「あっ……!」

不自然な姿勢の苦しさに、けっこう仮面が意識を取り戻した。
動けない。
両手をひとまとめにして縛られ、天井から吊られている。
足首も床から伸びた鎖でかっちりと固定されている。といって、一直線に吊られているわけ
ではない。
ちょうどヘソのあたりに小さな台が置いてあり、そこにお腹が寄りかかる形になっている。
浅い「く」の字になっていると思えばいい。
胸をせり出し、尻も突き出す恥ずかしい格好だ。
けっこう仮面の後ろから、いやらしい忍び笑いが聞こえる。

「くっくっくっくっくっ……」

ハッとして振り返ると、忌まわしい仮面の男がいる。

「目はどうかね、けっこう仮面。一応、洗浄液で洗ってやったから、もう視力は回復しておる
じゃろう。痛みはどうかね?」
「……それはどうもありがとう。あなたにしては親切なことね」
「どういたしまして。気絶したままのきさまをいたぶってもつまらんでな、くっくっくっ……」

学園長は笑いが止まらないようだった。
無理もあるまい。
憎んでも余りある天敵のけっこう仮面を、とうとうその手で生け捕りにしたのだ。
これまで何度煮え湯を飲まされたか知れない。
経済的損失も失った面子も大きかった。
やけ酒を煽る毎日だったが、今宵こそは祝杯が挙げられそうである。

「いい格好だな、けっこう仮面」
「きさま……、この卑怯者!」
「くく、正義の味方が悪玉に捕まった時に吐く決まり文句だな」

今の学園長には、けっこう仮面の詰る声すら心地よく聞こえる。
夢にまで見たけっこう仮面の哀れな姿が、手の届くところにあるのだ。
学園長は、手にした写真をヒラヒラを振ってけっこう仮面に見せつけた。

「これを憶えているかね」
「な、何よ……あっ」

仮面の美女は、人目見るなり顔を背けた。
女性の臀部のアップ写真である。
趣味が悪いにも程があろう。

「よく見ろ。これはおまえの写真だ」
「何ですって!?」

言われて改めて見てみるが、そこに写っているのが自分の臀部かどうかなどわからない。
顔はともかく、尻の細かいところまで自分の目で見たことのある人などいないだろう。
学園長はけっこう仮面のマスクを掴み、その顔を写真に近づけさせる。

「こいつはな、おまえが叩きのめして病院送りにした瀬戸口のやつが撮影していたものだ。パソ
コンを破壊して安心していたのだろうが、ハードディスクから救えたファイルもあったのだよ」
「……」
「そいつがこれだ。これだけではわからんが、同じフォルダ内にけっこう仮面の写真が何枚も
あったよ。場所も同じだし、アップではない引いた写真もある。これはおまえの尻だな」

思い出した。
確かにあの時、瀬戸口が動画や静止画で何枚も撮影していたはずだ。
瀬戸口を倒した時、外部へ漏れるのを恐れてディスクを破壊したのだが、完全ではなかったらしい。
SSSの阿久沢が前の事件の時、その写真からけっこう仮面割り出しを謀っていたと香織も言って
いた。
あの時、けい子が出動していれば、即座にバレたはずである。
香織が出たことにより、けっこう仮面が複数だという証拠を握られた形になったが、けい子が正体
だということはバレずに済んだのだ。
仮面の下で、けい子の顔が青ざめた。

「尻の谷間のあたりに小さなホクロがあるのがわかるか? 肛門のすぐ近くだ」
「……」

学園長はニヤリと笑った。

「仮面で顔を隠しているけっこう仮面の、唯一の物的証拠というわけだ。どれ、おまえにもある
のかな?」
「やっ、やめて! 見ないで!」

けっこう仮面は激しく尻を振って抵抗した。
学園長は、そんな儚い抵抗を愉しむかのようにけっこう仮面の臀部を撫で回す。
そしておもむろに左右の尻たぶを掴むと、一気に割った。

「いやあ!!」

青いまでに白い谷間の底に小さなおちょぼ口が見える。
その横には、当然のように小さなホクロがあった。

「あるある。間違いないな、本物のけっこう仮面じゃ」
「く……」
「悔しそうだな、けっこう仮面。ついでにもうひとつ暴かせてもらおうか。おまえの正体じゃ」
「正体……ですって?」
「そうだとも。夏綿けい子君」
「……!!」

