某ホテルの最上階。
そこは客室としては使われていない。
けばけばしい性風俗の店舗であり、同時に高度な人間生理学の実験場でもあった。
その中の一室に、警視庁の婦警と犯罪組織の男ふたりがいた。
「……だいたいのところはわかりましたよ、熊耳巡査部長。では最後の質問です」
「……」
「あなたは、前回われわれに訊問されたことを上司や警察関係者に話しましたか?」
「話してないわ……」
「いいですか、もし洩らせば課長には会わせませんし、第一あなたの命もなくなる。わかって
ますね?」
「……」
「今いちど訊きますよ」
黒崎は舌で唇を湿しながら言った。
訊問される美女は、目は開けているものの、心ここにあらずといった表情だ。
もと企画7課の腕利きは、諭すように言った。
「熊耳さん、あなたは優秀な警察官だ」
「……」
「そのあなたが、我々のことを知って、そのことを通報しないとは思えない」
「……」
「グリフォン事件の容疑者が、また犯罪もどきのことに関わっている。これを見て見ぬ振りを
することは、あなたには出来ないはずだ。警官の、というより一般市民でも同じでしょう。
……言いましたね?」
武緒はぼんやりとした顔のまま、口の中でつぶやいた。
「言って……ないわ……」
「……」
「後藤……隊長にも……松井さんにも訊かれたけど……、私は何も言っていない……」
「ほう。それはなぜです?」
「あなた、言うなと言ったでしょう……もし逆らって喋っても、訊問でわかってしまうわ……」
「……」
「そうしたら……リチャードに会えないでしょ……」
「お気持ちはわかりました」
黒崎が、表向き優しく言った。
「しかし、そんなことが許されますか? これは、言ってみれば背任行為だ」
「私は……」
「……」
「私は……この件が終わったら責任をとって辞職するわ……」
「……」
強制的な訊問を終えると、黒崎は武緒を解放しようとしたが、黄瀬が止めた。
「おい、またそれをするのか?」
「そうですよ。言いませんでしたか?」
黄瀬は黒崎に背を向けたまま、マシンのセッティングを行なっている。
クスリが効いていて、武緒はまだ半覚醒状態だ。
その白く長い指にコードを繋ぎ、美貌を隠すようにギアを被せる。
ツマミを調整しながら黄瀬が言った。
「なんだかんだ言って、こないだは黒崎さんだってけっこう興味あったみたいじゃないですか」
「……」
「ま、黒崎さんにとっちゃ、ただのおばさんかも知れませんがね、あたしらくらいの歳になると
これくらいの女の方がいいんで。おとなの女性ってやつですか」
卑下た声で嗤いながら黄瀬は言う。
黒崎はもともと少女趣味なところはあったし、それまで年上の女にはほとんど関心がなかった。
だが、前回の武緒の悶えぶりを見て、確かに黄瀬の言うことも一理あると思うようにはなって
いた。
そうは言っても、無闇にシステムを使うのは反対だった。
「いいか、黄瀬さん。この女を何度もここに呼んでいるのは……」
「わかってまさあ。警察の捜査状況を探るためでしょう?」
前回、偶然に武緒を捕まえて訊問した時に判明したことがある。
警視庁が売春、性風俗担当の生活安全部保安課だけでなく、知能犯対象の捜査二課まで動かして
いるということだ。
これは、ある程度こちらの「商売」の内容を承知していると見て良いだろう。
それがあったので、武緒に薬物投与したのである。
もちろん、レイバー隊所属の警官など、何の関係もないだろうが、あの時は彼女が潜入捜査に
来たのかと思ったのである。
そんなことはあり得ないし、事実そんなことはなかったのであるが、代わりに面白いことが
わかった。
熊耳巡査部長は、リチャード王並びに、黒崎らシャフトの旧企画7課の人間に顔を合わせている
唯一の警察官である。
