桔梗は、お凛の身代わりとなり、吉原の遊廓・萩原屋に潜入することに成功した。
しかしそこで待ちかまえていた萩原屋の若旦那・仙蔵に散々犯される羽目になった。
それも、ただ凌辱されただけでなく、いいように弄ばされ、何度も絶頂まで導かれた。

桔梗にとっては思いもよらないことだった。
もともと、目的のためであれば男に肌を許すことは吝かではない女である。
だが、その場合でも主導権を執るのはあくまで桔梗であり、男を高ぶらせていかせる。
その上で目的を果たすのだ。
桔梗が溺れるようなことはなかった。

それが今回は、仙蔵に貫かれ、その愛撫に戸惑い、しまいには気をやってしまった。
挙げ句、肛門まで犯されたのである。

そして、半ば失神に近い状態で萩原屋を連れ出された桔梗はUFOの中にいた。
お凛を攫うつもりだった仙蔵は、桔梗の肉体がすっかり気に入り、彼女を拐かしたのだ。

桔梗が運び込まれたのはさほど広くない部屋で、壁も床も天井もつるりとした無機質なもの
だった。
殺風景そのもので、部屋の中央に3メートル四方のベッドらしきものがあるだけだ。
藍が監禁されている部屋とほぼ同じレイアウトだ。
実際、彼女は隣の部屋で囚われ、嬲られていたのだが、桔梗に知り得ようもなかった。

萩原屋だけでなく、ここへ連れ込まれてからも、もう何度犯されたことだろう。
桔梗は、その記憶もそぞろになるほどの凌辱地獄を味わっていた。
鬼道衆の中でも指折りの腕利きであり、男のあしらいにも長けていたはずの妖女は、繰り返し
繰り返し男の精を浴び続けた。

もうほとんど抵抗を見せなくなっていたが、その腕を後ろに括られていた。
胸縄も掛けられ、大きな乳房がさらに張り詰めている。
仰向けに寝かされていたから、自分の背に潰されて腕が痛いはずだが、なぜか痛みはない。
すべてそのベッドに衝撃が吸い取られているようだった。

どういう物質なのか桔梗には想像もつかなかったが、盛んに溢れ出る愛液や、仙蔵の出す精液が
その上に零れても、いつのまにか吸収されてしまっている。
乱暴に扱われ、アクロバティックな体位で犯されても、その無理な姿勢が身体に堪えない。
不思議な弾力のある材質のようだった。

「は……、ああっ……」

今度は大股を開かされ、その中に男を招き入れる格好で犯されていた。
仙蔵は盛んに腰を使って結合を深めていた。
大きな前後運動に、桔梗を喉がひきつれるような悲鳴を上げた。

一方の責める仙蔵も、桔梗の持ち物に舌を巻く思いだった。
あれだけ何度も貫いてやったというのに、このきつさ、窮屈さはどうだ。
実際、桔梗を連れ込んでからというもの、仙蔵は他の女は放って置いて責め抜いている。

達吉に聞いたところだと、あの藍という女も極上らしい。
生娘だと知って達吉に譲ったが、そろそろ抱いてもいいだろう。
仙蔵は、処女よりも練れた女の方が好きだったから、達吉がいい加減可愛がったところで藍を
犯そうと思っていたのである。

桔梗の媚肉は締めつけがきついのに襞の肌触りがひどく柔らかい。
仙蔵ですら、つい快美の声を洩らしそうになるくらいだ。
そこを堪えて何度も律動してやると、桔梗の方が堪らなくなって喘いでくる。

「あ……ああ……あっ」

ぐいぐいとねじ込まれ、根元まで押し込まれると桔梗の抗いが急に弱まってくる。
そして子宮口に先端が達すると、ぐんっと仰け反って反応した。
桔梗は、その痺れるような快感に気がおかしくなりそうになる。

(こ、この男のは……、いったいどうなってんだい)

桔梗は仙蔵の男根に身震いがするほどだった。
それは、そのたくましさや、何度射精しても硬いままのことではない。
何度となく犯され、限りなく貫かれているというのに、膣が一向に仙蔵の男根に慣れて
こないのだ。

こんなことはない。
いかに巨根でも、こう何度も犯されていれば、そのうち慣れてくるものである。
なのにこの男のものは、何回されても、そのたびに新鮮な大きさを感じてしまうのだ。
慣れによる感覚の麻痺が通用しない。
何度貫かれても新たな快楽を得てしまうのである。

「あああ……あっ……うあっ……んんあっ……」

桔梗の声に熱と甘さが混じってくる。
意識が仙蔵の肉棒に飛んでいるのだ。
豊満な肢体がとろけそうになっている。
視線がねっとりとしたものに変化していき、脚を押さえている必要もなくなってきていた。
男が抜き差しすると、媚肉がめくれ上がり、まためくれ込まれる。
きつくて仕方がないのだが、辛うじて桔梗が分泌する蜜で緩和されていた。

「んっ、はっ……あ、あ……だ、だめ、太い……あううっ……」

桔梗は当然知りもしなかったが、仙蔵たち−つまり、彼ら異星人−は、自在にペニスのサイズを
変更出来るらしい。
生命工学、遺伝子工学を濫用した彼らは、自らの意志で性器の大きさまで自由に出来たのだ。
だから桔梗が、何度犯されても媚肉をめいっぱい拡げられているような感覚に責め苛まれたのは
当たり前で、仙蔵は犯すたびに少しずつ自分のペニスの太さや長さを伸ばしていたのである。
それでもって自分の快感を増し、桔梗がその性器に溺れるように持っていったのだ。
言ってみれば、付け替え可能の生体張り型を着けているようなもので、これで犯される女は堪った
ものではないだろう。

