ユリアン・ミンツ中尉は満足していた。
念願叶って、とうとうフレデリカを抱けたからだ。
当然、合意の上ではなかったが、ユリアンはあまり気にしていなかった。
合意よりも、いやがる女をムリヤリ犯し、その上で快楽に屈服させる方が好きだった
からだ。
フレデリカに対する憧れが、汚辱にまみれた黒い欲望に変化したのはいつなのか、
ユリアンにもよくわからない。
ただ、ユリアンは他の女性、特に同年代や年下の女の子にはまったく興味がなかった。
フレデリカ・グリーンヒル以外は無機物に過ぎなかったのである。
フレデリカを犯したこと自体はよかったのだが、その感激で自分が満足してしまい、
本来の目的であったフレデリカを肉欲の虜にする、ということは十分に達せられな
かった。
しかし、最初から満点とは行くまい。
徐々に堕としていけばよい。
ただ、問題はあまり時間がないということだった。
一週間もしないうちにラインハルト本隊が戦線に到着するだろう。
それに、今対峙しているのは血の気の多いビッテンフェルトとファーレンハイトで
ある。
いつ戦端が開かれてもおかしくないのだ。
それまでに目処はつけておきたい。
もっと早く手をつけておけばよかったのだが、そうも行かなかった。
ユリアンは、フレデリカに邪な気持ちを抱いてはいたし、彼女と結婚したヤンに軽く、
本当に軽くだが嫉妬したことはあった。
が、それ以上に保護者たるヤン・ウェンリーという人物を心底尊敬していたことは
事実なのだ。
そしてフレデリカの気持ちはともかく、ヤン自身もフレデリカに恋情を抱いていた
ことは明らかだったからだ。
いささか屈折しているが、ユリアンはヤンとフレデリカが結婚することを望んでいた
のである。
無論、ヤンの気持ちを慮ってである。
これがフレデリカの一方的な片思いであれば、さっさとフレデリカを犯していたかも
知れない。
だからヤンとフレデリカが結婚するまで待ったのだ。
というのも、フレデリカが処女であろうことはほぼ確実だったからだ。
24歳にもなって処女というのは考えにくかったが、ヤンと知り合った経緯や経過を
思えば、そう断ぜざるを得なかった。
敬愛するヤンに先んじて、その最愛の人の処女を奪うということは、さすがに出来な
かったわけである。
そこまでヤンのことを考えるのであれば、結婚前だろうと後だろうと、そもそも
フレデリカに手を出すこと自体に問題があるのだが、ユリアン自身の欲求も限界
だったのだ。
ずいぶんと悩んだが、結婚して処女を失ってからなら、ということで妥協、折り
合いを付けたのである。
無論、ヤンに知れたら身の破滅になる。
というより、ヤンの哀しそうな顔を見るのは耐えられそうもなかった。
いや、ヤンなら「若気の至り」「気の迷い」ということで許してくれるかも知れない。
だが、ヤンを裏切ったということを知られるのは耐えられそうになかった。
今後のフレデリカへの調教も、慎重を期する必要があるだろう。
その夜遅く、ヤンはフロアに戻ってきた。
エル・ファシル政府との話は長引いたようで、少々疲れた顔をしていた。
いつものように迎えるユリアンに、ヤンは姿が見えない新妻のことを尋ねた。
ユリアンは心配そうな顔を作って、「少佐は体調が悪く、寝室で休んでいる」と
伝えた。
「ここんとこ忙しかったからなあ。フレデリカにもずいぶんムリをさせたから」
ヤンも少し心配になったが、自分も疲れていたせいか、あまりに気に留めなかった。
そのままユリアンの作った夜食を摂ると、ユリアンにも早く寝るように言って寝室へ
引っ込んだ。
そこにはフレデリカがいるが、まだユリアンに犯されたショックから抜け切って
いないだろう。
体調も気分も優れないのは事実だろうから、ヤンも特に不審には思わないはずだ。
ましてフレデリカが先ほどの凌辱劇を告白するとも思えない。
