「……っ……っ!」
「……?」

何やらおかしな気配がして、南は虚ろな目を開いた。
天井を向いていた顔を横に傾けると、部屋を分断していたはずの間仕切りがなかった。
電動のアコーディオン・カーテンは全開となっており、その向こうが見渡せる。

「え……、あ? キャプテン……なんで……」

向こうには大きなベッドがもう一台あり、そこには紀子がいた。
ブラとガーターの下着姿であり、ショーツやパンティはつけていない。
下半身が丸出しになっていないのは、彼女の前にもうひとりいたからだ。

目が合ってしまった。

上半身裸になっている上杉達也だった。
達也は口をガムテープで塞がれ、思うように声が出せないようだ。
かなり息苦しいらしく、鼻で荒く呼吸している。

達也は口を塞がれた上、後ろ手に手錠を掛けられている。
足首にも革製のベルトが巻き付いていて、両足首を20センチほどのチェーンで繋いでいた。
ベルトからはもう一本ずつ細いチェーンが伸びていて、それぞれベッドの左右の脚に固定されている。
立てはするだろうが、移動は出来そうになかった。
その状態で、達也は半ば呆然と目の前の南を凝視していたのである。

「た、タッちゃん……?」

あまりのことに南は大きく口を開け、唖然として達也を見ている。
達也は口を塞がれ声が出せず、ただ呻くしか出来ない。
手錠で固定された腕も自由にならず、もがくくらいしか動けなかった。
ただ、自由な脚で立ち上がり、逃げようとはしていない。
間仕切りの向こうに何やら気配があることくらいは南にもわかったが、それを追求する暇もなく、部屋に入るなり由良の凌辱を受け、責めが佳境に入るに
つれて、そんなことは気にならなくなってしまっていた。
いつの間にかカーテンが開放され、現状を把握したのだった。

「い……いやああああっっ! 見ないで、見ないでタッちゃん、お願いぃっ……!」

見られていた。
由良の愛撫に身を任せて喘ぎ、悶えていた姿を、犯されて快楽に翻弄され、嬌声を張り上げつつ絶頂してしまったのもすべて見られていた。
浣腸責めや肛門性交までされた写真やビデオまでは見られていないようだが、別の男に抱かれるシーンをナマで見られてしまったのだ。
どちらがどうとは言えないが、南にとって死にたいほどの羞恥と身を焦がすような背徳だった。

「んんっ! ……んっ……っ……!」

南の血を吐くような悲鳴を聞いて、達也は我に返ったようにもがき、暴れ出した。
それを後ろから紀子が抱きしめて止める。
ブラ越しに自慢の乳房を達也の背中にグッと押しつけながら、その耳元で囁く。

「あらあら、どうしたの今さら。可愛い彼女の悲鳴を聞いて、突如ヒーローになりたくなっちゃった?」
「っ……!」

達也の動きが止まった。
そして悔しそうに顔を背け、後ろに回した手を握りしめている。
紀子はそんな達也の身体に指を這わせている。
男の乳首を面白そうに指でいじったり、長い舌で首を舐める。
南は信じられないものを見たような表情で絶叫する。

「やめて! キャプテン、やめて! タッちゃんにひどいことしないで!」

紀子は鼻先でフンと嗤って南に言った。

「ふぅん、今のあなたでもこの人……上杉くんのことが気になるのかしら?」
「あ、当たり前ですっ! 私とタッちゃんは……」
「恋人同士?」
「そっ……そうです」

紀子はそれを聞いて可笑しそうに笑った。

「よくもまあ、そんなことが言えるものね、浅倉さん。上杉くんという素敵な彼氏がいるっていうのに、由良さんに抱かれて悩ましい声を上げてよがって
いたのはどこの誰かしら」
「よ、よがってなんかいません! 私は……、私はコーチに無理矢理っ……」
「犯されたって言いたいの? 最初はそうかも知れないけれど、今はどうなの? なんだかんだ言っても、由良さんに抱かれて悶えて喘いで、しまいには
いっちゃったんでしょう? 言い訳はいいわ、私たち、ここでずっと見ていたんだから」
「……」
「強姦されて気をやるわけないわ。あなたは由良さんと納得ずくでセックスしたのよ。それで何度もいかされた」
「違う……違いますっ!」
「そう? じゃあ合意の上じゃないのに、無理にレイプされたのにいっちゃったの? それはそれでひどいんじゃない? 暴力的に犯されたのに絶頂する
なんて、どれだけ淫乱なの浅倉さんは」
「それは……」

性的に疎かった南に由良のような男が襲いかかれば、しかも連日のように調教じみたセックスを強要されれば、否応なくそうなってしまうだろう。
ところが根が生真面目な南には、紀子の意地の悪い指摘が「もっとも」に思えてしまい、達也に対する贖罪の思いと、暗い快楽に浸ってしまった自分自身に
対する嫌悪感でいたたまれなくなっている。
口ごもる南に、勝ち誇るように紀子が言った。

「所詮、あなたはそんな女なのよ。新体操界の期待の新星? 国民的アイドル誕生? 笑わせないでよ」

別に南本人がそう自称したわけではないのだから、南が落ち込んだり非難される謂われはないのだが、ことさら紀子は責め立てた。
そして、まだ往生際悪くもがいている達也を抱きかかえながら、懐柔するように猫なで声で言った。

「……でも、そう落ち込むことはないわ。だって、うふふ……、この上杉くんだって浅倉さんと同じだもの」
「タッちゃんが……」
「そうよ。どうする上杉くん? ガムテープ取ってあげるから、浅倉さんが犯されてるのを見てどうなったのか、自分で説明してみる?」