仙蔵は、悶える美女にのしかかり、腰を密着させてぐりぐりと押し込んだ。
先端が届いた子宮をこぞぎとられるような感触に、桔梗は唇を噛んで甘声を出すことを我慢する。
男にとって、気の強い美女が押し寄せる快楽に堪え忍ぶ表情ほどそそるものはない。
仙蔵は、桔梗の乱れた髪をかき上げて、その美貌を愉しんだ。
そして縄に厳しく緊縛された白い乳房をぎゅうぎゅうと揉み込み始める。

「うっ……あっ……いやあ……ああっ……」

乳房全体がほんのり紅く色づき、乳首がピンと屹立するまで乳を揉みくちゃにすると、今度は
そこを思い切り口で吸い上げて、桔梗から甲高い悲鳴を絞り出す。
たっぷりと胸肉を愉しんでから、おもむろに律動を開始した。

「ああっ、やめっ……あっ…ううっ…んんっ…あっ…ひっ…うあっ…」

速く短いストロークでずんずん突き込んだかと思うと、今度は長い肉棒をいっぱいに使って距離
のある律動をする。
そうして桔梗の甘蜜を充分に溢れさせ、次は円を描きだした。
右回り、左回りを一定のタイミングで繰り返し、ぐちょぐちょ、ぬちゃぬちゃと淫靡な水音で
立てた。
妖女の膣は、そのたびに太い魔羅をくわえこまされたまま前後左右に拡げられ、赤く擦り切れ
そうになる。
実際、愛液がなければ爛れてしまいそうなくらいに激しい攻撃を受け続けた。

「ああ、あああ、あ……」

その熟れきった身体、成熟し尽くした性の官能は、桔梗を置き去りにしてふらふらと走り出す。
心では抑制の利かないところまで到達しそうな悦楽に、桔梗は腰の震えが止まらなかった。

それにしてもおかしい。
どうしてこんなに「いい」のだろうか。
たかが人間のまぐわいに、ここまで溺れる自分が不思議でしようがなかった。
仙蔵たちが異星人であることを彼女は知らない。
もっとも、教えられていてもよく理解できなかっただろう。
それでも彼女にわかるのは、この男は自分に何かを注ぎ込んできているということだった。

「あ、あんた……あっ……な、なんか変なこと……うあっ……してんじゃないだろうね……
ううっ……」
「変?」

腰を突き込みながら男が訊いた。

「だ、だって、あんたのは……あっ……なんか、おかし、ああっ……」

仙蔵は「ほう」と感心したような表情を浮かべた。
それでも腰の律動は緩めない。

「これが何かわかるのか。おまえ、やはりただの女ではないな」

彼らは、その手指や性器から知覚を鋭敏化させるホルモンを出すことが出来るのだ。
快感中枢を刺激し、脳内麻薬を抽出しやすくするのである。
考えてみれば、彼らほどセックスが好きな種族が異性を絶滅させてしまったことは不可解だが、
いくらでも代用は利くと思っていたのだろう。
その手段のひとつが同性愛で、その際の小道具としてこの手法、つまり性感上昇ホルモン抽出を
考案したのである。

確かにそれを用いれば、同性間の性交でもある程度の快楽は得られたが、それでも異性を欲する
という本能的なものまで滅することは適わなかった。
大抵の者はそれで満足していたが、どうしても異性と性交したいという欲求を持つ者もいて、彼らに
提供する異性を他星系から狩り出していたのが仙蔵たちというわけである。

言ってみれば、彼らはアダルトショップの業者であり、目をつけられた星の女たちは文字通りの
ダッチワイフや牝奴隷ということなのだ。
仙蔵は、女を感じさせるメカニズムだけを桔梗に説明した。

「つ、つまり、ああっ……び、媚薬ってことかい……うっ……」
「媚薬か。少し違うが、まあ効果は似たようなものだ」

それでも桔梗には信じられなかった。
彼女に、その手のクスリはほとんど無効だったのだ。

この時代の日本にも、女悦催快粉だの、緑鴬膏だの、快楽嬉契玉だのと、聞くからに怪しげな媚薬
もどきはいくつもあったが、ほとんどは紛い物だ。
原材料も丁子、竜骨、山椒、肉桂、人参、麝香などならともかく、阿片だトリカブトだなんてもの
だと、逆に人体に害がありそうだ。
いずれにせよ、効果があるのかないのかわからないような媚薬など、この半妖女には効きようがない。

なのに、仙蔵の身体から出てくると思われるそれはモロに効いている。
手で肌をまさぐられ、乳を揉まれ、肉棒で膣奥を突かれるごとに、桔梗は泣き出したくなるほどの
快感を得ていた。
疼きっぱなしの秘肉に桔梗は戦慄する。

(あ、ああ……だめ……ま、また、いきそうだよ……)

拒絶するという意志はどこかに消し飛んで、今では盛んにその細腰を振りたくって、硬い肉棒を
淫らなほどにくわえ込んでいた。

「あ、ああ……ううんっ……あ、い……あ、もうっ……」
「いくか、桔梗」
「やっ……ああっ……」

自ら激しく腰を打ち振り、四つん這いにされた腕がガクガクと震えている。
見ると、二の腕には細かい鳥肌が立っていた。

「それ、いくがいい」
「いやあっ……あ、あ、ああっ……あ、ううんっっ!」

いく瞬間、何とか唇を噛みしばり、声を出すことは防げたが、身体中の肉が痙攣し、彼女が絶頂
に到達したのははっきりとわかった。
きゅうきゅうと断続的に締まる膣の痙攣が収まると、仙蔵はようやく男根を肉壷から抜いた。
まだ射精していないだけに、その硬さや大きさは少しも損なわれていない。
上方四十五度の角度でピンと天井を向いているそれには、ねっとりとした桔梗の愛蜜がまとわり
ついている。

