コミッション終了後、不二子は部屋を連れ出された。
彼女の前にひとり、後ろにもひとりの男がついている。
いずれもさっきの会議に出席していた連中だ。
つまり、ファミリーの首領なのであろう。
彼らがこんな雑用をさせられているのに不二子は少々驚いた。
普通なら、下っ端の若い者にでもやらせる仕事である。
なにしろ、捕虜を地下牢へ連れて行くだけなのだから。
もっとも、相手が峰不二子ということで油断ならぬ、という思いもあったかも知れ
ない。
とはいえ、やはり普通の組織では考えられぬことだ。
不二子に興味があるのか、先導する男がわずかに顔を後ろに向けて言った。
「おまえも運がないというか……間の悪いことだな」
「そうかしら」
男は薄く笑って答えた。
「そうさ。なんでまた『キリマンジャロの星』に手を出した? 確かに世界一の
ダイヤなんだから、魅力的ではあるだろうがね」
「あら、私だって女だし、宝石には興味あるもの」
「だろうな。ところであのダイヤ、なぜ我々が入手したと思う?」
「さあ。どっかに売り払うの? それとも頼まれたのかしら」
「プレゼントなんだよ、アキラさまへの」
「プレゼントですって?」
「誕生祝いのな」
そういうことか。
このダイヤはイギリス王室へ移送されるはずだった。
本来なら、そんなリスクの高い獲物に手を出す組織ではないのだ。
欲しかったなら、他の組織にやらせてそれを買い取るのがPMだったはずである。
なのに危険を冒してわざわざ自分でやったのは、アキラへ贈るものだから失敗出来
なかったということなのだろう。
そう思ったのだが、不二子は別のことを言った。
「……14歳のお嬢ちゃんのバースディ・プレゼントにしちゃ、ちょっと値が張り
すぎない?」
「違ぇねえ」
男は笑ったが、すぐにその笑いを収め、きょろきょろと辺りを見回した。
そして、少し声を潜めるように言った。
「だからアキラさまも怒ったのさ。そうでなきゃ、もっと楽な死に方だったろうに
な。今頃おまえは頭に一発喰らって、そのままアドリア海にドボンだよ」
「……」
「おまえにとっちゃ、そっちの方がずっと幸せだったろうな」
それを聞いて、不二子は口元を歪めて笑った。
一発で殺されればチャンスはないが、どんな扱いでも生き延びていれば逃げる機会も
あるだろう。
なければ作るのが彼女の流儀である。
「ねえ、私これからどうなるの?」
「さっきアキラさまがおっしゃっていただろう、『おもちゃ』だよ」
「だから、その意味がわからないって言ってるの」
不二子はなるべくゆっくり歩きながら言った。
彼女は、自分がたいへんな危地に陥っているという認識はあるが、絶望感はない。
これまでも、何度もこんな危機は乗り越えてきている。
だからこその情報収集なのだ。
こうして相手に喋らずとも良い話を喋らせ、出来うる限りの情報を得ておく。
ゆっくりした歩調で歩いているのもそのせいだし、なるべくフレンドリーな話し方
になるのもそうだ。
女の魅力も十分に活かしている。
モンロー・ウォークになっていたり、しゃべり方にも微妙に媚びを含んでいるから、
男なら余計に不二子の術中にはまる。
「……さっき、何人かのアンダーボスどもががっかりしたような顔してたの、わか
ったか?」
「ええ」
「やつらは『出荷』の方の関係者だ。『出荷』ってのは、文字通りの意味だ。おまえ
も裏の社会で生きている女なのだから、わかるだろう?」
「まあね。……つまり人身売買ね」
PMは商売で人の売り買いもしている。
子供を攫っての臓器売買もしているが、メインはやはり女である。
『出荷』というのは、美女を捕らえて調教し、売り捌くということを指している。
確かに、その関係者としたら、不二子を商品にしたいと思うのは当然だろう。
幾多の犯罪組織や警察を手玉に取っていた絶世の美女であれば、値は付け放題である。
裏社会で秘密裏に行われている女体オークションに於いては、もちろん美人や絶品の
肉体を持つ女に高値がつく。
だがそれ以上に、肩書きで売れることも多いのだ。
もともと、置き場に困るほどのカネを持っている連中である。
ただ美人であるだけでは満足しない。
徹底的に仕込まれているとか、あるいは普通では得られない女を望む傾向が強い。
言ってみれば、女優などよりはステータスのある女がいいわけだ。
王族や貴族に連なる美少女であるとか、美形の軍人や警官とか、その手の女性も人気
があるらしい。
それが、かの峰不二子であったならオークションは騒然となるだろう。
中東の、ある王族の王子が、不二子を一夜妻として5万ドルでオファーしたいという
話があったくらいだ。
当然、不二子は断ったらしいが、たった一晩の代金が5万ドルである。
