射精の間中、腰を突っ張らせて夏実の顔に押しつけていた牛尾は、ようやく満足した
のか、その顔を解放した。
夏実は突き飛ばすようにして牛尾を押しやり、ぺたりと座り込んで喉を押さえた。
「ぐえっ……げっ、げほっ……ごほっ……」
いやな粘液が喉に絡んでいる。
飲み込むことも吐き出すことも出来ず、喉の粘膜にへばりついているのがわかる。
それでも口に残っているものを吐き出し、少し戻すようにして胃の中の精液も一部
吐き出した。
あまりの臭気と吐き気で頭痛がしてくる。
夏実の顔は苦悶し、目の縁には涙が滲んでいた。
「あーあ、全部飲んでって言ったのに、そんなに吐き出しちゃって」
「ごほっ、ごっ……バ、バカじゃないの！？ 何で口に出すのよ！？ いやだって
言ってるのに！」
「あれ、そんなこと言うんだ。あの時は嬉しそうに飲み干したのに」
「あの時っていつのことよ、ごほっ……。こ、こんな気持ち悪いの、喜んで飲んだ
ことなんかないわよ！ あたしはいつだって……」
「いやなのに飲まされた、と」
「当たり前でしょう！」
「そうなんだ。でも、夏実さんてマゾだから、そうやって無理矢理させられるとか、
イヤなこと、恥ずかしいことさせられると余計に燃えるんだよね」
「ふざけないでよ、誰がマゾなのよ！ ごほっ……くっ、まだ気持ち悪い……」
そう言って夏実は胸を少し拡げている。
息苦しいのだ。
その時、牛尾がまた動いたので、ハッとしてそっちを見て驚いた。
牛尾は上着まで脱ぎ始めている。
思わず夏実は胸を合わせ、横座りのまま後じさった。
「な、何で脱いでんのよ！」
「何でって、ひさしぶりに夏実さんとセックスするからですよ。決まってるじゃない
ですか」
「セ、セックスって……いやよ、そんな！ それにあんなのセックスじゃないでしょ
う！ ただのレイプだわ！」
「そうかも知れませんね。でもそれは、夏実さんが「犯されるようなセックス」が
好きだからですよ。恋人同士みたいに甘く愛し合いたいならそう言ってくださいよ。
僕は少し不満だけど夏実さんがそうしたいなら……」
「こ、恋人同士ですって！？ あんたとそんなことするなんて絶対にお断りよ！」
「じゃ仕方ないじゃないですか。犯すようにするしかない」
「だ、だから、あんたに抱かれるのがいやだって言ってるのよ！」
「なぜです？ 俺に犯されてあんなに悦んでいたじゃないですか。何度も気をやって
るし。まだ俺の耳の奥に残ってますよ、夏実さんの「もう、いっちゃうっ」とか「い
くうっ」ていう色っぽいよがり声が」
「だっ、黙りなさいっ！」
夏実にとっては屈辱以外の何物でもないが、そう言われるごとに膣の奥が熱を帯び始
め、潤ってしまうのをどうしようもなかった。
過去の記憶がそうさせるのか、あるいは牛尾の言う通り、そうしたことを言われるだけ
で濡れてしまうのかわからない。
「何してるんです、夏実さんも脱いで」
「冗談じゃないわよ！ なんであたしが……」
「俺とセックスしないんですか？」
「当たり前よ、バカッ！ は、早くあんたも何か着てよ、見たくない、そんなもの
っ！」
「ふーん」
牛尾は思わせぶりに夏実を見た。
その態度に不気味なものを感じた夏実は牛尾を見上げる。
「な、何よ……。また無理に犯そうっての？ こ、今度ばかりはそうはいかないわよ。
絶対にいやなんだから」
「そうですか？ じゃあ無理にとは言わない」
「……」
「でも俺はまだやり足りないからなあ。どっかで出さないと」
「そ、そんなこと知らないわよっ。出したきゃ自分でやればいいでしょ！」
「寂しいこと言うなあ。でも夏実さんがさせてくれないってんなら仕方ない。美幸さん
にでも……」
「何ですって！？」
「だから美幸さんにでも相手してもらおうか、とね」
「なっ……、だめっ、絶対にだめよ！ あの子、今度、結婚する……あっ」
しまったという顔で夏実は口を押さえた。
無論、それを聞き逃す牛尾ではない。
「……結婚？」
「……」
牛尾の顔に凶暴な色が浮かぶのを、夏実は恐ろしいものを見るような顔で見ていた。