ユリアンは自室に戻り、明日以降、彼女をどう仕込むか考えながら床に就いた。
────────────────────────
翌日、フレデリカはまともに起きられなかった。
体調を気遣ってくれる夫に対して申し訳ない気持ちでいっぱいになり、よく眠れな
かったのだ。
ウトウトしただけで朝を迎えたが、身体の疲れは抜けておらず、まともにヤンの顔
を見られなかった。
顔色が蒼かったこともあり、よほど調子が悪いように見えたようで、ムリしないで
今日は休むようにヤンは言った。
こんな気持ちではまともな仕事が出来そうになかったので、フレデリカはありがたく
夫の好意を受けた。
気になるのはユリアンだが、勤務はいつも通りあるはずで司令部に出頭するだろう
から、夜まで帰らないだろう。
大抵はヤンと一緒に帰宅するはずだから、ユリアンとふたりきりになることはない
はずだ。
それに……。
フレデリカには、まだユリアンを信じる気持ちがあった。
性格的にも非の付け所のない少年だったユリアンが、あんな暴挙に出るなんて未だに
信じがたかったのだ。
事実だったことは、何より自分の身体がいちばんよく知っているのだが。
気の迷いであって欲しい。
ならば自分も忘れるから。
フレデリカは、ゆっくり午前中はベッドで休み、なんとか睡眠も取れた。
午後になってベッドから起き、軽く昼食を摂った。
午後3時頃になり、部屋の掃除を済ませると、なんとか気分も持ち直してきた。
明日からは任務につけるかも知れない。
その時、来客を知らせるチャイムが鳴り、フレデリカがメインドアに行くと、ちょうど
ユリアンが帰ってきたところだった。
「ユリアン……」
フレデリカは複雑な思いで少年を見つめた。
ユリアンについては気持ちの整理がついていない。
ユリアンの方から顔を反らせるくらいなら反省しているのだろうが、彼はまったく
いつもの通りだった。
「ただいま、フレデリカさん」
「お帰りなさい……。早かったのね」
動揺するフレデリカを素っ気なく見ると、ユリアンは部屋へ向かった。
「……」
フレデリカは、返事もせず歩み去るユリアンを不安げに見送った。
少々不安ではあったが、悩んでいてもはじまらない。
思い切ってユリアンの部屋を訪ねた。
「…ユリアン、ちょっといい?」
フレデリカはノックをしたあと、部屋の少年に語りかけた。
「どうぞ、入ってください」
思いもかけず明るい声が返ってきた。
フレデリカは少しホッとしてドアを開けた。
「なんです?」
「きょ、今日は早かったから、どうしたのかなって…」
フレデリカは、問いかけるユリアンから視線を外して言った。
「提督がフレデリカさんのことを心配して、僕に早く帰って様子を見てくれって言っ
たんですよ。具合が悪そうだったら看病してくれないかって」
フレデリカは夫の好意に感謝しながらも、思いもかけずユリアンとふたりになる
時間が増えた事に一抹の不安を覚えた。
「そ、そうなの。でも、もう大丈夫なのよ。今日、提督は……」
「ああ、提督は今日はお戻りになれないそうです。フィッシャー中将やアッテンボ
ロー中将たちと、艦隊フォーメーションの詰めがあるそうで、かなり遅くなるとか。
そのまま司令部に泊まり込むそうですから」
「帰らない……」
フレデリカの不安は増大したが、であるならば、なおのこと昨日のことをはっきり
させねばならない。
そして釘を打っておかねば。
「ユリアン……」
彼女は思い切って聞いてみた。
「昨日のことだけど……」
「昨日のこと?」
ユリアンはフレデリカの目を見て言った。
「昨日のことって、僕がフレデリカさんを犯したことですか?」
「!」
「それとも、お尻の穴やオマンコいじってたら濡れちゃったことかなあ」
フレデリカは碧眼を大きく見開いた。
唇がわなわなと震えている。
やっぱり、この子……。
「あ、もしかして浣腸されて僕にウンチするのを手伝ってもらったこと…」