紀子はそう言いながら、口を塞いでいたガムテープを一気に剥ぎ取った。
かなり強力な粘着力だったらしく、剥がされた口の周りがほんのりと赤くなっている。
達也は必死に顔を背けていたが、紀子が後ろからその顎を掴んで、強引に南の方に向けさせた。
そして、彼女に似つかわしくなく、やや荒い口調で命令する。

「さあ! 言いなさい、上杉達也! ここであなたは何を見てどう思ったのか、そしてどう反応したのかをね!」

この間、由良は南を押さえつけて自由を奪っている。
南は上半身を起き上がらせ、今にも達也に駆け寄ろうとしていたのだ。
背中からしっかりと抱き留め、「離して! 離して下さい!」と抗議して暴れる南の声を無視して、動きを止めている。
由良は紀子の行動に口を挟まず、逆にその状況を愉しんでいるかのようだ。
紀子は何も言えない達也を見てほくそ笑み、指先で彼の喉もとをなぞりながら言った。

「……そうよね、言えないわよね。いい、浅倉さん? 上杉くんはね、由良さんに弄ばれるあなたを見ながら、ひどく興奮していたのよ」
「こ、興奮て……」
「わからないの? ほら、私が今しごいてるものよ」
「……!」

よくよく見れば、達也は上半身だけでなく下半身にも何も着けていないのだ。
僅かに拡げられた股間の真ん中には、達也のシンボルが堂々と屹立していた。
そのペニスを、さっきから紀子が愛おしそうに擦っているのだ。
南の悲痛な声が聞こえる。

「やめて、キャプテン! タッちゃんにそんなことしないで!」
「何よ、あなたは由良さんに良い気持ちにしてもらったのに、上杉くんは私が良い気持ちにしてあげるのが不満なの?」
「そ、そういうことを言ってるんじゃありませんっ! タッちゃん、タッちゃん!」
「はいはい、大声で騒がないの。ほら見てよ、浅倉さん。上杉くんのここ、立派でしょう?」
「……っ!」

達也の男根は隆々とそそり立っていた。
南がそれを目にするのは、初回の失敗時以来だ。
それ以降、南が見た達也の男性器は力なく萎れていることしかなかったのだ。

それがどうだ。

今の達也のペニスは、あの時以上にたくましく、雄々しかった。
そして、今にも射精してしまいそうなほどにビクビクと興奮しているのがわかる。
紀子はガラスのような繊細な声で、なおも南と達也を傷つけるようなことを口にした。

「上杉くんて、浅倉さんとセックスしようとした時、役に立たなかったですって?」
「ど、どうしてそれを……」

南は唖然として紀子を見た。
誰にも言っていないし、言えるはずもない秘密だった。
南にとってもそうだが、達也はそれ以上に言いたくない事柄だろう。
なのになぜ第三者であるはずの紀子が知っていたのか。

南はハッとして達也と紀子を見た。
もしや達也と紀子が……。考えがまとまる前に紀子が言った。

「でもね、彼は不能ってわけじゃないのよ。最初に浅倉さんと失敗して、かなりショックだったのよね、上杉くん」
「……」
「でも、気を取り直してソープへ行ってみたんだって」
「ソープ……」
「そう、風俗ね。上杉くんも見かけによらず真面目だから、あなたと結ばれるまでは友達に誘われてもそういうところには行かなかったそうよ。だから
あなたとセックスしようとした時はまだ童貞だったわけ」
「……」
「でもうまくいかなかった。上杉くんはショックだったなりに考えたのよ。練習のつもりで風俗で経験しておけばよかったって。で、今さらながら行って
みたそうよ。どうなったと思う?」
「……」
「うまくいったんだって。そこで目出度く、上杉くんも童貞を捨てられた」

達也はもう「どうしようもない」という表情で顔を伏せ、もがくのも止めている。
紀子の手がペニスをしごくに任せていた。

「そして2回目ね。今度こそと思った。でも、浅倉さんがいちばんよく知ってるでしょうけど、なぜか失敗してしまった。どうしてもうまくいかない。
そりゃ焦るわよね、男の子だもん」
「……」
「そこで私が相談に乗ってあげたの。うふふ、刺激的なものを見せてあげたのよ。どうなったと思う?」
「……」
「上杉くんのペニスは力強く勃起したの。使えるようになったのよ。何を見たらそうなったと思う?」
「ま、まさか……」

南の顔が青ざめた。
思い当たることはあった。
見られている感覚はなかったが、紀子と由良が繋がっていたのであれば、容易に考えつく。
見る見る顔色が変わっていく南を面白そうに眺めながら紀子が言った。

「そう、浅倉さんが今考えた通りのことよ。由良さんに抱かれているあなたを見せてあげたの」
「……!!」

いつ、どこでかはわからなかった。
ホテルで抱かれるようになってから、一度だけまた部室で犯されたことがあった。
もしかするとその時かも知れない。
南の直感は当たっていた。

「犯されてるあなたを見て、上杉くんは呆然としてたわよ。当然よね、愛する彼女がどこの誰とも知れぬ中年男によって無惨に犯されていたんだから」
「ああ……」
「でも、もしやレイプされているんじゃないか、そうなら助けなくちゃって思いもあったのよ、最初はね」
「さ、最初はって……」
「でも、そんな気持ちは簡単に消えちゃった。なぜかって? だって浅倉さん、由良さんと本気でセックスしててよがっていたんだもの。百年の恋だって
冷めるってものよ」
「ウ、ウソだ! 南、俺は、俺はおまえを……」
「まだ愛してる、とでも言いたいの!?」
「うっ!」

紀子は達也に全部を言わせず、しごいていたペニスをぎゅっと握りしめた。
急所を握りつぶされる痛みに達也は呻き、もがくのをやめる。
紀子は達也のうなじを舐めながら、吐息で耳をくすぐるように囁く。

