「い、いやっ!」

美幸は反射的に脚を閉じたが、股間に入り込んだ牛尾を挟み込んだだけだった。
もがく美幸を、乳房を掴んで押さえつつ、堅く閉じられている割れ目を指で拡げた。
美幸はびっくりしたように声にならぬ声を上げて身を捩ったが、大した抵抗になっ
ていない。
太短い指で器用に拡げられた女肉は、隠されていた肉襞と小さな穴を男の目に晒
した。
その内部をゆっくりと擦る指に、美幸は悲鳴を上げた。

「きゃああっ!」

女陰に伸びてきた手を払おうと、美幸はその身体を震わせ、身を捩ろうとするもの
の、がっちりと乳房を押さえ込まれていてあまり動けない。
激しく動こうとすると、牛尾の手が乳房に爪を立てるほどに強く握ってくるのだ。
急所を思い切り握りしめられる苦痛に美幸は呻くしかない。

「い、痛い……あっ……胸、苦しいわ、あんまり強くしないで……痛っ……!」
「なら、おとなしくすることですね。そのうち強く揉まれるのが好きな女にして
あげますけどね」
「いやよ、そんな……あっ!」
「ふーん、まだ濡れてないですね。夏実さんは濡れやすい人だったけど、美幸さんは
そうでもないのかな」

美幸は呆れて言葉も出ない。
こんな状況で女が感じ、濡れるわけがない。
レイプしても女は反応し、濡れ、感じまくって絶頂するなどというのは男の妄想に
過ぎない。
エロ漫画やアダルトビデオの見過ぎだ。
美幸は反論もせず、黙って牛尾の暴力に耐えていた。
予想外の攻撃やあまりにも卑猥なことをしてくるため、完全に悲鳴を押さえ込むこと
は無理にしても、出来るだけ我慢してやろうと思っていた。

そんな美幸の抵抗が、牛尾には手に取るようにわかる。
夏実もまったく同じだったからだ。
美幸籠絡は、夏実の時より要領よく出来るはずだった。
牛尾は、まだ乾いたままの媚肉に入れていた指を、その上に移動させた。
誰でも感じるはずのクリトリスに向かったのである。
中指と親指が、クリトリスを軽くつまみ、ずるっと包皮を剥いた。

「ひっ……そこはっ……」

こんな男に性器を観察されるだけでなく、好き勝手にいじり回される恥辱と屈辱で
美幸の胸は白く灼けた。
ここで官能を呼び起こされてしまっては、卑劣な男の思う壺である。
そうはいっても、クリトリスを嬲られることへの恐怖はあった。
そこが感じるポイントだということは、知識でも経験でも知っていたからこその
恐れだ。
剥き出しになった肉芽に指が這ってくる。
ぬるっとした感触なのは、男が唾液でも塗ったのだろう。
自分は濡れていないという自信はあった。

「っ……ふ……んっ……」

鋭敏な性感帯をいじられるのだから、どうしても官能が刺激されることはある。
そうした時は喘ぎにも似た呻きが出るのは防げなかった。
しかし、それ以上にはいかない、意地でもそうならないという決意が美幸にはあった。
夏実はどうされたのかわからないが、自分だけは何としても耐え抜いてみせる。
焦れた牛尾が犯してくるのはやむを得ない。
だが、その時でもこの卑劣な小男を嘲りの顔で見下してやる。
そのくらいの意地は美幸にもあった。

「くっ……」

牛尾の指が膣穴に潜り込んできた。
痛かった。
濡れておらず、柔らかくもなっていないところに太い指が入ってきたのだ。
痛いに決まっている。
これで感じるなど、とんでもないことだ。

それでも、牛尾がねちっこくクリトリスをいびり、膣内の浅いところにある美幸の
ポイントに触れると、ぎくっと裸身を捩り、呻き声が上がる。
膣の最奥がじわっとしてきて、僅かだが潤っても来た。
それは認める。

しかし、それは美幸のせいではないのだ。
クリトリスや膣など、いわゆる性感帯を愛撫されれば膣は愛液を分泌する。
そうした行為で性的刺激を受ければ、すぐに男の生殖器が膣に挿入される。
その準備を膣がしているだけなのだ。
愛液が潤滑油とならなければ、狭い膣は男の性器を受け入れることは難しい。
入ったとしても女にひどい苦痛を与えることになる。
それを避けるための防衛本能のようなものなのだ。
美幸は、そんな医学書の能書きのようなことを考えて、この場を乗り切ろうとして
いた。

責める牛尾の方は、思ったより反応しない美幸の態度に少し苛立っていた。
夏実の時は、彼女の裸身や媚肉を見たことで興奮しきってしまい、あまり濡れて
いないうちに挿入してしまった。
初めて夏実を犯したことで精神的に満足はしていたが、今考えれば物足りない。
美幸もそれでは芸がないというものだ。

美幸には、最初からある程度感じてもらおうと思っていた。
あの時の自分とは違うのだ。
オマンコを見ただけで興奮して前後不覚になるようなことはない。
夏実の美しい肉体を存分に味わい、性の奴隷にしてみせた牛尾は、女体に対する
少なくない自信を持ってきていたのだ。
牛尾は、美幸の腿をぴしゃっと叩くといったん離れた。

「……」

美幸はその後ろ姿を見てホッとしていた。
自分があまり反応しないから飽きたのか、それとも諦めたのかも知れない。
さっきまでの動揺や不安は消え、あの男に勝ったという心地よい満足感すらあった。

