荒く息を吐くさくらの頬に顔を寄せ、秋月が囁いた。

「ふふ、またいったんだね、さくらくん」
「ああ……は、はい……」
「随分激しくいくんだね。何度見ても、きみが気をやるところはすごく色っぽくていいよ」
「いや……」
「いやじゃないだろ、褒めてるんだ。どれ、続けてやってるからね」
「ああ、もう無理です……つ、疲れてしまって……」
「平気さ、きみもまだ若いんだから。それに、これだけの身体をしてるんだ、五回や六回
続けていっても大丈夫だよ」
「そんな……本当に死んでしまいます……」
「こっちもまだ出してないしね。さくらくんだって中にたっぷり射精して欲しいだろう?」
「いやです……な、中だけは……中に出すのだけは許して……」

さくらは大きな瞳に涙を湛えて哀願した。

「なぜだい?」
「こ、これ以上されたら……中に出されたら……妊娠してしまいます……」
「いいんだよ、さくらくん。きみには妊娠してもらわなきゃならん」
「え……」

さくらは信じられぬといった顔で秋月を見た。
石野ほど酷薄そうな顔はしていない。
むしろ、さくらを大事に思っているのだろう。
セックスの際に激しい行為をしてしまうのは、さくらがの反応や仕草、表情が愛らしいことも
あるし、なにぶん己の若さには勝てず、ついついきつく責め上げてしまうだけなのだ。
秋月は引導を渡すべく、決定的なことを口にした。

「僕がきみを孕ませるんだ。さくらくんは僕の子を宿すことになる」
「そんな、いやですっ」
「いやも何もない。それがきみの任務なんだ」
「に、任務って……」

女を妊娠させる任務などあるわけがない。
少なくともさくらの常識には、そんなものはなかった。
さくらの後ろを貫いたままの石野も言った。

「いいかね、おまえは秋月中尉の子を妊娠しなければならんのだ」
「どうしてそんな……」
「ふん、結婚前に赤ん坊など産みたくはないというのかね」

無論、それもある。
日本では、江戸時代や明治初期くらいまでは、夜這いだの娘宿だのがあり、性的には諸外国
よりタブーは少なかった。
処女は娘宿で床の技術を覚え、若者は村の人妻や未亡人に夜這いをかけて童貞を捨てた。
夜這いは通常のコミュニケーションの一種だったし、処女性や貞操観念といったものも、
さほど強くはなかった。
江戸の侍連中はメンツにこだわったから、自分の妻が姦通することは許さなかったが、逆に
自分は吉原などの遊廓遊びもしたし、今で言う浮気もしていたのである。

それが明治で開国し、外国文化が流入してくると、そうした行為は無知蒙昧の野蛮な行為と
され、忌み嫌うようになった。
女の処女性は当然とされ、婚前交渉すら白眼視される有り様となった。
キリスト教圏の影響だろう。
もっともこれは帝都近辺の話であり、地方へ行けばまだまだそうした因習は残っている。

そうした中でも、父なし子を産むということは立派なスキャンダルとなる。
そんなことになったら、まず普通の結婚は諦めなければならなかった。
孕ませると言われ、さくらがおののくのも当然なのだ。

「ふふ、これで僕がさくらくんを妊娠させたとわかったら、大神のやつどんな顔をするかな」
「ひ……」

それをいちばん恐れていたのだ。
淫靡な調教を受け、何度も犯され、しまいには肛門まで征服されたとしても、黙っていれば
わからないはずだ。
秋月に告げ口されても、さくらが頑として否定すれば、大神は信じてくれるのではないか。
あるいは、さくらが正直に打ち明けて謝れば、きっと許してくれるはずである。
微かにそんな希望を持っていた。
何しろさくらの浮気というよりは、野犬に咬まれたようなものなのだから。

だが、それも強姦者の子を宿したとなれば話は別である。
いかに大神が表面上許してくれたとしても、複雑な心境になることは間違いない。
さくらとの関係もギクシャクするのが当たり前だ。
さくら自身、つき合いづらくなるし、そもそも不貞の子を孕まされたとなれば、別れざるを
得まい。
それが秋月の狙いなのかも知れなかった。
さくらは心底脅え、震えた。

「い、いや……それだけは……それだけは許して……に、妊娠だけはいや……」

石野が苦笑して秋月を窘めた。

「中尉、そう脅かすもんじゃない。せっかく熱く練り上がった女体が冷めてしまうぞ」
「そうですね」

秋月も、相変わらずさくらの媚肉を貫いた状態のまま嗤った。
石野が、醜い出っ腹をさくらの臀部に押しつけながら言う。

「心配せんでいい。妊娠はさせるが、産む必要はないからな」
「……?」

意味がわからない。

「わからんか。おまえには中尉の精子を受胎してもらうが、出産はしないでいいのだ」
「ど……どういうことなの……」

中絶させるということだろうか。
しかし、それならわざわざ妊娠させる意味がなかろう。
それとも、さくらと大神に絶望感を与えるためだけにするのだろうか。

「おまえが妊娠したとわかったら、すぐに孕んだ種は取り出す」
「取り出す……?」
「うむ。受精卵をおまえの子宮から取り出して、そいつをな、おまえが育てた降魔の胎内に
入れるんだよ」

