響子が東京まで出てきたのは随分とひさしぶりだった。
タイから帰国し、夫の入院に付き添った時以来だ。
帰国してからというもの、旧友や一刻館関係者はもちろん、双方の両親とも会わな
かった。
たまに親から電話があるくらいである。
事件以来、何となく顔を合わせづらかったのだ。
別に瞬や響子が悪いわけではないのだが、あまり同情されるのもイヤだったし、
互いにそのことで気を使いあうのも疲れると思ったからだ。
瞬も同意見のようで、仕事とリハビリ以外は那須に引っ込んだままだった。

もうひとつ、裕作と禁断の関係を結んでしまったことが、彼女を後ろめたい思いに
させていた。
両親や一刻館の人々とは顔を合わせづらかったのである。
それが、こうして東京に出てくる気になったのは、夫の会社に赴くためである。
瞬は、三鷹グループの子会社の社長に収まっている。
子会社と言っても従業員300名を抱える中堅企業だ。

この日、瞬は病院で検査とリハビリがある。
月に一度、保険証の提出を求められるのだが、その保険証を忘れて行ったのである。
電話連絡をしようかとも思ったが、そのためだけに会社の人がわざわざ那須まで来て
くれるのは気が引けた。
仕事関係ならともかく、プライベートでの忘れ物まで面倒見てもらうのは申し訳なか
った。
人の良い響子ならではの気遣いだ。
それに、夫も「一度くらい会社を見に来い」と言っていたこともあったので、気晴
らしも兼ねてその気になったのだ。
事前に連絡してから行こうかとも思ったが、瞬が社用で出かけているかも知れない。
その邪魔をしてはならぬと思ったから、黙って出てきた。
もし社を出ていたとしても、その時は秘書なり総務の人なりに渡して頼んでおけば
いいことだ。
そう思って、割と気軽に出かけた。

受付で用件を述べると、響子を社長夫人と知って受付穣は驚いたようだったが、すぐ
に笑顔になり、自ら案内してくれた。
普通は総務課や秘書を通すのだろうが、響子が社長夫人ということでそのままフロア
まで連れて行ってくれた。
本来こうした行為は社則に反するのだろうが、社長の瞬自身フランクな性格だったか
ら、あまり気にしないだろうと思ったらしい。

4階建ての小さなビルだったが、自社ビルなのだから立派なものだ。
その最上階が役員室や社長室があるらしい。
受付穣はエレベータで4階まで連れて行き、社長室を指し示して持ち場へ帰って行った。
響子は彼女に会釈して礼を述べ、社長室に向かった。
ノックすると、思いも掛けず鋭い声で「誰だ!」と瞬の声が返ってきた。
彼とも思えぬ険のある声で、響子は少し驚いた。
気圧されたが、すぐに「響子です」と言った。
すると「響子か!?」と大層びっくりした声が返ってきて、「少し待っててくれ」
と言われた。
何のことかわからなかったが、言われた通りに待っていると、5分ほどして「入っ
てくれ」と来た。
再びノックして入室すると、機嫌の悪そうな顔の瞬と、困ったような貌をした女性
秘書がいた。

「何の用だ? わざわざ会社まで……」
「すみません……。お電話してから行こうと思ったのですが、もしいらっしゃらな
かったら、かえってご迷惑かと思いまして……」
「そんなことはいい。用件は何だ」
「これをお忘れになっていたので……」

そう言って響子は保険証を差し出した。夫は「ちっ」と小さく舌打ちしてから受け
取った。
小声で「こんなものどうでもいいのに」と言ったのを、妻は聞き逃さなかった。

何をそんなに慌てていたのかと不思議に思った響子は、夫や秘書を見て、何となく
察しがついた。
身だしなみにうるさい男なのに、車椅子に座ったスラックスが少し乱れている。
よく見ると、裾からワイシャツが少しはみ出しているのもわかった。
今度は秘書の方を見ると、彼女はすぐに響子から顔を逸らせた。
こっちもよく観察してみると、ブラウスの襟元や、緩めのネクタイがやはり少し
乱れている。

そんなふたりの様子を見て、響子は大体のことはわかった気がする。
恐らく不倫であろう。
いや不倫とまではいかないかも知れない。
多分、瞬はいつも家で響子にやらせているようなことを、さっきまでここで若い
女性秘書にさせていたのだろう。
そうであれば、夫のあの慌てようや秘書の気まずそうな顔にも納得が行く。
響子はすっと表情を消して言った。

「……どうやら余計なことだったようですね」
「……」
「お邪魔のようですから、私、帰ります」

そう言うと、夫は黙ったままだったが、秘書の方が言い訳するように言った。

「あの奥様、何を誤解されているかわかりませんけど……」
「誤解ですか? どう誤解していると思ったのです?」
「……」

響子はそこで不思議なほどにっこりと笑顔を浮かべて秘書に言った。

「お気になさらずに。私、何とも思っておりませんから。そうですね、あなた」
「……」

無言の夫や絶句する秘書に会釈してから、響子は部屋を出て行った。
それから、どうやって駅まで辿り着いたのか憶えていない。
気がつくと、自販機で切符を買い求めていた。
ホームで電車を待つ間、さっき見てしまったことを、自分なりに整理しようとして
いた。

あれは仕方がないことなのだ。
夫は機能回復のためにやっていることなのだ。
妻である響子だけではうまくいかなかったから、他の女性でも試しているのかも知れ
ない。
もちろん、あんなことは秘書の仕事とは言い難いし、ましてそれを会社でやって
いいわけがない。
そうも思う。

自分がヘタだからかも知れない、とも思ってみた。
結婚後、瞬たちに様々な性技を仕込まれはしたが、まだ日が浅い。
彼らは上達振りを褒めてくれたが、世辞もだいぶ混じっていたのだろう。
上手くないに違いない。

