奈落の城を尋ねてきた者がいる。
無論、人ではない。
しっかりとした形状がない。
つきたての餅に手足を生やしたらこうなるのではないか、という風体である。
色はやや濃い象牙色だった。
べたり、べたりと耳障りな足音を立てて、のっそりと城門を通りすぎた。
そいつを玄関で待ち受けていた神楽は、露骨に厭そうな顔をした。

「奈落に呼ばれて来たんだ。通してくれ」
「……あんただったのかい」

どうもこいつは好きになれない。
キンキンと妙に甲高い声で喋る。
のそのそと動き回り、何を考えているのかさっぱりわからぬ。
取り立てて役に立つとも思えぬこんな妖怪を、なぜわざわざ呼び寄せたのか。
奈落の考えもまるで理解できなかった。

とはいえ、いくら神楽が気に入らぬからと行って追い返すことも出来ない。
そんなことをすれば、また心臓を握りつぶされかねない。
神楽は渋々と中に入れると、奈落の部屋まで案内した。
襖を開けると、顎をしゃくって入るように身振りで言った。
無礼な態度だが、得体の知れぬ招待客は特に気にした様子もなく、と言って礼を言うでもなく中に入った。

鼻先で襖が閉まるのを確認すると、神楽は着物の袂を鼻に寄せて匂いを嗅いだ。
そこにあいつの生臭い匂いが少し移っているのを嗅ぎ分けると、思い切り顔をしかめた。

部屋の中には、奈落と、彼に責め抜かれたひとりの少女が縛られていた。
何度も何度も凌辱されたらしく、全身は水でもかぶったように汗でまみれている。
そして股間は白い濁液で汚されていた。
媚肉からも菊門からも、奈落が注ぎ込んだ精がとろとろと零れてきている。

「…来たか、百々目鬼」

百々目鬼と呼ばれたその妖怪は、丸裸の少女と同じく着衣を身につけていない奈落を見て言う。
「なんだ、お愉しみだったのか?」

「愉しみ? …少し違うがまあいい」
「?」

百々目鬼は訝しげだったが、いちいち説明する奈落ではない。
湯帷子に腕を通しながら、百々目鬼には視線もくれずに言った。

「俺は少し留守にする。それまでの間、この女を見張っていてくれ」
「見張る…?」
「そうだ。縛ってあるからまず心配はないと思うが、この娘、退治屋だ」
「ほう」
「油断するな。明日には戻るから、それまで監視していろ」
「……いいだろう」

奈落は百々目鬼の返事を背中で聞きながら部屋を出た。
部屋のすぐ外の廊下には、燃えるような目をした神楽が立っている。

「なんだ、ずっと覗いていたのか? 悪趣味なのは知ってるが…」
「黙れ」
「……」

のっぴきならぬ雰囲気を察知してか、奈落は正面から神楽と向き合った。

「…あんた、あの女を見張らせるためにわざわざあんなもんを呼んだのかい」
「…そうだが」

カッとした神楽は口調も荒々しく奈落に詰め寄った。

「まるっきりあたしを信用してないってことかい! 百々目鬼なんぞでなくても、あたしだってそれくらいのことは出来るさ!」
「随分と言ってくれるものだな。犬夜叉どもと闘わせるたびにおめおめと敗れて逃げ帰ってくるのは誰だ?」
「きさま……」
「いずれにせよ、おまえは俺の言う通りにいればいい」

奈落は、見られた相手が凍死するのではないかというくらい冷たい瞳で神楽を見て言った。

「向き不向きもある。おまえにやらせたら珊瑚を殺してしまいかねん」
「へっ、自分だってあの女の前まで散々殺したじゃないか。それに今まであの連中に煮え湯を飲まされてきたことを忘れてん
じゃないだろうね。あいつを始末してどこが悪いのさ」
「おまえに言う必要はない」
「……」
「とにかく百々目鬼に任せておけ。おまえは手を出すな」
「……ちっ…」

足取りも速く屋敷を出ていく奈落を忌々しげに見つめながら、神楽はつぶやいた。

「…まさか本当にあの女に……」

軽く頭を振ると、神楽はすいと襖を開け、中に入った。
珊瑚はまだ気を失っているようだ。
百々目鬼の方は、いきなり入ってきた神楽の方を見て声を掛ける。

「どうした」
「…別に」

ふん、と鼻を鳴らして神楽は答えた。
そして、百々目鬼から顔を逸らしたまま言った。

「あんた、ただ見張ってるだけかい」
「…そうだが。俺はそういうのが得意だしな」
「でも、ただ見てるだけじゃヒマだろうさ」
「まあな」
「ならさ」

神楽はそこで初めて百々目鬼の方を見た。
その瞳は妖しい光を湛えている。

「…やっちまいなよ」
「なに?」
「だから犯っちまいなって言ってるのさ」
「……」
「けっこういい女だろ? あんただって退屈しのぎになるだろうしさ」
「しかしな」

百々目鬼は、神楽の提案に大きな魅力を感じているようだが、まだ躊躇している。

「奈落のやつが…」

恐いのである。
下手なことをすれば殺されかねない。
神楽はニヤニヤしながらなだめるように言った。

「大丈夫さ。奈落のやつだって、別にあの女に手出しするなと言ってたわけじゃないんだろう?」
「そりゃそうだが…」
「なに、万が一、奈落が何か言ってきたらあたしに言いなよ。説得してやるさ」

これがダメ押しになった。
百々目鬼は大きくうなずき、従うことにする。
何のかの言っても、百々目鬼も女に興味はあるのだ。
これは何も百々目鬼に限ったことではなく、大抵の妖怪は人間の女を手込めにしたいという欲求は持っている。
己の欲望を満たすという意味の他に、下賤の者を嬲るという加虐趣味も強い。

にんまりしている百々目鬼を蔑んだ目で見下した神楽は、そのまま部屋を後にした。
奈落を説得してやるというのは無論ウソである。
百々目鬼が珊瑚をいたぶったことで奈落が激怒したとしても、知ったことではないと神楽は思っている。
ただ奈落に逆らってやろう、そして奈落が執着している(ように思える)珊瑚を踏みにじってやろうと思っているだけである。
仮に百々目鬼の責めが激しすぎて珊瑚の身に何かあったとしても…。

「関係ないさ」

神楽は暗い笑みを浮かべると、すたすたと自分の部屋へ戻っていった。

「う……」

珊瑚はようやく目覚めた。
まだ軋んでいる身体のあちこちからくる痛みに顔をしかめている。
いったいどれだけ奈落に汚されたのだろう。
処女を奪われて以来、三度、四度と繰り返し犯された。
最初の苦痛だけだった思いから、だんだんと快楽を得始めている自分の身体が情けなかった。