「ううっ」

半分悶絶したような桔梗の髪を掴んで振り向かせた。
そして、今度は自分が仰向けに寝ると、ムリヤリ妖女をその上に乗せてしまう。
ちょうど仙蔵の腰の上に跨る形になった桔梗は、それでもむずかる素振りを見せたが、男は自分
の肉棒を握って有無を言わせず貫いた。

「あ、ううんっ」

兜のようなカリが柔らかい媚肉を引き裂くように膣へ入り込むと、桔梗は大きく張った乳房を
ぶるぶると震わせるようにして身悶えた。
まだジンジンと疼いている膣いっぱいに剛直を突き刺された桔梗は、たまらず喜悦の声を上げた。

「んああっ……だ、だめ、深いっ……ああっ……」

だめと口にしているのに、自分から腰を上下させて、胎内に収まった肉棒の熱さと大きさを
万遍なく味わった。
抜き差しするごとに、ずるずると音がするようだ。
太いものが入り込んで膣をいっぱいにされる苦痛と快楽。
抜かれる時の喪失感と、カリが襞を抉り込む強烈な快感。
もはや恥も外聞もなく、桔梗は大きく口を開けてよがり、上体をのけぞらせて喘いだ。

「くうっ……あ、あう、いい……」
「やっと「いい」と口にしたな。そんなにいいか」
「ああ、いいっ……ど、どうにかなっちまうよっ……」

普段でも、濡れているような瞳とたっぷりとした肉体でその妖艶さを誇っている美女が、
恍惚とした淫靡な表情で喘ぎ続けている。
見ているだけで自慰したくなるほどだ。

甘美というにはあまりに強烈な陶酔感に、桔梗の腰のリズムは上がる一方だ。
解かれた髪が背中で舞い踊り、柔らかく重たげなふたつの肉の球が胸でたぷたぷと飛び跳ねる。
その動きに魅せられたのか、仙蔵が乳房に手を伸ばす。

「んんっ……いいっ……き、気持ちいいよっ……おっぱい、いいっ……」

その重さを確かめるように下から揉み上げていると、頂点の乳首がびくびく蠢いているように
見えた。
そこを指で摘むと、桔梗は甲高い悲鳴を上げて仰け反った。
充血しきった乳首は、触れただけで破裂しそうなほどに腫れ上がっていた。

「はあっ……く、いいっ……あ、い、いきたい……いかせとくれよ……あっ……」

信じがたいことに、桔梗が自ら「いきたい」と言った。
気をやることは完全にコントロール出来ると思っていたし、まして男にムリヤリ犯されていく
ことなどなかった。
なのに、これほどひどい強姦を受けて「いきたい」と口走ったのだ。

その欲求が身体の動きにも現れていた。
最初は単純な上下運動だけだったのに、急に腰を押しつけたままくいくいとねじるような動きを
見せていた。
男根を刺激し、射精を促しているのだ。
肉襞の収縮を大きく強くして、締めつける力を上げている。

「そうか、それほどいきたいか。ならばいかせてやろう」

仙蔵はそう言うと、桔梗のきゅっと締まった腰を両手でがっしり掴んだ。
左右にこねこねと動き回る桔梗の腰の動きに反して、ぐいっと思い切り腰を突き上げてやる。
きつい締めつけをしている襞をこそぎ、一気に最奥まで届かせた。

「うああっ……いっ、いいっ……」

子宮にまで届かされた肉棒の刺激で、女は絶叫するようなよがり声を出した。
仙蔵は両手で抱え込んだ腰に自分の腰を思い切りぶつけるかのような大きな律動をした。
そのたびに締まった膣襞がムリヤリこじ開けられ、子宮口が亀頭部に削り取られる。

「ひぃぃぃ……」
「いけ。遠慮するな」
「はっ、ああ、いく……い、いっちまうっ……」

突然、桔梗の全身が瘧に罹ったに震え、首が折れそうになるくらいに後ろへ仰け反った。
仙蔵の男根をくわえ込んだ膣も、精一杯の締めつけで絞り上げた。

「あああ……ま、また……」

桔梗は激しい自己嫌悪と、虚ろになるほどの凄まじい快楽の間で彷徨っている。
またしても恥ずかしいほどに激しく昇り詰めてしまった。

(ああ、くやしい……。こんな男に何度もいかされ、それを見られるなんて……)

そうは思っても、桔梗の肉欲が満足しきっている。
これほどのセックスをされたのは生まれて初めてだったからだ。
にも関わらず、まだ身体の芯が熱く疼いている。
もう心も肉体もクタクタになるほど犯され抜いたのに、まだ肉が性の悦びを欲している
感じなのだ。
それを見透かしたかのように仙蔵が言った。

「だいぶまいったようだな、女。だが、まだ物足りぬだろう」
「……」
「男の精を受けてないからだろう。おまえの淫らな身体は、精液を思う存分飲み干さぬと満足
出来ぬのだ」

桔梗はハッとした。
そうかも知れない。
だがここで仙蔵の精をたっぷり受けてしまえば、本当に彼の性奴になりかねない。
何とか逃げ出そうとするものの、身体は一歩も動かなかった。

「んっ、はあああっ……」

仙蔵は上に桔梗を乗せたままむくりと半身を起こした。
当然、胎内に入りっぱなしの大きな男根が動き、その襞を擦り上げることになる。
突然の刺激に、桔梗は完全に覚醒し呻いた。
女と向かい合わせになった男は、そのまま腰を器用に使って責め上げた。