「やめてっ!」
フレデリカは耳を押さえて目をつむった。
そんなこと聞きたくもない、思い出したくもない。
ガクガクと脚が震えていた。
今にもへたり込んでしまいそうだった。
そんなとき、また呼び鈴が鳴った。
フレデリカは立ち上がると、脱兎のごとく玄関に向かった。
ヤンかも知れない。
いや、ヤンでなくても誰でもいい。
とにかくユリアンとふたりっきりでは何が起こるかわからないのだ。
救われた思いで玄関ドアに辿り着くと、ドア・カメラを見るより早くドア・フォーン
に聞いた。
「誰ですか?」
「あ、少佐ですか? マシュンゴです」
「マシュンゴ少尉……」
フレデリカは心底ホッとした。
巨漢の黒人士官で、その忠実さは折り紙付きである。
かつてヤンが査問にかけられた時も、ヤンの解放に尽力するフレデリカを献身的に
補佐した男だ。
ユリアンがフェザーンに赴任した時、地球へ行った時も追従してサポートしていた。
ヤンもユリアンも、そしてフレデリカも全幅の信頼を置いているのだ。
「中尉にお届け物がありまして、持参致しました」
「ユリアンに…」
そう言ってフレデリカはドアを開けた。
小さな目で笑いかけるマシュンゴを見ていると、フレデリカも安心できる。
彼がいてくれれば、そうそうユリアンもバカなことは出来ないはずだ。
彼女がドアを開けると、「失礼します」と言って少尉は黒いバッグを提げて入って
きた。
「何なの?」
フレデリカは何の気なしに聞いた。
答えは後ろから返ってきた。
「知りたいですか?」
「ユリアン……」
いつの間にかユリアンが自室から出てきていた。
ユリアンは口の端を歪めて言った。
「心配しなくても、すぐにわかりますよ。ええ、フレデリカさんが自分の身体でね」
「え、それってどういう……あっ」
ユリアンの方へ振り返っていたフレデリカは、首筋にチクリとした痛みを感じた。
振り向くと、マシュンゴがフレデリカの肩を押さえて、アンプルを首に押しつけて
いた。
「なにを……」
全部言うことは出来ず、フレデリカは意識に混濁が混じり、気を失った。
────────────────────────
「う、うん……」
フレデリカは、軽い頭痛の中、意識を取り戻した。
ぼんやりする視野が開けると、ユリアンとマシュンゴが動き回っている。
そして、自分が全裸なことに気づいてハッとした。
逃げようとしたが、両手はバンザイの姿勢で吊られていた。
手首にはレザーの拘束具で固定され、そこから伸びたチェーンが天井にあるフック
に引っ掛けられている。
脚はというと、大の字に開いたまま、足首も同じように拘束具がはめられ、やはり
にあるフックでとめられていた。
女のすべてを晒した恥ずかしい格好に思わず顔が染まったが、羞恥以上に怒りが
強かった。
「こ、これはどういうことなの! 解きなさい、ユリアン!」
「おや、少佐どのが気づいたようですよ、中尉」
マシュンゴが黒い顔をフレデリカに向けた。
「マシュンゴ少尉……、あ、あなたまで……。じゃあさっきのも…」
これですか、と、マシュンゴは使用済みのアンプルを示した。
戦場で軍医が使う、負傷兵用の麻酔注射アンプルだった。
このふたりはグルなのか、と、フレデリカは目の前が真っ暗になる。
階級に訴えてみた。
「少尉! あなた、何をやってるかわかってるの!? 上官に対して、こんな……」
「少佐どの。確かに少佐どのは小官より上級の士官です。が、私はミンツ中尉につく
ようヤン提督に命令されていますんでね。あなたは直接の上官ではありませんよ」
「……」
二の句が継げないフレデリカに、マシュンゴは追い打ちをかける。
「それと、大きな声では言えませんが、私もあなたをものにしたいと思っていたん
ですよ。ヤン提督のお側に少佐が控えている時も、その大きな尻を揺らして歩く
後ろ姿をいつも見てました」
そんな目で見られていたことにショックを受けたフレデリカだが、今度はヤンを
