「ああっ!」
嘴管が深々と突き刺さり、思わずけっこう仮面は悲鳴を上げた。
びくりと臀部の筋肉が硬直する。
およそゆりの人差し指くらいの太さしかないが、恵の肛門はびりっと痛みが走った。
ゆりがゴクリと唾を飲み込んで言った。
「入れるわよ、けっこうのお姉さま」
ガラス管がキィッと音をさせて長いピストンが押されていく。
途端に大量の浣腸液がけっこう仮面の腸内に流れ込んでいった。
「んひぃっっ! い、いやああっ……!」
ひさびさに味わう感覚だった。
吐き気と目眩が同時に襲ってくる。
片桐らに浣腸された時の悪夢が蘇ってきた。
浣腸される屈辱、その後に訪れる猛烈な便意の苦痛、そして破局。
けっこう仮面は歯を食いしばって呻いていた。
「く……、こ、こんなこと……んっ、んむう……」
何か変だ。
あの時のことは忘れたこともない。
腹に注入されたグリセリン液は、注入の圧力で身体が内部から破裂してしまいそうになった。
そして、次第に重苦しい圧迫感と、少し遅れてやってくる気の狂うような便意の苦痛。
だが今回は少し違った。
お腹が肛門から炸裂してしまいそうな圧迫感は同じだ。
違うのは、便意がすぐに襲ってきたことだ。
けっこう仮面は慌てたように身を捩り、早くも苦しげに呻いた。
「な……何これ、あっ……く、苦し……」
「うふ、もう苦しいの? そうでしょうね、せっかくけっこう仮面のお姉さまに浣腸できるんですもの、少しきつくしてあげたの」
「何を……入れたんだよ……あっ……」
まだそれほど注入されていないのに、薬液の刺激で肛門の粘膜がぴりぴりと沁みるように痛む。
便意もずんずんと込み上げてくる。
「けっこうのお姉さま、もう浣腸は経験済みなんでしょ?」
「く……、お、大きなお世話よ……んくっ……」
「うふ、正直だこと。だからね、刺激を強くしてあげようと思って、少しお酢を混ぜたの」
「な……」
「あたしも経験あるけど、これってきついでしょ。もうちょっと入れられただけで我慢できなくなるくらい」
「お、おまえっ……!」
「でも、これに慣れると病みつきになるのよ。お姉さまもそうしてあげる」
「やめろ、バカ……ああっ、い、入れるな!」
アヌスから直腸までの粘膜がキリキリとかきむしらるかのようだ。
便意が荒々しいまでに膨れあがってくる。
けっこう仮面の裸身がぶるぶると震え、止まらなくなってきた。
じんわりと脂汗が滲んでくる。
「あ、あうむ……入れないで……き、きつい……ああ……」
「あらあら、もう音を上げるの。案外だらしないんだ」
「うる、さい……やめろ……あ、あ、たまらない……ああ……」
「いいわ……、いいお顔で苦しんでるわ、けっこう仮面のお姉さま。その調子よ、もっと愉しませて」
「んひぃっ!」
ゆりは、苦悶するけっこう仮面の表情をうっとりと眺めながら、ゆっくりとピストンを押していく。
注入されると、けっこう仮面は身体を伸び上がらせて呻き、止まるとホッとしたように力を抜く。
「こ、こんなこと……こんなことして何が楽しいんだよ……お、女のくせに女を虐めて楽しいのか……ああっ、ううんっ……」
「愉しいわ。特にけっこう仮面みたいな強い女を虐めたり嬲ったりするの、あたし大好きなの」
「こ、この変態……狂ってるわ……ああっ……」
あまりにも妖しく苦悶するけっこう仮面の痴態に、さほど浣腸だの肛門責めに関心はなかった鏡子ですら見とれている。
身悶えるけっこう仮面を食い入るように見つめ、舌なめずりまでしていた。
そして思い出したように乳房を揉む。
けっこう仮面の胸だけでなく、自分の乳房まで揉んでいた。
「ああっ……もう……」
けっこう仮面の変化が生じてきた。そ
れまでは、浣腸液を注入される苦しさときつさを、顔を真っ赤にして息み、耐えていたのだが、その顔色が白くなっていく。
血の気を失い、青ざめた顔が震え、わなないていた。
「き、きつい……だ、だめ、これ以上は……ああ……」
「まだまだ。全部で500ccしかないのよ、それがまだ半分も入ってない。あのスパルタで浣腸責めを経験してるけっこう仮面の
お姉さまなら、1リットルくらい入れられたことあるでしょう?」
「バ、バカ、そんなことあるかっ……あ、やめて……もうっ……」
恵の口調が、タメ口から女らしいものに変わってきていた。
強がったりする余裕もないらしい。
ゆりが嗤った。
「もっとも、お酢入りなんだからきつくて当たり前よね。あ、半分を超えたわよ。もう半分」
「そんな……そんなに入らないわ、やめて……あ、あむむ……」
けっこう仮面は、もうお腹がパンパンになっていると思っていた。
それくらい苦しいのだ。
なのに、これまで入れたのと同じくらいまだ残っているなど信じられない。
「全部入れるまでやめてあげない」
「そんな……む、無理……やめて、もう我慢できない……ああ……」
けっこう仮面は苦悶の美貌を晒し、腰や腿をもじもじと蠢かせている。
鏡子が盛んに乳を揉み、肌に舌を這わせているのも気にならないようだ。
「そんなに苦しいの、お姉さま」
「く、苦しい……ああ、もうやめて……あう……」
「うふ、それじゃ楽にしてあげようかな。ほうら」
「んひぃぃっ……!」
ゆりは薄く嗤うと、100ccほど残っていた薬液を一気にけっこう仮面のアヌスへ送り込んだ。
そのきつい刺激に、けっこう仮面は汗まみれの肢体をわななかせて、喉を絞るような苦鳴を上げた。
がっくりと力が抜け、天井から吊られた両手をだらしなくロープに預けた姿勢のまま、ぐったりとしている。
目の前が暗くなり、便意の苦痛のみがけっこう仮面の意識を灼いていった。
「あ……ああっ……」
ぶるっと尻を大きく震わせた。
その汗の浮いた見事な臀部を、ゆりが再び撫でまわす。
「うふ、もうしたいの?」
