女生徒の自殺から端を発した医学部のスキャンダルにより、スパルタ学園医学部は
廃止された。
医学部コースの生徒20名は、逮捕者の5名を除いた全員が他校への転校を余儀なく
されていた。
もともと学園教師だった者はともかく、医学部設立のために雇われた講師たちも
全員解雇となった。
責任者であり事件の首謀者だった瀬戸口もと教授は、けっこう仮面──若月香織──
の一撃を食らって手首を複雑骨折して外科医の道を絶たれた。
おまけに頭蓋骨陥没骨折までさせられて、長期入院加療することとなった。
政治家だった父親や大病院理事長を勤めていた母親の尽力もあって、罪に関しては
何とか執行猶予を得ることが出来たものの、大学教授の座は追われ、懲戒免職と
なったのだった。
そうしたこともあって学園の医学部棟は閉鎖されており、今は完全に無人である。
潰して跡地に他の施設を建てるか、建物はそのままに別の目的に流用するのかも
決まらず、放置してあった。
けっこう仮面対策で、とても新規事業を立ち上げる余裕が学園長になかったせい
もある。
そんなわけで、新しい建物だけに廃墟然としていても何か不気味なところがあった。
学園は医学部関係者に箝口令を布いていたが、生徒たちは医学部事件の内容について
うすうす感づいていたようだった。
中で遺体の解剖が行われていたらしいことも噂として流れており、気味悪がって誰も
近づかない有様だった。
解剖された生徒の幽霊が出るといったお定まりの怪談も当然のようにあった。
学園も解剖云々については否定したものの、幽霊話についてはコメントしなかった。
そういう噂を恐れて、生徒たちがそこへ近づかなければそれに越したことはないと
いうわけである。
そんな医学部棟に、この日、何度か灯りが点ったのを目撃した生徒が何人か現れた。
一階ロビー付近の非常灯が点いたという証言だったが、学園側はそれを否定した。
すでに医学部棟には電力も通っておらず、明かりが点くわけがないというのだ。
目撃した生徒たちも、点いたのはほとんど一瞬だったため「錯覚ではない」と強弁
することは難しかった。
結局、学園が相手にしなかったため有耶無耶となってしまったが、目撃例が複数あっ
たため、まるっきりのウソではないと噂された。
──────────────────
その頃、医学部棟の地下の一室にひとりの男が座っていた。
かつては遺体安置室兼解剖室として使われていた部屋だ。
長い間放置されていたが、この日のために清掃、消毒がなされていた。
広々とした部屋には、大きな手術台がデンと鎮座している。
あとはスチール製の棚がひとつ置いてあるだけで寒々としていたが、かつての解剖
室の設備はそのままだった。
手術用の大きな照明や排水、水道、換気設備は完備してある。
電力も、自家発電装置は健在で、燃料も急遽供給されていた。
その部屋の東側と西側にあった観音開きの扉がほぼ同時に開いた。
がらがらとキャスターを鳴らしながらストレッチャーが入ってくる。
「どこへ連れて行くの!」
「ちくしょう、離せよ!」
同時に女の叫び声が響いた。
ふたつの移動寝台に乗せられたのは、赤いマスクに赤い長手袋、赤いブーツを纏った
だけの全裸の女だった。
スパルタ学園では知らぬ者とてないけっこう仮面だ。
扉が閉められると同時に、また同時に女の叫びが上がる。
「あっ、恵さんっ!」
「あんた……、香織先生!?」
ふたりは、厳しく縛められた格好のまま呻き、絶叫した。
安っぽいストレッチャーの上に四つん這いにさせられている。
腕は後ろへ伸ばされ、手が足首をつかめる位置にまで引っ張られている。
その状態でブーツと手袋の上からベルトでひとまとめにされ、かっちりと縛られて
いた。
膝立ちで、上半身は顎と顔で支えている状態だ。ぐっと臀部を後ろに突き出して
おり、両脚は寝台の幅一杯まで開いているから、股間の有様は丸見えである。
恵はまだ生きている。
学園長は簡単に殺す気はなく、首を絞めたのも落とすためだった。
のど笛ではなく首の横──つまり頸動脈を抑えたのである。
こうすることで脳へ行くはずの血液の循環が止まり、一時的に脳が酸欠状態になる。
意識朦朧となるわけだ。
もちろんそのまま締め続ければ死んでしまうが、それはしない。
柔道の絞め技と同じである。
覚醒した恵は、生きていることを実感する前に、哀れなけい子の姿を思い出していた。
「くそっ、先生までかよ!」
「ごめんさない、恵さん……。でも、あなたまでなんて……」
「ミスったよ。こいつら、けい子先生をダシに使いやがって」
「え!? けい子先生は無事なの!?」
「ああ、そいつは大丈夫だ。あたしはこの目で見たし、少しだけど話もしたからね。
でも……」
「おしゃべりはそこまでにしてもらおうか」
急ききって話していたふたりのけっこう仮面の間を裂くように、男の冷めた言葉が
響いた。
男は軽く手を振ると、恵を運んできた石川と小山田、香織を連れてきた岡崎と二宮
を追い払った。
四人はふたりの美女の肢体を名残惜しそうに見ていたが、言葉に従って部屋を出た。
そのうち、自分たちにもお零れが回ってくるだろうと思ったようだ。
「やっと捕まえたわい」
そうつぶやいたのは悪魔のマントを纏った学園長だ。
恥ずかしい格好で拘束されたふたりの宿敵を見ながら、その回りを歩き回る。
「それにしても、やっぱり貴様か、若月香織。新任の保険医がけっこう仮面だとは、
誰も思わんかったわい」
「……」
「おまえが夏綿くんのことを聞きに来た時から怪しいと思っておったわい。もしか
したら、SSSの阿久沢に捕まったけっこう仮面も貴様か」
「……」
「まあいい」
無言の香織に見切りをつけるように、今度は恵の方を見る。
「……こっちはだいぶ驚かされたがな、紅恵」
「……」
「トライアスロンの時、佐田先生と片桐先生からけっこう仮面を捕まえたと聞かさ
れた時は、我が耳を疑ったものだがな」
「……」
「結局信じなかったが、まさか本当に貴様がけっこう仮面だったとはな。中学時代
から札付きのワルで、スパルタ学園に来てからもすぐに番を張りおった。そんな
学園一のヤンキー娘がけっこう仮面とはな。悪い冗談のような話じゃて」
「……」
「それにしても失望したぞ、紅恵。おまえは親のこともあって、何をやらかしても
大目に見て来たつもりなのだがな」
「……けっ」
恵は吐き捨てるように返した。
「その甘さが命取りだったわけだな、学園長」