それだけではない。あろうことか、不浄の門まで犯された。
そこを犯された時の珊瑚の衝撃は尋常でなかった。
考えもしなかったところで性行為されてしまったのである。
まして、その肛門を犯され続けたことで、膣を犯された時よりも早く快感を得てしまったことに激しい羞恥と屈辱を
感じていた。
まだ尻に何か押し込まれているような錯覚を受けており、手が自由なら触って確かめたいほどであった。
かっちり縛られた不自由な体をもぞもぞ動かしていると、突然声がかかってきたので、腰が抜けるほど驚いた。

「目が覚めたか」
「!」

まるで気配を感じられなかった。
そして首を後ろに向けて相手を見る。

「…おまえ、百々目鬼か…?」
「そうだ」

返事をした百々目鬼が目を開いた。

「……」

それまでは身体の中心あたりに並んでふたつあった大きな目の他に、それこそ身体中に小さな目が現れたのだ。
そもそもこの妖怪に顔はない。
というより身体全体が顔のようなもので、そこから手足が生えているイメージである。
百々目鬼は、その全身のあちこちに散っている多数の目を使うことにより、ほとんど死角がないのだ。
奈落はそこを買って、百々目鬼を使っている。
百々目鬼は、餅かスライムのような身体の一部を伸ばし、部屋の四方に自分の身体を繋げた。

「あっ…」

珊瑚が驚いたような声を出したのも無理はない。
なんと部屋中のあちこちに目が出現したのである。
これも百々目鬼の能力のひとつだ。
自らの身体を接触させることにより目を、つまり視覚を好きなところに置くことが可能になるのだ。

「……」

珊瑚は思わず目をつむる。
自分の裸身を、それも最も見られたくない箇所が丸出しになった恥ずかしい格好で縛られている姿を見られている。
しかし、どんなに固く目を閉じていても、百々目鬼の全身に現れた多くの目が、そして部屋中の多数の目が自分の肢体に
集中していることがイヤと言うほどわかってしまう。
その羞恥で、珊瑚の身体は青ざめ、鳥肌が立っていたのだが、見られ続けているうちに様相が変わってきた。

「……」

そのまま四半時も放っておかれた。
羞恥を煽り立てるには十分な時間である。
縛られて動けず、百々目鬼も何も言って来ない。
百々目鬼の視線が自分の股間に、胸に、素肌に刺さっていることを意識すると、たまらない気持ちになってくる。
かっちり縛られていて、ほとんど脚は動かないのだが、それでも何とか股を閉じ合わせようともぞもぞさせていたが、
動きが変わってきている。
辛抱たまらないという具合にもじもじし始めたのだ。

「…あ……」

たまらなかった。
こうして、ただ見られているだけがいちばん辛く感じられた。
見られているだけなのに、情けないことに媚肉が妖しく蠢き、しっとりと露を帯びてきている。
そしてまた、そこを見られるという悪循環に、珊瑚はおかしくなりそうになる。
青いほどに白かった素肌が薄桃色に変わり、すべすべしていた肌にうっすらと汗が浮き始めていた。
珊瑚は自分の身体の変化に戸惑っている。乳首が痛いほど勃起してきていた。
そして膣の奥から、じゅんじゅんと蜜が分泌されているのがわかるのだ。

「……」

まだ百々目鬼は手を出さなかった。
奈落からは聞いていなかったが、珊瑚が、見られることで被虐的な悦楽を得やすいということは、この様子を見れば
百々目鬼にはすぐわかった。それならますます得意範囲である。

「娘、随分と辛そうだな」
「……」
「触って欲しいのか?」
「バ、バカにするな!」

思わず珊瑚は後ろを振り向き、叩きつけるように叫んだ。
百々目鬼は、ふぇ、ふぇ、ふぇと気色悪い声で笑うと、意地悪げな視線を珊瑚に向けて言った。

「無理をするな、嬲って欲しいのだろうが」
「そ、そんなこと…ない……」
「身体中いじくり回して欲しいのだろうが」
「……」

珊瑚はきつく唇を噛み、屈辱に耐えている。
追い打ちをかけるように百々目鬼が言葉で責めた。

「それとも、このままがいいか? このまま何もされず、じっと見られている方がいいというのか」
「……」

もう見られるのは我慢できそうにない。
その羞恥と屈辱で心が壊れてしまいそうだったし、胸の奥からわき起こる被虐の願望も抑え切る自信が、だんだんなくなってきていた。

「して欲しいのだな」
「……」

もちろん肯定することなど出来ようはずもない。
しかし、強く抗うだけの気力もまた失われつつあった。
堕ちたと判断した百々目鬼は、ぺたり、ぺたりと不快な足音を響かせ珊瑚に近づく。
その気配を察知していながら、珊瑚は固く目を閉じるだけで何も言わなかった。

「ひ……」

ぺたりと百々目鬼が珊瑚の尻に触れた。
そのおぞましい感触に、珊瑚の口からくぐもった悲鳴が洩れる。
汚らわしいと思う一方、心の片隅に妖しい期待感があることに気づき、珊瑚はぶるぶると顔を振りたくった。
ひんやりと冷たく、濡れているわけでもないのにぬったりとしたいやらしい触感に美少女は嫌悪の表情を浮かべた。
しかし、その手がこねるように尻たぶを揉み回すと、ぞくぞくするような不思議な感覚が脳髄に届いてくる。

「ん……」

「いや」とか「よせ」といった拒絶の言葉が出てこなかった。
本心を言えば、「待ちかねた」というところだったろうが、その思いを珊瑚は必死に打ち消した。
百々目鬼の本格的な愛撫が始まった。伸縮自在の身体を活かし、にゅうと腕を伸ばして胸のふくらみに手をやった。
乳房の付け根からぐにゅぐにゅと揉み上げるような荒々しいものだったが、それすら今の珊瑚には魅惑的な刺激となった。
長い舌を伸ばし、清らかな白い背筋に唾液を塗りつけると、珊瑚はその肢体を震わせて喘いだ。

「あ、ああっ」

突然、鋭い悲鳴を発し、珊瑚は後ろを振り返った。
いきなり外気が菊座に当たると思ったら、百々目鬼が尻たぶを割り開いていたのだ。
限界まで開くと、その谷間にぬめぬめした指をゆっくりと這わせる。