そこに目をつけた捜査課の刑事たちが、ことあるごとに武緒に捜査協力を乞うてきているらしい。
その際に、その時点での捜査状況をこの婦警にもいちいち説明しているようなのだ。
もちろん全部話しているわけではないだろうが、それを聞き出すこと出来れば、黒崎たちは重畳
極まりない。
その情報を得るために、武緒を呼び出しているのである。
彼女がされているのは薬物による誘導尋問だ。
ある種の薬物(不法なものではない。全身麻酔などで一般病院でも普通に使われているものだ)
を投与し、自白を強要するのは何十年も前から行われている。
旧ナチスが使った「真実の血清」もその一種だし、旧ソ連もその道のオーソリティだった。
ソ連はナチスの技術や手法を取り入れたのだとされている。
これは、フィクションのように注射されれば何でもベラベラ喋ってしまうというようなもので
はない。
意識を混濁させ、朦朧としたところに質問するのだ。
対象者は注意力が散漫とし、集中力にも欠けるから誘導尋問に引っかかりやすいということだ。
だから、ただ漫然と訊けばいいというわけでもなく、訊問側にもそれなりのテクニックは必要
となる。
黄瀬が起動するとヴゥンと低い音がマシンから聞こえた。
すると武緒の身体がビクッと震え、もぞもぞと蠢いている。
* - * - * - * - * - * - * - * - *
「きゃああああっっ!」
美貌の生贄は、あまりのことに絶叫した。
いつのまにか裸にされ、身体には下着一枚着けていない。
その裸体に、有り得べからざるものがまとわりついていた。
幾本もの触手が女の身体に巻き付いているのだ。
武緒の両手両脚にはぬるぬるとした触手が巻き付いていて自由にならない。
他の触手も、武緒の首や腰、這いずり回っていた。
その気色悪さに、武緒は寒気がする。
喚いても叫んでも誰も来てくれない。
それで彼女はようやく気づいた。
これは前回の凌辱劇と同じだ。
あとで黒崎が言ったように、ソフトウェアとデータによって、武緒のA−10神経を操り、
ドーパミンを分泌させているのだ。
仮想空間なのだ。
つまりこれは夢幻のようなもので現実ではない。
だから悪夢を見ているのだと思えばいいと考えたのだが、それが無駄なことは前回でわかって
いる。
夢にしても、あんな生々しいのは生まれて初めてだった。
媚肉に太い男根がぶち込まれる感覚、膣内で大きなものが暴れ回る感覚、そして子宮に大量の
精液が放出される感覚。
どれもこれも、現実のそれと変わらないように彼女には思えた。
唯一、これは夢だと思えたのはアヌスを犯された時だ。
そんなところを使われたことはないので驚愕したのだが、それ以上に驚かされたのは快楽を得て
しまったことだ。
訊いたところでは、肛門性交などというものは「慣れ」で、慣れる前は苦痛ばかりだという。
それがこないだはいきなり気をやらされてしまったのだ。
だから夢だと思った。
しかし、アナルを硬くて大きなペニスで突き刺される苦痛や肉悦は本物で、武緒が目覚めた時、
下着は蜜でびしょびしょだったのである。
それだけでも信じられないのに、今度は相手が人間でもない。
化け物ではないか。
悪夢なら醒めて欲しかったが、それはこちら側の意志ではどうにもならないらしい。
現実世界で黄瀬たちが満足するまでこのままなのだ。
異物に犯されるという、変態の喜びそうなシチュエーションが自分に降りかかることを覚り、
武緒は心底恐怖した。
にょろにょろ、うねうねと蠢き、化け物は武緒の美しい肢体に絡みついていく。
異世界からやってきたモンスターに見えたそいつはタコであった。
* - * - * - * - * - * - * - * - *
むずがるように身体を捩っている武緒を見て、黒崎が言った。
「今度はいったい、どんなデータを使ってるんだ?」
