けっこう仮面は、佐田に犯されている間、とうとう一言も口を開かなかった。
僅かに苦鳴や呻き声は洩らしたものの、屈服どころか抗う声すら出さなかった。
紅恵自身、自分の体を貪る教師に怒りと嫌悪を感じてはいたが、性的な快感など起こらなかった
のだ。

恵は意外にも古風なところがあり、性愛などというものは男女が互いに受け入れなければ悦び
などあり得ないと信じていた。
それなら自慰の方がよほど感じる。
事実、佐田に凌辱された時よりも、その前にお尻の穴を嬲られた時の方が濡れてしまったくらい
である。
そう考えて、けっこう仮面は少し恥じた。
変態教師に犯されて感じなかったのは当然として、肛門などという場所を責められて、痺れ
にも似た快楽じみたものを得てしまったことを悔やんだのだ。

一方、佐田の方は、抜群の肢体を持つ美女を、それもかのけっこう仮面を犯すことが出来て
満更でもなかった。
が、彼のテクニックに堕ちなかったことは今ひとつ不満だった。
もっともっといたぶって、佐田から逃れられない身体にしてやりたいところだが、それほど
時間はない。
正体を確かめたら、すぐにでも学園長に連絡しなければならないのだ。
過去、医学部の瀬戸口教授やSSSの阿久沢社長がけっこう仮面を捕らえたことがあるらしい
が、いずれも学園への連絡が遅れ、最終的にはぶちのめされ、逃げられている。
その轍を踏むわけにはいかなかった。

何より学園長が怖かった。
あの男の意にそぐわぬことをすれば、どうなるかわからない。
物理的な生命までとられることなかろうが、スパルタ学園教師として失格の烙印を押される。
高報酬を失い、本省へ連絡されて教師資格すら失いかねないのだ。
それよりは素直に通報して特別ボーナスを貰い、昇格を狙った方がずっといい。

今は生活指導責任教師である佐田は、ここで昇格すれば学年主任が狙える。
いや、けっこう仮面を生け捕りにしたとなれば、学園長は喜んで教頭に抜擢してくれるかも
知れない。
現教頭は学園長の腰巾着であり、佐田の目から見ても無能者だ。
その可能性は充分にある、と、佐田は思った。

それに比べれば、けっこう仮面を好き放題にすることなど小さく思えた。
それに、けっこう仮面には仲間がいるらしい。
こいつだけではないかも知れないのだ。
そいつらを捕らえた時、佐田が教頭の位置にいれば、第二、第三のけっこう仮面を嬲れるチャ
ンスもやってくるに違いない。
短慮を起こして、この女の身体に溺れることはなかった。
佐田は時計を見た。

「遅いな、片桐先生……」

あれから一時間ほど経っている。
まだ女性教師が来る様子はなかった。
もうとっくに咎島から本島へ渡る船は出てしまっている。
彼らはここに取り残された形なのだ。

佐田も片桐も監視員としての仕事はしなければならないし、けっこう仮面をここに連れ込んだ
のもレース終了後なのだ。
それから拷問にかけたわけだから、当然、船の時間は過ぎてしまう。
しかし佐田は気にもしなかった。
けっこう仮面の正体を暴いてやれば、大いばりで本島から船便を要求できるだろう。
片桐が来るまで、もういちど犯ってやるかと思い、縛られたけっこう仮面を見た。

「うっ……く……」

けっこう仮面は呻いていた。
さっきも今も、縛られていることに違いはないが、縛られ方がまるで異なっていた。
彼女は、中年教師の脂ぎった獣欲に踏みにじられた後、部屋の片隅にある大きな飾り柱に縛り
付けられていた。
大きな円柱で、おとなのふた抱えほどの太さがある立派な柱だ。
装飾は何もなく、コンクリート製の柱にタイル張りがしてあるだけだ。
なのになぜ飾り柱なのかというと、建物を支えるためのものではなかったからだ。
これは拷問用なのである。

けっこう仮面は、その太い柱を両手両脚で抱えさせられていた。
ただ抱えているのではない。
後ろ向きに抱いているのだ。
両腕を柱の後ろに回し、まるでその柱を背負っているような形で両手首をロープで繋がれている
のである。
脚も同じだった。
同じく、後ろ向きに柱を腿で挟み込むようにして、足首同士がロープで縛り合わされている。

「……ううっ……」

さすがに、けっこう仮面も苦しそうな声を洩らす。
無理もないだろう。
両股をめいっぱい開かされた上、両脚が引き寄せられるように固定されてしまっているのだ。
鼠頸部にははっきりとした窪みが出来、筋がつりそうだ。

両腕も同じように引き裂かれ、肩が抜けそうに痛む。
背中やお尻に伝わるタイルの冷たさなど、肩胛骨が硬い柱に押しつけられる激痛に比べれば微々
たるものだ。
脚も腕も後ろ側にねじ曲げられているようなもので、その苦痛たるや言語に絶する。
それだけでも苦難なのに、全体重が手首、足首にかかってくる。
腕は肩から、脚は腰からもげそうだった。

どう嬲ってやるかと佐田が思案していると、ドアが開いた。
やっと片桐がやってきたのである。

「遅かったですな、片桐先生」
「すみません、先生……」

そこまで言って片桐は哄笑した。

「先生もずいぶんひどいことなさってますわね」

佐田が苦笑しながら応じた。
「そうですか? なに、相手はけっこう仮面です、これくらいやってやらないと。それに片桐
先生だって笑ってるじゃないですか」

悪徳教師どもは顔を見合わせて笑い合った。
けっこう仮面は、自分が笑われていることも忘れ、怒る前に呆れた。
佐田はともかく、片桐は教師である前に女だ。
女性なら、今けっこう仮面に施されている拷問が、どれだけ苦痛で恥ずかしいものかわかる
はずだ。
肉体的苦痛もさることながら、裸の乳房が揺れているのはもちろん、大きく脚を開かされて膣を
露わにしているのだ。
同性として、少しは庇うとか、そこまでいかなくとも顔を赤らめるくらいのことはあっていい。
なのに片桐は、哀れなけっこう仮面の姿を見て嘲笑するだけだった。

