人見の城には得体の知れない女がふたりいた。
無論、下働きの女どもは大勢いるのだが、それ以外の女はいなかった。
通常、城には主君の奥や腰元たちが多数いるものである。

しかし人見の城にはそれがいなかった。
先頃死んだ先代には奥方がいたし、側室も複数抱えていた。
しかし、先代が急死し今の主が後を継ぐと、側室は残らず城から追い出されてしまった。
新たに奥を設けるのかと思いきや、その気配はさっぱりなかった。
そして先代の奥方、つまり現在の主の母が死ぬと、城内の女性は下働きを除いてほぼ一掃された。
家臣たちは、若い主君のストイックさに感心はしたものの、まるでおなごに興味がないというの
も困ると思った。
世継ぎが出来ないからだ。

しかし、若君が家督を継いですぐに、若い女が出入りするようになっていた。
若の想い人かとも思うのだが、それにしてはふたりのやりとりにまるで色気がなかった。
そしてまたすぐに、今度はおなごというよりは幼女のような娘が出入りし始めた。
どちらの女に対しても、若君は冷淡に対応し、彼女たちもそれに従っていた。
どうも若の女とか、そういうものではないらしいと思いはしたが、上辺だけではわからない。
第一、若の部屋まで入っていけるのはそのふたりだけなのだ。
今では小姓さえも自由に出入りすることは出来なくなっている。
昼間はともかく、夜間は城内に人が出入りすることを禁じているのである。

勘違いしがちだが、この頃の城というものは宿泊施設ではない。
つまり、家臣はもちろん殿様も城に住んでいるわけではないのである。
言ってみれば、城とは会社であり役所である。
働く場であって寝泊まりする場所ではなかったのだ。
殿様も家臣たちも、城の敷地内に屋敷を設けており、そこに住むのが普通だった。
下級武士や召使いたちは、彼ら用の長屋があった。
だから夜間に人が少なくなるのは当然だったが、この城の主は城外警備以外の出入りを禁じて
しまっていたのである。

その城に自由に出入り出来る女のひとり−神楽は、新顔の女を部屋に引き込んで折檻していた。

「このっ!」
「痛っ!」
「バカ女!」
「あうっ!」

殴られているのは珊瑚だった。
神楽は細身の棒切れ−今で言う乗馬用の鞭のようなもので珊瑚を叩いていた。
その傍らで、幼い少女−神無が無表情でふたりの女を見ていた。
殴り続けて疲れたのか、息を切らしながら神楽が言った。

「まったく……まったく、この役立たずがっ!」
「……」
「おまえもこの城にいるからにゃ、何か仕事をしてみなよ!」

この日、神楽は奈落に指示されて麓の村を襲いに行った。
村の鎮守の社務所に、四魂のかけららしいものが隠されているという噂があったからである。
事の真意を確かめ、もし本物であったなら奪ってくるように言われたのだ。
その際、珊瑚も連れて行き、働かせるように命令されていた。

いい加減、珊瑚が殴られてから、ようやく神無が神楽を止めた。

「……どうしたのよ」
「止める気かい」
「そうじゃないわ。どうしたのか聞いてるのよ」

結局、それは四魂のかけらではなかったのだが、村人も神主も抵抗したので、神楽は彼らを斬殺
した。
村人たちが抵抗したのは当たり前で、村を護ってくれる神様のいる神社が襲われたら、黙って
見ているわけがない。
神主の悲鳴を聞きつけて、近在の百姓たちが駆けつけ、農具やあり合わせの武器で抵抗したもの
の、そんなものは神楽にとって物の数ではなかった。

しかし奈落に、珊瑚を戦わせ、人間を殺させるように言われていたのである。
ところが珊瑚は、村まで行くには行ったものの、村人たちには一切手を出さなかった。
飛来骨は村に置きっぱなしだったが、戦闘服には着替えたし、神楽から太刀と脇差しを渡されて
いた。
そうでなくとも、戦闘服にも隠し武器はいくつかあるのだ。
だが、それらの一切を使わず、戦闘に参加することを拒否した。
それどころか、村人に太刀を振るい、風刃の舞いを使おうとする神楽を止めにかかったのである。

「ふうん……」
「まったく、能なしで無害なだけならともかく、足を引っ張りやがったんだよ、このアマ!」
「うぐっ!!」

そう言い捨てると、神楽の鞭がまた唸った。
まともに顔に受け、珊瑚は頬を抑えて畳に転がった。
まだ興奮が収まらないとばかりに神楽は言った。

「奈落が言うから連れていきゃあこのザマだよ」
「……」
「何も出来ないんなら、他の下女どもと一緒に下働きでもしてなよ!」

珊瑚にとっても、その方がどれだけ気楽か知れなかった。
今頃、弥勒やかごめたちは心配しているだろうに、もう仲間を裏切ったようなものだ。
このまま帰れるわけがない。
それが奈落の狙いなのだろうが、もう珊瑚は蟻地獄に囚われてしまったと感じていた。
もがけばもがくほど、ずるずると引き込まれる。
決して地上には戻れないのだ。