「へっへ、こいつはまだ実験段階なんですがね、いい機会だからやってみようか、と」
「だから何だ」
「タコですよ」
「……タコ? タコってのはあの、軟体動物のタコか?」
黒崎が呆れたように言った。
彼らが開発したシステムは、実在のタレントだろうが二次元のアニメキャラだろうが、どんな
人物でもセックスの対象とすることが可能だ。
システムを使う人間の理想的な異性を創造することも出来る。
架空の美人美男を創り出すため、無数とも言えるパターン・データを保存してある。
男性データなら、現実にはあり得ない巨根の男も作れるし、10回でも20回でも連続して射精
するような絶倫も作れる。
女性であれば、思いつく限りの美形を作り、ノーマルなセックスだけでなく、アナルを犯しても
よがり、フェラチオで射精されても絶頂に達するようなタイプも作れる。
何でもありなのだ。
だが、それ以外の「相手」でも出来る。
データを作りさえすれば、どんなものとでも性交できるようになっているのだ。
宇宙人だろうが犬だろうが、何でもござれである。
異種間セックスというのがある。
人間の女と異種動物を交わらせるというものだ。
犬や馬に犯される女というのがエロ小説や漫画でもあるが、現実には男が羊や馬などの肛門を
犯すような行為が多いらしい。
自分ではしないが、女が異星人だの動物だのに犯されている描写を好む者は多い。
触手というのも、その一形態だ。
そこで黄瀬らのチームは、人間以外のデータも作ることにした。
もともと、被験者の脳内に繰り広げられる様々なセックス・シーンを映像化するというアイデ
ィアはあったのだ。
想像でのセックスだから、大抵の人間は現実世界のそれよりも過激であり、濃厚だ。
性に淡泊な人間なら、始めから黄瀬の作ったシステムに興味など持たないだろう。
もともと「好き」な人間が、ソフトの力を借りてバーチャルな世界で思う存分に愉しむのだ。
彼らが脳内で描く淫劇は相当な迫力があり、他人が見ても充分に堪能できるものだろう。
それを黄瀬はデータとしてセーブして、映像化するという発想があった。
もちろん、あまりに趣味的なものは万人に通用しないだろうが、実際にそれを販売するにあたっ
ては、黄瀬たちが入念にチェックし、売れそうなものを厳選するのだ。
これは販路さえ確保すれば、大ヒットすることは間違いない。
人気アニメやゲームのヒロインの激しいセックスシーンもある。
実在ののアイドルが痴態を演じ、愛欲に身悶える描写もてんこ盛りだ。
しかもそこには一切の演技はない。
確かに登場人物は架空の存在だが、ウソ偽りのない本番をやっているのだ。
市販のAVやエロアニメに不満を持っている人たちは飛びつくに違いない。
だから彼は、熊耳武緒という生贄を使ってその実験を行ない、実用化しようとしているのである。
黄瀬は言った。
「本物のタコ使って同じ映像を撮ろうたって無理ですからね。タコが言うこと聞きゃしません。
ま、タコにとってはどんな美人だって異性物だし、化け物にしか見えないでしょうからね。
だから、せいぜいハリボテのおもちゃみたいなタコでお茶を濁すしかない。ですが、こいつを
使えば、女を犯すことに悦びを感じるタコや化け物を作れるんですよ」
* - * - * - * - * - * - * - * - *
「い、いやっ……くっ……」
うねうねと蠢くタコの足に絡まれて、武緒は行動の自由を封じられていた。
身体が宙に持ち上げられている。
両手をひとまとめにされ頭の後ろに手首が回された。
股はいびつな格好に開かれている。
右脚は横に拡げられ、左脚は高く掲げられていた。
長い触手のような足が、武緒の綺麗な脚に絡む。
太腿、膝、ふくらはぎ、そして足首にぐるぐる巻きとなっていた。