「……これでわかったでしょ。女をレイプしてものにしようなんて甘いのよ。自首
しなさい、つき合ってあげるから」

牛尾の声がキッチンの辺りから返ってきた。

「そんなこと言っていいんですか? 俺が自首……というか、捕まったら、夏実
さんとのセックスを赤裸々に全部ぶちまけますよ。美幸さんのオマンコを拝んだ
こともね」
「……」

美幸が絶句していると牛尾が戻ってきた。
手にはワンカップの酒を持っている。
美幸はイケる口だが、アルコールは常備していない。
冷蔵庫にそんなものはなかったはずだ。
牛尾が持ってきたのだろう。

「なあに? お酒の力を借りなきゃ女を自由にできないの? お子様なのね」
「……」
「子供は子供らしくおとなの言うこと聞きなさい。もう懲りたでしょ、あなたは
……」
「よく喋るようになりましたね」

起き上がろうとした美幸の前で、牛尾は仁王立ちした。
カップ酒のフタを指で開け、軽く一口含んだ。

「別に酒の力でどうにかしようとは思いませんよ。……あ、いや前言撤回だ、酒の
力を借りますよ」
「……?」
「但し、俺が飲むんじゃなくて美幸さんの使うんですがね」
「私? 悪いけど、今は飲む気になれないわ。いらない」
「上の口はそうかも知れないけど、下の口はどうですかね」
「ど、どういうことよ」
「すぐわかりますよ。いいから、また寝て下さい」

美幸はまた牛尾に厳しい視線をくれてから、ふれくされたように寝そべった。
どうあっても一度は犯さないと満足しないのだろう。
それならそれでいい。
どうしても避けられないのであれば、この屈辱の時間が早く過ぎることを祈るのみ
だ。

「ひゃっ!?」

美幸は、肌に生温かい液体をかけられ、びっくりして目を開けた。
牛尾は相変わらず美幸の股間を覗いている。
とことんゲスな野郎である。

「な……何したの?」
「え? これ」
「お酒……」
「そう。さっき言ったでしょ、美幸さんに使うって。上の口は飲まないって言って
るから下の口に飲ませますよって」
「そ、それって、まさか……」
「そのまさか。美幸さんのオマンコで飲んでもらいますよ」
「い……いやよ! あなたなに考えてるのよ! そんなこと絶対にいや!」
「いやとは言えないんでしょ?」
「……」

美幸は悔しそうな表情を一瞬浮かべたが、すぐにまた寝転び、M字開脚に姿勢を戻
した。
するなら何でもしてくれ、そしてさっさと終わらせろ。
そういう意志がビンビンと伝わってくる態度だ。

それでも美幸には一抹の不安もあった。
ただ身体をいじくられ、舐められる程度なら、気持ち悪いが耐えられないこともない
だろうと思っていた。
しかし、あそこにお酒をかけるなんて聞いたこともない。
そんなことをされたらどうなるのか、という怖さだ。
世のスケベな男どもの中には、女の股間を閉じさせてそこに酒を注ぎ、それを「わか
め酒」と言って珍重する者もいるが、そんなことまで美幸は知らない。
そうされることで自分がどうなるのかも当然わからなかった。

「くっ……! し、しみる……」

アルコールだから、粘膜に触れれば当然しみるのだろう。
牛尾は酒を口に含み、美幸の膣に垂らしていった。
ぽたっと媚肉に酒が零れてくると、美幸はびくっとして声を上げる。
垂らされた日本酒は、徐々に膣を濡らしていき、肉の割れ目に小さく溜まってきていた。

「い、いやっ……やめてよ、あっ!」

よく張った腰を捩り、腕や脚をびくっと縮ませる。
思い切り動かすことが出来ないのが辛かった。
そのうち、しみるだけだった刺激がだんだんと変化してくるのを美幸は感じていた。
恥丘や割れ目の外に零れているうちはどうということはなかったが、その中に染み
渡ってくると、カッと燃えるように熱くなってきたのだ。

「あ……」
「ん? どうしました? 熱くなってきたでしょ」

牛尾はそう言うと、また酒を少し口に入れた。
今度はそれを上から垂らすのではなく、直接口をそこに当てて、流し入れようとして
いた。

「あ、やっ……く、口でなんて……!」

美幸もクンニされたことはある。
男の舌が大事なところを舐め上げてきた時は、そこがとろけてしまうかと思うほどに
熱く感じた。
しかし、それは愛する中嶋だから許したことであり、牛尾にされるなどというのは
屈辱以外の何物でもない。

「あ……」

それでも牛尾は何度も口に含み、それをびゅっと美幸の膣穴に噴き込んでくるのだ
った。
酒で濡れた花弁を指で押し開き、そこに口をつけて思い切りびゅっと噴き入れる。
その感触に、美幸の腿がびくっと震える。
震える腕が、今にも牛尾の頭を殴ってしまいそうだ。

「くっ……!」

唇を噛んで耐えていた美幸だったが、やっと酒責めが終わったようである。
肛門ならともかく、膣はそれほど体積はない。
100ccも入れれば溢れてきてしまうのだ。
実際、もう美幸が呼吸するごとに、小さくぴゅっと逆流してきている。
しかしそれで終わるほどに牛尾は甘くない。
入れるのをやめたと思ったら、今度は何と吸ってきたのである。

「ああっ……!」

美幸は初めて熱い声を上げていた。
それは快楽のためというよりは、激しい羞恥と恥辱のためだった。
クンニされるだけでなく、膣内に入った液体を吸い上げられているのだ。
倒錯的な責めに、美幸は激しく動揺した。