しかし、だからと言って、人間を手に掛けることなど出来はしない。
妖怪退治ならともかく、人殺しだけは出来なかった。
だから、奈落に敵対する物の怪を倒せと言われれば、それには従うつもりだった。

いくら殴られても抵抗しようとしない珊瑚を軽蔑したように見下ろし、憎々しげに神楽が言った。

「……ったく、出来ることと言ったら、奈落の閨の相手だけかい」
「……」

それを聞いて、神無がついと神楽と珊瑚を見た。
そして、ゾッとするほど冷たい声でこう言った。

「……それ、本当なの?」
「……」

珊瑚は口をつぐんだが、神楽はしゃあしゃあと言った。

「ああ本当さ。奈落のやつ、この女にご執心なようだよ。連れてきていきなり部屋に引き込んで
何度も何度も犯ったらしいね」
「……」
「それから毎日のように抱いてるのさ。夕べだってさんざん……」
「やめて」
「やめてっ!」

神無と珊瑚が同時に同じことを言った。

珊瑚は羞恥で消えてなくなりたかった。
どうして神楽が、珊瑚が毎日奈落と同衾……いや、彼に凌辱されていると知っているのだろう。
もしや覗かれているのかと思うと、恥ずかしさと悔しさで髪を掻きむしりたくなる。

それでも珊瑚は、神楽に反発するほどの気力が湧いてこなかった。
なんだか自分の身体が自分のものではないように感じられる。
心もどこかで浮遊しているかの如く、ふわふわしていた。
彼女が自分の生を実感できるのは、奈落の腕の中でいやというほど犯され、何度も気をやらさ
れるその時だけになっていた。

神無の表情が見る見るうちに変わるのを、神楽は面白そうに見ていた。
口でははっきり言わないが、神無は奈落に対してある感情を抱いている。
だから神楽のように逆らったりはしない。
一方の神楽は、むしろ積極的に奈落が嫌いである。
命を握られているから渋々従っている、というのが正しい。
機会があれば逃げ出してやると、常々思っていた。
神楽はくすくす笑いながら聞いた。

「どうしたのさ、神無」
「……別に」

神無は吐き捨てるように言うと、すたすたと部屋から出ていった。
神楽はほくそ笑んだ。
これでいい。
今まで神無は、珊瑚のことは無視していた。
恐らく奈落から、珊瑚に構うなとでも言われていたのだろう。
しかし、奈落が珊瑚と関係しているとなれば穏やかではいられまい。

こうしてどんどんと珊瑚が住み難い環境を作ってやればよい。
奈落が苛ついて、殺しでもしてくれればそれがいちばんいいが、珊瑚の方が耐えかねて逃げ出
してくれればそれでよし、だ。
積年の恨みもあったし、出来ることなら神楽がこの手で殺してやりたかったが、そんなことを
すれば、今度は神楽が奈落に殺されるのは明白だ。
殺せはしないが、こうしてぶちのめすことは出来る。
そのことに関しては、奈落も何も言わなかった。

「……」

神楽は、倒れ込んでいる珊瑚を改めて眺めた。
美形で、いい女ではあるが、だからと言って、奈落がこうまでこだわる理由がわからない。
よほどのことがない限り、奈落はこの女を城に置くつもりだろう。
また今日のようなこともあるに違いない。
うんざりすると共に腹が立ってきた妖女は、再び鞭を手にして珊瑚にずかずかと近づいて行った。

* - * - * - * - * - * - * - *

その頃、村では弥勒とかごめが打ち沈んだ顔を寄せ合っていた。
犬夜叉はいらいらとその辺をほっつき歩いている。
奈落による珊瑚拉致はもはや疑いようもない。
気になるのは、珊瑚に抵抗の跡が見られないということくらいだが、奈落なら薬物や妖術くらい
は使うだろう。
それによって珊瑚が自失していた可能性もある。

問題は、奈落は珊瑚を攫ってどうするつもりなのかということだ。
前回のような手の込んだマネはそう何度も出来ないだろう。
となると、いちばん考えられるのは珊瑚を人質にしてこちらの持っている四魂のかけらと交換
するということだろうか。
もっとも、そうだとしてもこちらがかけらを渡そうが、珊瑚を素直に返しはしないはずである。
まともな交渉が出来る相手ではないのだ。

となると、こちらの取るべき手段はひとつだけだ。
向こうがアクションを起こす前にこちらが先に動き、奈落の住処を強襲して珊瑚を奪還する。
それしかない。
しかし、奈落が今どこにいるのかそれすらもわからない。

かごめも弥勒も悔いていた。
こうと知っていれば、あの時、神楽を倒そうとせず捕獲しようとしただろう。
そこから奈落につながる可能性はあったのだ。
いらいらとずかずか歩き回る犬夜叉に、弥勒は下を向いたまま言った。