「はっ、離して、この……うっ……」
軟体動物だけあって柔らかいのに、どこからこんな力が出るのだろう。
武緒がいくら振りほどこうとしても、頑として解れない。
もっとも、踏ん張ろうとしても、思うように力が出ない格好にされてはいるのだが。
身体を揺さぶり、捩って、逃げだそうとしていた武緒だったが、一向に思うようにならずに疲れ
が出てくる。
疲労が溜まって動きを止めると、今度はタコの方が動いてきた。
囚われた美女を責め始めたのだ。
「あっ、何を……あ、いや……あっ……むっ……いっ、いや……ううっ……」
長い触手が、大手を上げている武緒の腋に滑り込んでくる。
綺麗にむだ毛処理されて、すべすべしているそこに、粘液まみれの足を擦りつけてきた。
ぬるっぬるっと粘液でぬめる感覚がたまらない。
こそばゆいような、軽い電流が通電するような弱い快感に、武緒は呻く。
腋から二の腕、豊かに膨れた胸とは対照的に浮き出ているあばら付近もぬるぬると擦ってきた。
脇腹への愛撫も忘れない。
小さめの臍にも触手は入り込んでくる。
掃除でもするように、細い先端を穴に突っ込んで抉るように潜り込んできた。
なめらかな腹部がぬめぬめしてくる頃には、武緒はこみ上げる快楽の声を堪えるのに必死だった。
腕だけではなく、全身を責められていた。
細かい動きを苦もなくこなすタコ足は、武緒の美顔にまで伸びてきた。
口の中に入ろうとするのは、何とか歯を噛みしばって防いでいた。
しかし足は一向に焦らず、引き締めている唇を嬲ってきた。
唇の端に先端のもっとも細いところを刺すように侵入させる。
閉じた唇を真横から、足全体を使ってずるるっと滑らせると、武緒はビリビリっとした思わぬ
快美感に驚いた。
男に唇を舐められている時のようだった。
それだけでなく、美しい形状の額にも足が伸びる。
髪の生え際をなぞるように這ったり、左右の耳にもぬるっとした感触があった。
耳たぶを愛撫され、耳の穴までこそがれた。
顔中を、男の舌で舐められているような錯覚すら受けた。
「むむ……うむむっ……んっ、くく……」
武緒は呻くことしか出来ない。
うっかり口を開けて叫んだり喚いたりすれば、たちまちタコの足が侵入してくるだろう。
下半身も放って置かれはしなかった。
無惨に開かれた股間だけでなく、すらりと伸びた脚も凌辱の対象だ。
足首に巻き付いた触手が、指まで愛撫する。
足の指を嬲られたのは初めてだった。
指の間に、ぬるっ、ぬるっとタコの足が入り込んでくる。
足の裏も、くすぐられるような、舐められるようなこそばゆい感触に支配された。
思わず笑ってしまいそうなくすぐったさが、しつこく愛撫され舐められるうちに、いつしか甘美
な快感に変換されている。
タコの足が指の間をずるっと強く行き来するごとに、武緒は小さく喘ぎ出してさえいた。
もちろん肝心なところも忘れてはいない。
淫猥にゆさゆさ揺れる乳房や、たっぷりとした臀部、そして股間に潜んでいる媚肉にも、当然の
ように責め込んできた。
化けダコは考えなしに絡んでいるのではなかった。
適当にのたくっているようで、武緒のツボを正確に突いて、この美女を喘がせ、苦悶させている
のだ。
実際タコという生物は、かなり知能レベルが高い。
保護色を使ったり、地形に合わせて体型を変化させたりするところを見ると、形状や色彩を認識
出来るようなのだ。
驚いたことに、脳に記憶することも可能で、その記憶が1〜2年保存することが可能らしい。
もっとも、本物のタコに人間の女を犯すようなマネは出来ないし、その知識もないだろう。
あくまで黄瀬の作ったキャラクターであり、バーチャルの世界だからの話である。
しかし武緒には、もはやそんなことを考える余裕はない。
前回の輪姦劇もショックだったが、今度は相手が人ですらないのである。