石野らが調べたところ、この降魔は両性具有だった。
単為生殖が可能なのだ。
だから、一匹でも育てれば、そこから増やすことは可能である。
しかし石野の野望は降魔を量産することはなかった。
人間の受精卵を降魔に移植するのだ。

人型降魔は、人間との間で交配が可能らしいことがわかっている。
黒神大尉によると、この降魔も人型とのことだ。
つまり人と降魔の混血が出来るのだ。
降魔が育ってから人間の女を犯させててもいいのだが、今の状態なら、人間の受精卵を降魔
の子宮で受胎させた方が早い。

さくらは、大きな目がこぼれ落ちそうなくらいに拡げた。
今までの恐怖とはまったく別物の、本物の恐怖が彼女を襲った。
自分の受精した子が降魔に受胎され、新たな降魔として誕生するのだ。

「そ、そんな……」
「脅えることはない。そうして出来た子はな、良性遺伝で、きっと人並みの知性と降魔並み
の不死性を持っているはずだ。降魔から産まれたおまえの子は不死身の兵隊となるのだよ、
ひーっひっひっひっひっ」
「く、狂ってる……」

そうとしか思えなかった。
人間が決して手を出してはいけない領域にまで、この男たちは突っ込もうとしている。
しかも降魔を育成し人間と掛け合わせ、それを兵士として使おうとしている。
常軌を逸した自説を披露して甲高い声で笑い続ける石野は、本当に狂人に思えてならなかった。

「そんなの狂ってますっ……秋月さん、お願い、そんなことやめさせてっ」
「そうはいかないんだよ、さくらくん。僕はきみを妊娠させたいが、別に子供はいらない。
でも、閣下はそれを必要としている。となれば、結果は決まってるじゃないか」
「そんな……そんな……」
「それに上官の命令だからね、従わざるを得ないよ」

それを聞いた石野は大笑いした。

「おいおい中尉、それはないだろう。何としても真宮寺さくらを孕ませたいと最初に言った
のはきみだよ。儂はそれを利用しようと言っただけだ」
「どちらでも同じですよ、閣下。自分はさくらを孕ませたい、閣下はその子を利用したい。
双方の目的が合致してるわけです」

秋月はニヤリと笑って、再び腰を使い出した。
石野も負けじと下から腰を突き上げる。
たちまちさくらは反応した。

「ああうっ、あ、いいっ……お尻っ、すごっ……つ、突き上げて……くるっ……」

石野はさくらの腰を持ち上げるように突き上げ、秋月はそれを押し潰すように突き込んだ。
太い肉棒がさくらの狭い股間にひしめき合い、擦れ合う。
気をやったばかりの肉体は敏感過ぎるほどに敏感で、さくらの裸身を妖艶に染め上げていく。
より深い挿入を求め、花組の少女は腰を上下に振りたくった。
男たちに突き上げられるたびに嬌声を上げ、悲鳴を出した。

「ひぃっ……あ、秋月さんのがっ……ああ、う、後ろのと擦れてる……いいっ……」
「そんなにいいのかい。なら、これはどうだ?」
「あひっ……いいっ……お、おかしくなるぅっ……」

はち切れそうな二本のペニスに同時に犯され、尻穴も媚肉も抉られて、さくらはひぃひぃと
呻いた。
決して苦しそうなそれではない。
明らかに堪え切れぬ快楽を訴えている。

突き込まれると、さくらの乳房がぶるん、ぶるんと揺れ、触発されたように上の秋月が手で
掴む。
強い力で絞り込まれ、さくらはそれだけでいきそうになる。
優しく愛撫される方が好きだったのに、暴力的なセックスを強要され、今では乳房を潰さん
ばかりに揉み込まれる方が「男らしい」と思うようになってしまった。
好むと好まざるとに関わらず、さくらの肉体はすっかり秋月好みに開発されていたのだ。

愛を語るような性交よりは、激しく犯されるようなセックスが好きになってきている。
唇をつつき合うようなキスよりも、舌を淫らに絡ませ合い、口の中まで犯されるようなキス
に痺れた。
さくらは、もう普通のセックスでは満足出来ない身体にされていた。

秋月が乳房を揉み出したのを知って、石野の方はさくらの白い首筋に舌を這わせた。
ぬめぬめと気色の悪い軟体動物のような舌が、さくらの素肌を舐め回す。
不潔な唾液を塗りたくられる感触に、さくらは陶然となった。
穢されている実感が、さくらの被虐願望に火をつけていた。

「と、届いてるっ……秋月さんの、奥まで届いてるっ……いいっ……」

石野の突き込みも腸の深くまで届いたが、秋月のそれはもっと凄かった。
完全に子宮に到達している。
その深さに、さくらはくらくらした。
何だか、さっきより彼の男根が長くなっているような気がする。

気のせいではなかった。
確かに、さくらの痴態で昂奮した秋月のものがさらに大きくなっている、ということはある。
だが、それ以上にさくらの身体に変化が生じてきたのだ。
そのことに気づいたさくらは慄然とした。

(こ、これって、まさか……子宮が……下がって来てるの……?)