「犬夜叉、少しは落ち着きなさい」
「これが落ち着いていられるかっ! てめえ、よくそんなおとなしく出来やがるなっ」
「自惚れんなよ」

弥勒は立ち上がり、犬夜叉の襟首を掴んで凄んだ。

「……てめぇひとりだけ苛ついてると思ってんじゃねえよ。てめえより俺の方がずっと……」
「ちょ、まあまあ、ふたりともっ」

弥勒と犬夜叉の目が殺気立ってきて、かごめが慌てて中を割った。

「いらいらしたってしようがないよ。まずはまたあの村へでも行って情報集めましょ。ね?」
「……」

* - * - * - * - * - * - * - *

珊瑚は再び部屋に入ってきた神楽を見て脅えた。
さっきは、神楽の八つ当たりにも近いようなリンチを受けたが、まったく無抵抗だった。
それがまた神楽のカンに障り、一層激しい殴打を受けたのだ。
黙って殴られるままの女をいたぶる趣味は神楽にはなかった。
いくら暴力であたっても珊瑚には効果がないとわかった神楽は、別の手段でこの女を痛めつける
ことにした。

珊瑚はほとんど反射的に身をすくめた。
神楽の目に、何とも言えぬ淫蕩なものを見たからだ。
暴力に出ることはなさそうだが、何を考えているかわからない。
膝を崩したまま後じさる珊瑚の前に、神楽はかがみ込んだ。
不安そうな珊瑚に、神楽はくすりと笑いながらささやいた。

「そう脅えるもんじゃないさ。もうあんなことはしないよ」
「……」

妖女の猫なで声に思わず身を引いた珊瑚だが、神楽はその顎を掴むといきなり口を押しつけた。

「え……んむっ……」

呆気にとられる珊瑚の唇に、神楽は自分のそれを重ねたのである。

「ん! んんっ! ……っく……んぶっ……ちゅっ……」

珊瑚が「あっ」と思う間もなく、神楽のねっとりとした舌が口の中に忍び込んでいた。
思いも掛けない動きに珊瑚は目をぱちくりしていたが、強引ともいえる神楽の接吻に押し流され
つつあった。
同性愛の気などまったくない珊瑚だが、神楽の巧みな舌技の前に、肉体の方が惑わされてきた。
歯はとじ合わせているものの、唇と歯の間を神楽の舌がねぶっていく。
歯茎の歯の生え際をこそこそとなぞられると、こそばゆいような軽く痺れるような刺激が少女の
心を震わせていった。

「ぷわっ……、はぁ、はぁ、はぁ……な、何を、あ、あむっ……」

息継ぎで一瞬口を離したものの、またすぐに神楽は珊瑚の柔らかい唇に吸い付いた。

「い、いや……むむ……んぶ……んんん〜〜……む、んむっ……ちゅぶぶっ……」

珊瑚が、鼻だけで呼吸するのが苦しくなって、たまらずに口を開けると途端に神楽の舌が潜り
込んできた。
驚愕と恐れで縮こまった珊瑚の舌を、舌先を巧みに使って神楽が解きほぐしていく。
つんつんと突っついたかと思うと、ゆっくりと絡めるように舐めていった。
珊瑚は抗って、相手の胸に手を当てて身体を離そうとするものの、神楽は両腕に力を込めて抱
きしめた。
激しいキスではなかったが、優しくムリをしないで吸い上げていった。
吸うというよりは、珊瑚の唇を甘噛みするような接吻だった。

「ぷあ……、ああ、いや……こんなの、やめ、んんむっ……」

息継ぎ以外は珊瑚の唇は常に神楽の唇でふさがれていた。
神楽の責めは徐々に効果を現し始め、少しずつではあるが確実に珊瑚の肉欲を高めていった。

「あ、あむむ……んじゅっ……ん、んくんく……んむう……」

神楽は珊瑚の唇に吸い付きながら、徐々に彼女の着物を剥ぎ取っていった。
珊瑚はもはや抵抗の手立てを持たず、されるがままであった。帯を解かれ、着物を脱がされ、
下着を剥ぎ取られた頃には、もう珊瑚の咥内はすっかり神楽に蹂躙されていた。
全身の力が抜け、神楽の身体にもたれかかるような格好になっていた珊瑚を、神楽は後ろから
抱き留めた。

「はっ……あっ……」

珊瑚の唇を解放した神楽の舌は、後ろからその首筋を撫で上げるように這わせていた。
両手も休んではおらず、抱え込むようにして若い乳房を包み込んでいる。

「やっ……あ、いや……こ、こんな……あっ……やめ、ああっ……」
「いやなわけがないさ。ほら、こんなにここが硬くなって」
「いやっ、ああ、そこ触ら、あああっ……」

神楽は少女の耳元でくすぐるような声でささやいた。
指摘された通り、珊瑚の乳首は度重なる口づけで性的に興奮してきたのか、いつのまにか充血
していた。
それを神楽は指先でくりくりとこねくり、珊瑚に悲鳴をあげさせていた。
舌は耳たぶから耳孔に入り込んでいた。