それが売りに出されたとあれば記録的な価格になるであろうし、出荷したPMの名も
上がるというものだ。
では、なぜ敢えて自分を売らないのか、と不二子は考えた。
さっきの会議でも発言があったが、恐らく彼女のバックにルパンたちが控えていると
思っているのだろう。
確かに彼らと一緒に仕事することも多かったが、別に不二子はルパン一家ではない。
そういう意味では無関係なのだ。
だが、ルパンの性格上、不二子が囚われたとあらば救出に来るであろう。
仮に不二子が裏のオークションに出品されれば、当然、ルパンの耳にも届く。
彼自身は、あまりオークションに興味はないが、不二子が出れば話題騒然だ。
ルパンも知るところになろう。
PM──アキラは、それを恐れたからこそ、不二子を出荷することを見合わせたの
であろう。
不二子にしても、出荷された方が脱出のチャンスがあるのだ。
調教されたフリをして商品となり、出荷となれば、いやでもここを出ていける。
そうすればどこにでも脱出口はあるのだ。
「まあそうだ。だが、さきほどアキラさまはそれを否とされた。故に『おもちゃ』
だ」
「だからその……」
「『おもちゃ』ってのはな、文字通りアキラさまのおもちゃになるってことだよ」
「……」
アキラが男であるなら、それもわかる。
不二子の身体をおもちゃのように嬲り、犯し、いたぶるということだろう。
だがアキラは女──それも、年端も行かぬ少女に過ぎない。
それともSM趣味でもあって、不二子を緊縛したり鞭打ったりして愉しむとでも
いうのか。
そうだとしても、彼女はまだ若すぎる──というより幼いだろう。
あるいは。
不二子は想像してゾッとした。
アキラはとんでもない猟奇趣味の持ち主で、不二子を拷問責めにでもするのだろうか。
そんな不二子の顔色を見て、前の男が薄笑いして言った。
「青ざめる気持ちもわかるぜ。アキラさまのおもちゃになるくらいなら、売られた方
がマシってもんよ」
「……もしかしてあのお嬢ちゃん、おかしな趣味でも持ってるのかしら?」
「そいつは自分の身体で確かめな。まあ、いずれにしろ……」
「マックス」
それまで黙りこくっていた後ろの男が言った。
「あまり余計なことをべらべら喋るな」
「……わかったよ、俺はどうも口が軽すぎらあ」
男は、肩をすくめて答えた。
饒舌だった男の口が閉じられた時、不二子は地下3階の監禁部屋まで連れて来られ
ていた。
男がドアを開けると、どう先回りしたものか、すでにアキラとハイネが控えていた。
「遅かったわね、不二子お姉さま」
遅いのは当然で、不二子がそう仕向けたからである。
「お待たせ。……あら、あなた……」
不二子は、アキラに不審げな目を向けた。
椅子に腰掛けていると思っていたら、どうも車椅子のようである。
「お嬢ちゃん、あなた、脚が……」
「ええ。私、歩けないの」
アキラは、さして気にしている風でもなく答えた。
膝掛けの上に手を置いたまま続ける。
「交通事故でね。ざまあないわ、これでもけっこう運動神経には自信があったんだ
けど」
大けがだったらしい。
不治なのだろうか。
フリルのついたスカートの裾から覗く脚がやや細く見えるのは仕方がないだろう。
「脊椎をやられてるんだって。車椅子になっちゃった」
アキラの表情に悲壮感や寂寥感はない。
ケロッとした顔というよりは、無表情である。
不二子は少女を見る。
儚げな中にも、意志の強さを示すキリッとした雰囲気もある。
目は大きく、口元も上品に締まっている。
美少女と言えるだろうし、5年先10年先に美女となることが約束されているような
美貌だ。
長くて腰のない黒髪を三つ編みにして左右に二本、頭の後ろに垂らしている。
少女らしい、可愛らしい髪型ではあるが、表情がない。
冷たいというより、感情が喪失しているかのような顔である。
「お姉さま、何その目は」
アキラの声が尖った。
不二子の視線に、憐憫が含まれているのを感じ取ったからだ。
「歩けない私に同情しているつもりなの?」
「……」
「バカにしないで欲しいわ。たとえ歩けなくても、あなたなんかに負けないわ。
頭も、銃の腕だって……」
「……別にバカになんかしてないわ。ただ……」
「ただ、なによ」
「……何でもないわ」
ギリッと微かな音がした。
アキラが奥歯を噛みしめたのだ。
この美少女は、他人に笑われること、そして哀れみをかけられることを何よりも嫌う。
というより、脚のコンプレックスもあって、同情されることに対し、非常な屈辱を
感じるのである。
組織の長である誇りの裏返しで、歩くことも出来ない自分を嫌っているのだ。
