夜は更け、日付は改まっている。
寝付けないままに水ノ咲サクラは布団の中で寝返りを打った。

美人といっていい容貌である。
少々緩いイメージはあるが、だらしないほどではない。
気怠そうな雰囲気の中にも、そこはかとない女性のフェロモンを感じさせる。
ホステスをしているサクラは27歳になる。
もう年齢的にもそろそろこういう仕事に区切りを付けたいと思っていた。

子供のこともある。
シングルマザーというだけで偏見を持たれるだろうし、学校の先生や友達にサクラの職業を尋ねられて、息子のサスケが肩身の狭い思いをするのは辛かった。
生憎、まだそんな素振りは見せていないが、7歳という年齢の割に賢いサスケは、サクラを悲しませたり心配させないために気を使っているかも知れないのだ。

だからサクラは隣人の男──市丸恭介にアプローチを掛けていた。
恭介は高校教師で、サクラより2歳年下の25歳だ。
そのせいだけではなかろうが、頼りない面もある。
優しいというよりも、やや優柔不断だと言った方がいいだろう。
だが、サクラが性格的に男勝りなところがあるだけに、亭主はそれくらいの方がうまく行くと思っていた。
恭介という男は、良きにつけ悪しきにつけ「尻に敷かれる」タイプなのだ。

何も恭介しかアテがないわけでもない。
ホステスならば、しかもサクラほどの美人であれば、いくらでもパトロンや愛人に立候補する男はいたろうが、それでは意味がない。
サクラは身を固めたいのだ。
結婚したいのだから愛人では困る。

中には若い客でサクラに結婚前提で交際を申し込んでいる男もいないではなかったが、サクラはそうした若いセレブ層をあまり信用してはいなかった。
職業柄、そういう連中とつき合いは多いが、総じて身が軽く、落ち着きがない。
不倫や浮気、二股や三ツ股など当たり前というのが多いのだ。
サクラだって若い頃はそうだったし、その頃ならそれを承知して結婚し、自分も遊んだかも知れない。
結婚相手は単なるパトロンと割り切ればいい。
しかし、サスケがいる以上そうも出来ない。
それにサクラ自身、もう落ち着いて普通の平凡な暮らしがしたいと思っていたのである。
そんな中、恭介は色々な意味で手頃だった。

人は良い。
少々女好きではあるが、男は大抵そんなものだろう。
真面目だし、酒や博奕で身を持ち崩すとも思えない。
風俗の女遊びやちょっとした浮気くらいはあるかも知れないが、それくらいで目くじらを立てるほどサクラは子供ではなかった。

だが、恭介は結婚していた。
最初は知らなかった。
彼とその妻は、そのことをひた隠しにしていたからだ。
相手は、何と恭介の勤める高校の生徒だったのだ。
なるほど、それでは公には出来ないだろう。
それを知ったサクラは複雑な気持ちになったものの、恭介とその妻──小野原麻美の人柄に触れ、彼らを陰ながら応援する側に回ったのだった。
麻美に親しみを持ってしまった以上、恭介を寝取るようなことは出来そうにない。

両家共に安普請であり、大きめの物音は聞こえてくる。
さっきからサクラを悩ませていたのは、恭介と麻美の閨の声だったのである。

「……」

いったん気づくと気になってしまい、ますます目が冴える。
ふっと小さくため息をついて起き上がると、枕元をまさぐってタバコを取り一本口に咥える。
少しほつれた髪を指を突っ込んで、軽く頭を掻く。
隣に寝ている息子のサスケを起こさぬよう、そっとライターで火を着けた。

気にすまいと思えば思うほどに、耳をそばだててしまう。
もぞもぞとした雰囲気、くぐもったような声に混じり、たまに少し大きめな喘ぎ声らしいものまで洩れてくる。
あの微笑ましいカップル──夫婦の閨を想像し、サクラは苦笑した。
奥手だが、男好きのしそうな肢体をもった麻美を、宝物のように扱っていた恭介。
男の欲望と優しさがせめぎ合い、それでも麻美に対する愛欲を抑えきれず、貪るように愛撫しているのだろう。
そんな妄想を頭を振って振り払うと、サクラは二口ほど吹かしてからタバコを折り消し、そのまま横になって布団を頭まで被った。