「ひゃあっ……く、くすぐった、あはあっ……」

神楽の手が、剥き出しになった珊瑚の乳房を揉みしだき始めた。
豊かに張った乳房に、神楽の細い指がめり込むように沈み、肉球を絞るようにゆっくりを揉ん
でいた。
もう珊瑚の顔は、言い訳ができないほどに上気し、吐息も熱がこもってきた。

「あ、はあっ……う、うんっ……やめて、ああ……あっ……」

奈落に犯されるだけでも気が狂いそうなのに、こうして女の神楽にまで嬲られる。
同性で感じるなどあさましいと、珊瑚は必死になって胸から押し寄せる快楽に抵抗する。
最初のうちは「いや」だの「やめて」だの口にしていたが、もうその桜色の唇からは呻きとも
喘ぎともつかぬ、艶めかしい声しか聞こえてこない。
胸を揉み込んでくる神楽の手を外そうと掴んでいた腕からも力が抜け、今にも落ちてしまい
そうだ。
もう一息と思った妖女は、喘ぐように口を開けた珊瑚にまた接吻した。

「あ、ああ……ああっ!? あむむっ……」

もう舌先で強制されるまでもなく、珊瑚は口を開けて神楽の舌を受け入れていた。
ねっとりとした熱い舌が珊瑚のそれに絡みついていく。
舌を引っ込めようとも、顔を振り払おうともしなかった。
自分から吸い付きもしないが、神楽の唇を避けようともしなくなっていた。

「んんっ……ん、んん、んちゅちゅっ……」

神楽は右手で珊瑚の乳房を揉みながら、左手で彼女の頭を押さえ込んで激しく唇を奪っていた。
珊瑚は目をかたく閉じ、睫毛を震わせながらも懸命に快感と戦っているものの、神楽の手に添
えた腕には鳥肌が立っており、耐えきれなくなるのも時間の問題だった。

少女の表情がうっとりとしてきたのを見て、神楽は突如、指の動きを活発にした。
それまで焦れったいほどに大きくゆっくりと包み込むように揉んでいた乳房に、形が変わるほど
に強く指を食い込ませた。
甘い痺れのような快感から、いきなりびりっと来る強い刺激になり、珊瑚は思わず歓喜の声を
あげてしまった。

「ああっ、はああっっ……!」

神楽はしつこいほどに珊瑚の鎖骨付近や腋、肩口や首に舌を伸ばしてきていた。
もちろん胸も、力強いだけの男の愛撫とは異なった微妙な指使いでたぷたぷと揉み込まれている。
珊瑚はもう、甘い声を抑えようがなくなっていた。
足腰に力が入らなくなってきたらしく、とじ合わせていた膝がぷるぷると震えながら開きつつ
あった。

「ああっ、そ、そこだめ、ああっ……!」

突然、珊瑚が甲高い声を出した。乳房を愛撫し続ける左手に呼応し、右手が股間に伸びてきた
のだ。
腰をひねって抗った珊瑚だが、それがまるで神楽の手に合わせるかのように動いてしまう。
神楽は、もう濡れきったそこを指先に感じ、からかうように言った。

「ふふ、なんだい、なんだい。さんざんいやだの何だの言いながら、もうあんたのオマンコは
こんなじゃないか」
「いやあ……」
「いやなもんか。ほれ、割れ目はもう弾けてるよ」

珊瑚は激しく顔を振って呻いた。
振りたくる頭の動きとともに涙が飛び散る。
こんな女に好きにされる情けなさ、そしてその愛撫に否応なく反応させられる肉の疼き。
羞恥よりも屈辱で涙が出てしまう。
しかしそれすら随喜の涙に変わらされることを、珊瑚自身も薄々わかってきていた。
さらに珊瑚を辱め、高ぶらせるべく、神楽の淫らな言葉が続く。

「まったくいやらしい、あとからあとから蜜が零れ出てくるよ」
「いやっ……ああ、いやあ……」
「おや、ここもおっぱいと同じでもうつんつんになってるね」
「さっ、触らな、ああっ!」

神楽が淫核を責める頃になると、もう珊瑚はすっかり着物を脱がされて、その肢体を晒していた。
はだけた着物の裾に手を入れ、さらに胸をまさぐっていく。

「あ、あっ……んん……はっ……」

珊瑚の口から洩れる声に甘いものが混じり始める。
同性に、それも神楽に嬲られるという嫌悪と恥辱が薄れ出し、純粋な肉の疼きがこみ上げてきた。
美貌を心持ち上向かせ、潤んだ瞳を宙に泳がせた。
神楽は、そんな美少女の肉体がもろくもとろけ始めているのを見て、淫らに嗤った。
同性だからなのか、神楽は的確かつじんわりと珊瑚の弱点を探り出し、じっくりと愛撫してい
った。