使ってみた。
マシュンゴにしても、ヤンは尊敬の対象であるし、ユリアンなどは崇拝すらして
いる。
「ユリアン、マシュンゴ少尉! こんなこと……こんなこと、あの人が…ヤン提督
が知ったらどうなると思うの! 今すぐやめて! 今なら黙っててあげるから…」
ユリアンは笑ってフレデリカの顔の前に指を立てた。
「ムダですよ、フレデリカさん。そんなこと、ヤン提督がお信じになるわけがない
じゃないですか」
「……」
フレデリカは絶句した。
確かにそうかも知れない。
彼女はヤン最愛の女であり、妻としても副官としても大きな信頼を勝ち得ている。
だがユリアンの方も、ヤンと同居すること6年に及び、その期間はフレデリカより
長い。
ことに私生活面ではユリアンなしでは暮らせないほどだっただけに、ユリアンに
対する信頼は絶大なものがあるのだ。
ユリアンに対する評価は、ヤンだけでなく、彼を知る者のほぼすべてが好意的な
ものである。
何でもよく出来て性格的にもおとなしく控えめで、人当たりも良い。
フレデリカにしても、今回の件があるまではそういう評価だったのだ。
ユリアンへの信頼とフレデリカへの信頼。
両者の証言が異なった場合、ヤンはどちらを取るだろうか。
彼女にとってはくやしいが、完全な自信が持てなかったのである。
一方、ユリアンの方もヒヤヒヤだった。
もしフレデリカがヤンに告白する気になったら、そのときはどうしようもない。
しかし彼は、その点に関しては自信があった。
フレデリカは、ヤンを深く愛するが故に、ヤンを傷つけることになる告白をすること
は思えなかったからだ。
フレデリカが凌辱者に犯されただけでもショックは大きいだろうに、その犯人が可愛
がっているユリアンであったことがわかったなら。
しばらくの間、立ち直れないほどの衝撃を受けることは目に見えている。
フレデリカが、そんなことを望むはずはないとユリアンは思っていた。
が、万一を考えて、あまりムリに追いつめないように責める配慮は必要だろう。
自暴自棄になる前に、肉欲の奴隷に堕としめればよいのだ。
あとは身体がついてくるだろう。
念のための用意もしておくつもりだった。
「さ、あきらめがつきましたか? じゃあ早速……」
「待ちなさい!」
ユリアンとマシュンゴがゆっくり近づいて来ると、フレデリカは鋭い声で制止した。
「こ、今度なにかいやらしいことをしたら……私……私、死ぬわ!」
それが、知性美貌美兼備の女性士官が用意していた最後の手段だった。
ふたりの足がぴたりと止まった。
「……死ぬ?」
マシュンゴは明らかに動揺している。
「ど、どうやって死ぬというんです、その状態で」
「私をこのままにしておくことは出来っこないわ。いくらこの場で辱められても、
自由を取り戻したら自殺します!」
フレデリカはヘイゼルの瞳を煌めかせて叫ぶ。
動揺してフレデリカとユリアンを交互に見ているマシュンゴとは対照的に、ユリアン
は落ち着いて答えた。
「死んでどうなると言うんです? 自殺なんかしたらヤン提督が悲しみますよ」
ヤンを引き合いに出されて、フレデリカはキッとユリアンを睨んだ。
「こ、このまま…あの人の知らないうちに辱められて、あの人を裏切るわけにはいか
ないわ。それくらいなら死にます。きっと、きっとあの人だってわかってくれるわ」
ユリアンは、いかにも困ったという顔をして言った。
「そうですか…。そこまでの覚悟なら仕方ありませんね。…いいですよ、自殺なさっ
ても」
「!」
「……」
思いもかけぬユリアンの答えに、マシュンゴは呆然と、フレデリカは唖然とした。
「中尉……」
マシュンゴは、信じられないという顔をしてユリアンに話しかけた。
ユリアンは肩をすくめて言う。
「だってしょうがないよ。フレデリカさんの身体を好きに出来ないのなら、フレデ