何度も気をやらされ、さくらの肉体が完全な受胎モードになったのである。
性的快感を強く感じた女体が反応して、子種を得ようと子宮が徐々に下がってきているのだ。
コツコツと子宮を叩く亀頭部の感覚でそれがわかるのか、秋月も気がついた。

「くっ……さくらくん、子宮が下がって来てるね」
「いやあっ」

やはり見抜かれていた。
それは、さくらが秋月らの行為に反応してしまったという、明らかな証拠であろう。
そのことを指摘され羞恥にまみれたが、それ以上に恐怖が襲ってきた。
子宮が下がってきたということは、それだけペニスとの接触が容易となり、孕みやすいという
ことになる。

さくらのおののきは、そのまま秋月の悦びとなった。
しかも彼には、さくら以上にさくらの膣内がわかるような気がしていた。
さくらは気づいていないが、彼女の子宮口が開いているのだ。
それがペニスを通じてわかる。
何度も絶頂に達し、肉体が緩んでいたこともあるし、下がった子宮をたくましい男根で幾度と
なく突き上げたこともあって、徐々に口を開いてきたのだろう。
ここで射精すれば、ほぼ間違いなく妊娠させることが出来るはずだ。
秋月の昂奮も頂点に近づく。

さっきまでは根元まで埋め込んで、ようやく届いていた膣の底に、今では悠々と到達している。
はみ出ている肉棒をさらに押し込み、さくらの股間に自らの腰を密着させた。
子宮を強引に押し上げられる感覚に、さくらは目を剥いた。

「ひっ、ひぎぃぃっ……秋月、秋月さんっ……ふ、深い、深すぎますっ……」
「わかるよ、さくらくんのいちばん奥にまで入ってるんだね」
「怖いっ……ああ、子宮が持ち上がっちゃうっ……」
「どうだい、こんなに深いのは初めてだろう」
「は、初めて……初めてですっ……こ、こんな深いの……ああっ……」

秋月は、喘ぐさくらの媚態を見て歪んだ笑みを漏らした。

「大神とのセックスじゃあ、こんなことはしてくれなかったろう」
「……」
「どうだ、僕と大神とどっちが大きい? はっきり言うんだ」
「そ、それは……」

さくらは困惑した。
答えは出ているようなものなのだ。
だが、それを口にすることは、大神を裏切り、蔑ろにすることとなる。
秋月は、そんなさくらの葛藤を見抜いているのか、言え言えとばかりに腰をグラインドさせて
きた。
ガツン、ガツンと硬いものが子宮にぶち当たる。
その痛みとも快美ともつかぬ妖しく淫靡な感覚に、さくらは頭の中が白くなっていく。

「ほら言えっ、言うんだ!」
「ああっ……くう……」

(だ、だめっ……そんなこと言っちゃだめっ……)

思わず口にしそうとなる屈服の言葉をさくらは必死になって噛みしめる。
その我慢する表情すら悩ましかった。
秋月は容赦がなかった。

「ほら、いいんだろ!」
「あああ……いい……」
「なら言え! 僕の方が大きいんだな!」
「ああ、はいっ……あ、秋月さんの方が……大きいですっ……」

ついに言ってしまったが、もはやさくらは正常な心理ではなかった。
一時的なことではあるだろうが、この時点では完全に性の狂った牝となっていたのだ。

「もっと言え。もっとだ!」
「くあっ……あ、あなたの方が、あっ……大神さんよりおっきい……ああっ……」
「よし。それでそんなに気持ち良い顔をしてるんだな? 大神より僕の方がずっと良いんだ
な?」
「そうですっ……ひっ……お、大神さんよりずっといいですっ……おっきいんですっ……たく
ましいのが、ああ、お、奥まで……子宮まで届いて……と、とろけちゃう……」

それまで秋月の言葉責めを黙って聞いていた石野も加わることにした。
さらに腰を突き上げながら、さくらを追い込む。

「娘、良いのはオマンコだけか? ケツはどうなんだ?」
「いいっ……お尻もいいっ……」
「よし、素直になってきたな。じゃあおまえの尻に入ってるペニスはどうだ? その大神と
やらと比べてどうなんだ?」
「そ、そっちのもおっきいですっ……くっ、大神さんより……大神さんより、ふたりの方が
ずっと硬くて太いのっ……ああ、お尻の奥に来てますっ……」
「くく、その太くて硬いのが好みなんだな? 大神のものより、たくましいものの方が好き
なんだな?」
「ああ、そうですっ……大きくてたくましいので奥を抉られると……ああっ……気、気が変に
なりそうになるくらい、いいっ……」