幼少の頃から帝王学を仕込まれている彼女は、こうした屈辱感に我慢が出来ない。
癇癪持ちであるのはそのためだ。
ただアキラの場合、癇癪を爆発させて泣き喚いたり大暴れ出来ない。
その分、やることが過激で陰湿になってしまっている。
「……アキラさま」
後ろに控えていたハイネが、アキラの激情を抑えるようにその華奢な薄い肩に手を
置いた。
少女は、忠実な執事を軽く睨みつけ、わかったというように肩を揺すってその手を
払った。
アキラは落ち着きを取り戻し、不二子を見た。
「……不二子お姉さま、ご自分の運命はご理解いただけたかしら」
「わからないわ。さっきも、ここに連れてきたお兄さんに聞いてみたけど、教えて
くれなかったし」
「そう」
「売られることはなさそうだけど」
「そうね。お姉さんは私のおもちゃになるんだから、この船から出ることは出来な
いの、永遠に」
「……。おもちゃって言ったわよね。男が女をおもちゃにするのはわかるけど、
お嬢ちゃんがどうやって私をおもちゃにするわけ? あなたレズっ気があるの?」
「黙れ」
厳しい口調で不二子を遮ったのはハイネである。
執事は、少女の主人に代わって忠告した。
「何度言えばわかる、女。お呼びする時はアキラさまと言え」
「はいはい」
「『はい』は一度でよろしい。貴様はアキラさまのおもちゃになる。だが、アキラ
さま自体はおまえに何をするわけではない」
「へえ」
「アキラさまは」
ハイネはそこで言葉を切り、ほんの少しだけアキラを痛ましそうに見下ろした。
「アキラさまは、いささか変わった趣味をお持ちでな」
「変わった趣味? 女を虐めたいとか、覗きが趣味とか?」
「無礼者、余計なことを言うな。貴様をおもちゃにするのは男どもだ」
やっぱりね、と不二子は軽く息を吐いた。
美女が敵の組織に囚われたのだ。
殺されもしない以上、そうなることは覚悟していた。
かえってチャンスでもある。
不二子を犯す男どもを籠絡し、味方に付けることも可能だからだ。
そうならなかったとしても、不二子を殺すのではなくその肉体が目的であるならば、
いくらでもチャンスはあるというものだ。
過去もそうして危地を切り抜けてきた。
今度もそうするつもりだ。
不二子自身、セックスを武器に使うことにためらいはない。
有効なら何でも使うべきだというのが持論である。
まして彼女は、自分の美貌をほぼ正確に把握している。
自分の顔や肉体を見て男がどう思うか、ということを理解しているのだ。
男女を比すれば、男の方に筋力はある。
逆に男は女よりも性にだらしない。
それを利用しない手はないのだ。
もちろん不二子にもプライドはある。
むしろ普通の女性よりも、それはずっと誇り高い。
どこの誰とも知れない男に身体を許すなど屈辱である。
しかし、それも時と場合によりけりだ。肉体を差し出すことによって命が助かり、
逃げるチャンスが出来るのであれば躊躇はない。
峰不二子とは、そういう女である。
わからないのはアキラである。
不二子を犯すのが男なら、少女の方はどうするというのか。
「じゃあ、お嬢ちゃん……アキラさまはじゃあ何をするの? 私が犯されてるとこ
ろを見て、セックスのお勉強でもするのかしら?」
「うふふ、半分くらい当たってるかな」
「まあ、おしゃまさんだこと。でもね、そういうのはセックスとは言わないのよ。
ただのレイプだわ」
「同じじゃないの。男と女が……」
「違うの。まだ乙女のお嬢ちゃんにはわからないかも知れないけど」
「……」
アキラのこめかみに、また癇癪の筋が走る。
この美少女は、幼いことを指摘されるのをもっとも嫌う。
不二子は、またハイネに叱責されるか殴られるかと思いそっちを見ると、老執事は、
生意気な女を叩く代わりに男をふたり連れていた。
もはや覚悟を決めている不二子は言った。
「……へえ、そのお兄さんたちが私のお相手?」
長身のハイネに連れられて来たのは、20代前半と思しきふたりの青年である。
用意のいいことに、既に裸であった。
特別にマッチョということはないが、それなりに筋肉はついている。
自然に不二子の視線は、男どもの下半身に行く。
ブラブラしているそれは、もう勃起していた。
かの峰不二子を犯せるという期待だけでも立ってしまうのだろう。
「……」
不二子はちらをアキラを見た。
当主の少女は、ふたりの男が女を犯そうという光景を、ただ見つめていた。
肘置きに立てた右手で顎を支え、表情には薄笑いまで浮かべている。
なるほど、自分が出来ないからこうしてセックスを見て愉しむということらしい。
しかし、まだ14,5歳の少女の趣味としては、あまりに陰湿で背徳に過ぎる。
「あ……っ」
不二子の思考はそこでストップした。