「だ、だめ、こんな……ああ……」
「うふふ、そんな声出しちゃって。あんた、こういうことが好きなんだね?」
「い、いや、違う……あああ……」
「ウソおっしゃい。ここがもうこんなだよ」

妖女は、珊瑚の耳元に囁きながら、愛撫の手を休めない。
神楽の手が蠢き、揉み、撫でるごとに珊瑚は息を乱し、身をうねらせていた。
股間を責め続ける神楽の右手付近から、濡れてぴちゃぴちゃした音が聞こえてくる。
もともと濡れやすかった珊瑚のそこは、もう夥しい蜜で潤っているのだろう。
たまらないと言ったふうに、珊瑚の唇から声が洩れる。

「こ、こんな……ああっ、お、女同士でなんて……あっ……」
「あら、おかしいかい? 侍どもが男同士で寝るじゃないさ。女同士ってのももあるのさ、
覚えておきな」
「あああ……」

奈落に比べ、神楽の愛撫はそんなに激しいものではない。
しかし確実に珊瑚の敏感な箇所を攻略してくるため、いやでも珊瑚は劣情の中に飲み込まれて
いく。
そして神楽の指が肛門にまで伸びてきた時、珊瑚は悲鳴を上げるどころか大きく喘いだ。

「ああっ、そ、そこっ……」
「いやらしい。こんなところを触られて感じてるのかい」
「いっ、言わないで! ああっ」

神楽は綺麗に切り揃えられた爪の先で、ごく軽く引っ掻くように珊瑚のそこを嬲る。
菊門をほじくられるような刺激に、珊瑚は腰を揺すって呻いた。
それが、神楽の手から逃れようとしているのか、それとも押しつけようとしているのか、俄に
は判断がつかないほどだ。
一段とはっきりしてきた珊瑚の反応を見ながら、神楽は尻の谷間から媚肉にかけて、ずうっ、
すうっと触れるか触れないかくらいの愛撫を続けた。
珊瑚の腰が面白いように蠢き、喉からは切なそうな喘ぎがこぼれる。

「くく、もうすっかりいいようだねえ」
「ああ、いや……」
「いやったって、こんなにぱっくりと口を開けてるよ」
「いやあ……」

露骨な表現に、珊瑚は顔を振って泣いた。
なのに媚肉は膣の中身を覗かせている。
神楽はその開いた左右の割れ目に沿って指をなぞらせて、珊瑚にひぃひぃと悲鳴をあげさせて
いる。
つるんと指が中に潜り込むと、膣から蜜が押し出されて溢れ出る。
神楽は細い指を二本揃えて、ゆっくりと珊瑚に挿入した。
ぬっ、ぬっと粘った水音がして、スムーズに神楽の指が出入りしている。

「ああっ、あうう……あ、ああ……」

珊瑚の喘ぎを聞きながら、珊瑚はさらに奥まで指を入れ込んだ。
今度は二本の指をねじるように合わせて、わざと淫らな粘っこい音が珊瑚の耳に届くように蜜
を掻き出した。
膣をこねくり回される強烈な感覚を受け、珊瑚の襞は神楽の指を押さえ込むように締めつけた。
執拗に女陰をほじくられているうち、神楽の腕を押さえていた珊瑚の手がくたりと下がった。

「あ、あううっ……あ、ああ……あはあっ……」
「そんなにいいのかい、え、珊瑚。オマンコいいって言ってみな」
「いやっ、あ、あ、ああ……」

淫らな言葉を盛んに吐きかけ、珊瑚をさらに追い込む。
その間も珊瑚の淫裂はねちっこくかき回され、クリトリスも膨らみきっていた。
休むことなく左手で揉み続けられている乳房もしっとりと汗ばみ、神楽の手のひらに吸着せん
ばかりだった。

「もうあたしの指なんかじゃ物足りなくなってるんだろう?」
「……」
「ほら、はっきりお言いよ。もっと太いのが欲しいって」
「いや……」

「もっと太いの」と言われた時、珊瑚の裸身がピクリと動いた。
思わず奈落の逸物を想像してしまったのだ。
この燃え盛った身体をあれで慰めてもらいたいと一瞬でも思ってしまった自分に、悔し涙を流
した。

「あんたは奈落のチンポを突っ込んで欲しいところだろうが……」
「……」

神楽は珊瑚の心の底を見透かしたかのようなことを言ってから、乳を揉む手を外して畳をまさ
ぐった。

「そうさせると神無が灼くんでねぇ……」

妖女は瞳を冷たく光らせると、右手にそれを持ち替えて珊瑚の顔の前に晒した。
一瞬、それが何だかわからなかったが、見覚えのあるその形状を見て、珊瑚は見る見るうちに
青ざめてきた。