打って変わったようなさくらの痴態に、責める男たちも高ぶりが抑えられなくなった。
今度さくらがいったら、その締め付けで間違いなく出してしまうだろう。
出入りのたびに愛液を飛び散らせて、秋月の怒張がさくらの胎内奥深くまで入り込み、女性器
の最深部まで犯している。
後ろを責める石野のペニスも、ゴリゴリと音がしそうなほどにさくらのアヌスを軋ませていた。

「うああっ……う、動いちゃだめえっ……ふ、ふたり同時に動いたら……ああっ」
「どうなると言うんだ? いっちゃうのか?」

さくらはガクガクとうなずいた。

「そのくせ、さくらくんの方も腰を振ってるじゃないか。いきたいんだろ?」

まったく躊躇なくさくらはガクガクと首を縦に振る。

「いいかい、きみの子宮はもう口を開いてる。そこに射精してもいいんだね?」
「だめっ……!」

まだ最後の一線だけは残っているようだ。
孕んでしまったら、大神にも花組のみんなにも顔向け出来ないと思っているのだろう。

「だめ? だが、中に出されないときみは気をやれないんだよ」
「そんな……」

そんなことはないのだが、もうさくらは秋月の催眠術にかかってしまったようなものだ。
人格を崩壊させるほどの凌辱を加え、激しく淫らなセックスを覚え込まされた。
その張本人である彼の言うことは正しいのだと、心ではなく肉体がそう思っている。
思い込まされている。

「いいんだね、中に出すよ」
「それは……」
「いきたいんだろ? このまま焦らされていたら、本当に狂ってしまうかも知れないよ、さく
らくん」
「ああ……」
「言うんだ。中に出してくださいとね。そして、思い切りいかせてくださいと言うんだ」
「ああ、もうだめっ」

前後の突き込みの激しさに、さくらの心にも亀裂が入った。

「い……いかせてっ……」
「中に出されて、気をやりたいんだね?」

今度こそさくらは認めざるを得なかった。
心で制御しきれないものがある。
この恐ろしいほどの肉の悦楽は、我慢できるようなレベルではなかった。

もう、どうなってもいい。
妊娠でも何でもする。
だから埒を空けて欲しかった。
さくらは妊娠の恐怖よりも、子宮に精液を注ぎ込まれる快楽を選んでしまった。

「な、中に出して……いっぱい出して、さくらを……さくらをいかせてくださいっ……」
「孕んでもいいんだな?」
「いいっ……に、妊娠してもいいからぁ……妊娠してもいいから早くっ……もう、もう保た
ないっ……」

その途端、石野が呻いた。
言葉責めが始まってから、一層括約筋の締め付けがきつくなっていたのだが、さくらが妊娠を
許容した途端に、さらに収縮が激しくなったのだ。
もう彼女の肉体は、前と言わず後ろと言わず、男の精を求めていた。
早く絞り出そうと、締め付けが強くなっている。
それでも石野も秋月も、さくらからさらに大きな快楽を得ようと、懸命に堪えて律動を続けた。
媚肉も肛門も、激しすぎる出し入れですっかり爛れている。
それでもさくらは、少しも痛みは感じていなかったようだ。
喘ぎ、よがる声しか、その口からは出てこない。

キリキリと締め付けてくる前後の入り口こじ開けるように、ふたりの男たちはさくらの胎内と
直腸を貫いた。
直腸の奥と子宮口を存分に突き込まれ、さくらの軽い身体は、腰を中心に大きく揺さぶられて
いる。

「すっ、すごいっ……こ、こんな奥まで入って……お、お尻のと前のが、こ、擦れてっ……
だめえ、また……またいっちゃいますっ……」

腰が溶解してしまいそうな肉悦の虜となり、さくらは肉欲に狂った。
二本の肉凶器に貫かれ、嬲られるのを悦んでいる。

「もうっ……もう、おかしくなるっ……おかしくなりますっ……いかせてぇっ……いいいっっ
……」
「そんなにいきたいかね。どうする中尉、もうそろそろ……」

余裕を見せる石野だが、顔は少し歪んでいる。
さくらのアヌスがもたらす快美に、我慢しきれなくなっているのだ。

それは秋月も同様だった。
さくらの膣の素晴らしさはもちろんだが、それ以上に、大神ですらやっていないこと──さく
らの孕ませることが出来そうだという昂奮が彼を捉えていた。
それをやってこそ大神に勝てる、真宮寺さくらを自分のものに出来ると信じていた。