それに、夫が他の女性と淫らなことをしていたからと言って、それが何だというのだ。
タイでは、口どころかセックスそのものを奔放に愉しんでいた瞬だ。
ああしたことには、まったく抵抗感も違和感もないのかも知れない。
かくいう響子にしたところで、夫たちに説得され、万里邑に調教され、その道に引き
込まれたのだ。
夫公認とはいえ、他の男に身を任せ、セックスしていたではないか。

しかし、と響子は思う。
あの時と今では状況が一変している。
歓楽のタイから日本へ帰国し、響子にとっての日常に戻ったのだ。
瞬は勧めているが、響子は浮気も不倫もしていない。
奥村との行為が初めてだったのだ。
確かにひさびさのセックスで身体は満足したが、そんなことより大事なことがある
と思っていた。
夫への献身である。
身体が不自由になった彼を支えること。
そのためには、邪険にされても我慢した。
夫の方もつらいだろうと思ったからだ。

もちろん瞬が、響子以外にああしたことをやっているなどと思いもしなかった。
悲しかった。そうするならするで、一言響子に相談するなり打ち明けてくれるなり
してくれていれば、まだよかった。
だが、それもない。
奥村とのセックスを窃視していた夫。
響子なりに尽くしているつもりなのに邪険にしてくる夫。
この行き違いはどこから来るのか。

知らず知らずのうちに、響子の頬に涙が伝っていく。
ふと裕作のことが思い浮かぶ。
最初は、半ばこちらから誘ったようなものだった。
彼を見ているうちに、我慢しきれなくなっていたからだ。
その理由と瞬に対する失望は、同根のような気がしていた。

結局、裕作とは二度も関係してしまった。
二度目は裕作の方からの強姦に近かったが、それを受け入れたのは響子である。
どうしてもイヤならば、大暴れしてでも抵抗すればよかったはずだ。
そうまでされれば、裕作とて響子を殴り飛ばしてまで無理に犯そうとはしなかった
だろう。
涙に濡れた瞳で、じっと左手を見つめた。
薬指に嵌まったリングが、涙でぼやけている。

「響子さん……?」

その後ろから声を掛けてきた者がいる。
振り返ると、そこには頼りなげな笑顔を浮かべた五代裕作がいた。

───────────────

「んんっ……ふっ……あ、あむう……ん、んくっ……じゅっ……んんちゅっ……
むむ、んぐっ……」

音無──三鷹響子と五代裕作は、駅から程近い、とあるラブホテルの一室で、激しく
絡み合っていた。
裕作は、二時間の「休憩」とフロントに言ったのだが、響子が「泊まりで」と訂正
した。
驚く裕作の腕を掴み、響子は指定された部屋へと歩いて行った。
引き摺られるようについていった裕作は、この人妻は並々ならぬ決意でここへ来た
のだと覚った。
今日の響子に、ある種の迫力さえ感じて、裕作は黙って従った。
そして、部屋に入るなり、ものも言わずに抱き合ったのであった。
今は、互いに互いの性器を口唇で愛撫し合っている。
オーラルセックス、いわゆる「69」である。



「ん、んふっ……ぷあ……はあ、はあ……。あ、五代さん、その……」
「……な、何でしょう」
「その、き、気持ちいい、ですか……?」

響子は少し首を伸ばして、自分の腰の方に顔のある裕作を見て聞いた。
裕作は、響子の腰から顔を離し、少し動揺して響子を見た。
意外だったのだ。
響子の側から自分を誘ったこともそうだが、こうして積極的にセックスしていること
が信じられなかったのである。
何か響子にあったのか、あるいは吹っ切れたようにも見えた。裕作はぎこちなく肯いた。

「え、ええ、もちろん。気持ちいいですよ……」
「本当ですか? 私、こういうの、いつまで経ってもヘタだから……」
「そんなことありませんよ。本当に気持ちいいですから」
「そうですか」

響子はにっこり笑って、また行為に入っていった。
確かに、裕作はあれほど響子に惚れていたのだから、彼女が技巧的に優れていなく
とも、響子にフェラチオしてもらっているという事実だけで高揚してしまっただろう。
だが実際には響子のテクニックはそれなりに上手だった。
こずれと別れて以来、たまには風俗にも行くようになったから、その道のプロと比べ
れば、そこまではいかないだろう。
だが、一般女性としては上出来の部類だったし、何しろ一所懸命に愛撫しているところ
が良かった。
まさに「奉仕」してもらっている実感が湧いたのである。

嬉しそうな顔を見せてから、響子は目の前の裕作のものを再びくわえた。
舌でねっとりとなぶりつつ、肉棒全体を咥内に飲み込んで行く。
裕作の大きなものを全部口に入れるのは骨だったが、先が喉に当たるのも我慢して奥
まで導いた。
陰毛が鼻や顎に当たるこそばゆさを感じつつ、ペニスの根元を柔らかい唇で締め上げる。

「うっ……」

裕作は背筋がゾクゾクするような痺れを感じた。
舌がペニスを這う感覚、喉深くまでくわえこんだ感覚がわかる。
舌で唾液を塗りたくられる快感、喉の震えが直接亀頭部に伝わってくる快感に思わず
呻く。

「くっ……、響子さんっ……」
「んう、んううっ……ん、ん、じゅるっ……むむむ……はむうっ……」

唾液の水音を立てながら、ペニスが響子の口から抜け出してくる。
カリ部分まで来ると、そこで止めて唇を使って締めてきた。
さらに舌がちろちろと咥内で舐め上げる。

「ごっ、だいさんっ……んっ……ああっ……」

一方、裕作の顔は響子の股間に埋まって、媚肉とその周辺に舌を這わせていた。
その思いの籠もった舌が、敏感な肉芽や割れ目の中まで愛撫してくる。
それによる快感も大きかったが、それ以上に響子は恥ずかしかった。
自分が裕作のものを見ながらフェラチオするのだって恥ずかしかった。
ペニスを見ることが、何だか裕作の秘密を知ってしまったような、見てはいけない
ものを見てしまったような恥ずかしさがあった。
しかし、見られるのはそれ以上に恥ずかしかった。