「それ、もっといけ。今度は出してやろう」
「いや……もう、や……あうう……」

いやと言ってはいたが、彼女の官能的な太腿は仙蔵の腰にしっかりと巻き付いていた。
その柔らかな弾力に満足しながら、仙蔵は目の前で揺れる乳房に吸い付いた。
肉の方はとろけそうなほどに柔らかいのに、乳首は弾けるほどに締まって硬い。
そこをコリコリと歯で甘咬みしてやると、桔梗は声もなく仰け反るのだった。
あまりの快感に呼吸が苦しい。
喘ぐのが忙しくて、息を吸うヒマがないのだ。

「あ、ああ、あっ……も、もう、許してぇ……あああ……」
「なにが許してだ、こんなに締めつけおって」

仙蔵は両手でふたつの乳房を思う存分揉み抜いた。
もう腰を持っている必要はなかった。
そんなことせずとも、桔梗の方が脚を絡めてしがみついてきている。

いくら揉んでも飽きることのない見事な乳房だった。
最初は餅かと思うほどの柔らかさなのに、揉み込んで感じさせていくと、充実した弾力を
帯びてくるのだ。
豊かな胸の谷間に汗が浮くほどに揉みしだいてやると、桔梗は白い首筋を惜しげもなく
晒して喘ぎよがる。

「あっ、ああっ……またいく……い、いきそうだよっ……」

それまで男の腰に合わせて腰を振り、脚を絡めていた桔梗が切羽詰まったような声を上げた。
腰の動きがほとんど止まり、ぐいぐいと腿で仙蔵の腰を締めつける。
より深いところまで導き、そこで射精させようとしているのだろう。

「……ふん、これが女というものか。好き者めが」
「言わないでっ……あ、ああ……い、いきそうっっ……」

その声に合わせて、仙蔵も乳を揉んでいた手を離し、桔梗のくびれた腰に回した。
そしておもむろにぐいっ、ぐいっと遅いが長大なストロークで責め上げた。
先端が子宮口をこじ開けるようにして潜り込む。
その痛烈な刺激を受けた桔梗は、たちまち絶頂へ追いやられた。

「いくっ……いっくうううっっっ!!」

仙蔵の腕の中で、桔梗は白い背筋が折れる寸前まで仰け反らせた。
仙蔵も腰に灼けるような激しい快感を得て、一気に桔梗の膣に射精した。

どびゅるっ。
どびゅびゅっ。
びゅびゅっ。
びゅくんっ。
どく、どくっ。
どくんっ。

ふたりの腰がガクガクと激しくうねった。
仙蔵は突き上げ、桔梗は腰を押し下げる。
長い男根の先は子宮口の中に入り込み、そこで思い存分精液をぶちまけていた。

「ま、まだ出るぞっ」

さすがに仙蔵も頭が痺れるほどの快感だった。
限界まで出したつもりだったが、まだ尿道を通って精液が出てきた。
射精の発作が止まらない。

「う、うむっ……いくっ……また、いく……」

熱いどろどろした男の粘液で子宮を満たされると、桔梗は腰をぶるるっと振るわせて何度も
続けざまに気をやった。

* - * - * - * - * - * - * - * - *

「さて……」

風体の知れぬ坊主頭がひとり、吉原の町を彷徨っていた。
まだ若く、三十歳にはなっていないだろう。
剃髪しているらしく、つるりとした頭で、僧のようだが着ているものは普通の着流しである。
なかなかに男前で、たくましいというよりは雅な感じがする。
若い新造たちがちらちらとした色目の混じった視線を送るのだが、一向に気にしないようだった。

時刻は明け六ツ。
吉原の大門が開いたばかりの時間だが、その男は待ちかねたように中へ入った。
泊まった上客を見送りに来た花魁が「遊ばないかえ」と声を掛けるが、曖昧な笑顔を浮かべて先
を急いでいた。

「どうしたもんかな」

男−九桐尚雲は途方に暮れた。
吉原へ来たはいいが、とっかかりがない。
桔梗の知り合いの遊女がいるはずだが、顔も名前も知らないのだ。
と言って、桔梗の名前を出して探し回るわけにも行かぬ。

「取り敢えず、あそこに行くしかないか」

そうひとりごちで尚雲は歩き出した。
あそことは萩原屋である。
この前の一件で、桔梗が遊女の霊を呼び出して暴れさせたことがある。
確かその幽霊が、生前、桔梗と知り合いだったと聞いている。

とはいえ、死んでいるから霊になっているわけで、今さら行っても桔梗のことはわかるまい。
それでも、尚雲がこの吉原で知っているのはその見世くらいだ。
取り敢えずそこへ行くしかないだろう。

すぐに萩原屋へ着いた。
中規模の見世だが、なかなか盛っているようだ。
しかし、どうも雰囲気が変である。
生気というものがほとんど感じられない。
大勢の人が立働いているとは思えなかった。
尚雲がお葉の事件の時、桔梗の助っ人で来た時とはまるで違う気がした。

「……妙だな。うん?」

物陰から様子を窺っていた尚雲は、萩原屋の暖簾の中から出てくる男たちを見て目を剥いた。

「あいつら……」

龍閃組の緋勇龍斗と蓬莱寺京梧ではないか。
ふたり揃って萩原屋に何の用だ。

「……何かあるな」

尚雲は気配を殺してふたりの後をつけた。

* - * - * - * - * - * - * - * - *

「あっ……や……」

桔梗は、仙蔵の手を感じてぶるっと震えた。
たっぷりと肉の乗った豊かな尻肉を揉み込んできたのだ。
乳よりは硬いが、それでも揉み応えのある肉の塊だった。
柔らかいくせに引き締まっている。
そこをしこしこ揉まれると、腰の奥が疼き、桔梗をある予感に追いやる。