笑いを収めると、佐田が聞いた。

「で? どうでした?」
「ええ、これでやろうかと」

片桐はそう言って、小さなビーカーと長いガラス製の管を示した。
ガラス管の先にはゴム製の丸いポンプがついている。
佐田はそれを眺めて首を捻る。

「なんです、こりゃ? そいつでけっこう仮面に浣腸でもするんですか?」

それを聞いた女教師はまた笑った。

「これはスポイトですよ、実験で使う。浣腸なんかしません。第一、もう先生がたっぷり浣腸
してやったんでしょう?」
「ええ。まだやりたりませんがね」

佐田は少し照れて言った。
ふたりは話しながらけっこう仮面に近づいた。
そこで片桐がスポイトにビーカーから少し液体を吸い上げてから聞いた。

「けっこう仮面さん」
「……」
「どう? 佐田先生に可愛がられて、少しは素直になったかしら?」

けっこう仮面は無視するように顔を背けた。
答える気にもならなかったからだが、佐田のいやらしい視線が、剥き出しにされた媚肉に集中
しているのを知って屈辱を感じたのだ。

「正体を口にしたくなければ、そのマスクを取る方法を教えて欲しいんだけど」

刃が立たなかったことを考えれば、引き裂くことも不可能であろう。
調べる装置もないからわからないが、多分、布地の上に何か液体金属のようなものが塗布されて
いるようだ。
恐らく布地そのものも強靱なのだろう。
そのくせ通気性は良好のようだ。

マスクの裏、つまりうなじのすぐ上の後頭部近辺には合わせ目があり、そこを紐が編み上げて
いる。
しかし解こうにも、どう紐を引っ張っても解けない。
これも何か特殊な縛り方が施されているのだろう。
コツを知っていれば、多分あっさりと解けるはずだ。
しかし、それがわからなければ、絞まるだけで決して解けない。
といって、この紐もナイフで切れなかった。
マスクと同じように、何か塗られているのである。
切れず、破けなければ仕方ない。
片桐は他の手段を執った。

「見て」
「……!!」

片桐の手にしたスポイトからポタリと一滴したたると、床は白い煙を上げた。
焦げ臭い匂いが漂う。
脅えたようなけっこう仮面の表情に満足し、片桐が説明する。

「これ、硫酸よ」
「硫酸……」
「そう。ニトログリセリンほど危険じゃないけども、これがお肌に垂れたらタダじゃ済まない
でしょうね」
「……ど、どうする気よ、そんなもので」

語尾が震えるのを、けっこう仮面は抑えることが出来なかった。
殴られたり、少々切られたりしたことはある。
大したケガではなかった。
しかし硫酸を身体にかけられたら大やけどだろう。
さすがに佐田も息を飲んでいる。

「さあ、どうしましょうか。佐田先生、申し訳ないですけど、けっこう仮面の頭を抑えてくだ
さらない?」
「はい」

訳も分からず、佐田は指示に従った。

「やっ、やめろバカ! そんなことして、どうなるかわかってるのか!」

けっこう仮面は頭を振って暴れた。
手足はガチガチで動けないが、首は動く。
しかし、激しく首を振ると肩が痛くてたまらなかった。
大きな手で佐田が頭を抑えると、ほとんど動けなくなった。
片桐は、けっこう仮面の顔を横向きにして後頭部を出させるように言った。

「ちょっと試してみようかな」

化学教師はそうつぶやくと、けっこう仮面のマスクに手を伸ばした。
頭の左右についている長い飾り耳を手にすると、そこに液体を垂らした。
ジュン、と、恐ろしげな音がして、耳の部分が溶けて穴が開いた。
片桐はにっこりした。

「OKね。ちゃんと溶ける」
「なるほど、酸でマスクを溶かすわけですか」

佐田が感心したように言った。

「ええ、そう。破けないし、刃物もだめとなれば、もうこれしかないでしょう。金は王水じゃ
なきゃだめだけど、強酸に漬ければ大抵のものは腐食しますから」
「わかりました。やりましょう」
「よせ、やめろ!!」
「じゃ抑えててくださいね、佐田先生」

佐田がけっこう仮面の顔を腕で抱えるようにして固定する。
首を振って抵抗しようとするものの、佐田の腕力でぴくりとも動かない。
片桐はマスクの編み上げ部分へ、慎重に硫酸を垂らした。

「ああっ」

けっこう仮面は大きく悲鳴を上げた。直接かかったわけではないが、マスクが溶けているのが
わかるのだ。
もし片桐の手元が狂えば、彼女の柔肌が焼け焦げて穴が開く。
片桐もそうするつもりはなかったから、紐にスポイトの先を押しつけるようにして、染み込ま
せるようにごく僅かずつ液を送った。
白い煙が上がり、確実に紐が溶解していく。
痩身の女教師は、根気よく編み目一本ずつ酸で溶かしていった。
少し髪にまで届いたのか、焦げる匂いがする。
しかし、最上部の編み上げまで溶かす頃になると、もう覚悟を決めたのか、けっこう仮面も暴れ
なくなっていた。