けっこう仮面は唖然として学園長を見つめた。
そして気を取り直すように言い捨てた。

「な、何を証拠に」
「ふたつある」
「……」
「ひとつはな……、出てきたまえ」

ギッと思い扉が開くと、ふたりの生徒が入ってきた。
けっこう仮面は大きく目を見開いた。

「真弓くん! ……真田くん!?」
「そうじゃ。可愛い生徒だろう?」
「ど、どういうことなの!」
「どうもこうもない。自分で説明するかね、高橋真弓くん」

学園長がそう告げると、真弓はなよなよと崩折れた。

「ああ、けっこうのお姉さま……ごめんなさい……」
「ま、真弓くん……どういうことか言って!」

泣き出してしまい、言葉を言えない真弓に代わって、真田が衝撃的な事実を告げた。

「僕が代わりに言いますよ、先生」
「……」
「高橋くん……、いや真弓はね、今ではすっかり僕の女だということです」
「な………なんですって!?」

唖然呆然とするけっこう仮面に、生徒会長が得意げに事情を話した。

「僕、あの時、けっこう仮面……じゃない、夏綿先生にフェラチオしてもらったじゃないですか。
憶えてますよね」
「ば、バカなこと言わないで!」
「あれ? 何で否定できるんです? あそこには強盗犯と僕に真弓、そして夏綿先生しかいなか
ったのに。あなたが先生なんですか?」
「……」

わざとらしくそう言いながら、真田は含み笑いしつつ続けた。
学園長とも目配せしている。

「まあ、そんなことはいいです。でね、あの時のことが忘れられないんですよ。何しろ、憧れの
夏綿先生にそんなことしてもらった上に、強盗犯との迫真のレイプショーまで見学できた。先生
のいきっぷりが目から離れな……」
「やめて!!」

けっこう仮面は血を吐くような悲鳴をあげた。
腕が自由なら、両手で耳を塞ぎたいくらいだろう。
これではもう、あそこにいたのは自分だと──夏綿けい子イコールけっこう仮面──白状して
いるようなものである。
真田はへらへらしながら言い続ける。

「寝ても覚めても先生の身体を思い出しちゃうんですよ。何度マスかいたかわかんないくらいだ」
「……」
「もう我慢できなくなりましてね。思い詰めて、いっそ先生を襲っちゃおうかとも考えた。でも
ね、それは自殺行為だ。確か先生は、柔道、空手にレスリング、合気道に剣道も合わせて、全部
で十六段くらいになるんでしょう? しかも、本当に先生がけっこう仮面なら余計に敵わない。
襲えるわけがない」

けっこう仮面は小刻みに顔を振っている。
身体も小さく震えているようだ。

「じゃあ、あの時のことをネタに脅迫しようか。それもダメだ。そんなこと言っても相手にされ
ないだろうし、とぼけられるかも知れない。ヘタすれば強引に襲った時と結果が同じになる」

確かにそうだろう。

「で、誰か身代わりをと考えたら、いるじゃないですか、ちょうどいいいのが」

そう言いながら、真田は真弓の後ろから抱きついた。
セーラー服の裾から手を突っ込み、胸を揉んでいる。真
弓は泣きながら耐えていた。
たまりかねてけっこう仮面が叫ぶ。

「やめなさい! あ、あなた、真田くんっ。あの時、あんなに真弓くんが頼んでいたのに……」
「そこまでだ」

学園長が重々しい声で言った。

「語るに落ちるとはこのことだな、けっこう仮面。いいや夏綿けい子。その場にいなかったはず
のおまえが、なぜ高橋真弓がそのことを頼んでいたのを知っているのだ」
「そ、それは……」
「ここまでの証言でも嫌疑重大じゃ。もはや疑いの余地はない」

けっこう仮面は学園長を無視して生徒会長を糾弾した。

「真田くん、なぜ!? わ、私はともかく、真弓くんまで巻き込むなんて……」
「じゃあ、最初から夏綿先生に言っていたら素直にやらせてくれました?」
「だ、誰がそんな……穢らわしい! 生徒と教師がそんなこと……」
「でしょう? だったらこうするしかないじゃないですか」
「あ、あなたという子は……。それで学園長に……」
「そういうことじゃな。真田くんはすべてわしに話してくれたよ。高橋真弓君が人殺しをした
ことも」
「いやあ!」

真弓が大きくかぶりを振って泣き叫んだ。

「あ、あれは正当防衛よ! 真弓くんは私のために……」
「そして夏綿けい子教諭。キミは、こともあろうに生徒のペニスをくわえるなどという破廉恥
行為をやってのけた」
「だ、だからあれは脅されて……」
「聞く耳持たんわい。そして生徒の出す精液まで飲んだ。おまけに、指名手配されている強盗
殺人犯に抱かれて、生徒の前で気をやったそうじゃな。淫行の上に公然猥褻ときた。それでも
教師かね」