「正直に言いなさい。あなた、犯される浅倉さんを見てひどく興奮したんでしょう?」
「……」
「由良さんの大きなペニスが浅倉さんのあそこ……いいえ、オマンコにぶっすり入って抜き差しされてるのを見て、あんなにペニスを大きく硬くしてた
じゃないの」
「お、俺は……」
「ふふふ……、自分で浅倉さんを抱こうとした時には萎えて使えなかったのに、浅倉さんが他の男に犯されるのを見てると、ウソみたいに勃起したのよね。
そして彼は、男としての自信を取り戻すべく……」

そこで紀子は思わせぶりに言葉を濁したが、南にはもう追求する気力もなかった。
もし南が突っ込んできたら、紀子はそれこそ自慢げに「その後、達也とホテルへ行った」と言ってやるつもりだったのだ。
南相手では立たずに挿入すら出来なかった男根が、紀子の時には充分に勃起して、セックスに成功したのである。

つまり達也は、商売女とは出来るが素人と出来ないわけではなかった。
浅倉南とだけセックス不能になるのだ。
そう言って、回復不可能なダメージを与えたかったのである。
しかし南の気丈さはもはや消え失せ、がっくりと項垂れている。
ならば、もう少し時間をかけて嬲ってやろうと紀子は思い直した。

「……」

もう達也も南も言葉がなかった。難詰するような紀子の言葉に、胸を抉られ続けている。

「つまり、上杉くんも浅倉さんも同じようなものよ。上杉くんは犯される恋人を見てこの上なく興奮してしまう。浅倉さんは浅倉さんで、上杉くんという
彼氏がいるのに、他の男に犯されて何度も絶頂してしまう。ふたりともマゾなんじゃない? けっこう似たもの同士なのかもね。でも、恋人としてはうまく
いかないかな。だってマゾの相手はサディストじゃないとね」

紀子はそう言って笑い、南を挑発する。

「ほらほら見てよ、浅倉さん。上杉くんのここ、すごいでしょう?」
「く……、やめろ……」
「い、いや! 見たくないっ!」

南は激しく顔を振りたくり、涙声で叫んだ。
達也のペニスが自分以外の女の手で大きくさせられているシーンなど、つらくて見られたものではない。
しかも自分の時は、達也のそれは「役立たず」だったのだ。
無力感とともに、紀子への微かな嫉妬、そして達也に対する不審や憤りすら感じられてくる。
その気持ちを煽り、さらに痛めつけるように紀子が言った。

「見なさいよ、ほら。上杉くん、もう出しちゃったんだから」
「……え」

思わず南がそっちを見ると、確かに達也のペニスもそれを握る紀子の白い手も、白濁した粘液に汚れているではないか。

「そんな……」
「ね? 彼ね、浅倉さんが由良さんのをくわえて……」
「やめてくれ!」
「うるさいわね、少し黙ってて」
「あぐっ!」

恥辱の言葉を止めようとする達也だったが、紀子にペニスをぎゅっと握り潰され、呻いて口をつぐんだ。
達也がおとなしくなると、紀子はまた丹念にしごいていく。

「上杉くんはね、由良さんのペニスを口いっぱいにくわえた浅倉さんを見て、ギンギンに勃起しちゃったのよ」
「……」
「浅倉さん、口の中に射精されたでしょ? それで上杉くんの興奮が頂点に達しちゃった。びゅるってね、彼も私の手に射精したのよ」
「ウソよ、そんな……」
「ウソじゃないわ。うふふ、その後にあなた、顔にもたっぷり射精されたでしょう? その顔射にも相当興奮したみたいで、唸りながらびゅくびゅく
精液出したんだから」

達也はがっくりと肩を落とし、もう紀子の言葉を止めようともしない。
その肩はわなわなと痙攣している。
度を超えた恥辱と、南に対する申し訳なさで頭の芯が白くなった。
なおも紀子は、あたかも断罪する検察官の如く、執拗に達也の恥を晒していく。

「それだけじゃないわ。彼、一回出したのに、浅倉さんが由良さんに犯されているのを見て、またむくむくとおっきくしたのよ、このオチンチンを」
「いや……」
「すごいでしょう? 若いからかな、一度出してもまだ出し足りないのかしら。浅倉さんがバックから犯され始めると、このペニスがまたぐぐっと硬く膨らんで
きたんだから」
「いや……」
「浅倉さんが快感を我慢しているのを見て、ぐんぐんと大きくなっていったのよ。綺麗な子がそういう表情をするのって、男の人はそそるらしいわね。
で、とうとう浅倉さんが屈服して「いいっ」とか「いっちゃうっ」て叫んで絶頂したら、上杉くんはまた元気よく射精したわ。ええ、一回目よりもすごい
勢いでね。びゅるるって音が聞こえそうなくらい。ほら、絨毯のそこにあるでしょう? それ、上杉くんが射精した後よ。すごいわね、あんなに精液が飛んだの。
それに、まだ絨毯に染みこんでないわ。うふふ、すっごい濃いのね、彼の」
「いやあああ……」

もう聞きたくなかった。
すべて達也に知られてしまった。
見られてしまっていた。
由良のものをフェラした様子も、出された精液を飲み下したところも、顔に出されたところもすべて。
そして犬のように後ろから挿入され、恥ずかしく喘いだところも、いかされたところも、胎内に射精を受けて続けざまに絶頂したところまで、すべて。

しかもそれを見た達也はひどく興奮し、何度も激しく達したのだという。
南はもう、何もかも終わったような気がしていた。
その南を由良がまた押し倒した。

「あっ!」
「南!」

南の悲鳴を聞いて、俯いていた達也も顔を上げたのだが、ベッドからは立てなかった。
背中から紀子が抱え込んでペニスを掴んでいたせいもあるが、その気になれば男の達也が紀子を振りほどくことも可能だったはずだ。
達也は一瞬、腰を浮かせかけたが、紀子に抱きすくめられると、またベッドの端に腰を下ろしてしまった。
脚をジタバタさせたが、ベルトが足首に食い込むだけでどうにもならなかった。