「よし、これでいいわ」

片桐は満足そうに言った。
けっこう仮面のマスクは、後頭部の編み上げ部分がすべて解かれ、10センチほどの裂け目が
出来ていた。
片桐が、マスクの紐の通し穴から紐のカスを綺麗に取り去ると、佐田は手を離した。
そして、俯いているけっこう仮面の顔を起こすと、一気にマスクを剥ぎ取った。

* - * - * - * - * - * - * - * - *

けい子と別れて寮へ向かう結花に、後ろから声が掛かった。

「あの……」
「え?」

結花が振り向くと、小柄な女の子が近づいてきた。

「隣のクラスの高橋さんね?」
「はい」

昨日、持田に襲われかかった時、恵に救われた少女である。
クリクリとよく動く瞳で見つめられると、同性である結花もおかしな気分になってくる。

「どうかした?」
「ええ、あの……」

もじもじしながら真弓は小さく言った。

「あの、紅さんと同じクラスの方ですよね?」
「え? ええ……。紅さんに用事?」
「え、あ、はい」

少し顔を赤らめて少女ははにかむ。

「あの、さっき紅さんのお部屋を訪ねたんですが、いらっしゃらないようでしたので」

そのせいで結花たちも困っているのである。

「あ、そうなの。大事なご用?」
「あ、いえ、そんなことは……」
「……」
「では、いつ頃お戻りになるかご存じですか?」
「ちょっと……」
「そうですか」

真弓は少し残念そうだったが、諦めたようである。
いかにクラスメイトとはいえ、プライベートの時間まで知っている子は少ないだろう。
結花がクラス委員長でも、それは同じだ。
真弓が可愛らしくお辞儀して立ち去るのを、結花は声もなく見つめていた。

* - * - * - * - * - * - * - * - *

マスクの下からは、脱色した赤い髪がぼさっと出てきた。
ちゃんと手入れをすればしっとりしそうな毛質の良さそうな髪だったが、この娘はそういうこと
をしない。

「紅恵だな」

佐田と片桐はそう言ってうなずいた。
挑戦的な目つきにアンバランスな女性らしい体つきは見覚えがある。
何より特徴的な赤髪が、雄弁に正体を物語っていた。

「……驚かねえみたいだな」
「まあな」

佐田は幾分自慢げにこれまでのカラクリを話してやった。
恵の顔に、ほんの少し悔恨の色が出る。

「やっぱり持田の野郎もグルなんだな」

そういえば、佐田に殴られる前に、持田が後ろからけっこう仮面を突き転がしたのだ。
その時は、佐田とやり合うことばかり考えていたし、何しろくたびれていたので、あまり深くは
考えなかった。

「じゃあてめえ、持田があたしの下着を盗んだことも知ってんだな」
「もちろん。それが、おまえがけっこう仮面である証拠にもなってるわけだからな」
「この野郎! じゃあ何で持田を野放しにすんだよ。窃盗……下着ドロじゃないか!」
「小さなことは気にするな。そんなことより、けっこう仮面捕獲の情報を流してくれた功績の方
が大きいんだよ」
「くっ……」

小村に財布を届けるために着替えた時に盗まれたのだ。
油断して更衣室とロッカーの鍵を両方とも掛けなかったのも迂闊だったが、けっこう仮面になっ
てから、後をつけられたのはあまりにも間が抜けていた。
自業自得で仕方がないが、いささか甘く見過ぎていた。
それにしても腹が立つのは佐田である。

「おまえら先公のくせに、生徒をこんな目に遭わせていいのか?」
「生徒だと? ふざけたこと抜かすんじゃない。おまえはけっこう仮面だ」
「だから、その正体があたしだと知ってておまえは……」

恵はそこまで言うと、今度は片桐に言った。

「おいカマキリ! サダムの野郎、あたしを生徒だと知って……」
「犯したんでしょ?」
「……」

片桐は信じがたいことを言った。
いかにけっこう仮面とはいえ、学園に在籍する女生徒であることに違いはないのだ。
それを教師が強姦したのである。
例え相手がけっこう仮面だったとはいえ、その中身が恵だと知っていて佐田は犯したのだ。
これは「けっこう仮面だから犯した」という言い訳は効かないはずだ。
しかし、それを知って片桐は嘲笑したのだ。

「あなたが生徒かどうかなんてどうでもいいわ」
「……」
「大事なのは、あなたがけっこう仮面だったってことだけ。それより……」

片桐の目つきが変わった。

「あなた、今、なんて言ったの?」
「……」
「私たちのことを先公とか、カマキリとかサダムとか言わなかった?」

片桐久子教諭は、痩せぎすであることに加え、性格が陰湿なところもあって、生徒たちは名前に
なぞらえてカマキリというあだ名を付けていた。
佐田努教諭の方も、体育教官室だけでなく、学園長のいない時の学園を、その体力と横暴さで
仕切っていた。
それで生徒たちは、かの独裁者フセインに引っ掛けてサダムと呼んでいた。
「佐田努」は、確かにサダムと読める。
片桐は、まさに昆虫の複眼のような無機質な目で恵を見ていた。

「それが先生に対する生徒の態度なの?」
「笑わせるな! それはこっちの台詞だ、これが生徒に対する行為かよ!」
「片桐先生」

怒りの形相になった片桐に、佐田がそっと近寄って耳打ちした。

「こいつの正体が割れた以上、早く連絡しましょう」
「……そうですね、わかりました」

片桐は、恵を忌々しそうに睨みながら部屋を出ていった。
その後ろ姿を見送りながら、体力派の教師は言った。

「片桐先生が電話で学園長へ連絡してくれる。これでおまえもおしまいだな」
「……」

その点だけは、恵も異論はなかった。
こうして正体がバレた以上、けっこう仮面として学園に残ることは不可能である。
マスクを剥ぎ取られるまでは、なんとか粘って救援を待つ気でいたのだが、もうだめだ。
仮に無事救出され、片桐らが捕まったとしても、文科省は正体のバレた恵を再びけっこう仮面と
して使うことはないだろう。