けっこう仮面は憎悪の炎がちらつく瞳で真田を睨みつけながら言った。

「……なるほど。それであなたは学園長を唆したというわけね。大方、学園長のお墨付き目当て
なんでしょう?」
「そんなところじゃな。学園の公敵・けっこう仮面捕獲の情報じゃ。お墨付きなんぞ安いくらい
だわい」

すべてを覚り、けっこう仮面は観念した。
仕組まれていたのだ。
自分は学園長の張る蜘蛛の糸にかかった哀れな蝶だったらしい。
こうなった以上、自分はもうどうしようもない。
現状では、他のけっこう仮面たちが駆け付けるのはまず無理だ。
正体を暴かれ、この身に辱めを受ける。
拷問も受けるかも知れない。
絶望するのはまだ早いが、いざとなったら自決するくらいの覚悟はけっこう仮面にもある。
だがその前に、真弓だけは助けたかった。

「真弓くんは……」
「ん?」
「真弓くんはどうなるの……」
「高橋真弓か? どうにもならんさ、このままじゃよ」
「このままって……」
「今まで通り。通常の学園生活を営むことになるだろうな」

けっこう仮面はそれを聞いて、少し安堵した。それなら自分の犠牲は無駄ではなくなる。
あとは香織や恵たちに託せる。
その気持ちを突き崩すように真田が言った。

「そう。真弓はこれからも僕の女ですしね」
「ま、待ちなさい! 真弓くんは解放してあげて!」
「個人の恋愛にまで口出しされたくありませんよ。いくら教師でもそれは越権行為でしょう?」
「恋愛ですって!? ふざけないで! 無理矢理の行為が恋愛なわけないでしょう!」
「そうですかね。じゃあ本人に聞いてみたらいいんじゃないですか?」

けっこう仮面は、俯いたままの真弓に食いつくように言った。

「真弓くん、あなたは……」

どうなの、と聞こうとした時、真弓が顔を上げて答えた。
泣き笑いの表情だった。

「いいんです、もう、けっこうのお姉さま……」
「真弓くん!」
「今まで……今日も助けに来ていただいて本当に感謝してます」
「……」
「でも……でも、もういいんです。あたし、おねえさまみたいに強くないんです」
「真弓くん……」
「あたしはもう真田さんのものなんです……。その方が楽だってわかったんです」
「……」

二の句が継げないけっこう仮面に、真弓は精一杯の笑顔を浮かべていた。
これ以上心配かけたくないという思いと、もう絶望なのだという思いが入り交じった顔だった。
彼女の中で何かが壊れ、代わりに何かを覚ったらしい。

「あのね、おねえさま。真田さんのものになってから、あたし他の先生たちにも虐められなく
なったんです」

学園長の指示に違いない。

「暮らしやすくなっちゃったんです。テストで良い点を取っても、カンニングだ不正だと疑わ
れることもなくなったし、怖い男子生徒に脅されることもなくなりました。自由になれたんです」
「真弓くん! あなた、本当にそれでいいの!?」
「いいんです」

真弓はきっぱりと言った。

「そりゃあ……正直言って、真田さんにいやらしいことをされるのもするのもイヤです。でも…
…でもね、最近、少しづつセックスも悪くないかなって思えるようにもなったんですよ」
「真弓……くん……」
「だから……ごめんなさい。あたしは、もう……」
「理解したかね」

学園長がふたりの間に割り込んで言った。

「じゃあ高橋くん、けっこう仮面のマスクを剥ぎ取りたまえ」
「!!」

けっこう仮面は学園長の言葉に驚愕したが、真弓は夢遊病者のようにふらふらと近寄ってくる。
あらかじめ、そうするよう指示されていたらしい。
仮面の美女は、弱々しく頭を振った。

「やめて真弓くん……。それだけは……」
「許しておねえさま。おねえさまのマスクを取らないと、あたし真田さんと学園長からお仕置き
を受けることになってるんです」
「そんな……」
「そういうことじゃ。どうせもう正体は割れておるのだ。今さら隠す必要もあるまい」
「……」

もう一度真弓の方を見たが、その決意の表情を見て、けっこう仮面は項垂れた。
もう、どうにもならないのだろう。
学園長の言う通り、どのみちけい子だということは知れているのである。

けっこう仮面は諦めたように小さな声で真弓にマスクの取り方を指図した。
美少女の繊細な指が震えながら、それでも器用に動き、マスクの後ろを結んでいる細い紐を解き
始めた。
学園長たちは知る由もなかったが、けっこう仮面自身に教えてもらわなければ、とても解けなか
っただろう。
結び方は特殊なもので、知識がなければまずわからない。
マスクも紐も特別製で、破いたり切り刻んだりすることも出来ないのだ。