──────────────────

恭介は一通りの愛撫を終えると、敷き布団の上に横たわる麻美の見事な女体を眺めている。
汗の浮いた白い裸身は、いくら見ても飽きが来ない。
見れば見るほどに素晴らしい身体だ。
快楽に蕩け掛かった愛らしい美貌も、見ているだけで勃起してしまう。
もう見慣れたはずの恭介でさえ、生唾を呑み込んでいる。
愛撫される気持ち良さに身を震わせ、それでも恥ずかしい声を聞かれたくないと必死に我慢する仕草や表情も、男を奮い立たせるものだった。

「だ、ダンナ様……あんまり、その……み、見ないでください……」

麻美は消え入りそうな声でそう言った。
愛しい夫に胸を揉まれ、首筋を舐められ、露わになった肌を揉み擦られていた。
そのたびに震えるような快感に包まれ、全身は燃えるように熱い。
可憐な唇から洩れる呼気も熱く、体内の熱を発散させていた。

「どうして? もう麻美の身体は何度も見てるんだよ。こんなに綺麗なのに……」
「でも……、だって恥ずかし……あっ……」

恭介はそのふくよかな裸体に覆い被さると、愛妻の言葉を封じるかのようにキスをした。

「ん……んん……」

麻美は近づいて来る夫の顔をじっと見つめ、唇を塞がれると同時に目を閉じた。
ちょんちょんとついばみ合うような愛おしい口づけを交わすと、恭介の舌が麻美の唇を割っていく。
一瞬、ぴくりとした麻美だったがすぐに受け入れ、そっと口を開けた。
恭介は麻美の柔らかい唇の感触を愉しみつつ、その咥内を味わっていく。
彼らしく優しい動きだったが、舌は麻美の口に侵入し、濃厚なディープキスとなっている。

「ん、んう……んん……」

苦しいのか、麻美は少し顔を顰めたものの、決して口を離そうとせず、両手を恭介の背中に回し、ぐっと抱きしめた。

「んん……んっ……!」

恭介の舌が上前歯の裏側をなぞると麻美はピクンと反応し、切なそうになよなよと顔を振った。
その頭を抱え、恭介はなおも若い妻の口腔を犯す。

「ん……ん……んっ……ぷあっ」

さすがに苦しかったのか、麻美はいやいやするように顔を振り、両手を恭介の頬に添えて顔を引き離そうとする。
恭介も無理はせず、そっと口を離した。

「ごめん……、苦しいよね」
「はい、少し……。でも、いいです……あ……も、もっと……」
「麻美……」

ふたりはまた顔を重ね、唇を吸い合った。
恭介は、自分と妻の関係、そして高校生という麻美の立場と年齢を考え、結婚後もその身体を抱くことはなかった。
もちろん性欲はあったし、麻美の身体に魅力を感じないわけがない。
それでも、義父との約束──麻美が卒業するまでは性交しない、子供は作らない──もあったし、
ぎりぎり寸前でいつも我慢してきたのだった。

恭介の優しさと生真面目さが為せる技であり、麻美もそんな恭介を愛していた。
むしろ麻美の方は「早くダンナ様のものになりたい」と強く思っていたから、そんな夫を物足りなく思うことはあった。
それとなくこちらから誘ってみたり、自分から求めて見せたことすらあったが、それでも恭介は自制したのだった。

秘密の関係故に巻き込まれた数々の騒動を経て、やっと結ばれてからまだ半年も経っていない。
そうでなくとも、優しい恭介はそれなりにモテたし、可愛らしい麻美は脇が甘いところもあって、他の男からの幾多の求愛行為があった。

そのため種々のトラブルがあって、恭介が一時的に精神的なEDになってしまったことがある。
その際麻美は、落ち込む夫を励まし、健気なまでの奉仕をしていく。
戸惑い、慌てる恭介を宥めてその男性器を愛撫し、見事に勃起させたのだ。
そして、その時とうとう結ばれたのである。