「い、いや……ここではいやよ……」
変態教師どもの目の前で、禁断の排泄姿を晒してしまった屈辱と恥ずかしさは、忘れようとしても忘れられなかった。
あの悪夢が、また再現されようとしている。
ゆりが便器代わりの青いポリバケツを尻にあてがっているのを知り、けっこう仮面は全身を息ませて必死に耐えた。
「こ、ここではいやよ! お、おトイレに……あ……」
「だめ。ここでするのよ」
「そんな、いやよ! 行かせて、おトイレでさせて……!」
「許さない。ここでしないのなら、絶対にさせてあげないんだから」
サディスティックに微笑み、けっこう仮面を嬲るゆりを見て、相棒の鏡子でさえ呆れている。
この、一見やまとなでしこに見える美少女のどこに、これだけの加虐性が潜んでいたのだろうか。
今までもゆりのそうした趣味は見せつけられてはいたが、相手がけっこう仮面になった今、その嗜好がより強くなった感がある。
彼女にとって最高の獲物ということなのだろう。
それは鏡子も同じだった。
鏡子は前からまとわりつき、またけっこう仮面の乳房を揉み、こねくっていく。
「そんなにウンチしたいの、けっこう仮面さん。でも、こんなとこじゃ出来ないわよねえ、恥ずかしくって」
「……」
「ほら、ゆりがあんなにあんたのお尻に顔を近づけて見てるもの。ここで漏らせと言われてもねえ」
「い、いやあっ! み、見るな、見るなよ!」
「見られたくなければ、しなければいいじゃない」
「そんな……」
あまりにも意地の悪い鏡子の言葉に、恵は、珍しく縋るような目を向けた。
強気で鳴る彼女にはあり得ない表情だ。
「でも出来ないのよね。正義のヒロイン・けっこう仮面が、敵の前でウンチ漏らしただなんて、恥ずかしくって言えないわ」
「……」
「でも、もうお腹は限界。したくてしたくてしようがないのよね」
「ああ……」
「なら、まぎらわせてあげるわ、私が」
「ああっ!」
鏡子はしなやかな指で、けっこう仮面の乳房を嬲る。
こりっと立った乳首を擦り、こねくり、舌で舐め上げた。
ゆさっとした若い乳房を下からすくい上げるように揉み上げ、盛り上がった乳輪に乳首を押し込むようにしてこねている。
甘く痺れるような、そして頭に突き抜けるような刺激なのだが、今ではもうそんなものよりも便意の苦痛の方が遥かに大きかった。
しかし、乳房から受ける愛撫からもたらされる快感は、けっこう仮面の肉体に蓄積されていった。
「あ、あ……」
けっこう仮面がぶるるっと震えた。
限界に迫った激しい便意が、けっこう仮面の意識を失神寸前にまで追い込んでいく。
「もう……だめ……もう我慢できない……は、早く……」
開いた股間が苦しそうに震えている。
媚肉を守る恥毛までが震えていた。
妖しく絡み合った繊毛の奥には、僅かに媚肉の割れ目を覗かせている。
そのすぐ先では、今にも決壊しそうな肛門がひくついていた。
鏡子がゆっくりと乳房を揉み上げながら、感心したように言った。
「頑張るわねえ、さすがけっこう仮面さんね」
「ホント。あたしも、まさかお酢入りでここまで粘られるなんて思わなかったわ。もう5分……あ、6分も経ってるのに」
「ホント? すごーい。今まで3分保った女だって滅多にいなかったのに」
「さすがだわ。ますます虐めたくなってきちゃった」
ゆりはそう言ってけっこう仮面のアヌスを覗き見ている。
鏡子は、もう先に進みたくなってきて、けっこう仮面に恥をかかせようとしてきた。
排便を促そうというのだ。
「もう我慢しても無駄なのよ、けっこう仮面さん。浣腸されてウンチしないわけにいかないんだから」
「あ、やめっ……!」
鏡子は乳房だけでなく、なだらかに小さく膨らんだけっこう仮面の腹部を擦り、揉み込んできたのだ。
それを見たゆりは鏡子の意図を察したらしく、「仕方ないなあ」という表情を浮かべた。
「あ、鏡子、もう?」
「いいじゃないの。一回だけじゃなく、何回もしてやるんでしょ? なら……」
「わかったわ。じゃ、一回目の仕上げね」
ゆりはそう言うと、けっこう仮面のアヌスをいびり出した。
けっこう仮面は奇妙な悲鳴を上げて背を仰け反らせた。
今にも出てしまいそうなのを必死にで我慢している肛門に、ゆりの白い指が伸びてきて嬲り出したのだ。
信じられなかった。
鏡子にお腹を擦られ、ゆりにアヌスを揉み込まれて、もう我慢のしようがなくなった。
「や、やめて、何するの! あ、あ、そんなことされたらっ……で、出ちゃうわっ!」
すでに便意に責め苛まれているのに、それを亢進させるような刺激を受け、けっこう仮面の腸内と肛門は火のように灼け、頭の中は
暗くなってくる。
「あ、あ……もう……もうっ……我慢できないっ……で、出ちゃうわ、やめて!」
「だからしていいのよ。ほら、ゆりが待ち構えてるでしょ」
「バカ言わないで! こ、こんなとこで出来るわけないわ!」
「なら、しなければいいでしょ。私たちはどっちでもいいのよ」
鏡子は冷たくそう言い捨てた。
恵は一瞬、鏡子を睨みつけたものの、すぐに便意に飲み込まれていった。
もうだめだ。
限界など遥かに超えていた。
「み、見ないでっ!」
けっこう仮面は血を吐く思いで叫んだ。
出すしかないのだ。
「見ないで! あ、あっちを向いて! 目をつぶっていてえっ!」
「いやよ。しっかり見てあげる。だって、けっこう仮面の排泄シーンだもの」
「そうよ。ああ、こんなことならビデオの用意でもすればよかったわ」
「いやあっ……あ、あっ……で、出る……出てしまう……見ないで、出るっ……!!」
けっこう仮面の大きな臀部に大きく痙攣が走った。
アヌスが発作を起こしたように盛り上がり、また窄まり、また大きく膨れあがった。
次の瞬間、耐える限界を超えた便意が一気にドッとほとばしり出てしまった。