「あ…んんっ……あむっ……んん…」

珊瑚は唇を噛んで耐えていたが、腹の底から呻くような声が洩れてくるのを堪えようがなかった。
まだ触られてもいない陰部から垂れている愛液が、珊瑚のなめらかな内腿を伝って畳にまで達している。

「おまえ、そんなに見られるのがいいのか」
「違う……違う…わ……」
「ウソをつけ。そら見てみろ、部屋中に俺の目があるだろう。あれで四方からおまえを見ているのだぞ」
「ああ……」

百々目鬼が媚肉と肛門を同時にいじってやると、もっともっとというように腰をうねらせてしまう。
腰の奥が熱い。
子宮のあたりから、ぎゅんぎゅんと快楽の渦が押し寄せ、それが全身に広がっていくようだ。こんなまどろっこしい責めでなく、
もっと深く、きつく責めて欲しいとすら思ってしまうのだった。

頃合いと見た百々目鬼は、身体の一部を餅のようににゅうと細長く伸ばした。
その先っぽには目玉がついている。
それをいきなり珊瑚の媚肉に挿入したのだ。

「あううっ」

とうとう入ってきた、と珊瑚は思った。
奈落に犯され続け、苦痛より快感が上回るようになっていた珊瑚だったが、この時はじめて痛みはほとんど感じないようになった。
奈落のように肉太な竿ではなく、珊瑚の膣口にちょうど頃合いの太さだったこともあるだろう。
それが珊瑚の奥を目指してぐいぐいと中に侵入する。その感覚に珊瑚は大きく仰け反り、喘いだ。

「うあああ……あうっ……あ、ああ……」

百々目鬼は続けてもう一本触手を伸ばす。
これも目玉つきである。
ためらうことなく、珊瑚のもうひとつの穴−肛門に突き刺した。

「ああっ、そこ、だめぇっ…」

狭い菊門をこじ開けられ、押し込まれる感覚に珊瑚はわななく。
こちらも太さがちょうどよかったのか、ほとんど痛みはなかった。
ずるずるっと奥まで入り込む。
腸内の襞を擦り上げるように前進してくる触手に、珊瑚はふるえが止まらなかった。
二本刺しされ、貫かれる快感に、はっきりと珊瑚は喜悦の声を放った。

「ああっ……あ、あううっ…」

二本の挿送が始まると、珊瑚は待ちかねたように腰をうねらせ、その動きに応えた。
膣を出入りする触手が引き抜かれるたびに、珊瑚の胎内からたっぷりと淫蜜を掻い出している。
珊瑚が淫靡な責めに身悶えていると、いやらしい笑みを浮かべた百々目鬼が言う。

「よく見えるぞ、娘」
「え……」
「おまえのオマンコの中もケツの穴の中もな」
「……」
「おまえに突っ込んでる手にもな、俺の目がついてるからな」
「そんな……」
「おお、よく見えるぞ。くく、いいオマンコしているな、襞がぞわぞわ蠢いているぞ」
「いっ、いやあ!」

新鮮な鮭の肉を思い起こさせる薄紅色をした膣道の奥に、さらに薄い桃色の肉の輪があった。子宮である。
子宮口は子種を欲しがるかのようにひくつき、周囲の襞から滲み出るとろりとした愛液で濡れそぼっていた。
肛門の方も、腸内の襞が煽動し、ぞわぞわともぞついているのが見て取れた。
身体を見られるだけでなく、大事なところを、それも中から見られている。
それこそ一生誰にも、自分すら見ないところをじっくり観察される恥ずかしさ。
そのことを思うと、珊瑚は気がおかしくなりそうだ。

「やああ……み、見ないで…」
「オマンコだけじゃない、尻の中もな」
「やあっ……お願い…見ないで……ああ、いやあ…」

そんなところまで見られていると知ると、珊瑚は羞恥で消えてしまいそうになる。
にも関わらず、より一層、膣からは蜜が溢れるほどに湧き、子宮にもぴりぴりと痺れが来る。

「あ、ああっ」

それまでは観察を主眼に置いていたため、ゆるゆると責めていた百々目鬼だったが、一転、ずんずんと烈しい律動に変化した。
さほど太くない肉棒だが、なにしろ長いので本当に最奥まで届く。
しかも、その律動速度ときたら、ほとんど目にも留まらぬほどである。

「あ、あっ……うぁっ、くぅっ、あっ、あくっ、うんっ、んああっ…」

突かれるごとに声が洩れるのは普通だが、百々目鬼の責めの場合、声の方が間に合わない。
珊瑚にとっては、抜き差しされているのに、常に奥まで肉棒がある感覚だった。

「うあうっ…だめ、あ、あんっ…くっ、あ、たまんない!」

膣いっぱいに肉棒を埋め込まれる充実感はなかったが、常時、媚肉やその粘膜を擦られ、抉られるという信じがたい愉悦を得ている。
百々目鬼は下半身ばかりでなく、両手で白桃のような乳肉も揉み上げている。
珊瑚の乳房は、乳輪まで腫れるように膨らみ、乳首も立ち、まるで三段に盛り上がっているように見えた。

「あ……うん…あ、だめ…ああっ……お、おかしくなるっ…」
「ふん、いきそうなのか?」
「いやあああ……」

珊瑚の身悶える様子を見て、百々目鬼の昂奮も頂点に達する。
さらに律動を烈しくして珊瑚を快楽の頂上まで追い立てた。

「うあっ……あ、あ……」
「それっ」
「あ、ううんっっ!」

百々目鬼が膣の最奥まで挿入し、その先で子宮口をつついてやると、珊瑚はぶるるっと大きく腰を震わせて激しく絶頂に達した。

*
**
*

その頃。
奈落は自室に戻っていた。
三十畳ほどある広い部屋だ。
元は謁見の間だったのかも知れない。
隣室から神楽が中を覗いている。
どうもここのところ奈落の行動は不審すぎると思っている。
手の内を晒さないのは昔からだが、最近はこそこそと得体の知れぬ動きを見せている。
もちろん神楽たちには何も言わない。

「……」

部屋の真ん中で胡座をかき、目を閉じている。
瞑想しているように見えるが、何やらぶつぶつと念仏か呪文でも唱えているようだ。
さすがに何を言っているのかまではわからない。
やけに室内が散乱している。
奈落は畳の上に藺草を編んだ茣蓙を引き、そこに座っているのだが、その周囲が何かの破片だらけなのだ。
よく見ると、木くずのようだ。
そういえば、茣蓙の上に鑿やら短刀やらは転がっている。
何だかよくわからないが、木でも削っていたのか。
しかし何のために?