しかし、タダでは転ばない。
絶対にこいつらを道連れにしてやる、と思った。
佐田は、恵の悔しそうな顔をニヤニヤしながら見ていた。

「なんだなんだ、その顔は。せっかくの美人が台無しだぞ」
「……ぺっ」

佐田は、顔に生暖かいものがかかるのを感じた。
恵がツバを吐きかけたのである。
瞬間湯沸かし器の異名をとる佐田は、途端にカッとしたが、相手は身動きがとれないという状況
に余裕があるのか、すぐに我を取り戻した。
恵としては当てが外れた。
彼を激怒させればチャンスも生まれると見ていたからだ。
恵は佐田のいやらしい視線を感じ、顔を伏せて罵った。

「じっ、じろじろ見るな、このスケベ野郎!」

見るなと言われても見てしまう、見事な裸体だった。
肌の色は、やや褐色である。
褐色と言っても、同じけっこう仮面の香織や結花が飛び抜けて白い肌をしているからそう見え
るのであって、決して浅黒いというわけではない。
それでも、ピンク色の肌をしているけい子と比べても、ややくすんだ色を持っている。
だが、その肌色が恵の魅力を一層高めていた。
普段の言動や、やや筋肉質の肢体も相まって、ワイルドなイメージを与えている。
その身体に、褐色の肌がよく調和していた。

しっとりとした肌ではないが、張りが良く艶々と輝くほどの若い皮膚は、室内の照明を弾き返
して光っている。
なめし革に油脂を塗ったような艶やかな肌はすべすべであり、水を弾く。
やや大柄でグラマーな娘ではあるが、特にバストの発達がめざましかった。
後ろ抱きにされているポーズのせいもあるだろうが、見事なほどの豊満さをもっている。
同じように立派なヒップは柱に押しつけられているため見えないが、これは後の楽しみである。

恵は、いやらしい中年の目がたまらなかった。
気になってしようがないのは股間だ。
いやというほどに開かされているので、外気が直接当たる。
媚肉の割れ目が少し開いているのが自分でわかった。

「畜生! どうする気だよ!」
「……そうだな、その仏頂面はよろしくない」
「……」
「だから笑ってもらおうか」
「なに……?」
「美人には笑顔がいちばんさ」
「な、なにを言って……きゃああっ!?」

佐田は、恵の予想外のことを仕掛けてきた。
くすぐってきたのである。
男の武骨な指が、恵の腋の下に入り込む。
脇を晒す感じで、後ろに手を回されているので避けようがなかった。
佐田は、親指、人差し指、中指の三本で彼女の脇をくすぐっていた。
恵の動揺は激しかった。

「ばっ、バカ、何をして、ああっ……くっ……よせ、あっ……ひっ……」

両手で両脇を散々くすぐると、今度は指をあばらに下ろす。
そして、浮いて見えるあばらを、縦になぞり上げさすり下げるように指を動かした。
ぞくぞくっとするくすぐったさと悪寒を感じ、恵は身を捩らせて喘いだ。

「や、やめ、やめろ、ああっ……く、くすぐったい……あっ……くっ……」

恵の抗議など聞くような男ではない。
佐田は、彼女が敏感に反応するところばかり、念入りにくすぐっていく。
いつの間にか、左手には穂先が毛羽だった太筆が握られている。
右手であばらや腋の下をくすぐったり、筆で乳首や脇腹を擦りつける。
少し力の入った指のくすぐりと、頼りない毛筆の感触が、恵の敏感な箇所をほぐし続けている。

「やめ、あっ! やめろって言って、ああっ……く、くくっ……はっ……んんっ」

佐田は少し驚いた。
さすがにけっこう仮面だけあって、かなり精神的に強靱なようだ。
普通の女生徒なら、最初の3分で笑い転げ、その地獄から逃れようとしてこっちの言いなり
だった。
ところが紅恵ときたら、くすぐったがっているのは確かだが、まだ笑うところまでいっていない。

だが、そんな恵の強がりももう先が見えてきた。
二の腕は細かく痙攣し、鳥肌まで立っている。
くすぐったくてしようがないのだ。
もはや恵を支えているのは、けっこう仮面という誇りと、こんな野卑な男の前で恥ずかしい姿を
晒すことを拒絶するという意地だけだったのだ。

「くうっ……あっく……ひっ……」

責める佐田も、だんだんと恵の弱いところがわかってきた。
腋の下と、あばら、そして脇腹である。
そこを集中的に筆と舌、そして指でくすぐり責めた。
それも、ずっと同じところをくすぐるわけではない。
そうすると、そのくすぐりの感触に慣れてしまう女もいるのだ。
佐田はそれを巧みに避け、腋を30秒もくすぐると今度は首筋、次は乳首。
そして指や鳥の羽、筆に舌と、道具も使い分けていた。

「くっ……くくっ……あ、ああっ、あああ……くっ、きゃっはははははっ……」

とうとう笑い出した。
さすがのけっこう仮面も耐えきれなかったのだ。
脇腹を指圧されるように指で押されたり、皮を軽く摘むように揉まれたりすると、くすぐられる
のとはまた別のこそばゆさが感じられ、恵は腹をよじって笑った。
かと思うと、今度は内腿に柔らかい毛先の筆が忍び込んでくる。
さわさわと柔らかい毛先でくすぐられると、辛抱たまらず大笑いしてしまう。
乳房の下わたりの脇腹で、あばらをゴリゴリするように指圧されるのがたまらない。