「いっ、いやあああっっ……!!」
激しく顔を左右に振りたくると、目の端に溜まっていた屈辱の涙が飛び散った。
身を激しくうねらせるたびに、豊かな乳房が波打ち、大きく揺れた。
激しく排泄する双臀がぶるぶる震えている。
ゆりはわざと驚いたように言った。
「あら、すごいこと。嫌がっていた割りには思いっ切りひり出すのね、けっこう仮面のお姉さま」
「ああっ……見ないで……あ、まだ出るっ……」
「あーあ、薬液もあるからすごい出るわね。バケツが溢れたらどうしよう、うふっ」
けっこう仮面は泣きながら、身を捩って呻き、後から後から絞り出していく。
止めようと思っても止められるものではないのだ。
これ以上ない屈辱と恥辱に苦悶するけっこう仮面の美貌と、官能美溢れるグラマラスな肉体、そして豊満な臀部の奥で口を開け、
苦痛の源を吐き出し続ける肛門が生々しかった。
──────────────────────
「ああ……」
けっこう仮面の尻たぶが最後にぶるっと震え、ようやく最後まで絞りきった。
ぐったりとロープに身を預け、がくりと頭を垂れている。
まだ痙攣が収まらないのか、それともあまりの屈辱で震えているのか、頭についている飾りの羽根が小さく揺れ続けている。
また排泄行為まで見られてしまった。
佐田や片桐に見られた時もそうだったが、このショックは浣腸そのものよりも大きかった。
しかも今回は、そう年の離れていない(しかも年下の)女の子に観察されただけあって、恵の受けた衝撃は少なくなかった。
「ち、ちくしょう……」
思わず悔しそうに呟いたけっこう仮面の言葉を聞いて鏡子が言った。
「あらまあ、綺麗なけっこう仮面さんがそんな汚い言葉を使うなんて」
「うるさい……、ちくしょう、女のくせにこんなことしやがって……!」
「堪えてるみたいね、かなり。まだまだ続けてあげるから覚悟なさいね」
「な……んだと……」
「ほら、ゆりが次の用意してくれてるわ」
鏡子が指差した先で、ゆりがまた溶液を作り、浣腸器で吸い上げていた。
信じられないという顔でけっこう仮面が弱々しく顔を振った。
あの時もそうだった。
片桐は何度も何度も浣腸してきたのだ。
この責めは一回では終わらないものらしい。
地獄の時間が終わったばかりだというのに、また新たな地獄が始まろうとしている。
「い、いや! もういやよ!」
「だめよ、けっこう仮面のお姉さま、まだ始まったばかりじゃないの。それに、何回もしないとお薬が効かないわ」
「い、いやあっっ!」
ゆりが重そうに浣腸器を抱えて近づくと、けっこう仮面は尻を振りたくって泣き叫んだ。
鏡子がすかさずその腰を押さえ込み、また尻を大きく割ってアヌスを剥き出しにする。
そこに浣腸器を構えたゆりが、非情のノズルを突き立てていった。
「ぐうっ! いやあ!」
またしても、ズーンと重たい液体が注入されてくる。
まだ苦悶の汗も乾ききらぬうちに、新たな苦痛が襲ってきた。
上半身が前につんのめる形で縛られているため、いやでもお尻をゆりに突き出す格好になっている。
50センチほども開かされて足首が固定されていて、両脚はピンと伸びきっている。
浣腸するには絶好のスタイルだった。
「も、もうやめて……これ以上はいや……ああっ……!」
「まだまだよ。何よ、こんなにむちむちしたお尻してて。これくらいの浣腸が我慢できないわけないでしょ」
ゆりはそう言って重いシリンダーを押し込んだ。
これで何回目になるのだろうか。
薬ビンを一本分のグリセリンと少しの酢、そしてパウチの液体の混合薬液が毎回注入されている。
そのグリセリン容器とパウチの空が、もう5つも無造作に捨てられているから、これで5回目の浣腸ということになるらしい。
薬液をたっぷり注ぎ込んでは排泄させ、また浣腸を仕掛けていく。
そんなことを飽きることなく5回もゆりは繰り返していたのだ。
けっこう仮面を嬲ることと浣腸へのこだわりは尋常ではなかった。
「あくっ……き、きつっ……きつすぎるわっ……ひっ……!」
重苦しい液体がドッと注入され、けっこう仮面はその強烈な刺激に苦悶した。
何度されても慣れることがなく、かえってきつくなっている。
もう恵の腸内は空っぽで、吐き出すものは何もなかった。そ
れだけに、薬液が直接腸壁や粘膜を強く刺激してしまい、苦しさは一層に激しくなっているのだった。
「うくああっ、きっ、きついっ……お腹がっ……お腹が壊れるわっ……ひっ!」
少ししか注入されていないのに、アヌスも腸内も火のように熱く反応し、猛烈な刺激に苛まれる。
けっこう仮面はとてもじっとしてはいられず、腰を揺さぶり、背を反らせ、乳房をゆさゆさと震わせて呻いた。
「だ、だめ、もう入れないでっ……苦しいっ……ああっ……」
「いいわ、いいわ。けっこう仮面さんの苦しむ顔って。ゆり、もっとどんどん浣腸してやって」
「わかってるって」
「きついぃっ……ひぃっ……!」
酢が混じっているとこうも違うのだろうか。
グリセリンを浣腸された時も苦しかったが、今回はその比ではない。
腹の中をかきむしられ、肛門を裂かれるかのようなきつさと苦しさで、けっこう仮面は本当に責め殺されると思った。
1回目より2回目、2回目よりも3回目と、どんどんきつく、つらくなるのがたまらなかった。
「や、めて……あっ……もう入れないで、ううっ……」
ゆりも血走った目でけっこう仮面の痴態を見ながら、シリンダーを押し込む。
太い浣腸器だけあって、少し押し込むだけでかなり多くの薬液が注ぎ込まれてしまう。
けっこう仮面の腸内の隅々にまで薬液が染み渡り、ジリジリと便意で灼け爛れていく。
「く、苦しい……あああ……」
「いい。その声いいわ。もっと出して、興奮しちゃう」
鏡子はまた左手で自分の乳房を揉み出した。