「…なんだい、ありゃ?」

神楽は目を細めた。
奈落が組んでいる胡座の中に何かある。
どうも香炉のような陶器があるように見えた。
さらに目を凝らして見ると、その香炉の中には細長いものが突っ立っている。
色は真っ黒だ。

「ん……」

何やら唱えていた奈落がふと目を開け、その棒状のものを手にすると、小刀でこりこりと削っている。
細く削るだけでなく、刃を立てて鉋がけもしているようだ。
細かい滓が宙に舞っている。
削った棒を、透かすように見ると、再び香炉にそれを立て、また目をつむってごにょごにょと口を動かしている。
どうも、百々目鬼を呼んでからずっとこれをやっていたようだ。
欄干の隙間からその様子をうかがっていた神楽は「訳がわからない」と言う風に軽く首を振ると、軽い身のこなしで、
とんと上から飛び降りた。

「どう?」
「!」
「……」
「なんだ、あんたかい…」


相変わらず気配もなく部屋に入ってきた姉に驚く神楽だった。

「どうも何も、知りたきゃ自分で聞きゃいいだろ?」

びっくりさせられたことが面白くなくて、神楽は少し意地悪く言う。
神無は妹を見上げて答える。

「だって、聞いたって素直に教えてくれないもの」
「気になんのかい?」
「少しはね」
「へぇ」
「あなたは何? あなた奈落が嫌いなんでしょ? なのになんで…」

ふん、と神楽は鼻を鳴らして視線を外した。

「ああ、逃げられるもんなら逃げたいね。でも、あいつが嫌いだろうが何だろうが、あいつがあたしらの命握ってんのは
確かだからね。余計なことされても困るのさ」
「……」

神無はともかく、神楽がここを逃げ出さないのはそれがすべてである。
逆らえない理由も同じだ。
首根っこを押さえられていて、危ない橋を渡るときはいつもこっちに振ってくる。
それなら自己防衛で、奈落が何をして何を考えているのかくらいわかっていないと、危なっかしくてしょうがない、というわけである。

「とにかくね」

妹は、童女に見える姉を見下ろして言う。

「何考えてんのかはわかんなかったけど、黒っぽい木切れを削ってたよ」
「木切れを? …なにそれ」
「だから、わかんないって言ってるだろ」

神楽は少し腹を立てたように言った。
神無は少し首を傾げてぽつりと言う。

「…また傀儡を作ってるんじゃないの?」
「そんなわけあるかい。ありゃ一尺くらいの棒っ切れを削り出すんじゃないか。奈落が今やってんのはその半分もなかったよ」
「……」
「それに、あんなもの適当に削ってから、あいつの髪を一本巻き付けてやれば出来上がりだろう? 奈落のやつ、今度は随分
ていねいに削って、なんか呪文でも唱えてるみたいだったしさ」
「へぇ……」

神楽は、考え込む姉を、蔑んだような、少し憐れんだような複雑な目で見るとこう言って背を向けた。

「気にするこたないさ。あたしらに言わないってことは、あたしらは知らないでいいってことなんだから」

*
**
*

珊瑚は全身汗まみれだった。
荒く息をしている。
その肢体は、それまでの行為の激しさを示すかのように、薄紅色に染まっていた。
責めていた百々目鬼も、その傍らに座り込んで一息ついている。
だが、監視の目は怠っていない。
目は部屋中に配置しておいているし、全身に浮き出ている目も珊瑚を一時も見逃していない。

すっと襖が開く。
奈落が帰ってきたようだ。
それを見た百々目鬼が少し慌てた素振りを見せる。
いかに神楽が口添えしてくれるとはいえ、奈落に言われてもいない余計なことをしでかしたのは事実だ。

奈落は、まだ荒い呼吸が止まない珊瑚を見て、何があったのかは見当がついた。
その切れ長の目をさらに細めて百々目鬼を軽く睨んだ。
その視線を受けて、百々目鬼の方はぞくりとする。
奈落の力を直接知っているわけではないが、圧倒的な力量の差を皮膚で感じているのだ。
百々目鬼は、奈落の怒りに触れたのはないかと恐れている。
奈落はその様子を蔑むような目で見ただけで何も言わず、軽く顎をしゃくって、出ていくよう命じた。
百々目鬼はホッとする間もなく、逃げるように部屋を出ていった。

「…神楽、いるな?」
「あいよ」

呼ばれた妖女は、音もなく部屋に入ってくる。

「始末しておけ」
「百々目鬼をかい?」

神楽は軽く目を見開いて聞いた。
まさかそこまでやるとは思わなかった。
しかし、もとよりやつを庇うつもりもなかったし、自分が珊瑚を犯すよう奨めたなどと言われても困る。

「…あいよ」

結局、ふたつ返事で了解して百々目鬼の後を追った。
奈落は改めて珊瑚を見た。
昨日、今日の自分の責めと、予定外だったとは言え、百々目鬼に凌辱されたことにより、珊瑚の性感はかなり進んでいるはずだ。
もう可能かも知れない。
縛られたまま、くたりとして脱力していた珊瑚の尻を、ぴたぴたと軽く叩いた。

「…あ……」

珊瑚はようやく意識がはっきりしてきた。
見回すと百々目鬼はいなかったが、奈落が戻ってきていた。
暴力で処女を奪った男は、冷たい中にも強い意志を持った熱い瞳でこっちを見ている。

「い……いやっ…」

珊瑚は急に身体を揺すって自由を取り戻そうとした。
本能的に、また犯されると察したのである。
身動きできないこをを忘れ、前を這って逃げようとするが、当然不可能だ。

「ひ……」

汗が冷え、冷たくなっていた珊瑚の臀部に奈落の手がかかった。
両方の掌で、なぞるように撫で回している。

「やあ……」

またお尻を責められるのかと思い、珊瑚は嫌がって尻を振る。
撫で回している奈落の手は、左右の尻たぶを掴んで、中を拡げている。
奈落としては、なるべく珊瑚の感じるようにもっていき、そしてたっぷりと膣内射精してやることが目的だ。
それには、この娘がもっとも嫌がり、且つ鋭敏な性感を持っている肛門を責めるに限ると思っている。
奈落は、拡げた尻の谷間に手を挟み込むように入れた。手刀を菊座に入れるような感じで、しゅっ、しゅっと上下に擦り上げる。