「いやあ!!」

南の腹の上に由良が腰を落とした。その重さに南は呻いたが、由良はかまわず南の両脚を持ち上げた。
左右の足首をそれぞれ掴み、V字型に大きく開脚させたのだ。
達也は思わず顔を背けたが、紀子が後ろから頭を掴んで正面を向かせた。

「よくご覧なさいな、浅倉さんの、あ・そ・こ」
「くっ……!」
「いやああっ、見ないでタッちゃん!!」
「ほら見てってば。いやらしいでしょう? 犯される前は綺麗だったでしょうに、今じゃほら、ぱっくり口を開けて……」
「……」
「あ、今、ドロッて精液が溢れてきたわ、うふふ。もしかすると、浅倉さん自身のエッチな蜜が混じってるのかな」
「だめ! 見ないで、お願いっ!」
「……」

強引に顔を南に向けさせられていた達也は、諦めたようにそれまで堅く閉じていた目を開いた。
紀子の言うような、淫らで美しい媚肉がそこにはあった。
「あら」という表情になった紀子は、達也のペニスを擦りながら悪戯っぽく言った。

「まあ、また立ってきたわ。本当にすごいのね。やっぱり浅倉さんの身体を見てるとそうなっちゃうのかしら」
「タ、タッちゃん……」

由良の尻の下で暴れていた南の動きも弱まった。
恋人が自分を見て性的に興奮してくれるという恥ずかしさを伴う嬉しさは、もうなかった。
自分が酷い目に遭おうとしているのに、そんな状態になっていることが信じられなかったのだ。
男性の性意識は南が思うほどに潔癖ではない。
達也のような反応をしても不思議はなかったのだが、南にはそれがわからない。

「あ、いや、やだっ!」

由良は南の上から降りると、今度はのしかかってきた。
正常位で犯すつもりらしい。
達也と紀子の位置から見ると、ちょうど真横になっている。
達也も「また南が犯される」と覚ったらしく、絶叫して暴れ、必死に動こうとしたものの、紀子の手がペニスから離れない。
あまりに激しく暴れると、紀子の手が容赦なく男根を握りつぶしてくる。
達也は「うっ!」と呻き、また動きを封じられた。

「入れるぞ、浅倉」
「だめ! しないで、いやあっ!」
「南っ!」
「ほら、おとなしく見物してなさい」
「ひっ、いやあ! タッちゃん、助けて! タッちゃあんっ!」

硬く勃起したペニスを媚肉に押し当てられると、南はそれまでにないほどの拒絶感を示した。
狂ったようにもがき、叫び、両手に拳を作って由良を何度も叩いている。
しかし由良は一向に動ぜず、南の両脚を抱え込むとそのまま腰を沈めていく。
亀頭の先が膣口にめり込んでくる感触に、南は目を剥いて叫んだ。

「ああっ! だめ、いやあああっっ!!」

由良の巨根に貫かれて射精され、内部もたっぷりと愛液で潤っていたはずなのに、南のそこはきつかった。
すんなり入ると思っていた由良も些か驚いたようだが、やはり達也の目の前で犯されるという羞恥と緊張感で、そこがかなり締まったのだろう。

「んっ、きついな、相変わらず。浅倉のここはいつ入れても絶品だ」
「……だそうよ、上杉くん。悔しい?」
「く……」

自分には叶わなかった快楽の感触を、今あの男が味わっている。
南のそこにペニスを挿入できたらどれほど気持ち良いのだろう。
そう思うと、心ならずも達也の性器も大きく勃起してしまう。
紀子はそれを嬉しそうに見ながらサオを手のひらでしごき、剥けた亀頭を指でそっと愛撫する。
南はそれを知る由もなく、必死になって挿入を拒んでいたものの所詮は無力で、ずぶずぶと奥深くまで貫かれていく。

「や……だ……、んんっ……」
「どうだ浅倉、俺のは」
「あ、あ……、くっ……お、大きい……ふ、太くて、ああっ……く、苦しいくらい……ああ……」
「くく、そうか。上杉と比べてどうだ?」
「そ、そんなこと比べられませんっ……」
「そうだったな。彼氏にはまだ入れられてない、と」
「あ……あ……、やだ、こんな……ううんっ……い、いや、抜いて……ああ……」

大開脚された股間の中心を無理矢理に拡げられ、太い男根がねじ込まれていた。
散々犯したせいか、以前よりは挿入しやすくなってはいるが、それでもかなり狭い。
しかし、狭隘なのに襞はひくひくと肉棒に絡みつき、潤滑液となる愛液も必要以上にたっぷりと分泌していた。
きついのに滑りは良いという、男の側にとっては理想的な媚肉だった。
ズシッと子宮口まで届かされてしまうと、南はぶるっと震えて抵抗を止めた。
暴れなくなったもののシクシクとすすり泣きはじめ、達也へ届かぬ助けを求めている。

「ああ、もういやあ……タッちゃん、助けて……私、こんなのいやあ……」
「南……、くっ、南っ……!」

達也も悔しそうに呻くだけで助け出すことが出来ない。
それどころか、もう二度も射精したはずのペニスはますます硬く太くなり、びくびくと脈動までしていた。
紀子の愛撫がなかったとしても、犯される南を見ているだけできっとこうなってしまったはずだ。
南は南で、犯されるつらさとそれを見られる羞恥、犯す由良への嫌悪、達也に対する申し訳なさを感じていながらも、肉体の方は深々と押し入ってくるものに敏感に反応していた。