今までのセックスで、奥村ら他の男にそうされる時だって羞恥心はあったが、今回の
裕作の時以上ではなかった。
よく知っている同士、しかも好き合った者同士なのに、どうしてこんなに恥ずかしい
のだろう。
いや、愛し合っているからこその羞恥心なのだった。

響子は顔を染めながら、その思いを振り切るように男根をしゃぶるのだが、裕作の
口唇がそれを邪魔する。
裕作の唇と舌は、まるで響子の媚肉に吸い寄せられるかの如く、膣を貪っていた。
快楽に耐え切れず、人妻はその愛撫に息遣いを荒げていった。

「んんっ、そ、そこっ! あっ……はああっ……」
「気持ちいいですか、響子さん」
「ええ……は、はいっ……あ、ううんっ……な、何だか身体の……奥からジンジン
してきます……あっ……」

響子ははっきりと悦楽を告げた。
それに勇気づけられた裕作は、さらに念入りに愛撫する。
口が媚肉を吸い上げる音が淫らに響き、舐める音まで立てた。
そのたびに響子は腰を跳ね、うねらせ、悩ましげに裸身をくねらせた。

「あ、いい……んんっ……あ、はあ、はあっ……いっ……」

響子はとろけそうなほどの甘い声で喘ぎ、ビクンビクンとその身を震わせた。
裕作が指を使って開いた割れ目からはねっとりと濃い蜜が垂れ、その頂点では薄紅に
染まったクリトリスが包皮から顔を出している。
舌先を硬く尖らせてクリトリスをくすぐり、頃がしていくと、愛液がどろりとあふれ
出てきた。
ツンと舌先でつっつくと、響子はひきつるような悲鳴を上げた。

「ひっ、だめっ……ああ……んむっ……」

フェラを中断せざるを得ないほどの快感に、響子は身を突っ張らせていた。
裕作は悶える腰を抑え、指で肉芽を摘み上げるとクリッと中身を完全に露出させた。
そこを、唾液をたっぷり乗せた舌先でつっつき、さらに口にくわえてしゃぶりあげる
と、響子はビクンッと大きく腰を跳ね上げた。

「やっ、はああっっ……!」

ガクガクッ全身を震わせてと腰が弾んだ。
浮いた腰がドッとベッドに落ち、響子の肢体から力が抜けた。

「……いったんですね」
「し、知りません……」

この期に及んで、まだ羞恥を持っている響子に、たまらない愛しさを覚える。
それでいて意地悪になってしまう。

「まだいってないなら、続けましょうか」
「え、いや、もう……ああっ……!」

裕作は指でこねくるだけでなく、舌で転がした。
いったばかりの響子は、またすぐに反応させられていく。
男の指や舌が蠢くたびに響子の喘ぎがこぼれ、息が詰まったように止まる。
もう腰は響子自身の意思とは関係なくうねり、跳ねた。
膣奥からはなおもとろとろと蜜があふれ出し、内部で分泌してくるのがわかるほどだ。

裕作が顔を離すと、膣口は小さく口を開けていた。
度重なる愛撫に耐え、挿入を待ちかねているのだ。
そこに指を入れた。
くちゅりとぬめった水音がして、難なく人差し指が入っていく。
指が入った分だけ、愛液が溢れてきた。

「あう!」

挿入された甘い刺激に響子は呻いた。
気が飛んでしまいそうな快感を必死に堪えて、響子は裕作への愛撫を再開する。
逆襲するのだ。

「んんっ、ぐうっ……!」

響子が突然、苦しげな呻き声を漏らした。
深く飲み込み過ぎて、喉奥に亀頭部が当たったようだ。

「す、すいません」

あまりの快感に、つい腰を使ってしまって謝る裕作を見もせず、人妻は夫以外の
男のペニスを口から離さない。
目から涙を滲ませ、何度か喉を鳴らしながらも、愛撫を続けていた。
多分、裕作の性器から漏れてくるカウパーが唾液と混じり、その濃い液体が喉に
絡んだということもあるのだろう。
いずれにしても、呼吸困難に陥りそうな状態なのに、響子は裕作のペニスをくわえ
続けていた。
苦しくなると、少し浅めにくわえて、広くなった咥内の粘膜を使って亀頭を愛撫
する。
頬裏の粘膜や舌を総動員して、愛しい男への奉仕を続行していく。
亀頭を唇付近まで持ってくると、尿道口を舌で割るようにこそぎつつ、カリ首を
唇で包み込んでいった。

「ん、んむ、んじゅっ……ん、んふ……んくうっ……ちゅるちゅるっ……ぷあ」

いったん口を離しても、呼吸を整えるとすぐにまた口に含んだ。
呼吸のために口を休ませている間でも、唾液で濡れた肉棒を両手の指でさすり、
しごくのを忘れない。

「うう……」

響子の甘手の心地よさにうっとりとする裕作の声を聞きながら、舌を伸ばして肉棒
を舐め始める。
陰嚢付近の根元から亀頭部の先まで、ねっとりと熱い舌が這っていく。
中間付近までペニスを抜くと、右手でしごきながら口唇で先端を愛撫していった。
裕作の男根は、己の出す先走りと響子の唾液の混合液にまみれている。
ぬるぬるしたペニスを愛しそうにしごきながら、響子が悪戯っぽく聞いた。