「あくっ! …あ、あ……や、そんなの……ああっ…」

感じやすい谷間に沿って、奈落の手が上下する。
肛門の粘膜に、たくましいが繊細な肌触りを持つ奈落の手刀が擦りつけられるたび、珊瑚は腰を震わせて悶える。
冷たかった肛門が徐々に熱を帯びてきたのは、擦られる摩擦熱のせいか、それとも珊瑚が責めに感応してきた故か。
はっきりしているのは、この美少女の口からは嫌がる声が出なくなってきていたということだ。

「あ……あ、あ……そ、そこは……ん……」

珊瑚の呼吸が不規則になってきている。
屈辱と拒否反応で激しく振りたくっていた頭も、今は奈落の手の動きに合わせてグラグラと力なく揺られているだけだ。

奈落はようやく手を下ろし、珊瑚の尻穴を見る。
そこは、擦られたせいか、やや腫れぼったくなって、中の襞が少し顔を覗かせているようだった。
赤っぽい菊門の縁が、ひくりひくりと発作のようにうごめいている。
まともな男なら、珊瑚の熱にうなされたような妖しい美貌と、物欲しげにひくつく菊座を見せつけられれば、すぐにでも
むしゃぶりつきたくなるところだろうが、奈落はひどく冷静な目で見つめているだけだ。
この男には淫らな肉欲のようなものはない。というより、それも含めて人間的な感情がないと言うべきだろう。
それでも、着物をはだけさせ前を剥き出しにすると、己の肉棒を数度しごいた。すると、たちまち男根は勃起し、珊瑚を泣かせるには
十分な太さと硬さを取り戻していた。
再度、珊瑚の尻を割ると、ぐいと肉棒を肛門に押しつける。

「あ……」

熱い肉棒の感触に、珊瑚はうつろな顔を奈落に向けた。もはや嫌がる風ではなかった。

「く……んんっ……」

太い肉棒を菊座に押し込まれる分、口から熱い吐息が出ていった。
またしても肛門が張り裂けそうになったが、奈落や百々目鬼に何度も貫かれたせいか、最初にぴりっとした痛みが走っただけで、
あとはあっさりと飲み込んでしまった。

「んん……く、太、太い……」

百々目鬼にさっきまで犯されていたとはいえ、五分ほどの太さしかなかったそれに比べ、奈落のものはそれよりふた回りは太く、
たくましい。
押しつぶされるような圧迫感を感じたが、それがすぐに充実感にとって代わられた。
奈落はぐぐっと奥まで押し込み、下腹が珊瑚の固くしこった尻たぶに当たった。
緊張と圧迫のためか、珊瑚の尻には力が入り、ぶるぶると震えていた。

「あ……ああ……」

奈落はゆっくりと、しかし奥深くまで挿入し、引き出した。
ずるっ、ずるっと抜き差しが繰り返されると、腸管が内側から拡げられる。
長いものが奥まで突かれると、肛門の粘膜は引きずられるようにめくれこむ。
そしてカリの部分まで引き戻されると、今度は腸の襞がこそぎとられるように抉られ、肛門がめくり出された。

「あ、あ……お、お尻なんて……ああ、お尻……いや…ああ……」

珊瑚の白かった裸身がほんのりと色づき出す。
腰から太腿にかけて、ぷるぷると細かく痙攣し出したのを見て、奈落が言った。

「もうすっかり尻の味を覚えたようだな」
「ち……違う…」
「どう違う。心地よくてたまらぬのだろうが」
「ああ……」

奈落が少し大きな動きで突き上げ始めると、そのに合わせて珊瑚ののどから「ひっ、ひっ」と絞り出すような悲鳴が聞こえる。
奈落のたくましい男根が自分の肛門を出入りしている様を思い浮かべると、珊瑚はたまらなくなる。
そんなものを排泄器官であっさりとくわえ込んでいる自分が信じられなかった。
熱い肉棒が大きく律動するたびに、肛門から腸、そして子宮までが火のように熱くなった。

「ああ、だめ……んんっ……くぅ…お、おかしくなりそう……」

いつしか、固くしこっていた珊瑚の尻たぶがウソのように柔らかくなっていた。
奈落の責めを受け入れてきたのだろう。
さほど力を入れなくても、楽に肉茎の出し入れが出来るようになっていた。
そのことに気づいた奈落は、両手で左右から尻たぶを押さえ込んだ。
こうすることで、ただでさえ狭い腸管が余計に狭くなる。
それ故、肛門を貫かれる感覚がいや増し、さらに鋭くなるのだ。
そこを奈落は律動し、珊瑚を悩乱させた。

「あう…あ、あ……あ、おなかが……うん……あむむ…」

珊瑚はもう、肛姦による苦痛からは解放された。
あるのは灼け爛れそうな肉の快美のみであった。

「あん……あんんっ……お、おっきい……あ、あ……おなかが……い…」

珊瑚の肛門は、奈落の肉棒が引き出されるたびに漏れ出る腸液にまみれている。
責める奈落の肉棒に負けぬほどに、珊瑚の後門も熱くなっていた。
奈落の長大な男根にすっかり馴染んでしまっている。

「ああっ」

珊瑚の身体の奥から、突如、びりりっと痺れるような大きな快楽のうねりがわき起こる。
奈落の攻撃はいっそう早まり、珊瑚の肛門を突き崩していった。
受け入れさせられている肛門は、早く奈落の精を絞り出そうと、引き締めたり緩めたりを盛んに繰り返してきた。
珊瑚の意志ではない。
勝手に身体が、肛門がそうした動きをしてしまうのだ。

「あっ…あっ……あ、い……いいっ……」

とうとう尻を責められて、快楽を口に出してしまった。
前を犯された時でも、それだけは口にしなかった珊瑚だが、この尻責めがあまりに強烈だったのだろう。
珊瑚の頭は、肉体の欲望に逆らう意志が吹き飛んでいた。

「ああ、いいっ……くぅぅ…お、おおきいっ……ふ、深くまで……ああ、いいっ…」

冷たかった尻が、いや身体中が灼けるほどの熱を帯びてきた。
すっかり冷えていた汗が引き、代わって粘っこい脂汗が噴き出してきていた。
奈落の律動が早まると、耳まで真っ赤に染めた珊瑚の顔が仰け反り、あられもないよがり声を上げた。

「んあああっ…あ、いいっ……く、もう……ああ、もう、いくぅ…」

それを耳にした奈落は、一気に燃え立たせるべく、ぐりぐりと押しつけるように抉り込み、突っ込んだまま円運動を開始した。
肉茎の竿の部分で肛門周囲を激しく擦られ、珊瑚は全力疾走で頂点まで達した。