「あ、いや、動かないで! いや、しないで、抜いてぇぇっ……!」

由良が南の太腿を抱えると、ゆっくりと大きなストロークで突き上げていく。
どんなに嫌がっていても、南の身体は突き込むたびに反応していく。
締め付けはきつく、濡れ具合は激しく、襞は盛んに絡みついてくる。
由良は南の胎内を味わい尽くすかのように、じっくりと犯していった。

「あ、いや……あっ……あっ……あっ……ああっ……」
「ますます締め付けがきつくなるな、浅倉。ここだったかな、ここを擦られるとたまらないんだったな」
「うあっ! ひっ、ひっ! だめ、そこ……ああっ!」

由良は南の腰を少し持ち上げ、腹の方へしゃくり上げるように腰を使った。
ペニスの先がGスポットに当たり、そこを擦り、南はつんざくような悲鳴を上げた。

「それと、ここだな、ここ。いちばん奥が弱かったはずだな」
「ち、違……ああっ!!」

子宮口をゴリッと擦られ、南は首を反り返らせて喘いだ。
尻の先と後頭部でブリッジ状態になっており、背中は弓なりで完全に浮いている。
まろやかで女らしい曲線と身体の柔らかさが強調されており、たまらない眺めだった。

南は呻き声と喘ぎが交互に出るようになっている。
達也の登場により理性が官能を上回ったようだが、それでも身体の方はしっかり反応してしまっている。
ペニスが引き抜かれると膣が収縮して締めつけ、奥まで貫かれると根元をきっちりと食い締めてくる。
由良は余裕の腰使いで南を喘がせながら、達也を嘲笑した。

「上杉とか言ったな。おまえ、アホか? こんないい身体した女を放っておくなんてな。高校時代からつき合ってたんだろ? いくらでも抱く機会はあっただろうに」
「……」
「あああっ、いやあ……タッちゃんっ……やっ、見ないで、見ちゃいやあ! ……くっ、いやっ……」
「なんだ浅倉、我慢することなんかないぞ。いつもみたいに派手によがればいいだろう」
「私はそんな……ひっ……あうっ、深いっ……ひぃ!」

由良は南の両脚を肩に担ぎ上げると、そのままのしかかった。
極端なまでの屈脚位で、南の乳房は自分の腿に押し潰されるほどだ。
南の尻が浮き上がり、伸びた両脚がぶるぶると痙攣している。
由良は、この体位や後背位など、女に主導権を握らせない格好で犯すのが好みだった。

「あああ……、うんっ……あっ……あっ、あっ、あっ、うんっ、あっ、んっ、んんっ!」

由良のピストンがリズミカルになっていくと、南の喘ぎもそれに合わせて定期的になってくる。
突かれるごとに「あっ」と声を出し、引かれると恥ずかしげに口をつぐむ。

「やっと普段通りになってきたな。目の前で恋人に見られているのに、恥ずかしいとは思わないのか?」
「んんっ、そんな、だってコーチが……ああ、あはっ!」
「恋人を気にするよりも、奥まで突かれる方がいいってわけだな」
「ち、違いますっ……、こ、こんなの……あっ……いやあっ……」
「知ってるぞ、浅倉。上杉ってのは起たなかったんだろ?」
「……!」

南の声がぴたりと止まったが、すぐに紀子が言った。

「私が教えたのよ、うふふ」
「ひ、ひどい、キャプテン……ああっ……」
「ひどいって言っても本当のことだもの。でもね、彼、全然ダメってわけじゃないのよ。だって私とも……」
「い、言わないで! タ、タッちゃん、ウソよね!? タッちゃんがキャプテンと……ウソでしょ!?}

南は涙混じりの声で必死に達也へ問いかけている。
が、達也はそれに答えることも出来ず、俯いて震えていた。
申し訳なさとともに、南とは出来なかったのに、紀子とはセックス出来てしまったことへの罪悪感に苛まれている。
その達也の耳元で、紀子がまた悪魔のように囁いた。

「気にすることないのよ、上杉くん。だって浅倉さんだって、あなた以外の男に犯されて喘いでいるんだもの。見ればわかるでしょ?」
「南……」
「ああっ、タッちゃんっ……! コーチ、もういやあっ……こんな、こんなこと……んんっ……あ、いっ……ああうっ……」
「くく、浅倉の泣き顔もけっこうそそるな。恋人を意識すると、途端に締め付けが良くなるぞ。上杉に見られながらだと余計に感じるんだろう」
「んああっ、いやっ……私……私は……ああっ……」

由良は南の両脚を肩の上でぶらぶらとさせながら、上から押しつぶすようにして深々と貫いている。
ずずっと奥まで突き通すと、先端にコツンと肉壁が当たった。
まだ抵抗しようとしている南の両手をベッドに押しつけ、指を絡めるようにしてその手を掴む。

「あの男が役立たずなら、俺がいつでも浅倉を慰めてやるぞ」
「い、いやです、そんな……どうしてそんなことを……ああ、あっ……」

南の喘ぎ声が熱くなり、肉棒を子宮口にまで押し込まれると感じ方も激しくなっていっている。
愛液の量が自分でわかるほどに増え、襞がひくついてきていた。

「コ、コーチだめえ……、こ、ここではもう……ここでは許して……タッちゃんの前じゃいやあ……あ、いっ……」

肉体的にはすっかり由良に調教されていた南だが、さすがに達也の前では自分から求めることは出来ないようだ。
しかし肉欲には抗いきれず、由良から与えられる快楽に流されるように身を任せている。