「わかりました、閣下。何も今回だけじゃありませんし、そろそろいきましょう。終わって休
んだら、また犯してやればいいですし」
「そういうことだな」

男たちの非道な会話など耳に入らず、犯され続ける美少女は、ただよがり喘いでいた。

「いいっ……た、たまんない……たまんないんですっ」
「どこがだ? オマンコか?」

さくらは大きく首をカクンと振った。

「オマ、オマンコいいっ……お尻もっ……い、いく……ああ、もういくう……」
「よし、いけ!」

上下の男たちは俄然、激しく動き出した。
サンドイッチにされた少女は、喘ぐ声も掠れ、それでも喘がずにはいられない。
揉み潰される肉体から汗が飛び、股間からは別の種類の体液が溢れ出た。

とどめとばかりに、秋月と石野が同時に最奥まで突き込んだ。
さくらの股間には、ふたりの男の陰毛がはっきりと感じられた。
前後ともぴったりと腰を押しつけられたのだ。
アヌスを犯すペニスは直腸の上部壁にぶちあたり、媚肉を貫いていた肉棒は、子宮口をこじ
開けるように密着した。
その瞬間、さくらは絶頂に追い立てられた。

「ああっ、おおきいっ……お尻のも……オマンコのも……ああ、中でまたおっきくなってきて
ますっ……」

射精が迫っているのだ。

「いくっ……ひっ、ひっ……ああ、もういっちゃうっ……いっ、いきますっっ!!」

気をやった瞬間、さくらはそのしなやかな肢体をぐうっと大きく仰け反らせた。
首も仰け反り、後頭部が下の石野の顔に当たる。
秋月の腰に巻き付かせていた脚が突っ張り、脚の指まで反り返っていた。
責める彼らも、この日最大の強烈な締め付けに耐えきれなかった。
耐える気もなかった。
がすがすと腰を打ち込み、思いの丈を放出した。

「くっ、出る!」
「出すぞ! 孕め! 孕むんだっ!」

どぴゅうっ。
どびゅびゅっ。
どぷっ、どぷっ。
びゅるるっ。
びゅくんっ。
びゅるっ。

「ひぃ! でっ、出てるっ……前にもお尻にも……ああ、熱いのがいっぱい……あっ、お、
奥で弾けて……る……ううんっ、いっく……いくう……」

射精は石野の方が一瞬早かった。
中将の精液はやや薄かったものの、さくらの腸咥内へと大量にぶちまけられた。
腸壁にびゅるびゅるっとひっかかっているのが、さくらにもはっきりとわかった。

秋月はさくらを押し潰すほどに腰を押しつけ、出来るだけ深いところに欲望の塊を放った。
子宮を持ち上げていたペニスは、当然のことながら子宮口にその亀頭部を食い込ませていた。
そこへ精液を噴射したのである。

秋月は、射精の発作のたびに腰をさくらに押しつけ、しゃくり上げるように腰を使った。
びゅくびゅくと脈打ちながら、秋月のペニスがさくらの子宮内に精子を注ぎ続けている。
さくらは、いつもよりずっと深いところに精液が当たっているのを感じていた。
勢いよく射精された精液は、子宮の奥の壁にまで届いていたのである。

「あうう……まだ……まだ出てる……子宮が熱い……こんなに出されたら溢れちゃう……は、
孕んじゃう……妊娠しちゃう……」

まさに種付けのように秋月はさくらの子宮に執着した。
さくらは時折、ぶるるっと腰を震わせる以外は呆然と──いや、陶酔していた。
大神以外の男の放った精液を、その子壷でしっかりと受け止めていた。
腸内はもちろん、胎内というより子宮にたっぷりと精液を出されてしまった。
そのことを嫌悪するどころか、恍惚としてしまった自分を恥じるだけの理性も気力も萎えていた。
さくらは目の前が暗くなり、すうっと意識が遠のいた。

──────────────────

石野と秋月が、それぞれ二度ずつ射精を終えると、ようやくさくらから離れた。
二本の男根を抜き去られた前後の穴からは、たった今注ぎ込んだ精液が滲み出るように零れて
いた。
石野は、脱いだ軍服の内ポケットからスキットルを取り出すと、口に押し当てた。
心地よく疲労した身体に、強い蒸留酒の染み渡っていく。
満足そうに唇を手で拭いながら秋月を見ると、まださくらの身体に未練があるかの如く、その
ぷりっとした臀部をさすっている。
石野は苦笑した。

「中尉、そう焦らずともいい。どっちみちその女はもうきみのものなのだからな」
「はあ、そうですね」
「まあ若いのだからそのくらいの性欲があった方がいいがな。一休みしたら、また責めてやろう」

秋月もさくらからいったん離れ、石野の差し出すウィスキーを飲んだ。
この後はどう責めようかという話題で盛り上がる。
今度はあの綺麗な顔にたっぷり射精してやろうとか、顎が外れるまで口淫させて吐くまで精液
を飲ませてやろうとか、そのうち縄や鞭の味も教えてやるのだなどと言って、卑猥そうな笑い
声を上げていた。

