・・・つうか、 「・・・・・・・・・あ?」 ここオレの部屋じゃん・・・・・・? さっきまで見てた部屋は流花の・・・ ・・・・てことは、 「〜〜〜〜んーだよッ、夢かよぉおおおっ、・・・・・・はぁぁああ〜〜〜っ、・・・・・・くそぉ・・・・・・・・・超・欲求不満だぁああああっ!!!!」 現実の流花はあんな風に誘ったりするわけないんだから、普通だったら途中で気づきそうなもんなのに、本気で悔しがって身悶えるオレ・・・ しかも、朝だから・・・ってだけじゃなく、あんな夢見てオレのムスコが無反応なわけもなく。 元気ハツラツに主張しているのがちょっと虚しい。 ───ピロロロン、ピロロロロン・・・ 突然携帯が鳴り響いてハッと我に返る。 時計を見ると7時になったばかりだった。モチロン朝の。 てか今日、日曜日だよな? 学校無いじゃん。 ・・・こんな時間に平然と電話してくる相手なんて・・・。 「・・・はい・・・」 『テッちゃん、起きてた?』 やっぱり流花だ。 まぁ、それ以外考えられないんだけど。 「今起きたところだけど・・・今日休みだよ、流花がこんな時間に起きてるなんて珍しいな」 『ウン、もういつでも出かけられるよ』 「えっ、いくらなんでも早いだろ」 『いいの、あと20分で来てね』 「えぇっ、ちょっと待って流花・・・」 ───ブツッ・・・・・・ ・・・・反論の余地も無いまま電話は一方的に切られ、オレは頭を抱えた。 あぁ、わかってるよ。 こんな事、もう慣れっこだ。 今更文句言うことでもないくらい、オレにはフツーのこと。 だから考えろ、オレ。 ・・・20分・・・、20分でオレがやれる事は? 着替えに2分。 洗顔1分。 髪のセットで2分。 流花の家まで走って5分。 とすると・・・残10分か。 「・・・・・・・・・よし、・・・イケる・・・」 超速で時間配分を頭の中にたたき込んだオレが残10分で何を必要としたかなんて、ヤボな事、聞かないでくれ・・・ だってスウェットにテント張ったままじゃ、部屋から出られない。 無駄に有り余った元気ハツラツは、自家発電で消費するしかないんだよ・・・・・・。 ▽ ▽ ▽ ▽ 流花の家の前に到着すると、流花のおばさんが庭の花の手入れをしているところだった。 大きな庭にも関わらず隅々まで行き届いてて、草花に興味の無いオレでもキレイだなって思うくらいセンスがいいんだ。 門から顔を覗かせていると、おばさんがオレに気づいてこっちにやってきた。 流花とよく似てるんだ、これがまた。 ・・・性格はぜんぜん違うけど。 「あら、テッちゃん。こんなに朝早くどうしたの? 確か今日は日曜日よねぇ?」 「今日は流花が早く起きたみたいで・・・・・・あがっていい?」 「もちろんどうぞ。・・・相変わらず流花のワガママにテッちゃんをつき合わせてるのね」 「こんなの、ゼンゼンたいしたことないよ」 「ありがとう・・・これからも流花をよろしくね」 「モチロン」 挨拶も早々に家に入れてもらい、オレは2階に駆け上がる。 小さい時からこんなだし、ワガママ聞くのはむしろオレの役目みたいな。 そう思うオレって変かな。 「流花〜っ、来たよ」 流花の部屋を開けると、花柄のワンピースを着た流花がこっちを見た。 「テッちゃん、時間厳守だね」 「じゃないと怒るじゃん」 流花は『えらいよ』とにっこり笑う。 オレは褒められてまんざらでもないけど、やっぱ照れくさくて。 「何で今日、こんなに早いの? どこか行きたい所があんの?」 「ううん・・・、ちがくて・・・」 「・・・?」 オレの質問に一瞬困ったような顔を見せて流花は曖昧に笑った。 こんな顔するなんて凄く珍しい。 流花でも言いづらいことってあるのか? 「なに?」 「・・・・・・変な夢みちゃったの」 「夢? どんな?」 「・・・聞いても笑わない?」 「・・・ウン、笑わないけど・・・」 オレの夢よりは変じゃないと思うし。 言ったら口きいて貰えなくなるかもしれないエロいやつばっかで、言える分だけ流花はまともな夢なんじゃないかと思う。 「・・・・・・あの・・・ね、・・・・・・テッちゃんの別れたカノジョとね、・・・・テッちゃんがキスしてる夢・・・見たの」 「はぁ?」 「変だよねぇ、こんなの夢に見るなんて・・、どうしてかなぁ。目が覚めちゃって、そしたらゼンゼン眠れないの」 「・・・・・・・・・なんで?」 なんで、そんなの流花が夢に見るんだ? オレはゼンゼン意味が分からなくて、どう反応していいものかサッパリだった。 「ねぇ、テッちゃん」 「・・・うん」 「・・・・・・ぎゅってして」 いつもの咳もしてないのに、苦しいわけじゃないのに、流花はオレに手を伸ばして。 甘えるように上目遣いでオレを見る。 「・・・・この前みたく、やだって言う?」 「えっ、いや・・・言わないよ」 ちょっと哀しそうに瞳を揺らすから、オレは慌てて流花を抱きしめた。 やわらかくて、ふわふわで、想像するよりずっと華奢なカラダ。 流花、流花・・・すごく好きだ。 「・・・よかった。テッちゃんに、やだって言われるの慣れてないから、ホントはコワかったの・・・」 安心したように息を吐いて、流花はオレに抱きついてくる。 言われてみれば、あれから結構経つのに流花がそれをオレに強請ることは無かったかもしれない。 オレのあんな一言で流花が怖がるなんて。 ・・・だけどホントにダメだったんだ。 どうしても流花に触ると歯止めがきかなくなりそうで、今だってなけなしの理性を総動員してるんだよ。 だからそんな風に油断しないでくれよ。 「ね、テッちゃん」 「ん?」 「・・・・・・つき合ってる時、あの子とキスした?」 「・・・・え」 「キスした?」 「・・・・・・・・・・・・」 ・・・・こ、・・・・これって・・・ ・・・・・・・・、・・・・どう答えれば・・・いいものなんだ? オレは一瞬で背筋にイヤ〜な汗を掻いて。 心の中でウンウン唸った。
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