「や、やめてそんなことっ……ああっ、いや!」

美幸はそう叫んで牛尾の頭を押し返そうとした。
しかし牛尾はその右腕を左手で押さえ込んでしまう。
左手は自由だったが、美幸が頭を叩こうが髪を引っ張ろうが押し返そうが、牛尾の
顔は頑として動かず、美幸の性器に執着するように吸い付いていた。

「やっ……しないでそんなことっ……ひっ……あ、熱い……あっ」
「中も熱くなってきたでしょ。お酒飲んだら胃の中がかあっと熱くなりますよね。
それと同じですよ。膣だって同じ内臓なんだから、その粘膜がアルコールに冒され
れば当然熱を持ちますわな」


牛尾はそう言うと、また美幸の膣に口をつけた。
もう飛び出るほどには入っていないが、じわっと滲んでくる酒をずずっと音を立て
てすすり上げ、べろべろと舐め回していた。
そんなことをされていると、美幸の花弁はもう完全に開花しきって、内臓まで露わ
にしていた。
クリトリスもすっかり充血し、包皮は剥け切ってピンと膨れている。
酒で濡れた唇でそれをくわえ、舌で舐めてやると、今度こそ美幸の口から喘ぎが零れ
出た。

「ああっ……! いやあっ……あう!」

舌先で膣穴を抉り、唇で肉芽を挟みこんで嬲ると、残っていた酒が染みこんで、
美幸の悲鳴を絞り出した。
肢体をぎくんと痙攣させ、指がシーツをぎゅっと掴む。
膝を立てた脚も、腿がぐらぐらと揺れ、足の指が屈まったり反り返ったりを繰り返
している。

「あうっ……やっ……もうやめて、あっ……くうっ……!」

ベッドの上で何度も跳ね上がり、身悶えていると、酒がどんどんと胎内に染みこんで
いく気がする。
中の酒は牛尾が吸い上げてしまったようだが、その前にけっこうな量が粘膜に浸透
している。
アルコールが威力を発揮し、美幸の胎内だけでなく、外部にあるクリトリスや襞、
そして盛り上がった恥丘までが燃えるように熱くなっている。

「どうかな、美幸さん。少しは楽しい気分になりました?」
「ああ……」

まともに応えられず、美幸は悩ましげに身体を捩っていた。
確かにおかしな気分になってきている。
明らかに官能が刺激されているのだ。
これが、中嶋相手であれば、美幸はそのまま彼に抱きついたかも知れない。
だが、この疼きを何とかしてくれと、誰彼かまわずその身を預けるほどに美幸は淫ら
ではない。
それに、牛尾に対する心理的な嫌悪感、そして憎しみもある。
こいつに抱かれるくらいなら、じりじりした焦燥的な性欲に苛まれても我慢出来ると
思った。

「あうっ!」

牛尾が両手で左右の乳房を同時に握りしめ、ぎゅうっと押しつぶすように鷲掴みした。
その状態でぐいっと回転させるようにねじっていく。
急所をそんな乱暴にされれば苦痛しかないはずだが、美幸は他の何かも感じていた。
確かに激しい痛みだったが、同時に、なぜか下半身にまでジーンと響いてきたのだ。

(な……なにこれ……)

苦痛で背中を反り返らせつつも、美幸は戸惑っていた。
痛いのにもやもやした感じもある。
そんな経験は初めてだった。

「くっ! 痛っ!」

今度は乳首を抓られた。
親指と人差し指でぎゅっと挟み込み、きゅっと潰される。
激痛とともにビーンとした強い電流が、胸から下半身へと走り抜けた。
眉間に皺を寄せ、苦悶する表情の裏に、どうなっているのかわからないという戸惑い
の色が浮かび始める。
牛尾は薄笑いして、今度は乳首の根元を軽く擦ってやる。

「あっ……!」

美幸はそれだけで身体をギクンと軽く跳ね上げた。
痛い後の擦るような愛撫で、思わず官能を感じてしまったらしい。
やはり乳首の感度もだいぶ上がっているようだ。
そう言えば、それまで萎んで堅そうだった乳首は、いつしかぷくりと頭をもたげ、
薄い皮膚が張るほどに充血している。
同じ堅そうなのでも天地の違いだ。

「いきますよ、美幸さん」
「や……、やっぱりいや……」
「ああ……、とうとう美幸さんと結ばれるんですね」
「いや……、ああ、しないで……私……」

抵抗を禁じられている美幸は、のしかかろうとしている牛尾を跳ね飛ばすことも
出来ず、両手で顔を覆って嗚咽を漏らしている。
美幸のこんな姿や表情を見た者は、今の牛尾だけだろう。

「ひっ……!」

ペニスの先で媚肉をちょんと突つくと、美幸は喉の奥から短く悲鳴を洩らした。
思わず腰が逃げる。
それでも、肉棒を摘み、肉の溝を何度か突き込み、なぞっているうちに、目指す
小さな穴が見つかった。
そこ目がけて、ぐっと腰を落としていく。

「ぐぐっ……や……いやあ……くっ……」

酒と蜜ですっかり濡れていた膣口だったが、とうとう犯されるとわかると、すうっ
と乾き始めていたようだ。
かさかさではないが、まだ挿入に入るには早い状態だ。
それでも牛尾はためらうことなく、そこを突き通そうとする。
美幸は呻きながらも身体を上へ逃がそうとずり上がっていく。
それを牛尾が、また胸を掴んで押さえ込む。挿入が始まった。

「い、痛い……や、やめて、あっ……ぐぐぐ……あ」

牛尾はなるべくゆっくりと押し進めていく。
濡れが足りず、さすがにきつかった。
入れる方がこれだけきついのだから、入れられる方が痛いのは当然だろうと思う。
顔を覆っていた手が、牛尾の胸を押し返している。
その手はぎゅっと握られ、必死に痛みに耐えているかのようだ。