「五代さん、五代さんのここ、もうこんなですよ……。我慢できそうにないですか?」

これまでは裕作の方が響子を言葉で責めていたのに、今日はそれが逆転している。
苦笑のひとつでも浮かべようとしたが、響子のフェラの素晴らしさに痺れ切り、
そんな余裕もなくなっていた。
響子は裕作の返事も聞かず、また彼の肉棒を口にした。

「はんむっ……んん、ちゅっ……んむ、んくっ……くんっ……じゅぷっ……」

響子は、大きく反りかえり、今にも放出しそうなほどにびくびく痙攣している肉棒
を指で摘むと、舌で上から下まで舐め下げた。
そうしておいてから、また口に含んでいく。
舌を絡ませ、舐めしゃぶりながら、指でもしごいている。

響子の頬がぼおっとピンク色に染まってきている。
自らの行為に興奮しているのだろうし、裕作のクンニの効果も出ているだろう。
そしてペニスから漏れ出ているカウパーを飲み込んでいるうちに、どんどんと高ぶっ
てきたらしい。
ぷあっと口からペニスが飛び出てくる。
粘液の糸が響子の唇とペニスを繋いでいた。

「五代さん……。わ、私、もう……」
「響子さんっ!」

その言葉を待っていたかのように、裕作は響子を組み伏せた。
裕作も、そして響子も緊張していた。
こうして身を重ねるのは初めてではないにしろ、双方の完全なる同意の下ではなか
った。
そういう意味で、裕作にも響子にも「初めて結ばれる」という感覚があって、互い
にそう意識していた。
裕作の言葉もどもりがちだ。

「い、入れますよ」
「え、ええ……」

受ける響子も、何となく裕作をまともに見られず、少し顔を伏せていた。
その上に、左腕を乗せている。
顔を見られたくないらしい。
裕作は、あお向けに横たわっていた響子の胸にそっと手を置く。
ばら色に染まった裸身がぴくりと動いた。
重たげに少し潰れた乳房の頂点に、朱色の乳首が愛らしく立っている。
そこから目をずらすと、ふとあることに気づいた。
指輪がない。
顔を隠している左手の薬指にはまっているはずの、プラチナリングがないのだ。
その指には、それまではめていたらしい跡がうっすらと浮いていた。
響子は、それをわざわざ外してここへ来たのだ。
感激にも似た感情を抱き、裕作はがちがちになっていた身体から少し力を抜くこと
が出来た。
そして、これもがちがちだったペニスに手を添え、響子の媚肉にあてがう。

「んっ……」

そのまま秘裂を割り、ゆっくりと沈めていった。

「んんっ……あっ……」

濡れた肉をかき分けて挿入されてくる肉棒の重量感に、響子は唇を噛み締めて
堪えた。
その圧迫感で、身体の内部がこじ開けられるかのようのだ。
太い亀頭部を飲み込んだ時のきつさで少し悲鳴を上げた以外は、長い竿の部分を
ゆっくりと埋め込まれている間中、喘ぎ声を耐えていた。

「す……ごい……、中が……中が広がって……んっ……入って……きます……あ……」

肌に汗を浮かべながら、響子は呻いた。
太いものがゆっくりと奥の方まで入ってくる感覚に、例えようもない愉悦を感じ取っ
ていた。
裕作の大きなものを受け入れる息苦しさが満足感、充実感へと変わっていく。
その快感を振りほどくかのように、顔を振って黒髪を棚引かせる。
大きなものを何とかすべて自分の中に収めようと、響子の方からも腰を捩っている。
感じるのか苦しいのか、時々息を止めて堪え、すぐに「はあっ」と熱い息を吐く。
そのタイミングに合わせるように、裕作の方もずぶずぶとペニスを飲み込ませて
いった。

「くっ……んんっ……ふっかい、です……ああ……お腹の中まで来てる……お腹が
ズンて響く……ああ……」

裕作の肉棒がみっしりと詰まっていく媚肉は、今にも軋みそうなほどだ。
ねっとりした大量の愛液でいい加減柔軟になっているはずの膣だが、それでも窮屈で
きつくてたまらないらしい。
まるで童貞を失う時のような感激と、響子の処女を奪ったかのような感動で、自分でも
驚くくらい慎重に挿入していった裕作だったが、ついに奥底まで辿り着いた。
先が子宮口と思しき壁に当たった瞬間、響子はガクンと大きく仰け反った。

「うあっ……!」

ガクガクッと肢体が痙攣し、膣の中では肉襞が裕作の肉棒をびくびくと締め付けて
いた。
子宮の奥から響いてきたビリビリと痺れるような快感に、響子は入れられただけで
またいってしまった。
響子がいったらしいと知ると、裕作はつながったまま覆いかぶさって、その身体を
抱きしめた。

「また、いってくれたんですね」
「は……はい……。恥ずかしい……」
「そんなことないですよ。俺、嬉しいですから」
「五代さん……」

響子の瞳が潤み、その腕が裕作の背中に回る。
ふたりはごく自然に口付けを交わしていた。
唇同士が接触すると、僅かに口が開き、舌を軽く絡ませた。
すぐに裕作は口を離した。

「響子さんの、よく締まる……。全部、入ってますよ」

響子は恥ずかしげにコクンと頷いた。

「私にもわかります……。五代さんのが全部、私の中に……。すごいんです……、
中を全部拡げて……お、奥に当たってる……」

淫らなことを自ら口にしたことで、響子の官能がまた高ぶっていく。
膣奥深くまで入り込んだペニスをしっかり感じ取るように、腰をくねらせている。
具合のいい配置を選んでいるのかも知れない。
そうすることで、裕作の動きを求め、催促しているのだ。
収縮が肉棒を心地よく刺激し、裕作も腰を動かしていく。