やはりまずかった。
つい口走ってしまったのだが、夏実と美幸にあれほど執着していた牛尾に、美幸が
結婚するなどと言ったら、どんな暴挙を働くかわかったものではない。
だが、牛尾はなぜかにやっと笑っていた。
「な、何よ……、なに笑ってんのよ……」
「くくっ……そうか結婚か、小早川美幸さんが。この俺に断りもなく」
「なんであんたなんかに断らなきゃならないのよ！」
夏実の叫びを無視して牛尾は続ける。
「お相手は……さしずめ、同じ交通課の中嶋とかいう白バイ警官かな？」
「な……なんであんたそんなこと……」
夏実の驚きも無理はないが、これとても某巨大匿名掲示板の情報であった。
牛尾は、捕まる前もその後も頻繁に某巨大匿名掲示板を検索していた。
自分で書き込むことはなかったが、そこからの情報には重宝していた。
もちろん玉石混淆だから、ひどいガセや憶測、思い込みのネタも山ほどあったが、
牛尾はそれを丹念に追い、その情報が信じるに足るかどうか地道に調べていたのだ。
美人婦警のスレッドがあって、そこでも墨東署の美人コンビはちょっとした人気者
だった。
まちＢＢＳでも話題になるほどで、とうとう婦警スレッドから飛び出し、辻本婦警
＆小早川婦警の専門スレまで出来ていたほどだ。
ここの住人たちは案外とまともな人が集まっていたようで、エロネタとしてふたり
を扱うこともあるにはあったが、実際に行動に出るとかストーカーまがいに尾行
するとか、署に押しかけるとか、そういうことはしなかった。
ただ、どういうわけか署内の情報が少しずつ漏れていた。
どうやら墨東署の関係者も、そのスレに出入りしていたようだ。
彼も夏実と美幸のファンだったのかも知れない。
その中の情報で、美幸にも夏実にもつき合っている男がいるらしい、ということを
知ったのである。
今度夏実が本庁の捜査一課に出向することになったのを知ったのも、そこからの情報
だった。
「そういうことならいいですよ夏実さん、もう帰っても」
「え……」
牛尾はそう言いながらトランクスを履いた。
「だって、やらせてくれないんでしょう？ レイプもいやだそうだし。なら、美幸
さんとやるしかない」
「ちょ、待ちなさいよ！ 美幸だって、あんたなんかに抱かれるわけないでしょ！」
「そうでしょうね、初めは」
「は、初めはって……」
「夏実さんだって最初はそうだった。半ば強引に犯したようなもんだった」
「なにが「半ば」よ！ 完全にレイプだったじゃないの」
「そうでしたね。でもさ、そのうちだんだんとその気になって……」
「その気って何よ！ あ、あたしはそんな……」
「そうですかね。けど最後の方には自分から抱かれてきたじゃないですか。俺の腰
に跨っていやらしく腰を振って」
「……」
「お尻の穴まで犯されて「気持ちいいっ」て叫んでたでしょ。艶っぽい声で喘いでさ」
「あ、あれは……」
「だからさ、美幸さんもきっとそうなりますって。心配しないでいいですよ」
「だめ、やめて！ 美幸には……美幸には何にもしないで！」
「なぜ？ 夏実さんはいやなんでしょう？ なら美幸さんしかいない」
「わ、わかった！ わかったからっ……！」
牛尾はニヤリとした。
こうなることはわかっていたのだ。
夏実の性格からして、美幸を毒がにかけると宣言したら、大慌てになる。
なぜか知らないが、夏実は美幸を護りたいという強い願望があるらしい。
どうしても美幸を犯すと言えば、夏実は不本意ながら自らの身体を差し出すことに
なる。
美幸を穢されるくらいなら、自分が犠牲になる。
夏実はそういう女だった。
「……いいわよ」
「いい、とは？」
「だから……だ、抱くなら抱きなさいよ。その代わり、美幸には……」
「手を出すな、ですか。ま、考えおきますよ。夏実さんが俺を満足させてくれれ
ばね」
「くっ……」
「なんです、その挑戦的な顔は。まあ、それくらいの方が夏実さんらしくっていい
けどね」
「う、うるさいっ……するならさっさと済ませてよ！」