苦悶する美幸の美貌を愉しみながら、牛尾はなおも腰を進めた。
このきつさと苦痛を訴える女の苦悶。まるで美幸の処女を奪っているのだという
錯覚が、牛尾を満足させている。
陰茎が熱い粘膜に包まれていく。
牛尾の肉棒が半ば過ぎまで──15センチほどだろうか──入れられると、美幸の
身体からがっくりと力が抜けた。
諦めたらしい。
牛尾が言った。

「……とうとう繋がりましたよ。わかりますよね、美幸さん」
「ああ……」

胎内への猛烈な異物感と痛み。
そして牛尾の意地悪な言葉で、美幸はついに自分が穢されてしまったのだと嫌でも
思い知らされた。

(な……かじま……くん……、ごめん……。私……私、こんなことに……)

閉じた目の縁で玉のようになっていた綺麗な涙が、ぽろりと顔を伝ってシーツに落ち
ていく。
悲しみにくれる美幸の美貌は、ため息が出るほどに美しかった。
牛尾に残酷な嗜虐の欲望が湧き起こる。

「か……はっ……」

膣口はめりめりと音がしそうなほどに拡げられ、今にも裂けそうだ。
狭隘な膣道も太いものを飲み込まされてミチミチと軋んでいる。
バージンではないのに、まるで初体験のようなきつさと苦痛で、美幸の裸身はぴく
ぴくと痙攣していた。
文字通り、身体が引き裂かれそうな激痛だ。

中嶋ともセックスは何度かしていた。
中嶋と結ばれる前は、もう何年もご無沙汰であり、彼に抱かれた時もけっこうきつ
かった。
しかし今回のは、とてもそれとは比較にならなかった。
初体験の時よりも痛いような気がする。
大きな口を開けて声もなくもがく美幸を見ながら、牛尾はその太腿を抱え持ち、ぐぐ
っとさらに押し込んでいく。

「あぐうっ! いっ……やあっ……!」

牛尾が動くたびに、悲鳴と苦しげな喘ぎを交互に洩らしつつ、美幸は両手でシーツを
握りしめてその暴虐に耐えていた。
ゆっくりと腰を使われ、内部で肉棒が蠢くと、美幸の口を割るようにして、堪え忍
んだ悲鳴が零れ出る。
愛液の分泌が止まってしまったせいか、ペニスの律動がぎこちなかった。
蜜が潤っていれば、もう少し苦痛が和らぐのだろうが、美幸としてはとてもそんな気
にはなれない。

「うっ! 動かないで、あっ! い、痛い……あぐっ! ああ、いやあっ!」
「きついな……、美幸さん、まるでバージンみたいですよ。いい感じだ」
「くあっ……だめ、動いちゃだめえっ……あ、せめてもっとゆっくり……あうっ!」

美幸は、己を犯す男根の凄さに目眩がするようだった。
こんなに太く、硬いものとは思わなかった。
この状況で中嶋のものを思い起こすのは不可能だが、それにしても、彼に同衾した
時はこんな苦しさもなかったし、痛みもずっと弱かったと思う。
それだけこの男のものが巨大なのかも知れない。

「ううっ……あぐっ……うんっ……うあっ……ひっ……!」

牛尾の動きが徐々にリズミカルになっていく。
貫く深度はまだまだ浅い方だったが、美幸にとっては充分だったようで、もう無理
という表情で苦しんでいる。
何度も突き込んでいるうちに、胎内も僅かではあるが濡れてきていた。
無論、快楽だの愛情だのとはまったく関係なく、純粋な生理反応だろう。
牛尾が挿入したことにより、美幸の膣が性交を意識してきたのだ。
こんな凶器で柔らかい内部粘膜を抉られたらボロボロになってしまう。
それを防ごうと、身体が反応しているのである。
それは牛尾にもわかったようだ。

「おっ……あれ……だんだんと中が……濡れてしましたね。動きやすくなった」
「そっ、んなことあるわけが……痛いっ……くはっ……」

言われてみれば、確かに最初よりも痛みが和らいでいる。
慣れてきたのかも知れない。
少しだけ反骨心を取り戻した美幸は、苦痛の中でもキッと牛尾を睨みつけてやった。
それを見た牛尾は、ずぶっと奥までペニスを突き込んだ。

「ひぐうっ!」

たまらず美幸は身を反らせた。
牛尾は深くまで入れ込んだ肉棒をずるっと引き抜き、そしてまたずぶりと奥深くを
突き上げた。

「あううっ……い、痛っ……ぐっ……ふ、深い……深すぎるわ……あぐっ……」
「深いですか? 俺はまだ全部入れてないんですけどね」
「そんな……こ、これ以上入りっこない……あむっ!」

いやになるほど硬いものが何度も何度も抉り込んでくる。
突き刺す時は一気に、抜く時はゆっくりと動く長いストロークに美幸はわなないた。
牛尾の方は、素早く突き込むことでその深さに脅えさせ、抜く時に時間をかけること
でペニスの長大さを意識させようとしている。
慣れたと思った直後に、さらに奥まで貫かれて、美幸はまた新たな苦痛で身悶えて
いた。
背筋や腹筋は痙攣したかのように震え、冷や汗の浮いた裸身をうねらせている。

「いった……ああっ……んっ……くひっ……ひ、ひあっ……」

ずんと突き込むとたぷんと揺れる乳房を掴み、揉みしだいたが、美幸はほとんど
反応しなかった。
胸を愛撫される快感などよりも、膣を犯される苦痛の方が遥かに大きかった。