学園長は、けっこう仮面を捕らえたら、是非とも自分の手でマスクを剥ぎ取ると強く思っていた
し、そう公言してもいた。
だが、今回の状況を鑑みて、考えを変えた。
今まで護ってきた少女の手で、秘密を暴かれる正義の仮面。
仮面の下には絶世の美女が隠れているのだ。そ
の行為が、学園長に性的な興奮をもたらしていたのである。

事実、けっこう仮面の方も、マスクを剥ぎ取られることは、下着を剥ぎ取られるのと同義なほど
に恥辱を感じている。
いや、彼女たちけっこう仮面にとっては、下着を一切着けぬ姿で登場するわけだから、マスクに
こそ下着のような愛着を得ているのかも知れなかった。

とうとう学園長の目の前でマスクが剥がされた。
なぜか高橋真弓は顔を背けている。
マスクの下から現れたのは、予想通りの美人教師であった。

「やっぱりきさまか、夏綿けい子」
「……」
「今までよくもこのわしを謀ってくれたな。A級ライセンス教師だと思って気遣っておったと
いうのに。給料を100万以上も取るくせに、奉職する学園を裏切っておったとはな」
「……」
「何とか言わんか、この裏切り者!」

激昂したマントの学園長がそう叫んだ。
滅多なことでは感情を表さない男だが、ことけっこう仮面に関してだけはそのタガが外れる。
まして今回はその正体が暴かれたのだから当然だった。
宿敵のけい子は毅然とした美貌で訴えた。

「裏切り者ですって? 裏切り者はどっちよ!」
「なんじゃと?」
「生徒を裏切り、文科省を裏切っているのはおまえよ、サタンの足の爪!」
「じゃかましいわ! わしの教育方針は結局生徒どものためになるのだ!」

そう言いながら、学園長はけっこう仮面の後ろへ回り込み、真田に目で合図した。
生徒会長は小さく頷くと、嫌がる真弓を仕置き部屋から引き出していく。
「おねえさまっ」と叫ぶ少女の悲しげな声がけい子の耳に響く。

「真弓くん!」
「心配するな、あの生徒には何もせん」
「……本当でしょうね」
「疑うか。わしはな、あやつらには興味はない。興味があるのはおまえだけだ、けっこう仮面」

仮面で表情の読めない学園長は、手にしたマスクを再びけい子に被せていく。
何事かと思って抵抗したけい子だったが、すっぽりとマスクでその美貌を覆われた。

「何を……」
「こうした方が雰囲気が出るでな。そのうち、裏切り者の夏綿けい子を仕置きすることもあろ
うが、今はまず積年の恨みを晴らさせてもらう。けっこう仮面、きさまをドギツ仕置きに掛け
るのじゃ」

やはりそうかと、けい子は覚悟した。
学園の手に、いや学園長に囚われたけっこう仮面がどうなるのか、けっこう仮面たちなら誰
でも知っている。
生徒たちに仕掛ける「仕置き」と称する拷問を施すに違いない。
それも、生徒のものとは比べものにならない強烈なやつに決まっている。
学園長はにやつきながら手にした物をけい子に見せつけた。

「ひっ……」

正義のヒロインとも思えぬ悲鳴が口から零れ出た。
学園長が両手で持っていたのは大きなカボチャである。
しかし、この学園の生徒や教師なら、それが農産物ではないことを知っている。

「きさまも見たことはあるだろう。これが噂のカボチャ浣腸じゃ」

浣腸による拷問は、仕置きの定番である。
浣腸されるという行為の屈辱はもちろんのこと、それを起因とする猛烈な便意は絶対に耐えき
れるものではないからだ。
これをされて尋問された生徒は100%の確率で自白させられることになる。
地獄の便意を味わわされると、やったかどうかなど問題ではなく、ただひたすら排便したいと
いう生理的欲求のみに支配されてしまうのである。
また、その排泄行為を見られるという尊厳破壊までされることになる。
そのため、これは最終的な責めであり、浣腸のサイズもいわゆるイチジク浣腸が普通だ。
ところが学園長が持っているカボチャの形状をしたそれは、両手でないと持てないほどに大きい。

「くく、脅えておるのか、けっこう仮面め。いいか、生徒どもに使うやつは市販されとる普通の
ものだ。量は30ccほどで、グリセリンは概ね50%ほどだ。だがな、こいつは特別製じゃ。
よほど聞き分けのないやつか、きさま─つまりけっこう仮面用のものなのじゃ。計ったことは
ないが、500や600は入るぞい。しかもグリセリンの比率は70%に上げとるし、少し酢酸
も加えておる。たっぷり愉しめるぞ」