「あ、あんた、まさか……ま、また、その、お尻を……」
「ああ、そうだ。おまえも好きそうだったではないか」
「じょ、冗談じゃないよ、そんなとこっ……、やめとくれ、やめとくれよっ……」

そう拒絶してなよなよと振られる尻も、何とも官能的である。
男はその尻たぶに手を掛け、ぐいと割り開いた。

「み、見ないで、そんなとこ見るんじゃないよっ……ああっ」

後ろ手に緊く縛められた手をぎゅうっと握り、その羞恥と屈辱に耐えた。
目をかたくつむっても、仙蔵の視線がどこを見ているのかイヤでもわかる。
むっちりとした尻を思い切り割られ、その谷間がなくなるほどに開かれた奥には清楚な菊門
が鎮座している。
男はそこをじっと見つめているのだ。

「見るなと言って、あああっ……」

桔梗がそう叫んだとき、あの感触が肛門に当たった。
熱い肉棒がぺったりとくっついてきたのだ。
桔梗は慌てて腰を捻り、その矛先を逸らそうとする。

膣に突っ込まれ、いや、受け入れていやというほど感じさせられ、幾度も強制的に絶頂させら
れたのはまだいい。
しかし裏門を凌辱され、挙げ句いかされる屈辱だけはもう二度と味わいたくなかった。

桔梗は二度三度と肛門を犯されるうちに、次第にアナルセックスに目覚めてしまっていた。
肛門にも性感はあるだろうが、桔梗自身の趣味は正常だし、そういう変態プレイには興味は
なかった。
というよりも毛嫌いしていた。
なのに、そこまで感じさせられたのは、言うまでもなく仙蔵の手や男根から醸し出される物質
のせいだろう。

仙蔵の大きなものが重く深く貫いてくる感覚に、桔梗は呻かずにはいられなかった。
男はゆっくりと腰を送り、女の肛門を押し広げて肉棒を打ち込んでいった。

「ううっ、ううんっ……は、入って……くる! ……あ、あう、きつい……」

何度も貫かれたせいか、そこは排泄器官というのが嘘のようにあっさりと太いものを飲み込
んでいった。
桔梗は思わず括約筋を緩ませ、肉茎を中へと導いていく。
そうしないと裂けそうな圧迫感で苦しくなるからだが、反面、もっと奥へと入れてもらいた
がっているのかも知れない。
男はぐっと腰を最後まで押し込んで言った。

「そら、なんのかの言っても全部入ってしまったぞ」
「う、く……深い……こ、こんな、ああ、奥まで……」

仙蔵の長大な怒張がすべて桔梗の腸内に収まった。
その証拠に、桔梗の尻が仙蔵の腰にぴったりとくっついている。

根元まで埋め込んだ仙蔵は、桔梗の甘美な収縮を味わっていた。
あれほど嫌がっているはずの肛門性交なのに、一度突っ込んでやれば腸内の襞は喜び勇んで
肉棒を歓迎している。
みちみちにきつく入っているのに、快い収縮と襞の蠢きが男を悦ばせる。

「うむむ……あっ……むむっ……あうっ……むんっ……ああ……」

仙蔵が腰を密着させるほどに奥まで突っ込むと、桔梗は「むむっ」と呻き、カリで肛門の内側
が引っかかるまで引き寄せると、「ああ」と息をつくように喘ぐ。
男が律動を繰り返すごとに、桔梗の張り詰めた尻たぶに見事な尻えくぼが出来てくる。
彼女が思いきり強く仙蔵の男根を締めつけているからだろう。

「こ、こんなの……ああっ……い、いや……あうう……ううんっ……」

桔梗は、ややもすると吹き飛ばされそうな理性を必死に保とうとする。
締まり、それでいてしなやかな肢体をうねらせて、禁断の性交から与えられ続ける悦楽を拒否
しようとした。
だが、それはまるで絶え間なく送られてくる肛悦にのたうちまわるようにも見えた。

「はっ、はああっ……くっ……やっ……あああ……うあっ……」

仙蔵は、長いペニスをいっぱいに使ったゆっくりと大きな突き込みで責め続けた。
そうすることで、穏やかではあるが常に肛門粘膜と腸襞を怒張で擦り上げるようにしているのだ。
だんだんと桔梗が肛門を抉られることに慣れ、わき起こる快感に戸惑っているのがわかる。
呻き声は甘くなり、喘ぎと区別がつかなくなっている。
全身にかいていた苦痛の冷や汗が、ねばっこい脂汗に変わっていた。
間違いなく妖女は、尻を犯されて感じるようになってきている。

それを確認した仙蔵は、少しずつ律動の距離を小さくし、その分速度を上げていった。
その違いがわかるのか、桔梗は白い背中を反らせて嬌声を上げだした。

「あっく……、ああ、あうっ……い、いいっ……」

硬い男根が腸管を抉る感覚が、痛みから快感に変化していく。
根元まで押し込まれ、深いところを太い亀頭部で拡げられる感覚。
引き抜かれて腸液を掻き出される感覚。
そして常に肛門を拡げられ、粘膜を擦られる感覚。
そのどれもが腰の奥を熱く疼かせる。
それが子宮の震えだと分かったとき、桔梗の理性はすりつぶされた。
太いものを無理矢理埋め込まれた肛門のピリピリした苦痛が、今では頭に駆け抜けるような
鋭い快感になっていた。