「あ、あうっ……あっ……うくっ……うんっ……」
「くっ……マジできついな、これ」

牛尾も、美幸の締め付けに顔を歪めていた。
もっとも快楽のせいで膣が締まっているわけではない。
単純に狭いところに太いものが入っているせいできついだけだ。
肉棒もますます膨れあがっている。
これでは美幸の膣が多少行為に慣れたとしても意味があるまい。

「ああ……」

苦しげに苦悶する美貌が、まるで必死に快感を堪えているようにも見える。
牛尾の興奮が高まっていった。

「美幸……さんっ……俺、もうだめそう……出ますよ」
「えっ……!?」

美幸は苦痛を振り払って牛尾を見た。
その顔が脅えている。

「だ、だめっ……絶対にだめっ……中はだめよ! ああ、絶対にいやあ……」
「いいや中に出します。じゃないと美幸さん、またその婚約者に思いがいくでしょ
う? 俺のものにするにはそいつを忘れさせるしかない」
「だ、誰が、あっ……誰があなたのものになるって言うのよ……あうっ……」
「そのうち美幸さんの方から「中に出して」ってねだるようにしてあげますよ」
「バ、バカ言わないで、あうっ……あああ、だめだめ……中はだめよ……ああ……」

必死になって膣内射精を拒む美幸の声が、余計に牛尾を煽っていく。
女の嫌がることをすることで満足するサディスティックな欲望が牛尾を支配する。
牛尾は美幸を地獄へ落とすべく、強めに突き上げていく。

「で、出る……ああ、出るよ、美幸さんっ」
「だめっ……いやああっっ!!」

牛尾の腕を掴んで爪を立て、その胸をどんどんと叩いた美幸が大きく目を見開いた。
射精感を我慢しようともせず、牛尾が胎内にその欲望を解き放ったのである。
その熱く、固体のような衝撃を胎内に直接受け、美幸は絶叫した。

「いやああああっっ! で、出てるっ……中で出てるぅっ……抜いて、抜いてぇっ…
…!」

泣き喚く美幸をぎゅっと抱きしめ、牛尾は腰を押しつけるようにして中へと射精して
いく。
びゅくびゅくと精液が迸り、その中を穢されているのを美幸は実感していた。

「ああ……だめって言ったのに……中はいやって言ったのに……ああ、どうしよう、
こんな……こんなことって……ああ、まだ出てる……」

美幸の絶望的な声を聞きながら、牛尾は勝ち誇った。

「どうです、たっぷり出たでしょう。しっかり受け止めて下さいよ」
「ひ、ひどい……」

中出しなど、まだ中嶋にも許したことはなかった。
というより、中嶋の方が、する時は必ず避妊具をつけていたのだ。
もちろん、その前の男性経験でもゴムつきだったから、美幸の胎内に精液を放出した
のは、この牛尾が初めてなのであった。
牛尾はすっかり出し終わっても、まだ美幸の中に入っていた。

「へへ……よし。じゃ二回戦と行きますか」
「ひっ……!」

驚いたのと脅えたせいか、美幸の膣がまたきゅっと締まった。

「そんな……も、もういいでしょ……こんなひどいことして……」
「何を言ってんですか、まだまだですよ。夏実さんとやる時だって二回や三回じゃ
終わりませんから。夏実さんが泣いてよがって、くたくたになって、もう許してっ
て叫んでも終わりません、俺が満足するまでね。精液を全部注ぎ終わるまでは」
「いっ……いやあああっっっ!!」

哀しい絶叫が美幸の口を割り、すぐにまたリズミカルにベッドが軋む音が響いて
いった。

─────────────────────

脱走犯・牛尾展也は、建設工事が中断している工事現場の事務所を根城にしていた
が、ここに来て新たな隠れ家を使うようになった。
美幸のマンションである。
美幸を襲った晩以来、この厚顔無恥な男はそこに住み着いてしまったのだった。
無論、美幸は激しく拒否したが、結局は従わざるを得なかった。
夏実のことと、先日のレイプをネタに脅迫されたのである。
美幸が渋ったり反発すれば、牛尾はすぐに夏実の恥ずかしい写真をちらつかせてきた。

加えて、この前犯された時に美幸も撮影されてしまっているのだ。
三度ほど続けて犯され、身も心もボロボロとなりグロッキー状態だった美幸の全裸
写真を、牛尾は何枚も撮ったのだった。
股間を精液で汚し、あられもなく足を開かされてぐったりしているシーンの写真を
見せつけられ、美幸は青ざめた。
顔もしっかり写っている。
誤魔化しようもなかった。

これを同僚に──中嶋に見られたらどうなってしまうのか。
もちろん中嶋は、こんなことで美幸を捨てるほどに心の狭い男ではない。
真実、美幸に惚れきっているから、例えレイプされようとも結婚する気持ちに揺るぎ
はない。
ただ、それほどに美幸を愛しているから、犯人──つまり牛尾に対して何をするか
知れたものではない。
もしかしたら、警官という立場を捨ててでも復讐する可能性だってある。

それほどまでに愛されているのだから美幸としては幸せだが、だからと言って中嶋に
警官という職務を──人生を捨てて欲しくはなかった。
そんなことをすれば中嶋の方まで犯罪者となってしまうのである。
状況は中嶋に対して極めて情状酌量の余地はあるが、それでも罪は罪である。
万が一、殺してしまうようなことがあれば、初犯とはいえ執行猶予はないだろう。
現役警察官の怨恨による殺人と、マスコミも大きく取り上げるに違いないのだ。
それは美幸にとっても中嶋にとっても本意ではなかった。