その時、ギィィとスチールドアを軋ませて中に入ってきた者がある。
今回の石野のプランを実施している数少ない研究員でも、ここのことは知らないはずだ。
知っているのは石野本人と秋月、そして。

「……黒神大尉か」

石野は、やや不機嫌そうに言った。
いかに部下でも女性である。
女に、こうした醜い男の欲望を知られるのは、あまり気持ちの良いものではない。

「何の用だ。しばらくはここへ来るなと言っておいたはずだが」
「……」

黒神は上官の詰問には答えず、部屋を見回した。
今の今まで犯されていたらしい真宮寺さくらが失神していた。
股間は、見るも無惨に穢されている。
この男たちが欲望のままに凌辱し続けていたのだろう。
黒神大尉は蔑んだ目で石野や秋月を眺めた。
どうして人間の男どもは、こんなくだらない快楽に浸りきるのだろうか。
子孫へ遺伝子を残すという意味合い以外で交尾するなど、他の生物では考えられない。
それどころか避妊してまで性交するという愚かな行為までするのが人間だ。
女性士官の思考は、野卑な将官の声で打ち切られた。

「答えたまえ。なぜここへ……」
「閣下、蛹が孵化しました」
「何? もうか!?」
「はい。あの降魔の蛹から成体への成長期間は極めて短いのです。二日もあれば充分です」
「そうか。で、成体はどうした? 第二実験棟の保育瓶の中かね?」
「いいえ、ここです」

黒神がすっと身を引くと、その後ろに降魔が立っていた。
全身真っ黒で、背中に折り畳んでいるらしい翼のようなものがある。
頭部には小さな角が二本あり、耳が鋭く尖っている。
口は耳まで醜く裂け、中からチロチロと真っ赤な舌を覗かせていた。
手足の爪は長く、それだけでも充分な殺傷能力がありそうだが、手には反り返った長剣を握っ
ていた。

見るからに恐ろしげな西洋の悪魔のような形態だが、成体といってもまだ完全に育ちきった
わけではないらしく、身長は1メートルほどしかない。
これから徐々に大きくなっていくのだろう。
それはともかく、ふたりの男は慌てた。

「き、きみ! なぜ降魔を野放しにするのかね!? 危険だろう」
「いえ、この降魔は私の言うことを聞きますので」
「なんだと? しかし君は、降魔は人間には決して従わないと……」
「ええ、人には従いません。しかし私には従います」
「ど、どういうことだ」

無様に狼狽えている初老の男に失望したかのように、女性士官は軽く首を振った。

「ですからね」
「!?」
「こういうことですよ、閣下!」
「ぐおっ!!」

言うが早いか、黒神の手がするするっと伸びて、石野中将の腹部に突き刺さった。
長い爪を携えた手のひらは、脂肪で出っ張った腹を貫き、そのまま背中に抜けていた。
ごぼっと口から血の塊を吐き出しながら、石野は呻いた。

「き、きさま……降魔……」

「黒神大尉だったもの」は、着ていた軍服を内側から裂いていた。
膨れあがった両腕や両脚が生地を引き裂いたのだ。
顔だけは冷たい美貌の黒神大尉なのに、身体の方は黒い降魔のものになっているだけにおぞま
しかった。

「気がつくのが遅すぎますよ」

黒神はそう言うと手剣を引き抜き、そのまま水平に振るって石野の首を斬り飛ばした。
声もなく倒れた石野の死体を見て、初めて秋月は事態を理解した。

「こ、この化け物!」

秋月は自分の拳銃を取ろうとしてロッカーに駆け寄ったが、その背中を突き刺された。
がくりと膝をついた秋月は、どうしたことか方向を改めた。
黒神が目で追うと、秋月はさくらの方へ這い寄っていたのだ。
匍匐前進しながら、色責めで気を失った少女の元へ近寄った秋月は、その手を失神したさくら
へ伸ばした。

「さ……くら、くん……」
「ふん」

くだらないと鼻を鳴らした黒神は、無表情で彼の後頭部に剣先を向けた。

──────────────────

黒神は、殺したふたりの死体を無造作に部屋の隅へ片づけた。
死体を引っ張った時についた血糊の後が生々しい。
切断した石野の首が床に落ちているのに気づき、黒神はそれを蹴飛ばした。
そしてさくらの身体もずるずると引きずった。
この娘にはまだまだ利用価値がある。
育った降魔の入っていた育成器にでも入れて生かしておくのだ。

部屋を出ようと扉を開けた途端、凛とした声が響いた。

「そこまでですわ!」

一際通ったその声に、黒神大尉──降魔は慌てた。

「だ、誰!?」

その声を打ち消すかのように、体育館のような施設の天井が抜けた。
その時、天井を見上げていれば、上空に巨大な飛行船──翔鯨丸が見えたことだろう。
大きな穴を穿ち、大きなものが4つも降ってきた。
2メートルから3メートルほどの大きさの鎧──というよりは西洋甲冑のような物体に、彼女
は見覚えがある。