右手は股間に伸び、媚肉もいじっているようだ。
オナニーし始めてしまった仲間を見て「やあねえ、鏡子ったら」と苦笑しながらも、ゆりは浣腸を仕掛けていく。
ゆりにしたところで、状況が許せば、けっこう仮面の苦悶する姿を見て自慰したいところである。
「ああ、だめえ……もう本当にだめ……あ、あ、出る……また出ちゃうっ……」
それを合図に、ゆりがきゅっと全部を注入し終わった。
その瞬間、ピンッと身体を伸ばして悲鳴を上げたけっこう仮面だったが、またぐったりと脱力した。
だがすぐにまたぶるるっと痙攣し始めた。
「あ、許して……ああ、また出そう……」
「いいわよ、しても。用意したから」
「い、いやよ……もう見られるのはいや……」
「何よ、今さら。もうけっこう仮面のお姉さまが漏らすところを四回も見てるのよ」
「そんな……、あっ……が、我慢できないっ……!」
けっこう仮面の尻が大きくわななくと、ゆりが差し出したバケツに向かって、また苦痛の塊を排泄していく。
「いやあああ……」
恥辱に泣き喚くけっこう仮面だったが、もう便はまったくない。
だが、便がないからと言って、排泄の羞恥が消えるものでもなかった。
いやなのに、したくてしようがない。
一度排泄が始まってしまうと、もうどうにも堪えきれなかった。
我慢しないと、と思っているのに、いざ排泄になると全身を息ませて腸内の薬液を出さずにはいられなくなった。
そして、死ぬ思いで全部吐き出すと、きゅうっとアヌスが絞られ、薬液の残りがたらたらと垂れるだけとなる。
「ああ……」
やっと屈辱と恥辱の時間が終わり、けっこう仮面の心と肛門が、浣腸と羞恥で熱く灼けていく。
なのにゆりはまたノズルをけっこう仮面の火照るアヌスに突き立てていた。
6回目の浣腸だ。
「ひっ、いやっ!」
ゆっくりとピストンが押され、薬液がまた腸内に注がれていく。
冷たい液体が、熱く火照った腸壁に沁みてきた。
たまらず、けっこう仮面は唇を噛んで仰け反り、汗でぬめった臀部を痙攣させた。
あまりの苦痛と汚辱感で、噛みしめた歯がカチカチと鳴っている。
「やめて、もう……い、いい加減にしてっ……ああっ……」
「なによ、そんなこと言って。お尻の穴は嬉しそうに飲み込んでいくじゃないの」
「そんな……いやっ……ああ、もう入れちゃ……あうう……」
いくら抗い、腰を振っても、浣腸液は嘲笑うかのように入ってくる。
身を捩り、腰を揉んで呻き、震えた。
天井から吊られた腕までは痙攣している。
もはや吊られていなければ、けっこう仮面は立っていられないだろう。
ぐぐうっとお腹が鳴る。
声を出すのもつらいほどに猛烈な便意が押し寄せてきた。
それを察したのか、ゆりは一気にシリンダーを押しきって、手早く溶液を浣腸し終わった。
「んぐわあっ……!」
一気になだれ込んでくる強烈な薬液の刺激で、けっこう仮面はぐぐっと背中を弓なりにして叫んだ。
ようやっと浣腸は終わったが、その後すぐに最大の恥辱が迫っている。
悪寒が身体中を駆け巡り、今にも爆ぜそうなアヌスを懸命に押さえ込んでいた。
だが、便意に対する耐性がだんだんと落ちてきている。
というよりは、腸内は腸液まで排泄してしまっていて、モロに薬液が効いているせいだろう。
それでも出すまいと、恵は必死に我慢している。
そんなけっこう仮面を見て、鏡子がつぶやく。
「……大したもんねえ、やっぱり。五回も六回も浣腸されてるのに、まだ我慢してるわよ」
「さすがよねえ、こんないたぶり甲斐がある女は初めてよ」
「まったくね。でも、もうじきみたいよ、ゆり。ほら、けっこう仮面のお腹が可愛らしく鳴ってるわ」
「い、いやっ……!」
けっこう仮面は恥辱で顔が染まった。
グルグルとさっきからお腹が鳴って止まらないのだ。
その赤くなった顔は、まだすぐに青ざめていく。
もう我慢するとかしないとかいう段階ではないのだ。
「く、苦しい……ああ……」
「苦しいでしょうね、そりゃ。もっと苦しんであたしたちを愉しませて」
「も、もうだめ……ああ、おトイレ……」
「おバカさんねえ、少しは学習して。おトイレには行かせないの。したいなら、ゆりの構えるバケツになさい」
「ああ……」
またそんな恥をかかされる。
トイレ以外で排泄させられ、それを見られるのだ。
そのたびに、恵の心が暗黒に蝕まれ、けっこう仮面のプライドがひび割れていく。
しかし、もうそんなものはどうでもよくなっている。
けっこう仮面のマスクに覆われた恵の美貌は汗まみれとなり、引き攣ったように唇がわなないていた。
失神しそうな意識を、猛烈な便意が灼いているのだ。
「も、もうだめ……ホントに出る……」
「そう。じゃ手伝ってあげる」
「あ、私もね」
「ああっ、さ、触らないで!」
けっこう仮面が今にも排泄しそうになると、鏡子はそのお腹も揉み擦り、ゆりは便意に震えるアヌスを指で刺激していった。
キリキリと苦痛を訴えるお腹を揉まれ、今にも迸りそうな肛門をゆるゆると指で揉み込まれると、けっこう仮面はいよいよ切羽詰まって
全身を総毛立たせた。
「い、いや……ううむっ……あっ……」
「したいの? けっこう仮面のお姉さま」
「ああ……」
「言うのよ、けっこう仮面さん」
「くっ……あ、あ……し、したい……」
とうとうけっこう仮面は恥ずかしい言葉を口にしてしまった。
もっとも、この時彼女に「恥ずかしい」とか「悔しい」という感情はなかっただろう。
もう頭の中は、お腹の奥で渦巻く苦痛の源を吐き出したいという思いだけだったはずだ。
「もっと言って。させてって、したいって」
「あ、さ、させて……もう我慢できない……く、苦しいわ……し、したい……したいっ……」
それを聞いてふたりは哄笑した。けっこう仮面に「したい」と言わせただけでも満足だった。