「んんっ……あっ……、ううんっ……」

裕作は奥まで貫いたままで腰を少し捩り、捻った。
抜き差しまではしていない。
一度関係しているとはいえ、響子はまだ少し緊張が残っている。
それを慣らすように裕作は気を使っていた。
腰を捩り、膣内を拡げるように回転させる。
そのままぐっと押し込むように突くこともあるが、まだストロークはほとんどないに
等しい。
僅かな動きにも、響子の肉体はすぐに反応した。
裕作の腰が動くたびに小さく乳房を揺らしつつ、籠もったような喘ぎを出す。

「くっ……、うんっ……あ……はあっ……やっ……」

薄く開いた目が、自分を見下ろしている裕作に気づく。

「あっ、んまり……見ないで……あっ……」
「どうして?」
「だ、だって……、そんなにじっと、あっ……見られたら……んっ……は、恥ずか
しいわ……あっ……」
「ちっとも恥ずかしくなんかない。ほら、もっと顔を見せて」

裕作の視線に気づいて、両手を組んで顔を覆っていた響子だったが、それを強引に
剥ぎ取られた。
両腕を押さえつけられ、バラ色に染まった頬を見せて顔を伏せていた響子は、それ
でも喘ぐのをやめられない。
裕作も、羞恥に喘ぐ響子の悶えに合わせて、少しずつ腰の動きを大きくしていった。

「あっ……いっ……くっ……いっ、いい……あっ……」

たくましい肉棒を根元まで埋め込まれ、奥まで届かされている。
窮屈な膣道がみしみしと軋んでいるが、裕作はそれを広げようと揺さぶってきた。
先が子宮口を擦るように触れてくると、ビリッと鋭い電流が背筋を走る。

「うんっ! あっ……お、奥っ……に、当たってっ……ひっ……ああっ……」

短い律動で抜き差しされる膣から蜜が零れる。
抜かれる時に一緒に漏れて来る。
そして突かれる時もびゅっと溢れてきた。
徐々に柔らかくなってきた膣は、少し余裕を持って裕作のものをくわえている。
それでも裕作はまだ本格的には動かず、膣襞を擦り上げ、削ぎ取るように腰を回して
いた。

「ああ……広がっちゃう……」
「どこがですか?」
「そ、そんなこと……あう!」

肉棒に肉襞が絡みついてきたのを確認し、裕作はずぶっと鋭く奥まで貫いた。
突然の強い刺激に悲鳴を上げた響子だったが、腰は裕作に密着させたままだ。
裕作は奥まで味わってから、張ったエラを目一杯使って、膣襞をこそぎ取るように
引き抜く。

「んあっ! ……あうっ……ひぁっ……!」

いきなり激しくなった動きに着いて行けず、響子は大きく悶えた。

「いきなりそんなっ……五代さん、激しいっ……だめぇっ……!」

だめと言いつつも、裕作の攻撃に呼応して響子の腰も大胆に動いて行く。
裕作のものに馴染んできた媚肉は、ねっとりと肉棒に絡みついていく。
ずぶっと突かれると膣周辺の粘膜まで捲れ込んで引っ張り込まれる。
ずるっと引き抜かれると、今度は膣内部の襞がめくれ上がっていった。
それでも響子の腰は、裕作の腰に合わせて動く。
突き込まれると、あまり奥まで行くのが怖いかのように腰を引き、抜かれると「いや」
とばかりに腰を上げてついて行く。

「うあっ……ううんっ……いっ……いいっ……」

大きくなった動きに響子の肢体は揺さぶられ、突かれるごとに大きな乳房がゆさゆさ
と揺れる。
ペニスが一層窮屈となった。
襞が絡みつくというよりは、締め上げてくる感じだ。
またいきかけているらしい。
きゅっ、きゅっと収縮も始まった。
抜こうとすると引き止めるようにへばりついてくる襞を引き剥がすような激しいピス
トンを加えていく。
がしがしと腰同士がぶつかり、最奥に裕作のペニスがキスをする。

「やっ、やああっ……ひっ……だ、だめっ……あ、また……またいきそうっ……」

響子は絶頂が迫っていることを恥ずかしげもなく裕作に告げた。
その悩ましい美貌と妖しい締め付けに、思わず射精しそうになった裕作は、唇を噛んで
それを凌いだ。
揺れる豊潤な乳房を握り締めるように揉みつつ、なおも響子の膣を責めた。
ダメ押しを加えられ、人妻はひとたまりもなく気をやらされた。

「ひっ……ひぃっ……あ、あああっ……だめ、いく……い、いくううっっ……!」

激しく達した響子は、ガクンと大きく仰け反り、背中を反らせた。
身体からはがっくりと力が抜け、裕作を抱きしめていた腕もベッドに落ちる。
それでいて膣はまだ裕作のものを締め付けていた。
腰もくいくいと小刻みに動き、裕作の腰にくっついている。
まるで射精しなかったことを抗議しているかのようだ。
裕作は響子の顔にかかった髪を指で梳き上げながら聞いた。

「響子さん、またいったんですね」
「はい……。また、いってしまいました……。でも……」
「?」
「でも、あなたは……五代さんは、その、まだ……」

射精していないことを言っているようだ。
出していないということは、いってないということだ。

「……私がいけないんでしょうか」
「は?」
「五代さんは……あんまり気持ちよく……ないのかなって……」

響子は顔を赤らめて聞いた。
その表情がとても清らかで美しく思え、裕作はにっこり笑って答えた。

「そんなことありませんよ」
「……」
「俺、我慢するの大変なんですから」
「五代さん……」

響子は素直に、心の底から裕作が欲しいと思っていた。
夫の瞬が画策したのとは違う。
彼はただ家の世継ぎを作るために、響子に妊娠しろと命じた。
それはおかしいと響子は思っていた。
子供を作るかどうか、引いては性生活などは夫婦間の同意と同認識が必要不可欠な
はずだ。
なのに瞬はそれを響子に押し付けた。
考えてみればタイでもそうだったのだ。
響子の性癖、思いをほとんど無視して自分の欲求ばかりを命じてきた。
響子の心を無視して、その肉体を従属させた。
卑劣であり、屈辱的なことなのだ。
響子は流されるようにそれに従い、肉欲に溺れた。
醜いことだと思う余裕もなかった。瞬たちの行為は調教に近かったのだ。
飼育される側の思惑など関係なかった。