「こ、光武!?」

赤、紫、緑、黄のカラーリングが施された霊子甲冑が、慌てふためく軍人の周囲を取り囲んだ。
紫の機体が、ずいと前にせり出して両手に持った巨大な薙刀を頭上に振るって叫ぶ。

「帝国華撃団、花組参上!!」

すみれの声に合わせるように、カンナ、紅蘭、そしてアイリスも、誇らしげにその名を口にした。
指導者なき後、いつのまにか指揮を執っているすみれが、切っ先を降魔に突きつけて言った。

「よくも今までわたくしたちを謀ってくれましたわね! このお返しはきっちりさせていただ
きますわ!」
「貴様……いったい、どうしてここが……」

後ずさる降魔の言葉には耳を貸さず、なおも続ける。

「さくらさんはどこ!? マリアさんやかえでさんはどこですの!」
「……」

思わずさくらに目をやった降魔の視線を追うと、そこに囚われた花組の少女がいた。
全裸にされ、意識を失っているようだ。
その無惨な有り様を見れば、彼女が今までどんな非道なことをされていたのか、女性なら言わ
れないでもわかる。
すみれの胸中に、制御不能の炎が燃え上がった。

「よくも……」
「……」
「よくもさくらさんを……よくも仲間たちをっ!」

すみれの叫びとともに、光武各機は蠢く二匹の降魔に飛びかかっていった。

──────────────────

「結局、どういうことだったんだ?」
「あの黒神大尉が降魔だった……んでしょうね」

カンナの問いにすみれが答えた。
事件処理を隠密裏に終えたすみれたちは、他の隊員たちに気づかれぬよう帝撃に帰還した。
ようやく落ち着いて、今はこうしてサロンで一服している。
すみれたちは、軍医学校敷設予定地を強襲し、降魔を二匹とも撃退すると、救出したさくら
たちを病院に搬送した。
現場検証を陸軍に一任し、帝撃での事後処理を終えて何とか落ち着くまで三日かかった。

後始末を陸軍に任せることは吉積のアドバイスだが、これが好結果をもたらした。
現場の後始末をさせるということは、すなわち陸軍にとってまずい証拠を隠滅する時間を与え
た、ということである。
軍の主導で起こった事件ではないにしろ、陸軍の不祥事であることに変わりはなく、表沙汰に
なったら非難が集中することは目に見えている。
今回、帝国華激団はその事件の被害者であり、同時に、表面化させることなく解決させた功労
者でもある。
いかに陸軍が帝撃に対して面白くない印象を持っていたとしても、この騒動が表に出れば、
謝罪あるいは謝意を表明しなくてはなるまい。

吉積の入れ知恵で、すみれたちはそれをしなかった。
こうなると軍としても、帝撃に大きな借りを作ったことになる。
これからは、幾分監視の目は緩むだろうし、少なくとも表面上は取りつぶしの動きはなくなっ
てくるだろう。

「やっぱりそうやったんや」

紅蘭が暗い顔をした。
怪しいとは思っていたものの、まさか降魔が帝撃本拠地に乗り込んでくるとは思わないし、
まして人に化けてくるなどというケースも想定外だ。
だが、石野と秋月を殺害した降魔が、陸軍女性士官の軍服を纏っていたことを考えると、
やはり黒神がそうだったとしか思えない。

「吉積少将が教えてくれたのですけど、あの降魔は幼生の他に蛹がいたらしいですわ」

すみれたちが去った後、調査に入った陸軍や軍研究所が押収した資料によると、防疫給水部
──石野中将らは、露西亜から降魔の幼生を十体ほど入手してきていた。
他に蛹が一体いたらしい。
だが、それは日本上陸の際、紛失したことになっている。
恐らく、その時に蛹が孵って成体となったのだろう。

吉積によると、黒神杏花なる陸軍士官は確かに存在したらしい。
ただ、石野たちの帰国とほぼ同時期に一時的に失踪、すぐに復帰している。
これは想像だが、成体となった降魔が黒神大尉を襲って殺害し、彼女の姿と身分を得たという
ことなのだろう。

「なるほどな、そうだったのか」
「でも、これで一件落着ですわ。あの場所にいた降魔は全部始末しましたし、幼生も処分でき
ました。あれを残しておいたら……」
「せやな。また良からぬ考えを起こすのが出てくるやろな。あれで正解や」
「そうだな。ところで、さくらやマリアたちは……」
「どうでしょう……」

すみれは手にしたカップを静かにテーブルに置いた。
その光景を見ながら、紅蘭もため息をついた。

「……大神はん、まだ帰って来んのかなあ」
「そうだな。ああ、でもよ、そういやさっき由里に聞いたが、支配人はそろそろ帰ってくるよう
だぜ」
「へえ! そうなんや」
「ああ、急遽予定を切り上げてもう帰路についてるって話だ。帰りの船から電報を打ってきた
ってよ」