恥ずかしい言葉を口にしたというのに、ゆりたちの手は愛撫を止めなかった。
「や、やめてもうっ……で、出てしまうわ……くっ……も、もう無理っ……」
「してもいいわよ」
ゆりはそう言うと悪戯っぽく笑い、細くて白い指を、ぐっとけっこう仮面のアヌスに押し込んでしまった。
死ぬ思いで引き締めている肛門に、あろうことか異物が入ってくる。
たちまちけっこう仮面の我慢はブチ切られ、喉を絞って悲鳴を上げた。
「やっ、だめえっ! で、出るっ……!」
けっこう仮面はひときわ大きくぶるるっと震えたかと思うと、第一関節だけ入り込んでいたゆりの指を押し出すようにして、腸内の薬液を噴き出していた。
当然のように薬液のみで、それがけっこう仮面の体内で暖められ、生ぬるくなってバケツに噴きこぼれていく。
「いやああっ……見ちゃいやあっ!」
けっこう仮面は大きな尻を震わせながら、激しく排泄した。
そのアヌスは内側から盛り上がり、花開いて一気に薬液を吐き出してく。
アヌスの粘膜どころか、腸壁すら覗かせて絞り出していた。
出すうちに恥ずかしさが蘇るのか、ハッとしてけっこう仮面はアヌスを引き絞るのだが、我慢できるものではない。
一度途切れても、またすぐにドッと飛沫出てしまう。
それを何度か繰り返し、ようやく全部絞りきった。
それでも恵の肛門は、まだ口を開いていて、残った薬液をだらだらと垂らしている。
何度も仕掛けられた浣腸と、それに伴う排泄で、すっかりアヌスの感覚がなくなっているのだ。
便意の苦痛からの解放感と、そのお返しのような屈辱と汚辱が、けっこう仮面の頭の中で入り交じっていた。
「どう? 少しはまいった? 校長先生に失礼な口を利いたりするからよ」
ゆりはそう言って、汗でぬめるけっこう仮面の尻をぺちぺちと叩いた。
鏡子は、項垂れているけっこう仮面の顎を掴み、顔を上げさせた。
「正直に言う気になったかしら、けっこう仮面さん」
「……ふざけるな。おまえら、こんなことして恥ずかしくないのか。何でもあの男の言いなりなのかよ!」
「素直に校長先生の言いつけに従えばいいのよ。私たちは考える必要はないの。決めるのは校長先生。私たちは実行するだけ。あの方から
命令を受けることが幸せなのよ」
勝ち誇ったようにそう言った鏡子は、けっこう仮面の顔を見てハッとした。
その目は未だ反抗心を絶やしておらず、燃えるような瞳で鏡子をにらみ返していたのだ。
ゆりによる無惨なまでの浣腸責めは確かに効いていた。
効果はあったと思う。
実際、けっこう仮面は浣腸されて苦悶し、排泄の恥辱に泣き喚いていたのだ。
見られたくないから必死に我慢して体力を消耗し、結局排泄せざるを得なくなり、そこでも気力体力を無駄遣いしている。
それを6度も繰り返され、すっかりまいっていたのは事実なのだ。
それがこうだ。
「悪魔の学舎」とまで言われたスパルタ学園で、あの学園長の向こうを張って戦い続けた戦士だけのことはある。
これほどの恥辱を受け、気力を絞り取られてもなお、立ち直りつつあるのだ。
相当に打たれ強いらしい。
生意気な女の蔑むような視線を受け、鏡子の額にぴくりと静脈が浮く。
癇癪を起こす寸前らしい。
「……何かしら、その挑戦的な目つきは」
「……クズめ」
「……」
けっこう仮面は鏡子から視線を外さずに言い捨てた。
「自分の意志を持たず、判断も出来ず、すべてあの外道任せか。反吐がでるわ」
恵はツバを吐き捨てたくなったが、マスク越しではそれも叶わず、そのまま飲み込んだ。
「それでも人間か!? ただのマペットじゃないか! おまえたちは……あっ!」
けっこう仮面がすべてを言う前に、鏡子の右手が唸りを上げて飛んできた。
平手で左頬を叩いた鏡子の唇が震えている。
「私たちを侮辱するの?」
「侮辱されて当然のことをしてるのよ、おまえらは」
「そう。覚悟はあるのね」
「まあ待って、鏡子」
ゆりが些か慌てたように割って入った。
けっこう仮面の頭を軽くコツンと叩いて言う。
「けっこう仮面のお姉さまも口の利き方に気をつけてよ。鏡子、少し気が短いんだから、あんまり口が過ぎると何されるかわからないわよ」
「……」
「同じ浣腸責めするにしたって、私みたいにグリセリンにお酢を混ぜるなんてものじゃなくて、お酢だけでしたりするのよ、この子は。
しかもそこに辛子や塩まで入れるんだから。おまけに2リットルも3リットルも入れちゃう。それがどれだけ強烈か想像しないでもわかる
でしょ?」
もしそれが本当なら、万華鏡子という女の子は本当に狂っているかも知れない。
そんなものを浣腸したりしたら、相手の腸は間違いなく壊れる。
腸壁は破れるかも知れないし、そうならなくとも機能不全を起こすだろう。
死んでしまうこともあり得る。
「……」
それでも恵は挑戦的な目を鏡子から外さなかった。
やるならやってみろ、という風情である。
ゆりは、本当に鏡子がけっこう仮面を責め殺すのではないかとハラハラしていたが、意外にも鏡子はにやりと嗤った。
「……気に入ったわ、けっこう仮面さん」
「鏡子……」
「ゆり、大丈夫よ。心配してくれてありがとう。私、この女、気に入ったわ。殺すなんてとんでもない。いえ、もったいないわ。
けっこう仮面さんの方が「もう死にたい」と思うくらいに責め抜いてあげたくなったわよ」
ゆりは少しホッとしたような、それでもまだ一抹の不安を残したような表情をしている。そのあどけない顔を見ながら、鏡子はまた
けっこう仮面の顔を持ち上げた。
「それよりけっこう仮面さん。あなた、まだ何ともないかしら?」
「……どういうことよ」
「身体とか心境の変化はないかって聞いてるの」
恵には何のことだかわからなかった。
このふたりに責められて、身体も心もだいぶグロッキー気味にはなったが、どうということはない。