「そういう言い方されるとなあ……。何だかその気が失せちゃうな」
「だっ、抱いてって言えばいいんでしょう！？ だ、抱いてよ、早く……」
「そうですか。夏実さんがそこまで求めるなら仕方ないなあ」
「こ、この……」
牛尾はそう言うと、さっき履いたトランクスを脱ぎ去った。
そこにはもう、今し方射精したばかりというのがウソのようなペニスが隆々と勃起
していた。
「ほら夏実さんも脱いで」
「……」
「服着たままじゃ出来ないでしょう？ 皺になりますよ。あ、それとも服着たまんま
で犯されたいのかな？ そうか夏実さん、そういう倒錯した趣味が……」
「うるさいって言ってんのよ！ ぬ、脱ぐっ……脱ぐわよ。あ、見るな！」
「いえいえ、かぶりつきで見物させてもらいますよ。どうぞ遠慮なく脱いでください」
「……このゲス野郎」
この場合、いかに脅されようともこの場で牛尾を張り倒して警察に通報、逮捕させる
のがもっとも正しいし、危険もない。
そうすれば美幸への危機は去るのだ。
しかしそうなれば牛尾は洗いざらい全部喋るだろう。
ここまでする以上、もう罪が増えるとか量刑が重くなるとか、そういうことは気に
していないはずだ。
過去の夏実への暴行についても自白するに違いない。
そうなれば、夏実がいかに否定しても一応証言はとられる。
牛尾の証言は事実なのだから辻褄が合わなかったりアリバイがどうこうという懸念
もない。
一方、否定する夏実の方はウソなのだから、必ず綻びが出るに違いないのだ。
結局、夏実も恥ずかしいことを全部言わされる。
女性として、それだけは絶対にいやだった。
捜査担当官が同性でもいやだ。
警官としての誇りも女性としての矜恃も、そして辻本夏実個人のプライドまで、
すべてズタズタになるのだ。
それは出来なかった。
それに、自分からそれを認めてしまうということは、あの事件を闇に葬ってくれた
美幸や、その協力者たちの苦労が水の泡となるということだ。
八方塞がりだった。
夏実はふらふらと立ち上がると、黙って服を脱ぎ始めた。
どうせもう何度も穢された身体である。
今さら一度や二度犯されたところで何が変わるわけもない。
そう思おうとするのだが、身体が震えてくるのは止められなかった。
夏実にしては珍しく、今日はスーツで決めている。
初登庁ということもあったし、歓迎会があるということもあって、滅多に着ないスー
ツを着ていった。
ベージュのスーツを脱ぎ、その下の白いブラウスも脱いだ。
同色のスカートに手を掛けたが、さすがにこれはためらった。
おずおずと牛尾を見下ろすと、面白そうに夏実を眺めている。
もう許してと言って許してくれる相手ではない。
夏実は諦めたようにスカートのホックを外すと、一気に引き下ろした。
牛尾の感嘆する声が上がった。
「ひゃーー、相変わらず綺麗な脚ですね……。本当にモデルみたいだ」
「……」
「その黒っぽいストッキングもいいですよ。その光沢がたまらないよな、夏実さんの
脚がより引き立ってますよ。うーん、ストッキング・フェチの気持ちがわかるな」
「少し黙ってて」
「いいじゃないですか。そのストッキング脱がないでいいですよ」
「え……、なんでよ」
「そのままやりたいから……。ああでもそうすると破かなきゃならないのか。じゃあ
よすか。ね、夏実さん、今度はガーターにしてきてくださいよ。あるでしょ、ガータ
ーベルトとそのストッキング」
「いやよ、そんな！」
「色は黒がいいな……。出来たらネットのやつね。美幸さんは白が似合いそうだよ
なあ」
「み、美幸のことはいいでしょ！」
「だから今日はいいですよ。ストッキングも脱いでください。ま、夏実さんの白い
ナマ足触るってのもたまらないからな」
「い、いやらしいことばっかり……本当に変態……」
夏実は牛尾を睨みつけたが、一向に恐れ入るような感じはない。
パンプスを脱ぎ、言われた通りストッキングも脚から抜いた。
月明かりにも眩いくらいの白い脚が牛尾を魅了する。