それに、そのことは置いておくとしても、こんなことがあっても、中嶋との関係は
今まで通りいくのか、という不安もあった。
もし中嶋が浮気したらどうだろうか。
他の女と関係を結ぶのは論外としても、ふたりっきりで出かけるようなことがあれ
ば、やはり美幸は平常心ではいられないだろう。
美幸だってそうなのだ。
中嶋も同じか、それ以上に気にするに違いないのだ。

確かに今回は浮気などではない。
暴力的に貞操を穢されたのであって、美幸には何の罪もないのだ。
中嶋もそれはわかっているだろうが、それにしても美幸の身体が他の男に蹂躙された
ことは変わらない。
中嶋が美幸に対して疑心暗鬼になるようなことはないだろうが、心根の優しい彼の
ことだ、必要以上に意識するかも知れない。
つまり美幸を抱くことに遠慮が出る、気にする、ということは充分に考えられた。

美幸の方も、この事件がトラウマになるだろう。
それまでのように、素直に中嶋の胸に飛び込んでいけるだろうか。
そんなことを考え出すと、牛尾の脅迫が効いてくる。
もし美幸に、中嶋も自分もそんな写真も事実も、毛の先ほども気にしないという自信
があれば、こんな男はたちまち叩きのめして刑事課に突き出すだろう。
美幸がそうなら夏実も同じだろうからだ。
だがそうしないのは、夏実も美幸も、このことを意識しないわけにはいかないのだ。

もし自分だけで恋人がいないのであれば、また状況は一変する。
恥ずかしい供述を取られ、裁判でも話さなければならないが、自分ひとりのことなら
耐えられるかも知れない。
しかし東海林や中嶋のことを考えると、そんなことは出来なかった。
自分以上に彼らの方が傷つくからだ。

美幸は夏実とひさしぶりに話したくなった。
夏実が転勤して以来、連絡はない。
夏実も新しい部署で忙しいのだろうと思っていたが、実際は牛尾に襲われていたのだ。
美幸に相談したくも出来なかったのだろう。
夏実も、今の美幸と同じことを考えているのだろうか。
無性に夏実が懐かしくなっていた。

「……」

重い気持ちで帰宅した美幸が部屋に入り、照明をつけると、牛尾がダイニングのテー
ブルに座ってにやついていた。
そのおぞましい顔を見ないように横を向いて美幸は言った。

「……外に出なかったでしょうね」
「それがちょっと外出しちゃいました」
「なっ……何でよ! 外に出ないで部屋でおとなしくしててっ言ったじゃない!」

牛尾が部屋に居座ると宣言すると、美幸は「それなら絶対に部屋から出るな、電気も
テレビもつけるな」と言ったのである。
もう美幸はここに住んで何年も経っている。
つまり、隣近所とは顔見知りなのだ。
警官は時間が不規則だが、交通課に勤務している美幸たちは比較的決まった時間に
出退勤している。
夜勤になることもない。
近所の人たちも、美幸と夏実が警官であることは知っているし、その夏実が転勤で
出て行ったことも承知している。

そんな中、ひとり暮らしの美幸の部屋に男が出入りしているなどという噂が立ったら
困るのである。
まさか、婦人警官の部屋に若い男が出入りしている、風紀上問題だなどと言って墨東
署に密告するような人はいないだろうが、それにしても世間体が悪い。
相手が美幸の恋人であればともかく、まったく正反対の男なのだ。
睨みつける美幸の視線を難なく跳ね返し、牛尾はふてぶてしく言った。

「そりゃあ俺だってたまにはお日様を見たいですしね。買い物だってある。勝手に
冷蔵庫漁るなって言ってたじゃないですか」
「当たり前でしょう! 気持ち悪い……」
「あ、ひどいなあ。だから食い物買ったりするのに外でないわけにはいかないでし
ょうに」
「……見つからなかったでしょうね」
「平気だと思いますけどね。保証の限りじゃありませんがね。俺は別に見つかった
って困らないし」
「……」

心底憎らしそうな表情で牛尾を見ながら美幸が言った。

「な、何を買ってきたのよ。どこへ行ったの。まさか夏実のとこじゃないでしょうね」
「まさか。だって夏実さんは警官の独身者待機寮に住んでいるんでしょう? いくら
俺でもそんなところに乗り込めませんよ」

そう言えばそうだ。
それを考えたら、美幸も夏実の引っ越しの時点で待機寮に移れば、こんなこともなか
ったのだろう。
だが、それを今言っても始まらない。
少し安心したような美幸の顔を見て、牛尾は小さく嗤った。
牛尾が夏実のところに押しかけていないのは事実だったが、襲ってないとは言って
いない。
牛尾が夏実を犯す時は、夏実の方を呼び出していたのである。
牛尾はデイパックを示して言った。

「買ってきたというか……手に入れてきたのはこれです」
「……」
「心配しないでくださいよ。この部屋を漁ってカネを盗んだわけじゃない」
「……万引きかひったくりでもしたんじゃないでしょうね」
「ま、それは言わぬが花ってやつですか、あはは」
「……」

犯罪者が、しかも現在進行形で罪を重ね、これからも罪を犯すであろう男を目の前
にして、どうにも出来ぬ歯がゆさと無力感に、美幸は肩を落とした。
これでも警官と言えるのだろうか。

「お帰りを待ってたんですよ。食事、してきましたよね?」
「……」
「もしまだでも今日は出来ませんよ、もう。これからお楽しみの時間だ」
「いや」
「……抵抗しても無意味っての、少しは学習してくださいよ。結局、言いなりになる
んだから。いつもそうでしょ」