「まったくじゃ。しかし命取りとまではいかなんだな。命を取られるのは貴様らの
方だ」
その言葉を聞いて、恵も香織もぴくりとした。
「……殺す気か」
「心配か? 安心しろ、殺しはせんさ。すぐにはな」
「……」
「その身体にはまだ用があるからな」
いかにもいやらしそうな口調で学園長がそう言うと、香織は覚悟したように目を
つむり、恵は睨みつけた。
「下司が。悪党どもはみんなそうだ!」
「その通りだ、それがどうした? それだけの身体を目の前にして何もせんような
男はおらんわい。聞きたいこともあるしな」
「聞きたいこと?」
サタンの足の爪は大きく頷いた。
「おまえらの組織のことじゃ。これでけっこう仮面は三人捕らえた。まだ他にも
いるのか?」
「……」
「知ったことか。勝手に調べりゃいいだろ」
香織は黙り込み、恵は反発した。
「素直には言わんか。そうじゃろうな。それなら身体に聞くしかないわい」
「……」
「もっとも、身体に聞くのが一所懸命になりすぎて、取り調べを忘れるのがしば
しばなんだがな」
学園長はそう言って「くくく」と喉で嗤った。
「さあて、まずはどうしてくれようかな」
「学園長! 恵さんを責めるのはやめて!」
「何じゃと?」
「……さっき言った通り、私は若月香織です。そして、そっちは紅恵さんです」
「……」
「学園長、けっこう仮面とはいえ彼女はこの学園の生徒です。教育者として、生徒
を折檻するのは……」
「生徒ではないわい」
学園長は言い切った。
「少なくとも今はな。その恥ずかしい格好で何が生徒じゃ」
「でも……!」
「やめなよ、香織先生。何言っても無駄だよ。どうせこの外道は、あたしたちを…
…」
「わかっておるではないか。それなら……」
「学園長」
学園長が両手を拡げてふたりのけっこう仮面に迫ろうとした時、その後ろから声が
掛かった。
「おひとりで進めないでくださいよ。僕も……」
「ん? おお、そうじゃったな」
「あ……! あなた……!」
その声を聞いて、香織がギョッとした。
恵は驚いたように、その男を見つめている。
「……そう。おひさしぶりだね、けっこう仮面」
「あなた……、瀬戸口教授!?」
「こっ、この悪魔! まだ生きてやがったか!」
ワイシャツにネクタイ、その上に白衣を引っかけているその男は、もと医学部教授
の瀬戸口に間違いなかった。
「にゅ、入院していたんじゃ……」
「退院したのさ、もう半年以上経つんだからね。あの時は酷い目に遭ったよ。あなた
にやられた手首も頭も後遺症が残るかと思ったくらいだ。それにしても……」
瀬戸口は、四つん這いで尻をこっちに向けながら、首を捻って彼の方を見ているけっ
こう仮面たちを眺めて言った。
「やはりけっこう仮面はふたりいたんですね」
「いいや、これで少なくとの三人じゃ」
「あ、そうか。夏綿先生もですってね。すると……」
瀬戸口は天井を見ながらつぶやいた。
「最初に僕が捕まえたのは……」
「恐らく夏綿けい子じゃな。で、夏綿先生を助けに来て、おまえをヌンチャクでぶん
殴ったのが、そっちの若月先生じゃろうな」
「……」
顔を逸らした香織を見ながら、医師は何度も頷いた。
「なるほど、そういうことですか」
「そんなことはどうでもいいわい。瀬戸口、早速調べろ」
「わかりました」
調べるって何のことだろう。
尋問でもするのだろうかと恵が考えていると、瀬戸口は小さな注射器を持ち出した。
恵はすっと青ざめた。
自白剤でも使うのだろうか。
まさかとは思うが、覚醒剤かも知れない。
この学園を考えれば、別段あり得ないことでもない。
医師は落ち着いて、まず香織の右腕を掴み、二の腕を脱脂綿で消毒した。
「な、何を注射するんですか……」
香織が少し脅えたように聞いた。
アルコールの消毒液が肌に涼しい。瀬戸口は薄く笑って答える。
「いえ、注射じゃありません。逆ですね」
「逆?」
「ええ。少し血を貰います。血液検査をしますから」
「検査? 検査って……痛っ」
ちくんと細い注射針が皮膚に刺さり、細長い注射管にけっこう仮面の血が吸い取られ
ていく。
脱脂綿で針とそれが刺さった皮膚を押さえ、注射針を引き抜かれた。
「よ、よせ……あっ」
針を換えると、今度は恵の腕に突き立て、同じように血を採取した。
それを見ながら学園長が尋ねる。
「結果は?」
「すぐに出ますよ」
瀬戸口はそう言ってけっこう仮面の腕から注射針を抜いた。
「よし、それじゃ早速仕置きするか」
「お待ち下さい、学園長。せっかくふたり揃ったんですから、少し趣向を変えまし
ょう」
「どうする気じゃ」
「お任せを」
瀬戸口は点滴スタンドを転がしながら、ストレッチャーのけっこう仮面に近づいて
いく。
「や、やめろ、近づくな!」
「恵さんには何もしないで! 許してあげて!」
「……麗しい仲間愛ってところですか」
瀬戸口は香織と恵の悲鳴のような抗議を受け流しながら、てきぱきと何事か用意を
している。
右手は複雑骨折で細かい作業は出来なくなっているようだったが、入念にリハビリ
したのか、日常生活には不便はないようだ。
スタンドのフックにイルリガードルを引っかける。
それを見て、学園長がニヤッと笑った。
「またそれか。好きじゃな、おまえも」
「まあね。学園長だってお好きでしょうに」
「おまえほどじゃないわい。ま、嫌いではないがな。で、どうする? ひとりずつ
してやるのかね」
「趣向を変えると言ったでしょう。ふふ……」
スタンドにぶら下がったのは、樹脂性のイルリガードルである。
白っぽい半透明で、そこそこの大きさがある。
目盛りを見ると、1000cc用らしい。
普通の容器と異なるのは、漏斗状になっている注ぎ口がひとつではなくふたつある
ところだ。
そこには当然のように黒いゴム管がつながっている。
ゴム管の先には樹脂性のノズルがついていた。
それを見て、香織が脅えたように聞いた。
「な、何をしようと言うんですか……」
「わかりませんか。これはイルリガードル浣腸ですよ」
「な……」
「か、浣腸ですって!?」
「そう。あれ? もしかしておふたりとも浣腸未経験ですか? 僕は夏綿先生の
けっこう仮面にしか浣腸したことはないけれど」
瀬戸口が振り返ってそう聞くと、学園長はにやにやしながら否定した。
「いや、若月先生は阿久沢にされとるはずじゃ。そうだな?」
「……」
香織は目を堅く閉じて顔を振りたくった。
思い出したくもない記憶が蘇る。