「これで我慢してもらうさ」
「そ、それ……」

木製らしいその棒は、長さで六寸ほどだろうか。
円柱ではあるが、少々弓なりに反っている。
直径は一寸半から二寸くらいはあった。
ただの円筒ではなく、先の方がぷくりと膨らんでいた。
間違いない。
それは男根をイメージしているのだ。
珊瑚も何度か見たことがある。

男根を奉っている神社は多い。
五穀豊穣を願う農民たちの守り神だからだ。
そのご神体というのが、ずばりペニスなのである。
もっとも、神楽が手にしているのはそんなものではなく、明らかに性具としての疑似男根であ
ろう。
色も黒々としており、漆でも塗られているのか、表面は艶々していた。
珊瑚は恐怖で顔を引きつらせた。

「ま、まさかそんなので……」
「この期に及んで可愛い子ぶるんじゃないよ、スベタが。おまえのオマンコにぶち込むに決ま
ってるだろうが」
「ひっ……いやあ! そ、そんなもの使わないで!」
「あたしにチンポがついてりゃそうしてやるけどね。ないもの強請りしたってしようがないさね。
なに、見てくれは悪いが、こいつもなかなかのもんさ」

脅える美少女に加虐的な笑みを浮かべて、神楽は珊瑚に取り付いた。
胸を揉みながら、張型を媚肉に押し当てていく。

「いやあっ……!!」

男の生身で犯されるのもいやだが、そんなもので嬲られるのはもっといやだった。
女としてすら扱ってもらえない。
ただただ、反応する肉として弄ばされる。

「ひぃ! あ……ああ!」

珊瑚の裸身がビクッと震えて、大きく顔を仰け反った。
今まで奈落を始め、妖物にも犯されたが、異物を挿入されるのは初めてである。
太いものを無理に埋め込まれる苦痛に、珊瑚は呻いた。
神楽の執拗な愛撫でとろけきっているのに、極太の張型はさすがにきつかった。
割れ目をめいっぱい拡げられ、周囲の肉や襞を巻き込んで膣に押し込まれていく。
陰茎と違ってただの木なのだから、無理に押し込んでも入るものではない。
膣を守るために、普通は香油を使って表面をぬらつかせるのだが、神楽がそんな気遣いを見せ
るわけもない。
裂けたら裂けたでかまうものかと、珊瑚の慎ましやかな媚肉に挿入していった。

それでも、柔軟性に富んだ珊瑚のそこは、なんとか凶器を飲み込んでいく。
すでにびっしょりと濡れており、それもかなり粘着質の愛液が滲み出ていたため、膣は無傷で
済んだようだ。

「あ、あう……うむ……」

神楽は珊瑚の顔を見ながら、張型を入れていく。
どこまで入るかと面白がって挿入していったが、とうとう根元まで押し入ってしまった。
珊瑚はもう顔を後ろに仰け反らせっぱなしで、全身をぷるぷる痙攣させて苦痛と恥辱に耐えて
いる。
そして、その先端が子宮にまで届かされた時、思わず呻き声が出た。

「ひぅっっ……!」

神楽は、みっちりと太いものをくわえこんだ媚肉を見ながら、からかうように言った。

「なんだい、死にそうな声出しやがって、全部入っちまったじゃないか」
「あ、あむ……」

珊瑚はもうまともに口も利けなかった。
腿をぶるぶる震わせて「あうあう」と呻くだけだ。

「苦しそうだね。なら、紛らわせてやるさ」
「ああっ!?」

神楽はそう言うと、深くまで入れた張型をゆっくりと回転させ出した。
ただでさえ太いのに、それが反っているものだから、そんなものを中で回転させられたら膣の
中がめちゃめちゃになる。
肉棒とは比べものにならない硬さで襞をこそぎとられ、珊瑚はひぃひぃと泣き喚いた。

神楽は、このまま苦痛に泣き叫ばさせるのもいいかと思ったが、初期の目的に戻った。
徹底的に感じさせて自分の前で気をやらせ、生き恥をかかせてやるのだ。
妖女は張型の責めを緩めると、優しく乳房を揉み上げ、クリトリスをクリクリとしごきだした。

「う、ああ……あ……ああっ……あっ……」

それまでは、ただきつくて痛いだけだった責めに、一転、柔らかい責めが加わる。
膣は巨大なものを突っ込まれてまだ痛いが、乳房にはじんわりと快感が戻り、淫核からは身体が
跳ねるほどの愉悦が轟いた。
神楽は、左手でゆっくりと張型を出し入れし、右手で乳房を揉み、クリットを責め、肛門を
いびった。
ぷくんと膨れた乳輪に舌を這わせ、立った乳首には歯を立てて甘噛みする。
尻を責める時は、アナルに触れるか触れないか付近の肉をくすぐるように撫で回した。