「くっ、くっ、くっ、くっ……ひぃっ、ひっ、ひっ、ひっ……やめろって、きゃははははは
ははっ」

佐田は、片桐がここにいれば一緒にあちこちくすぐれて、けっこう仮面をさらに悶えさせる
ことが出来るのにと残念に思った。
まあいい。
その分、しつこくくすぐってやろう。

「はあっ、はあっ、はあっ……あ、そこよせ! あっ、くくっ、あはははははっ」

一端、佐田の指が身体から離れたと思いきや、今度は脚を責められた。
佐田は柱の後ろに回り、けっこう仮面の足の裏をくすぐりだしたのだ。
後ろ抱きにされている恵は、柱の後ろ側に足の裏を突き出すような格好にされている。
くすぐるには絶好のポイントだった。
佐田は、まるで風呂から上がったばかりのような清らかな足の裏を、鳥の羽で擦り上げた。
途端にぞわぞわっとしたむぐったさがこみ上げ、恵は堪える気にもならず大笑いするしかな
かった。

「うあ、あっははははははっ……くくっ、よ、よせ、あっ……くっ、きゃっはははははっ」

佐田は足の裏を鳥の羽や筆でくすぐるだけでなく、指の股を拡げてそこに筆を這わせたり、
ねっとりと舐めてきたからたまらない。
舌が、まるで軟体動物のように蠢き回ると、その独特のこそばゆさに辛抱しきれず、けっこう
仮面は手足のベルトを引きちぎらんばかりに身悶えた。
我慢のしようがないくすぐったさに、恵のすべらかな腹部が波打ち、豊かな乳房がぶるぶると
震えていた。

もともと恵はかなりのくすぐったがりである。
子供の頃からそうだった。
友達に、ふざけ半分でくすぐられたりすると、涙を流しながら笑い転げるほどだった。
長じて高校生になっても、その体質は少しも変わらず、むしろより敏感にこそばゆさを感じる
ようになっていた。
くすぐったいという感覚は、性的に発達すると性感に直結する。
こそばゆい感覚と快感というのは表裏一体なのである。
これだけくすぐったがるということは、恵はかなり鋭敏な性感を備えた身体をしているという
証拠だった。

「ひぃーっ、ひっ、ひっ……あっ……くくくっ……きゃはっ……やめ、きゃあっははははっ」

普段、肩で風を切って学園を闊歩している恵とは思えぬ、女学生らしい黄色い笑い声だった。
中年教師は執拗に恵の肌にこだわった。
足の裏をくすぐり、ふくらはぎや太腿にも、触れるか触れないかくらいの接触でくすぐり倒す。
魔の手から逃れようとしているのか、それともあまりのくすぐったさに我慢できないからなのか、
恵のスラッと伸びた脚が引きつるように痙攣し、ぶるぶると震えていた。
爪先もピンと反り返り、必死に堪え忍んでいた。

「うっ……う、はあ、はあ、はあ、はあ……」

地獄のような責め苦がようやく終わると、恵は心底ホッとしたように息をついた。
笑いすぎてお腹の筋肉が痛かった。
腕や脚も、よじり悶えるために筋肉がつりそうな痛みがあった。
呼吸も苦しい。
笑うばかりで息を吸う余裕がないのだ。
恵には永遠とも思える時間だったが、実際は15分ほどだった。
たった15分なのに、恵の首筋や額にはうっすらと汗が浮き、大きな乳房の谷間にも汗が滲んでいた。

「少しはまいったか、紅。いや、けっこう仮面」
「……く、くそっ……」
「相変わらず口が悪いな。くすぐられてる時は、女っぽい声なのにな」
「う、うるさいっ……。きさま、こんなひどいことを……」
「ひどい? そうかな、おまえだって嬉しそうに大笑いしていたじゃないか」
「誰が嬉しいもんか! ふざけるな!」

佐田は恵の顎を摘んで上を向かせた。

「あんまり生意気な口は利かんことだ。またくすぐられたいか?」
「バ、バカ、よせ!」
「いやなら正直に言え。おまえにゃ仲間がいるんだろう? それは誰だ? おまえと同じ生徒か、
それとも教師か?」
「……」

恵はプイと顔を横に向けた。
自分の正体までは仕方ない。
しかし仲間を売ることだけは、八つ裂きにされても言えない。
佐田はニヤリとした。

「そうか、言えんか」
「……」
「なら、また責めてやろう。どうやらおまえもこの責めが気に入ってるみたいだしな」
「バカなことを言うな!」
「強がるな。おまえ、オマンコ濡らしてるだろうが」
「……!!」

指摘されて初めて気が付いた。
見る勇気はないが、確かにこの感触は膣から液体が滲んでいる。
なぜそうなるのか、恵にはさっぱりわからなかった。
快感なんてものはない。
ただひたすらくすぐったいだけだった。
なのになぜ愛液が零れるのだろうか。
くすぐったさイコール性感であることを、彼女は知らなかった。
同時に、くすぐられて笑いを堪える時どうしても膣にも力が入る。
その時、奥から滲んで出てしまうのである。

「ま、いい」
「……」
「いずれわかるさ。では再開するか、今度は気を失うまでくすぐってやるぞ」
「やめろ!」

恵は顔から血の気が引いた。
あのままずっとくすぐられていたら笑い死んでしまうに違いない。
そこまで行かずとも、呼吸困難になったことは間違いないだろう。
強気の恵の表情に、はっきりとした脅えの色が浮かんだのを見て、佐田の嗜虐感は満足した。
だからと言って、やめる男ではない。