咎島に乗り込んで阿久沢に捕らえられ、散々肛門を責め抜かれた。
その際、いやというほど浣腸もされたのだ。
あの苦しさ、恥ずかしさは思い出すだにおぞましかった。
あの時もやはり、こうしてイルリガートルで大量浣腸責めされたのだった。
「そっちの元気の良い方のけっこう仮面はどうです?」
「紅恵か? やつも佐田と片桐にたっぷりされとるはずじゃ。そうだな」
「お、大きなお世話だ!」
学園長は、佐田らがどんな具合に責めたのかまでの報告は受けていない。
従って想像で言っただけだが、スパルタ学園に於いては、生徒を自白させるために
浣腸は効果的に使われていたから、聞くまでもなく捕らえられたけっこう仮面には
浣腸が行われているだろうと思ったのだ。
実際、恵も筋金入りのサディストだった片桐に、イヤと言うほど浣腸責めされている。
便意を伴う腹痛にのたうち回され、挙げ句、敵の前で排泄させられたことは、気の
強い恵でさえ強烈なトラウマとなっていた。
恵も片桐にされた浣腸が、やはりイルリだった。
つまり、ふたりともその恐ろしさ、おぞましさは骨身にしみるほどにわかっている。
「覚悟はよろしいですね? では」
「ばっ、馬鹿、やめろ!」
「いやっ!」
白衣の瀬戸口が二本のノズルを持って後ろに回ると、ふたりのけっこう仮面は腰を
捩って抵抗した。
大きな臀部がぷりぷりと揺さぶられているのは眺めとしては良かったが、そのまま
では挿入できない。
瀬戸口が学園長に目をやると、「心得た」とばかりににんまりして女どもに近寄った。
独裁者である学園長を顎で使うなど、スパルタ学園では考えられなかったが、学園長
の方はさして気にも留めず、指示に従った。
不満よりも、瀬戸口がけっこう仮面どもに何をやらかすのかという興味の方が強かっ
たのだ。
「ほれ、おとなしくせんか!」
「きゃあ!」
学園長は、まず香織の細い腰を太い左腕で抱えるようにして押さえつける。
お尻をひとつぴしゃんとひっぱたくと、右腕で両腿の付け根を抱え込んで動きを封じた。
まだもじもじと臀部が踊っていたが、瀬戸口はその尻たぶを器用に左手で開いてやる。
「おお、けっこう仮面のお尻の穴がよく見えますよ」
「やっ……、み、見ないで、そんなところ!」
けっこう仮面はそう叫んで恥ずかしそうに腰をうねらせた。
香織も、まだ馴れぬ頃は、全裸になって素肌と肉体を晒して戦うのは、やはり恥ずか
しかった。
しかし、その恥ずかしさと股間を見られるのとは次元が違う。
羞恥に加え、屈辱感も込み上げてくる。
観察されることなどあり得ない箇所を、じっくり見られることほど辛いものはなかっ
た。
滅多に出さない必殺技として「おっぴろげジャンプ」がある。
これは大股を拡げて、敵の顔に向かってフライングボディアタックをするという
ものだ。
ボディアタックとはいっても、拡げた股間を相手に押しつけるようにしてぶつかって
いく技だ。
これをされると、男はまず驚愕して反射的な反応が出来なくなる。
そこに女体が飛んできて、首もしくは顔を両脚で締め付けられるのである。
その際、股間が顔の正面に来ることも多く、その場合、膣などがモロに顔に当たる
わけだ。
初めて聞き、そして実際に見た時は、恥ずかしくて(恥ずかしいなどというレベル
ではないと思った)、とても自分には出来ないと香織は思ったものだ。
だが実際にやってみると、その威力は絶大であり、やられた男の方は締め付けられる
苦痛で、そんなところを見ている余裕などまったくないことがわかり、当初ほどの
羞恥はなくなった。
しかし、けっこう仮面たちも、この大技は今では滅多にしない。
より実践的な格闘技やヌンチャクの方が効果的であることを知ったからである。
それらの攻撃が通用しない相手の場合、意表を突き、隙を作る意味で、この技を使用
することもある。
そういう事情もなく、ただ辱められるために見られる羞恥と屈辱は、いかにけっこう
仮面とはいえ一般女性と大差はない。
意識して見せているのと、強引に見られるのでは大違いなのだ。
瀬戸口は、そんな恥ずかしそうにひくついているアヌスに、容赦なくノズルを突き
刺した。
「ひぃ!」
冷たくて硬いものがするっと体内に入ってくる異物感に、香織の喉が鳴った。
すぐに反応した恵が叫ぶ。
「香織先生っ! やめろ、きさまら!」
「やめろと言われても、もう入ってしまったわい」
「くそ、この外道!」
「うるさい女じゃな。マスクを取って女子生徒でおる時は寡黙なくせに」
「大きなお世話だ! あっ、こらやめろ!」
学園長は香織から離れると、今度は恵の腰を抱え持った。
よくうねる尻を二三度叩いてから、両手でがっしりと腰を抱え、大きな臀部に顎を
乗せてその動きを抑えた。
尻を割り開かれ、涼しい風がアヌスに当たるのを感じ、恵も絶叫する。
「ああっ、よせ、やめろ! そ、そんな酷いことはもうやめ、あっ!」
どんなに騒いでも、硬質なノズルを妨げることは出来なかった。
必死に窄めた肛門を縫うようにノズルが食い込む。
嘴管を飲み込まされたふたりの尻がイヤイヤとうねり、そこから伸びるゴム管が踊っ
ていた。
学園長はそこから少し離れて、ふたりのけっこう仮面の肢体をじっくりと見やった。
まず、向かって右側のストレッチャーに乗っているけっこう仮面──若月香織。
抜けるような白い肌とは、こういうのを差すのだろう。
白人の、白い塗料を塗りたくったような肌とはまったく違う、透き通るような白さだ。
素肌の、すべすべした肌理の細かい様子が見るだけでもわかる。
スタイルの良さもさすがだが、何よりその脚線美が素晴らしかった。
不自由な姿勢で固定されているにも関わらず、白くて長いその脚はすらりとしている
のが見てとれる。
くるぶしと締まった足首、ふっくらとしたふくらはぎとむっちりした太腿を繋ぐ膝も
きゅっと締まっている。
脂は乗っているものの、決して太すぎる印象はなかった。
蹲るような姿勢のため、陰になってよく見えないものの、ちらっと覗く乳房も立派
だった。
まろやかで重そうに揺れているが、垂れ下がっている感じがまったくしない。
普通この姿勢であれば、乳房は紡錘状(三角錐)になるものだが、香織の場合、
それがない。
半球状の見事な形のまま揺れていたのである。
24歳という年齢からして、熟れる直前といった状態なのだろう。
一方の紅恵の肉体は、まさに若さを象徴するようなぴちぴちした肢体だった。
17歳と、香織やけい子に比べて8歳くらい若いのだから当然なのだが、その年齢に