ここまでなら微笑ましい思い出だが、それ以降の恭介は、それまでの鬱屈した禁欲生活を一気に解消すべく、麻美の身体を堪能したのだった。
「やりまくり」と言うほどではないものの、ことあらば可愛い妻の身体を愛し、その肉体に溺れた。
麻美は麻美で、もともと恭介に抱いて欲しいと常々思っていたのだから性欲は強かったのかも知れない。
もっとも、最初のうちは恭介に抱かれ、身体をいじくられ、愛撫され、挿入されても、快感というよりは「愛されている」という精神的満足感の方が強かった。
もちろん性の快楽もあったから、恭介の求めには素直に応じた。

もうすっかり身体はほぐれたと思った恭介は、麻美の腰に手を掛けてひっくり返し、俯せにしようとした。
今日は後背位で挑もうと思ったらしい。
すると麻美の手が伸び、恭介の腕をそっと掴んだ。

「あ……、ダンナ様」
「なに?」
「あの……、今日はその……前から……」
「それは構わないけど……、なんで?」
「ダンナ様の顔を見ながら……したいんです……」
「いいとも」

恭介は微笑んだ。
苦笑の成分も入っていたかも知れない。
結婚してしばらく、麻美を抱くことが出来なかった。
悶々とした毎日ではあったが、結ばれて以降は人並み以上に「励んだ」つもりだ。
麻美もまだ若いとはいえ幾多の性体験を経て、それなりに慣れたはずだと思っていたのだが、こうしたところはまだまだ子供のようだ。
それがまた魅力でもあった。

17歳という年齢。
おとなにはなりきれず、子供でもいられない。
少女と女が同居する不思議な生き物。
それが小野原麻美という少女だった。

「んっ……!」

恭介が乳房を掴むと、麻美はクッと顎を反らせて呻いた。
快楽の喘ぎを発するのは、恭介の前でもまだ恥ずかしいらしい。

「ああ……」

掴んだ乳房を優しく揉み込み、肌をくすぐるように撫でると、今度は気持ち良さそうな声を控え目に上げた。
恭介はそのまま右手で麻美の左足首を掴むと、大きく左右に開脚させる。
気づいた麻美が「あっ」と小さく叫ぶと、充血しきった肉棒の先を媚肉にあてがう。
その熱さと硬さに戸惑う羞恥の表情を愉しみながら、夫は新妻のそこを貫いた。

「んっ……ふわあっ……!」

熱いものが中に潜り込んでくると、麻美のくびれた腰がギクンと反応する。
恭介は、悶え蠢く腰を両手でしっかりと抱え、麻美の狭隘な肉孔を突き通していく。
狭いところを男根にこじ開けられる感触に麻美は苦しそうに呻き、ググッと押し込まれると「かはっ……」と熱い息を吐いた。
ミチミチと膣道を押しのけながら、恭介のペニスが襞を掻き分けて奥へ進んで行く。

(入って……きたっ……ダンナ様のが……んんっ……)

麻美は唇を噛みしめ、太いものを突き刺される苦鳴と嬌声を押さえ込む。
恭介は、そんな麻美の美貌を眺めながら、なおも腰を小さく捩りつつ、挿入を続ける。
恭介はこの瞬間が大好きだった。
麻美を自分のものにしているという実感を強く感じるからだ。そ
して根元まで埋め込み腰がぶつかると、麻美と恭介は同時に腰を震わせた。

「ううっ……」
「ああっ……」

麻美は小さく痙攣しながら男根による圧迫感に耐えていたが、すぐにくたりと力を抜いた。
夫はその顔を正面に向かせ、柔らかく微笑む。

「……入ったよ」
「はい……ダンナ様のが全部……入っちゃいました……」

麻美はそう答え、恥ずかしそうな笑顔を見せた。
恭介は、そんな麻美がたまらなく愛おしくなり、また彼女の唇を吸った。
今度は舌まで入れず、そっと唇を重ねて軽く吸い合う程度だ。
それでも快感は充分で、麻美はキスと同時に腰まで持ち上げ、夫のものを求めるほどだった。
恭介は、麻美の髪をそっと撫でながら呟く。

「……いくよ」
「はい……ああっ!」

恭介のペニスが麻美の中をえぐり出した。
まだゆっくりとした抜き差しであり、さほど強い刺激を与えてるとは思えないが、麻美はしっかりと感じていた。
恭介に優しく愛されている、そのペニスを自分の中で迎えている。
そう考えるだけで膣の奥からこんこんと蜜が滲み出てきてしまう。
彼女が生まれつき感じやすかったということもあるだろう。
恭介もその肉棒でそれを感じ取っているのか、徐々に動きを強めていった。