わざわざ解説して、けい子を恐怖のどん底に突き落とすつもりらしい。
けっこう仮面も、何とか脅えを見せまいとしているが、僅かに震えているのを隠すことはできな
かった。
気丈なけい子がこれほどまでに恐れるのも、かつて一度、熾烈な浣腸責めを受けているからだった。
いわゆる医学部事件で、瀬戸口らによって浣腸の洗礼を受けた時の恥ずかしさと苦しさは今でも
忘れられない。
一種のトラウマになっている。
あんな目に遭うくらいなら、殴打された方がマシだと思ったほどだ。

「そ、それだけはっ……」

けっこう仮面が恐怖におののいているシーンなど、滅多に見られるものではない。
学園長はそれだけで昂奮していた。

「やめて欲しいか。なら、お決まりだが一応尋問してやるか。けっこう仮面グループの全貌を
白状せい。そうしたら考えてやるわい」
「そんなこと……言えるわけがないわ」
「そういうだろうと思うたわい。では仕方がないな」
「や、やめて!」

たっぷりと特製浣腸液の詰まったカボチャを重そうに持ち上げると、けっこう仮面の豊満な臀部
の前で構えた。
嫌がってぷりぷりと蠢く真っ白い尻肉が何とも蠱惑的だった。
少し開かれた尻たぶの底に、控えめなアヌスがヒクヒクとおののいている。
学園長は容赦なくそこへ嘴管を挿入していった。

「ひぃ!」

親指ほどの太さがあるノズルが、ズブリとけっこう仮面の肛門に飲み込まれていく。
冷たい感触に、けっこう仮面の肢体がビクリと跳ねた。
そうした抗いまでもが、学園長の嗜虐嗜好を満足させている。

「どうじゃ、このわしに浣腸される気分は?」
「ああ、いやっ……やめて、この……けだもの!」
「ふふ、いつまでそんなに反発していられるかな。正義の味方らしくせいぜい抵抗してみせるが
いい。そう簡単に屈服してもらっても興ざめなのでな」
「だ、誰がおまえなんかに屈服なんかするか! ああっ」

元気の良い抵抗の叫びが、甲高い悲鳴で中断された。
いよいよ始まったのだ。
学園長が両手に力を籠めると、カボチャ型浣腸器から一気に薬液がけっこう仮面の腸内へと注入
されていく。

「ひぃああっ! や、やめ……あむむっ……」
「どうじゃ、酢混じりの浣腸の味は。普通のと違ってだいぶきついはずじゃぞ。だが、きさまの
体力なら問題ない。それに、これだけ見事な尻をしてれば何とかこなせるはずじゃ」
「こんなっ……あ、うむっ……やめ、ろぉっ……うあっ……」

瀬戸口たちにされた時の、おぞましい記憶が甦る。
忘れかけていた悪夢の復活だ。
グリセリン浣腸であれば、徐々に苦しくなっていく。
だが酢混じりだといきなり辛くなるのだ。
これも瀬戸口によって経験させられていたが、何度されても慣れるわけがない。
まだそれほど入れられたわけではないのに、酢酸の刺激が肛門の粘膜から直腸の内壁まで冒して
いく。
もう便意が込み上げてくる。

「あ、あ、あうむ……い、入れないで……あうっ……」
「どうだ、思い知ったかけっこう仮面。浣腸責めはたまらんじゃろうが」
「う、るさい……やめ、ろ……あ、きつ……きつい……」

けっこう仮面の背中と言わず腿と言わず、あらゆるところに汗が浮いてきている。
赤いマスクの下の素顔も、同じように真っ赤に染まっていることだろう。
目出しマスクで目しか見えないが、そこからだけでも充分に彼女の苦悩、悩乱が感じられる。
けっこう仮面の身体がぶるぶると震えて止まらなくなる。

「そうか、きついか。もっと言え、もっと苦しめ。きさまにやられた教師どもやわしの怨みを
思い知るがよいわ」

自分の悪事は棚に上げて、学園長は勝手なことをほざいた。
ピストンタイプの一般的な浣腸器と異なり、カボチャ浣腸は著しく注入しにくい。
だが、両手に持ったシリコン製のチューブをぐっと握りつぶすように注入するのは、シリンダ
ーを押すのとはまた違った満足感があった。
量があるだけに、焦らすように入れるのではなく、一気にビュッ、ビュッと注入していった。