不釣り合いなほどに肉感的でもあった。
肌の色は、けい子や香織の白磁のような白さには及ばない。
しかし色黒なわけではなく、ほのかなピンクといわゆる「肌色」の中間くらいだろう。
モンゴリアンとしてはまだ色が薄い方だろうし、むしろこのくらいの肌の色の方が
好ましいと感じる人も多いだろう。
それより何より目を惹くのは、高校二年とは思えぬほどの豊かな肉づきである。
特に太腿のたくましさは目を見張るほどだ。
その肌も艶々と輝くように光を反射しており、香織のようなしっとりした落ち着きは
なかったものの、若さが溢れるような肌だ。
その腿と細くくびれた胴の間には、見ている男たちがハッとするほどに豊かに張った
腰がある。
若さに似合わぬほどの官能さであり、淫らさをも感じさせた。
どこもかしこも肉感的な恵の裸体で、もっとも象徴的なのが乳房だろう。
セーラー服の胸の部分を押し返し、苦しそうなほどの乳房は生徒たちの間での評判
だったが、脱がせてみると予想以上に大きなバストだった。
形としては、ほぼ完璧とも思えるけい子や香織のような乳房ではない。
巨乳と言っていいほどに大きく盛り上がっていて、恵本人は「大きすぎて恥ずかし
い」という悩みもあったくらいだ。
いかにもぷりぷりしていそうな外見で、若い肌が艶やかに輝いている。
そのくせ、大きな乳房に比べ乳首だけは清楚なほどに小さいのが印象的だ。
性経験も乏しいらしく、乳輪の色も初々しいほどに薄く、乳房自体の色とさほど変わ
らない。
胸、腰、尻、腿、膝、ふくらはぎ、足首のメリハリが素晴らしく、背中線がすっと
伸びた背筋の美しさにも目を奪われる。
こうして見比べてみると、ふたりの肢体はかなり差違があった。
背丈は似たようなものだったし、グラマラスだという意味では同じだったが、肌の
色や乳房や臀部の形状や張りにはやはり違いがある。
「けっこう仮面」という先入観に加え、その赤いマスクやブーツなどのコスチューム
を着用することによって、それらが薄れていたのだろう。
また、こうして複数を捕らえて並べて見でもしない限り、明確な違いというのはわか
らなかったに違いない。
加えて、あんな恥ずかしい格好で大活躍するうら若き美女が何人もいるとは普通思わ
ない。
これでは「けっこう仮面は当然ひとり」という先入観が出来てしまうのも当然だ。
学園長はふたりの身体を見ながら気づいた。
もうノズルは肛門に入っているのに、なぜか注入が開始されていないらしい。
白っぽい容器が薄い黄色に染まっているのは、浣腸液が原液に近いグリセリンだから
だろう。
それが注腸されれば悲鳴が出るに決まっているのに、それがない。
「……何じゃ、まだ入っとらんのか。イルリならすぐにでも注入されるはずじゃろう」
「そうなんですがね、これをご覧に」
「ん?」
瀬戸口が見せたのは、橙色のゴム球だった。
完全な球体ではなく楕円形で、その上と下にゴム管が伸びていた。学園長はニヤッ
とする。
「なるほど、エネマシリンジというわけか」
「な、何だよ、それ……」
恵が恐る恐る振り返って学園長に言った。
「わからんか。こいつを握ると中身がぴゅっと出てくるというわけじゃ。こんな具合
にな」
学園長がそう言ってふたつのゴム玉を左右の手でぎゅっと握りつぶすと、浣腸液が
びゅうっと香織と恵の中に噴射された。
「ああっ!」
「うあ!」
注射タイプとは異なり、強い勢いで浣腸液が噴出し、けっこう仮面の腸壁に引っか
かった。
これは、ポンプ式に手で浣腸液を吸い上げ、注入するものだった。
要は手動の灯油ポンプのようなものだと思えばいい。
イルリガートルでの浣腸は手間いらずで一定の速度で注入できるし、注射タイプ
なら強さをコントロールしながら自分の手で押し込むという快感が得られる。
このエネマシリンジタイプは、自分の手で注入できるイルリ浣腸だった。
しかも注射器と違い、びゅっと勢いよく注入することが可能だ。
学園長は満足げに言った。
「どうじゃ、浣腸経験のあるおまえらも、これは初めてじゃろう。瀬戸口、気に
入ったぞ。わしもこれなら同時に浣腸してやれるし、気分がいいわい」
「それはけっこう」
「うひひ、ほれほれ、どうじゃ」
「いやあっ!」
「ひっ、い、入れないで!」
続けてびゅっ、びゅびゅっと浣腸し、グリセリン原液の強い刺激をモロに直腸に
浴びせてやる。
ふたりのけっこう仮面は尻をもんどり打たせて悲鳴を上げさせて愉しんでいた
学園長を瀬戸口が止める。
「お待ちを、学園長」
「何じゃ、まだいいだろう。わしが満足するまで浣腸してやったら、おまえにも
させてやるわい」
「そうではありません。ここはひとつ変わった趣向でいきましょう」
「変わった趣向じゃと?」
「ええ。学園長、そっちの右手だけ外してください」
「なに?」
「僕はこっちをやります」
「……」
瀬戸口はそう言うと、香織の右手にはめられている足首に繋がった手枷を外した。
と言っても、足首の枷から伸びたチェーンが寝台にかかっているから、動けるのは
右手だけだ。
学園長も、訝しげな表情を浮かべつつも、恵の方の右手を自由にしてやった。
途端に、恵の右手が拳を作って学園長の顔を狙った。
「おっと、危ない。まったく油断も隙もないわい」
「くそ……」
飛んできた恵の腕をがっしりと掴んだ学園長が呟いた。
もともと、何か格闘技でもしていたのかと思えるほどにしっかりした骨格と肉体を
持った男だから、いかに不意打ちとはいえ、この程度の攻撃は防げる。
だが、これがもし瀬戸口だったら一発食らっていたことだろう。
「じゃ、これを持って」
「え?」
瀬戸口は香織にシリンジを持たせた。
ここで学園長も瀬戸口の思惑がわかったのか、にんまりして恵にも片方を持たせる。
香織は不安そうに、恵は睨みつけるように彼らを振り返る。
「……」
「な、何だよ、何をさせるんだよ」
「知れたこと。自分で浣腸してもらおうと思ってね」
「な……」
「ふ、ふざけんな!」
瀬戸口は、けっこう仮面にシリンジを自分で握って自ら浣腸させようと言うのだ。
香織は驚愕で目を剥き、恵は激怒した。
「そ、そんなこと出来ないわ」
「そ、そうだ! ふざけるのもいい加減にしなよ!」
「いやかね? じゃあ仕方がない」
瀬戸口は小声でそう言うと、ゴム管についていたのレバーを捻った。
途端に、ずずっと浣腸液が流れ出す。
「うああっ!」
「ひっ!」