「ああ……、いい……気持ち良いです、ダンナ様……あっ……」
「僕もだよ、麻美……うっ……」

夫のペニスが挿入され抜かれる時に、自分あそこがかなり濡れていることを実感する。
それが恥ずかしいのか、顔を伏せて喘ぐ麻美の顔をまた正面に向かせ、恭介は優しく口づけする。
麻美も積極的に応え、腕を伸ばして夫の背中を抱き寄せた。

「あ、あう、いい……ああ、どうしてこんなに……ダンナ様ぁ……」

恭介はぐいっと内部を抉るとペニスを引き抜く。
その際、カリで襞を擦ってやると、麻美は切なそうに身体をくねらせ、熱っぽく喘いだ。
もう受け身だけでなく、恭介のピストンに合わせるように自分から腰を使ってきていた。
恭介は少しずつストロークを大きくしていき、麻美の膣を責めていく。そのたびに麻美の愛液が粘り、恭介の肉棒に絡みついた。
淫らな粘った水音が響き、ふたりの性感をより高めていく。

「麻美……」
「は、はい、ダンナ様……あっ、いい……」
「麻美のここ……なんて言うんだい?」
「え……、ああっ……」

恭介はクイッと腰を使って媚肉をこそぐ。夫はそこの名を口にさせようとしている。
麻美は頬をカッと赤く染めた。

「言って。ここは?」
「そんな、恥ずかしい……言えません……」
「そう? なら……」
「あっ……!」

恭介が腰を引き、肉棒を引き抜こうとしたので、麻美は驚いたように叫んだ。
そして逃げる腰を手で抱え、自分も腰を持ち上げて挿入をねだる。

「あ、やだダンナ様……も、もっと……」
「して欲しいんだろう? じゃあ言って」
「ひどい……、意地悪です、ダンナ様……」

麻美は少し恨めしそうにそう言った。
本来、恭介はS気などないのだが、どうも麻美は「虐められたい」という願望があるのではないかと思っていた。

前にも、麻美が実家に電話している時に強引に抱いたことがある。
当然、麻美は驚き、やめるよう哀願したが恭介はそのまま続けた。
そして挿入したのだ。
麻美はセックスされながら父と電話を続け、思わず洩れそうになる喘ぎを堪え、くぐもった声を聞かれないよう必死になって我慢していた。
恭介も、悪戯が過ぎたかなと反省しかかったのだが、その時、麻美は激しく反応していたことに気づいた。
いつも以上に愛液が分泌され、膣から零れた蜜が腿を伝い落ちて床に小さな水たまりを作るほどだったのだ。

以来、虐めるようなセックスをすると、そうでない時よりも燃え上がっていたように思える。
感じ方もそっちの方が激しかった気がした。
だから時々こうした責めを加えるようになったのだった。
麻美もそれは了承済みらしく、恭介の狙いを理解して「乗っている」フシもあった。

ジュンっとあそこが潤んでくるのがわかる。
麻美は目を堅く閉じ、小さく口を開けた。

「……んこ……」
「ん? 聞こえないよ」
「意地悪です、ダンナ様……」
「はっきり言わないとわからない」
「……。お……」
「お?」
「お……まん……こ……」
「もう一度」
「おまんこ……です」
「よしよし、よく言えたね」
「ああ……」

麻美は泣きそうな声でそう言うと、恥ずかしくて恥ずかしくて消えたくなる。
それなのに、さっきよりもずっと感度が鋭くなり、膣に収まった恭介の男根をしっかりと感じ取っていた。
恭介は、心なしか嬉しそうな顔でさらに続ける。

「じゃあ、麻美のオマンコは誰のものなのかな?」
「……」
「僕の……だよね?」
「は、はい……。麻美の……お、まんこ、は……ダンナ様のもの……ダンナ様だけのものです……ああ……」
「うん、わかったよ、麻美。ごめんね、ちょっと調子に乗りすぎた」
「ダンナ様ひどい……優しくして欲しいのに……」
「わかってる。じゃ、いくよ」
「あっ……」