「もっと感じてみろ。自分は役立たずだったんだから、浅倉が他の男に抱かれても、上杉だって案外許してくれるかも知れんぞ」
「そんな……」
「ふ、ふざけるな!」

達也がほとんど初めてはっきりと抵抗した。
目の前で恋人を凌辱され、平静でいられる男などいない。
しかし、その怒りに今ひとつ迫力がないのは否めない。
それもそのはずで、男の言っているように達也は南に対して「役立たず」だったのは確かだったし、しかも南はただ犯されているだけでなく、しっかり
性的な反応を示していたのだ。
達也の怒りの矛先は行き場を失い、由良や南まで届く前に失速した。
紀子が可笑しそうに笑う。

「おお、怖い怖い。上杉くんたら、浅倉さんの前でオチンチンが勃起したから強気になったのね」
「わ、渡瀬さんっ、もうこんなことは……あぐっ!」

また達也が仰け反った。
言うまでもなく、紀子がペニスを握ったのである。
今度はサオでなくタマの方を強く握った。

「ナマ言うんじゃないわよ。それともなに? 今から由良さんを引き剥がして、あなたが浅倉さんを抱くって言うの?」
「……」

そうではなく、由良とかいう男を殴り飛ばして南を助け、ここから脱出するつもりだったのだ。
しかし紀子の言葉は心に響いた。
由良を排除したとしても、その後自分は南を抱けるのだろうか。
あの二度の惨めな失敗を繰り返すのではないだろうか。
そう思うだけで、また少し達也の男根が萎えかけてくる。
そこを紀子が巧みにしごき、達也の顔を南と由良の絡みに向けてやる。

不自由な姿勢でいいように犯され、喘いでいる南。
きっと膣の奥にまであの太い男根が入り込んでいるのだろう。
突かれ、身体が揺さぶられるたびに、南の口から堪えきれない喘ぎ声が漏れ出ている。
達也には絞り出すことが出来なかった、南の生々しい声だ。
太腿に潰され、横にはみ出た柔らかそうな乳房に男の指が食い込む。
それらを見ていると、またしても達也の性器が隆々とそそり立っていく。
紀子の言う通り、自分は南を抱くことは出来ず、こうして南が犯されているのを見ている時にだけ勃起してしまうのではないか。
その脅えもあって、達也はそれ以上の抗いを見せなかった。
南にも、そんな達也の絶望が通じるのか、それが官能と共鳴して、その肉体は崩壊していく。

「浅倉、いいんだろう? 上杉に見られながら俺に犯されて、気持ち良くてたまらないんだ」
「や……だ……、ああ……タッちゃん……タッちゃん……ご、ごめんなさい、南、もう……ああっ」
「言えよ、浅倉」
「だめ、いいっ……き、気持ち良いっ……気持ち、良いっ……ごめんなさい、タッちゃんっ……ゆ、許して、ああっ……いっ、いいっ……」

心を寄せ合っていた達也と愛し合うことが出来ず、彼に愛されたいと思う純粋な感情と、それが出来なかった事実に抑圧され、鬱屈した性欲が、南の理性を溶け崩していく。
屈服した南のよがり声を聞き、紀子も奇声を上げた。

「聞いた、聞いた、上杉くん!?」
「……」
「とうとう言っちゃったわよ、浅倉さんてば。あらら、すごいわね。上杉くんのもすごい大きさになってるわ。また出したいの?」

紀子は、亀頭がビクビクと痙攣し始めた達也のペニスを微妙な力でしごいている。
射精はさせず、それでいて萎えさせもしない。
今にも射精しそうになると、きゅっとカリ首を押さえてしまい、少し落ち着くと亀頭を擦り、サオをしごいた。南の方も、一度よがってしまったからなのか、
もう我慢のしようがないらしく、ぽろぽろと嬌声を発している。

「んああっ、いいっ……あ、そんな激しくっ……ふ、深い、深すぎますっ……いいっ」

由良は容赦なく南の膣内を抉り上げ、子宮口を突き上げていく。
ただ単純なピストンだけでなく、子宮口に亀頭を押しつけたままぐりぐりと腰を回転させてそこを擦ったりする。
弱点を徹底的に責め抜かれ、南はひぃひぃ喘ぎながら、由良を持ち上げるほどに仰け反っている。

「あっ、あっ、だめっ……あ、もう……もうっ……く、くるっ……来ちゃう、すごいの来ちゃうっ!」
「もういくのか? まあ、いいだろう、俺もいきそうだ。また中に出すぞ」
「だ、だめです、絶対にだめえっ!」

南は大きく顔を左右に振りたくった。

「それだけはだめっ! 中は……中は許して!」
「なぜ? もう何度も出してるだろうに。さっきだって中に出したんだぞ」
「ああ、でも……でも、そんなことされたら、私……」
「なんだ、今さら。妊娠が怖いのか? あんなに中出しされてきたんだ、どうせもう孕んでるさ」
「ひ、ひどい、そんな……ああ、タッちゃん、私……ああっ」

膣内射精を意識した途端、南の膣壁が激しく反応した。
盛んにずぶずぶと突き込んでくるペニスに襞が絡みつき、中に引き込もうとしているかのようだ。

「ほら見ろ、おまえのマンコは中に欲しがっている」
「ち、違う、違いますっ……いや、やめて、それだけはっ!」
「やめろ! やめるんだ!」

さすがに達也も絶叫した。
犯されるのみならず、その膣内に精液を受けるなど絶対に許せなかった。
それでいながら、紀子にしごかれるペニスの先からは、とろりとした透明な液体が滲み始めている。
紀子はそれを指に絡めながら言った。

「今、由良さんが言ったでしょう? 今さら遅いわよ、もう浅倉さん、何度も何度もたっぷりと由良さんの精液を中で受けてるんだから」
「そんな……」
「ふふ、本当に妊娠してるかもね。一度確かめた方がいいんじゃない? あ、そうそう、これが終わってからあなたも浅倉さんを抱いたらいいわ。
それで中に射精すれば、あなたの子供って可能性も出てくるんだから」