グリセリンがちゅるちゅると注入されてくる。
けっこう仮面たちは腰を悶えさせて呻き、悲鳴を上げた。
「言うことをきかないから、ひとつ罰を与えましょう。このイルリガードルは10
00ccほど入ってますが、このまま自然注入するとおおよそ7分くらいで全部入る
ことになります。でも、5分以内に空っぽにしなければ、もう1000cc追加しま
すよ」
「なっ、何ですって!?」
「バ、バカ言うな! 7分かかるって言ったじゃないか!」
「だから、そのまま自然注入すると7分だと言ったんですよ。何のためにシリンジを
持たせたと思ってるんですか」
「あ……」
そこでけっこう仮面たちは気づいた。
時間制限を切ることにより、どうあっても自分でシリンジを握らせ、自分で浣腸させ
ようというのだ。
もと教授はそこで一言付け加えた。
「まあ、そんなにイヤなら、相棒が浣腸されるのを待っていてもいいですけどね。
相手が頑張って自分で浣腸されれば、それだけあなたは浣腸される量が減るわけ
ですから」
「こ、こいつ……」
恵はその卑劣さに身を震わせた。
なぜこんなに悪辣なことを思いつくのだろう。
どこまで辱めれば気が済むのだろう。
浣腸されるだけでも気が狂うほどにイヤなのに、自分で自分に浣腸など出来るわけ
がない。
しかし5分以内に浣腸液を空にしなければ、さらに1000cc追加するという。
香織が恵の分を引き受ける形で浣腸されれば、恵の方は楽になる。
だが、そんなことが出来るはずもなかった。
むしろ恵が犠牲になってでも、仲間の香織に負担を掛けたくなかった。
イヤでも自分で自分に浣腸しなければならない。
そう仕向けられてしまったのだ。
何という狡猾でいやらしい奸計を思いつくのだろうか。
学園長も、瀬戸口の趣向に感心していた。
憎っくきけっこう仮面がもっとも嫌がる責めである浣腸を、自らの手で行わせる。
ふたり並べたけっこう仮面が、相手を慮って身を犠牲にして浣腸の洗礼を受ける
ことになるのだ。
今までの胸のつかえが一気に取れるような気がした。
瀬戸口が言った。
「まだ観念しないんですか。ほら、もう1分経ちましたよ。あと4分だ」
「ち、ちくしょう、この卑怯者! か、浣腸するなら、おまえらが勝手にすれば
いいだろう!」
「それじゃあつまらないから、こういう趣向にしたんですよ。ほら早くしないと、
どんどん時間が経ちますよ」
「く、くそ、こんなことって……」
恵が悔しそうに呻いた。
しかし躊躇している時間はない。
思い切ってゴム球を握ろうとするのだが、ぐっと力が入りかけても指から力が抜け
てしまう。
これを握りつぶしたら、お尻の中に浣腸液が流れ込んでくるのだ。
あのおぞましい感覚を思い出したら、とても自分からする気にはなれなかった。
恵がためらっていると、意を決したような香織の声がした。
「恵さん、いいのよ。私が……やります」
「え……」
「恵さんは、そのままでいて。私が全部……引き受けますから」
「そんな、だめだよ! 香織先生にこんな辛い目に遭わせるわけには……」
「いいんです。私、みんなの足を引っ張ってばかりだったし、こんなことくらい
しか出来ないけど……」
「そんなことないさ! けい子先生だって香織先生を頼りにしてたじゃないか。
あたしだって……」
「ありがとう、恵さん。でも、私は保険医でもあります。生徒のあなたの辛さを
引き受けるのも仕事ですから」
けっこう仮面同士の会話に学園長が茶々を入れた。
「くく、甘いのう、けっこう仮面も。自分のためには相手を踏み台にする。そんな
こと当たり前じゃろうが」
「貴様らと一緒にするな!」
「偽善者めが。そんなことだからおまえはスパルタに馴染まんのだ。ご託を並べて
いる暇はないぞい。もう残り3分だ」
「う、うるさい、わかってるよ!」
「恵さん、私が……」
「先生は黙ってなって。こ、こんなのあたしが……」
恵はそう言うと、思い切ってシリンジを握りつぶした。
「ああっ!」
何十ccだかのグリセリン液が、どっと流入され、その刺激に恵は悲鳴を上げた。
その様子を見て、香織も慌てて自分のゴム球を握った。
ぐっと握りしめたゴム球を通じて、ノズルからどっとばかりに薬液がほとばしり出る。
その刺激にたまらず、香織の口かから悲鳴が飛び出た。
「ひぃ!」
「せ、先生っ! あたしがやるから……くうっ!」
香織の悲鳴と同時に、今度は恵がシリンジを絞る。
恵は、びゅっと注入されてくるグリセリン液に身を震わせて耐えた。
「あ、あう!」
「くっ!」
「ああ!」
「やっ……ううんっ!」
もうふたりのけっこう仮面は、まるで競い合うようにゴム球をつぶし合い、自分へ
の浣腸を続けるのだった。
イヤでイヤでたまらないが、そうでもしないと仲間を辛い目に遭わせることになる。
グリセリン原液のきつさに脅え、あまり時間を掛けていては「時間切れ」と称して、
さらに量を増やされる。
どうあっても、自分から積極的に浣腸しなければならない状況に追い込まれていた。
そこに学園長と瀬戸口が追い打ちを掛ける。
けっこう仮面のアヌスに入り込んでいるゴムチューブを手に取ると、ゆっくりと抜き
差しし始めたのだ。
「あ、ああっ、そんな……」
「やっ、やめろ、動かすな! あぐっ!」
「ほらほら、手がお留守ですよ。あと3分を切った」
けっこう仮面たちは豊満な尻を揺さぶって、一層に身悶えを露わにした。それでも
注入を続けなければならない。
まるで射精のようにぴゅっ、ぴゅっと浣腸液を吐き出すノズルのおぞましさに、
けっこう仮面は身を捩って呻いていた。
ゴム球を握ると勢いよく流れ込んでくる感覚に、ふたりとも気が狂いそうになる。
「はああっ、うむっ!」
「うっ……ああ……」
ぴゅっと注入され、歯を食いしばってその刺激に堪える。
少し腸内が落ち着くのを待って、また一気に注入する。
そんなことを繰り返しているうちに、けっこう仮面の肌はすっかり上気し、湯気が
漂いそうなほどだ。
じっとりと全身に汗を浮かべ、マスクに下から熱い息を吐いている。
薬液がびゅっと入ってくると、思わず臀部に力が入り、ひくひくと痙攣してゴム管
を食い締めた。
そうやって何度も勢いよく直腸へ魔液が注がれ続けると、けっこう仮面たちに変化
が現れてくる。
「あ……ああ……うむ……お尻……熱い……」
「く……は、入ってくる……うんっ、うんっ……」
ふたりのけっこう仮面は、憑かれたようにゴム球を潰し続け、自分への浣腸を続けた。