リカさんが生きていても死んでしまっても、僕にとっては変わらないもの」
「……」
「それにね」
ユリアンはおかしそうに笑って言った。
「仮にフレデリカさんが自殺したら、僕はフレデリカさんの死体を犯しまくるよ。
死姦って言うんだっけ? その後、フレデリカさんの身体中にいやらしいタトゥでも
入れて、官舎か司令部の前にでも捨ててあげますよ」
「……」
「もしそんなことになったら一大スキャンダルですよ。ヤン提督…どうなりますか
ね」
「そんな……」
ユリアンはさらに追い打ちをかけた。
「こんな方法もありますよ。フレデリカさんの死体から指を一本ずつ切り取って、
毎日ヤン提督宛に送りつけるんです。フレデリカさんを愛している提督はどんな
気持ちになるでしょうかね?」
マシュンゴは、感心したような呆れたような目で、年下の上官を見ている。
そこまでやるか、と。
ユリアンの方は、無論そんなことをするつもりはない。
あくまで脅しである。
同じ脅しなら、ヤン提督絡みにした方が効果があると踏んだだけだ。
ユリアンだってヤンが好きだし尊敬している。
そのヤンが悲しむことをするはずがないのだ。
つまり、口から出任せだったのだが、ユリアン自身、そこまでのことが口から出て
くるとは思っていなくて、言ったあとに自分で驚いた。
そして、そこまで考えるくらい、自分はフレデリカに惚れているのだと思うことに
した。
フレデリカはガクリと首を落とした。
説得は通じなかった。
それどころか、この少年が並々ならぬ決意で事に及んでいるのだと認識してしまった。
「覚悟が出来たようですね。じゃあ始めましょう」
ハッとフレデリカは我に返った。
そうだ、状況は最悪なのだ。
ハダカに剥かれた全身を、ユリアンだけでなくマシュンゴにも見られている。
まして、大股開きの状態で、女の花園や菊座を堂々と晒している恥ずかしい格好。
全身を振りたくってみたが、両手両脚は完全に固定されている。
わずかに手首足首が動く程度だった。
「やめて、放して!」
フレデリカは絶叫したが、聞き入れるふたりではない。
ユリアンだけでなく、マシュンゴも色欲に溢れた視線でフレデリカの悩ましい肢体
を見つめている。
ユリアンは、自分のデスクの引き出しやマシュンゴが持ってきたバッグの中から、
様々な性具を取り出しては、わざとらしくフレデリカに見せた。
「さて、何をお望みですか少佐」
ことさら階級で呼び、羞恥心を増させた。
「いやっ、そんなのみんないやよ!」
「みんなイヤだなんて、そんな我が侭は通用しませんよ。じゃあ少尉が選んでいい
よ、僕は昨日も責めたし」
巨漢の黒人は、小さな目を輝かせて「いいんですか!?」と問い、ニンマリ笑った。
「もちろんこいつですよ」
と言って、太い浣腸器を取り上げた。
「ひっ」
フレデリカは青ざめた。
またそんな変態行為をするのか。
しかもユリアンだけでなく、マシュンゴまでそんな外道なことを…。
フレデリカはユリアンを睨みつけて叫んだ。
「ユリアン! あ、あなたがそんな変態だなんて思わなかったわ!」
「僕の変態は今始まったことじゃありませんよ」
ユリアンは苦笑してフレデリカに答え、溶液の薬ビンを準備しているマシュンゴに
言った。
「僕も昨日してやったよ。面白かった」
「ほう、もうやったんですか、それはうらやましい」
「だから今日の一発目は、この道の先輩である少尉に任せるよ」
「本当ですか! それは光栄です」
マシュンゴは浮き浮きと浣腸液を作り出した。
ユリアンが肛門責めに興味を持ったのは、実はマシュンゴの影響である。
もっとも、性に関する知識のほとんどはマシュンゴから受けたと言って良いだろう。
すべてはフェザーンでの出来事だった。
ユリアンの筆おろしを指導したのもマシュンゴなら、SM的なことや尻責めなどを
教え込んだのもマシュンゴだった。
もっとも、それらはユリアンの方から指導を乞うたものである。