タコに凌辱されるなど、とても信じられないし受け入れられない。
なのにその肉体は、タコの愛撫に翻弄されつつあった。
全身を這い回る触手の感覚に、理性も知性もどろどろにとろかされてしまいそうだ。
乳房は付け根から頂点に向かって渦巻き状に巻かれていた。
何度も何度も、ぎゅうっと根元から絞り上げられるように揉まれていくと、乳頭がぷくんと膨れ
てきてしまう。
その立った乳首を、足についた無数の吸盤が吸い上げていくのだ。
二列に行儀良く並んでいる吸盤がひとつずつ、武緒の敏感な乳首をきゅうっと吸う。
「んむ! ……んんっ、んうっ、むっ、んくっ、くっ、はむっ……」
乳首を思い切り吸われるごとに、武緒の身体が面白いように弾み、仰け反る。
小さな吸盤にずずっと吸い込まれると、まるでバストが裏からめくれ上がってしまいそうな感覚
がある。
乳房の中に詰まっている快楽の泉から快感がずるるっと吸い出される。
赤ちゃんにおっぱいを吸われるのって、こんな感じなのかも知れない。
しかし武緒にはそこまで考えるゆとりがない。
口を開けて喘がないようにするのが精一杯だった。
ひとたび開けたら、触手が咥内の殺到してくるだろう。
乳首を吸う順番を待っている間、他の吸盤はふくよかな乳房のあちこちにひっついていた。
足の吸盤にいいように吸われまくり、武緒の白い乳房にはキスマークのような跡があちこちに
残っていた。
左右の乳房が人外の愛撫で揉みくちゃになっていると、今度は足が股間に入り込んでくる。
膣はすでにタコの望むようになっていた。
淫液で濡れきっており、薄く割れている秘裂からはぽたぽたと新たな蜜が垂れ落ちていた。
これならタコ自身のぬめりをぬりつける必要もないだろう。
膣だけでなくアナルまでひくついている。
太い男根を、今や遅しと待っているかのようだった。
しかし触手は別のところを狙った。
皮をかむっていたクリトリスだ。
女の性神経が集中している箇所に、タコ足は容赦なく向かっていった。
たまに自慰する時でも、触れるか触れないかくらいで軽く達するほどに敏感なそこは、触手の
愛撫にひとたまりもなかった。
根元の左右を、ずるっと二本の触手が擦り通っただけで、武緒は大きくビクンと仰け反って
苦痛の瞬間を越えた。
「……!!!」
腰がぷるぷる痙攣する。
腿も不定期にぶるっと震えていた。
身体をまさぐられただけでいってしまった。
まだどこにも挿入されていないのにエクスタシーに達してしまったのだ。
武緒は朦朧とした意識下で思った。
(うそ……うそよ、こんな……。こんな、タコなんかに犯されて……いいえ、まだ犯されても
いないのに……そんな……)
武緒が一回軽くいったくらいで許すわけもない。
これからが本番だと言わんばかりに、触手が責め始めた。
うねくる触手は、武緒の柔らかい内腿を這い、膨らんでいる秘部に密着、擦りつけてきた。
早くも絶頂に導かれ、気丈な武緒も怯んでくる。
何よりも、肉体が意志を裏切ってきていた。
全身の性感帯を淫らな触手が這いずり回り、正気を保とうとする武緒の精神をくじかせる。
成熟した肉は火照り、とろけそうになっていた。
美貌を紅潮させ、よがり声を出さないよう堪えているが、それも時間の問題に思われた。
触手が媚肉を擦り上げると、どろどろっと恥ずかしい蜜が溢れ零れだしてくる。
顔がカッカと火照っているのは、一度いかされたためだけではなかった。
武緒の心根などとうに裏切っていた感じやすい肉が、次の愛撫と凌辱を望んでいたのだ。
「ああっ!? う、うんっ……はっ、はああっ……うあっ……うっ、くく……あああっ」
堪え忍ぼうという殊勝な心がけは簡単に消し飛んだ。
武緒の口から裏返ったような声が飛び出ている。
タコが本格的に責め始めたのだ。