ハイネの合図とともに、男たちが襲ってきたのだ。
手錠の鎖にロープを掛けられ、天井の滑車に引っ掛けられる。
ギリギリと持ち上げられ、不二子の両腕は頭の上で垂直に吊された。
少し余裕があり、僅かに肘が曲がる程度の遊びはある。
両脚首を留めていた革ベルトはそのままで、間のチェーンは外された。
その代わり、両脚を引きはだけられるように床のフックに固定された。
それでも不二子は平静を装って言った。
「あら、いきなり? 着たままじゃムリだと思うけど」
確かに、ラバーのライダースーツのままでは犯せまい。
その、身体のラインがくっきり浮き出た黒革の着衣を見ながらアキラは言った。
「そうね。あなたたち、破っちゃっていいわよ」
「自分で脱ぐわよ」
「けっこうよ。あたし、お姉さんの服が引き裂かれるの見たいから。ポーリー、
フィル。やりなさい」
声を掛けられたふたりの青年は、ハイネから大ぶりのナイフを受け取ると、それ
を不二子の身体に押しつけた。
不二子は身体を捻って嫌がる。
「やめなさい! これ高いのよ、あっ……」
「暴れるな。手元が狂って肌に傷が付くぞ」
そう言うと、ポーリーがナイフの刃先を襟元に差し入れた。
それもそうだと思った。
犯されるだけでなく、文字通り身体を傷物にされてはかなわない。
この状況下では凌辱は避けられないのだから、おとなしくした方が利口かも知れない。
ポーリーのナイフが、ざっくりとラバースーツを切り裂いていく。
首の下から腹の辺りまで一直線に切り開かれ、黒い革の下からは輝くような白い肌が
現れた。
男は慎重に刃を進め、股間まで真っ二つに切り離した。
車椅子の少女が感心したようにつぶやいた。
「あら、コルセットしてないのね」
引き締まった不二子のスタイルから見て、恐らくコルセットで胴を締めつけている
に違いないと思っていたのだ。
それがない。補正してなくて、ウェストにこれだけのくびれがあるとは思わなかった。
スーツの下は、直に下着であった。
シャツも着ていない。
黒いレースのボディスーツが眩しかった。
フィルとポーリーも、思わず見とれてしまうような肢体である。
男なら、このまま全裸にせずに犯すのも一興だと思うだろうが、アキラはそう思わ
なかったようだ。
不二子の裸身に圧倒されているふたりを、アキラが睨みつける。
ボスの視線に気づいたふたりは、慌てて不二子を剥きにかかった。
3分もしないうちに、美女の足元には、それまで着衣だった白と黒の布きれが散ら
ばっていた。
アキラは不二子の肢体に見惚れるように言った。
「すごい身体してるのね、お姉さん」
モデルではないから3サイズなどは公表されていないが、バストもヒップも90
センチ以下だと言っても、誰も信じないであろう。
ぐぐっとくびれたウェストとのギャップは30センチ以上あることは確実だ。
引き締まった足首や膝に対し、腿や腰回りは年齢相応にたくましかった。
いくらでも子供が産めそうな、豊満そのものの尻である。
乳房も素晴らしい。
見たところ、まったく鳩胸ではない。
胸筋でバストを嵩上げしているわけではないようだ。
それでいてこの大きさ。
何よりも形状が美しかった。
釣り鐘状ともお椀型とも言える豊潤なバスト。
普通、これだけ大きいと左右にだらしなく開いてしまったり、重力に逆らいきれず
垂れてしまうことが多いのだが、不二子の乳房にはそれがない。
乳輪部分が、綺麗にツンと上を向いている。男なら誰もが揉みしだき、しゃぶり
たがる乳房であった。
まさに、男に揉まれる──いや、揉ませるためにあるような乳房だった。
胸に限らず、不二子の肉体は、どこもかしこもむちむちと肉が乗っているのに、
それでいて引き締まっている。
ミロのヴィーナスなど霞んでしまいそうな、見事な肉体美だった。
なるほど、これだけの美貌と肉体で迫られでもしたら、よほどの冷血漢や朴念仁、
あるいはゲイでもない限り、不二子の魅力にやられてしまうのも無理はない。
アキラは感嘆したような声で言った。
「いったい、どれだけの男に抱かれたらこうなるの? 何回セックスしたらこんな
いやらしい身体になるのかしら?」
「お嬢ちゃんがこうなるには、まだ10年以上はかかるわよ」
アキラの口調に蔑むような色を感じ、不二子の返答にも棘が含まれてくる。
子供扱いされることを嫌う少女にそんなことを言えば逆効果だということはわかる。
しかし、年端もいかぬ少女に身体を観察され、嘲笑われる屈辱は耐え難かった。
そうでなくともプライドの高い女である。
少女は冷たく応じた。
「私はそんな淫らな身体にはならないわ。男なら誰でもくわえ込むような女にはね」