いやらしいけだものの視線に耐えつつ、夏実はなおも観客ひとりのストリップを続け
なくてはならない。
白のスリップを脱ぐと、とうとうブラとショーツだけになった。
そこで牛尾の声がかかった。
「ストップ。そこまででいいですよ」
「……」
「下着はつけたままでＯＫ。しながら脱がせていきますから。脱がせる楽しみも
味わいたいもんで」
どうにもならない無力感に、夏実は唇を噛んで顔を伏せた。
「あ、あっ……こ、こらっ！」
牛尾はいきなり襲いかかった。
逃げる暇も何もあったものではない。
素早く夏実に抱きつくと、その首筋に唇をつける。
夏実は悲鳴を上げて押し返そうとしたが、たやすく抱きしめられてしまった。
夏実のパワーからすれば、これくらい難なくはじき飛ばせるはずだが、やはり酔っ
ていたのだろう。
酔っていると加減が出来ず、想定以上の力が出てしまう場合と、思うように筋肉
に力が入らない場合がある。
今回の夏実は後者だったようだ。
「やめて、気持ち悪いっ！」
牛尾はフンフンと犬が豚のように鼻を鳴らして夏実の髪の匂いを吸っている。
舌が首や耳元を舐め回す気色悪さに、夏実は鳥肌が立った。
「い、いやってば！ あっ！」
牛尾は体を入れ替えて、夏実の背中を胸で抱いた。
少しでも牛尾に接触しないようにと、夏実は背中を丸めて前のめりに逃げている。
牛尾は構わず、夏実の白い首筋を舐め、歯を立て、ぐっと大きく突き出している
胸をブラジャーの上からぎゅっと掴んだ。
「い、痛っ……強すぎよ！ ホント、デリカシーがない……痛いってんでしょ！
つ、掴むなあっ！」
「またまた。前もそうでしたよね。最初はあんなに嫌がってたのに、だんだんと
感じてきちゃうくせに」
「う、うるさいっ！」
「結局、強く揉まれるの好きなんでしょうに。乱暴にされると燃えるんだよね」
「勝手なことばっか……つっ……す、少しは加減してよっ」
「へえ、そうしたら俺とのセックスを愉しんでくれるとか？」
「はあ？ バッカじゃないの、あんた！ んなわけないでしょっ、くっ……痛いっ
……」
こんな愛撫、ちっとも気持ち良くなかった。
当たり前である。
これは夏実を感じさせようというよりは、牛尾がそうしたいだけの行為なのだ。
そもそも牛尾という人間が大嫌いなのに、そんな男とセックスして楽しいわけがない。
そう思いながらも夏実は一抹の不安がある。
ならば、過去にこの小太りのオタク男に犯されて、圧倒的な快楽に流されてしまった
のはなぜだ。
あれほどまでに官能の絶頂を何度も極めさせられたのは生まれて初めてだった。
恋人の東海林とのセックスでは絶対に味わえなかった恐ろしいほどの快感だった。
東海林との行為がセックスであるなら、牛尾に犯されたそれはセックス以上のもの
だったということになる。
逆に牛尾のレイプこそが夏実にとってのセックスだったのであれば、東海林との
それは児戯に等しいお遊び以下のものだということになる。
夏実にとってはどちらも認めがたかった。
今だって、イヤでイヤでたまらないし、こんな男に身体を自由にされるというのは、
気丈な夏実にとっては大げさでなく死にも勝る屈辱のはずなのだ。
確かに初めはそうだった。
なのに、だんだんと馴らされていったのか、諦めの境地だったのか、あるいは牛尾
のセックスに溺れてしまったのか、最後には彼の身体にしがみつくほどの反応を見せ
てしまっていた。
あの恥辱は一生忘れられない。
二度とやるまいと誓ったが、今こうしてまたあの時の再現になってみると、その誓い
が虚ろになっていくのがわかる。
何度も何度も激しく気をやらされた記憶が、夏実の心身を萎えさせていく。
「くっ……離して……離しなさいっ……！」
後ろから大手を回して乳房を揉んでくる牛尾の腕をぐっと掴むのだが、どうしたわけ
かその手に力が入らない。
胸を潰される痛みがピリピリとした痺れに変化していく。
その先が怖かった。
夏実の胸を嬲る牛尾も感無量だった。
取り調べや拘置所の中でも、思い浮かぶのは夏実の肢体であり、その巨乳のこと