「ようやく尻でも「いい」と言ったな、女」
「い、言ってないよっ……ああっ……」
「嘘をつけ。そら」
「うはあっ……あ、あうっ、あううっ……だめ、いいっ……いいよっ……」

仙蔵の突き込みに慣れてきたのか、桔梗の肛門はさらなる刺激と官能を望むかのように肉棒を
締め上げた。
男の腰の動きが激しくなってくる。
それまでは、あまりきつく責めて、桔梗の素晴らしい肛門を傷つけたくなかったから手加減
していた。
だが、打って変わったような桔梗の感じっぷりに、頃合いと思った仙蔵は本気で責めること
にした。

仙蔵は桔梗の豊かな尻を責め抜きながら思う。
この女は膣よりも肛門責めの奴隷に仕立てる方がいいかも知れない。
これだけいい女で前も後ろも使い放題。
感じっぷりも最高で、媚肉よりもむしろ肛門の方が具合が良さそうである。
これならいくらでも客がつくだろう。
それには肛門性交による快楽を徹底的に教え込み、その背徳感や屈辱、恥辱すらも愉悦として
感じるように仕上げることだ。

男は肛悦に身悶える尻をがっしり掴むと、勢いよく律動を開始した。
人間離れしたその責めに、桔梗は目を剥いて悲鳴を上げた。

「くああっ、そんなっ……す、すごい、きついっ……お、お尻が……お尻があっ……」
「尻がどうした」
「お尻、ああっ……どうにかなるっ……熱い、灼けちまうっ……」
「それがいいんだろう」
「いいっ……ああ、お尻がすごい、いいよっ……あうう、いいっ……」

激しく肛門を出入りする男根に引き出され、また押し込まれる肛門の襞が赤く爛れてくる。
その強烈な感覚に耐え切れぬように、桔梗の全身に細かい痙攣が走った。

「だ、だめだよ、保たないっ……そ、そんな速いのだめっ……いいっ……灼けるぅっ」

仙蔵は単純な律動だけでなく、亀頭の先端で腸内の襞を削り、腰を大きく振って肛門を
さらに開かせたりと、責めに変化をつけた。
そのどれもに桔梗は震えるほどの快感を感じさせられたが、特に肉棒をぐりぐり回されて肛門
粘膜を拡げられるのと、硬い亀頭部で思い切り奥まで突っ込まれ、薄い腸管を挟んだその裏に
ある子宮を刺激されると、絶息せんばかりに喘ぎよがった。

「そっ、それはだめっ……」
「だめ? そんなに感じているではないか」
「でっ、でも、ああっ……」
「よすぎるのか? よすぎてどうにかなりそうか?」

そう耳元で囁かれると、桔梗は恥ずかしげもなくガクガクとうなずいた。
仙蔵は、ならばとばかりに腸管越しに子宮を責める突き込みを繰り返した。
途端に桔梗は追い込まれたような、悲痛とも言える嬌声を上げだした。

「だめだめっ、ああ、おかしくなるよっ……くああ、いいっ……あう、いいっ……」
「いってもいいのだぞ」
「いやあっ……お、お尻、もうしないどくれっ……あはああっ……」

桔梗はもう何を言っているのかよくわかっていなかった。
口の端からは涎を滲ませ、吐く息は火か点きそうなくらいに熱い。
仙蔵は手を前に回して、ゆさゆさ揺れる乳房を握り締めるように揉んだ。
敏感な肉塊を潰される苦痛に、一瞬、桔梗の顔が歪んだが、それすら快楽に変換してしまう
のか、すぐに恍惚とした表情になった。
乳房をきつく揉まれ、腸の奥深いところまで突き込まれ、大きな剛直に抉り抜かれる倒錯
した愉悦に、桔梗は泣きながら喘ぎ続けた。

妖艶な美女の痴態に、責める男の興奮もいや増していく。
ぐぐっとさらに太くなった肉棒で肛門が拡げられ、桔梗は目が眩んでくる。

「ああっ、ま、また、おっきくなってるよっ……あ、もうお尻、壊れちまうっ……」

仙蔵は腸内を抉り回し、腸液をかき回す。
襞が削られ、粘膜をこそがれ、桔梗は忘我になっていた。
それでも身体は、というより肉欲は鋭敏に反応し、責める男の腰に尻を押しつけるように
蠢いている。
もっと深くまで、もっとこねくり回して、と桔梗の性が叫んでいるかのようだ。

「だ、だめっ……も、もう我慢できないっ……」
「我慢? いきたいということか?」
「い、いきたいっ……あ、あ、いくう……」
「いかせて欲しければちゃんと頼め」
「あ……」

仙蔵はそう言うと、腰の動きをピタリと止めた。
肉の欲望に濡れきった目で桔梗が男を見る。
それでも動かなかった。
桔梗は屈辱で唇を噛んだが、すぐに諦めたように腰を自分から動かし出した。
しかしその動きは仙蔵が止めてしまった。

「あっ」

桔梗の細腰を掴み、一寸とも動かさない。
桔梗は、肛門に肉棒を突っ込まれたまま、じりじりと性感を炙られたままだ。
時折、きゅっと括約筋を動かすが、それだけではとても足りない。
妖女は諦めたように小さくつぶやいた。