そして瞬が不能となってからも、響子に孕むことを指示した。
響子は、淫欲に溺れた時以外は、夫以外の男性と関係することすら躊躇していたの
に、それをよりにもよって妊娠しろと言う。
到底受け入れられることではなかった。
それでも無理強いされ、奥村に犯され、気をやらされた挙句、胎内に射精されて
しまった。
虚しさと情けなさしか残らなかった。

ところが裕作との行為ではそうした感情がなかった。
犯されている時でさえ、決定的な嫌悪感はなかった。
彼らとのセックスとは何かが違っていた。
そうしてやっと思い当たった。
子孫を残すためだけのセックスなど動物と変わらない。
もちろん人間だって生物だから、究極的な目的は子孫を作ることだろう。
とはいえ、それだけではないはずだ。
瞬たちの主張することで、たったひとつだけ正しいことがあるとすれば、セックス
は愛情表現でありコミュニケーションの一種だということだ。
であるならば、愛する者以外との行為は響子には考えられなくなっていた。
まして響子本人の意思や愛情はまったく無視され、夫以外の男と関係し、世継ぎを
作るためだけの交接など論外だった。
それはセックスではなく、単なる「交尾」に過ぎない。
響子はそう思った。

またふたりの顔が近づき、キスをした。
今度はさっきより口が開き、しっかりと舌を絡ませ合った。
響子はもっとそれを味わいたかったが、裕作の方が我慢できなかった。
もうペニスがびくびくと痙攣してきており、今にも爆発しそうなのだ。
背中に回っていた響子の腕を優しく振りほどくと、重ねていた身体を離す。
そうして両腕で響子の腰骨のあたりを掴むといちばん奥まで突き込んだ。
子宮まで届くと、先端でそこをグリグリと抉っていく。
強烈な快感に、人妻は美貌を苦悶させておののく。

「うんっ、うぐっ……あっ、ああっ……ひうっ……いいっ……」

涙を流してよがる響子を見ながら、裕作はなおも責める。
単調なピストンだけでなく、奥まで突っ込んだまま亀頭で響子の子宮口をなぞるよう
に擦る。
もう子宮付近は裕作の出すカウパーと響子が分泌する愛液でどろどろだ。
性的に燃え上がるところまで燃え上がった響子は、自分からも腰を揺すろうともがい
ている。

しかし腰は裕作ががっしりと掴んで突き込んでいた。
動けないのがもどかしいのか、響子の表情が苦悶に歪む。
胎内もぴくぴくと蠢動していて、ペニスを刺激していた。
快楽に溺れつつも、さらに大きな快感を望んでいるかのような響子に、裕作は腰が
軋むほどに激しく動かした。
もはや喘ぎと呻きくらいしか声にならず、まともに喋れないほどに響子は感じていた。
子宮口を強く刺激される行為が言葉にならぬほどの愉悦となり、神経が灼き切れそうだ。
男の繰り出す激しい突き込みに、泣き出しそうなよがり声を放った。

「あああ、いいっ……五代さんっ、いいですっ……くぅぅっ、いいっ……ああ、
それが気持ちよくて……ひぃっ……!」

こき使われた腰と両腕が疲労してくると、ようやく裕作の攻勢が収まる。
裕作が力を抜くと、響子の身体は「やっと動ける」とばかりに腰を揺すりだした。
男の腰が止まっても、今度は自分が腰を動かして押し付けてくる。
裕作が少し腰を動かし出すと、その律動に合わせて腰を揺り出す。

「ああっ、奥に……深いっ……深いです……いいっ……も、もっと深く来て……
あっ……」

身も世もなく乱れ出した響子を、裕作は半ば呆然とした思いで見ていた。
あの慎ましやかで淑やかな彼女にも、こんな面があったのだ。
裕作はふたつのことを感じていた。ひとつは、その響子の隠れた一面を引き出した
のは、紛れもなく自分であるという満足感。
もうひとつは、今までそれを知ることがなかったのは、自分自身の責任だったかも
知れないという悔い。
なぜもっと彼女に積極的に迫れなかったのだろう。
それを彼はいつも自分の優柔不断な性格や響子の勝気な性格のせいにして逃げてきた
のではあるまいか。
響子の身の上に起こったことや自分に降りかかった現実を不幸と言ってしまうのは
問題があるだろう。
だが、裕作がもう少し違った行動や思考をしていれば、少なくとも裕作や響子が苦し
んでいたことの半分以上はなかったのかも知れないのだ。
その頃の彼には、あらゆる意味で男としての自信に欠如していた。
皮肉にも、それが多少ついてきたのはこずえとの結婚以降だったのだ。
だが、もういい。今、こうして音無響子を抱いているのだ。
そしてそのことに裕作は何の後悔もしていない。
恐らくは響子も。

目の前の憧れの女性は、今も裕作の行為で女の本性をさらけ出していた。
深く浅く、激しく、緩くのリズムをつけて責める。
ペニスで最奥まで貫く。
かと思うと途中で止めて、そのまま腰を回転させて膣内の襞をこそげとる。
激しさや力強さだけではない、優しさやテクニックを駆使してのセックスに、ふたり
の結合部位はにちゃにちゃと粘った淫靡な男を響かせ、蜜は垂れる間もなく泡状と
なっていく。