再開された律動に、感じやすい妻はすぐに反応し始める。
ズンズンと突かれるたびに高みへと上昇し、口に溜まる唾液と喘ぎを呑み込みつつ、苦しそうに顔を振りたくった。
そうでもしないと快感が体内に溜まりすぎてしまい、身体が破裂しそうな気がしていた。
膣の締めつけも強まり、恭介のペニスをきつく咥え込んでいる。

「あっ……ああっ!」

麻美の声が1オクターブ高くなった気がする。
そろそろいきそうなのだ。
恭介はさらに腰を突き込んで深くまで挿入し、麻美をよがらせる。
突くだけでなく、ゆさゆさと揺れる乳房を揉み上げ、首や肩口に熱い口づけを降らせていた。

「ああっ……ああっ、いい……ダンナ様、すごい……いいですぅ……」
「もっとよくなっていいんだ、麻美。ほら、もういきそうだろう?」
「んんっ、は、はいっ……お願い、ダンナ様も一緒にぃっ……いいっ!」

麻美は、今にもいきそうな切なさと喘ぎ声を上げっぱなしで呼吸困難となる苦しさに苛まれ、表情を歪めながら何度も首を激しく振った。
恭介の責めも攻撃的となり、麻美の裸身が激しく揺れ動くほどに律動を加えていく。
全身が揺さぶられるような快楽に喜悦の表情を浮かべた麻美の声が悲鳴に変わる。
痙攣が止まらなくなり、わなわなと腰を震わせた。
男根を抜き差しされると媚肉からは愛液が飛沫となった。
突き込む時は膣圧が一瞬緩んで奥まで迎え入れ、抜かれそうになるとキュッと絞まって収縮する。
ペニスにへばりつく膣の心地よさに、恭介も限界となってきた。

「くっ……、あ、麻美ぃっ……」
「あっ、あっ、ダンナ様っ……あたし、もうっ……」
「麻美っ……!」
「くうんっ……あ、ああっ……ああああっっ!!」

麻美の頭が思い切り仰け反り、後頭部でシーツを強く擦っている。
綺麗なラインの顎を突き出し、大きく口を開けて絶頂を告げた。

「い、いきますっ……!」
「くっ、出るっ……!」
「ああっ!」

熱い射精を受けると、麻美は背中をググッと反り返らせて弓なりとなった。
達した声を発した白い喉首がピクピクと痙攣しながら、背と同じように反っている。
媚肉も激しく収縮し、最愛の夫のものを絞り取っていた。
どくどくと注ぎ込まれる精液を実感し、麻美は陶酔したようなとろけた美貌を晒し、なおも膣を引き絞っている。

(ああ、出てる……ダンナ様のが……)

恭介の思いが、そのまま精液の暖かさとなって麻美の胎内を覆っていく。
恭介のものを咥えている媚肉は、僅かな隙間から蜜と精液の混じった液体を滲ませていた。
恭介は麻美に腰を密着させたまま強く抱きしめ、その唇を吸った。

「んん……」

麻美はピクンと身体を小さく跳ねさせ、絶頂の余韻に酔いながらも覆い被さってくる夫の背を抱いた。
恭介に吸わせるだけでなく、麻美の方からも強く夫の口を吸った。
互いの唾液と体温が交換され、相手が自分のものとなり、自分が相手のものになったことを実感する。
射精後もしばらくそのまま動かなかったが、キスを終えると互いに身体を離していく。
恭介は、まだ「はっ、はっ」と激しい呼吸を繰り返している麻美の頭の下に自分の腕を潜り込ませる。
気持ち良い腕枕の感触に、ようやく麻美も我に返る。
男性の筋肉が心地よかった。
ほんのりと恭介の匂いが漂い、麻美は夫にわからぬように鼻から息を吸った。

「……」

麻美は、仰向けになって天井を見ている夫の横顔をぼんやりと眺めている。
色々あったけど、やっとこの人のものになった気がした。
細い指をそっと伸ばし、優しい夫の頬をちょんと突いてみる。