「お、お願いだよ……」
「……」
「い……、いかしとくれ……」
「……」
「こ、このままじゃ、どうにかなっちまうよ……。埒をあけとくれ……」

男がぐいっと一度だけ律動した。

「ああっ」
「それだけじゃだめだ」
「そんな……」
「ちゃんとどうして欲しいか言うんだ」
「……」

桔梗は仙蔵を睨み殺そうな目線で見たが、すぐに肉欲に押し潰された。

「お、お尻を……」
「……」
「お尻の、穴を……思い切り抉って……ふ、深いとこまでして……、そ、それでいかせとくれ
……じゃないと、おかしくなっちまう……」
「……いいだろう」
「ああっ」

仙蔵は再度激しい攻撃を開始した。
それも桔梗が弱い責めばかりだ。
肉棒を上下左右に回転させ、尻穴を拡げてやる。
そして奥まで突っ込んで、裏の子宮を刺激するように抉る。
もちろんその間、両手で乳房を強く揉み込んでやる。
どれも、桔梗が泣きたくなるほどに感じさせられる責め口だった。

「いいっ……す、すごい、いいっ……お、お尻、気持ちいいよ……あ、お尻っ……」

もはや桔梗の肛門は性器とさほど変わらないほどに肉棒を受け入れている。
同時に感じやすさも膣に匹敵するものになっていた。
重く深く貫くと、桔梗は感極まったような歓声を上げる。
どんな恥ずかしい言葉も口にした。
乳を揉まれ、腸内の最奥まで突かれると、脳髄がビリビリして頭が真っ白になりそうな
凄まじい快楽に襲われる。
極楽だか地獄だか判別がつかないほどだ。

「あ、あひっ……、あ、あ、ああ……だめ、いく……またいくう……」

無理矢理感じさせられ、追い立てられる桔梗の肛門が締まる。
肉棒を締めるのと緩める間隔が徐々に狭まってきた。
そしてそれが無軌道なものになってくる。

男は、桔梗がいきそうになっているのがよくわかった。
同時に自分も、もう我慢が出来なくなってきている。
仕上げとばかりに激しく突くと、腸内をかき回す肉棒をきゅううっと締めつけ、桔梗の
肛門が痙攣した。
仙蔵の責めを貪欲なほどに受け止め、自らを絶頂にまで押し上げていく。

「ああ、来るっ……い、いきそうっ……あ、いく、いくっ……」

とどめだ、と仙蔵は思い切り腰を突き上げ、桔梗の身体が浮くほどに強く押し込んだ。
もっとも深いところまで届き、カリが押し広げ、子宮をつぶさんばかりに圧迫すると、桔梗は
意志とは無関係に頂点に達した。

「お尻っ、かき回されてるぅっ……あ、いく、お尻でいくううっっ」

桔梗の全身が大きく痙攣し、肛門括約筋がぎゅっと締まって仙蔵の射精を促した。
これにはたまらず、仙蔵も浅ましいほどに腰を突きつけて射精した。

どっびゅるうっっ。
どびゅるっ。
どぷっ。
どぷどぷっ。
びゅるるるっ。

腸内奥深くに、粘くて熱い精液をたっぷり浴びて、桔梗は腰を大きくぶるるっと震わせて
気をやった。

「ううんっ、いくうっ……あ、あ、熱いの、いっぱい……あう、出て……る……」

その瞬間、顔を反らせ、部屋中に汗を飛び散らせるほどに激しく全身を痙攣させた桔梗は
がっくりと脱力した。
白く靄の掛かった虚ろな頭で桔梗は自分を恐怖する。
これほどまでに凄まじい快美を得て、失神するほどに気をやる自分が恐ろしかった。
それも強制的に感じさせられて、である。
このまま自分は仙蔵の女、いや奴隷となって死ぬまで犯され続けるのだろうか。
薄れていく桔梗の脳裏にひとりの男の影が浮かび上がる。

(天戒……さま……)

* - * - * - * - * - * - * - * - *

何気なく歩いていた京梧は、小声で隣の龍斗に声を掛けた。

「ひーちゃん、気がついてるか?」
「ああ。気配を消してつけてくるのがいるな」
「どこからだ? 俺はさっき気がついたんだが」
「萩原屋を出てすぐさ」

それを聞いて若い剣士は顔をしかめた。

「そんなかよ。気がつかなかったぜ、俺もヤキが回ったな」
「……何のつもりかな。襲うでもない、ただついてくるだけだ」
「うっとうしいな」

京梧はそう言うとピタリと歩を止めた。
そして振り返りもせずに言った。

「ちょっとしつこかねえかい、あんた」
「……」
「用があるならさっさと言いな、俺は気が短ぇんだ」

それを聞くと、後ろの男はあっさりと姿を現した。
京梧は「ん?」と言う顔をした。
見覚えのある男である。

「あんた、鬼道衆の……」

京梧より先に龍斗が言った。
尚雲は薄く笑みを浮かべてふたりに追いつく。

「そうだ。鬼道衆がひとり、九桐尚雲だ」
「……それにしちゃ面白い格好してるな」
「そう言うな」

蓬莱寺がからかうように言うと、九桐は少し照れくさそうに頭を掻いた。
彼にしては珍しい表情だ。

「ここに来る以上、俺が坊主と知れちゃ都合が悪いんでな。こうして医者のつもりになって
るわけだ」
「それが医者の格好かよ。着流し来てる医者なんぞ、初めて見るぞ」

京梧と龍斗が吹き出した。
尚雲は一瞬苦虫を噛み潰したような顔になり、次に、実に情けなさそうな表情になった。

「仕方がなかろう。俺は着たきり雀の一張羅しか持ってない。これだって何とか都合して
きたんだ」
「しかし吉原に何の用なんだ? わざわざ医者に化けて」
「……」

龍斗がそう訊くと、尚雲は口をつぐんだ。
そして憎まれ口を叩く。

「おまえたちこそ何だ。遊廓から朝帰りとは良いご身分だな。それほど江戸は平和なのか?
それともおまえらだけヒマなのか?」
「なんだと……」

にわかに殺気立った京梧を抑え、龍斗が前に立った。

「訊いたのはこっちが先だ。それに、見たところ武器も持っていないようだな。ならば、ここで
何かしでかそうと思ったわけでもあるまい」
「……」
「それでもオレたちについてきたということは、こっちに手を出そうという魂胆でもなさそうだ」