「いいっ……五代さん、いいっ……五代さんのが奥まで……し、子宮まで来ちゃっ
てるっ……いっ……あああ……あ、あむっ」

喘ぐ口を塞がれ、響子は目を剥いた。
そこには裕作の温顔があった。
響子の方から彼の口に吸いついていく。

「んん……ちゅ……んむ……んっ……じゅっ……」

響子は人が変わったように積極的に舌を絡めてきた。
裕作もそれに応え、咥内に侵入してくる響子の舌を吸い上げつつ、そこに絡んだ甘い
唾液を啜る。
互いに舌を伸ばし合い、互いの口腔内を味わうと、そっと唇を離した。
裕作と目が合い、響子は少し恥ずかしそうに顔を逸らせた。
自分から口をつけ、裕作を吸ったことに今さらながら羞恥を覚えたのだろう。
そんな様子がたまらなく愛おしく、裕作は響子の顔を正面に向かせ、また口を合わ
せた。

「ん……んん……む……む、んじゅっ……ちゅううっ……ん、んふ……んむむ……」

裕作は響子の舌を優しく受け止めつつ、その唇を舌で愛撫する。
上唇や下唇の裏を舐めると、響子は驚いたようにピクンとしたが、すぐにその口腔
愛撫を受け入れ、快感としていく。
歯茎をひとつひとつ舐め上げられ、咥内粘膜をすべてこそげとられるほどに念入りな
舌技に、身体の芯から震える。

口唇愛撫に痺れ切り、力を抜いていた響子の舌を今度は激しく貪った。
その動きにはすぐについてきて、響子も応えるように強く裕作の舌を吸った。
激しく濃厚なキスの応酬に、響子の目もとろんとしてくる。
セックスも良いが、やはり女性はキスに弱いというのは本当らしい。

響子の動きが緩慢になったところで、裕作はその脚を抱えた。
さらに肩に担いで、そのままぐっと響子に身体ごと押し付けた。
響子の長い脚は、ちょうど膝のあたりが肩口に届いていた。
柔らかい肢体らしく、太腿が豊かに膨らんだ乳房を押しつぶしていた。

「ああ……」

少し苦しいのか、響子が呻いた。
きつい姿勢だから無理もないだろう。こ
んな体位にしたのは、こうすれば響子の膣がさらにきつくすぼまるだろうと思った
からだ。
もともと彼女の膣は処女のように窮屈だったが、裕作のものに馴染んできただけに
少し余裕が出来ている。
そこに、いやが上にもきつく締めてくる格好にしたのである。

「やっぱりきついな……」

当たり前の感想を述べてから、裕作はまた動き出した。
擦れるだけでなく、きつく絞り上げるような摩擦感を愉しみながら、ぐいぐいと腰を
打ち込んでいった。

「ああ、五代さん、きついっ……あうっ……」

響子もさすがにきついらしく、苦しそうな色をその美貌に浮かべる。
だが、裕作が乳房を巧みに愛撫したり、キスを交えるうちに、すぐに馴染んできた。
シーツを掴んでいた手が、いつしか裕作を抱え込むように彼の腰に回っている。

「あ、ああっ……あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あ、いいっ、あっ、あっ、
あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、ああっ……」

さっきまでとは異なり、小さいが素早い突き込みだ。
奥まで刺し貫かれる愉悦はないものの、カリで内部を激しく速く何度も擦られる
快感が凄まじかった。
鋭い痺れるような快美感の連続に、響子は裕作が突き込むごとに喘ぎ声を放っていた。

「やっ、はっ、はああっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あ、もう五代さん、
そ、そんなにされたら私っ、あ、ま、またあっ……!」

またいきそうになっているらしい。
裕作の方も、亀頭を響子の中で激しく擦られて、今にも射精しそうになっている。
そこを堪えて体勢を立て直し、真上に向いた響子の膣に突き刺すように深くまで打ち
込んだ。

「うああっ……!」

ついさっきまでされていた速いが浅いピストンとは一転し、子宮まで犯されそう
な勢いに響子は眼孔から目が零れそうなほどに見開いた。

「そ、そんなっ……深すぎますっ……!」

子宮が持ち上がるほどに突き上げ、とろけきった胎内の襞をカリで引っかき出す
ように肉棒を引き抜く。
そして響子がホッとする間もなく、また一気に最奥まで貫いた。

「うっああっ……凄いですっ……は、激しくて……こ、壊れるっ……壊れちゃいま
すっ……!」

響子は、悲鳴のようなよがり声を盛大に上げている。
溢れる喘ぎや嬌声を抑え切れず、咥内に溜まった唾液を飲み下す暇もない。
喘ぐそばから深くまで貫かれて嬌声を絞り出される。
唾液を飲み、息を吸おうとしても、またすぐに子宮まで抉られて大きく喘いだ。
口も閉じられず、唇の端からつぅっと透明な唾液が滴った。

「あ、ああ、いいっ……くううっ、ふ、深いっ……いいっ……」
「もっと深くしましょうか」
「そんな……こ、これ以上はもう……我慢できない……入らないです……あっ……」
「そんなことないですよ。少し頑張れば……」

そう言って裕作は少し表情を歪めた。
腰を捻り、捩って、密着しているはずの腰をなおも押し付けていく。
亀頭の連打で屈服しかけ、根負けした子宮か少しずつ口を開けかけている。
そこに射精寸前のペニスを捻じり込んだ。

「うああっ!? そ、そんなっ……!」

響子は今度こそ驚いた。
子宮まで犯される感覚に驚愕する。
裕作のペニスが少しずつ、だが確実に響子の子宮の中にまで潜り込んでいた。
身体の芯まで、女の秘密まで犯される。
わなわなと痙攣する肢体の奥から、信じられないほどの甘美で強烈な快感が突き抜
けた。
想像することすら出来なかった長大な突き込みに、響子は汗と長い黒髪を宙に飛び
散らせ、狂ったように身悶え、よがった。