ばかりだった。
両手の指から感じ取れるその質感は、ブラの上からでも充分だ。
夏実に悲鳴を上げさせるほどに強く握ると、指の間から熱い肉が溢れるようにはみ
出し、ぐにゅぐにゅと自在に形を変えていく。
その柔らかさと暖かさに牛尾の興奮はいや増し、さらに力を入れて乳房全体をぐい
ぐいと揉み絞る。
「いっ……たいっ……む、胸が壊れちゃうでしょっ……ああっ……！」
夏実の声を心地よく聞きながら、牛尾はその胸肉を下からすくい上げるように揉み
上げ、根元から捻り、ぐっと両の乳房をくっつけるように寄せる。
夏実の乳房のボリュームがさらに強調され、胸の谷間が深くなり、まるでボールを
ふたつくっつけたような見た目になる。
「い、や……痛い……あっ……や、やめてよ、もう……あっ……す、するならもっ
と優しくてってば……ああ……」
「へえ、優しく？ ようやくその気になりましたか」
「そうじゃ、そうじゃない……けど……あっ……い、痛いのはいやよ……んっ……」
「くく、そんなこと言いながら、もう乳首が堅くなってるじゃないですか」
「ウソっ……そんなこと」
「ありますよ、ほら」
「ああっ……！」
確かに硬くなっていた。
もうブラの生地の上からでもはっきりとわかるほどに屹立している。
牛尾はそこをくりくりと揉み出すようにこねくっていた。
揉む手になおも力が入る。
牛尾には、優しく愛撫して夏実の官能を引き出したいなどという意志はない。
ただただ強く責め、自分の絶対性を刻み込みたいのだ。
皮肉なことに、そうした激しい愛撫こそが、夏実の肉体にマッチしている。
「本当は、こうやってきつく愛撫されるのが好きなんですよね」
「ち、違……くっ……」
肌を直にではなく、ブラ生地の上から指で摘まれる感覚に、夏実は強い官能を感じ
ていた。
どうしてこんな行為ばかりで感じてしまうのかわからない。
わからないままにその肉体はどんどんと堕ちていく。
牛尾が、ブラの上から摘んだ乳首をくいっと引っ張ってやると、夏実はつい喘いで
しまった。
「ああっ……！」
「ほら、よがってる。もう認めてればいいじゃないですか」
牛尾は言葉で嬲りながら、夏実の首を舐めている。
強くこねくられ、揉み上げられている乳房は、もうブラのカップからこぼれ落ち
そうだ。
「ああ……あっ……や……くっ……んんっ……あっ……」
夏実の声が明らかに変化してくる。
抗いの声が薄れ、次第に熱い吐息が零れてきた。
喘ぎを堪えようと唇を噛みしめて耐えるのだが、その快感の熱気は鼻から漏れて
しまい、「んんっ」と艶っぽい鼻声となって現れた。
もう力が入らないのか、牛尾の腕を掴んで必死に引き離そうとしていた夏実の腕は、
弱々しく彼の手を押さえるだけになっている。
そして身体は完全に牛尾に預け、背中が彼の胸に納まっていた。
夏実の快楽への耐性は、やはりかなり落ちている。
牛尾の責めに順応し、抵抗が収まる時間が早くなってきていた。
牛尾は喉で軽く嗤ってから、さらに荒々しく胸を揉みしだく。
もう乳房は、半球ほどがブラからこぼれ落ちていた。
そのブラジャーがむしり取られ、ぶるんと張りのある若い大きな胸がまろび出る
と、さすがに夏実も「あっ」と叫んだが、すぐにその声も収まった。
牛尾が夏実の右腕を掴み、自分のペニスを握らせたのだ。
「きゃああっ、な、何触らせてるのよっ！」
「なにって、わかるでしょうに。夏実さんお馴染みの、そして大好きな俺のチンポ
ですよ」
「やっ！ ふ、ふざけないでよ、あたしはそんなもん好きじゃないわ！ ちょっと！
手ぇ離して！ 汚い！ こんなもん触りたくないってば！」
「ほら懐かしいでしょう、夏実さん」
「バ、バカ言わないで！ どうしてこんなもんが懐かしい……はっ、離してよ！」
「懐かしいに決まってるでしょう。ほら、今夏実さんが手にしているペニスを、夏実
さんは何度も口でくわえて、オマンコを貫かれて、お尻の穴まで犯されたんだ」
「……」
「憶えているんでしょう、身体が。口に入れた時の感覚も、オマンコやお尻の中を