「よせっ、この、ああっ」

佐田の指がいやらしく蠢き、手にした筆の毛先が震える。
それを見ているだけで、くすぐったさが甦ってきた。

「ひぃやぁぁぁっ……ひっ、いっ、ひひひっ、あっ……きゃっはっはっはっはっはっ!」

佐田は意地悪く、恵の弱い箇所ばかり責めてきた。
すなわち、腋と脇腹、そして足の裏である。
さらに新たなポイントを発見すべく、美少女の前身を指と筆、鳥の羽が躍った。

「いっ、いやあっはははははっ……く、くるし、ああっ、きゃあああっ、うっはっはっはっはっ
はっ!」

恵の肌と筋肉は、休むことなく佐田の責めを受け続けた。
肺活量の多い彼女にしても、呼吸が苦しくなるほどにくすぐられた。
彼女は、なぜ佐田がこれほど様々な感触を作り出せるのか、さっぱりわからなかった。
筆は、刷毛のように毛先全体を使ったり、毛先の先端だけを使ったり、柄の後ろの硬いところ
まで使ってくすぐった。
指でくすぐるにしても、指の腹を使って揉み込むようにしたり、爪の先を使って軽く引っ掻く
ようにしたり、あるいは爪のつるつるした表面でさすったりして、恵から悲鳴のような笑いを
引き出していた。

「あっはっはっはっはっはああっ……く、も、もうやめ、きゃあっ、きゃはははっ、よして、
お願い、ひゃあっはっはっはっはっ」

もう恵は涙を流して笑っている。
息も上がっていた。
それでも笑わずにいられないくすぐったさであり、身体をよじらずにはいられないこそばゆさ
だった。

「苦しそうだな、けっこう仮面」
「く、苦しいって言ってるでしょ、あっ……くくくっ、ああっはっはっはっはああっ」

足の裏、その指の股、くるぶし、太腿、特に内腿付近、ふくらはぎの裏、膝小僧に膝の裏、腰骨
付近、腿の付け根。
下半身だけで、これだけ恵がくすぐったい箇所がある。
そこを軒並み責められるのだからたまらなかった。

敏感にすぎる肌をくすぐられ、硬い爪の先で腋やあばらを引っかかれ、乳首を転がすように指で
愛撫され、足の指股に舌を入れられる。
そのくすぐったさに、恵が全身を揺すって逃れようとするが、そんなことでベルトがどうなるもの
ではない。
動きに動けず、こそばゆさを逃がすことが出来ない。
笑うことのみが、その唯一の方法だった。

「くっくっくっくっ……あ、ゆ、許し、ああっははははははっ、ひっ、ひぃっひっひっひっ……
あ、もう、ああ、きゃっはっはっはっ」

唯一縛られていない首をもげそうなくらいに振りたくり、汗にまみれた顔を揺さぶる。
もともとボサついていた赤髪が乱れ、凄惨な表情になっていた。

佐田は、くすぐりながら恵の裸身を観察していた。
もうかれこれ30分近くもくすぐっている。先のトライアスロンも含めて、もう彼女にはほと
んど体力は残っていないだろう。
笑い声にもひきつるような声が混じってきている。
そろそろ仕上げだと思った。

「あひぃっひっひっひっひっ……くうあははははっ……あ、ああっ!?」

くすぐられ続け、笑い転げさせられていた恵の声色が一瞬変わった。
佐田の手が乳房に伸びたのだ。
正面から、その豊かに揺れ動く肉球をわしわしと揉みしだいたのである。
恵は、その刺激がびぃんと脳天に届く思いだった。
あのくすぐったさとどこか似通った、それでいて異なる感覚だ。
佐田の指が乳首に軽く触れると、またくすぐったさが甦るが、つままれたり全体を揉まれると別の
感情がこみ上げてきた。
明確な快感であった。

「あ、ああ……あっ……」
「どうだ気持ちいいか?」
「バ、バカにするな、こんな……ああっ、きゃあっはははははははっ」

佐田は、恵の反論を聞くと、すかさず愛撫からくすぐりに切り替えた。
乳房を揉んでいた手が腋の下に伸び、汗をかいているそこを、こそこそとくすぐってきたのだ。
続けて指の腹で脇腹を薄く揉み、指を立ててくすぐる。
恵はまたしても笑い地獄にはまった。

「やめ、やめて、あっはっはっはっはっ……く、だめっ、くっくっくっくっ……うっはははは
ははっ」

そこで一端、くすぐりをやめ、佐田は恵の耳元に囁く。

「どうだ、くすぐられるよりおっぱい揉まれた方がいいだろう」
「……」

そうだとしても言えるはずもなかった。
恵は顔を赤らめてそっぽを向いた。

「くすぐりをやめて、犯す方に切り替えてやろうか?」
「いっ、いやよ!」

恵は目を剥いた。
またこの中年教師の毒牙にかかるなど、死んでもいやだった。
だが、だからと言って、くすぐられ抜いて窒息死する方がマシだとは言えなかった。
佐田はすべてを飲み込んだように言う。

「ウソをつくなよ。オマンコからいやらしい汁が垂れてるぜ」
「……」

否定のしようがない事実だった。
いつしかそこはパックリと口を開け、よだれのように蜜を垂らしていたのだ。
恵は決して認めなかったが、くすぐりが性感に達し、彼女の女の部分を濡らしていたのである。

「ん?」

体育教師は、また別のものを見いだしていた。

「おまえ、これは何だ?」
「……」

股間がぐっしょり濡れている。
いかに濡れやすいとはいえ、愛液だけでこうはなるまい。
匂いを嗅ぐとやや薄いながらアンモニア臭がする。

「小便までしてるのか」
「ちっ、違っ……」
「けっこう仮面ともあろうものが、オシッコを漏らすとはお笑いだな、え?」
「いっ、言うな、言うなっ……く、くそっ……」

死ぬほどにくすぐられ、腹筋も括約筋もめいっぱい使い、疲労困憊した恵は、その責めが終わっ
た途端に脱力し、膀胱も緩んでしまったのだろう。
嘲笑する佐田の顔をまともに見られず、恥辱の涙を流すことを堪えるだけで精一杯だ。
佐田は、そんな恵の前にかがみ込み、その肉体に手を伸ばした。