確かにそうだが、あまりと言えばあまりの仕打ちだ。
達也は悔し涙に暮れたが、その直後の紀子の一言にまた大きく傷つき、同時にペニスが痛いほどに勃起した。

「……抱ければ、の、話だけど」

どうせおまえは、南を前にすればまた萎えてしまう。
セックスなどできっこない。こうしてそばで見ているのが関の山なのだと言われているのだ。
この時の達也に怒りがなかったわけではないが、それ以上に紀子の言葉が重くのしかかり、また南が他の男の種を受精すると思うと、肉棒がギンギンと
激しく反応してしまうのだった。

南の方は必死である。
何度か膣内射精を拒もうと、腰を振り立て、頭を振りたくっている。

「やめて! もう抜いてください、コーチっ!」
「なんだ、急に。さっきはあれほどよがっていたくせにな。「いいっ」とか……」
「やめて、言わないで! お願いだから中は……中は許して……あ、あんっ……ああっ!」

胎内射精されることへの恐怖に震えながらも、南は喘ぎを止められない。
中に射精され、結果として妊娠してしまうかも知れない脅え、しかもそれを達也の前で行われるという恥辱に戦慄しているのだが、そのふたつの要素に肉体は
かえって激しく反応し、これまで以上の快感を南に伝えてくる。

「あああ……、もうだめえ……あ、あっ、い、いく……タ、タッちゃん、いきそうっ……!」
「み、南……」

恐らく達也は、南が絶頂を訴える声を初めて聞いたはずだ。
ペニスは過剰なほどに反応し、カウパーは噴き出すように溢れてくる。
よく見れば、中に白濁したものすら混じっていた。
南はあの男の女にされてしまったのではないかという恐怖と敗北感が、達也の心を深く抉っていた。
なのに、そんな南の痴態を見ることが至上の快楽となりつつあったのだ。

その間にも南はぐんぐんと追い上げられていく。
由良は思いきり腰を打ち下ろし、そのたびに南の尻が弾んで宙に浮いた。
嫌がっていたはずの南の脚は、いつしか由良の脚に絡みついている。
指を絡め、握られていた手も、南の方からグッと握り返していた。

「だめ、いく……あああ、どうしよう……い、いっちゃいそうっ……!」
「……っ」

もう達也の口から言葉は出なかった。
あまりに生々しい南の痴態に目を奪われ、ごくりと生唾を飲み込んでいる。
盛んに紀子がペニスをしごいてくるが、もし手が自由だったら自分で自慰していたかも知れなかった。
そんな達也の複雑な心情を知ってか、南はなおも激しく絶頂に抗っている。

「いっ、いきたく……ないっ……タッちゃんの前でいかされたくないっ……あ、あ……でも……でも、もうっ……」
「もう一息だな、浅倉。もっと深くしてやる」
「あ、ああっ!?」

ぐうっと由良の腰がさらに沈んで、その肉棒は完全に南の中に埋没してしまった。
亀頭の先が南の子宮口に食い込んでいるのだ。膣からは夥しいほどの愛液が溢れかえり、由良と南の陰毛を濡らし、べったりとその腰を汚していた。

「よ……し、いくぞ、浅倉」
「だ、だめだめだめっ! 外に、外に出してくださいっ……!」
「中に出させないといかせんぞ、それでいいのか?」
「いやああっ、もう我慢が……我慢が出来ませんっ……いっ、いく……いきそうになってるっ……!」

膣内射精を嫌がりながらも腰は男に合わせて動き、脚を絡めてくる。
胎内に精液をまき散らされる恐怖に脅えつつも、込み上げてくる肉欲に抗えず、快楽と苦悶の表情を晒している。
その美貌に耐えきれず、由良は思わず南の口に吸い付いた。

「んむううっ……!」

南は驚いて目を見開いたが、すぐに由良の舌を受け入れた。
これまで強引にキスされてしまったこともあったが、南が受け入れたのはこれが初めてだった。
達也の前だというのに、南は口を開けて由良の舌に舌を絡めていく。
ある意味、犯されるよりも背徳的な行為であり、南はその被虐に酔いつつあった。

「んっ、んむううっ……んじゅっ……ちゅぶっ……ん、ん、んむ……んじゅうっ」

南は押さえ込まれている手を振りほどいたかと思うと、由良の背中に回して抱きしめてきた。
爪を立て、ぎゅううっと由良を自分の方に抱き寄せている。

「南っ……!」

南の激しいキス、それも恋人である自分の前で他の男と濃いディープキスを交わしているのを見て、達也はたまらず射精した。
びゅるるっと勢いよく精液が発射され、絨毯を汚す。
それでもペニスはまだ萎えず、精液にまみれた紀子の白い手にしごかれて、またぐぐっと反り返っている。

それも目に入らず、南は由良と激しく口を吸い合っている。
舌を絡ませ合い、南の方からも由良の口に舌を差し込んでいく。

「ん、んむ……んむううっ……む、むむう、むちゅっ……じゅっ……んちゅ、んちゅ……ちゅううっ……ん、んむ……むぐうっ!」

男の舌が力強く南の咥内で動き回っている。
舌先を尖らせ、頬裏の粘膜を削り、舌の裏にまで入り込んで擦りつけてくる。
舌を抜かれるほどに強く吸われ、南は苦しげに呻く。
それにしてもこの男は、舌までペニスのように力強い。
南は膣を肉棒に、口を舌のペニスで犯されている気分になり、ますます倒錯的な快感に染まった。
由良の攻撃的なキスで、南は頭の中まで白く灼けていく。