かき回されて抉られて、たっぷり射精された感覚も」
「い……や……」
夏実はわなわなと震えながら、目を閉じて顔を振りたくった。
激しい拒否という感じではない。
夏実らしくなく、なよなよと顔を横に振った。
それでいて、右手はしっかりと牛尾のものを掴んでいる。
いつの間にか牛尾の手が離れたというのに、夏実はその手のひらの中に熱く猛った
肉棒を握っていた。
（ああ、熱い……。こ、この硬さと太さ……全然変わってない……どうして……どう
してこんなに大きいのよ……。あ、あたしを愛しているから？ 違う、そんなはず
ない。愛しているなら、あんな酷いことが出来るはずない……。でも、飽きもせず
あたしの身体を貪るように犯すのは……こいつなりの愛情表現？）
そこまで考えて、夏実は激しく頭を振った。
（だめっ、そんなこと考えちゃ……あたしはこいつが大嫌いなんだからっ……。あ、
でも……もうこいつのぬるぬるしてきた……もういやらしい汁が出てきてるんだわ
……）
ツーンとした生臭い男の匂いが立ちこめてきた。
その臭気に毒されたかのように、夏実は知らず知らずのうちに、牛尾のペニスを
ゆっくりとしごいてすらいた。
夏実自身、どうしてそんなことをしているのかわからない。
夏実の肉体奥深くに刻み込まれた性の喜悦の刻印は、そうそうなくなるものでは
ないのだ。
「……その気になってきたね、夏実さん」
「そ、そんなことないっ」
「ほら、パンツも脱いで」
「やっ……」
「脱いで」
「……」
牛尾が左手で乳を掴みながら、右手でショーツの裾を摘んで引き下ろそうとすると、
夏実はスッとと腰を浮かせて脱がせやすいようにすらしていた。
この行動は恐らく無意識なのだろう。
セックスに於いては牛尾が主導権を握る。
夏実の心と身体に、いやというほど刷り込まれた淫らな教訓だった。
夏実が腰を少し上げたため、股間を守っていたショーツは簡単にするりと抜けた。
そしてショーツを右足首に引っかけたまま、夏実はごろりと仰向けにされた。
薄汚い布団の上でもがく夏実の媚肉に、ぴったりと牛尾のペニスがあてがわれた。
夏実が「あっ」と思う間もなく、牛尾は硬そうに反り返った肉棒を掴んで、そのまま
媚肉に突っ込んできた。
「んああっ……！！」
その衝撃に、夏実は目を剥いて叫んだ。
夏実の狭い膣口に野太い牛尾のペニスが軋むようにねじ込まれる。
そのきつさと苦痛に、夏実は大きく仰け反って絶叫した。
「くぅああっ！ バカッ、いきなり何すんのよぉっ！ い、痛い、きついっ……！」
「そうですかね？ まあ確かに夏実さんのオマンコは相変わらずきつくて良い感じ
ですけど」
「あ、あんたのはでか過ぎんのよ……あっ、それ以上入れるな！」
「全部入れなきゃ意味ないし、夏実さんだってそうして欲しいくせに」
「そんなことないっ……あっ……」
「でももう濡れてるじゃないですか」
「こ、これは……」
確かに濡れていた。
そのことに気づいて夏実は唖然とする。
まさかフェラさせられていて濡れてきたのだろうか。
それとも淫らな言葉で嬲られて興奮したのか。
そんな身体にされてしまったことを、夏実は今さらながらに実感していた。
「あ、あっ……だ、だめ、そんな深くっ……ひっ……！」
牛尾は腰を捩って出来るだけ深くまで貫こうとしてくる。
その深さに夏実は目眩がした。
東海林との行為では決して味わえなかった、女体の最深部まで届かされる感覚。
狭い膣道を内側から拡げるように押し入ってくるその太さ。
牛尾の男根のたくましさがイヤでも思い起こされ、夏実は圧倒される。
これほどに「男」を意識させられることはなかった。
牛尾のものの先端が子宮にまで届き、そこをコツンと突かれると、夏実は嬌声にも
似た悲鳴を上げた。
「届きましたよ。これ夏実さんの子宮ですよね」
「だめ、そんな……あっ……ふ、深すぎる……」
「深すぎる？ まだまだですよ。俺のはまだ全部入ってませんから」
「そんな……これ以上無理よ……」