尚雲は考えた。
まだやつらがここで何をしているのかわからない。
本当に、単に遊びに来ていただけかも知れないし、やつらなりに何か掴んで吉原をあたっていた
のかも知れない。
それもわからないうちに、こっちの手の内を、それも桔梗が行方不明などという不利な状況を
告げることは危険だ。

黙り込んだ尚雲を嘲るように京梧が言った。
彼も、藍を連れ去られるという失態を演じて気が立っている。

「……どうやら剣呑なことを考えてるようだな。ひーちゃんよ、この件には無関係かも知れ
ねえが、一応、こいつは殺っちまった方がよかねえか?」
「……」
「黙ってちゃわからねえな」

京梧は抱えていた刀に手をかけた。
抜こうとするその手を龍斗が押さえた。

「……おい、ひーちゃん」
「訳ありのようだな、九桐」
「……」

どうも様子がおかしい。
戦いに関しては単純明快、あまり手の込んだマネなどせず、堂々と勝負を挑んでくる彼
らしくもなかった。

龍斗は推測する。
九桐も、というよりも鬼道衆もここの異変に気づいたのではないだろうか。
龍斗たちはまだ噂の段を出ない空舟を当てもなく調べているだけだ。
しかしその途中で藍を拐かされた。

「……もしかして、美里を攫ったのもてめえらなのか、九桐?」
「なに?」

京梧の疑問は当然だったが、尚雲の反応は違っていた。
意外そうな顔だったのだ。

「じゃ、おまえらも……」

尚雲はそれだけ言って絶句した。
龍斗は敏感をそれを聞きとがめた。

「待て九桐。おまえ今、「おまえらも」と言ったか?」
「……」

尚雲は「しまった」と小声でつぶやいて、ふたりを睨んだ。
京梧も喧嘩腰の目つきをしたが、龍斗は意外にも落ち着いた口調で続けた。

「ひとつだけ訊いておきたい」
「……なんだ」
「おまえたち鬼道衆は、今、この吉原に何か手出ししているのか?」
「どういうことだ」
「言葉通りだ。どうなんだ?」

尚雲は少し考えたが、やがて静かに言った。

「いや、何もしていない」
「へっ、嘘つきやがれ! てめえ、美里をどこにやった!」
「京梧、よせ」

龍斗はいきり立つ京梧を腕で制すると、敵の坊主に一歩近づいた。

「今聞いたろうが、藍がいなくなった。この吉原でだ」
「美里藍が……」
「そうだ。別件で吉原を三人で調べている最中にな。そこであちこちをくまなく探している
ところだ」
「そうか……」

九桐はやや顔をうつむかせて何事か考えている。
そして腕組みしたまま顔を上げると龍斗をまっすぐに見て言った。

「……実はこっちも同じだ。桔梗がいなくなった」
「……」
「やはりここに潜っている中に連絡が取れなくなった」
「いったい、おまえらは何を調べてたんだ?」

京梧が尋ねると、尚雲は嘯いた。

「それは関係ないだろう」
「なんだと」
「なら、おまえらの方こそ何を探ってたんだ? それを言ってもらわねば言えんな」

尚雲はそう言って強がったが、実のところ桔梗が何を求めて吉原で活動していたのか知ら
ないのである。
龍斗はその様子を見ながら言った。

「実はな、九桐。俺たちは桔梗のことも頼まれた」
「なに……?」
「知り合いの遊女にな。情報をもらう引き替えに桔梗という女を捜してくれと言われたんだ」

その遊女が桔梗の知り合いだったのだろう。
お凛のことだが、もちろん尚雲は知らない。

「……なるほどな。そしてその最中に美里藍もいなくなった、ということか」
「そういうことだ」

お互いに相手が何か仕掛けてきて、その結果、仲間が行方不明になったと思っていたのだが、
どうやらそうでもないようである。
それどころか、同じ事件に巻き込まれて、桔梗も藍も連れ去られた可能性が高い。

「ならば……。互いに手出しはせん、ということでどうだ?」
「なに?」

尚雲の提案に、京梧が目を剥いた。
休戦協定を持ち出すような相手ではなかったはずだ。

「少なくとも、今回に限っては敵対してはいないようだ。であるなら、互いに足を引っ張り
あっても利はない。そうは思わんか?」
「冗談じゃ……」
「いいだろう」
「お、おい、ひーちゃん!」

当然のように拒絶しようとした京梧の言葉におっかぶせて、龍斗が賛同した。

「落ち着け、京梧。まだ何が何やらわからん状態だ。敵を増やさん方がいい」
「け、けどよ……」

尚雲も口を挟んだ。

「何も味方になれと言っているのではない。この件では双方手出ししない、というだけの
ことだ。それも、そちらの美里藍、こちらの桔梗が戻るまでの間だ」
「わかった。だが、追っているのは恐らく同じ件だ。共に行動しようとまでは言わないが、
情報交換くらいはした方がいい。そうは思わないか?」
「……わかった」
「よし。なら、その辺で朝飯でも食うか」

龍斗は、まだ不満げな京梧をムリヤリ引っ張って、尚雲とともに茶屋に入って行った。



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