「ああっ……あう、むむ……はああっ……」

珊瑚は、身体の芯に引きつるような甘美な悦楽を得つつあった。あれほどきつかった膣なのに、
今では太いものをすっかり受け入れている。
神楽の手がゆっくり動くごとに、膣内部がめくり出され、薄桃色の健康的な肉襞が見えた。
押し込まれると巻き込まれ、入れられた張型の分だけ、濃い愛液が溢れ出てくる。
蜜が零れるたびに、珊瑚の甘く妖しい香りが部屋に漂ってきた。

「あうう、いや……あ、ああ……う、動かさないで、ああっ……」
「動かすためにやってるのさ、ほら」
「あああっ……」

敵に捕らわれ、憎んでも余りある妖女に責められているというのに、珊瑚の肉体はその責めに
応えて蜜をあふれさせていた。
いつしか女体はすっかりとろかされ、灼けるほどの快感が膣や子宮を中心に広がっていった。
硬い木で叩かれても痛いだけだった子宮口も、それに慣らされてくると、突かれるたびに膣が
きゅっと締まるほどの愉悦が走る。
どんなに声を噛み殺しても、次々に喘ぎがまろび出た。

「い、いや、あうう……」

奈落によって開発された女肉は、突き上げてくる大きなものにひとりでに順応し、感応する。
責める女の手の動きが焦れったいように、貪るような蠢きを見せ始めていた。

珊瑚は崩壊を実感していた。
このままでは本当に気をやらされる。
奈落の前でさえ、何度犯され、何度いかされても、その絶頂シーンを見られるのは死ぬほど恥ず
かしかった。
なのに今度は、女に犯され、それを見られてしまう。
それだけはいやだった。

なのに身体は珊瑚を裏切り、神楽の責めに熱くうねった。
徐々に膣を突き込まれる速度は上がり、乳房を強く揉まれだした。
そんな激しい行為にすら、感じて感じてしようがなくなっていた。
子宮の奥がカッと熱くなり、腰が勝手にうねりだした。
太腿や臀部が不規則に痙攣してくる。
すっかり愛撫に素直になってきた珊瑚を、神楽はなおも責めた。

「あっ、あっ、あっ、あっ、ああ、あっ、も、もうっ……」

ずん、ずんと突き上げるごとに珊瑚はビクン、ビクンと腰を震わせて喘いだ。
血が出るほどに唇を噛んで耐えているのに、噛みしめる力が抜けてくる。
神楽の責めに合わせて喘いでいた珊瑚が、突如、ぶるるっと震えて大きく仰け反った。

「あ、もうっ……あああっっ!!」

珊瑚は首をガクンを後ろの仰け反らせて、ぶるるっと身体を震わせた。
そしてガックリと脱力し、神楽に裸身を預けた。
神楽はその美少女を顔を覗き込んでいたが、またすぐに張型で抉り始めた。

「おや、小賢しい。そんなことしたってだめさ」
「ううっ……!」

神楽はすぐに見抜いていた。
珊瑚は気をやったフリをして、この妖女の責めを受け流そうとしたのだ。
そうすることで、神楽に最後までいった顔を見せないですむ。
何度となく凌辱を受けた珊瑚が、自然に身につけた脱出法だった。
大きな声で喘ぎ、仰け反り、身体を震わせる。
直後、ぐったりと力を抜く。
もちろん、それだけだって充分に恥ずかしい演技だが、本当に気をやった表情を観察されるより
はマシだ。
平素は純情だが、セックスの時は妖艶になる珊瑚のそんな顔を見れば、奈落はともかく大抵の
男は騙される。
実際、恋人の弥勒ですら引っかかっている。
しかし、珊瑚などよりは遥かに経験豊富な艶女である神楽が引っかかるはずもなかった。

人間の女が、浅知恵で自分を騙そうとしたことに、神楽は腹が立つというより愚かしく思って
いる。
そういうつもりなら、とことんいかせて徹底的に堕としてやろうじゃないか。
そう思うと、神楽はかさにかかって責め出した。
張型を大きく使って、先端が出そうになるまで引き上げ、根元が見えなくなるまで押し込んだ。
最奥で子宮にぶち当たっても構わず、ぐいぐいと責めあげる。
珊瑚はたちまち押し戻された。

「ああっ! あああっ……あううっ……あ、ふ、深すぎるっ……そ、そんなに突かないで、
ああっ……」
「つまんないことするからさ」
「ひああっ……」

神楽は根元まで押し込むと、ぐりぐりと回した。
反ったものを回転させられ、珊瑚はひぃひぃ泣いた。
しなやかな肌に浮いた汗が粘ついている。
熟れはじめている珊瑚の若い肉が、神楽の激しい責めに慕い寄っていく。
珊瑚にしても、絶頂の演技はぎりぎりの賭けだった。
自分がいく寸前だからこそ真に迫っていたのだ。
それを見破られたら、次の策はなかった。

「あ、あああっ!? あ、も、もう、ホントにもうっ……」

硬い木が子宮を遠慮なく擦ってくる。
膣の襞はゴリゴリと抉られ、異様なほどの熱を帯びていた。
黒い張型が、膣から出てくると白っぽい粘液にまみれてきている。
珊瑚の蜜の濃度が増しているのだ。