否応なく強要される快楽に、身を捩って武緒は逃れようとする。
人外の化け物に与えられる肉悦を嫌悪する精神がぼろっ、ぼろっと崩れていく。
禁忌な快感を欣喜として受け止めている身体に、武緒は絶望する。
太い触手が同時に複数の快感スポットを責め立てていった。
ぶるんと揺れる乳房を拘束するかのように、タコ足がまとわりつき、マッサージするように揉み
ほぐす。
ぎゅうぎゅうと強く締め上げたり、胸の谷間にぬるっと這わせたりする。
もう痛々しいほどに立っている乳頭は、先端でつんつんとつっつかれて、そのたびに悲鳴と喘ぎ
を噛み殺すのが大変だった。
「いっ、あああ……くっ……う、ううんっ……はっ……ん、んはっ……ひっ……あうっ」
胸だけ嬲られてもおかしくなりそうだったのに、触手は当然のように下半身にも伸びてきた。
秘裂を割って膣の中に潜り込む。
媚肉の裂け目の頂点にある女芯も、くねくねとうねくる細い先端に巻き付かれ、こそがれ、
つつかれる。
先日、ふたりの男に散々犯され抜き、何度も気をやらされたアヌスにも遠慮なく入ってきた。
「うっあああっ……だ、だめ、ああっ……やめ、この……ああっ……」
タコに言葉がわかるとは思えなかったが、拒否の声をあげるしか武緒には為す術がない。
その声すら、いつ嬌声に変わってしまうのか自分でも自信がないのだ。
すでに一度いかされている身体は驚くほどに敏感で、タコの責めに翻弄されていた。
タコはまだ完全に挿入はしなかった。
アヌスも媚肉も、人間の指の第一関節ほどしか入れてしない。
太さにして1センチもないものだから痛みはないが、縦横無尽に動き回っている。
先を鉤状にして曲げ、そのままグリグリと小さな孔を拡げるような動きをしていたのだ。
「あ、ああっ……あああああ……」
だんだんと性感が高まっていくのが自分でもわかる。
どうしようもなく燃え立たされてしまうのが怖かった。
しかし物の怪の嬲りは一向に止まず、かさに掛かって責め立ててくる。
ふっと正気に戻りかけた時、力を絞って身体をひねるのだが、がっしりと触手に抱え込まれ、
拘束されていてビクとも動かなかった。
武緒を快楽の七合目あたりで徘徊させ続けていたタコは、入れかけていた足を今度は一気に
突っ込んだ。
「うはあうぅっっ……!」
その瞬間、美女は大きく仰け反った。
無理もない。肛門にも膣にも、いきなりタコ足がぐぐっと奥まで入り込んできたのだ。
信じられないほど奥まで来ている。
アヌスなど、一体何センチ入れられているのだろう。
このタコの足は、どう少なく見積もっても4〜5メートルくらいはありそうだ。
そんなものを全部入れられたら壊れてしまう。
「うああああ……」
武緒はびりびりとした強い電流で腰が痺れていた。
アヌスは直径で3センチほども拡げられ、太い肉棒と化した触手を埋め込まれていた。
内部では、直腸を越えて大腸にまで届いていそうなくらい深く挿入されている。
前もすごい。
こちらも太さはそうでもないが、とにかく奥まで入っていた。
武緒の胎内を通り抜け、余裕で子宮まで届いている。
あろうことか、その子宮口を先端でコジコジと掘り開けようとすらしていた。
一度いかされて子宮口が緩んでいたのも災いし、とうとう先端が子宮の中に入り込んでしまった。
武緒にも初めての経験だった。
「うっ、ああ……こ、この、調子に乗って……くっ……」
子宮の中にまで入られるという体験に動転したが、それとともに少し快楽から目が覚めてきた。
ここまで化け物に浸蝕されるという屈辱がこみ上げてきた。
武緒は震える手で、膣を抉るタコの足を掴んだ。
この時、彼女の手だけは自由になっていた。タコは武緒の全身に絡みついていたが、
足数には制限がある。
一本目は左の乳房、二本目は右の乳房を愛撫し、揉み上げている。