「うくああっ……! ひっ、すごっ……深い、深すぎるっ……い、いちばん奥まで
五代さんのが来てますっ……子宮の中まで……いいいっ……」

子宮まで犯される壮絶な快楽で、響子の肉体は官能の炎で包まれた。
その熱さと凄まじさに人妻は悶え、苦悶した美貌を晒し、もどかしそうに腰を揺す
った。
響子の方も腰を激しく動かさずにはいられず、盛んに上になった裕作に向けて腰を
持ち上げていく。
鋭敏きわまる肢体の隅々にまで愉悦と歓喜の電流が回り、溢れるほどの蜜がふたり
の腰を濡らしていた。

「いいっ……ああ、もう良すぎておかしくなるっ……どうにかなっちゃいますっ……」
「くっ、お、俺もいいですよ……。こんないいのは初めてだ」
「んううっ……ああもう我慢出来ないっ……た、たまんない……あ、もう……もうっ
……!」
「いくんですね、響子さんっ」

響子は何も考えず、がくがくと何度も頷いた。

「い、いく……いきます……ま、またいきそうっ……すごいのが来るっ……!」
「い、いいんですね響子さんっ。な、中に出しても……」
「い、いいですっ。ああ、な、中に……中に出して!」

ようやく響子はそう言えた。
あの時も、本当はそう言いたかったのだ。

「だ、出して! 五代さん、来てっ……あなたのを私の中にください……ああっ……」

響子の絶頂が迫っているのは裕作にも、文字通り痛いほどわかっている。
ペニスの締め付けが凄いのだ。
根元は窄まる膣口できつく締められ、サオも内壁が収縮し、やんわりと締まる。
そして亀頭部は、これだけ別の生き物のように襞が射精を促すように絞ってきた。

「くっ」

裕作はもう堪え切れず、出来るだけ深くまで響子の膣を串刺しにした。

「だめえっ……い、いくっ……五代さん、私、いくっ……い、いきますっっ……!!」

両者の腰が激しくぶち当たり、恥骨が軋む。
その瞬間、裕作は響子の腰を逃がさないように掴み、一度腰を引いた後、開いた
子宮口に亀頭をねじ込んで一気に射精した。

どぱっっ。
どっぴゅうううっ。
どびゅるるっ。
どぶどぶどぶっ。
どぷぷっ。

「んあああっ……で、出てるっ……お、奥に当たってる……ああ、いく……出されて
またいっちゃう……ううむっ、いくっ!」

濃い精液をもろに子宮内に浴びて、響子はぶるぶると痙攣した。
いつの間にか両手は裕作をしっかりと抱き締め、両足はその腰に絡み突いている。
太腿や二の腕には鳥肌すら立っており、その快感の激しさを物語っていた。
両足の爪先がぐっと反りかえってびくびくと痙攣していた。

「くっ……まだ出る!」

膣襞どころか、子宮口までが中に入り込んだ亀頭部を締め付けていた。
その収縮に合わせて肉棒も射精の発作が続いている。
ビクンと胎内で跳ね上がりつつ、精液を噴き上げた。

びゅるるっ。
びゅくっ。
びゅくんっ。
びゅるるっ。

「あっ……あ、まだ……まだ出てます……すごい……お、お腹の中にいっぱい出て
……流れ込んでくる……ああ、いい……あ、いく……」

心地よい締め付けの快感で痙攣しながら、裕作のペニスはびゅくびゅくと射精し、
響子の子宮を子種で犯していく。

びゅっ。
びゅびゅっ。
びゅくんっ。

限りないほどに射精され、響子はそのたくましさと勢いに恍惚となっていく。
響子は、裕作を子宮で直接感じ取っていた。

「すごいです……ああ、まだ出るの? ……ああ、いい……あ、出てる……」

裕作は精液の最後の一滴まで響子の子宮に注ぎ込むと、ようやく腰を止めた。
まだ内部に入りっぱなしにペニスは、響子の媚肉がヒクヒクと震えるように締めて
いた。
長い射精を終えて、裕作は力を抜いた。
なのに響子の腕と脚は、しっかりと裕作を絡めとっている。

「ふう……。全部……、出ましたよ、響子さん。もう俺の中は空っぽだ」
「すごかった……です……。五代さんのでお腹の奥までいっぱい……。溢れてしまい
そうです……。だから……」
「?」

響子は裕作の顔を両手で挟んで、にっこりと微笑んだ。

「だから、まだ抜かないでください……」

情事の余韻に浸る間もなく、ふたりの裸身はまた絡み合っていった。

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翌日、延長料金を支払いに行った以外、ふたりは寝る間も惜しんで互いの身体と
気持ちを確かめ合っていた。
何度抱き合い、何度絶頂に達し、何度射精したのかも憶えていない。
満足しきってすべてが終わった時、もう周囲の景色は夕方の喧騒さに巻き込まれて
いた。
仰向けに寝そべって並び、その風景を見下ろしていたふたりは、どちらともなく
微笑み合う。
人妻の身でありながら、言ってみれば「昔の男」と関係し、何度もその子宮に
子種を受けた。
その意味がふたりにわからないはずもない。
だが、少しの後悔も罪悪感もなかった。

裕作がもう一度延長料金の支払いと、仕事先への連絡をしに行った後、響子もバッグ
をまさぐって中から一通の封筒を取り出した。
以前、夫の瞬から渡され、「いつでも使え」と言われていたものだ。
ざっと眺めてからそこに必要事項を書き込んだ。
そして封をしようと思った時、あることに気づいてまたバッグの中を探した。
出てきたのはプラチナのリングだった。
それを少しだけ見つめて、響子は封筒の中に入れてから封を糊付けした。
そこに裕作が戻ってきた。

「何です、それ?」
「何でもありません」

響子はそう言って微笑むと、シーツを身体に巻いた。



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