「誰が、男なら誰でもくわえ込むのよ! 私は……あっ、こら、やめなさい!」
不二子が全部反論する前に、フィルとポーリーが不二子の裸体にまとわりついた。
両腕だけでなく、腰、そして足首にもベルトが巻かれ、そこからチェーンでつなが
れた。ハイネがフックを操作し、不二子の身体を「く」の字に屈ませた。
それまで両手を吊られていた彼女は、前屈みの姿勢になった。
両手は前方に引き延ばされ、思い切り腰を後ろに突きだしたスタイルである。
アキラはせせら笑って言った。
「いい格好ね、お姉さま」
少女の車椅子は、不二子の右斜め前あたりにある。
いちばん不二子の痴態を見やすい場所に移ってきたらしい。
「こんなことして……、女のくせに!」
「あらら、お姉さまの方こそ、女のくせにそんな格好で恥ずかしくないの?」
「だったら解きなさいよ! あたしをおもちゃにしたら、後が……」
「怖い? うふふ、怖くなるのはお姉さまの方よ。その身体に、怖くなるほどの
快感をあげるから」
「……それはどうも。でも、このお兄さん方じゃ、ご希望に添えないかもね」
「フィル、ポーリー、聞いた? あんたたちお姉さまにバカにされてるわよ」
バカにされても仕方がないかも知れない。
彼らは、この悪女をどういたぶろうかという考えなど吹き飛んでしまい、そのグラ
マラスなボディと妖艶な美貌に圧倒されていたのである。
ふたりは、アキラに声を掛けられて、ようやく我を取り戻した。
焦るように顔で合図し合って、フィルがまず不二子の前に立った。
ぎんぎんのペニスが股間からいきり立っていた。
その顔には、犯す立場にあるはずの余裕などなく、早くこの女に出したいという
牡の欲望しかなかった。
不二子は余裕を持って対峙する。
「ああら、お兄さん。もうすっかりその気ね。若いだけあって元気そうじゃないの」
もうここまで来ると、不二子は土性骨が座っている。
強姦自体は避けられそうにないが、相手がこのクラスなら怪我もしないし、恥も
かかずに済みそうだ。
不二子は、年齢相応以上の性経験がある。
これだけ魅惑的なのだから当然だ。
純粋な愛欲的なこともあったが、そうでない場合も少なくない。
セックスを武器として使うこともある。
不二子は決して淫乱な方ではないが、有効だったり必要だったりする場合、身体を
使うことを躊躇わなかった。
その場合、相手など何でもいいのだ。
彼女にとっては仕事の一環である。
不二子にとってまったく趣味でない狒々親父や下劣な男が相手でも同じだ。
そんな輩に身体を自由にされることへの屈辱はあったが、それを補って余りある
ほどの報酬や効果があれば、必要に応じて使ってきた。
こうして敵の組織に囚われ、強引に肉体を奪われたことも何度かある。
だから、そういう意味でショックはない。
むしろ、男は女を抱く時、それが強引であれ合意であれ、必ず隙が出来る。
不二子はそれを狙ったのだ。
過去はすべて不二子の望む結末となっていた。
この場でもきっとそうなるだろう。
百戦錬磨の彼女にとって、こんな連中などは赤子の手を捻るようなものだ。
今に、あの生意気な少女が吠え面をかかせることになる。
それを楽しみに、不二子は覚悟を決めた。
「し、しろ!」
フィルは、上擦ったような声でそう命じた。
あの峰不二子を犯せるというのだ。
平常心でいられる方がおかしいだろう。
その心理が読めるのか、不二子はからかうような口調で応じた。
「……いいわよ。してあげる」
「お……おおっ……!」
フィルは思わず呻いた。不二子の唇が開き、ペニスを飲み込んだのである。
中はまるで膣のようだった。
熱い唾液に満ち、口腔粘膜がねっとりと肉棒を包んでいく。
不二子の咥内に入れた幸運なペニスは、すっかり彼女の唾液にまみれ、早くも先端
からはねっとりとした透明な粘液を分泌させていた。
それを舐め取るように、つるつるした亀頭部に舌を這わせている。
「くっ……そ、その調子、だ……おっ……」
男は呻いてそう言った。
これではどっちが責めているのかわからない。
不二子は妖しい笑顔を浮かべ、いったん口からペニスを出してから、舌を伸ばして
ちろちろとフィルのものに舌を這わせた。
無論、そうした仕草はフィルをより興奮させるためだ。
鼻にかかったような甘い吐息を交えているのもそうだろう。
さっさと射精させて終わりたいのである。
「んっ、んく、んくっ……ん、んう……ん……ちゅぶっ……んん……」
吸い込みながら、じゅるじゅると唾液の音をさせる。
カウパーを出し続ける鈴口をこそぐように、舌先で抉る。
張ったカリ首を唇でくわえ、顔を振って摩擦させる。
そのいずれもが、男性器をひどく刺激した。
「おお……」