三本目は窒息しない程度に、首に絡めている。そこから伸びる触手は、首筋をなぞり、耳孔を
犯していた。
四本目は武緒の締まった腹部に巻いていた。
五本目は左脚、六本目は右脚の膝から腿の付け根にかけて巻かれている。
四、五、六本目の足で、彼女を支えているのである。
そして七本目は膣を抉り、八本目は肛門に潜り込んでいた。
こうして八本すべて武緒の肉から快楽を引き出すために使われており、手にまで余裕がなかった。
それを知った武緒は、乳房や性器を同時責めされる快楽を堪えながら、両手で七本目の足を掴
んだ。
媚肉を責めている足だ。
(ひ、引き抜いてやるから……)
膣を奥深くまで貫く足を何とか両手で掴むと、ぐいっと引っ張る。
しかし、ぬめった粘液にまみれた触手はぬるりと容易に武緒の手から逃れてしまう。
何度かそれを繰り返した挙げ句、これでは無理だと覚った武緒は一計を案じる。
ヘタに力を入れて握ろうとするとぬめってしまう。
といって、軽く持っただけでは足の力に敵わない。
ならば巻き付ければ良い。
ぬるぬるした足を右手で掴み、左腕にぐるぐると巻いていった。
そこでぐっと引っ張ると、タコは武緒を逃すまいとして引きずり込もうとする。
武緒の思うつぼだ。
引っ張っても解けなければいいのだ。
媚肉の襞をこそがれる快感にうっとりしかかりながら、左腕に絡めた触手を、腹に力を込めて
ぐいっと思い切り引っ張り、膣から抜き取る。
うまくいった。
だが予想外の効果が武緒を直撃した。
「ぐっうああああっっ……!!」
武緒は今日最大の絶頂に達してしまった。
タコ足は彼女の膣深くまで挿入されていた。
子宮口を開かせ、その中にまで入っている。
もちろん膣いっぱいに足が潜り込んでいた。
そこを一気に引き抜いたのである。
ずるずるずるっといっぺんに引きずり出された触手は、武緒の精神が消し飛んでしまいそうな
衝撃を与えた。
子宮から胎内、そして出口の媚肉まで同時に凄まじいほどの摩擦感と刺激が襲いかかってきた
のだ。
しかもタコ足のイボ状吸盤もある。
そのイボが、引き抜かれる時に胎内の粘膜や膣出口を思い切り擦り上げていった。
それも自分の手でやったのである。
武緒はその瞬間、逆エビ状に背中を弓反りにして絶叫した。
イボが、ぼこぼこぼこっと膣を抉ったその感触に、弾け飛ぶほどの快感を受け、気死しかかって
しまった。
「あ……あああ……」
武緒は大きく口を開けて、あうあう喘いでいた。
腰も腿もぶるぶると痙攣が続いている。
子宮から膣まで突き抜けるような凄さであり、背中には落雷が直撃したかのような衝撃が来た。
恐ろしいほどの快感だった。
武緒の中にはその時、1メートル近くも足が入っていた。
子宮内に潜り込んでいたり、途中でとぐろを巻いていたり、胎内にへばりつくようになっていた。
ペニスのように一直線ではないだけに、形状が変われる。
だからこその長さだった。
しかし貫かれる時、引き抜かれる時はペニスと大差なかった。
硬さも太さもある。
文字通り長大な肉茎で延々と犯されているようなものなのだ。
武緒は美貌を青ざめて恐怖した。
こんなものでピストンされたら、押し寄せる快楽に抗うどころか、肉悦に溺れ、性に狂って
しまうかも知れない。
ということは、押し込まれた触手を自分で抜き取るというのは自殺行為に等しいではないか。
もう美女には、この性地獄から逃れようがなかった。
* - * - * - * - * - * - * - * - *
「それにしてもタコか……」
「お気に召しませんか」
「まあなあ……」
興味深そうに武緒を見ているふたりの男が意見を述べ合っている。
「触手好きなおたくも多いですし、これの映像化が成功すりゃバカ売れしますぜ、きっと」