「まだね。でも夏実さんの身体が本当にとろけてくれば大丈夫、全部入りますよ。
前だってそうだったじゃないですか」
「ああ……」
そうだった。
どうしてこんな大きなものが全部入るのかと不思議なくらいだ。
子宮を押し上げてくるほどに深くまで入れないと、この男は満足しない。
牛尾は、肉棒に貫かれた夏実の股間をじっくり見てから、おもむろに動き始めた。
ずぶっと奥まで突き入れ、子宮にまで届くと、そこで二回ほどコンコンと突き上げ、
それからすっと浅く引いてまた深くまで突く。
これが牛尾のリズムだった。
（ああ、これ……こ、これをされると、あたしおかしくなる……）
「ああっ！」
夏実がはっきりとした声で喘ぎ出した。
組み伏せられた夏実は、覆い被さってくる牛尾の胸を手で押し返していたのだが、
徐々にそこから力が抜けてくる。
ボリューム満点の乳房を揉みしだかれると、思わずその腕を掴んでしまう。
「あ、あはっ……いやあっ……あ、あ……いっ……」
「いいんでしょう？ 夏実さん、セックスされながらおっぱい揉まれるの大好き
だったものね」
「やっ……つ、強い……もっと優しく、ああっ……」
大きな乳房をたぷたぷと揉み込まれ、その頂点の乳首はきりきりと痛いほどの硬く
なっていく。
それを指先でぐっと押し込んで乳房の中に埋め込んでやると、ズーンとした痺れる
ような快感が胸を覆ってくる。
思わず腰をうねらせるのだが、そのくねる腰を牛尾の性器が串刺しにしていた。
牛尾は夏実の長い左脚を抱え、屈脚位で結合をさらに深めて、奥へ奥へと打ち込
んでいった。
「あっ、あっ、ああっ……だ、だめっ……あ、もう……くっ……あああああっっ！」
喘ぎ悶えていた夏実は、がすがすと何度も深く腰を打ち込まれ、子宮を抉られて、
たちまち達してしまった。
掴んでいた牛尾の腕に爪を立て、歯が軋むほどに口を食いしばった。
強烈な締め付けが牛尾のペニスを襲ったが、一度フェラで出しただけあって、その
甘美な収縮に何とか耐えた。
「おおっ……ふう。早いな、もういったんですか」
「……」
「やっぱ夏実さんの締め付けはすごいや。俺もつい出しちまうとこだったですよ。
でも嬉しいなあ、俺に抱かれるとすぐにいっちゃうんですね」
「言わないでよ……は、恥ずかしい……」
夏実は身が縮む思いだった。
どうしてこうなってしまうのだろう。
酔いもあったろうが、まさかこんなに早く反応し、気をやらされるとは思わなかった。
東海林に抱かれても必ず絶頂するとは限らなかったのに、牛尾に犯されると確実に
頂点まで押し上げられてしまう。
しかも一度いっただけでは許してもらえず、牛尾が射精するまでに三度四度と続けて
いかされることも珍しくなかった。
そんな異常なセックスが常態化してしまったせいか、東海林とのセックスに切なさ、
物足りなさを感じるようになっていたのも事実だ。
生理的嫌悪を感じずにはいられない大嫌いな牛尾に犯されているというのに、恋人に
抱かれる以上の快楽を得てしまう。
嫌いな男に犯されて感じるのはマゾだと牛尾に言われたことがある。
だから最初は嫌われてもいい、だが最後には必ず自分のものになると牛尾は自信満々
に言っていたことが思い出された。
本当にそうなってしまうような気がした。
心とは何だろう、愛とは本当に精神的なものなのか、セックスとは何なのか。
それを考えずにはいられない夏実だった。
「いったんでしょう、俺に抱かれて。はっきり言ってくださいよ」
「うるさい……」
「くく、「いってない」とは言わないんですね。前は意地になって「いってない」っ
て叫んでたのに」
「……」
夏実は悔しそうに顔を伏せたが、夏実をくわえ込んだ膣は、まだ物欲しそうに食い締
めていて離そうとしなかった。
それを引き剥がすように、牛尾はまた激しく抜き差しを再開していく。
「ああっ、いやあっ……やめ、もういやっ……あっ、あっ……うんっ……！」
肉棒が出入りするごとに、膣はにちゃっ、ぐちゅっと蜜を滴らせ、夏実の声が途切
れる。