これくらいのことは、スパルタ学園時代にも経験していることだ。
よくよく思い出せば、佐田と片桐に責められた時よりはマシにすら思えてくる。
だから肉体的には疲労しているが、まだ精神は健康だと思う。
「ないわよ、そんなもの……あっ」
突然にズクンと来た。
胸の奥とも腰の奥とも言えぬところから何かが突き上げてきたように思えた。
あっと思った時には気怠さがけっこう仮面を蝕んでいた。
何もやる気が起きない、というのことは少し違う。
何だか、あまり深く考えるのが面倒に思えてきたのだ。
よく考えようとすると頭の芯がぼーっとしてくる。
どうでもいいや、という投げやりな気持ちにもなってきた。
けっこう仮面の表情に戸惑いの色が浮かんできたのに気づいたのか、ゆりが面白そうに言った。
「ん? 効いてきたかな」
「そう……みたいね。目が少しとろんとしてきたわよ」
けっこう仮面は、鏡子とゆりを交互に見ながら言った。
「ど、どういうことよ……な、何なの、これは……」
「あのね、けっこう仮面のお姉さま。さっき浣腸してあげたでしょ? あの溶液はグリセリンとお酢だったんだけど、他のお薬も入っていたのよ」
「薬……?」
そう言えば、グリセリンらしいボトルの他に、何かパウチに入ったどろっとした液体を加えていた。
ハッとしたけっこう仮面が叫ぶ。
「何を入れたの!? ま、まさか……」
「心配しないでいいわ、けっこう仮面さん。多分、麻薬とか覚醒剤とか、そういうものじゃないかって思ってるんでしょ」
「ち、違うの……?」
「違うわ。まあ、本当に手に負えなくなっちゃったら、校長先生は最後の手段でけっこう仮面さんをヤク漬けにしかねないけどね」
「……」
ゆりが前に回ってきた。
「でも、さっき浣腸してあげたのは違うわ。毒でもないから安心して」
「だ、だから何よ!? 何を入れたの!?」
得体の知れないものを入れられたにしても、恥ずかしい思いをして排泄してしまっているのだ。
影響はないはずである。
ただ、少し気になった。
効果が期待できないのなら、そんなものを浣腸しても無意味なはずだからだ。
ゆりと鏡子が顔を近づけて告げる。
「あのね、『真実の血清』って知ってる?」
「な、なに? 真実の……」
「あ、知らない? 昔、ナチが使った自白剤らしいけど」
「自白剤……」
「そう。聞きたい情報を持った相手にこれを注射すると、べらべら何でも喋っちゃうってお薬」
「な……」
驚くけっこう仮面を見て、ふたりは愉しそうに嗤った。
「でもね、あれはけっこう眉唾らしいわ。効かないわけじゃないけれど、体質にもよるし、尋問して真実を引き出すのはかなり難しいって話」
「でね、戦争が終わった後も、ソ連や中国とかの旧共産圏なんかでは、こういう薬を新たに開発したとかいう噂もあったけど、これも
どうなのかな。怪しいもんだと思うけど」
「そ、それが……」
「そう」
ゆりはこっくりと頷いた。
「校長先生たちのグループが、それに比較的近いものを開発したらしいの。さすがよね」
「お、おまえたち、まさか……」
「そうよ。それをけっこう仮面のお姉さまに浣腸したってわけ」
あまりのことに言葉も出ないけっこう仮面に、鏡子が続ける。
「でもねえ、まだ実験段階なのよ。完全なものではないわけ。効いたり効かなかったりして、その原因もまだ調査中。副作用もあるらしいしね」
「そ、そんなものを……あたしに……」
「そう。だって言うこと聞いてくれないんだもの、けっこう仮面さんは。で、そのお薬は、服用しても注射してもいいんだけど、粘膜からも
吸い取ってくれるのね」
「あっ……!」
「うふ、気がついた? そうよ、けっこう仮面のお姉さまにそれを浣腸したってことは、腸内の粘膜からそれを身体に吸収させたって
ことなのよ」
鏡子が何やらメモを取り出し、目を走らせる。
「んーと、最初の浣腸で6分、二回目が5分、三回目、四回目がそれぞれ4分半、五回目が3分、最後が3分。てことは、全部で20分以上も
お腹の中にそのお薬を溜めていたってことになるわね。これって粘膜から吸収させるには10分あればいいらしいから、けっこう仮面さんは
その倍も吸い取ったことになるわ」
「……」
何と言うことだろう。
浣腸され、その排泄を見られるという恥辱を避けるために必死で我慢していた行為が、結果的に敵の思う壺になっていたわけだ。
もっとも、そのことを予め知っていたとしても大して変わらないだろう。
浣腸されたけっこう仮面がすぐに排泄しても、何度も浣腸を繰り返してくるだろうし、どうしても吸収させたいと思えば、浣腸した後に
肛門へ栓でもしてしまえばいいだけなのだ。
この身体の気怠さ、気力の喪失感はそういうことだったのか。
だが、それにしてはまだ効いていないような気がする。
別に恵は、今でもけっこう仮面の秘密をこのふたりに喋りたいとは思わないのだ。
それよりも気になることがあった。
「副作用って言ったわよね、それって何なの?」
「ああ、それ? そっちは気にすることないわ。身体に害はないから」
「いいから言って! 何がどうなるのよ!?」
「わかったわよ、そうきゃんきゃん怒鳴らなくても教えてあげる」
鏡子はわざとらしく顔を顰め、耳を押さえて見せた。
「媚薬効果があるのよ」
「媚薬……?」
「そうそう。女が気持ち良くなっちゃうお薬」
「うん。まあ媚薬なんていうと大抵は眉唾だけども、これは本当に効果があるみたい。少しだけどね。さっきも言った通り、もともとは
自白剤開発の過程で発見したものだから、どうでもいいと思われてたのよ。だからこそ信憑性があるわ。えーと何だったかな、アルカロイド系の
有機化合物が、内側視索前野だか副腎皮質ホルモンの受容体だかに作用してA10神経がどうたらこうたら……って、よくわかんないわ。