「あううっ……ひっ……い、入れないで! ……むむうっ……こ、こんなことして……何が
面白いのよ……あ、あむっ……」
「面白いとも。この見事な女体に浣腸責めする法悦は何物にも代えられんわい」
「こ、この気違いっ……へ、変態……くうっ……きつい、苦しいっ……」
「変態か。いいとも、わしは変態だ。だがな、きさまも変態にしてやる。そのうち浣腸で責め
られたくてしようがない身体にしてやるわい」

学園長は言葉でも嬲りながら、けっこう仮面の内臓を責めていく。
責める学園長の仮面の下は、欲情した笑みが込み上げている。
一方の、責められるけっこう仮面のマスクの下は、その美貌から血の気が引いて青ざめてきている。
それに伴い、全身の痙攣もわなわなと大きくなってきていた。

「うむ……うむっ……も、やめて……ぐうう……きつい……こ、これ以上は……」
「まだまだ。全部入れるまでは許さんわい」
「もう、だめっ……は、入らないわ……苦しい……」
「そんなことはない。ほれほれ、まだ入るぞ」
「だめだめっ……もう漏れちゃう……ああっ……」

猛然と駆け下ってくる便意を堪えるのがやっとのけっこう仮面は、満足に喋れもしなくなった。
浮いた汗はポタポタと垂れ始め、尻の痙攣が止まらない。
少し曲がった膝は笑ってしまい、何度も何度も崩れそうになる。

「もう入れないで……ああ、だめ、おトイレっ……!」

我慢の限界に来たらしく、けっこう仮面とは思えぬ情けない悲鳴が出た。
何とか気力を振り絞ってはいるが、アヌスを引き締めるのが精一杯だ。
両手拳は固く結ばれ、ブーツの中の足の指も屈まっている。
仮にここで学園長が浣腸を止めても、もうけっこう仮面はとてもトイレまでは保たないだろう。

「もう少しだ。さすがにけっこう仮面……いや、夏綿先生だな。酢酸入りの浣腸をこんなに入れ
られて、まだ漏らさないとはな」
「ああもう……もう我慢できないっ……お、お願いやめて……あ、入れないでっ……」
「生徒どもに忍耐を教える教師が「もう我慢できない」とは情けない。出すのはちゃんと全部
飲んでからじゃ」

そう言うと、学園長は両手をぎゅっと握りしめるようにしてラミネート・チューブを押し潰し、
残っていた薬液を全部注入した。

「あひぃっ!」

けっこう仮面は白い喉を仰け反らせて、すらりとした肢体を激しく痙攣させた。
傍目には、まるでセックスで絶頂に達したかのようすら見える。
けっこう仮面本人はそれどころではなかった。
目の前が暗くなるほどの苦痛が襲ってくる。
股間というか、脚の付け根がビリビリと痺れるように痛む。
極限に達した便意のことしか考えられない。
排泄欲がけっこう仮面の理性を狂わせ、意識を白く灼いた。

「ふふふ、もうしたくてしたくてしようがなさそうだな。いよいよけっこう仮面めの恥ずかしい
シーンを拝める」
「い、いや……ここでは……」

けっこう仮面は便意の苦痛でわななきながら、掠れた声で訴えた。
最後の気力を総動員しているが、すでに限界は超えていた。
意志に関わらず、アヌスが痙攣して外に開こうとしているのを自覚する。

「あ、ホントにだめ……ああ、もう……お願いよ、おトイレに……」

ガクガクと脚を震わせて哀願するヒロインを心地よく眺めながら、学園長が死刑宣告にも等しい
ことを告げた。

「我慢できんかね? なに、構うことはない。ここでひり出せば良いのじゃ」
「な……」

驚いたけっこう仮面は思わず後ろを振り向く。
そこには彼女の大きな臀部の真ん前で、青いポリバケツを構えている学園長がいた。
この男も、変態の瀬戸口と同じように女の恥ずかしい排泄を見るつもりだ。

「いやいやいやっ、絶対にいやよっ」
「じっくり見せてもらうわい。どうせもう辛抱できんのじゃろうが。それ」

学園長は指を伸ばし、根性で耐えているけっこう仮面の肛門周辺をなぞってやった。
触れられた瞬間、ビクッと痙攣したけっこう仮面は悲鳴を上げて崩壊した。

「さ、触らないで! ……ああっ、もうだめっ、み、見ないでっ……!!」

けっこう仮面のアヌスが爆発した。
悲痛な叫びとともに、抑えようのない便意の塊がほとばしり出る。
出た瞬間、「ああっ」と叫んで留めようとしたものの、一端堰を切った排泄は止めようがない。
噴き出るように排泄しながら、けっこう仮面は泣いた。
いかに気丈でも男勝りでも、いやそれだからこそ、こんな屈辱や恥辱には弱いのかも知れなかった。
医学部事件で経験させられたとはいえ、何度されても我慢できる類のものではない。