いやいやと言いながらもその腰は牛尾の腰に合わせて動いており、こうしたところは
完全に籠絡されたあの時と何ら変わりはなかった。
自ら腰を振り、牛尾が突き刺してくると腰を持ち上げてくる。
抜くと夏実も腰を引き、その摩擦感を愉しむとともに、肉棒のストロークが長くなる
ように無意識で行動していた。
ゆさゆさと揺れる巨乳を掴まれ、ぎゅっと握られ、揉み込まれるとと、夏実は髪を
振り乱して喘いだ。
「ああっ……はああっ……いっ……あ、また……くっ……いっ、いいっ……あああっ」
媚肉がきゅうきゅうと締まってくる。
牛尾はその快い締め付けを愉しみつつ、大きく腰を揺すって打ち込んでいった。
ずぶっと奥まで突き刺し、子宮口を亀頭の先でぐりぐりと抉り込み、こねくり回す。
敏感すぎるところを目一杯刺激され、夏実がまた上昇していく。
「そ、そこぉっ……だめっ……あ、そこっ、くっ、かっ、感じるっ……いいっ……
だめよっ……ひっ……ああっ！」
「おっ、あっ……夏実さんっ……締め付けきついよっ……うっ、出るっ！」
「あ、いく……だめいくうっ……いっ……く……いっ……く……いくっ……！」
二度目の絶頂を極めた夏実が思いきり締め上げてくると、牛尾も今度は堪えきれず
に放出した。
子宮を叩く熱い奔流に、夏実は背中を反り返らせて連続絶頂した。
「ひっ、出てるっ……うっ、うんっ……い、いくっ！」
夏実は胎内に流れ込んだ熱い精液の刺激に身悶え、痙攣していた。
射精中の肉棒をさらに締め付け、全部出せと言わんばかりに収縮している。
その心地よい刺激が、牛尾の肉棒に力を与えていく。
ひさしぶりの女体、ひさしぶりの夏実の身体ということもあって、牛尾は一度や二度
射精しただけでは収まりそうにない。
もともとその絶倫ぶりで何度も夏実を泣かせてきた男である。
この極上の肉体と喘ぎぶりを見て奮い立たぬはずもなかった。
牛尾は、まだ射精が続いている肉棒で、ぐったりしている夏実を突き上げ、その媚肉
をかき回していく。
「ちょっ、いやあっ……あっ、すごっ……こ、こんなのって……ああっ、で、出てる
のに突かれるなんてっ……ひぃっ……あううっ、いいっ……！」
射精されながら膣奥を突かれ、夏実はその快感に喘ぎっぱなしだが、責める牛尾の
方も、射精して敏感になっている亀頭でそこを擦り上げるのだから、こっちもすごい
摩擦感と刺激がある。
「あはああっ……すごいっ……お、奥っ……奥に来てるのよっ……あ、あんたの
ホントにおかしいわ……いいっ……」
「な、夏実さんこそすごいですよ、すごい締め付けだ。こ、これじゃ俺も保たない
ですよ、続けて出ちまいそうだ」
「だめっ……もう中はだめだったらっ……に、妊娠したらどうすんのよっ……ああっ
……あの時だってあたしは……本当に妊娠したかと思ったんだからぁっ……いいっ
……」
「妊娠していいですって。産むのも堕ろすのも女性の権利ですしね。俺は孕ませる
ことには興味あるけど、子供は嫌いだし、産む産まないはどうでもいいですよ」
「くっ……、あ、あんたって本当に最低ねっ……ああっ……い、いきそうっ……また
いきそうなのよっ……」
「最低か。でも、その最低の男に犯されるのが最高にいいんでしょう？」
「う、るさいっ……いいっ……あ、だめ、いく……またいくわよっ……やああっ、
いくうっ……！」
夏実の熱く柔らかい肉襞がとろけ、牛尾のペニスを覆い包んでいく。
得も知れぬ素晴らしい肉感に、今出したばかりだというのに、彼の肉棒からはまた
射精感が込み上げてきた。
とてもその快楽には抗えなかった。
夏実の乳房を握りしめながら、牛尾も続けて射精していく。
「うっ……出るよ、夏実さんっ……また出る！」
「だめっ……いや、中には……いいっ……ひっ、あ、また中に出てるっ……！」
子宮口に直接熱い精液をひっかけられ、夏実はよがり声を上げながら達していった。
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