私たち専門じゃないし」
「実際、何度か使ったけど、確かに効果があったらしい子もいたし、全然効いてないような子もいた。色々よ。だから、けっこう仮面の
お姉さまはどうだかわからない。ま、それもこれから試してみるけどね」
ゆりと鏡子は並んでけっこう仮面の前に立った。
鏡子がけっこう仮面の顎を指先で摘み、顔を持ち上げる。
どうやら尋問は鏡子がメインでやるらしい。
「じゃ質問に答えてもらおうかしら」
「……」
「あなたはけっこう仮面よね?」
「……そうよ」
見れば判るだろうと思う。
ウソをつく必要も意味もなく、恵は素直に肯定した。
別に何ともなかった。
「けっこう。じゃあ、あなたのお名前は?」
「く……」
一瞬が言い淀んだが、すぐに思い直した。
もうこいつらや学園長は、恵の学生証を押さえていて、そこから彼女の正体を知っているのである。
ここもウソをつく意味はなかった。
「紅……恵」
何か少し変だった。
頭というか心の中に動きがある。
それが何かはまだよくわからなかった。
「うふふ、それでいいのよ。そう、紅恵さんて言うのね。いいお名前だわ」
「……」
「やあねえ、もう。褒めてあげたんだから、そんな反抗的な顔しないで」
愛想良くしなければならない理由がない。
けっこう仮面は鏡子とゆりを睨みつけている。
鏡子の方は余裕の表情で、けっこう仮面の視線を弾き返した。
「じゃあ次ね。今回、あなたをここへ派遣した組織はなあに? 上司は誰なの?」
「……?」
言うつもりはなかった。
またその必要もない。
なのに、どうしたことか、恵の心の中にそこはかとない抵抗感が生まれている。
その感覚がおかしいのだ。
どうもその抵抗感は、尋問する鏡子やゆりに対してではなく、彼女たちの質問への回答を拒否している自分に対してらしい。
けっこう仮面は小さく動揺した。
「……」
「言わないのね?」
鏡子はそうつぶやくとゆりを振り返って「効いてないのかな」と問うた。
ゆりは、くりくりした瞳でけっこう仮面を見つめながら微笑む。
「そうでもないみたいよ。ほら」
けっこう仮面の表情に複雑な色が浮かんでいる。
不思議そうな、もどしかしそうな顔である。
鏡子にもわかったらしく、小さく頷いて再び問うた。
「もう一度訊くわね。組織名は? 上司のお名前も言って」
「も……」
つい言いかけて、けっこう仮面は慌てて口をつぐんだ。
かなり驚いた。
自白など絶対しないと誓っているのに、なぜかそうすることにためらいがあるのだ。
親や教師にウソを吐いた時の良心の呵責に似ていた。
「も? 何それ?」
「……」
「何だろね。「も」って」
「……文部科学省かな」
「かもね。じゃあ上司や仲間の名前は?」
「……っ」
つい口走りそうになり、けっこう仮面は顔を背けてそれを防いだ。
マスクの下で唇を噛んでいる。
恵はかなり衝撃を受けていた。
あの浣腸液に含まれていたらしい自白剤とやらは、どうもかなり効果があるようだ。
肉体的に痛めつけられる拷問で口を割ることはないと思っていた恵だったが、まさかこういう手法があるとは思わなかった。
それが何であれ、ウソ──事実と異なることを告げることにためらいや抵抗が出てしまうのである。
犯罪者が自分の犯行を誤魔化すのを防ぎ、自白させるにも効果があるだろうが、こうして悪意の目的で使われることもあるのだ。
薬にはその人間が犯罪者か正義の味方かと判断する能力などないのだから「善悪は使う側にあり」ということになる。
けっこう仮面はマスクの中で冷や汗を流している。
鏡子の尋問に対して、この薬剤は恵の脳や神経系統に働きかけ、包み隠さず話したいという欲求や意志をかなり強要してくるのである。
苦悩しながらも、証言を拒否し続けるけっこう仮面に、なぜか鏡子もゆりも嬉しそうな顔をした。
「そっか。言いたくないんだ」
「あ……当たり前だろ」
「……だってさ、鏡子。どうしよっか」
「わかってるくせに。これはもう、お薬がもっと効くようにしないとねえ」
「何をする気よ」
けっこう仮面は気丈にそう言ったが、少し語尾が震えている。
けっこう仮面の中でも特に気が強い恵がそうした声を出すことは珍しいが、それだけさっきまでの責めが効いていたのだろう。
このふたりは、もっと薬を恵に浸透させるために、またあの浣腸責めを仕掛けてくるのではないかということを恐れていたのである。
浣腸責めは肉体的にも精神的にも、かなりのダメージを与えてくる。
特に恵は、浣腸されているところや、我慢しきれず排泄してしまったところをつぶさに観察される恥辱にまいりかけている。
肉体的にも、散々浣腸と強制的な排泄を繰り返させられた肛門は、もう赤く爛れ始めているのだ。
ここにまた激しい浣腸責めなどされたら酷いことになる。
だが、それはそれで何とでもなるのだ。
恥を掻くのは確かだが、その時だけのことだ。
過去に佐田にされた時もそうだった。
しかし今回の場合、浣腸責めによる屈辱、汚辱だけでなく、浣腸液によって腸内粘膜に自白剤が染みこんでくるのだ。
今でさえ、何とか証言を堪えている状態なのに、これ以上されたら沈黙を守る自信がない。
ところが、ゆりと鏡子はけっこう仮面が恐れていたのとは異なった責めを繰り出してきた。
「ちょっ……! あんた、何を……!」
「ほら、おとなしくして。いいことしてあげるんだから」
「よ、よせバカ! 何やってんだ、女のくせに!」
「暴れないの! ゆり!」
「はいはい。ほら、けっこう仮面のお姉さま、鏡子がキレないうちにおとなしくしてよ」
もがくけっこう仮面の腰に、ゆりが後ろから取りついた。
鏡子は妖しく微笑みながら、手にしたものをけっこう仮面の股間に押しつけている。
細長いディルドのようである。