マシュンゴが完全に信頼しうる味方であり、しかも自分と同じ性癖を持つと知った
ユリアンは、フレデリカを犯すという目的を話した上で教えを受けたのだ。
話を聞いたマシュンゴも、最初は驚いていたが、ユリアンに絶対の忠誠心というもの
もあったし、マシュンゴ自身、フレデリカに良からぬ欲望を抱いていたらしい。
仲間になるという条件ですべて引き受けた。
溶液をたっぷりと吸い込んだ浣腸器を、さも重そうに持つとフレデリカに見せつける。
「ご覧なさい少佐。これがみんな少佐のお尻の中に入るんですよ」
「いやっ!」
フレデリカは目を固く閉じて首を振った。
そして、マシュンゴが後ろに回ると、絶叫して腰を激しく振った。
しかし、そこをユリアンが正面から抱きかかえるように暴れる彼女の腰を押さえ込
んだ。
マシュンゴが嘴管で一気に貫くと悲鳴を上げた。
「い、痛いっ! やめて、お願い!」
「フレデリカさん! 暴れちゃダメだと言ったでしょう、肛門に入ったガラスの先が
折れますよ!」
そう言われるとフレデリカの動きが止まった。
もうダメだと思った。
暴れる美女の動きが落ち着くと、黒人はシリンダーを押し始めた。
たちまち溶液がフレデリカの肛門内に流れ込む。
「ああっ、いやあ! そ、それはいや、浣腸はいやあ……あっ、やめてぇ!」
フレデリカは全身に鳥肌を立ててのけぞった。
天井に吊られた両手、床に固定された両脚をよじって腰をうねらせる。
「じっくり楽しんでくださいよ、少佐。500ありますからね」
そう言ってマシュンゴは嬉々として溶液を送り込んだ。
「うう……う、うむ……」
溶液を半分ほど注入すると、フレデリカに変化が見られた。
動いても無益だとわかったのか、ぶるぶる震えて耐えてはいるが、おとなしくなった。
ユリアンも、押さえ込むのをやめて、フレデリカの身体を愛撫し始めた。
今日はロープで縛っていないので括り出されてはいないが、十分に立派と言えるバス
トを揉み込んだ。
まだ新婚で、さほど性経験がないせいか、幾分硬めではあったが揉みではあった。
その間にもマシュンゴは注入を続ける。
300,350と注入量が増えるたび、フレデリカの反応が著しくなってきた。
「あ、あむ……うんっ……あ、あ……いや、ああ……」
フレデリカは顔をのけぞらせっぱなしで、汗の光る白い首筋を晒していた。
そこにユリアンが唇を押しつける。
キスマークがつくほどの、激しい吸引をした。
それにもフレデリカは反応する。
「ううんっ」と呻いて、ユリアンの唇と舌に応えた。
400,450とシリンダーを押し込むと、フレデリカはたまらなくなって呻いた。
「あむぅ! あ、あは……だめ…こ、これ以上……ああ、入れないで…あっ」
フレデリカは緩く腰をうねらせて、なんとか注入を防ごうとしているようだった。
マシュンゴには、その様子がまるでフレデリカがよがって悶えているように思えた。
美女の生々しい身悶えに、すっかり興奮したマシュンゴは、抑え切れぬように残りの
溶液を一気に押し切った。
「ひぃぃっ!」
その瞬間、フレデリカはまるでアクメに達したかのような声を上げて大きくのけぞった。
白人の美女を責めている黒人と少年の股間は、すっかり臨戦態勢になっていた。
こんな興奮する見物はない、とふたりは顔を見合わせて笑った。
「…う、うん……」
フレデリカは、注入地獄から解放されると、今度は排泄地獄に苛まれた。
ゴロゴロと鳴る下腹部と、それに伴う鈍い痛み。
それが排便要求だとわかると、一気に便意が高まった。
浣腸に耐えて赤かったフレデリカの顔が急に血の気を失ってくる。
もはや呼吸をするのもつらくなっている。
「あ、あ……だめ……苦しい……」
それを聞いてユリアンがフレデリカの裸身に手を伸ばす。
「少尉、フレデリカさんが苦しそうだよ。気を紛らわせてやろうよ」
「そうですな」