「あ、ああ、もうホントに堪忍っ……だ、だめぇっ」

股間を抉り、乳房もぐにぐにとこねくっていると、珊瑚の裸身に嘘のない痙攣が走り始めた。
次の瞬間、膣を責める神楽の手が持って行かれるほどに、臀部がぶるるっと激しく震えた。
そこを逃さず、神楽はとどめの一撃を媚肉深くまで打ち込んだ。

「ああっ!! ……い、いく!」

美少女はぎりぎりっと歯を噛みしめて全身を大きく震わせた。
腰がガグンガクンと跳ね上がり、張型がきゅううっと締め上げられた。
ガクッと力が抜けた珊瑚の乳を柔らかく揉み上げながら、神楽が言った。

「ふふ、今度は本当だったようだねえ」
「……」
「奈落に犯られて気をやるかと思えば、女のあたしに可愛がられてもいっちまう。あんた、好き
なんだねえ」
「……うっ……」

神楽は、屈辱の事実を指摘され、すすり泣く美少女を見やった。
まだまだこの娘をいたぶってやるつもりだった。
奈落と神楽の力関係、そして珊瑚への執着ぶりからして、珊瑚を叩き出すのはまず無理だ。
ならば、珊瑚の方から、ここから出ていくようにすればいい。
それには珊瑚を辱め、罵り、居づらくすることである。
今の彼女の状態なら、神楽の仕打ちを奈落に言いつけるようなことはないだろうが、もしそんな
ことをしたら目一杯折檻して、どっちが上なのか思い知らせてやるのだ。
奈落とて、四六時中、珊瑚に目を配るわけにはいかぬ。
隙はどこにでもある。
神楽は、まだすすり泣いている珊瑚を思い切り足蹴にすると、そのまま足音も荒く部屋を後にした。

* - * - * - * - * - * - * - *

「……」

弥勒は、珊瑚が消えた村に来ていた。
犬夜叉とかごめも、近隣を探し回っている。
弥勒たちの必死の捜索にも関わらず、珊瑚の行方は杳として知れなかった。

もう既にここは彼らによって一度捜索されている。
そこに確かに珊瑚がいたという痕跡はあったが、ほとんど手がかりがなかった。
しかし、珊瑚の手がかりが残っているとすればここしかないのだ。
問題の医師がいたという農家の納屋も徹底的に調べた。
そこには、確かにそこへ珊瑚が訪れたという証拠−飛来骨が転がっていた。

「……すると珊瑚、いや、そのおなごは確かに……」
「来たな」

医者に納屋を貸していた農家の主が答えた。

「来たのは二度で?」
「らしい。わしは、二度目に来たのは気づかなんだ。じゃが、弦斎先生……ああ、こりゃ医者
の爺さんの名前だがな。あの日、弦斎の爺さんが納屋を出ていった時、その後をおなごがついて
歩いとったのは覚えとる」
「……」
「それ以後、その娘はもちろん、爺さんも戻って来よらん」

とすると、疑いの余地なく、その医者が珊瑚を拐かしたのだろう。
そいつが奈落なのかどうかは、もはや問題ではなかった。
まずは珊瑚の奪還である。

「では、他に何か変わったことはありませんか?」
「変わったこと?」
「何でもいい。あれ以来、この村で何かおかしなことはありませんか? 誰かいなくなったとか、
よそ者が来たとか……」
「はて、変わったことのう……」

主は白髪頭を傾け、小首を傾げて考えた。

「そういえば……」
「なんです? 何でもいい」
「……今、この村に遊女が来とる」
「遊女?」
「何も娯楽のない村だからな、いろいろ来るんじゃよ。賭博屋や旅芸人、それに渡りの遊女もな」
「……」
「ただ、今来てる遊女は初めて見るおなごじゃったな」
「初めて……」
「うむ。歳の頃なら二〇は過ぎておる感じだったな。徒っぽい、いかにも商売女のようじゃったが
……」

それを聞くと弥勒は、教えられた場所へ足を急いだ。
豪農の離れに設けられた臨時の郭である。
若い僧は、咎める番人を押し返し、部屋の引き戸を開けた。

「……」

中には、若い女が背を向けて寝そべっていた。
長い煙管を口にして、紫煙を吐いている。
既に着衣を脱いでいる女の、白い背中が艶めかしかった。

「遅かったねえ」

振り向いた女が笑っていた。

「神楽……」

見事に膨らんだ乳房も露わに微笑んだ妖女は、弥勒に手招きをした。

「どうしたんだい? 来ないのかい」
「……」

神楽は半身を起こすと、身体を捻った。
左手を頭の後ろに回し、右手で自らの乳房を持ち上げている。
美貌に浮かんだ淫笑は、見ている男を引きつけて止まない。
法師は黙って妖女に近づいて行った。



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