「こんなに濡れてりゃ、いきなりでいいな」

佐田はそう嘯くと、既にギンギンになっていたペニスを取り出した。
くすぐりで喘ぎ続ける恵の痴態で、すっかり興奮していたのである。
そしておもむろに恵の膣口に押しつけると、一気に挿入した。
気づいた恵が叫んだ時は遅かった。

「やっ、やめろ、ああっ……んんっ、くくっ……くう……きつい……」

根元まで飲み込まれたペニスは、恵の媚肉をせいいっぱい拡げていた。

「きさま……こ、こんな……だめ、抜いて……あ、あう……」

巨漢の大きなものをあっさり受け入れたそこは、充分以上に濡れていたことは明白だった。
挿入の瞬間だけ、恵は裂けるような苦痛があったが、あとはすんなりと埋め込まれてしまった。

「く……苦しい……あっ……う、動かないで! ああっ……」

入れた途端、佐田は激しく腰を使い出した。
その媚肉の感触に、我慢出来なかったのだ。
ペニスを熱く優しく包んでいるくせに、収縮すると心地よい締め上げを感じることが出来る。
恵の運動能力が発達しているのと、膣自体が素晴らしいのだろう。

「苦しいか? まあ俺のはでかいから無理もないさ。だが、それがだんだんとよくなるのさ」
「い、いや……こんなの……」
「くすぐられ続けるよりはマシだろう。そんなに苦しいなら紛らわせてやろう」
「あっ、やめろ、触るな、ああっ……あ、ああぁ……あっ……」

佐田は、両脚を拡げて柱を抱え込むようにして恵に密着した。
対面座位のような姿勢である。
舌で首筋の感じやすいところを舐め上げ、手指は揺れる乳房を責めた。
形が変わるほどに激しく揉みしだき、ピンと立った乳首はくすぐるように指で転がす。
どの責めも、さきほどのくすぐりの延長のようで、恵の気力を鈍らせていった。

佐田の方も、恵の乳房の快さに陶然となっていた。
張りがあるくせに柔らかい。
若さ故か、ちっとも型くずれしておらず、揉み甲斐があるというものだ。
硬くしこった乳首をこねてやると、嬌声としか言いようのない声が洩れてくる。

「ひっ……ああっ、そんな……あ、ああ……あうあ……んんっ……」

最初の凌辱とは打って変わって、恵は女の性感をさらけ出していた。
くすぐりで八合目付近まで押し上げられていた恵の肉欲は、佐田のねちっこい愛撫を否応なく
受け入れ、身体が反応するのを止められない。
快感指数がぐんぐんと上昇するのが、恵自身にも理解できた。

「あっ……ああっ、く……こ、こんな、こと……あっ……あはっ……」

泣き声に近いような喘ぎ声が零れてくる。
貫く媚肉からは、じとじとと蜜が溢れるのが止まらない。
それは責める佐田にもわかった。
膣が潤い、ペニスにねっとりとした液が絡みつくのがわかるのだ。
その太いものをぎゅうぎゅうと膣が締めつけてきている。
恵も高ぶらされているのである。
興奮の高まった佐田は思いきり腰を突きだした。
ぐぐっと奥まで入り込まれた恵は目を剥いて絶叫した。

「こ、こんな深いっ……か、身体のいちばん奥まで、ああっ……は、入ってるっ……」

長いペニスが出入りすると、その肉棒に白みがかった愛液がまとまりついているのが見えた。
絡んだ蜜を弾き飛ばすように、力強いピストンが恵を攻撃する。

「ああっ、あっ……は、激しっ……き、きつ、ああっ……」

くすぐりから、今度は激しいほどの快楽を注ぎ込まれ、恵の身体が頂点に近づいた。
媚肉はビクビクと忙しない収縮を繰り返し、佐田の肉棒を締め上げている。
たまらなくなった佐田は、恵の膣深くまで貫き、肉棒を奥まで押し込んだ。
そして、やや硬い子宮口を亀頭部で確認したと思った瞬間、穢れた欲望が噴き出した。

「あああっ、う、うむ!!」

恵は、危うく「いく」と言いそうになり、それを噛み殺した。
しかし、中に射精された瞬間に、気をやったことは自分でわかった。
膣道をドロドロした白濁液が滑り、子宮まで流れ込んでいるのを感じ、膣を震わせて恥ずかしい
絶頂を再度経験した。

* - * - * - * - * - * - * - * - *

その頃、阿乃世島校舎内の学園長室に一本の電話がかかっていた。

「わしだ。学園長だが」

−学園長! 片桐です!

「片桐先生か。どうかしたのかね?」

学園長は一服吸い付けながら言った。
のんびりした学園長にもどかしさを感じながら、片桐が叫ぶ。

−け、けっこう仮面を捕まえました!

「なんじゃと!?」

途端にサタンの足の爪が仁王立ちになった。
受話器を握りしめる手に力が入る。
しかし、すぐに冷静になった。
あの片桐久子に、けっこう仮面を捕らえられるわけがないではないか。

「……片桐先生、ホントかね?」

疑わしそうな声で学園長は言った。

「片桐先生ひとりで捕まえたのか?」

−いえ、佐田先生と協力して、です。

「……」

あの体力バカも一緒か。
であれば、あながち不可能ではないだろう。
しかし、あんなものに捕まるほどけっこう仮面はバカではあるまい。
その程度の女なら、ここまで苦労はしていないのだ。
押し黙った学園長に、片桐はさらに言った。

−正体もわかりました。

「ほう」

−生徒です。2年A組の紅恵です!