ユリアンがそう言うと、マシュンゴも黒い手で真っ白な肢体に触れてきた。
ユリアンが、彼女の乳房が揉みくちゃになるくらい揉みほぐしていると、いつしか
マシュマロのような柔らかさになってきた。
そして、吊られて露わになっている腋も舌で舐め上げた。
フレデリカは、そのたびに甲高い悲鳴を上げた。
一方のマシュンゴは、壊れ物でも触るように、見事に張り出したフレデリカのヒップ
を太い指で撫で回している。
「や、やめてぇっ! そ、そんなことされたら……う、うむむっ……ああ……」
「されたら? 出ちゃうんですか? 気持ちいいんでしょうに、こんなに濡れてま
すよ」
と言って、ユリアンはすっかり濡れそぼっている媚肉に触れた。
「ひぃっ」
フレデリカは、敏感な箇所への攻撃にびくりとのぞけったが、慌てて緩みかけた括約
筋を引き締めた。
油断したら、すぐに出てしまいそうなのだ。
ふたりの指が性感帯をなぞるたび、痺れるような快感が走る。
同時に、直腸を満たした浣腸液が猛威を振るい、全身に悪寒が走った。
苦痛と悦楽に挟まれ、フレデリカは自失しそうだ。
「ああ、もう……あ、お願い……おトイレに行かせて……あ、もう我慢が……」
ふたりの責めを受けているにも関わらず、全身には青みが増してきた。
オコリにかかったように痙攣も始まっている。
そろそろ限界かも知れない。
「そんなに出したいんですか、フレデリカさん」
意地悪く尋ねるユリアンに、フレデリカはうなずくしかない。
「じゃあわかってますね。何をしたいのかちゃんと言うんです。さもないとあと30
分はさせませんよ」
「そんな……」
フレデリカは目眩がした。
そんなに我慢できるわけがない。
だが、そんな恥ずかしいこと二度と口に出来ない。
「…ああ……もう、もうダメなのよ、ユリアン……ああ、お願い…は、早く……」
盛んに尻を弄り回しているマシュンゴの脇から覗き込むと、深い尻の谷間に隠れて
いるアヌスは、浣腸液で汚れヒクヒクしている。
出したくてしょうがない、という状態だろう。
「したければ、何がしたいのか言ってください。そしてマシュンゴにさせてくれる
ように頼むんです」
マシュンゴは大喜びで樹脂製の洗面器を持ってきた。
それで受けるつもりなのだろう。
ユリアンは苦笑した。
実のところ、ユリアンには排泄を見るという趣味はない。
浣腸で苦しむフレデリカを見たいだけなのだ。
従って、排泄とはユリアンにとって浣腸の結果に過ぎないのだ。
なのにわざわざそれを見るのは、排泄シーンを見られて羞恥に咽ぶ姿も好きだった
からである。
一方のマシュンゴは排泄マニアだ。
排便はもちろん排尿にも興味があった。
いつか浣腸による排便だけでなく、排尿も見てやろうと思っている。
フレデリカは、もうどうにもならなかった。
意志の力でどうにかなるものではないのだ。
「あ、お願い……」
フレデリカは涙をためた美しい瞳でふたりを見たが、許してくれそうにない。
「しょ、少尉……ああ、ウ、ウンチがしたいの……ウンチをさせてください……」
羞恥を忘れ、フレデリカは口にした。
もう何を言っているかよくわからないほど、切羽詰まっていたのだ。
よし、とユリアンがうなずくとマシュンゴは慌ててフレデリカの後ろに回り、洗面器
を尻の下にあてがった。
「あ、あ……もう、もう出る…ああ、出ちゃうぅ……出る!」
フレデリカが、喉を引き裂くような悲鳴を上げると、堅く締まっていたアヌスが一気
に花ほころんだ。
マシュンゴが構えた洗面器目がけて、ドッと迸った。
マシュンゴは、顔に飛沫がかかるのも厭わず、血走った目で美女の排泄を観察し続けた。
その様子がわかるのか、フレデリカは「いやあ……」と呻いて泣き出した。
排泄は2分あまりも続いた。
フレデリカの直腸にたまっていた便の他、500ccもの溶液が吹き出たため、洗面
器はほとんどいっぱいになっていた。
「ああ……」