「だめえっ……あ、いく……いっちゃうっ!」

絶叫を放って珊瑚は激しく気をやった。
きゅうっと収縮した菊門の締めに逆らわず、奈落も腸管の奥深いところで、溜まっていた精液を噴出させた。

「うあああっ……あっつい…」

灼けるような精を腸に浴び、珊瑚は続けざまにいった。
あまりにも激しい絶頂を極めさせられ、珊瑚は息も絶え絶えに若い肉体を横たえた。

奈落は珊瑚の肛門から肉棒を引き抜いた。
あれほどの量を射精したばかりだというのに、信じられぬほどの硬度を保っている。
奈落は、くたりと布団に伏せていた珊瑚の顔を見ると、顎を掴んで上を向かせた。
しまりのなくなった口からはよだれすら垂れている。
それを見て、奈落はさっきの、息苦しいほどの珊瑚の姿態を思い浮かべた。
仕込むなら、このまま尻を責めるのが良いだろうが、そうゆっくりもしていられない。
わずか二日でここまで感じるのなら、少々無理をしても、まだ肉体が熱く火照っている今、やってしまうべきかも知れない。

奈落は、珊瑚を縛り上げていた赤い縄を解き始めた。
青竹と結びつけられていた珊瑚の華奢な足首に、赤く擦れた後が無惨に残っている。
そこだけでなく、縄を掛けられた箇所にはそれぞれ赤く縄目の跡があった。
それが珊瑚の白い肌に映え、妖艶な美しさを演出しているかのようだった。
身体の自由を取り戻した珊瑚だったが、若い肉体を怒濤のように揉みくちゃにされ、深く貫かれ、犯され抜かれ、逃げるどころか
満足に立つことも出来なかった。

奈落はそんな珊瑚の両脚を掴むと、くるりと反転させ仰向けにした。下になった肛門から、先ほどの凌辱の証がとろとろと
零れ落ちてきた。
陰部も、いじられたわけでもないのに愛液にまみれている。
奈落は珊瑚の膝を曲げ、立てると、ぐいと左右に割った。
内股が張り、鼠渓部が痛々しいほどに浮き出ている。
その股間に顔を寄せると、指で女の割れ目をくつろげた。
媚肉の襞が思い出したようにぴくついている。百々目鬼に荒らされたからだろうが、少し爛れてはいるが、射精されたわけではない
ので綺麗なものだ。
奈落は割れ目の間に指を入れた。
何の抵抗もなく、すっと入っていった。

「……んんっ」

珊瑚はむずがるように美顔に皺を寄せ、腰をよじったが、奈落が脚を押さえており、大して動けない。
指を二本、そして三本にしてこねくってやると、最初は痛そうに呻いていた珊瑚だったが、そのうち慣れたのか、もぞもぞ腰を
動かす程度になった。

「あう……」

三本突っ込んだ指を一気に引き抜くと、珊瑚は安堵したような失望したような声を洩らした。
奈落が膣を観察すると、その周囲の割れ目がアワビのように蠢き、媚肉も小さく口を開けたり閉じたりを繰り返していた。
珊瑚の心はともかく、身体の方は淫らな欲望に耐え切れぬように身悶えている。
続けて奈落は、さらに珊瑚を乱れさせるべく愛撫を加えた。

「ああっ…」

唇で陰核をつまむようにくわえ、舌先で擦るように嬲る。舌を膣に挿入し襞を舐め、同時に鼻の頭で肉芽を刺激してやった。
両手を上まで伸ばし、下乳を爪でなぞるように愛撫する。
乳輪を親指と中指でつまみ、人差し指で頂点の乳頭を弾く。
どの愛撫も、珊瑚の子宮にじんじんと痺れるような快感を送り込んできた。
奈落の舌が、指が珊瑚の身体を嬲るたびに、彼女は豊かな黒髪を乱させ、首を振って快感を逃がそうとする。
だが、そんな抵抗も虚しく、あっというまに珊瑚の細い両腕は、奈落の愛撫に応えるように彼の頭を抱きかかえてしまう。
昨日までの抗いがウソのようになくなっている。
身体が肉欲に素直になってしまっている。
百々目鬼に視姦責めされ、奈落に尻の穴を犯されて気をやったことが、珊瑚の城壁を崩壊させてしまったのか。

「あ……はぁ…はぁ…はぁ…」

乱れた息をしている珊瑚を見つめ、奈落ははだけた着物の懐から何やら取り出した。
神楽たちが不思議がっていた、例の黒い棒切れである。
神楽がのぞき見た時よりさらに短く、長さは一寸ほどになっていた。
太さは二分か三分ほどか。
現代の例で言えばマッチ棒ほどだ。
ただしマッチ棒よりはやや短く、少し太い。
何を思ったか、奈落はその棒切れを己の男根に押し当てた。
そして棒の先端を、なんと尿道に突き刺したのである。

「く……」

当然苦痛があったが、奈落はわずかに眉間に皺を寄せただけで耐えた。
屹立した奈落の男根の先に、黒く小さな棒切れが刺さっている。
奈落はその棒と自分の男根に手をやり、具合を確認している。
問題なしと見るや、膝を折って珊瑚の股間に入り込んだ。
奈落は、ぷるるっとときおり痙攣する腿に手をやった。

陶磁器のような肌触りを持ち、すらりと健康的に伸びた美しい脚だ。
その内腿に掌を当て、さするように揉んでやる。
そこは珊瑚の弱点のひとつであり、人一倍感じてしまう。
奈落の手の淫靡な動きに、感じやすい腿を震わせて珊瑚は喘いだ。
盛り上がる快楽を押さえ込もうと、全身に力を入れる珊瑚。
腿やふくらはぎ、足の指までがピンと張り、痙攣までしている。
顔を赤く染め、息まで止めて耐えている。
すっと奈落が愛撫の手を放すと、ホッとしたように珊瑚が脱力した。
その瞬間、珊瑚の股を割り込むと、肉棒を慎重に膣へ侵入させた。

「あっ…ううんっ……」

熱く太い肉棒の感触に、珊瑚はのどを反らせてわなないた。
亀頭部の先に伸びている細い棒が中に入ったことを確認すると、今度は遠慮なくグッと奥まで捻り込んだ。

「ああうっ…」

内部はとろけるような肉の感触だった。
奈落の男根も熱かったが、それ以上に熱い。
濡れ濡れだったから、ぬるっと奥まで入ったが、入ってしまうと襞が締めつけてきて、思ったよりきつかった。
しばらく動かずそのままにしておくと、膣襞がざわざわと妖しい動きを見せ、奈落の肉棒を包み込んだ。
その動きを確認するように、ぐっ、ぐっと律動を開始した。