そこに学園長が絶望的な宣言をする。
「あと1分じゃ。まだ半分も入ってないぞ」
けっこう仮面は、前にぶら下がっているイルリガードルを見やる。
薄黄色の薬液は半分ほども残っていた。
意を決したようにゴム球をぎゅっ、ぎゅっと力強く素早く握っていく。
「あううっ……!」
「うあっ……!」
途端に激しく注入され、薬液は見る見るうちに減っていく。
減った分はけっこう仮面の直腸に流し込まれていくのだ。
けっこう仮面は眦を決して、何とか時間までに自分の腹に収めてしまおうと、最後
の力を振り絞った。
「あ、ああっ、お腹が……」
「くうっ、お腹……変になりそうだっ……あぐっ……」
囚われのけっこう仮面は、シュコ、シュコとゴム球を潰し、薬液を己の腸内に注入
していく。
そこに無情な声が響いた。
「くく、残念じゃったな、けっこう仮面。時間切れじゃ」
「そ、そんな……」
「約束通り、罰を与える。おい瀬戸口」
「わかってます」
残り1/3ほどになっていたイルリガードルに、新たなグリセリンがどぼどぼと
注がれていく。
薬瓶一本分のグリセリンがつぎ足されるのを絶望的な目でみやっていたけっこう
仮面の表情が曇る。
「な、なんだ、この匂い……」
「気づきましたか? 罰としてグリセリンの他に酢も追加してやりますよ」
「それはいい。ぐずぐずしておった罰じゃな」
学園長は手を打って喜んだ。
一方、けっこう仮面はふたりとも不安そうな表情を隠せない。
酢を入れられるとどうなるのかわからないのだ。
しかし、グリセリンだけでも原液だけに強烈だった。
このふたりの悪魔が、薄めようとして入れてくれているとは思えない。
さらにきつい刺激になるに決まっている。
瀬戸口は薄笑いを浮かべながら冷酷に言い放った。
「ではスタートです。今度も時間は5分。これをオーバーしたらまた追加しますよ」
「おっ、おまえ、まだそんなことを続けるのか!」
「当たり前じゃないですか。クリア出来なければ永遠にやりますよ」
「くっ……」
「スタートです」
恵の抗議を悪徳医師はせせら笑った。
学園長がすかさずストップウォッチを押した。
「ち、ちくしょう! うっ、ああっ!」
「恵さんっ……ああっ……」
ほぼ同時に、ふたりのけっこう仮面はゴム球のポンプを握った。
途端に薄黄色の薬液が注入され、ふたつの大きな尻がうねる。
けっこう仮面たちは流れ込んでくる薬液の感触に、マスクの顔を振りたくって悲鳴
を上げた。
「なっ、何これっ……ああっ……」
「うあっ……お尻、変になりそうっ」
酢入りのグリセリンを飲まされる肛門が、驚いたようにきゅっと窄まった。
ストレートのグリセリンに酢が加わったのだ。
その刺激たるが猛烈なものがあった。
ただ、さっきの溶液が腸に入っていたのは、彼女たちにとって幸運だったかも知れ
ない。
そのせいで、注入される酢が多少なりとも薄められ、緩和されている。
しかしそんなものは僅かだった。
ぴゅるっと直腸壁にひっかかる溶液の強烈さは表現し難いほどの刺激だ。
「ううっ、ああ……はああっ……くっ……」
「あ、あむむっ……あ、入ってくる……ひっ……」
きつい溶液がちゅるっと入ってくる感覚は何度味わっても馴れることがない。
けっこう仮面はマスクの下で唇を噛んで堪え忍んだ。
酢入り薬液のきつさと浣腸責めされる汚辱感で、頭の中が暗くなり、ひとりでに腰
が捩れてしまう。
グリセリンに混ぜられた酢の威力は凄まじく、アヌスと直腸の粘膜にきりきりとしみ
てきて、薬液は冷たいのに腸内は灼け爛れるかと思うようなすごさだ。
その刺激はじわじわと便意を引き起こしている。
「あ……」
グルグルと小さく唸っている直腸の音が意外なほどに大きく響いている。
注入するごとに、びくっ、びくっと小さく全身を痙攣させていた。
「あ、あとどれくらいあるの……」
「まだまだじゃよ。半分以上はある」
「ああ……」
香織の声に絶望の色が濃くなった。
これ以上入るとはとても思えなかった。
恵の負担を減らそうと、自分でゴム球を握りつぶしているのだが、注入するごとに
苦悶の表情を浮かべ、尻がうねるのを堪えきれない。
「ああ……ああ、もう入らない……」
「香織先生っ、もういいよ。あとはあたしが……」
「だめよ、そんな……くうっ……」
香織のスリムだった腹部が微かにふっくらと膨らんでいる。
それだけ多くの量が入っているらしい。
香織は漏れ出てしまう嗚咽を堪えつつ、少しでも便意と腹痛から逃れようと必死で
腰を振っていた。
そんなことをすればかえって腸内の溶液が暴れ、刺激が強まってしまうのだが、どう
しても腰が動いてしまう。
「あああ、いやあ……あうっ……き、きつい……ああ……」
尻を振りたくり、呻くその姿は、まるで男を欲しがって発情しているかのように
見える。
実際、それに近いのかも知れない。
けっこう仮面はふたりとも、浣腸の責め苦に身悶えつつも、媚肉をじっとりと濡ら
していたのだ。
それに気づいた学園長が嘲笑う。
「きさまら、そんなに嫌がって見せとるが、実は浣腸が好きなんじゃろうが」
「だっ、誰がこんな……は、恥ずかしいこと……」
「そ、そうだ! いやらしいことばかりしかけてきて……」
「そうかな? じゃあ何でおまえらのオマンコは濡れとるのだ」
「え……」
「……」
言われて気づいたが、確かに媚肉がぬめっている気がする。
汗だと思いたかったが、膣奥から熱いものが込み上げてきているのは否定できなか
った。
まさか快感のせいだとは思わない。
激しくなりつつある便意を抑えるために、括約筋に力を入れているせいだ。
アヌスを引き締めれば、当然、膣も締まる。
そのせいで分泌液が内部から滲んでいるのだ。
それだけのことだ。
恵がそう反論すると、学園長は笑った。
「果たしてそうかな。まあいい、いずれわかるわい。それよりいいのか、もうあと
2分じゃぞ」
「く、くそっ……うっ、あああっ……」
恵が焦ったようにシュコシュコとポンプを押した。
当然のように、激しい勢いで薬液が注入される。
苦悶する恵を見て、香織が負けじとゴム球を潰していった。
イルリガードルに入っている溶液の量は見る見るうちに減っていく。
責める学園長たちも感嘆するほどだったが、それだけ急激にふたりのけっこう仮面
の腸内に薬液が入っていっている証でもある。
残り1/3ほどになった頃、恵の方が音を上げてしまった。
「も、もう……もう入らない……きつい……ああ……」
いくら意志の力でポンプを握ろうとも、力が入らなかった。