フレデリカは屈辱と羞恥で顔を染めていた。またしても恥ずかしい排泄シーンを見ら
れてしまった。
見られたのがふたりになったため羞恥も倍増した。
ユリアンはマシュンゴが処理してくるのを待ってフレデリカに言った。
「これで終わったわけじゃありませんよ、フレデリカさん。これから、です」
そして、彼女のあごを指で持って顔を上げさせ、天井の隅にあるものを見せた。
「あれ、なんだかわかります?」
「……」
「カメラです」
「!」
天井の四隅と床の四隅にマイクロカメラがセットされていたらしい。
解像度は3M画素程度の安物ではあるが、ユリアンの部屋程度の広さであれば最大
引き伸ばしをしても接写とほとんど変わらぬほどにはなる。
いろいろな意味で、使用するには十分なのだ。
「この部屋の出来事はみんな録画しますから。もしフレデリカさんが僕らの言うこと
を聞かなくなったら、映像データを提督の端末に送りますからね」
ユリアンは、フレデリカがヤンに打ち明けることも自殺されることも防ぎはしたが、
その分、素直に言うことを聞かなくなるのも面倒だ。
いちいち麻酔や弛緩剤を使うのも問題がある。そのための脅しである。
フレデリカの方も、ヤンにすべてを話すことも自殺することも出来ないことはわか
ったが、それだけにこのことを知られてはならないと思っている。
自分さえ我慢して、そのうち何か解決策を見つければいいのだと。
故に、知られてしまってはフレデリカ本人とヤンにとって悲惨なことになるだろう。
それだけは避けたかった。
「……」
フレデリカは、もはや何も言えなかった。
────────────────────────
「ああっ……くぅぅ……」
フレデリカはこの日二度目の浣腸の洗礼を受けていた。
今度はユリアンがフレデリカの尻に嘴管を突き立て、500ccたっぷり注ぎ込ん
でいた。
フレデリカは二度続けて浣腸されるのは無論はじめてだった。
さきほどの浣腸、そして排泄で肛門がヒリヒリと痛んでいる。
そこに新たな溶液を叩き込まれたのだ。
たまったものではなかった。
それもユリアンは残酷にも、休むことなく一気に500cc全部を注入してしまっ
ていた。
「あむぅ……あ、あ、あ……く、苦しいわ……ああ……」
最初の浣腸で直腸の中はすっかり掃除されている。
何もないところに強力浣腸液を大量に入れられたため、フレデリカの苦痛は尋常
ではなかった。
「あ……あ……もう…ああ、もうだめなの……うむっ、苦しい…お腹が苦しい…」
たまらず腰がうねくる。
両手を開き、また何かにすがるかのように握りしめる。
腿やふくらはぎにも力が籠もり、筋肉をひくつかせている。
足の指すら反り返らせていた。
苦悶する美女の淫靡な動きに、観客のふたりもうなり声を上げていた。
「浣腸されて、こんなに色っぽい女は見たことないよ」
「私もですよ、中尉。どうやら少佐は、尻で感じる素質があるようですな」
「願ったり叶ったりだね」
フレデリカの声が切迫してきた。
「あああっ……あ、もうだめっ……はやく、はやくぅ…」
「したいんですね、フレデリカさん」
便通の欲求に責めさいなまれる美女は、なすすべなくうなずく。
「ああ……し、したいわ……は、はやくウンチさせて……あっ……出ちゃ、出ちゃう!」
今度はユリアンが洗面器を担当した。
マシュンゴが、顔をフレデリカの尻にくっつきそうなくらい寄せたところで排泄が
始まった。
「ああっ」
出るのは溶液ばかりだ。
やや茶がかっているが、あとになるほど透明度が増した。
ぶしゅーっと、まるでビールが吹き出るように噴出したかと思うと、いったん止まって
ジョボジョボと緩くなる。
その繰り返しだった。
「ああ……いやあ、見ないで……ああ出る…まだ出るぅ……」
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