「……僕はそういう趣味はないよ」
「そう言いますがね、黒崎さん。こういうのは昔っからあるんですよ」
「そうか?」
黒崎が疑わしそうな声を出すと、黄瀬は得意そうに説明した。
「外国でも魔女ものなんかで、悪魔や妖物に犯される女の妄想ってのは昔からあるそうですし
ね。日本だって浮世絵であるじゃないですか。ほら、見たことありませんかね、裸の女がタコ
に襲われているやつ。歌麿だったかな」
「北斎だ。葛飾北斎」
「知ってるじゃないですか」
黄瀬が破顔した。
「それですよ、それ。北斎が描いた、女がタコに凌辱されている浮世絵というのは、北斎が
有名になっちゃって芸術作品にされちゃってますがね、もともとは春画として有名だったらしい
ですよ」
「ふうん」
「けっこう売れたんでしょうね。だから、あれ見ながらオナニーしていた野郎が、江戸時代や
明治にもけっこういたってことでしょうよ」
セックスに関しては、昔も今も倒錯的な欲望があるということなのだろう。
現実には出来ないことを妄想するために、文章や映像、画像を使っていたわけだが、黄瀬の
システムなら本物と見分けがつかないレベルで疑似体験出来るのだ。画期的としか言いようが
ない。
「北斎だったら他にも、河童に犯されている海女というのがありましたよ。海に河童というのは
変だが、まあ要するに異種間セックスを見たいということでしょう。人はね、自分がセックス
するのもいいが、他人のセックスを見るのも好きなんですよ」
その時、ガクンと武緒の顔が垂れた。
と思ったら、今度はググッと仰け反り、背もたれに頭をもたれかけた。
ヘッドギアの隙間から黒い髪がはみ出して、武緒の美貌にかかる。それを見ながら黒崎が訊いた。
「そう言えば、現実では経験がなくてもバーチャルでは無関係に感じさせることが出来ると言っ
てたな」
「言いましたよ。だからこの女も、肛門性交の経験はなかったろうが、こないだは仮想空間で
散々ケツを犯されて、何度も絶頂してたでしょうが」
「そうだったな。なら、あれか? 例えば、髪の毛触れただけでもイクようにしたり、キスだけ
で気をやったりとかも出来るわけか」
「出来るでしょうな」
黄瀬は大きく頷いて答えた。
「そんなところに性感帯はないだろうって場所でもいけるようになるはずです、理論的にはね。
……ああ、そうか」
自分で話しながら何か思いついたのか、黄瀬はポンと手を打った。
「どうせ実験してるんだから、それも試しますか」
「どうするんだ?」
「ええ」
黄瀬はクリックして別のウィンドウを開くと、そこに現れたエディターに何やら打ち込み始めた。
流れるような指使いでキーボードを操作し、モニタを確認しながら黒崎に言った。
「口ですよ、口」
「口? フェラチオか?」
「そうです。普通、どんな女だって口に男のチンポくわえさせられてイクことなんかありません
がね、男だったら無理とわかってもいかせたいと思うでしょう」
「あ? ああ、まあそうかな」
「でしょう。咥内射精するんだから、その時に女もエクスタシーを感じて欲しいはずですわ。
なら、そういうシステムを作りゃいい」
「……」
「ついでに実験しちまいましょう。この女の性神経を使って、口に突っ込まれても感じるように
してみます。なぁに、難しいこっちゃありません。膣内の性感データを咥内に移植するだけで
いいんです。どっちも粘膜がありますし、何とかなるでしょう。膣の奥の子宮に相当するものを
喉の奥にしちまいます。ちょうどいい、ノドチンコをクリトリスにでもしますか」
黄瀬は無責任に大笑いした。
黒崎は黄瀬の説明を聞き流しながら、目の前で喘ぎ出した美しい婦警を見つめていた。
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