指も腕もわなわなと震えて思うように握れない。
手汗でぬめっていることもあったが、握れば腸に強烈な刺激が来ることもあって、
身体が心に反抗しているらしい。
それを見て、恵は限界と覚ったのか、香織は目を堅く閉じて最後の力を振り絞った。
シュコッ、シュコッとゴム球を必死に握りつぶしていく。
「苦しい……お腹が苦しい……だ、だめ……」
「せ、先生……あたしもう、だ、め……」
全身が小刻みに痙攣するのが止まらなくなったけっこう仮面たちを見下ろしながら、
学園長がはやし立てる。
「おらおら、どうした。もうギブアップか? それなら、また薬液を追加しなきゃ
ならんが」
「そんな……もう無理……」
「無理でも何でもやるんじゃ」
学園長は今にも涎を垂らさんばかりに興奮していたが、瀬戸口はまだ冷静だった。
これで2リットルほどの量だが、ふたりで分担しているのだから、ひとりあたり
1000ccほどだ。
出産にあたって産院では妊婦に浣腸することも多いが、その際のグリセリン溶液の
量は病院や担当医にもよるが、おおむね1000〜1200ccくらいである。
だから、まだ余裕はあるはずだ。
とはいえ、ここでけっこう仮面に注入しているのは、病院では考えられぬほどの
強力な液体ではあった。
「き、きつい……ああ、お尻が……お尻が……」
ゴム球を絞りつつも、けっこう仮面は腰を揉んでひぃひぃと泣き叫んだ。
玉のようになった汗が尻を滑り落ち、ぬらぬらと妖しく輝いている。
「ああ……もう……もう耐えられない……きつい……」
「あと1分」
冷酷に響く声に、香織はなおも自分へ浣腸を続ける。
注入される薬液が便意を押しとどめるように逆流していたが、またすぐに一層強い
便意に取って代わられる。
「う……うむ……」
マスクの下で真っ赤になっていたけっこう仮面の美貌から血の気が抜け、すうっと
青白くなっていく。
唇がわなわなと震えている。
「お、おトイレ……あ、あむ……」
「出したければさっさと全部飲むんですよ。ほらもう時間になる」
「ああ……」
香織は死ぬ思いでゴム球を潰して、自らに浣腸を仕掛けていく。
それにつれてイルリガードルはゴボゴボと気泡を沸き立てながら、溶液を送り出し
ていった。
ゴム管から流れ込んでくる薬液を尻はどんどんと飲んでいったが、反比例してけっ
こう仮面の苦悶が大きくなっていく。
眦をひきつらせ、唇をかみしばって耐えたが、鳥肌とともに激しい便意がやってくる。
ずずっ。
ようやく全部の溶液がなくなった。
瀬戸口がぱちぱちと拍手していた。
「全部終わりましたよ。間に合いましたね、残り10秒だった」
「ああ……」
香織はホッとしたようにぐったりしたが、すぐにびくっと身体を震わせた。
限界にまで迫った便意が失神を許さず、じりじりとけっこう仮面の脳髄を白く灼いて
いく。
「あ……うむ……お、おトイレ……」
香織がやっとそう言うと、それまでぐったりしていた恵も思い出したように腰を痙攣
させた。
「あ……も、もれちゃう……」
スケバンとは思えぬ弱気な口調に、学園長は嗤った。
「何じゃその情けない声は。肩で風切って学園内をのし歩いていたあばずれとは
とても思えんぞ」
学園長はそう言ってけっこう仮面の汗にまみれた尻を叩いた。
びくりと大きく痙攣し、また小刻みに震える。
瀬戸口がその様子を見ながら言った。
「ふふ、もうふたりとも限界って顔ですね」
「ああ、もう……」
「したければどうぞ。ここでしていい。そうですね、学園長」
「もちろんじゃ」
大きく頷いた学園長を見て、ふたりのけっこう仮面は「信じられない」という顔を
した。
この男たちも、女の排泄を見物する気でいるのか。
恵も香織も、以前に浣腸責めされた時、責める男の目の前で排泄させられた。
その時の気が狂うような恥辱は忘れたことがない。
どんな拷問よりも遥かに嫌悪感があった。
恥辱に震えるけっこう仮面の前を行き来しながら医師は続ける。
「ああ、そうそう忘れてました。ここで排泄するのはけっこうですが、これも競っ
て下さいね」
「き、競うってどういうこと……?」
「なに、さっきと同じですよ。さっきは早く入れないとペナルティでしたけど、
今度は早く出した方に罰を与えます」
「な……」
「我慢した方が勝ち。わかりますね?」
学園長はそれを聞いて腹を抱えて笑った。
「おまえはよくそんなことばかり思いつくな。さすがにわしが見込んだだけのこと
はある」
「お褒めにあずかったと思っておきましょう。で、ルールですが、さっき言った
ように長く我慢した方が勝ちです。勝った方には「ご褒美」を、負けた方には
「罰」を与えます」
瀬戸口はそう言ってから、おもむろに学園長の耳に小声で内容を伝えた。
学園長はまた大笑いする。
「どっちがいいですか?」
「そうじゃな、じゃあ勝った方をもらおうか。わしが直々に褒美をつかわす」
「わかりました。では僕は負けた方に仕置きします」
「ちなみにどんな仕置きじゃ?」
「知れたことです。けっこう仮面……というより、女がもっとも嫌がることをして
やるんです」
「好きにせい。わしも好きに責める」
悪漢どもが卑劣な話をしている間にも、正義のヒロインたちは便意の苦痛にのた
うちまわっていた。
麗とした美貌に凄惨さが加わってきた。
こんな男どもの前で恥をさらすわけにはいかない。
だが、仲間より長く頑張ってしまうと、相手がまたつらく責められることになる。
さきほどとはまた違うジレンマがふたりのけっこう仮面を責め苛んだ。
そうは言っても、勝った方に「褒美」と言っているが、まともに受け取れるはずが
ない。
まさか勝った方を逃がすというわけがないのだ。
ならば「褒美」という名目で責められるに決まっている。
つまり勝っても負けても、この淫鬼どもに責め抜かれることに違いはないのだ。
ただ学園長に責められるか、瀬戸口に責められるかという違いだけだ。
「あ、くうう……」
香織は苦しそうに呻いた。
先に限界に達してしまった恵に代わって、2本めの溶液の大部分を引き受けていた
から、その苦痛も彼女以上のはずだ。
最初の1本は半々、あるいは恵の方が頑張っていたから、若干恵の方が多かったろう。
しかし二本めは香織がかなり上回っている。
トータルして、おおむね恵は700〜800cc、香織は1200cc以上注入され
たはずだ。
酢入りなだけに、その苦悶は甚だしかった。
「ああ、もう我慢が……」