「っん……んっぷ……ん、じゅっ……ん、んんんっ……じゅっ……」
唇を大きく開けて肉棒を頬張ると、舌先だけでなく、柔らかい舌の横や、ぬめぬめ
した裏側まで使って、ペニスを愛撫していく。
肉棒をくわえたまま顔を左右に振りたくり、舌を絡ませる。
かと思うと、前後に動かして、長い肉棒をゆっくりと出し入れさせた。
「ん、ちゅ……んん……んむっ……ん、ん、んちゅっ……むむ……」
不二子の念入りな愛撫に、フィルの肉棒は彼女の咥内でむくむくと膨れあがっていく。
不二子の肢体を見て勃起した時、もうこれ以上硬く大きくはならないと思っていたの
に、不二子のフェラでさらに膨張していった。
咥内に隙がなくなるほどに大きくなり、唇の端が裂けそうなくらいに太くなってきた。
不二子は、さすがに苦しげに涎を垂らしてきた。
息が思うようにできないのだ。
それでも、もう一息だと思ったのか、鼻で呼吸しながら、ペニスを唇で絞り、舌を
絡めていった。
不二子が軽く亀頭や裏筋に歯を立てた時、フィルは仰天した。
その刺激に肉棒は震え、今にも射精してしまいそうになったのだ。
彼はもう押さえきれなくなり、不二子の頭を持って自分から動き始めた。
「むぐっ……っっ……ん、ん、ん!」
不二子は顔をしかめつつ、上目遣いで男を見ている。
無理にするな、苦しいと言っているらしい。
だが、フィルにはそんな不二子の様子に気を配る余裕もない。
期待以上の女だった。
いつの間にか目的を見失い、この女に精を出すことしか頭になくなってくる。
不二子の頭を、髪を掴み、フィルは腰を打ち込みだした。
不二子は、なおも歯を使ってペニスをこそぐように愛撫した。
射精したくてしようがない肉棒は、びくびくと震えだした。
フィルは悲鳴とも呻きともつかぬ声を出し、顎を上げた。
「こっ、この女……!」
「ん、ん、ちゅ、ちゅぶっ……んむむ……むっ……」
カウパーがこぽこぽと溢れ、それを舌ですくい取ってやる。
不二子は舌先で鈴口を抉り、尿道口をほじるように突っついた。
フィルはたまらず悲鳴を上げ、大きく腰を使って大きなストロークで不二子の口を
犯していく。
カウパーと唾液のまじったものをじゅるじゅると啜る音と、鼻に抜ける不二子の
甘い吐息が響く。
フィルは不二子の髪を握り、渾身の力を込めて耐えている。
思わず腰が上がりそうになり、つま先立ちになることもしばしばだ。
不二子の咥内はまるで膣、いやそれ以上だった。
粘膜が膣内のように蠢くだけでなく、舌を使い、頬を窄め、喉まで使ってペニスを
愛撫していった。
膣ではそんな真似は出来ない。
「ん、んふっ……ん、ちゅっ……じゅっ、じゅる……ん、んむう……ちゅっ……」
何しろ舌の動きが凄い。
肉棒に絡ませでしごき、歯がカリや裏筋をこそぐ。
媚肉では絶対に不可能である。
過去にどれだけ仕込まれたのか、あるいは自ら覚えたのかはわからないが、不二子は
そのテクニックを惜しげもなく使い、フィルをぐんぐんと追い込んでいく。
「く……」
フィルは、下腹から滾るような射精感を覚えた。
大きく深呼吸してそれを押さえているのだが、目の前では不二子の裸身がうねって
いる。
綺麗に伸びた背中線が大きな腰にまで続いている。
そこには豊潤そのものの臀部が揺れていた。
性器からも目からも、たまらない刺激が飛び込んでくる。
「おっ……く……、ふ、不二子っ!」
出したがっているらしい。
無遠慮に腰を使い、不二子の口を責めている。
あまりに深くまで突いたため、先端が喉奥に辺り、不二子は顔をしかめている。
それでも我慢して、なおも舌と唇でフィルのペニスをしごいていった。
これ以上無理というところまで硬く大きく触れ上がった男性器を難なく飲み込み、
不二子も仕上げにかかった。
敏感な亀頭の先を、頬裏の粘膜と喉奥、そして舌で責め上げた。
舌の裏側で亀頭を押さえ込むように押しつぶすと、その柔らかく熱い感覚と、適度
な刺激にフィルは感極まった。
「くおっ……で、出るっ……出るぞ、の、飲め……飲めっ!」
それだけはお断りである。
不二子は、舌先で尿道口をぐりぐりと抉って仕上げると、そこが急に膨れあがって
きたのを感じ、すぐさま口から吐き出した。
「ぷあっ」
その瞬間、射精が始まった。
どびゅううっ。
どぶどぶどぶっ。
びゅくくっ。
びゅるるっ。
「あっ……!」
慌てて顔を背けたが、不二子の顔にもそれは引っかかった。
びゅるっ。
びゅびゅっ。
びゅくっ。
びゅくくっ。
フィルは右手でペニスを握り、盛ん揺すって射精を促した。
射精の発作は何度も続き、不二子の髪や顔を汚していく。
それでも、半分以上は彼女の身体を汚すことなく、床に虚しく落ちていた。
不二子が言った。