牛尾がここに押し入って、もう三日になる。
その間、美幸は連日連夜に渡って犯されていた。
それでも、牛尾も驚くほどの驚異的な精神力で、なかなか官能に溺れるようなことは
なかった。
感じてきていることも少なくなかったが、気をやるところまではとてもいかなかった。
最初は牛尾も、美幸を犯すことだけで満足していたが、やはり物足りなくなってくる。
これは夏実の時もそうだった。
そこで夏実を性的に堕落させるために、あれこれ責めを工夫し、最終的には牛尾の
思うように絶頂し、果てるようになっていった。
美幸もそろそろその時期だ。

「ほら、行きますよ」
「い、いやっ……!」

牛尾に手首をぎゅっと掴まれ、慌てて振りほどこうとしたが、強引に引きずられる
ようにして寝室へと連れ込まれてしまった。

「ま、また、こんな……」

美幸は恥辱に耐えていた。
今日もまた縛り付けられている。
黒い麻縄で胸の上下を二回り縛られ、その縄尻が背中に回された両手首を縛っていた。
こうすることで胸がぐっと突き出される。
菱縄だとか亀甲縛りに比べて簡単だが、見栄えは抜群である。
牛尾お気に入りの緊縛だった。
ベッドに上半身を押しつけられ、うつぶせにされている。
下半身はベッドから降りていて、膝を絨毯についていた。
両足首にもロープがかけられ、開かせるようにしてベッドの脚に結びついていた。
牛尾は、そんな哀れな美幸の姿を後ろからじっと見つめている。
恥ずかしいのか、牛尾に突き出す格好の美幸の尻がなよなよと揺れていた。

「み、見ないでよ、そんなに……」
「どこを? 美幸さんのお尻をですか?」
「……」
「美幸さん、おっぱいの形が絶妙に美形でしたけど、お尻もいいですよね。ウェスト
が細いから、でんとした感じがしますよ。安産型だなあ。形もいいや、逆ハート型
って言うんですかね、そそるなあ」
「そ、そんな感想なんかいらないわよ。見ないで、見ないでよ、あなたに見られた
くないっ」
「ふふん。大事なところを見せるのは婚約者さんだけ、ですか」
「……」
「中嶋さん……中嶋剣さんって言うんですってね」

美幸は驚いたように振り返った。

「どうして……どうして知ってるのよ」
「調べれば簡単ですよ。なんたって美幸さん、有名人ですしね。その美幸さんが
結婚、それも同じ課の同僚だ、くらいの情報はすぐに取れる」
「……」
「詳しく調べたら、結婚適齢期そうなのはあまりいないっすね。だからすぐに判り
ましたよ。けっこうがっちりした感じの人でしたね。俺なんか簡単に伸されちゃい
そうだ」
「……そうよ。こんなこと……こんなこと中嶋くんが知ったら、あなたタダじゃ
済まないわ」
「でしょうね。でも、タダじゃ済まないのは美幸さんも同じだ」
「わ、私は……。中嶋くんはわかってくれるわ」
「表面はね。さて、心の内側ではどうですか」
「どういうことよ」
「だってさ、自分の愛する女が他の男に犯され……いや抱かれたってだけで、もう
平常心じゃいられないでしょうに」
「……」
「それで女がいいように感じさせられて、最後にはいっちまった、なんて知ったら
……」
「だ、誰がいったのよ! 私は全然……」
「……そうなんですよ」
「え?」

牛尾は腕組みをしていた。

「そこが不満でしてね。なかなか美幸さんが俺とのセックスに燃えてくれない」
「当たり前よ」

美幸は吐き捨てるように言った。
何が「セックス」かと思う。
一方的なレイプ、暴力ではないか。
そんなもので燃え立って絶頂するような変態ではない、と美幸は思う。

「だからですね、今日という今日は美幸さんに屈服してもらおうかと」
「だ、誰が……」
「夏実さんもね、初めはそんなこと言ってたんですよ。でもさあ……」
「き、聞きたくないわ、そんな話っ……」
「そうですか。じゃあ、実技に入りますか」
「……勝手にすればいいわ」

美幸はプイとそっぽを向き、牛尾を無視した。
それでも、臀部をじっくり見られるのは恥ずかしいらしく、もじもじと尻を蠢かせ
ている。
美幸が黙ってしまったので、牛尾がまた卑猥な言葉をかけていく。

「くく、お尻が少し開いてますよ。無理もない、脚を開かされてるんだから」
「……」
「お尻の奥まで見えますよ。美幸さんはお尻の穴まで綺麗だ。いいなあ」
「い、いやらしいっ……どうしてそんなことばっかり言うのよ!」
「見た通り正直に言ってるだけですがね。あ、恥ずかしいんですね、お尻の穴、
少しひくひくしてますよ」
「恥ずかしいに決まってるわ! だ、だったら見ないでよ!」
「いやいや、もうかぶりつきで見させてもらいますよ。なんせ、こんなところを
まともに見られるのは俺くらいだしなあ。中嶋さんにはまだ見せてないんでしょ?」
「当たり前のこと聞かないで! いちいち中嶋くんのことも言わないでよ!」

無視しようと思っているのに、牛尾はことさら卑猥で恥ずかしいことばかり言っ
てくる。
黙っていれば、さらに恥辱的な言葉をかけてくるのだ。
相手にしないと思っていても、夏実や中嶋をダシに使われると、途端に怒って
しまう。
自分はともかく、大事な友人たちをバカにしたり蔑んだりされるのは黙っていら
れない。
牛尾はその美幸の心理を利用して、美幸の大事な人たちに絡めて、淫らなことも
言ってくる。
聞くに堪えないことまで言われ、つい美幸は言い返したり、反論したりする羽目
になるのだ。