太さは2センチほどで、長さは15センチくらいだろうか。
それがやや湾曲している。
それをけっこう仮面の膣に押し込んだのである。
それだけならまだしも、もう一本をアヌスの方にも差し込むと、けっこう仮面は驚いたように悲鳴を上げた。
「きゃあっ! ど、どこに……」
「お尻にも入れないとね。けっこう仮面さん、こっちもお好きみたいだし」
「勝手なこと言うな! ああっ、ぬ、抜けよ!」
細めで、つるりとした感触だったこともあって、あっさりと二本ともけっこう仮面の中に埋め込まれてしまった。
膣はともかく、浣腸責めの余韻が残る肛門はきつかった。
しかもこれらはただの張り型ではなかった。
その周囲には濡れた脱脂綿が巻き付けられていて、それをコンドームが覆っているのだ。
ゴムの表面には小さな穴がいくつも空いていた。
そこから脱脂綿に沁みた液体が漏れてくる仕組みになっているようだ。
染みこんでいるのは、例の自白剤である。
直腸内だけでなく、膣粘膜からも浸透させようということらしい。
「くっ、くそっ……外せ! 外せよ!」
ゆりと鏡子は、手際よくけっこう仮面にそれを装着した。
前後の穴に埋め込まれた薬液の沁みたディルドは細いテグスで繋がっている。
その紐はけっこう仮面の腰にも巻き付けられ、ディルドが外れないようになっていた。
さらに両方の乳房の先にローターをセットした。
乳首を潰すように、ワイヤレスのローターを貼り付けている。
耐水性テープのため、汗程度で剥がれることはない。
「まだ元気がありすぎね。これならどう?」
「あっ……!」
けっこう仮面の口から小さく悲鳴が上がった。
上体がクッと軽く仰け反る。
ゆりがローターリモコンのスイッチを入れたのである。
突如、乳首から鋭い振動と快感が発生し、けっこう仮面の背筋にピリッと電気が走る。
「くっ……やめろ……ああっ!」
「うふ、どう? 満更でもないでしょ、こういうの」
「満更でもないどころじゃないみたいね。ほらゆり見なさいよ、けっこう仮面さんの乳首、あっという間に立って来ちゃってる」
「や……あっ……くうっ……」
びりびりと振動が伝わり、けっこう仮面の豊満な乳房を小刻みに痙攣させた。
中でも乳首はビクビクと震え、乳輪の毛穴までがぶつぶつしてきている。
ゆりがその乳房を下からすくい上げるように優しく揉みあげている。
「気持ち良いでしょ? もっと揉んで欲しい?」
「よ、よせ、この……触るな……あくっ……」
「ウソおっしゃい。こんなに乳首硬くしてるくせに」
「ああっ! そ、そこは触るな! んくっ!」
ねっとりとけっこう仮面の乳房を愛撫し始めたゆりに鏡子が言った。
「もう、ゆりったら。そんなこと、後でいくらでもさせてあげるわよ、ちょっと離れて」
「はあい」
ゆりの細い指がバストから離れ、けっこう仮面はホッとしたようなもどかしいような表情を浮かべている。
表情が固まったのは、その直後だった。
鏡子が鞭を手にしていたのだ。
よくは知らないが、普通の鞭よりは細くて長いように思えた。
一本ものではあるが、革を寄り合わせたり、芯を入れて周囲を革で巻いたりしたものではなく、薄い革だけのようだ。
どう見ても2メートルくらいありそうな鞭の先端に、小さな玉がついている。
革鞭だけでは軽いから、そのウェイトなのだろう。
鏡子は不敵な笑みを浮かべ、威嚇するように長い鞭を振るって見せた。
パシッと軽い音をさせて、革が床を叩く。
普通の女なら大いに脅えるところだろうが、そこはけっこう仮面である。
そんな脅しにはビクともしなかった。
「……ふん、さっきは浣腸、今度は鞭? まったく、女のくせにとんだ変態だったわけね」
「失礼ね、変態なんかじゃないわ。単に私はSっ気があるだけよ」
「それが変態なんだよ! 男ならともかく、女が女にするなんてな」
「ふふ、その変態に嬲られて悦ぶようになるのよ、あなたは」
そう言うと、鏡子は鞭を持って振りかぶり、それをけっこう仮面の身体に打ち付けた。
「あっ!」
打たれる瞬間、けっこう仮面は激痛を覚悟したが、思ったよりも痛みはなかった。
革が肌を打つピリッとした痛みはあるが、我慢できないほどではない。
長い革鞭はくるくるっと回転して、けっこう仮面の腹や胸のあたりに二重に巻き付いた。
鏡子はそのまま鞭を引き絞る。
「うっ……!」
細い革が、けっこう仮面の胸肉に食い込む。乳房を柔らかく潰して歪ませている。
鏡子が軽く振り払うと、するっと鞭が解けていった。
すかさず鏡子は、今度はバックハンドで鞭を振るう。
ぴしっと音だけはするが、やはりそうは痛くない。
同じように乳房に巻き付き、また解かれていく。
けっこう仮面の見事な裸身が鞭打たれている。
その鞭が幾重にもけっこう仮面に巻き付いた姿は、この上なく官能的だった。
SM趣味のない者でさえ興奮を覚えそうな光景だった。
「うっ!」
「っ……!」
「ん……」
「く……」
打たれるたびに、けっこう仮面の口から微かなうめき声が漏れる。
苦痛というほどではないが、ぴりっと痺れるような痛みが皮膚に走った。
鞭打ちされる直前に、けっこう仮面の裸身に力が入り、引き締まる。
あまり痛くはないものの、どうしても身体が身構えてしまうのだ。
身体を息ませれば、当然のように括約筋も引き締まり、膣とアヌスに入れられたディルドを食い締めることになる。
細いものだから、それほどの違和感はなく、けっこう仮面はあまり気にしていなかったが、巻かれているガーゼからは確実に自白剤が
しみ出てきており、それが前後の粘膜に染み渡っていく。
鏡子はやや恍惚とした表情のまま、けっこう仮面を鞭打っている。
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