「あ〜あ、けっこう引っかけてくれちゃって。あたしにその汚いのをかけるなんて
とんでもないことなのよ」
フィルは腰から力が抜け、放心したように座り込んでいた。
まだ勃起したままのペニスは、なおも名残惜しそうにびゅくびゅくと小さく発作を
続けている。
「それに、案外大したことないわね。見かけ倒しかしら?」
髪や頬、唇の一部を白濁液で汚してはいたものの、不二子は蔑んだようにそう言った。
余裕綽々である。
その目はアキラを捉えている。
「……さすが不二子お姉さまね。でもまだ肝心なところが残ってるわよ。それを
やられても同じような口が利けるかしら。ポーリー!」
「は、はい」
「やって。不二子お姉さまがぐうの音も出せないくらいにね。あ、そうそう、ちゃんと
あたしに見えるようにやってよね」
そう言われて、ポーリーは不二子の後ろに回った。
位置関係としては、不二子の真正面にアキラがいる形になる。
そこから見る不二子の肢体も絶品だった。
正中線がすっきりと伸び、背中の窪みを綺麗に形作っている。
急角度で引き締まったウェストから、ぐんと張り出したヒップが妖艶で美しかった。
男はむしゃぶりつくように不二子の裸体にまとわりついた。
「あんっ……、そう慌てないの。あたしはこうして縛られてるんだから、逃げられ
やしないわよ」
極上の女体を目前にして焦り立つポーリーとは対照的に、不二子は落ち着き払って
いた。
こうしたことは慣れているし、この程度の男など、どれほどのこともないと思って
いるのだろう。
覆い被さるように背中から不二子を抱きしめたポーリーは、首筋に舌を這わせなが
ら、大きく突き出た乳房をぎゅうぎゅうと揉みしだいた。
不二子は思わず顔をしかめる。
「痛っ……、ちょっと強すぎるわよ、デリカシーないのね」
「う、うるさいっ」
不二子の抗議を無視して、ポーリーは力強く揉んだ。
指の隙間から零れた乳首が、大きな肉塊の上で揺れ動いている。
両手を通して感じられる乳房の感触は素晴らしかった。
マシュマロのように頼りない柔らかさではなく、ちゃんと弾力がある。
揉めば、その指をはじき返すかのようだ。
興奮したポーリーは、手に力を込め、乳房全体をぎゅっと絞るように揉み上げた。
「くっ……」
痛いようで、不二子は眉間を寄せて小さく呻いた。
これでは感じさせるどころではないようだ。
この時点で、もうアキラはあまり期待していない。
そんなことは知らず、男は乳房に愛撫にのめり込んでいる。
揉めば揉むほどに乳房は張り、一層に弾力を増していく。
ふたつの乳房をすくい上げ、寄せるように揉んでいく。
次第に乳首が尖ってきたが、これは快感のせいかどうかは微妙なところだろう。
不二子の白い乳房には、男の指の跡がうっすらと赤くついてきていた。
まるで反応してこない不二子に飽きてきたのか、アキラがけしかけた。
「いつまでおっぱい揉んでるのよ。さっさとぶち込んでみなさい」
「わ、わかりました」
ポーリーは、もう先端がぬめっているペニスを、不二子の臀部になすりつけてくる。
尻の谷間に先っぽを落とすと、両手で不二子の腰を掴み、ぐいと引き寄せた。
ポーリーのペニスが隠れてしまいそうな豊満な臀部は、誘うように蠢いている。
男はがちがちになった肉棒を指で摘んで膣にあてがうと、そのまま一気に突っ込んだ。
「んくっ……!」
さすがに不二子も呻いた。
乳房を揉んだだけでろくに前戯のないままにいきなり挿入してきたのだ。
(まったく……、女の扱い方も知らないみたいね。まあいいわ、これなら楽なもん
だわ)
それなりに太いものが、軋むように不二子の媚肉にねじり込まれていく。
そのきつさと快感に、不二子は身体をびくっと震わせた。
如何にこういう状況とはいえ、不二子も生身の女である。
されれば感じるのだ。
そうでなくとも感じやすい肉体だが、彼女は状況によってそれを制御できる。
自分が遊ぶ場合、あるいは危害を加えられる可能性のない場合などは、コントロール
を外して、心ゆくまでセックスを愉しむこともある。
逆に、犯された後に殺されそうだとか、相手がまるで好みでないとか、そういう気に
なれない時などは、理性でちゃんと調整できるのである。
不感症ではないから、愛撫されたり挿入されればそれなりに感じるが、我を忘れる
ほどに狂わされるようなことは滅多になかった。
相手の技術が高い場合などは警戒するが、どうにもならないと思った時は、リミッ
ターを外してしまい、思うさまに感じることもある。
そうした場合、不二子は喜悦にまみれて絶頂することになるが、それを見た男もまた
油断してしまう。
そこに隙が出来るのだ。