「あ、あ……ああ……」

爛れきった媚肉が、犯す男根に絡みついていく。
たくましいもので膣内を占領されると、珊瑚は顔をのけぞりっぱなしで喘いだ。
珊瑚は上へずるようにして逃げようとするが、奈落の逸物が杭のように腰を固定している。
そして、さらに深くまで侵入してくる肉塊のすごさに、足の指が内側にかがまる。

「あくっ、痛っ!」

肉棒の先にある黒い細棒が珊瑚の子宮に当たった。
その鋭い痛みで珊瑚は我に返る。
それを見て、奈落はわずかに腰を引いた。
そして改めて珊瑚の子宮口を確認するように男根を動かすと、今度こそ目的地を見つけた。
ほんの少し開いた子宮口に、尿道へ刺してある黒棒の先を挿入した。
そして、そのまま子宮を押し上げるように深くまで肉棒を突き上げた。

「あううっ…」
「んっ」

奈落が息むと、黒棒が尿道から発射されるように珊瑚の子宮の中に飛び込んでいった。
なにせ細い棒だったし、奈落が突き上げた苦痛と快感に支配されてしまい、珊瑚には異物が入り込んだことはまるでわからなかった。
それで目的の半分を達した奈落は、動きを一層大きくし、珊瑚を責め上げた。

「くっ…くぅ……」

突き上げられると、子宮を中心に腰から全身へ悦楽が広がるのがいやというほどわかる。
それでも、さっきのように奈落の前で恥をかいてなるものかと、珊瑚は必死に耐えていた。力の入らぬ両手を、奈落のたくましい
胸に当てて押しやろうとする。
だが、どんなに堪えようとしても、性の歓喜を感じ取ってしまった肉体は、たやすく珊瑚を裏切っていく。

快感と恥辱のせめぎ合いに苦悶している珊瑚に、奈落が追い打ちをかける。
突かれるたびにゆさゆさ揺れる乳房を左手でつかみ、わしわしと揉み込んだ。
さらに顔を寄せて、痛いまでに勃起した乳首に歯を立てて軽く囓ってやる。
その痛みと突き抜ける快感を同時に味わい、珊瑚はくぐもった喘ぎを上げざるを得なかった。

「くんっ……んんん……うむっ…」

膣と乳房の快感に悶える珊瑚の尻に、奈落がさらなる攻撃に出る。
余った右手で器用に尻たぶを開き、奥の肛門を二本の指で揉みだしたのだ。
肛門性感の鋭い珊瑚はたまったものではない。
堪えようという気持ちはたちまち吹っ飛び、大きく口を開けて快感を訴えた。

「ああ、そこはっ……あ、ああ……い、い……く、あうう……」

珊瑚の媚肉は、めいっぱい口を開けて野太い肉茎を含んでいる。
ぬっ、ぬっと出し入れされると、膣の襞がめくれているのがよくわかった。
じくじくと淫猥な果汁が滴り、奈落の男根と珊瑚自身の媚肉の両方を汁まみれにしていく。
深、浅、深、浅と調子をつけて挿入されると、肉の官能が珊瑚に襲いかかってきた。

「あむ……ああう……あ、あああっ……」
「…ふむ、もういきそうか」
「く……」

それだけは許せないと、珊瑚は血が出るほど唇を噛んで我慢した。
しかし、奈落を押し返そうとしていた両手からは力が抜け、布団に落ちていた。
奈落が乳房を絞るように強く揉み上げると、珊瑚はあられもなく泣き喘いだ。

「あああっ……く……くはっ……あ、だめ……あう、あううっ…」

今少しで絶頂に、という寸前で奈落は動きを止めた。

「あ……」

珊瑚は意外そうな顔で奈落を見た。
そして慌てて顔を背ける。

「なんだ、いかせてもらえると思ったのか」
「……」
「そう言えばいくらでもいかせてやるぞ」
「だ……黙れ…」

珊瑚の口調は弱々しいものだった。
気性の激しい退治屋の娘の面影は失せている。
今は、妖しい快楽に身を委ね、翻弄される小娘に過ぎなかった。
奈落の淫らな動きが止まると、珊瑚は少しずつ醒めていく。
蠢いていた襞も落ち着きを取り戻し、頭も冷静になって、それまでの自分の淫靡な姿を嫌悪する気持ちになっていく。
そこを見計らって、また奈落の攻勢が再開される。

「あっ、また、そんな……ああっ……」
奈落が律動を始めると、次第に珊瑚の反応が露わになってくる。
媚肉などは、待ちかねたように愛しい肉棒にすり寄ってしまう。
珊瑚は自分の身体が裏切り出すのを絶望感とともに感じていた。
こんなにも性に敏感で貪欲だとは思わなかった。
自分がいやらしい女なのではないかと悩みたくなったが、奈落の男根にはそんな考えなど粉々に打ち砕くだけの威力があった。

「だめ……ああ、だめ……ああっ……あっ…」

珊瑚は決死の思いで自分の性と闘っていたが、屈服するのは時間の問題だった。
珊瑚の官能が崩れていく。声が艶めかしいものに変わり、尻や胸の谷間には汗が流れを作っていた。
奈落が突っ込んでくる長大な男根の熱さで、珊瑚の肉も熱くどろどろにとろけてしまうようだった。
珊瑚の裸身が赤く染まり、ぶるぶると震えだした。
最後が近いのだ。
しかし、そこでまた奈落は責めを止めた。

「ああ、そんな……ど、どうして…」
「……」

またしても寸止めされた。
珊瑚は狼狽えたように奈落を見たが、冷たい視線は変わらなかった。
深い快楽を覚え込まされた媚肉は、挿入されたままの肉棒がじれったくてたまらない。

「ああ……」

動きが欲しいと、腰を上下に揺すってしまう珊瑚だった。
しかし奈落はその動きすら封じた。
珊瑚の腰を押さえ込んで、ビクとも動けなくしてしまう。
膣にみっしりと押し入ったまま動かない肉棒が悩ましい。
性の生焼け状態で、とろ火で燻されているようなものだ。
少し間を置いて、珊瑚が少し冷静になってくると、またも奈落は律動を始め、珊瑚の口から悲鳴と喘ぎを搾り取るのだった。