「ん……」

恭介が麻美を見て微笑む。
麻美も笑み返し、まるで犬か猫のように恭介の胸に頭や顔を擦りつけて甘えている。
そんな妻の頭を撫でながら恭介が言った。

「麻美……」
「はい」
「しばらく……その、避妊しようか」
「え?」

麻美は少し驚いて夫の顔を見直した。
恭介は麻美の方を見ず、まだ天井を見つめている。

「どうして……ダンナ様、赤ちゃん欲しくないんですか……?」

麻美は少し不安そうに言った。
彼女は子供好きである。
そもそも、セックスも子作りのための儀式である、と思っているところもあった。
無論、夫との愛情交歓であり、官能的な気持ち良さからしている面も強い。
それは事実だ。
でも、それとは別に愛する恭介との間に子供が欲しいという思いは強かった。
それは女性の本能でもあるだろう。
なのにそれを否定されるとは思いもしなかった。
夫は顔を妻に向けながら答える。

「そうじゃないよ。僕も麻美の赤ちゃんが見たい。でも……」
「でも?」
「まだ麻美は高校生だ。もしこのまま……避妊しなかったとして、妊娠してしまったらどうする?」
「あ……」

学校にいる時は別だが、こうして帰宅して恭介とのつましい夫婦生活を送っている中では、自分が現役の高校生であるということはあまり考えたことはなかった。
でも、確かに夫の言う通りだ。
仮に妊娠してしまったらどうなるのか。
麻美にとって堕胎という認識はまるでないから、妊娠したら流産しない限り出産することになる。
恭介の子なのだからそれは喜ばしいことではあるのだが、自分の立場がそれを許してくれそうになかった。

「卒業して、誰にも文句を言われなくなるまで……一緒に寝るのをやめようか?」
「それは……いやです……」

同衾できないなんて信じられない。
毎晩でもダンナ様に抱かれていたい。
それが麻美の偽りない気持ちである。
しかし、今までのように避妊したりしなかったりという状況では、健康体の麻美ならいつ妊娠してもおかしくなかった。
麻美の通う高校の教師である恭介の立場もあるし、このままというわけにはいかない。
麻美は少し考えてから自分の考えを告げた。

「あの、ダンナ様……あたし、学校を辞めても……」
「それはダメだ」

恭介は妻に全部言わせず、強く彼女の意見を否定した。

「絶対にダメ」
「あ、でも……あたしは別に……」

このまま大学へ進学したいとは思わなかった。
恭介の収入との兼ね合いだが、正規に勤めるつもりもあまりなかった。
働くのは一向に構わないが、パートやアルバイトでいいと思っている。
だから学歴は不要だろうと麻美は判断していた。
しかし彼女の優しい夫は、麻美の希望をやんわりと拒んだ。

「ダメと言ったらダメ。麻美、いいから高校くらいはちゃんと卒業しなさい」
「……」
「後で悔いが残るかも知れないよ。その先、大学へ行けとか就職しろ、とまでは言わないから、高校くらいは、ね?」
「……」
「友達だっていっぱいいるだろう? その関係をわざわざ断ち切ってしまうことはない。それに、麻美のご両親だって中退は望んでないだろう」

それもそうだ。
もし麻美が高校を中退して、さっさと恭介との暮らしに入ってしまったら、両親はいい顔をしないだろう。
麻美は自分の意志で学校を辞めると決断したのに、親はきっと退学は恭介が指示したものだと思うに違いないのだ。
徒に夫の立場を悪くすることもなかったし、恭介も気持ちも嬉しかった。
麻美は素直に頷いた。

「わかりました。それがダンナ様の望みなら……」
「ん。良い子だ」

ふたりはまた寄り添い、唇を重ねていく。
麻美は、夫と重なり合った股間の部分に違和感を感じ、顔を赤らめて少し戸惑ったように言った。

「あ、あのっ……ダンナ様の、また……」

恭介のペニスは麻美の柔らかい肉の感触を得て、またむくむくと元気を取り戻していた。
抱きしめながら、恭介は麻美の耳元で囁いた。

「もう一度……いいよね?」
「……はい」

麻美は少し恥ずかしそうに頷いた。

「……?」

ふと何かに気づいたように、恭介が天井を見る。
何もあるはずもなく、今度は引き戸や窓を眺めた。
物音がしたわけでもなく、ただ何となく気配を感じた。麻美がきょとんとして言った。

「ダンナ様、何か……?」
「え? ああ、うん……何でもない」

恭介はそう言って、再び行為に没頭していく。
麻美は少し不安そうだったが、すぐに夫の愛撫に巻き込まれ、快楽の縁を漂っていった。



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