しかしながら今回の相手クラスでは、とてもそこまでは行くまい。
「っ……っ……ん……っ……」
「おうっ、おうっ、おうっ……」
ポーリーは腰を使って不二子の膣に突き入れ、抉る。
深くゆっくり突くほどの余裕もないのか、浅く引いてはすぐにまた強く押し込んだ。
不二子はそこから来る快感を軽く呻いて逃がしているのに対し、責めているはずの
ポーリーは大声で喚くように突いている。
さほど感じていないとはいえ、膣は正直だ。
内部を犯す肉棒を襞が包んできた。
突き込んでくるものを受け止め、抜く段になると引き留めるようにへばりつく。
愛液も少しずつ分泌してきたようだ。
「……」
この男は何なのだろうと不二子は思っていた。
セックス専用に飼っているにしては、あまりにだらしがない。
小手試しのつもりだろうか。
ポーリーは腰を突き上げながら、ボリューム満点の不二子の乳房を揉んでいる。
硬くなってきた乳首を指でこねつつ、乳房全体を大きく揉み込んだ。
もう不二子を責めているのか、自分がやりたいからやっているのかわからないようだ。
面倒くさくなった不二子は、自分から腰を使い出した。
突かれると腰を捩って襞による摩擦を強くする。
腰を振り、括約筋に力を入れてペニスを締め上げた。
急に肉棒が締め付けられ、男は驚いたように腰を捻った。
不二子が腰を動かし出したので、それに合わせるように抽送を激しくしていく。
(この辺で終わらせるかな)
不二子はそう思うと、肛門をきゅっと引き締めるようにして括約筋を絞った。
ぎりぎりっと音を立てるようにペニスを食い締めてきた膣の収縮に、男はもう辛抱
できずに漏らしてしまう。
「おっ、おっ……出る!」
びゅるるっ。
どびゅうっ。
びゅくくっ。
びゅるっ。
「あ、こら、中に出さないでよ、もう」
そう言いながらも、不二子はなおも腰を捩り、射精を促している。
さっさと出させて終わらせたいのだろう。
「おおおおっ」
ポーリーはわけのわからぬ叫び声を上げて、射精しながらも不二子の中を犯し続けた。
まだ勃起が解けていない。
硬いままのペニスが、再び媚肉の内部を抉り始めた。
「ふん。早漏なだけあって、回数は出来るのね」
「やかましい! く、くそ、こんなはずじゃ……」
胎内に出された精液の気色悪さにうんざりしながらも、不二子はポーリーに応えて
いく。
女と違って、男は出すものを出してしまえば、それ以上はできないのだ。
ポーリーの方は、何度でも出来ると思っていた。
見た目だけでなく、性器も素晴らしいこの女であれば、何度でも出来そうだ。
出してもいっこうに萎えないペニスに自信を持ちつつ、不二子の媚肉を貫いている。
激しく出し入れされる膣からは、ぼたぼたと精液が溢れてきていた。
不二子が腰を捩り、きゅっとアヌスを締めて膣を引き締めると、ポーリーはまた
情けない声を出して達してしまった。
「く、くそっ」
「あ、また中に出して! やめてよ、気持ち悪い」
「口の減らない女だ。見てろ、今度こそおまえを……」
「もういいわ」
アキラの声が掛かった。
ポーリーが唖然とした顔でボスの顔を見る。
「え、しかし、アキラさま……」
「やめて、って言ってるの。あんた、やっててわかんないの? あんたとそのお姉
さまとじゃ勝負にならないのよ」
「……」
「まったくバカバカしいったらないわ。どっちが責めてるのかわかんないんだもの。
見てて退屈なの」
「……」
「もっとお姉さまをよがり狂わせてくれなくっちゃ、あたしは合いの手を入れる気
にもならないわよ」
アキラがそうぼやくと、不二子は「あはは」と笑って言った。
「そうかもね。でもお嬢ちゃん、この程度のお兄さんじゃ、とてもあたしの相手には
ならないわ」
「そうみたい。ごめんね、つまんないことさせて」
「あら、案外素直なのね。じゃあ、これ解いてくれる?」
「勘違いしないで。こいつらがダメってだけなんだから」
アキラが冷たい視線で睨むと、ポーリーとフィルは、慌てて服を掴んで部屋から逃げ
出ていった。
「とっておきの男をあてがってあげるから、楽しみに待ってて」
「あら、そういうのがいるんなら、最初から連れてくればいいのに」
「ホントね。少しお姉さまを甘く見てたかな。ちょっと待っててね、準備してくるから」
「期待しないで待ってるわ」
アキラが手を挙げると、ハイネが音もなく回り込んで車椅子を押していく。
それを敬礼して番兵が見送る。
「あんたたち、しっかり見張るのよ。いいこと、このお姉さまには気を許しちゃだめ
よ。隙があれば、あんたたちなんか簡単に伸して逃げちゃうんだから」
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