学園長は、まるで何かに取り憑かれたかのように女の尻を凝視していた。
飛沫がマントや仮面に飛んでも構わず、食い入るように観察している。
けっこう仮面の崩壊したアヌスの開き具合や、粘膜の動きを飽きることなく見つめていた。
夏綿けい子は泣いていた。

(ああ、また、こんな……)

変態教授に浣腸で責められ、排泄を見られたことを思い出してしまった。
絶対に見せてはならないと思っても、どうにもならないのがこの責めのむごさだ。
ぶるぶると尻たぶを震わせつつ、排泄が続く。
いったん途切れても、またすぐにドッとばかりに迸る。
大量に浣腸されたのだからやむを得なかった。

「あ……あ……」

ようやく苦痛の源を絞りきったけい子は、力なくすすり泣いた。
またこんな恥を晒してしまった。
それもにっくき仇敵である学園長の前でだ。
その学園長に対する嫌悪や憎悪、反発心まで一時的に喪失してしまったほどの屈辱だった。
学園長は、ひり終わったことを確認すると満足げに言った。

「やっと終わったか。随分とまたたくさん出たもんだな。これが学園の秩序を守るヒロインの
することか」
「……」
「他の仲間がこんな姿を見たら腰を抜かすだろうな」
「いや……」

そんなことになったら生きていけない。
けい子らしくもなく、彼女は泣いた。
浣腸され、排泄まで見られた。
どうすればいいのかと打ちひしがれていると、また学園長がごそごそと何かやっている。
けっこう仮面は、涙を滲ませ固く閉じていた目を開けると、ハッとして振り向いた。
学園長はまたしてもカボチャを持っている。
今終えたばかりだというのに、また浣腸するつもりらしい。

「いやあっ……もういやよ!」

顔を左右に振りたくりながら、不自由な身体を何とか動かして逃げようとするのが痛ましく、
またいじらしかった。
学園長のサディズムは、そんなけっこう仮面の姿を見るとますます猛ってくるのだった。

「こんなもので終わると思うなよ、けっこう仮面。まだまだじゃ。まだまだ浣腸で責めてやる
わい」
「ど、どうしてこんな……こんないやらしいことばかりするの……」
「もちろん、これがいちばん効くからだ。きさまのようなタイプの女はな、ただ痛めつける
よりは思い切り恥ずかしい目に遭わせたり、いやらしいことをしまくって感じさせる方が堪える
んじゃよ」
「こ、この……悪党! 変態よ!」
「ほう、まだそんな口が利けるか。よしよし、それならなおさら浣腸じゃ」

学園長は、わざと重そうに持ったカボチャ浣腸を、けっこう仮面の肛門に突き立てた。

「ああっ! ま、まだそんなバカなことをすると言うの!? やめて、やめなさい!」
「まだまだだと言ったはずじゃ。このわしに逆らったけっこう仮面の罪、そしてわしを謀り続け
た夏綿けい子の罪。このふたつの罪に対する罰じゃ。それにしても浣腸がよく似合うむちむち
した尻じゃな。それ」

学園長は、これ以上の至福はないと言わんばかりにマスクの下の口をいやらしそうな形に歪め、
チューブを押していく。
ビリビリッと酢酸の刺激がアヌスと腸内を同時にいたぶっていく。
たちまちけっこう仮面の全身が泡立つように総毛立った。

「あ、ああっ……くっ……き、きつい……あうむむ……」

冷たい溶液のはずなのに、腸内に入った途端に熱湯のように感じられた。
まだ少ししか入れられていないというのに、早くも便意が込み上げてくる。
さっきの浣腸で、出すものはすべて出してしまったかららしい。
けっこう仮面はとてもじっとしてはいられず、ぶるぶると腰を震わせ、よじらせている。
上半身にもその痙攣は達し、頭を振りたくり、乳房もぶるんぶるんと大きく揺さぶっていた。

「やめて……もっ、やめてえっ……きついっ……きついのよ……くううっ……!」

内部が空っぽの直腸に、この刺激は強烈だった。
腸が乱暴に引っかき回されるみたいで、浣腸だけで責め殺されるかと思うほどだ。
最初よりも二回目の方が確実にきつさと苦しさが増している。
その妖艶さに、学園長はよだれを垂らさんばかりだ。

「くく、いいぞいいぞ。その苦しそうな顔がたまらんわい。この程度で音を上げるんじゃない
ぞ。もっともっと痛めつけてやるからな」
「く、苦しい……あ、あむ、ううむっ……」