「……紅恵じゃと?」

ますますもって疑わしい。
あの、札付き不良少女と正義の味方・けっこう仮面。
どこをどう照らし合わせても一致しそうにない。
学園で、もっともけっこう仮面と不釣り合いな女ではないか。

学園長は失望した。
そして、ほんの少しでも期待した自分のバカさ加減に腹が立つ。

「片桐先生、いい加減なことは言わないことじゃ。あの紅恵がどうしてけっこう仮面だと言うの
じゃ」

−お疑いですか!?

片桐は心外だった。
苦労して(そんなにしていないが)ようやく捕まえ、マスクまで剥いだというのに、これでは
あんまりだ。

−でも本当なんですよ! マスクを剥いだら紅恵でした。自白もしました。

「……」

ますます信じられない。
SSSの阿久沢の話でも、けっこう仮面は最後まで口を割らなかったそうではないか。

「わかった、わかった。それほど言うなら、けっこう仮面を連れてまいれ」

−それが……。

「今、キミの目の前におるのじゃろう? 連れてくるのはわけないだろうが。何なら、わしが直々
にそこへ行こう。今、どこじゃ?

−咎島なんです。

「咎島? なんじゃ、君らはまだ本島に帰ってないのか?」

−そうです。けっこう仮面はそこで捕まえました。トライアスロンに参加していた紅恵がそうだっ
たんですよ。

「ふうむ……」

学園長は思案した。
もし彼女の言うことが本当なら、捕らえたという話も信憑性が出てくる。
トライアスロンに参加した女生徒が、その直後にけっこう仮面に変身したのであれば、かなり疲労
しているだろう。
その隙を突いて、佐田たちが捕獲したということなのだろうか。
学園長は言った。

「咎島であれば、ここへ連れてくることも出来んか」

−はあ……。船を出していただければ。

「もう夜だし、今すぐの出船は無理じゃ、明日の朝にならんとな。しかしな片桐先生。今まで
各種のプロがけっこう仮面捕獲に臨み、見事にみんな失敗しとる。それを、教師の君らがあっ
さり捕らえたと言われてものう……」
−……。

片桐は唇を噛んだ。
学園長の言うことにも一理あるからだ。
ここは一番、何としてもけっこう仮面を捕らえた証拠を示さねばならない。

−学園長、ならば確認をとってください。

「確認?」

−そうです。もし私たちの言っていることがウソなら、紅恵が本島にいるはずです。でも、
もし紅恵がそっちにいなかったとしたら……。

「……」

そう言われればそうだ。
それくらいならやってもいいだろう。
学園長は気乗り薄気に確認することを片桐に告げた。

「しかし本当ですかな」

受話器を置いた学園長に、教頭が話し掛けた。
顔のこびん付近にだけ白髪を残し、あとは見事に禿げた小柄な老人である。
ほとんど学園長の独裁体制になっているこの学園では、教頭の仕事はない。
従ってこの教頭も、学園長の秘書や鞄持ち程度の仕事しかしていないのである。
学園長に忠実であることのみが求められる職なのだ。

「あの紅恵がけっこう仮面だなどと言うのは、いささか……」
「そうじゃな……」

確かに教頭の言うように、スパルタ学園随一のワルであるヤンキー娘がけっこう仮面であるとは
お笑いである。
しかしそれ以上に、彼女がけっこう仮面であるわけはないと学園長は思っていた。

実は学園長は、紅恵という名前が偽名なことを知っている。
それを知っているのは他に夏綿けい子だけだ。
学園長がそれを知っているのはけい子とは違うルートである。
本省からの通達なのだ。

紅恵の父親はさる企業コンツェルンの創業者の入り婿であり、平たく言えば大富豪だ。
名を騙っているのも、この不良少女が大企業グループのオーナーの娘ということを知られるのは
都合が悪いということだと理解していた。
その、日本の富の数パーセントを持つ親から、学園も多額に寄付金を受けているのである。

彼はスパルタ学園以外の教育関連施設にも寄付している。
そして学園には、生徒父兄から寄せられる全寄付金の1/3以上にあたる額を納入していた。
本省からの指導がなくとも、学園長としては紅恵を優遇せざるを得ないのだ。
偽名の件も、彼女の素行不良に関しても、すべて見逃しているのはそのせいだ。
場合によっては、成績不良でも有名私大に押し込むつもりだった。
しかし恵は、素行はともかく成績は抜群に良かったから、これは学園長の杞憂に終わっている。
だから、紅恵がけっこう仮面であるはずがないというよりは、そうであって欲しくないという
気持ちが強いのだ。

しかし彼女が本当にけっこう仮面であったなら、その限りではない。
むしろそのことを材料に、さらなる寄付やもみ消し料をせびることも出来るだろう。
教頭が、学園長の表情を窺うように言った。

「いかがなさいますか。紅恵の部屋を確認しますか?」
「いや」

学園長は首を振った。

「それより点呼じゃ」
「は? 点呼ですか?」
「そうだ。全校生徒を講堂に集めるのじゃ。いや、生徒だけではない、教員ならびに全職員を
集めろ」

けっこう仮面の正体が、この島の住人すなわちスパルタ学園関係者であることは、前回、前々回
の事件からもはっきりしている。
正体が紅恵かどうかは別にして、万が一、けっこう仮面捕獲が真実だったとしたら、この島の女
を全員集めてみれば確実にわかるはずだ。
その場にいなかった女こそ、けっこう仮面だ。
学園長は老いた教頭に命令した。

「この島の女を全部講堂に集めろ、至急じゃ」
「ははっ」




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