「ぷあっ、いいっ……んんんっ、いいっ……気持ち良いっ……あ、いく……ああああ……」

息継ぎで口が離れると、途端に南は大声で喘いだ。
少しでも声を出さないと、快感がどんどんと身体に溜まって爆発してしまいそうになっている。

「浅倉っ、中に出すぞ! いいな、妊娠するまで中に出す!」
「やあっ、いいっ……も、もう何でもいいから早くっ……保ちませんっ、い、いきそうっ!」
「じゃあ言え! 上杉の前ではっきり言うんだ! 俺を愛していると言え!」
「あ、愛してるっ……愛してます、コーチっ……!」
「……!!」

南はもう何を言っているのか、よくわかっていない。
ただ由良に言われることを肯定し、繰り返しているだけである。
当然、彼を愛しているわけなどないのだ。
しかし南は、自分の吐いた言葉に傷つき、そして異様なほどに興奮もしていた。

「よし、じゃあ俺の子供を産むんだな! 産めよ!」
「うっ、産むっ! み、南は……南はコーチの赤ちゃん産みますっ……いいっ……」
「くっ、浅倉っ……出るっ、中に出る!」
「いっ、いくっ! もういく、今いくぅっ! タッちゃん、もうだめえっ……いっ、いく……いきますっっ!!」

最後に一瞬、達也のことが思い浮かんだが、南は肉欲に押し流された。
由良のペニスがひときわ深く抉り込んで子宮を潰すほどに突き込んでくると、南は大きく叫んで背中を弓なりにし、激しく絶頂した。
強烈な締めつけと南の反応に堪えきれず、由良も大きく吠えて射精した。

「くおっ!」

びゅぶるるっ、びゅるううっ。
びゅるっ、びゅるるっ。
どっびゅうううっ。

「ひぃあああっ!」

モロに精液を子宮内に感じ取り、南は目を剥いて大きく仰け反った。
絡みつく膣壁を引き剥がしながら、由良のペニスは子宮口に食い込み、そのまま激しく射精した。

「くっ!!」

ほぼ同時に、達也の男根も射精した。
三度目とは思えないほどに勢いよく精液が発射され、ともすればベッドの南に届きそうなほどだった。
射精を受ける感覚で気をやっている南を押さえ込みながら、由良は容赦なくその胎内に精液を放っている。

びゅくくっ、どぶっ、どびゅううっ。

「でっ、出てるっ……! いやあっ、タッちゃん、中に出されてるぅっ……んああっ、あ、熱いっ……!」

激しい拒絶反応を示しつつも、南の長い脚はしっかりと由良の腰に巻き付いて離れなかった。
射精されるたびに強く脚を締めつけ、男の腰を引き寄せて、出来るだけ深い場所で射精させている。
押さえ込まれた手は、指を絡ませあって強く握りしめていた。
射精を受けるごとに、南の手にぎゅっと力が籠もる。
背中が跳ねる。

由良の方も、引きずり込まれそうな快感を感じながら、南を押さえつけて腰を密着させ、精嚢の精液を全部出し切るまで離れなかった。

「あう……ああ……ま、まだ出てる……こ、こんなに出すなんて……本当に妊娠してしまう……」

子宮口が射精を受け、子宮内に精液が入り込んでいく。
内部に入りきれなかった精液が胎内の壁に当たり、跳ね返っている。
見えもしないはずなのに、南は由良の精液が元気よく自分の膣内で暴れ回っているのが実感できていた。

「ふう」

満足げな由良がようやく離れても、南はまだぐったりとしたままだった。
はあはあと荒く呼吸を繰り返し、しどけなく開かれた股間からべとべとに濡れており、口を開けた割れ目からはどろりとした精液が逆流してきていた。
由良はその南の両脚を掴むとV字型に持ち上げて見て、達也のその淫猥に汚れた、しかし限りなく蠱惑的な媚肉を晒して見せた。

「……」

達也はまた喉をごくりと動かしている。
激し過ぎる性交に呆気にとられ、声もなく見守っていた紀子も我を取り戻した。
達也の戒めを解き、立ち上がらせた。

「さあ、上杉くん」
「……」

紀子は達也の背中にもたれかかって自分の乳房を押しつけ、その耳元で甘く囁いている。

「どう、浅倉さんは。いつもの清純さは欠片もないわ」
「……」
「でも素敵。綺麗でしょう? ……抱きたくない?」
「え……」
「ほら、この立派なオチンチン。もうきっと大丈夫よ。今ならあなたにも浅倉さんを抱けるかも知れない」
「……」

紀子は、躊躇っている達也の背中をちょんと押した。

「行きましょう。ね? 私も……」
「あなたも……?」
「うふふ」

達也はふらふらと南に近寄ったかと思うと、由良が開脚させている股間を凝視した。
そして南の太腿を自分で押さえ、股間を開かせた。
由良がそっと身を引くと、そのまま南にのしかかっていく。
さすがに気づいた南がハッとして叫んだ。

「タ、タッちゃん、何を……!」
「何をってことないでしょう? よかったじゃないの、浅倉さん。とうとう上杉くんと結ばれるわよ」
「そんな……、こ、こんな……こんなところで……だめ、タッちゃん……」
「南……」

尋常でない達也の様子に、南は少し脅えた。
いつもの彼ではない。
男性本能が剥き出しになったというか、けだもののような目つきになっている。

「ま、待ってタッちゃん! タッちゃんにも抱かれるから、でも、今はだめ、ここじゃだめよ!」
「『にも』? 『にも』って何だよ、南。おまえにとっては、そっちの男の方が本命なのか」
「な、何を言って……だめ、タッちゃん!」
「ほらほら、抵抗しないの。せっかく彼氏がやる気になってるんだから。私と由良さんも、及ばずながらお手伝いしてあげるから……、うふふ」
「いやああっっ……!」
由良と紀子に押さえ込まれ、達也にのしかかられた南の絶叫が哀しく響いた。

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南が新体操競技から引退し、達也が南との関係を清算して渡米したのは、それから間もなくのことである。



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