三人は一様にホッとした。
やはり、今まで命令を受けるだけの立場だったから、上がいれば何かと息苦しい面もあるが、
いなければいないで不安が募るのだ。
顔を見合わせて微笑みあっていると声が掛かった。

「あのう」
「え……? あ、あなた!」

振り返ったすみれが仰天した。
目の前ではにかんでいたのは真宮寺さくらだったのである。
カンナも紅蘭も思わず立ち上がり、さくらの元に駆け寄った。

「さくら! もう大丈夫なのか!?」
「さくらはん、あまり無理しいな」
「はい、もう大丈夫です」

照れくさいのか、さくらは手を握ってきたカンナの手を静かに外したが、カンナは構わずまた
握ってきた。

「紅蘭の言う通りだ、無理すんじゃねえぞ。おまえは何でも我慢しちまうんだから」
「いえ、本当にもう大丈夫です」

さくらはそう言うと、すみれの方を向いて頭を下げた。

「すみれさん、本当にご迷惑をお掛けしました。あたし、本当にバカで……」

すみれも立ち上がってさくらの手を握りたいところだったが、そこは我慢した。
そんなことをしたら、せっかく作り上げたすみれのイメージが崩れかねない。
あくまで外面上はクールな美女でいなければならないのだ。
一瞬、切れ長の目が潤んだが、すぐにさくらに背中を向けた。
無論、座ったままである。

「……今さら何をおっしゃってるのかしら。さくらさんのドジにはもう慣れっこですわ。何年
つき合ってると思ってらっしゃるの?」
「はい……」

さくらは、零れた涙を人差し指で払った。
不器用なすみれの対応は、さくらにとっても慣れっこなのだ。
紅蘭がさくらを座らせると、意気込んで聞いた。

「そんで? そんで、かえではんやマリアはんは?」
「それが……」

さくらは比較的軽傷だったが、かえでとマリアはそうではないらしい。
というより、やはり監禁されていた期間が長いほどに、精神的なダメージが大きいのだ。
三人とも外傷はほとんどないが、降魔に責められるというあり得べからざる状況と、一部研究
員たちによる輪姦を受けているため、心的ショックはかなり大きかった。
いちばん最初のかえでなどは、精神崩壊寸前まで行っていたらしい。
マリアはまだ正気を保っているようだが、悪夢や幻影を見ることがまだあるようだ。
降魔に尻をほじくられ、さくらが来てからはそれからは解放されていたものの、代わりに連日
に渡って輪姦されていたのだから、いかにマリアが強靱な意志を持っていてもどうにもならな
いだろう。

さくらはまだ日が浅かったし、大勢の輪姦まではされなかったから、最後まで理性を失わなか
ったわけなのだ。
だが、それにしたってだいぶ堪えている。
さくらがそうなのだから、かえでやマリアがまだ入院中なのはやむを得まい。
四人が暗くため息をつくと、ドタドタと廊下を走る音がする。
すみれが顔を顰めた。

「……ったく、誰ですの? こんな時にデリカシーのない……」

八つ当たりしてやろうと神崎家の令嬢が立ち上がると、意外な人物が駆け寄ってきた。

「かすみさん?」
「さくらさんっ! さくらさん、いますかっ!?」
「は、はい」

さくらが呆気にとられて返事をした。
えらい勢いで駆け込んできたので、その迫力に押されて思わず立ち上がってしまう。
すみれが呆れたように言った。

「かすみさんでしたの。いったいどうしたって言うんですの?」

普段、すみれたちが廊下を走りでもしようものなら、たちまち叱られる。
叱るのはかえでか、今走ってきたかすみなのである。
その彼女が、わき目もふらずに廊下を全力疾走してきたのだからタダ事ではない。

「さくらさんのお部屋に行ったらいなかったもので……。あ、ちょうどよかった、みなさん
お揃いですね」

「落ち着いたお姉さん」兼「風紀委員」のかすみは、すみれたちにようやく気づいたように
言った。
息が切れている。

「だから、何を慌てているんですのと聞いているんですわ」
「隊長が……」
「え?」
「大神隊長が帰ってきました!」

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二ヶ月後。
公演のなかったその夜、大帝国劇場の通用門から、目立たぬように出ていく三つの影があった。
20代半ばくらいの和服の女性、帝撃の職員制服を着た20代前半と思しき若い男、そして
20歳前後の赤い袴を着けた娘だった。

若い女に、体調不良を相談された医療担当の女は、すぐに察した。
そして恋人とともに受診するよう勧めたのである。
妙齢の和服姿の女は、優しげな微笑を浮かべている。
若い娘の方は、話し掛けられて笑みを見せることもあったが弱々しく、殉教者のような悲壮な
表情を浮かべていた。
男の表情は闇に紛れてしまい、確認できなかった。




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