「ここでしていいですよ」
「い、いやっ……お、おトイレっ……」
「トイレには行かせん。絶対にな」
「そ、そんな……」
「ひどい……」
尻を掲げたけっこう仮面たちは苦悶の表情を浮かべ、身悶えしている。
美しい裸身から汗が飛び散り、尻はひっきりなりに痙攣していた。
ともに顔色は蒼白となり、後から後から脂汗が噴き出てくる。
腸はググッ、グルグルッと絶え間なく異音を立てていて、もはやアヌスの決壊は
時間の問題だろう。
「……したくても出来ないようじゃな。ひとつ、やりやすくしてやるか」
「いいですね」
「あっ、ああっ!」
「よ、よせ!」
学園長は恵の、瀬戸口は香織の尻たぶを両手で掴むと、思い切り左右に割り開いた。
つんざくような悲鳴が上がり、けっこう仮面たちは腰を揺すって抵抗する。
しかし身体を揺すればそれだけ便意を刺激することなり、すぐに動きは止まって
しまった。
けっこう仮面の肛門は猛烈な便意に、今にも崩壊してしまいそうになっている。
ひくひくと痙攣しながら内側からぐうっと膨らんだかと思うと、慌ててキュッと窄まるような動きを見せている。
肛門の収縮が一段と激しくなってくると、あまりにも恥ずかしい場所を野卑な男どもに覗かれる恥ずかしさより、腹痛と排泄欲の方が強いらしく、抗いよりも許しを乞う声が優先されている。
「ああ……許して……も、もうさせて……」
「も、漏れちゃうっ……ほ、解いて、早くっ……」
「だからここでせいと言うとるじゃろうが」
「そ、それだけは……ああ、し、したい……おトイレ……」
「お腹が、ああ……苦しいっ……」
「出したければ出すがいい。先に出した方に仕置きじゃからな」
「く、くそ……」
恵はあまりの便意のため虚ろになりつつある意識を必死に呼び起こし、隣で苦しん
でいる香織を見た。
「ああ……も、もう我慢できない……お腹が苦しいっ……し、したい……ああ……」
見ていられなかった。
活発なけい子や恵と異なり、万事に控えめで清楚だった香織が、恥も外聞もなく
屈辱の言葉を吐いている。
その原因は、もちろん悪虐に責めている学園長どもにあるのだが、半分は自分の
せいだと恵は思っていた。
片桐にされた浣腸責めの記憶は、この強気の少女に癒しきれぬトラウマを残している。
そのせいか、今回の浣腸責めにも早々と屈服してしまった。
自分で自分に浣腸しなければならないという卑劣な責めのせいでもあるのだが、その
ために香織が大部分の浣腸液を引き受けることとなってしまった。
彼女の苦しみは半ば自分の責任でもあるのだ。
「香織先生……」
「あああ、恵さん……私、もうだめ……で、出てしまう……ああ……」
「も、もう少し我慢してよ、先生。あ、あたしが先に……するから……」
恵は便意で白くなっていた顔を赤く染めてそう言った。
香織に先に恥をさらさせてはならない。
まず自分が醜態をさらして気を楽にさせておいてから、香織にさせるしかない。
浣腸の苦痛を引き受けてくれた仲間に対する、せめてもの償いだった。
しかし、香織は震えの止まらぬ顔を横に振りながら答えた。
「い、いいえ、私が先にします……」
「いいんだよ、あたしが……」
「いいの。香織さん、私の恥ずかしい姿を見て笑ってください……それに、私は
もう……が、我慢できそうにない……」
「せ、先生っ……!」
「ゆ、許してっ、見ないでっ!!」
その瞬間、香織のアヌスが内側からゆっくりとめくれあがっていく。
思いの外ゆっくりとけっこう仮面は崩壊していった。
そして、ついに堰を切ったように溢れ出す。
「ああっ……ああっ、いやああっ……見ないで、あっちへ行ってえぇぇっ……!」
美しい保険医──けっこう仮面の悲痛な声が響いた。
その声に混じって、肛門から異音がして激しく排泄されていく。
「いやいやいやあっ……!」
革ベルトで固定された裸身を羞恥と屈辱で悶えさせながら堰き止めようとするの
だが、一度流出してしまった便意を押しとどめることなど不可能だった。
一度途切れたように見えたが、またすぐにドッと夥しい量が噴きこぼれる。
ようやく迸るものの勢いが弱まり、最後まで絞りきると、けっこう仮面は泣くこと
も出来ず、荒い呼吸のまま顔を伏せるばかりだった。
すかさず学園長が嘲笑う。
「またずいぶん出したもんじゃな」
「もういや……」
「そう気を落とさずともよいわ。わしも瀬戸口も気にしておらん。ところでこっち
はどうじゃ?」
「ああっ、触るな! さすらないでよっ、お、お尻がっ……で、出そうっ……」
「出していいんじゃよ。もう仕置きはあっちのけっこう仮面に決まった。おまえは
褒美の方じゃからな。さ、出せ」
「いっ、いやっ……こんなところじゃいやっ……さ、さするなあっ!」
軽く膨れた下腹部を学園長が撫でるようにさすっただけで、けっこう仮面は絶叫した。
グルグルと低く鳴る直腸は限界を超えている。
拡げられた尻たぶの奥にある肛門は激しくひくつき、今にも排泄してしまいそうだ。
「もう我慢しなくていいんじゃ。出すがいい」
「あ……あ……、お尻が……お尻が……」
けっこう仮面は下唇を噛んだが、もう堪えきれぬところまできている。
握りしめた拳が開いたり閉じたりを繰り返していた。
「ああ、もうだめ……み、見るな……で、出る、出ちゃうっ……!」
次の瞬間、炸裂音にも似た音をさせて、恵が屈服した。
「み、見るなっ……ひっ……あ、出るっ……も、もうだめえっ……!」
香織に勝るとも劣らぬ勢いで激しい排泄が始まった。
尻を割り開いていた学園長も、隣にいた瀬戸口も食い入るようにその光景を見つめて
いた。
学園長にとっては、まさに念願叶った瞬間でもある。
にっくきけっこう仮面に浣腸仕置きを仕掛け、便意にのたうつ様を見物し、恥辱の
排泄シーンを観察する。
それでこそ積年の恨みを晴らせるというものだった。
「終わったか」
「……」
恵も香織も言葉すら返せず、ただ突っ伏していた。
そこに学園長が法廷での裁判長の如く、厳かに告げた。
「勝者はおまえ──紅恵じゃ。おまえはわしが直々に褒美をつかわす」
「……」
「負けは若月香織じゃ。おとなのくせに女子高生に負けおってだらしない。瀬戸口
の仕置きをたっぷり受けるがよい」
「ああ……」
ふたりのけっこう仮面はのしかかる絶望感に押しつぶされ、顔を伏せて呻き、嗚咽
を上げるしかなかった。
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