「少しは元気が出てきたみたいですね。そのくらいじゃないと面白くないから」
「ほんっとに……最低。ゲスね、クズよ」
「はいはい、そうでしょうよ。もう夏実さんにも言われ続けたから、その手のセリフ
には慣れました」
「み、見るな! 見ないでよっ」

牛尾の視線がそこに──肛門に来ていることがなぜか美幸にもわかった。
まるでこの男の視線に物理的な力があるかのように、見られている箇所が疼くのだ。
「視線で犯す」とはこういうことかと美幸は痛いほどわかった。
牛尾に指摘された通り、お尻の穴がひくついているのもわかる。
そんなことしたくないと思っても、美幸が羞恥を感じると、アヌスが勝手に収縮する
ようだ。
牛尾はその揺れる尻を掴むと、ぐいっと大きく割った。

「ああっ、いやあ!」

すうっと涼しい風が尻の中に入ってくる。
剥き出しにされた肛門が野獣のような男の目に晒されていた。
牛尾の貪るような視線がそこに集中しているのがわかると、美幸は屈辱感と汚辱感に
打ちのめされたが、同時に何か心臓のきゅっと締め付けられるような不可思議な感覚
にもなっていた。
何だか大事なところ──膣とアヌスがもぞもぞするような気がする。
そんなことをすれば牛尾を悦ばせるだけだと思っても、どうしても尻がうねり、アヌ
スがひくひくと蠢いてしまう。

「いや……いや……」

それを振り切ろうとするかのように、美幸は枕に突っ伏した顔を振りたくった。
太く一本にまとめられたお下げが、白い背中の上で哀しく跳ねている。
牛尾は身を乗り出して美幸の尻にまとわりつき、左手で尻たぶを開いたまま、右手の
指先でアヌスを緩やかに愛撫し始めた。

「ああっ!」

美幸は、それこそ全身を突っ張らせて悲鳴を上げた。
まさかそんなところに興味を示すとは思いもしなかったのだ。
まともな性行為しか知らぬ美幸には信じられぬ思いだ。牛尾は、美幸もアヌス責め
することに決めていた。
頑強だった夏実も、ここを責め抜くことでその肉体の崩壊が始まったのである。
ことさらにここは女性にとっても羞恥の場所であるし、普通は性行為には使わない。
そういう趣味がなければ愛撫する男も少ないだろう。
だからこそ効くと牛尾は思っていた。
男勝りの夏実も一発だったのだから、気丈な美幸にも絶対に効果はあるはずだ。

「くっ……いや……さ、触らないで、そんなところっ……ひっ……」

牛尾は指の腹で、美幸のアヌスをすっとなぞる。
僅かに力を入れて、ぐいっと圧力をかけると、美幸はビクンと大きく背を反らせた。
飽きることなく牛尾は何度も何度も、そのふっくらしてきた蕾を押し、撫で、擦って
いる。
痛い、くすぐったい、もぞもぞして気持ち悪い。
そんな感触がまとめて襲ってきて、美幸はたまらずに悲鳴を上げ続け、身体を突っ
張らせた。

「や、やめて、しないで! そ、そんな恥ずかしいっ……汚いわ! あ、いやっ!」

まだ軽く嬲っただけだが、予想以上に反応が激しかった。
この程度でこれだけ大騒ぎするようでは、これから施す肛門責めを知ったら、美幸は
どんな顔をするのだろう。

「いぎっ!」

激痛が走った。
美幸は絶叫して尻を捩った。
牛尾は指をその中に押し込もうとしているらしい。慌てて美幸は振り返った。

「やめて、いやっ! そんなこと無理よ、いやだあっ!」
「そんなこと? 何をされると思ったんです?」
「そ、それは……」

お尻の中に指を入れられる。
そんなことを言えば、牛尾は「そうですか、指を入れて欲しいんですね」とか言って
実行に移すだろう。
美幸は悔しそうに顔を伏せた。

「言えないようですな。ま、今、美幸さんが思った通りのことをするんですけどね」
「いやよっ! ど、どうしてそんなことするのよ、この変態!」
「そりゃあ美幸さんのすべてを知りたいからですよ。愛してるんだ」
「バカ言わないで! 愛してるならそんなことしないでよ!」

いつの間にか、恋人に対するようなセリフを吐いてしまい、美幸はハッとして口を
閉ざした。
愛しているも何もないのだ。
この男は美幸の意志を無視して、ただ犯そうとしているに過ぎない。
美幸が嫌がって尻を振っていると、すっとそこから牛尾の手が離れた。
美幸はホッとして力を抜いたが、すぐに不安になった。
あの変態がこれで終わりにするわけがない。
次の卑劣な行為のために何か用意しているのではないか。
不幸にして美幸の予感は当たった。恐る恐る振り返ると、牛尾は右手の指に何か塗り
つけている。

「な……なによ、それ」
「ん? いやあ、美幸さんのお尻の穴、堅く締まってたもんで、少しほぐそうと思
って」
「そんなことしないでいいわよ! そ、それより、それはなにって聞いてるの!」
「ふふ、語尾が震えてますよ、美幸さん。怖いんですか?」
「だ、誰があなたなんか……」

そう言った美幸だったが、声が震えているのは否定できなかった。
やはり怖いのだ。
この男は何をしてくるかわかったものではない。
叩いたり蹴ったりという暴力とは無縁そうだが、その分、くらくらするほどに淫らな
ことばかり仕掛けてくるのだ。

「そうですか、ならいきますよ」
「い、いやっ……ああっ!」



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