そんなことを三回、四回と繰り返すうちに、いよいよ珊瑚がたまらなくなってくる。
もう、憎い仇である奈落の前で悶えて絶頂に達することへの屈辱だの恥辱だのは地平線の彼方へ消え去り、どろどろに
とろけた肉体と性欲を満たしてくれるならどうなってもいいとすら思えてきている。
ここまで盛り上げれば条件的にも十分だと判断した奈落は、今度こそ珊瑚を追い込むことにした。

「うああっ……くぅ、あ、あ……ああ、いいっ…」

またしても前触れなくいきなり始まった激しい挿送に、珊瑚は腰を振って応えた。
まるで釣ったばかりの鮎のようにぴちぴちとはね回り、奈落の腰の動きに合わせて自分の腰をよじった。
度重なる大きな官能で、受胎しようと下まで下がってきていた子宮に、奈落の肉棒がぶつかる。
もはやその痛みはなく、全身が痺れきるような快感しかなかった。

「あう、あううっ……あっ……うんっ……いいっ……く…いいっ…」

奈落のたくましい肉棒に、子宮を抉り上げられる壮絶な愉悦に頭が弾けそうだった。
珊瑚の長い脚は、奈落の脚に絡みつき、たおやかな腕も奈落の背中を抱き寄せるように回していた。
もう決して放すまいとしているのだ。

「すっ…すご……すごい……ああ、おっきい……奥に……奥に、当たって…」
「奥とはどこだ」
「あ、あ……し、子宮に当たって…るぅ……いいっ……」

奈落は腰を珊瑚の腰に押しつけるようにして、さらに肉棒を奥までねじ込んだ。
最奥まで挿入された固い肉刀は、精を受けようと少しずつ口を開けつつある子壷口を何度も擦り、抉った。

「うあああ、それ……それ、いいっ……ああ、奥が……し、子宮に……ごりごり当たって……あう、いいっ」

珊瑚はもう息も満足に出来ないほど追い詰められた。
気丈な珊瑚の姿はそこにはなかった。
激しい性の激流に弄ばされるただの女だった。
無理矢理犯されているのが信じられぬほどのすさまじい恍惚感を得ていた。
脚が折れそうなくらい力を込めて奈落の脚を捉え、頭のてっぺんが布団に擦れるくらいに大きく弓なりに反っている。
肌理の細かい皮膚を持つ首筋や、形の良い額は、汗が滲むどころかふつふつと玉の汗が浮き、いくつも流れていた。

「どうだ、もういきたいのだろう」
「……」

珊瑚はもう否定できなかった。細い首が折れそうなくらい、何度も何度も大きくうなずいた。

「よかろう」

奈落は両手で珊瑚の細腰をがっちり掴むと、思い切り腰を打ち付けてきた。
腰骨が砕けるのではないかと思えるくらいの激しい突き込みだったが、珊瑚は一片の苦痛も感じず、ひたすら快感のみを享受出来た。
奈落は肉棒を自在に操り、ぐるぐると円運動をしてみせた。膣が拡げられ、周辺の粘膜に強く擦りつけられる刺激に、珊瑚は
恥も外聞もなくよがった。

「くはぁっ……し、死ぬ……気持ち……ああう、気持ち、いいっ……すごくいいっ……」
「……」
「そ、それ! ああ、そこ、もっと突いてっ……あうっ、いい……く、いいわっ…」
「……」
「う、うむっ……あ、いく……だめ、いきそうっ……いいっ……い、いっちゃうぅ…」

よがり、喘ぐ珊瑚に、無言で責める奈落。
珊瑚の昂奮がいくところまでいったと思った奈落は、腰を押しつけてぐりぐり擦りつけた。
たくましい肉棒が子宮口にくっつく。その亀頭部の先で、わずかに開いた子宮口をさらにこじ開けるように抉った。

「うあっ、そこ! そんな……いっ、痛いっ……あ、だめ…いやあ!」

珊瑚の懇願など聞く奈落ではない。
亀頭部の先端を子宮口に何とか潜り込ませた。
子宮内に入れられるなど、珊瑚にも初めての経験だ。
鋭い痛みが走ったが、奈落の絶妙な技巧で、すぐに圧倒的な快感に変わってしまった。

「そ、そんなとこまで……ううんっ…深い……深すぎるぅ……あ、でも……でも、いいっ……気持ち、いいっ」

子宮内に陰茎を突っ込むなど言語道断だが、奈落にしても全部入れてしまうつもりはなかった。
さすがにそこまでしたら、いくら珊瑚でも壊れてしまうだろう。
肉体的にも精神的にもだ。
それではここまでの行為が無意味になってしまう。
要は、確実に珊瑚の子宮内に精液をぶち込んでやればいいのだ。

「あああ……あう、いい……くっ……い、いきたいっ……ああ、いくぅ……」

先端が子宮に潜り込むと、奈落は一気に律動速度を上げた。
その刺激はあまりに強烈で、悲鳴ともよがり声ともつかぬ絶叫が珊瑚の口からまろびでた。

「ひぃぃ……いく……いっちゃう……だめ、ああ、だめっ……い、いっくぅ!」

珊瑚の全身に細かい痙攣が走り、膣と肛門が思い切り収縮して奈落の肉棒を締め上げた。
ぐいっと子宮を押し上げるように男根を突き上げると、そこでこわばりを解放し、一気に精液を送り込んだ。

「ああああっ、いっく……いくう!」

火傷しそうなくらいの熱い精をたっぷりと子宮内に叩き込まれ、珊瑚は身を震わせて激しく気をやった。

「ああ……すごい……い、いっぱい出てる……ああ、まだ熱いのが……」

子宮口に当てた奈落の肉棒が、射精のたびにびくびくと律動し、珊瑚を頂点まで誘った。
十回以上も続いた射精の発作が収まると、珊瑚の力が抜け、絡ませていた手足がバタリと布団に落ちた。
ずるりと濡れそぼった肉棒を珊瑚の膣から抜き取った奈落は、絶息している珊瑚の両脚を掴んだ。
そして左右の足首に縄を掛け、V字型に開かせて、そのまま天井に吊ってしまった。
尻が持ち上がるくらいの高さで、背中から上は布団の上で寝ている格好だ。
自分の放った精子を一滴も零さぬようにしているのだ。
このまま一晩置いておけば、すっかり子宮が吸収するだろう。

「これでいい」

奈落はそうつぶやくと、汗と淫液にまみれた少女に一瞥もくれずに退室した。


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