ぎゅうぎゅうとカボチャ浣腸を絞ると、大量の溶液がズズッとけっこう仮面の内部に注入されて
いく。
アヌスと言わず直腸と言わず、けっこう仮面のはらわたの隅々にまで悪魔の薬液が染み渡っていく。
腸が内部からジワジワと灼けていくのがわかった。
けっこう仮面は声を出すのさえ苦しく、呼吸すら満足に出来なくなった。
汗の浮いた肢体をよじらせ、呻くのみだ。

浣腸液のほとんどが腸内に入れられると、けっこう仮面の全身の震えが止まらなくなった。
何とか屈服の声を出すまいと噛みしめている唇からも、がちがちと歯が噛み合わせる音が鳴る。
悔しさも恥辱も頭から消え失せ、猛々しいほどの便意の苦痛に飲み込まれていく。

「あ、あうむ……だめ……もう、だめ……で、出ちゃうわ……ああ……」
「ほう、けっこう仮面ともあろう者が恥ずかしいことを言うもんじゃ。「出ちゃうわ」とはな。
何が出るのか言ってみんか」
「い、いや……ううむ……」

学園長はせせら笑って残りの薬液を一度に注入する。
激流となって、一気に多量の溶液がけっこう仮面の腸内に渦巻くように注ぎ込まれた。

「やめて、きついっ……むむうっっ!」

けっこう仮面は顔を振りたくり、赤いマフラーとリボンが宙を舞う。

ラミネートチューブを押し切られ、薬液のほとんどは注入された。
満足げにノズルを引き抜くと、慌てたように肛門が引き締まる。
仮面の下の美貌は汗にまみれ、唇を噛みしばり、失神しないのが不思議なほどの責め苦に苛まれ
ていた。
意識を失いそうになるものの、極限に達した便意がそれを許してくれない。

「あっ……も、もうっ……もうだめっ!」
「ふふ、もう出るのか、少しは我慢せい。バケツをあてがって欲しければそう言うんじゃぞ。
また見てやるからな」
「いやよ! ああ、む、向こうへ行ってえっ!」

あの生き恥だけは何とか堪えようとするものの、けっこう仮面の素顔はもう血の気を失っている。
それを見透かして、学園長は左手でバケツをあてがうと、右手でその柔らかな腹部をさすって
やった。
スリムだった下腹部が、大量の薬液のせいで少し膨れている。
そこを撫でられ、揉まれるようにさすられるのだからたまらない。
破裂寸前の腹がグルグルと悲鳴を上げている。

「そんなっ……やめて、しないで……苦しいっ……」

腹に負けぬほどの悲鳴を上げたけっこう仮面だったが、それでも何とか排泄を耐えている。
学園長は、それこそ思うつぼとばかりに、今度はヒクヒクと痙攣し続けるアヌスに指を伸ばした。
けっこう仮面は絶叫した。

「やめてえっ、さ、触らないでっ……で、出る、出ちゃうっ……」

今にも噴き出しそうなアヌスをゆっくりと揉み上げられると、けっこう仮面の表情は青ざめ、
全身にはっきりとした鳥肌が立ってきた。

「ああっ……ああ、いやっ……う、うむ……」

けっこう仮面は目の前が暗くなっていくのを自覚した。
交互に揉まれる下腹部とアヌスの刺激が、ビンビンと直腸に響いてくる。

「いつまで頑張っておるのじゃ。さっさとひり出さんかい」

学園長は爪を立てて、けっこう仮面の肛門をカリカリと軽く引っ掻いた。
けっこう仮面は「ひぃっ!」と、らしからぬ悲鳴を上げ、とうとう女の生理をさらけ出した。

「で、出ちゃうっ……ひぃっ、出るぅっ!」

正義の美女の全身が瘧に罹ったかのように大きく震えたかと思うと、、やや濁った薬液が奔流
となってバケツに噴き出された。

次々に激しく迸らせながら、けっこう仮面はその屈辱に身を捩って呻いていた。
排泄のたびに、アヌスが内側から盛り上がるように開いて、ぷりぷりした尻がぶるるっと震える。
恥辱にまみれ、けっこう仮面は泣いた。

(ああ、こんなことって……し、死にたい……)

一度排泄が途切れても、思い出したようにまたひり出す。
悪夢の排泄行為は、精神的にも肉体的にもけっこう仮面を追い込んでいく。
強い酢酸の刺激は、排泄の時でさえ肛門粘膜を責め苛んだのだ。
アヌスが火のように熱く、ビリビリと痛いほどに痺れきっている。

「やっと全部絞り出したようだな、けっこう仮面め」
「あ……ああ……」
「これで下準備は終了じゃ」



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